~理樹と真人の部屋~
ある日のこと。いつもと同じように恭介と謙吾が遊びに来ていると、恭介が突然そんなことを言った。
理樹「それって、警察と泥棒に分かれてやるあの遊びのことだよね?」
恭介「ああ。子供がやる遊びの代表格だな」
恭介「ちなみに名称は地域で多少異なってるようで、ドロケイだったりケイドロだったりで様々だ。俺らのとこはドロケイで統一されてたけど」
真人「話には聞いたことあるけどよ。実際にやったことはなかったなそういや」
謙吾「確かにな。恭介のことだから真っ先に提案しそうなものだったが、結局やらずじまいだった」
恭介「昔は鈴を含めても五人だったからな。警察と泥棒に分けるとなるとちょっと人数的に厳しかったんだよ」
理樹「まあ、それは確かにね」
普通はもう少し大人数でやるものだから、恭介の言い分は間違っていない。
恭介「でも、今はリトルバスターズも十人になった。人数的には問題なくやれる」
恭介「今こそ封印されし遊戯を解放するべきなのさ」
理樹「どうしていきなり中二病になるのさ……」
真人「ま、オレは構わないぜ。遊戯と一緒に筋肉も解放させてやる」
謙吾「お前の筋肉とバカは常に解放されてるだろうが……」
呆れたように言う謙吾も、やがて満更でもないように続ける。
謙吾「だが俺も賛成だ。どうせここで断ったところで逃げられんだろうしな」
理樹「それもそうだね。ってことで僕も参加するよ」
恭介「よし、時間は明日の放課後。詳しいルールもそこで説明する」
恭介「他のメンバーには俺から言っておくとしよう」
~教室~
翌日の放課後。僕達の教室にはリトルバスターズのメンバーが集まっていた。
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小毬「ドロケイかぁ。子供の頃はよくやったなぁ」
クド「警察と泥棒なら、私は警察希望です! じゃぱんぽりすの経験をしてみたいのです!」
鈴「なら、はるかは泥棒で決まりだな」
葉留佳「どういう意味ですかネ!?」
小毬さん達が実に楽しそうに話をしている。
唯湖「ふむ……恭介氏の地域ではドロケイ、だったのか」
美魚「わたしの地域ではケイドロのようでしたけど、来ヶ谷さんの地域も?」
こっちはドロケイの名称について話をしているようだ。
そうやって恭介が来るのを待つこと数分。教室の扉が開き、恭介がやって来た。
恭介「いやあ、悪い。遅れちまったな」
真人「ようやく来たか!」
真人「オレの筋肉が悪の手先を裁きたがってる……やるなら早くしようぜ」
いつから真人の筋肉は正義を司るようになったのだろうか。
唯湖「それで、恭介氏。今回やるのはケイドロだったな?」
恭介「いや? やるのはドロケイだ」
美魚「……同じでは?」
恭介「違う。少なくとも今回やるのはドロケイだ」
恭介「いくら来ヶ谷でもここは譲れねぇぜ?」
理樹「そこはどうでもいいと思うんだけど……」
子供のように妙なところで頑固な恭介。
来ヶ谷「まあ、名称はどっちでもいい。恭介氏がドロケイだと言うのなら、そっちで統一するとしよう」
葉留佳「おっ、さすが姉御! 大人ですな! その胸は伊達じゃない!」
クド「わふっ!? 胸と心の広さは関係あるのですか!?」
理樹「恭介。早く説明を始めて」
このままじゃ説明が終わる前に時間が終わっちゃう。
恭介「おう。えー、範囲は校舎全体。当然学園外は禁止」
恭介「牢屋はこの教室にしよう。泥棒は警察にタッチされた時点で捕まったと見なし、他の仲間にタッチされると再度逃げれるものとする」
恭介「不正を無くす為にも、警察は泥棒を捕まえたら牢屋まで必ず連行すること。その道中で他の仲間が連行されてる泥棒を助けることは不可。あくまで牢屋でのみタッチによる解放が可能」
恭介「時間はそうだな……少し長めに一時間半とする。場合によっては多少前後するかもしれんがな」
小毬「場合によっては?」
理樹「……二木さんだね」
校舎全体を利用してドロケイとなると、当然二木さんに見つかれば大目玉だ。それだけは避けたいところ。
恭介「一応、今日は風紀委員の見回りは休みみたいだけど……あの二木のことだ、用心するに越したことない」
美魚「よくご存知ですね」
恭介「女子寮の寮長から聞いた」
確か女子寮の寮長と二木さんは仲が良かったはず。その寮長の情報となれば間違いはないだろう。
恭介「ま、そういうことだからとっとと始めるか。じゃないと真人の筋肉が正義の暴徒と化しちまう」
謙吾「警察と泥棒の決め方は?」
