小梅「あの子がいなくなった」 (86)

※いろいろと捏造してるので、原作設定と違うところがあります

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1466248507

小梅「すぅ……」

小梅「……」

小梅「……」ピリリ

小梅「……んぅ?」ピリリ

小梅「あさ……?」ピリリ

小梅「……」カチッ

小梅「……んぅ」

小梅「おはよ……」

小梅「……」

小梅「……あれ?」

小梅「……いない?」

小梅「……」キョロキョロ

小梅「……」キョロキョロ

小梅(……どこにもいない)

小梅「……」

小梅「出かけてるのかな……?」

小梅「どこだろう……事務所とか……?」

小梅「……」

小梅「……うん、きっと」

小梅「私も……着替えて行こう……」

小梅「……」

小梅(……でも……初めてかも……)

小梅(起きてあの子がいないなんて……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



小梅「おはようございます……」

幸子「あ、小梅さん、おはようございます」

輝子「フヒ……おはよう……」

小梅「あ……二人とも、おはよう……」

小梅「……」キョロキョロ

幸子「……何を探してるんですか?」

小梅「ううん……あの子が……」

幸子「あの子――はっ!」クルッ

輝子「……急に振り返ってどうしたんだ?」

幸子「いえ……前に小梅さんに脅かされたことがあったので……」

幸子「今みたいに、『あの子が……幸子ちゃんの後ろに』って言った後、誰かが肩をポンと叩いて……」

幸子「……うぅ、思い出すだけで鳥肌が立ちます」

輝子「な、なるほど……」

輝子「でも、後ろ振り返って……どうするつもりだったんだ?」

幸子「そりゃあ、後ろを振り返って、姿を見れば驚くことも無いでしょう!」

輝子「いや、あの子は見えないと思うが……」

幸子「……」

幸子「そうでした……」

小梅「……」キョロキョロ

輝子「そ、それで……あの子がどうしたんだ?」

小梅「ううん……あの子はいないのかなって……」

幸子「一緒じゃないんですか?」

幸子「……もしかして、どこかでボクを脅かすために隠れてるとか……?」

輝子「見えないのに隠れる……って……ふふ、変なの……」

小梅「ううん、今日はそういうことも話してないから……違うと思う……」

幸子「話してる日もあるんですね……」

小梅「あの子も幸子ちゃんのリアクションは楽しくて好きって言ってたよ……?」

幸子「そんな風に褒められても嬉しくありません!」

小梅「ふふ……」

小梅「……で、えっとね」

小梅「あの子……今日、まだ見てないの」

幸子「小梅さんが、ですか?」

小梅「うん……いつも、朝おはようって言って……それから今日はどうするかとか話すんだけど」

小梅「今日は、起きても誰もいなかったの……」

小梅「……幸子ちゃんたちも、見てない?」

幸子「ボクたちはそもそも見えませんが……」

小梅「あ、そっか……」

輝子「ただ……事務所の中で……勝手に花瓶が動いたとか、誰かに触られたとか……そういうのは無い」

輝子「あったら、幸子ちゃんは今頃気絶してるはず……フヒ」

幸子「ボクを判断材料に使うのやめてください!」

小梅「そっか……どこ行ったんだろう……」

幸子「……」

輝子「……」

モバP「……」ガチャ

モバP「お、3人ともおはよう」

小梅「あ、プロデューサーさん……」

輝子「おはよう……フヒ」

幸子「おはようございます!」

幸子「今日もカワイイボクをその目に焼き付けてくださいね!」

モバP「ああ」

モバP「今日のストアイベントで幸子のカワイイ姿が見れるのを楽しみにしてるぞ」

幸子「楽しみにする必要なんて無いですよ」

幸子「だって、ボクはいつでもカワイイですから!」

モバP「はは、そうだな」

モバP「もちろん二人のカワイイ姿も焼き付けるからな」

輝子「カワイイ姿か……で、できるかな……?」

輝子「できないよな……む、無理……無理だ……」

輝子「すまん親友……」

モバP「いや、十分カワイイから大丈夫だ」

輝子「フヒ……!?」

小梅「私……」

モバP「ん?」

モバP「小梅もカワイイから大丈夫だぞ」

小梅「カワイイ……って……ふふ……えへへ」

小梅「……って、あの、そうじゃなくて……」

モバP「違うのか?」

小梅「うん……あのね……」

小梅「今日、あの子がいないの……」

モバP「あの子……」

小梅「朝起きてもいなくて……事務所にきてもいなくて……」

小梅「ちょっと……不安……」

モバP「……」

小梅「……あ!」

小梅「でも、あの、お仕事は……がんばるから」

小梅「大丈夫……」

モバP「……」

モバP「……無理しなくてもいいぞ?」

小梅「ううん、大丈夫……」

小梅「大丈夫だから……」

モバP「……」

幸子「……」

輝子「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


幸子「こんにちは!」

幸子「世界で一番カワイイ輿水幸子と!」

輝子「えっと……ほ、星輝子と」

小梅「……」キョロキョロ

幸子「……小梅さん!」

小梅「あっ……ご、ごめん」

小梅「……えっと」

小梅「いっぱいいて……みんなのこと、つい、見てて……」

幸子「そうですね、お客さんいっぱいいますからね!」

輝子「お客さんのことじゃないと思う……フヒ」

幸子「いいえ、お客さんのことです、絶対そうです、絶対そうに決まってます!」

幸子「……とにかく、ボクたちは見る側じゃなく見られる側です!」

幸子「だから、小梅さんも、ちゃんと自己紹介をお願いします!」

小梅「えっ……じゃ、じゃあ」

小梅「世界で一番カワイイ白坂小梅です……えへ」

幸子「ちょっと、ボクの口上を真似しないでくださ――って、ボクのときより拍手多くないですか!」

小梅「えへへ……ありがと……♪」

幸子「む~っ!」

幸子「悔しいから、もう一回ボクが自己紹介します!」

幸子「すぅ……」

幸子「世界で一番カワイイ輿水幸子です!」

幸子「……よしっ!」

幸子「ボクの方が拍手多かったですね、見ましたか小梅さん!」

小梅「あ……うん……負けちゃった……ふふ」

幸子「フフーン!」

………………

…………

……











モバP「お疲れ様、三人とも」

幸子「あっ、プロデューサーさん!」

幸子「どうでしたか?」

モバP「可愛かったぞ」

幸子「フフーン、当然です!」

幸子「なんていったって、宇宙で一番カワイイボクですからね!」

モバP「そうだなー」ナデナデ

幸子「わぷっ!」

幸子「も、もう、撫でるなら撫でるといってください!」

輝子「撫でられるのは止めないんだな……」

幸子「褒められるのはやぶさかではありませんから!」

幸子「むしろ、もっと褒めてください!」

モバP「今日の幸子は素敵だったな、輝いていたぞ」ナデナデ

幸子「フフーン!」

モバP「輝子も、お疲れ様」ナデナデ

輝子「ひゃっ……!」

輝子「し、親友……これ、恥ずかしい……」

輝子「誰かに見られてる……かも」

モバP「はは、ここに入ってくるのなんてスタッフくらいしかいないから大丈夫だ」

輝子「スタッフに見られてるぞ……!?」

モバP「よーしよーし、がんばったなー」ナデナデ

輝子「う……あうぅ……」

モバP「それと――」

モバP「――小梅は?」

幸子「小梅さんですか?」

幸子「さっき、『ちょっと……』っていってあっちに行きました」

モバP「ん、そっか」

モバP「ありがとう、行ってみる」

幸子「あ、ボクも行きます!」

幸子「……ちょっと心配ですから」

輝子「私も……」

モバP「……そうか」

モバP「じゃ、行こう」

幸子「はい!」

輝子「おう」

輝子「あ……いた……」

小梅「――うん――――うん」

幸子「誰かと話してる……?」

幸子「……きっと、携帯で電話してるんですね!」

輝子「げ、現実を見ろ……」

幸子「いやです、絶対携帯です!」

小梅「――そっか」

小梅「ありがとね――」

モバP「……話は終わったか?」

小梅「あ、プロデューサーさん……」

小梅「それにみんなも……」

輝子「何聞いてたんだ……?」

小梅「あの子を見てないか……って」

小梅「でも、この辺では見てないみたい……」

輝子「……そ、そうか」

小梅「うん……」

幸子「だ、誰と電話してたんですか……?」

小梅「……ううん、電話じゃないよ」

