七夕の夜に願いを (15)


小鳥「みんなー、願い事は書けたー?願い事が叶わなくなっちゃうわよー」

今日は七夕。毎年恒例の短冊書きで、事務所がわいわいとかしましい。

小鳥「お願いだから早く書いて。もう2×歳焦ってるの早く願い事を飾って成就確率を上げないと実家に帰れば親に花嫁姿がみたいだの子供がみたいだのアレコレアレコレピヨピヨピヨピヨ」

ぶつぶつと小鳥さんがどす黒いオーラを出しているのが怖いので、みんな早く願い事書いてマジで。


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真「あぁ、織姫と彦星のお話ってロマンティックだよねー。1年に1度しか逢えない二人。すごく胸がキュンキュンするよー」

春香「うんうん。切ないんだけど、なんだか純愛って感じで憧れちゃう!でも、私だったら絶対寂しくなっちゃうなー...」

真「そうだよね!うんうん。」

真「あっ!プロデューサーはどうですか?やっぱり、男の人もこういうのに憧れちゃいます?」


キラキラした期待の眼差しを向けてくる真。乙女オーラ全開だ。


P「あー、男としては正直よくわからんなぁ...」


ぶっちゃけ、1年に1度しか会えないのであれば双方浮気するに決まってると思うのだが、

さすがに夢見る乙女の心を砕くわけにはいかんので、それは言わないでおいた。


真「乙女心は男の人には難しいかぁ...。千早はどう?」

千早「ごめんなさい、私にもよくわからない...」

真「ええっ!千早も!?」

千早「そもそも、織姫と彦星がそういう境遇になったのは、二人が結婚生活にかまけて互いの仕事をしなかったからでしょう」

千早「自分の怠惰を戒める教訓になるのであればわかるけれど、ロマンティックなお話として捉えることは私には難しいと思う」


春香「あははは、千早ちゃんらしいね」

真「教訓かー。そんなこと考えたこともなかったなー。そう言われてみれば、そんな感じもするや!」

真「あっ!雪歩!雪歩は織姫と彦星のお話...」


事務所の屋上。

ジメジメした梅雨の空が、なんとも気分を憂鬱にさせる。

ポケットから煙草を取り出し、火をつけて、煙を吐き出す。

すっかり湿気て風味が落ちてしまってはいるが、すーっと気分が落ち着くような気がする。

これは夜は星は見えそうにないなと考えていると、ガチャっと背後で扉の開く音がした。


千早「あっ、プロデューサー」

P「おぉ、千早か。願い事は書けたか?」

千早「いえ、なかなか思いつかなくて、少し一人で考えようかと」

P「なるほど、じゃあ俺は事務所に戻ろうか」

千早「いえ、どうぞそのままで大丈夫です」


P「あっ、煙草すまんな。今消すから」

歌を大切にする千早にとって、喉は何よりも大事なものだ。


急いで携帯灰皿を取り出そうとすると、

千早「構いません。むしろ、プロデューサーに気をつかわせて、すみません」

P「そうか、悪いな」

後ろめたい気持ちもあるが、ここは千早の厚意を素直に受け取ることとしよう。


千早「でも、煙草はほどほどにしてくださいね」

P「そうだな。最近じゃ、副流煙どころか三次喫煙も問題だって...」

千早「いえ、そうではありません」

少し食い気味に、俺の言葉を遮る千早。

千早「単純に、心配です。プロデューサーの身体が」

そう言って、千早は優しく微笑んだ。


P「お、おう。ありがとう」

最近、千早が良い方向に変わってきたとはいえ、こんなストレートな言葉が千早から出てくるとは。

不意を突かれて、なんだか無性に照れくさい。


千早「今日、星は見えなさそうですね」

P「そうだな、難しいかもな。でも、まだ日没までには時間がある。願っていれば、晴れるかもしれないぞ」

P「まぁ、怠惰な織姫と彦星のために願うのは癪にさわるのかもしれないけどな」

千早「いえ、そんなことはありません」

そう言って、千早は曇天の空を見上げる