恭介「公平にあみだで決めるとしよう。前もって用意してきたから、それを使う」
理樹「用意周到だね」
葉留佳「ん? ってことは真人くんの筋肉が悪に染まる可能性もあるってこと?」
真人「へっ……オレの筋肉は悪に染まったりしねぇぜ……」
美魚「そこは運なので井ノ原さんがどうこうできないのでは……」
恭介「そんじゃあ始めるぞ! さて、どうなるかなーっと」
↓2
結果は? 五人ずつで分けてください
kskst
どろぼう
姉御
りき
まさと
くど
はるか
新作乙
理樹、謙吾、姉御、葉留佳、クド
コンマ奇数なら泥棒、偶数なら警察で
真人www
おれのところではケイドロだったな
安価把握。夜頃にまた来ます
>>6
別人じゃー∑(∵)
それは失礼しました
しかも誰と間違えたのか当たりをつけられている
ケイドロは他の地域では引き摺ったり羽交い締めにしないって聞いて驚いたなー
自分のところはケイドロ呼びだった。
>>11
えっ、なにそれ、マジ泥棒相手なら分かるがあくまで遊びだら…寧ろなぜそうなったか驚くwwwwwwww
どうでも良いが中学時代の自分と友人たちの間で昼休みに缶蹴り(缶の代わりにボールとか色々代用していたので?蹴りと呼ばれていた)が流行ってた記憶。
捕まってすらいない人が牢屋の中にいてある程度泥棒が溜まったら開放してたなあ
あれは絶望した
唯湖「泥棒の立場を味わうのも面白いかもしれないな」
クド「わふー……ぽりすになれなかったのです……」
葉留佳「ややっ!? 鈴ちゃんの言った結果になっちゃったよ!?」
真人「理樹……オレの筋肉が悪に染まる前にお前色に染めてくれ!」
理樹「意味わかんないし気持ち悪いよ!」
泥棒組は僕・真人・来ヶ谷さん・三枝さん・クドの五人。
ということは警察組は恭介・謙吾・鈴・小毬さん・西園さんになるわけだ。来ヶ谷さんという切り札がこちらにあるとはいえ、結構辛い戦いになりそうである。
恭介「ちぇっ、理樹とは別チームか」
鈴「理樹は何を盗んだんだ?」
謙吾「俺達のハート……だな」
小毬「ふぇ!? 理樹君にハート盗まれちゃったの!?」
美魚「……恭介さんと宮沢さんのハートを盗む直枝さん……」
理樹「どうして西園さんはそこだけピックアップするのさ!? 字面だけ見たら危ない人だよ!?」
来ヶ谷「はっはっは。これは気合いを入れないとな理樹君?」
そうやって笑みを浮かべる来ヶ谷さん。その隣で三枝さんが挙手をした。
葉留佳「恭介さーん。これって勝ったチームにはご褒美とか無いんですか?」
恭介「ご褒美か……」
恭介「なら、二週間後にオープン予定の遊園地に負けたチームの奴らの奢りで行くとかどうだ?」
クド「わ、わふっ!? 奢り、ですか!?」
恭介「心配するな。奢りはあくまで入場料だけだ。中での飲食は各自の金ってことで」
恭介「学生の身分で全部奢りなんてこと、なかなかできないからな。俺も就活あるし」
※ID変わってるけど本人です(∵)
謙吾「確かに、場合によっては恭介はまた徒歩で就活することになるかもな」
真人「そんじゃあそういうことにしておいて。やるならさっさとやろうぜ」
真人「オレの筋肉が警察だの泥棒だのを超越してるってとこ、見せてやる!」
どうして第三勢力目線になりつつるのさ真人は……。
恭介「じゃあ泥棒組は今から逃げてくれ。十分経過したら俺達も動き出す」
小毬「鈴ちゃん、頑張ろ~!」
鈴「う、うん。がんばろう」
来ヶ谷「それじゃあ行くとしようか」
来ヶ谷さんを先頭に廊下に出る僕達。
来ヶ谷「……理樹君と真人君はあっちに逃げろ。私達は反対側へ行く」
そして恭介達に聞こえないよう小さな声でそう指示を出した。
真人「あ? それどういう……」
恭介「ミッション・スタートッ!!」
真人の言葉を遮るように恭介の合図が聞こえてきた。それと同時に僕は真人の手を引き走り出す。
理樹「早く行くよ真人! それじゃあ三人とも、頑張ろうね!」
来ヶ谷「ああ、お互い最善を尽くそう」
クド「わふーっ!! やるからには勝ちますよぉ!」
葉留佳「クド公に同意! 目指せ遊園地!」
真人「ああっ! 理樹! ちょっと落ち着いてくれぇ!」
☆
五分くらいは走っただろうか。気づけば僕と真人は理科室の近くを通っていた。
真人「お、とりあえずここに隠れるのはどうだ?」
理樹「理科室か……」
ふと、前やった肝試しを思い出す。クドに聞いた話だと、入ると同時に人体模型が倒れてきて小毬さんが驚いたんだっけ。
……まさか、僕らの行動を読んだ恭介が予め何か罠を仕掛けてるなんてことはないよね?