小梅「ほら……そこに……!」

幸子「ひぃぃっ!」

小梅「幸子ちゃん、やっぱり素敵……」

輝子「ぷ、プロだな……」

幸子「好きでやってるわけじゃありません!」

幸子「まったく……」

小梅「ふふ……」

小梅「……」

小梅「……でも……本当にどこに行ったんだろう……」

小梅「……」

幸子「……」

幸子「……じゃ、じゃあ」

幸子「みんなで探しに行きましょう!」

小梅「!」

輝子「そ、そうだな……」

輝子「このままじゃ……」

小梅「……ご、ごめん」

小梅「さっきも……ずっと、どこかにいないか気になってて……」

幸子「……まあ、そうだとは思ってましたけど」

輝子「認めようとしなかったくせに……」

幸子「それとこれとは別です!」

幸子「このままだと小梅さんも仕事に身が入りませんから」

幸子「3人で探して、見つけて、大団円で、いつものボクたちです!」

小梅「幸子ちゃん……」

輝子「フヒ……賛成だ」

輝子「一人じゃ見つからなくても三人寄れば見つかる……かも」

小梅「輝子ちゃん……」

輝子「だけど……」

輝子「幸子ちゃんは大丈夫なのか……?」

幸子「……」

輝子「見えないモノを探すってことだけど……」

幸子「わかってますよ!」

幸子「だから見てください、カワイイボクの手が震えています!」

幸子「すごく震えています!」

輝子「お、おう……」

幸子「ですが!」

幸子「大切な小梅さんのためですから!」

幸子「我慢します!」

幸子「いや、我慢なんてする必要もありません、余裕です!」

幸子「ボクはカワイイですから!」

小梅「……」

輝子「カワイイは関係あるのか……?」

幸子「ありますよ!」

幸子「カワイイはすべてにおいて優先されるんです!」

幸子「カワイイがあれば、なんにでも打ち勝てるんです!」

輝子「そ、そうか……」

小梅「……」

小梅「……ふふ」

小梅「ありがとう、二人とも……!」

幸子「いえいえ」

輝子「礼を言われることじゃない……フヒ」

輝子「仲間だからな……」

幸子「はい!」

小梅「……!」

小梅「……私」

小梅「一人で、これから、探しに行こうと思ってたんだけど……」

小梅「二人が一緒にいるなら……とっても心強い……!」

幸子「ふふっ」

小梅「フヒ……♪」

幸子「……と、いうわけでプロデューサーさん!」

幸子「ボクたち、ここから歩いて帰りますから!」

モバP「ん、そうか」

モバP「すまん、俺も手伝ってやりたいんだが、別に仕事があるんだ」

小梅「ううん……気持ちだけでも、嬉しい」

小梅「ありがとう……プロデューサーさん」

モバP「いや」

小梅「それじゃ、行ってくるね……」

モバP「……あ、ちょっと待ってくれ」

小梅「……?」

モバP「……今日、よくがんばったな」ナデナデ

小梅「あっ……」

小梅「……えへへ」

小梅「ありがとう……」

小梅(その後、三人で色々な場所を探した)

小梅(あの子と一緒に行った場所をたくさん)

小梅(それでも、あの子はどこにもいなかった)

小梅(……もしかして、寮に戻ったら)

小梅(そう思って部屋に入ったけど、やっぱり誰もいなかった)

小梅(……そんな予感はしてたけど、でも、悲しかった)

小梅(悲しかった……)

小梅(……)

小梅(あの子はどこに行ったんだろう)

小梅(ねぇ、どこに行ったのと聞いても返事は返ってこない)

小梅(そこにいないんだから、当然だけど)

小梅(……どこに行っちゃったんだろう)

小梅(……)

小梅(……朝起きたら、もしかしたら)

小梅(そんな気持ちが頭をよぎって)

小梅(冷たいベッドに入る)

小梅(いつも一人で入ってるけど)

小梅(今日は……今日だけは)

小梅(特別、広く感じた)

小梅(……)

小梅(……)

小梅(……)

============================


「小梅ちゃん、あそぼ!」

小梅「えっ……」

昔の記憶

これは幼稚園の時

このときはまだ、あの子と出会ってなくて……

引っ込み思案で、人と話せなくて

人が怖くて

おびえて、おびえて

小梅「……ぇぅ……あ……」

小梅「わ……わたし……いぃ」

「……そう」

「じゃ、みんな、行こっ!」

小梅「……」

独りだった

外で遊ぶみんなの姿を見て……目をそらして

人形や折り紙で遊んでた

独りで遊んでた

小梅「……」

時折、ちらちらと外を見て……それでも目をそらして

手元にだけ目を向けて、遊び続ける

小梅「……」

……そんな私のところに現れたのが

『何してるの?』

あの子だった

小梅「ぇ……?」

『みんなと遊ばないの?』

小梅「……わ、私」

小梅「こっちの方が……楽しい、から……」

『本当に?』

小梅「え……う、うん……」

『ふーん』

小梅「な、何……?」

『じゃ、私も遊ぼっと』

小梅「え……?」

『折り紙貸してね』

小梅「え……え……?」

『~♪』

『できたっ、鶴!』

小梅「わ……すごい……」

小梅「じゃ、なくて……あの……」

『ん?』

『遊んじゃダメ?』

小梅「……いや……え……ぁぅ」

小梅「ダメじゃない……けど……」

『じゃ、いいじゃん』

『次の折り紙貸してー……何折ろうかなー?』

小梅「……」

私は、急に現れた顔も知らないあの子にびっくりしてて

でも、上手く話せなくて

あの子は、そんな私を気にも留めず、折り紙で遊んでた

『次のもできたー♪』

『小梅ちゃんは?』

小梅「え……私……?」

『うん、何か折れたー?』

小梅「う……うん……一応……しゅりけん……」

『……わっ!』

『すごい上手!』

小梅「えっ……そ、そんなこと……」

『ううん……ほら、すごいきれいに飛ぶ!』

『えいっ……あははっ!』

小梅「あ……」

小梅「……ひ、拾わなきゃ」

『あ、ううん、私が取ってくるよ』

小梅「!」

あの子は空を飛んで、自分が投げたしゅりけんを取りに行った

……私と同じ体で、空を飛ぶ人

そんなの、ぜんぜん見たこと無かった

『ほら、とってきた』

小梅「す、すごい……!」

小梅「どうやって飛んだの……!?」

『ふふっ、すごいでしょ』

『だから、こうやって空も飛べるし……壁だって通り抜けちゃう』

小梅「!」

小梅「す、すごい……すごい……っ!」

小梅「どうやってやってるの……!?」

『ふふ、どうやっても小梅ちゃんには出来ないよ』

小梅「そうなんだ……」

『飛んでみたかった?』

小梅「うん……」

『……もしかしたら、いつか飛べるようになるかもね』

小梅「ほんと……!?」

『かもだけど』

小梅「……が、がんばらないと……」

小梅「……」

小梅「どう……がんばったらいいの……?」

『ふふ、秘密』

小梅「……むぅ」

「ただいまー!」

小梅「あ……!」

小梅「ね、ねぇ……!」

「ん、どしたの?」

小梅「あのね……こ、この子、すごいんだよ……!」

小梅「空を……びゅって、とんだり……!」

小梅「壁を……ひょいって、進んだり……!」

小梅「すごいんだよ……!」

「……?」

「この子ってどの子?」

小梅「えっ……?」

小梅「ほら……ここ……」

「……?」

「何もいないけど……」

小梅「えっ……?」

「変なのー!」

小梅「あっ……」

『……小梅ちゃんにしか、私の姿は見えないみたい』

小梅「そ、そうなんだ……」

小梅「私……特別……?」

『ふふ、そうだね』

……そう

これが、私と、あの子の初めての出会い

空も飛べて壁も抜けられる、でも私以外に見えることは無い

私だけの特別な友達との出会い

それからも、あの子は私のそばにいた

幼稚園だけじゃなくて……家でも、ずっと

お父さんもお母さんもかまってくれないときなんかは、あの子とずっと話してた

私よりも物知りで

私よりも背が高くて

私よりもすごいことができる

そんなあの子が大好きだった

===========================


小梅「……」ピリリ

小梅「……んぅ」ピリリ

小梅「おはよ……」カチャ

小梅「……」

小梅(……あんな、昔の夢、見るなんて)

小梅「……」

小梅「あの子がいない……」

小梅「……」

小梅(……あんな夢みたから、かな)

小梅(寂しい……)

小梅(ううん……)

小梅(夢を見てなくても……あの子がいないから……)

小梅(寂しい……)

小梅「……」

小梅「……」

小梅(……今日はオフの日)

小梅(でも、目覚ましかけて、早起きした)

小梅(……間違えたからじゃなく)