千早「確かに、自分たちの怠惰で1年に1度だけしか会えない二人にロマンを感じることはありません」

千早「でも、少しだけ思うんです。1度離れてしまっても、364日の間、相手にきちんと向き合うためにお互い努力ができていれば、素敵だなと」

千早「そのせっかくの1日に、曇り空なのは可哀想な気がします」

千早「私が織姫になったら、きっと1年に1度、彦星に会う日は364日分の思いを込めて、歌を歌うでしょうから」

千早「私には、まだ恋なんてわからないのですが」

P「なるほど、それはすごく千早らしい」


如月千早は情が厚い人間だ。

以前の千早は、「氷の歌姫」などと呼ばれることが多かった。

頑なに心を閉ざして、頑なに歌を歌うことに執着する様は、多くの人にそう映っただろう。


だがそれは、きっと彼への思いを知らなかったからだ。

千早の冷たさは、そのまま彼への想いの強さだった。

一人を想って、一人のために悔やんで、世界を捨ててしまった。

その想いを知ると、決して「冷たい」なんて思えない。


千早の思いを聞いて、自己嫌悪に陥ってきた...。

P(織姫も彦星も、絶対浮気するとか思った自分が恥ずかしいな...)


千早「プロデューサー」

P「ん?」

千早「あの、お尋ねしたいことが」

P「なんだ、改まって?俺に答えられることであれば、力になるぞ」

千早「ありがとうございます。では」

千早「もし、織姫も彦星も、ありし日を省みて、悔やんで、互いのために心を尽くすことができたなら」

千早「また二人は、一緒に過ごすことができると思いますか?」


すがるような目で尋ねる千早。

なるほど、これは織姫と彦星に対する問いではなく、千早自身に対する問いだ。


P「当たり前だ。1度離れてしまっても、互いを思いあえるなら、何度でもやり直せるはずさ」

届くといいな。千早の思い。


千早「ありがとうございます。私も、そうであれば良いなと思います」

そう言って、千早は踵を返した。

千早「事務所に戻りますね。短冊に書く願い、決まりましたので」

P「あぁ、俺も願い事、決まったよ」

千早「プロデューサーも、願い事決まっていなかったのですね」

P「大人になると、欲がなくなっていかん」

P「夜空に願うような欲しいものも、やりたいこともなかなかみつからなくってな」

千早「でも、みつかったのですね」

P「あぁ」


しばらくして事務所に帰ると、腐海に沈んだ小鳥さんが待ち構えていた。

小鳥「プロデューサーさんはやく短冊書いてください。あと書いていないのプロデューサーさんだけなんですよ。はやく飾らないと先に他の人の願いが叶ってしまってまた昔の友人から小鳥ちゃんはすぐにいい人が見つかるよと白々しい励ましの声をグチグチグチグチピヨピヨピヨピヨ」

P「あー、小鳥さん落ち着いてください。書きますから、今から書きますから」

はやく書かないと空が小鳥さんの闇で覆われてしまいかねないので、パパパっと短冊に殴り書きをして竹に結ぶ。

P「んじゃ、さっそく屋上に飾ってきますね!今夜は晴れることを願いましょう」


7月7日夜 天気は晴れ 満天の星空


765プロの屋上に、夜風に吹かれる竹の木が一本。

枝には、たくさんの願いたち。


---結婚!運命の人!!はよ!!! 音無小鳥---

---かわいい衣装がたくさん着れますように 菊地真---

---これからも、みんなで楽しくいられますように 天海春香---

---家族と、また過ごせますように 如月千早---

---みんなの願いが、叶いますように プロデューサー---


終わりだよ~(〇・▽・〇)


七夕にぎりぎり間に合ったと思ったら,スレタイにアイマス入れるの忘れてました・・・。

千早かわいいよ千早

見逃すところだったじゃないか気をつけなさい

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