真人「ただ逃げ回るより身を隠して体力を温存するのも大事だと思うぜ」
理樹「……わかった。それじゃあ行こうか」
まず真人が中に入る。そこで人体模型が倒れてきて――なんてことにはならず、理科室に変なところは見当たらなかった。どうやら杞憂だったようだ。
真人「ほー……隠れそうな場所はロッカーと机の下と観葉植物の後ろってくらいか」
理樹「観葉植物の後ろって隠れれるの……?」
絶対に隠れきれないと思う。
真人「で、どうするよ理樹。 どこに隠れる?」
真人「ちなみにオレはロッカーに隠れるぜ。つーかあそこ以外にオレの筋肉を受け入れてくれなさそうだ」
確かに真人は体格があるからなぁ……。
↓2
・ロッカー
・机の下
・観葉植物の後ろ
・隠れない
ロッカー
机の下
真人が隠れる以上、僕までロッカーに入ったら狭くなるし観葉植物は論外。
……となると、机の下しかないか。
理樹「僕は机の下にするよ」
真人「オーケー。じゃあオレはとっとと隠れるとするぜ」
真人「っしょ……っと。うわ、ごちゃごちゃしてんな中」
さて、僕も隠れないと……。
☆
「よいしょ~。盗人はいないかなぁ~?」
さらに数分後。理科室の扉が開いて誰かが中に入ってきた。
机の下からじゃ足と声しかわからないけど、すぐに小毬さんだというのがわかる。
小毬「うーん……理科室には良い思いでがないんだよねぇ」
やっぱり前の肝試しがトラウマになりつつあるみたいだ……。
だけど、意外にも度胸のある小毬さんは引き返すなんてことはせずじっくりと中を見渡しているようだった。このままくまなく探されたらいずれ見つかるだろう……。
小毬「ふぇ!? このロッカー動いてる!?」
小毬さんの驚く声と真人が隠れているロッカーが動く物音が聞こえてくる。何してるのさ真人……。
真人「うわあああああ!!」
小毬「いやあああああ!?」
突然真人が叫び声と共にロッカーから飛び出してきた。真正面に立っていた小毬さんは悲鳴をあげて倒れてしまう。
……あ、ここからだとパンツ見えそう。じゃなくて!