小梅(あの子を探すため)

小梅(……昨日、行ってないところを、もっと探すため)

小梅「ふわぁ……」

小梅(……いつもはもっと寝てるから)

小梅(ちょっと眠い……けど)

小梅(……でも)

小梅(あの子を探さなきゃ)

小梅「……」

小梅「着替えよ……」

小梅「……うん」

小梅「準備出来た……」

小梅「……」

小梅「行ってきます」ガチャ

小梅「……」

小梅(……こんな早い時間だからかな)

小梅(ぜんぜん人がいない……)

小梅(いつも騒がしいのに……廊下も)

小梅(食堂も)

小梅(談話室も)

小梅(……なんだか、不思議)

小梅(いつもと、見え方がぜんぜん違う……ふふ)

小梅「……」

小梅「……」

小梅(……あの子が一緒だったら)

小梅(寂しくなかったのかな)

小梅「……」

小梅「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


小梅「ね、ねぇ……?」

小梅「あ、うん……久しぶり……」

小梅「……へぇ、あっちの方行ってたんだ……」

小梅「……うん、うん」

小梅「……うん、今日は一人」

小梅「あの子……この前、いなくなっちゃったの」

小梅「ねぇ……あの子、見てない?」

小梅「……」

小梅「……そっか」

小梅「ありがとね……」

小梅「……ううん」

小梅「じゃ、バイバイ」

小梅「……」

小梅「……」

小梅(……しばらく歩いて、目に付いた知っている子たちにあの子を見てないか聞いてみる)

小梅(でも、誰も見たって言う子がいなかった……)

小梅(誰も見てない、知らない……って)

小梅(……あの子はどこに行ったんだろう)

小梅「……」

小梅(思えば一人で外を歩くのって久しぶり……)

小梅(いつもは、幸子ちゃんとか、輝子ちゃんとか……ほかにも、いろんな人と)

小梅(プロデューサーさんと歩くこともよくあったし……)

小梅(それに……)

小梅(あの子も、一緒にいたから……)

小梅(……)

小梅(ずっと……あの子と一緒にいたんだ……私)

小梅「……」

小梅「……」

小梅(……あ)

小梅(みんなと……あの子ともよく来た公園……)

小梅(……いないかな?)

小梅「……」キョロキョロ

小梅「……」

小梅「……あ」

小梅「ね、ねぇ」

小梅「あ……うん」

小梅「うん……今日は一人なの」

小梅「……あのね」

小梅「あの子が、いなくなっちゃったんだけど」

小梅「ここ、来てない?」

小梅「……」

小梅「……そっか、見てない、か」

小梅「ありがとう」

小梅「……えっ?」

小梅「……うん、がんばるね」

小梅(……って言ったけど)

小梅「ちょっと休憩しよう……」

小梅「疲れちゃった……」

小梅(……)

小梅(……休憩終わったら、お昼ご飯食べようかな)

小梅(休憩が続いてる気もするけど……)

小梅(でも、よく行くあの店にいるかもしれないし……)

小梅(……それに、お腹も空いてきちゃったし)

小梅「……」

小梅「……」

小梅(……私)

小梅(あの子に、いっぱい頼ってたんだなぁ……)

小梅(小さいころから、ずっと……)

小梅「……」

小梅(どこに行くにも一緒で……)

小梅(ううん、着いてきてくれてたんだよね、きっと……)

小梅(私のために……)

小梅「……」

小梅(……いなくなったのは)

小梅(私に愛想を尽かしたから……?)

小梅「違うよね……?」

小梅「……」

小梅「……」

小梅「……あ」

小梅(そういえば、昔)

小梅(あの子と、いつか別れるときが来るかもって……そんな話)

小梅(しなかったっけ……?)

小梅(……)

小梅(……)

小梅「……」

小梅「……した」

小梅「あの子……寂しくなくなったら、お別れかもね……って」

小梅「そう言ってた……」

小梅「……」

小梅「今、私、寂しいよ……?」

小梅「……」

小梅「……」

小梅「……」

小梅「……お昼ご飯、食べに行こ」

小梅(その後も、町を歩き回って、いろんな子に聞いてみた)

小梅(それでも、あの子の目撃情報は無かった)

小梅(夜まで歩き続けて、へとへとになっても)

小梅(ひとつとしてなかった)

小梅(……)

小梅(……最後の希望にかけて寮に戻って、部屋に帰っても)

小梅(誰もいなかった……)

小梅(……部屋は、静かだった)

小梅(……)

小梅(……疲れちゃった)

小梅(ご飯食べてないけど……今日、もう、このまま寝ようかな)

小梅(……)

小梅(……)

小梅(どこ行ったんだろう……)

小梅(……会いたいな)

小梅(会いたい……)

小梅(……)

小梅(……)

小梅(……)

=============================


少し大きくなった、小学生の私

そのころには、あの子がどういう存在かっていうのがもうわかってた

あの子は幽霊

私とはちょっと違う存在

……でも

私の大切な友達――

小梅「……ね、ねぇ?」

『ん?』

小梅「さっきの……ここ……ちょっと、わからなくて……」

小梅「……教えてくれる?」

『わかった』

『えっとね――』

小梅「うん――」

「――また一人ではなしてる」

「こわっ!」

小梅「――」

小梅「……二人には、見えないの……?」

「何も見えないわよ」

小梅「そう……なんだ……」

小梅「二人のそばにも……二人と話したい人がいるのに……ね……?」

「……えっ?」

「嘘でしょ……?」

小梅「嘘じゃないよ……ほら……今、手を伸ばして」

小梅「ぽんっ……って」

「――ッ!?」ダッ

「ひゃああぁっ!?」ダッ

小梅「ふふ……驚いてる……驚いてる……」

小梅「手伝ってくれて……ありがとね」

『ううん、別に』

『でも、よかったの?』

小梅「……?」

『あんなふうに脅かしちゃって』

『また、変な風に言われるかも――』

小梅「――だ、大丈夫」

小梅「私……独りじゃないから……」

小梅「ね……?」

『……そうだね』

『私がいるもんね』

小梅「うん……」

小梅「ふふ……♪」

小梅「ずっと一緒だよ……」

『……』

小梅「……?」

小梅「違うの……?」

『……いつかは私も離れちゃうかもね』

小梅「えっ……」

『私だって未練が無くなれば、成仏しちゃうもん』

小梅「あ……そっか……」

……そのころには知識も増えていたから

成仏って言葉も知ってる

ここじゃないどこかに、行っちゃって

二度と会えなくなっちゃうこと

小梅「……いなくなっちゃうの?」

『すぐにはいなくならないよ』

『ただ――』

小梅「……ただ?」

『――小梅ちゃんが寂しくなくなったら、いなくなっちゃうかも』

小梅「……?」

小梅「私……今、寂しくないよ?」

小梅「一緒にいてくれるから……ふふ」

『……そっか』

小梅「寂しくなくても、一緒にいれるなら……」

小梅「……ずっと一緒にいれるね……♪」

『……うん、そうだね』

小梅「ふふ……♪」

大切な友達とずっと一緒にいれる

起きてるときも、寝てるときも、いつだって

……そういえば

このころは、私とずっと一緒にいたんだよね

どこかへふらっと出かけることも無く

ただ、私の隣にずっと……

ずっといた……

ずっといたのに……

小梅「……えっ?」

急に……本当に急に

隣からあの子がいなくなった

小梅「……」キョロキョロ

周りを見渡しても、どこにもいない

私を驚かせるために隠れてるわけでもないみたい……

小梅「……」

小梅「……うぅ」

あの子がいない

それだけで、心が不安に飲み込まれる

寂しい

悲しい

小梅「……うぅ」

教室のみんなはこっちを見ず、それぞれがそれぞれで話してる

それが、なんだか、怖い

怖い

怖い……!

「小梅さん!」

「小梅ちゃん……!」

小梅「えっ……?」

小梅「あ、あれ……?」

幸子ちゃんと輝子ちゃんが、いつの間にか隣にいた

同じ学校じゃないはずなのに……

「カワイイボクと輝子さんが迎えに来てあげましたよ!」

「フヒ……一緒に行こう……」

小梅「行くってどこに……?」

「どこだろうな……」

小梅「えぇ……」

「ついてくればわかります!」

「さぁ!」

小梅「え――きゃっ!」

私の手を取って、二人が走りだす

幸子ちゃんはともかく、輝子ちゃんまで、一緒に走る

しかも、力も強い……引っ張られる……!

座ってた私を引き上げ、そのまま教室の外に出て――

===========================


小梅「!」パチッ

幸子「わっ!?」

輝子「お……起きた……?」

小梅「……あれ?」

小梅「幸子ちゃんに、輝子ちゃん……?」

幸子「ええ、カワイイボクたちです!」

小梅「どうしたの……?」

小梅「というか、なんで……ここに……?」

輝子「フヒ……仕事終わったから、様子を見にきたんだ」

幸子「もう、ドアの鍵をかけないなんて無用心ですよ!」

小梅「……あ」

小梅(かけ忘れてた……)

小梅(……ううん、いつもはあの子がかけてたから――)

輝子「で、中に入ったら小梅が寝てたから……」

輝子「帰ろうと思ったんだけど……」

幸子「小梅さんがうなされてたので」

幸子「……心配になって、もう少しいることにしました」

小梅「そうなんだ……」

小梅「だから、手も……」

輝子「あ、うん……」

輝子「安心できるかな……って」

小梅「……」

幸子「……勝手に侵入してしまい、申し訳ありません」

小梅「う、ううん……!」

小梅「二人が、手を握っててくれたから……だから、安心できた」

輝子「目、覚めちゃったけどな」

小梅「それは――」グゥゥゥ

小梅「……あぅ」

幸子「……もしかして、ご飯食べてないんですか?」

小梅「う、うん……」

幸子「それはいけません!」

幸子「カワイイボクが料理を!」

輝子「……作れるのか?」

幸子「作れないので、食堂でもらってきます!」

輝子「わ、わかった……」

小梅「あ……ううん」

小梅「私……自分で行くよ……?」

幸子「いいえ、小梅さんは寝ててください!」

幸子「ご飯も食べずに倒れるくらいなんですから!」

小梅「別に倒れたわけじゃなくて、ちょっと寝てただけだけど……」

幸子「同じようなものです!」

幸子「とにかく行ってきますね!」

小梅「あ――」

小梅「――行っちゃった」

輝子「フヒ……幸子ちゃんも心配してるんだ……」

輝子「今日も……探しに行ったんだろう?」

小梅「!」

小梅「なんでわかったの……?」

輝子「フヒ……な、仲間だからな……」

輝子「小梅ならそうするだろうって……私も、幸子ちゃんも思ってたんだが……」

輝子「本当だったみたい……」

小梅「……うん」

小梅「今日、一日かけて探したけど……でも、どこにも……」

輝子「……」

小梅「……どこ行っちゃったんだろう」

輝子「……何か、手がかりとかはなかったのか?」

小梅「……」

小梅「……昔、あの子が言ったの」

小梅「『私が寂しくなくなったらいなくなるかも』って」

小梅「私……寂しいのに……」

輝子「……」

輝子「……」ギュッ

小梅「あ……」

輝子「だ、大丈夫だ……きっと見つかる」

輝子「私たちも手伝う……から、な?」

小梅「……」

幸子「ただいま戻りました!」

幸子「――って、何ボクをのけ者にしていい雰囲気だしてるんですか!」

輝子「お……お疲れ、幸子ちゃん」

幸子「お疲れじゃないですよ!」

幸子「ボクも手つなぎます!」

小梅「え、えっ……?」

幸子「小梅さん!」ギュッ

小梅「あ、はい……」

幸子「小梅さんは一人じゃありません!」

幸子「だから、一人で抱え込まないでください!」

幸子「ボクたちに、何でも相談してください!」

幸子「そのための、ボクたちです!」

小梅「!」

幸子「……こんな感じの話の流れでしたか?」

輝子「……いや、だいたいあってるけど」

幸子「フフーン、さすがボクですね!」

輝子「しかし……て、適当に言うのはどうかと……」

幸子「適当じゃありません、わかってました」

幸子「ボクはカワイイですから!」

輝子「えぇ……」

幸子「……それに」

幸子「今のは、小梅さんに伝えようと思ってた本心ですから」

輝子「……それは、そうだな」

輝子「1日中歩き続けて……倒れられると……心配する」

小梅「だ、だから倒れたわけじゃ――」

幸子「――今日ずっと歩き続けてたんですか!?」

小梅「え……あ、うん」

小梅「途中で休憩したりはしたけど……」

幸子「当たり前ですよ!」

輝子「休憩なしで1日中はヤバイ……」

幸子「……明日お仕事大丈夫なんですか?」

小梅「ら、ラジオの収録だから……たぶん……」

幸子「そうですか……」

輝子「フヒ……マッサージでもするか」

小梅「ひゃっ……!」

小梅「足……もまないで……」

輝子「お客さん、こってるな……なんて、フヒ」

小梅「じ……自分でやるから……ひゃぅ」

小梅「くすぐったい……!」

幸子「……わ、本当だ」

小梅「あぅ……幸子ちゃんまで……!」

幸子「えいっ、えいっ」ムニムニ

輝子「っしょ……よいしょ……」ムニムに

小梅「あうぅ……二人ともぉ……!」

幸子「ふぅ……スッキリしました……」

幸子「……じゃなくて、スッキリしましたか?」

小梅「むぅ……」

小梅「やめてって行ったのに……」

輝子「フヒ……小梅ちゃんの足が気持ちよくて……つい……」

小梅「もう……」

幸子「……とにかく」

幸子「無理はしないでくださいね、小梅さん」

小梅「む、無理なんて……」

輝子「いや……今日のは無理してただろ」

幸子「倒れたんですから」

小梅「……た、倒れては」

幸子「じゃあ、言い換えますけど……ご飯を食べずに寝ちゃうのも相当疲れてる証拠です!」

小梅「うぅ……」

幸子「……今日は、私たちもお仕事で手伝えませんでしたけど」

幸子「明日は手伝えますから!」

小梅「あ、明日は私が……お仕事……」

幸子「知ってます」

幸子「たしか、午前中でしたよね?」

小梅「う、うん……」

幸子「なら、午後に三人で探しましょう!」

小梅「……いいの?」

幸子「いいに決まってます!」

輝子「昨日約束しただろ……3人で探そうって」

輝子「別に、昨日だけの話じゃない……」

小梅「幸子ちゃん、輝子ちゃん……」

幸子「明日お仕事が終わったら連絡ください」

小梅「うん……わかった……」

幸子「……あ、でも、もちろんお仕事で疲れてるとかあったら時間を空けてからですからね!」

小梅「ラジオ収録だから大丈夫だと思うけど……」

幸子「わかりませんよ、もしかしたら急に走ることになるかもしれません!」

小梅「ラジオで……!?」

幸子「何があるかわかりませんから、疲れてるようだったら遠慮なく行ってくださいね!」

幸子「無理せずに探していきましょう!」

小梅「……うん」

幸子「さて、それじゃあ話もまとまったところで!」

幸子「……小梅さんのご飯なんですけど……」

幸子「……少し冷めちゃいましたね」

小梅「あ、ううん大丈夫……」

小梅「ありがとう、二人とも……ごめんね」

幸子「いえいえ」

輝子「気にするな……フヒ」

幸子「ほかにも頼りたいことがあったら何でも頼っていいですよ!」

小梅「……」

小梅「じゃ、じゃあ……」

小梅「今日……お泊りしてくれる?」

>>39 訂正


小梅「……いいの?」

幸子「いいに決まってます!」

輝子「昨日約束しただろ……3人で探そうって」

輝子「別に、昨日だけ一緒に探すって話じゃないから……」

小梅「幸子ちゃん、輝子ちゃん……」

幸子「明日お仕事が終わったら連絡ください」

小梅「うん……わかった……」

幸子「……あ、でも、もちろんお仕事で疲れてるとかあったら時間を空けてからですからね!」

小梅「ラジオ収録だから大丈夫だと思うけど……」

幸子「わかりませんよ、もしかしたら急に走ることになるかもしれません!」

小梅「ラジオで……!?」

幸子「何があるかわかりませんから、疲れてるようだったら遠慮なく行ってくださいね!」

幸子「無理せずに探していきましょう!」

小梅「……うん」

幸子「さて、それじゃあ話もまとまったところで!」

幸子「……小梅さんのご飯なんですけど……」

幸子「……少し冷めちゃいましたね」

小梅「あ、ううん大丈夫……」

小梅「ありがとう、二人とも……ごめんね」

幸子「いえいえ」

輝子「気にするな……フヒ」

幸子「ほかにも頼りたいことがあったら何でも頼っていいですよ!」

小梅「……」

小梅「じゃ、じゃあ……」

小梅「今日……お泊りしてくれる?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



小梅「ふふ……ベッドに3人……狭いね……♪」

幸子「そうですね……輝子さん、もっと奥いけないですか?」

輝子「け、結構厳しい……机の下より狭い……」

幸子「そうですか……」

幸子「……落ちないかな……?」

小梅「大丈夫だよ……こうやって、ぎゅって手を握ってたら……」ギュッ

小梅「落ちても私が引っ張ってあげる……ふふ」

幸子「小梅さん……ありがとうございます」

輝子「……じゃあ、私は……幸子ちゃんに引っ張られて小梅ちゃんが落ちたときのために」ギュッ

小梅「あっ……」

幸子「ボクはそこまで重くありません!」

輝子「べ、別にそういう意味じゃなかったんだが……」

小梅「ふふ……♪」

小梅「ありがとう、幸子ちゃん、輝子ちゃん……」

輝子「フヒ……気にするな」

輝子「お泊りなんて初めてじゃないし……」

幸子「そうですね」

幸子「……一緒のベッドは初めてですけど」

小梅「う、うん……狭いね……えへへ」

幸子「それじゃ、おやすみなさい、みなさん」

幸子「また明日」

輝子「お、おやすみ……」

小梅「また明日……」

幸子「……」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「……ひゃっ!?」

幸子「ちょっと小梅さん!」

幸子「急に足をひっつけないでください!」

小梅「私じゃないよ……?」

幸子「……えっ?」

幸子「ち、違うんですか……?」

輝子「ちなみに私でもないぞ……と、届かないし……」

幸子「そうですよね……じゃ、じゃあ……!」

小梅「……実は私だけど」

幸子「小梅さんじゃないですか!」

小梅「ふふ、嘘ついちゃった……♪」

小梅「幸子ちゃんの足、あったかい……」