理樹「ま、真人何やってるのさ!?」
真人「おう。あのままじゃいずれ見つかるだろうからな。ちーとばかし本気出させてもらったぜ」
理樹「本気出しすぎて気絶してるみたいなんだけど……?」
確かにロッカーの中から筋骨粒々の男子が突然出てきたら女子としては驚くだろうけど。
真人「オレの筋肉の衝撃に負けちまったんだな……」
理樹「それはともかく、あれだけ騒がれたら他の人達にも気づかれるよ!」
これほど来ヶ谷さんが味方でよかったと思うことはないだろう。あの人女の子の悲鳴にはすぐ駆けつけるからなぁ……。
そうやって真人を連れて場所を変えるべく理科室を後にする。
ごめんね小毬さん……恨むなら真人の筋肉を恨んで……。
☆
唯湖「む。今小毬君の悲鳴が聞こえた気がしたぞ」
クド「こ、小毬さんに何があったんですか!?」
葉留佳「追い詰められた泥棒に返り討ちにされた……とか?」
唯湖「どうだろうな……」
理樹君か真人君の仕業だろう。もしくは二人の仕業か。
いやいや、小毬君にあれだけの可愛らしい悲鳴を出させるとは……何をしたというのか。
私とクドリャフカ君、葉留佳君がやって来たのは裏庭であった。私がよく入り浸るお気に入りの空間だ。
葉留佳「で、でもこんなところ本当に大丈夫なんですか? 隠れる場所も無さすぎて見つかりやすそうなんですけど……」
唯湖「大丈夫だ。隠れる場所が無いということは、警察が出てきても反応しやすいということだからな」
クド「そ、それは確かに!」
葉留佳「つまり警察に見つかったらその先は……」
唯湖「反応速度と、体力勝負だな」
どれだけ早く相手の気配に気づき、その相手を振り切れるか。そこが大事だ。
葉留佳「姉御はともかく、私やクー公は厳しいと思うんすけど……」
クド「恭介さんや宮沢さんから逃げられる自信がないです……」
唯湖「そこは気合いで何とかするんだ」
と、近くの草影から誰かの気配を感じ取れた。
葉留佳「ど、どうしたんですか姉御?」
私の様子に気づいた葉留佳君が小声で尋ねてくる。
唯湖「気を付けろ。誰かそこにいるぞ」
クド「ほ、本当ですか!?」
葉留佳「撤退用意! 撤退用意!」
すぐさま逃げる準備をするクドリャフカ君と葉留佳君。
そんな二人を尻目に私はその気配の主に話しかける。
唯湖「誰かはわからないが、来るなら来い。このまま隠れっぱなしなら、遠慮なく逃げさせてもらうぞ」
すると、草影から姿を現した人物が一人。
↓1コンマ下一桁が
0、1なら恭介
2、3、8なら謙吾
4、5、9なら鈴
6、7なら美魚
うりゃ
唯湖「鈴君か……」
鈴「くるがやとクドとはるかか」
クド「鈴さん!?」
葉留佳「やいやい! 鈴ちゃん風情がこのはるちんを捕まえられるとでも――あいたっ」
余計なことを言いかねない葉留佳君の頭を小突いておく。
唯湖「鈴君の身体能力は認めているが、一対三で捕まえられるとでも思っているのかな?」
鈴「確かにあたしじゃクドを捕まえるのが精一杯だ」
クド「私は捕まえられる前提なのですかー!?」
鈴「はるかのように逃げるのに慣れてるのが相手じゃ、少なくとも今回は取り逃がす。猫と同じだな」
葉留佳「あれれ? はるちんと猫がイコールで結ばれてる?」
唯湖「ならどうする? このままクドリャフカ君だけ捕まえる気か?」
唯湖「だがクドリャフカ君一人くらいなら私が担いで逃げ切ってみせるぞ?」
鈴「……いや、何もしない」
首を横に振って否定する鈴君。
葉留佳「何もしないって……試合放棄ってこと?」
クド「諦めたらそこで試合終了なのですよ!」
鈴「ああ。だから、あたしじゃない人に捕まえてもらうんだ」
そうして意味深に笑う鈴君の視線は――私達の後ろに向けられていた。
唯湖「させんっ!」
葉留佳「ええっ!?」
クド「わふーっ!! 捕まったのです!?」
私だけがその襲撃者から逃れるものの、葉留佳君とクドリャフカ君は捕まってしまった。
恭介「ナイスだ鈴!」
その襲撃者である恭介氏がにやりと笑って鈴君に親指を立てる。
葉留佳「姉御! 今のうちに逃げて!」
クド「来ヶ谷さんだけでも生き延びるのです!」
来ヶ谷「……すまないっ、必ず助けてみける」
その隙を狙うように二人が逃げるよう促すものだから、私もそれに従いこの場から去ることにした。
恭介「来ヶ谷は見逃してやるとしよう。ほれ、お前らは牢屋に連行な」