幸子「もう……!」

小梅「……♪」

幸子「……今度こそ寝ますよ」

小梅「はーい」

幸子「……」

小梅「……」

輝子「……」

============================


また少し大きくなって、中学生の私

あの子以外の友達も、たくさんできてきた

みんな私を違って、空を飛んだり壁をすり抜けたりできる

すごい友達が、たくさん

……でも

やっぱり、一番の友達は、あの子

小さいときからずっと友達の、幼馴染のあの子

家でも、学校でも、お店でも、公園でも

朝も、昼も、夜も

ずっとずっと一緒のあの子

今日だって、一緒に公園に来てる

また新しい友達できるかも……って

一緒に、公園内を歩き回ってる

……でも、この公園も何回も来たから、新しく知り合う子もほとんどいない

みんな知ってる子だから、ちょっとした世間話をしたり

遊んだり

楽しく、楽しく過ごしてる

……そんなところに

「なぁ、何してるんだ?」

小梅「えっ……?」

急に声をかけられた。

「……いや、すまん」

「虚空に向かって話しかけてるのが気になって」

小梅「あ……ぅ」

小梅「……あ……あの」

小梅「あの子と……話してたの……」

「あの子?」

「……?」キョロキョロ

小梅「い、いるよ……ほら、ここ……?」

「……いや、何も見えないが?」

小梅「そ……そうなんだ…………いるのに……」

「ふむ……」

小梅「……」

「……」

小梅「あ……あの……」

小梅「何……?」

「なぁ」

「アイドルにならないか?」

小梅「え……?」

小梅「あ……あの……どういう……?」

「そのままの意味だ」

「あ、俺はこういうものなんだが」

小梅「あ……はい……」

『……プロデューサー?』

小梅「……って書いてる……」

「君に光るものを感じた」

小梅「そんな……私……だって……」

小梅「話すのも……苦手で……」

小梅「あ、アイドルなんて……」

「それでも、俺はできると思ってる」

「それだけのポテンシャルが君にはある」

小梅「え、えぇ……」

小梅「ど、どうしよう……?」

『私はいいと思うよ』

小梅「えぇっ……!?」

『だって、小梅ちゃんかわいいし』

『テレビでフリフリの衣装着て、歌って踊るんでしょ』

『ふふっ、とってもキュート♪』

小梅「あうぅ……」

「……まあ、すぐ返事をしろってのも無理だろう」

「だから、気になったらその名詞に書いてある番号に電話してみてくれ」

小梅「あ、あの……」

「ん?」

小梅「な、なんで……?」

小梅「なんで、私……?」

「……さっきも言ったとおり、光るものを感じたんだ」

小梅「光るものって……?」

「まず、かわいい」

小梅「……うぅ」

「それと、さっきも言ったが光るものを感じたんだ

「……君はたぶん、幽霊と話すことができるんだろう?」

小梅「!」

小梅「な、なんで……わかったの……?」

小梅「見えてる……あ、でもさっき虚空に見えてって言ってた……じゃあ、違う……?」

「……誰もいないのに会話していたみたいだからな」

「それなら、幽霊か妖精か……そういった類と会話ができるんだと思ったんだ」

小梅「……」

『……すごいね、この人』

小梅「う、うん……」

「それはすばらしい長所……特徴……」

「まあ、ともかく、君にしかない特技だ」

小梅「……」

「その特技を活かせば、君はアイドルとして輝ける」

「普段はかわいい……だが、どことも知れぬ恐怖、危うさがある」

「ただかわいいだけじゃない、そんな唯一無二のアイドルに君はなれる」

小梅「……」

「もちろん、これは君自身に魅力があるからできることだ」

「いくらかわいくても、いくら幽霊と話せても、魅力がなければ長続きはしないだろう」

「だが、君ならできる」

「俺はそう思ったから、君をアイドルに誘ったんだ」

小梅「……」

「……それじゃあ」

「少しでも気になったら、また連絡してくれ」

「詳しい話なんかはそのときにでもしよう」

……そういって、その人――プロデューサーさんは去っていった

残されたのは、私と、あの子

小梅「……な、なんだったのかな?」

『アイドルの誘いでしょ?』

小梅「あう……それはわかってるけど……」

小梅「でも……なんで……私……」

『さっき十分話してたじゃん』

小梅「そうだけどぉ……」

『私はいいと思うけどな、アイドル』

『ふふ、どんな格好で踊るんだろう?』

小梅「まだ、やるって、決めてない……!」

『そうだったね』

『でも、ホラー映画とか、ゾンビ映画とかに出れたりするかもよ?』

小梅「!」

小梅「それは……ちょっと、魅力的……かも」

『でしょ』

『じゃ、アイドルになっちゃおうよ!』

小梅「えぇ……」

小梅「な、なんでそんなに……アイドル推してくるの……?」

『……んー』

『小梅ちゃんのアイドルってかわいいと思うし!』

小梅「うぅ……」

『それに――』

小梅「……それに?」

『――』

『――ううん、なんでもない!』

小梅「……?」

その後も、あの子は私にアイドルになるよう推してきた

……私も、少し興味があった

でも、やっぱり、どうしよう……って気持ちもたくさんあった

やってみたい……無理……その二つの気持ちが戦って、戦って、戦って

しばらくたって、プロデューサーさんにはしばらくたって、連絡した

そして、もう一度会って……アイドルに関していろいろなことも聞いて

お母さんたちに承諾もとりにいって……そして、私ははれてアイドルになった

……でも、はじめから順風満帆だったわけじゃない

したい仕事ができたわけでもない

……それでも、私がアイドルを続けられたのはあの子がいたから

あの子が励ましてくれたから、もうちょっと頑張ってみようって気持ちにもなった

……うん

そのころの私は、あの子と二人でアイドルをしてた

そのうち、初めてのファンレターをもらって

こんな私でも、好きになってくれる人がいるんだって

わかって、本当にうれしくなった

もっと頑張ろうって、そう思えた

そうやってアイドルを続けていって

ファンの人もたくさん増えていって

私の友達もたくさん増えていった

……今までの、特別な友達と違って

私と同じ、友達

「小梅さん!」

「小梅ちゃん……!」

幸子ちゃんと輝子ちゃん……ほかにも、たくさん

色々なお友達ができた

そんな友達たちとアイドルをやるのは楽しくて

楽しくやってると、ファンの人も増えて

応援もたくさんもらって

だから、もっとアイドル頑張ろうって

友達たちとアイドルをやって

そうして、今の私になった

今の私を見て、あの子は応援してくれてた

一人のファンのように……

たまに、あの子とステージでも話したりはするけど

それでも……もういつかみたいに、私とあの子の二人でアイドルって感じじゃなくなった


………………

…………

……

==========================



幸子「小梅さん、朝ですよ!」

小梅「……ふぇ?」

小梅「幸子ちゃん……?」

幸子「はい、カワイイ幸子こと、ボクです!」

幸子「目覚ましがなってましたよ」

小梅「あ……ありがと」

幸子「いえいえ」

幸子「ほら、輝子さんも、おきましょう!」

輝子「朝は……苦手……太陽の光とか……無理」

幸子「ドラキュラですか!」

幸子「ほら、輝子さん!」

輝子「む~りぃ……」

幸子「それは他人のネタです!」

小梅「ふふ……♪」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


小梅「それじゃ、また後でね」

幸子「はい!」

幸子「終わったら連絡くださいね!」

小梅「うん……」

幸子「連絡くださいね!」

小梅「わ、わかってるよ……もう」

輝子「フヒ……じゃ」

輝子「が、頑張れ」

幸子「頑張ってくださいね!」

小梅「うん……ありがとう」

小梅「じゃ、行ってきます!」

幸子「行ってらっしゃい!」

輝子「……まあ私たちも部屋は出るんだけどな」

幸子「ずっと小梅さんの部屋にもいられませんからね」

幸子「合鍵持ってるわけでもないですし」

小梅「……いる?」

幸子「いや、別にいいですよ!」

小梅「そっか……」

輝子「な、なんで残念そうなんだ……」

小梅「ふふ……」

小梅「それじゃ、今度こそ、行ってきます」

幸子「行ってらっしゃい!」

輝子「行ってらっしゃい……!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


モバP「お疲れ様、小梅」

小梅「あ、プロデューサーさん……」

モバP「今日の収録よかったぞ」

モバP「小梅らしさが出てたしな」

モバP「……ノイズも乗ったけど」

小梅「ふふ……みんな、楽しくてしゃべりたくなっちゃったんだって」

モバP「そうか」

モバP「みんなをそうさせるほど小梅のしゃべりに魅力があるってことだな」

小梅「そうかな……えへへ」

モバP「……さて」

モバP「どうする?」

小梅「どうする……って?」

モバP「ああ、すまん、言葉が足りなかったな」

モバP「今日の仕事は終わりだが、事務所まで送るか、寮まで送るか……それともほかに行きたいところあるか?」

モバP「……あの子がいそうなところとか」

小梅「あ……」

小梅「えっと……ちょっと待ってね……」

小梅「……」ポパピプペ

小梅「……もしもし、幸子ちゃん?」

小梅「うん……お仕事終わったよ」

小梅「……うん」

小梅「……事務所?」

小梅「わかった……行くね……」

小梅「……うん、また後で」

小梅「……」

小梅「じゃあ、プロデューサーさん……事務所まで、いい?」

モバP「ん、わかった」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


小梅「えっと……ただいま」

「あ、小梅ちゃん!」

「あ、本当だ、おかえり!」

「おかえりー!」

小梅「え……あ、う、うん……」

小梅(ひ、人……いっぱい……?)

幸子「小梅さん、お帰りなさい」

小梅「あ……幸子ちゃん……ただいま」

小梅「なんで、こんなに……いっぱい……?」

幸子「……いや、実はですね」

幸子「午後探すってことにはしましたが、あてはないじゃないですか」

小梅「う、うん……」

幸子「なら、占いなんかである程度場所を絞れないかなと思って」

幸子「いろんな人に声をかけたんです」

小梅「うん……」

幸子「そしたら……その人から、また別の人に伝わったり」

幸子「そもそも、その話を聞いていた人から、また別の人に伝わったり……」

幸子「……そんな感じで」

幸子「これだけの人数が集まりました」

小梅「……」

「我が同胞小梅よ、闇へと消えし其方の半身の捜索……私も手を貸そうぞ!」

「……怖いけど」

「ふふ……蘭子、手が震えてるよ?」

「アンタもね」

「アタシたちがきっと見つけ出してやるからな!」

「ああ、逃げようとしてもアタシが一発KOして捕まえてやるぜ!」

「殴っちゃダメだろ……」

「というか殴れないと思いますが……」

「私が作ったこの幽霊を吸い込む掃除機があれば、すぐに捕まえることができるぞ!」

「うわっ、すご、あのゲームでみたまんまのやつだ!」

「でも、そんなので捕らえたらあの子かわいそうじゃない?」

「う……そうだな……く、この手は使えないか……」

「なら、何か物を使って引き寄せるとか……」

「お化けって何によってくるんでしょう?」

「メガネですね!」

「ドーナツだよ!」

「パンです!」

「いや、どれも絶対違いますよね!?」

「……むしろ、塩をかければよってこなくなるんだから……」

「この事務所を除いた世界すべてに塩を振れば――」

「――どうやってやるんですか、それ!?」

「いや……それは……ほら、ウサミン星の科学で」

「何でそこでナナに振ってくるんですか!」

「頑張れウサミン!」

「ファイトだウサミン!」

「ナナ、がんばっちゃいま~す!」

「って、だからできません!」

「おお……ノリツッコミにゃ……」

「も、もりくぼ……幽霊とか苦手なんですけど……」

「まゆも……でも、小梅ちゃんのため……だから……」

「はい……死力を尽くして頑張るんですけど……見つけたら……たぶん死ぬ……」

「それじゃあ意味ないじゃないだろッ!」

「小梅ちゃんのお友達ですから……怖くないのはわかるんですけど……」

「はい……」

「まったく……しっかりしろよ、お前ら!」

「でも、美玲さんも足震えてますよ……?」

「こっ、これは……武者震い、武者震いだッ!」

「そうですよ、武者震いですっ!」

「幽霊の一人や二人、この剣で一刀両断してみせます!」

「ウチもこれで引っかいてやるぞッ!」

「あの、だから、小梅ちゃんのお友達だから、ダメだからね?」

「私ってほら、何回も入院してるし、臨死体験もしてるし、幽霊見えるから役立つよ」

「臨死体験ってなんだよ!?」

「あはは、それは冗談だよ冗談」

「……幽霊見たことあるの?」

「うんボヤっとだけどね……今も……ほら、凛の隣に――」

「――わあああぁぁっ!?」

「……奈緒が驚くから、驚くタイミング見失ったんだけど」

幸子「……と、まあ」

幸子「こんな感じです」

小梅「……」

小梅「み、みんな……」

「ん、何ー?」

「ちょっと、小梅ちゃんがしゃべるからみんな静かにー!」

「……」

「……」

「……」

小梅「あ、あうぅ……」

小梅「えっと……あの……」

小梅「私のために……集まってくれたんだよね……」

小梅「あの……あ、ありがとう……」

小梅「その……お化け、苦手な人もいるのに……」

「いえいえ!」

「小梅ちゃんのためだもん!」

「ちょっとくらい幽霊が怖いのなんて、がんばりますっ!」

「わかるわ」

「みんなで協力すればあの子なんてすぐ見つかるよ!」

「そうであります!」

「これこそまさに人海戦術!」

「人ならたくさんいるもんね、この事務所……」

「そうね……」

小梅「みんな……」

小梅「……ありがとう」

小梅「ほんとにありがとう……えへへ」

輝子「フヒ……どこにいるか目星がついたぞ」

小梅「あ、輝子ちゃん……」

小梅「目星って……?」

輝子「いろんな人に協力してもらって、どこにいるか調べたんだ」

輝子「その結果――」

「あたしの占いだとここって言ってるわ!」

「サイキック的にはここだって言ってます!」

「探偵の勘としてはここですね!」

「警官の勘としてはここよ!」

「私の情報をまとめた結果……ここね」

「神はここにいると仰られました」

「私はここだと思いますよ~♪」

「ここでしてー」

「私はここだと思うので、ここ以外にいるかと……」

「タブレットで調べた結果、このあたりに目撃情報が……」

幸子「全員違うところ指してるじゃないですか!」

輝子「フヒ……だから人海戦術……」

輝子「この……目星のつけたところを、グループに分けて、いく……」

輝子「で、何か見つけたり、感じたら小梅に連絡して、小梅に見てもらう……って感じだ」

「小梅ちゃんの移動はあたしの車で!」

「アタシらのバイクでもいいぜ、二ケツでな」

「ジェット機も借りてきたわ」

「いや、それは使わないだろ」

「またプロデューサーさんの財布が……」

「……これはさすがに経費で落ちるんじゃない?」

幸子「……まあ、それならできそうですね」

幸子「じゃあ、とりあえず霊感が少しでもある人を分けて、そこからグループを作りましょうか」

幸子「この中で自分霊感あると思う人ー?」

幸子「……なんで全員手を上げてるんですか!?」

幸子「コントじゃないんですよ、コントじゃ!」

「いや、今目覚めた気がして……」

「さっきの小梅の笑顔でアタシは霊感を手に入れた」

「小梅ちゃんのためなら霊を見れる気がする」

「むしろあたし自身が霊になれる気がする」

「加蓮が死んだ!」

「この人でなし!」

「いや、死んでないから、冗談だから!」

幸子「そういった幻覚はいいですから!」

幸子「まじめにやりますよ、まじめに!」

幸子「……じゃ、今度こそ、少しでも霊感のある、霊を見たことがあるって人――」

小梅「……ふふ」

輝子「……ん、どうした?」

小梅「ううん……うれしくて」

小梅「みんな……私のために、集まってくれて……うれしくて」

小梅「ふふ……♪」

輝子「……みんな小梅の仲間で」

輝子「小梅が好きだからな」

小梅「……うん」

小梅「私も、みんな好き……♪」

幸子「……ふぅ、なんとかグループわけも終わりました」

幸子「小梅さんはボクたちと一緒に行きましょうね」

小梅「わかった……お、お疲れ様、幸子ちゃん……」

輝子「お疲れ……じゃあ、後は私に任せろ」

輝子「すぅ……」

輝子「お前らああああああぁぁぁ!」

輝子「小梅のために、全力を尽くして探すぞおおおおおぉぉぉ!!!!」

「おーっ!!」

輝子「小梅の喜ぶ顔がみたいかああああああぁぁぁ!!!」

「おーっ!!」

輝子「小梅を喜ばせたいかああああああああぁぁぁぁっ!」

「おーっ!!」

輝子「なら、持てる力を振り絞って、探すすぞおおおおおおぉぉぉ!!!!」

「おーっ!!」

輝子「じゃあ、解散!!」

小梅「あ……その前に」

小梅「あの……みんな、無理しないでね……?」

小梅「それと……えっと、もう一回」

小梅「……」

小梅「あ、ありがとう……!」

小梅(……その後)

小梅(夜になるまで、みんなで捜索してたけど)

小梅(あの子は見つからなかった)