恭介「鈴は引き続き捜索に行ってくれ」
鈴「わかった」
☆
廊下を走っていると、不意に携帯がメールを着信したようだった。
理樹「恭介から……?」
差出人は恭介。すぐに内容を確認する。
『三枝と能美を捕まえた。あと言い忘れていたが誰かを捕まえる度にメールで全員に知らせるものとする』
理樹「三枝さんとクドが、捕まった……?」
暑いから今日はここまで(∵)
しかし、二人は五人衆の中でもry…
乙
乙
続きを楽しみに待つ
乙
葉留佳があっさり捕まるとは意外
真人「おいおい、クー公はともかくとして三枝がもう捕まるだなんて意外だな」
理樹「そうだね……いつも風紀委員から逃げてるのに」
来ヶ谷さんと一緒で安心しきっていたのか、それとも単純に不意を狙われたのか。
ともあれ一度に二人も捕まったのは痛手だ。これで僕らの他には来ヶ谷さんのみが生存ということになる。
真人「つーか、どうするよ。二人を助けに行くって選択肢もあるにはあるけど」
理樹「見張りが誰なのか、それが重要だよね……」
小毬さんは理科室で気絶してるから除外するとして、残りは恭介・謙吾・鈴・西園さん。
一人だけというのは考えにくいだろうから、おそらく人数としては二人なんだろうけど……。
理樹「電話……? 来ヶ谷さんからだ!」
携帯の画面を確認すると、そこには来ヶ谷さんの名前が。
真人「来ヶ谷から?」
理樹「うん。……もしもし?」
唯湖『理樹君だな? 恭介氏からのメールは読んだか?』
理樹「うん」
唯湖『そうか。……すまない、完全に油断していたよ』
理樹「来ヶ谷さんが油断したなんて珍しいね」
唯湖『だが、これで警察側の采配が読めたぞ。牢屋での見張りが謙吾少年と美魚君で、それ以外が私達を捕まえに来ている』
理樹「それじゃあそっちに行ったのは恭介と鈴ってこと?」
あの二人はなんだかんだで仲が良いし、兄妹だけあって息も合っている(はずだ)。
理樹「……ん? でも、小毬さんが見張りじゃないってよくわかったね?」
来ヶ谷『彼女の可愛らしい悲鳴が聞こえてきたからな』
ああ、そういうこと……。
理樹「とにかく、情報ありがとう。それで、三枝さんとクドはどうする? 助けに行くんだったら一旦合流しよっか?」
来ヶ谷『そうだな。それじゃあ三年E組の教室に集まるとしよう。この時間ならまだ教室に残ってる生徒は居ないだろうしな』
理樹「了解」
通話を終了し、携帯をポケットに戻す。
真人「来ヶ谷はなんて?」
理樹「三年E組の教室に集合だってさ。そこで今後の作戦会議」
真人「三年の教室? どうして?」
理樹「人が居なさそうだから、じゃない? この時期なら三年生は進学だの就活だのでやることがたくさんあるだろうし、放課後に教室に残ってる人は居ないんじゃ……」
と、ここで恭介の顔が浮かんできてしまう。
……恭介の就活はどうなってるんだろうか。今度訊いてみるのも悪くないかもしれない。
真人「……なあ、オレらのリーダーって結構アホなことばっかやってるのな。今更だけど」
理樹「そのアホな人がリーダーをしてる集団に属してるんだよ僕らは……」
何はともあれ、僕らは三年E組の教室に行くことにした。
☆
恭介「イャッホォォォォウッ!! 三枝と能美、ゲットだぜ!」
牢屋の見張りを担当することになったわたしと宮沢さんのところに恭介さんがそう言って三枝さんと能美さんを引き連れ戻ってきました。
葉留佳「ちょっと~! まるで人を野生のモンスターみたいに言わないでくださいよ~!」
恭介「へっ……真っ赤なボールさえあったら本当に捕まえちまうんだがな……」
クド「わふっ!? 私達、戦いに駆り出されてしまうのですか!?」
美魚「……拘束は美しくないです」
謙吾「西園、お前の着眼点が結構ズレてるように思えるのは気のせいか?」
もしも葉留佳が捕まってなかったら(21)を捕まえている危ない恭介にしか見えないな
美魚「……そんなことはないと思いますよ?」
謙吾「そ、そうか?」
恭介「さて。三枝と能美はここで待機な」
恭介「他の泥棒にタッチされた場合に限り逃亡を許可する。それまでは自分の罪を数えて懺悔しておけ」
恭介さんの指示に従い、三枝さんと能美さんの二人が教室の中の方へ入っていきます。
葉留佳「罪って、別にそこまで悪いことはしてませんヨ?」
クド「ちょっと悪いことはしてるんですか?」