小梅(いろんな人たちが、幽霊を見つけた、って私を呼んだけど)

小梅(私の知り合いだったり、友達だったり……知らない人だったりで)

小梅(あの子はいなかった)

小梅(……)

小梅(……そして、寮に戻って)

小梅(部屋に戻って……)

小梅(また一人)

小梅(……)

小梅(……でも)

小梅(この前と違って、寂しくない)

小梅(ううん、寂しい、あの子がいないのはやっぱり寂しい)

小梅(……けど)

小梅(なんだか、胸がぽかぽかしてる)

小梅(みんなが探してくれたから……?)

小梅(きっと、すぐ見つかるって核心がもてたから……?)

小梅(……)

小梅(……ううん)

小梅(そうじゃなくて)

小梅(私、みんなが好きで)

小梅(きっとみんなも、私のことが好きで)

小梅(私にはあんなにたくさんの友達がいたって再確認できたから……かな?)

小梅(ふふ……)

小梅(……)

小梅(……)

===========================


私がアイドルになってから、あの子は私をファンとして私を見ていた

もちろん、たまにステージで手伝ってもらうこともあったけど

それでも、基本的にはファンとして私を見ていた

……そう

この辺りから、あの子は私と別行動をとることが多くなった

私がステージ、あの子が観客席の最前列ってくらいの距離もあったけど

もっと、それ以上……たとえば、私がテレビ番組を収録してるとき、寮の私の部屋にいたりとか

今まで見たく、ずっと一緒ってことはなくなった

どんどん、あの子と私が離れていった

あの子は寂しくなかったのかな……?

……ううん、寂しくなかった

だって、私が元気にステージに出てる姿を見て喜んでたんだもん

まるで自分のことみたいに

一人で部屋にいるときだって、私の番組を見たりして……もうすっかりファンだった

……

……あれ?

……私、そのあの子がそんなことしてるの見たことないけど

なんで知ってるの……?

『それは私がここにいるからだよ』

小梅「えっ……!?」

『ふふ……久しぶりだね、小梅ちゃん』

『といっても……三日くらいかな?』

小梅「そうだけど……」

小梅「でも、なんで……?」

小梅「ずっといたの……?」

『うん、ずっといたよ』

『小梅ちゃんの中に』

小梅「こ、声かけてくれればよかったのに……!」

小梅「私、あんなに、探して……寂しくて……!」

『……うん、ごめんね』

『ただ、私、もうあまり喋れないから……』

小梅「……えっ?」

『そろそろお別れの時間なんだ』

小梅「!?」

小梅「な、なんで……!?」

『小梅ちゃんも覚えていたでしょ?』

『私、小梅ちゃんが寂しくなくなったらいなくなる……って言ったこと』

小梅「覚えてるよ……!」

小梅「でも、私、寂しい……」

小梅「いないと、寂しい……!」

小梅「こんなに、寂しいのにいなくなっちゃうの……!?」

『……ううん、小梅ちゃんは寂しくないよ』

『だって、あんなにもたくさんの仲間がいるんだから』

小梅「!」

『今日のも見てたけど……すごかったね』

『みんな小梅ちゃんが好きで集まってくれた、小梅ちゃんの大切な友達でしょ?』

小梅「うん……」

小梅「でも……私の、一番大切な友達は……」

『……』

『私の未練はね』

『生涯、独りだったこと』

小梅「!」

『……私、友達が一人もできなかったんだ』

『お父さんも、お母さんもお仕事で忙しいから家でもほとんど独り』

『小梅ちゃんみたく幽霊も見えなかったから、本当に独りきりだったの』

小梅「……」

『……そのまま、私に車が突っ込んできて、死んじゃって』

『ああ、友達がほしかったなぁ……なんて、そんなこと思ってた』

『……そしたらさ』

『いつのまにか、小梅ちゃんの前にいたんだ』

『折り紙や人形で独りで遊ぶ小梅ちゃんのそばに……』

小梅「だから……私と、友達に……?」

『引っ込み思案で、無口な正確だったけど、幽霊になったからか気楽になっちゃってね』

『小梅ちゃんが、私と似た境遇だっただけに、すぐ話しかけられたよ』

小梅「そうだったんだ……」

『本当に会話できると思わなかったけどね』

小梅「あ……そうだよね……」

小梅「私……みんなのこと見れたから、よかったけど……」

『うん……でも、小梅ちゃんとなら会話できるし、友達になれると思ったんだ』

『目の前にいたからかな……そういうのはわからないけど』

小梅「……」

『でも、小梅ちゃんと友達になれた』

『それだけでもうれしかったよ』

小梅「うん、私もうれしかった……」

小梅「……でも……じゃあ……な、なんで、成仏しなかったの?」

『……』

小梅「ううん、してほしかったわけじゃないけど……でも」

小梅「私と、友達になったら、未練は無くなって……」

『成仏しちゃうよね』

『私もそう思ったんだけど……でも、どれだけ待っても成仏しなくて』

『じゃあ、なんでだろうって考えたんだけど』

『……きっと』

『小梅ちゃんに、私みたいになって欲しくなかったんだと思う』

『私と違って、小梅ちゃんには友達がいっぱいいたよね、幽霊の』

小梅「う、うん……」

『でも、それじゃ、ダメなの』

『幽霊と話す……幽霊と友達だからって、小梅ちゃんが独りから抜けたわけじゃない』

『小梅ちゃんの寂しさを埋めてはくれないんだから』

小梅「……そ、そんなことないよ?」

『ううん』

『だって、私以外こうして小梅ちゃんに会いに来る人ってほとんどいないじゃん』

小梅「あ……」

『……違うの』

『そんな、会ったから話す友達じゃなくて』

『話すために会いに行く友達が欲しかった』

『私も……小梅ちゃんにも』

小梅「……」

『幸子ちゃんも、輝子ちゃんも……みんなも』

『私たち幽霊と違って、実態を持って、小梅ちゃんに触れて、小梅ちゃんと話して』

『小梅ちゃんと友達になってくれてる』

『小梅ちゃんの寂しさを埋めてあげている』

『……だから小梅ちゃんはもう寂しくなんかない……独りじゃなくなったから』

『あたしの未練も解消できて……お別れ』

>>64 訂正


『私と違って、小梅ちゃんには友達がいっぱいいたよね、幽霊の』

小梅「う、うん……」

『でも、それじゃ、ダメなの』

『幽霊と話す……幽霊と友達だからって、小梅ちゃんが独りから抜けたわけじゃない』

『小梅ちゃんの寂しさを埋めてはくれないんだから』

小梅「……そ、そんなことないよ?」

『ううん』

『だって、私以外こうして小梅ちゃんに会いに来る人ってほとんどいないじゃん』

小梅「あ……」

『……違うの』

『そんな、会ったから話す友達じゃなくて』

『話すために会いに行く友達が欲しかった』

『私も……小梅ちゃんにも』

小梅「……」

『幸子ちゃんも、輝子ちゃんも……みんなも』

『私たち幽霊と違って、実態を持って、小梅ちゃんに触れて、小梅ちゃんと話して』

『小梅ちゃんと友達になってくれてる』

『小梅ちゃんの寂しさを埋めてあげている』

『……だから小梅ちゃんはもう寂しくなんかない……独りじゃなくなったから』

『私の未練も解消できて……お別れ』

小梅「……」

小梅「……本当に、お別れしなくちゃダメ?」

『ダメだよ』

小梅「残れないの……あ、新しい未練とか作って……!」

『あはは……そんな簡単に未練なんて作れないし』

『それに、今、私は満足してるんだもん』

小梅「満足……?」

『うん』

『思えば、小梅ちゃんに友達を作らせるためにさせたアイドルだったけど……』

小梅(だから推してたんだ……)