葉留佳「やはは、ノーコメントで」
美魚「まあ、二人を助けに来た人を阻止するのがわたし達の役目なのですが」
謙吾「ああ。誰が相手だろうが俺は一歩も引かんぞ」
恭介「来ヶ谷が相手でもか?」
謙吾「当然。全力を尽くすと誓ってやろう」
控え目に言っても泥棒組で一番の驚異であるはずの来ヶ谷さんを相手にしても全力を尽くすと断言する宮沢さん。まさに漢と呼ぶに相応しい人です。
恭介「今は鈴が他の三人を捜しに行っている。見張りは引き続き西園と謙吾に頼んでもいいか?」
美魚「それは構いませんが……」
恭介「俺は小毬を回収しがてら鈴と合流して三人を捜す。任せたぞ二人共」
謙吾「了解だ」
恭介さんが教室を出て行き、この場に残ったのはわたしを含めた四人が残ることになりました。
謙吾「それで? 残りの三人はどこから来ると西園は予想している?」
謙吾「こっちの司令塔は恭介と西園だ。是非お前の意見を聞かせてくれ」
美魚「いつの間に司令塔になったのかは疑問ですが……」
美魚「開始して短時間で二人が捕まったのはあちらにとっては痛手でしょうから、何としてでも助けに来ると思います」
謙吾「残りは理樹と真人と来ヶ谷の三人。身体能力的には申し分ないメンバーではあるが……」
美魚「井ノ原さんという不安要素がある以上、どう転んでもデメリットは付きまとうでしょうね」
謙吾「……意外と毒を吐くタイプだよな西園って。それとも、ただ負けず嫌いなだけか?」
美魚「どうでしょうか……」
何はともあれ、多少の不安要素があるといってもほぼ隙のないメンバーであることは間違いないです。どういったことをしてくるのか……。
葉留佳「おろ? 今、そっちの窓際から変な音がしませんでした?」
不意に三枝さんがそんなことを言いました。
クド「変な音、ですか?」
葉留佳「うん。えっと、確かそっちの……」
謙吾「待て」
三枝さんが物音の確認をしようとしますが、それを宮沢さんが阻止します。
謙吾「俺が確認しよう。これがお前らの作戦である可能性もあるからな」
謙吾「だから二人はそこから動くな」
葉留佳「へーい……」
謙吾「どれどれ……?」
三枝さんが示した窓を開け、身を乗り出して確認する宮沢さん。
しかしそこには何も無かったらしく、首を振ってこちらに戻ってきました。
美魚「どうでした?」
謙吾「これといって変なところはなかったな。三枝の勘違いだろう」
葉留佳「ありゃ、そうでしたか」
三枝さんの返事はそこまで残念そうでもありません。これが三枝さん達の作戦の一つだとしたら、失敗に悔しがると思うのですが……。
謙吾「さあ、気を取り直してゲームに戻るぞ。遊園地の奢りを賭けた真剣勝負だからな。こっちとしてもそう簡単に負けるつもりは――」
すると、宮沢さんの言葉を遮るように教室の扉が開きました。
恭介さんでも、鈴さんでもない。その人物は……。
葉留佳「姉御!」
唯湖「助けに来たぞ!」
クド「ありがとうございます!」
謙吾「まさか正面勝負をするだなんてな。だが……」
来ヶ谷さんの目の前に宮沢さんが立ちはだかりました。
謙吾「悪いが、逃がすつもりはないぞ」
来ヶ谷「…………」
その気迫に気圧されたのか来ヶ谷さんが一歩後ずさりをし、そのまま廊下の向こうへと走り去ってしまいました。
謙吾「待て!」
美魚「宮沢さん……!!」
来ヶ谷さんを追いかける宮沢さん。最大の驚異である来ヶ谷さんを捕まえられそうという現実に焦りが生じたのか、わたしの声が届くこともありませんでした。
美魚「ど、どうしましょう」
これでこの場に残っている警察はわたし一人。未だ姿を見せない直枝さんや井ノ原さんがこの隙に来てしまったら、運動神経の悪いわたしには阻止することができそうにありません。ほぼ間違いなく三枝さんと能美さんの逃亡を許してしまうでしょう。
美魚「と、とにかく恭介さんに電話を……」
ルール上、携帯電話の使用は禁止されていません。なので恭介さんに今の状況を連絡するべく携帯電話を取り出そうとした瞬間――意外な場所から声が聞こえてきました。
「筋肉が窓から失礼しまーっす!!」
今回は終わりだぁぁぁぁぁ! 恭介ぇぇぇぇぇ!
乙
まだ待てってのかい?
ほ
ほしゅ
はよ
まさか、終わりってのは打ちきりだったのか
俺たちの戦いは始まったばかりだ!
まだか
このSSまとめへのコメント
再開を待ってるぜ!