『今、小梅ちゃんはみんなと協力して、楽しく、本当に楽しそうにアイドルをやってる』

『その姿を見て満足しちゃった……もう昔みたいな独りの小梅ちゃんはいない』

『私みたいな小梅ちゃんはいないんだって』

小梅「……」

『……だから、お別れ』

『姿も消して、声も出さないで……ギリギリまで待っててよかった』

『小梅ちゃんにはあんなに友達がいるんだから、きっとこれからも大丈夫……って安心できた……ふふ』

小梅「……ずるい」

『えっ?』

小梅「だって、私……ぜんぜん満足できてない……!」

小梅「もっと遊びたかった……もっと、もっと一緒にいたかった……!」

『……』

『ごめんね、小梅ちゃん』

『でも、もうこれは、どうしようもないの』

『……そろそろ時間みたい』

小梅「あ……」

小梅(姿……消えてく……)

小梅「や、やだっ……!」

小梅「ずるい……ずるいよ……!」

『……ごめんね』

『いつか、こっちに来たときにでも、文句を言いに来て』

小梅「うぅ……!」

『それじゃあ……バイバイ』

『私、ずっと小梅ちゃんを応援してるからね……!』

小梅「あ……っ!」

小梅「や、やだっ……いかないでっ……!」

小梅「いかないで……っ!」

小梅「いかないで――っ!」

小梅「いかないで――」

================================


小梅「いかないでっ!」ガバッ

小梅「……」

小梅「……あ」

小梅「夢……」

小梅「……ううん」

小梅「違う……私、話したもん」

小梅「夢の中で……」

小梅「ううん……心の中で……?」

小梅「とにかく、話した……絶対、絶対私、あの子と話した……」

小梅「話して、あの子は……いなくなっちゃった……」

小梅「だから……あの子は」

小梅「もう……」

小梅「……」

小梅「……う」

小梅「うわぁんっ……!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


幸子「……ふわぁ」

輝子「おねむか……?」

幸子「その言い方はやめてください!」

幸子「……でも、どうしたんでしょう?」

幸子「こんな朝早く、『私の部屋に来て』ってだけのメールを送るなんて」

輝子「さあ……?」

輝子「……まあ、何かあったんだろう?」

幸子「だから、僕も輝子さんも向かってるわけですしね」

幸子「……まさか、途中で合流するとは思いませんでしたが」

輝子「フヒ……息ぴったりだな」

幸子「そうですね……っと、つきました」

幸子「小梅さん?」コンコン

幸子「……」

輝子「……」

輝子「……あ」ガチャ

輝子「また鍵開いてる……」

幸子「……本当に無用心ですね」

幸子「もう、小梅さん!」

幸子「また鍵が開いて――」

小梅「――!」ダキッ

幸子「ひゃっ!?」

幸子「え、えぇ、ちょ、どうしたんですか、小梅さん!?」

小梅「う……うう……うわぁんっ!」

幸子「ほ、本当にどうしたんですか!?」

幸子「怖い夢でも見たんですか!?」

輝子「そんな、幸子じゃないんだから……」

幸子「どういう意味ですか!」

小梅「あの子が……あの子が……!」

輝子「!」

輝子「あの子が……どうしたんだ……?」

小梅「わあぁんっ!」

幸子「……」

幸子「……よしよし」ナデナデ

輝子「……あ、私も」

輝子「よしよし」ナデナデ

幸子「……落ち着きましたか?」

小梅「……うん」

小梅「ちょっと……」

輝子「そうか……」

小梅「……」

小梅「……あのね」

小梅「あの子と会ったの」

輝子「お、会えたのか……」

小梅「うん……」

小梅「……でも」

小梅「あの子、もう、いなくなっちゃった……」

小梅「ずっと、会えないところに行っちゃった……」

幸子「……」

小梅「だから、私……寂しくて……」

小梅「二人、呼んじゃった……ごめんね」

幸子「……」

輝子「……」

幸子「謝ることはないですよ」ギュッ

輝子「そうだ……相談しろって言ったからな」ギュッ

幸子「吐き出せるものは全部吐き出してしまいましょう!」

幸子「ボクたちが全部受け止めますから」

小梅「……」

小梅「あ、ありがとう……二人とも……!」

小梅「あのね……私、本当に、あの子が大好きで――!」


………………

…………

……

小梅「ふぅ……」

小梅「……な、なんだか色々吐き出しちゃったら疲れちゃった……えへへ」

輝子「で、でもスッキリしただろ……?」

小梅「うん……」

小梅「やっぱり、まだ、寂しいけど……」

幸子「ボクたちがいてもですか?」

小梅「……う」

小梅「それ、ずるい……幸子ちゃん……」

幸子「ふふ、ごめんなさい」

輝子「……きっと、忘れることはできないだろうけど」

輝子「でも、私たち……紛らすことはできるから」

小梅「うん……」

小梅「私も、乗り越えられるよう……頑張る……!」

幸子「応援……いえ、協力します!」

輝子「そうだな……」

輝子「じゃ、とりあえず、遊びにでも行くか」

幸子「そうですね、何して遊びます?」

輝子「そうだな……」

輝子「……」

輝子「ぼ、ボッチの私はこういうときどこで遊べばいいかわからない……!」

幸子「なんですかそれ!?」

小梅「……」

小梅(……)

小梅(もう、聞こえないだろうけど……でも、さっきいえなかったから、今言うね)

小梅(……今まで、一緒にいてくれて、ありがとう)

小梅(私……これからも、頑張るから……)

小梅(……見ててくれるとうれしいな)

小梅「……」

小梅「!」

小梅「……」

小梅「ふふ……♪」

幸子「ん、どうしましたか?」

小梅「ううん……幸子ちゃんたち、相変わらず愉快だなって……♪」






おしまい

あの子と小梅ちゃんがこういう関係性だったらいいなっていうノリと勢い
あと、小梅ちゃんは色々な人から愛されてるといいなっていう思い

小梅ちゃんはあの子と二人で話すとき、あの子のことをなんて呼んでるんでしょう?


誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。呼んでくださった方ありがとうございました

最近書いたの
まゆ「プロデューサーさんの車……」
まゆ「プロデューサーさんの車……」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465991082/)

モバP「藍神ィ……お前らホント可愛いなァ……」
モバP「藍神ィ……お前らホント可愛いなァ……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465804990/)

フレデリカ「明日また会えるよね?」
フレデリカ「明日また会えるよね?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465638353/)

朋「まゆちゃんと」まゆ「朋さんと」
朋「まゆちゃんと」まゆ「朋さんと」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465471200/)


よかったらこちらもよろしくお願いします


切ないけど温かくて良い話でした


イイハナシダナー

あとよしのんが失せ者探しを失敗(?)してる稀有な状況

乙!!
引き込まれる話だった…
しかし台詞だけで大体分かるアイドル達ってやっぱ個性的だね~

「それじゃあ意味ないじゃないだろッ!」


意味ないじゃないだろッ!





























>>>>意味ないじゃないだろ!<<<<

私がアイドルになってから、あの子は私をファンとして私を見ていた


あの子は私をファンとして私を見ていた



















>>>>あの子は私をファンとして私を見ていた<<<<

引っ込み思案で、無口な正確だったけど、幽霊になったからか気楽になっちゃってね




無口な正確



























>>>>正確<<<<

かまってちゃんはNGで
小梅ちゃんの心情がよく伝わってきて良かった

http://i.imgur.com/y3Ageom.jpg

痛いってことにいい加減気づけよ

気持ち悪いわ

ブーメラン乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

>>85
草生やすなゲロ袋人間

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom