― 魔王城 ―
魔王「ついにここまでたどり着いたか……忌まわしき勇者よ」
勇者「魔王……世界の平和のためにお前を倒す!」
魔王「ククク、しかしどうやら貴様は剣を持っておらんようだが……?」
勇者「お前を倒すのに剣など不要、この鉄の盾があれば十分だ」
魔王「強がりを抜かしおって……その思い上がり、すぐに叩き潰してくれる!」
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魔王「ゆくぞぉっ!」ギュオッ
魔王は高速で接近し、長く鋭い爪で勇者を引き裂こうとする。
勇者「……」バッ
盾を構える勇者。
魔王(やはりそうくるか!)
魔王(だが、盾は一つ! ワシの両手の爪を防ぐことはできんッ!)
キャプテンアメリカかな?
――ドギャアッ!
次の瞬間、勇者の盾が魔王の顔面を強打していた。
魔王「がっ……!?」ヨロッ…
勇者「残念だったな……盾は守るだけの道具じゃないのさ」
魔王「ぐっ……!」キッ
魔王(これは……たしか『シールドバッシュ』という戦術! ぬかったわ……!)
魔王「たしかに今のは効いた……だが!」ババッ
跳躍し、勇者と距離を取る魔王。
勇者「!」
魔王「部下の報告によれば、貴様は魔法を一切使えんと聞く」
魔王「つまり、この間合いでは貴様には攻撃手段はない!」
魔王「ワシの地獄の炎で、一方的に焼き尽くしてくれるわッ!」ゴォォッ
魔王の右手に炎が召喚される。
魔王「炎に焼かれ、もがき苦しみながら……地獄へ堕ちるがよい!」
ゴオォォォォォッ!
激しい炎が勇者を襲う。
勇者も咄嗟に盾でガードするが――
勇者「ぐうっ……!」
魔王「ほう、溶けぬとは……見かけによらず、なかなかいい盾だな」
魔王「だが、完全には防ぎ切れなかったようだ」
勇者「……」プスプス…
魔王「ワシに一撃を浴びせた罪は重い。この間合いからじわじわ命を削ってやる」
魔王「覚悟せいッ!」
勇者「……いや」
勇者「お前の炎を浴びる……これこそが俺の勝利への道筋だったのさ!」
魔王「なにィ!? どういうことだ!?」
勇者は魔王の炎をガードした盾を床に置く。
そして――
勇者「これだけ熱ければ、いい焼き肉ができそうだ」ガサゴソ…
魔王「えっ……肉!?」
勇者は皮袋から肉を取り出すと――
勇者「俺は故郷では焼き肉店を経営しててね……その肉を持参してきたのさ」ジュゥゥ…
魔王(こいつ……焼き肉を始めやがったッ!)
勇者「熱があるうちに、どんどん焼かないとな」ジュゥゥ…
魔王「……」ゴクッ
勇者「そろそろひっくり返すか」ヒョイッ ジュゥゥ…
魔王「……」
魔王「な、なぁ……」
勇者「なんだ?」
魔王「あの……ワシにも食わせてくれんか?」
勇者「もちろんいいぞ!」ニコッ
魔王「おお……ありがとう!」
勇者「ほれ、これなんかどうだ?」ヒョイッ
魔王「はふっ、はふっ、おお……うまい!」モグモグッ
勇者「これもよく焼けてるぞ」ヒョイッ
魔王「かたじけない!」モグモグッ
勇者「こっちも……まだ少し赤いけど」
魔王「ワシ……ちょっと生ぐらいの方が好きなんだよね」ハフハフッ
勇者「ほら、どんどん食べてくれよ」ジュゥゥ…
魔王「うむうむ」モグモグ
魔王「あー、うまい」ガツガツ
魔王「こりゃたまらん! 白米とビールが欲しくなるな!」ムシャムシャ
魔王(勇者め……実力では敵わんから、焼き肉でワシを懐柔するつもりか!?)
魔王(敵ながらやりおるわ!)ハフッハフッ
勇者「お、こっちも焼けてきた」ジュゥゥ…
やがて、鉄の盾に宿っていた熱もすっかり冷め――
魔王「いやぁ~……食った、食った」ゲフッ
魔王「結局、ワシばかり食ってしまってすまんな」
勇者「なあに……いいってことさ」
勇者「ところで、魔王」
魔王「ん?」
勇者「俺は故郷を旅立ってからここにたどり着くまでに三ヶ月かかった」
勇者「この意味……分かるか?」
魔王「……!」
魔王「ま、まさか……まさか貴様……!」
勇者「そのまさかだ」
勇者「みごとに全部平らげてくれたな……三ヶ月前の肉を……」
魔王「はうぅぅぅっ!」ギュルルルッ
魔王(や、やられた……!)
魔王(こいつの狙いは……シールドバッシュでワシを倒すことでも……)
魔王(焼き肉でワシを懐柔することでもなかった……!)
魔王(ワシを“食中毒”にすることだったのかぁぁ……!)
セコいwww
勇者「じゃあな……魔王」
勇者「大勢の人間を苦しめた分、せいぜい苦しんでくれ」クルッ
鉄の盾を拾い上げ、魔王に背を向ける勇者。
魔王「ま、待てっ……! 待ってくれぇ……!」
魔王(ダメだ……! 襲ってくる……! 猛烈な吐き気と……腹痛がッ!)ウエッ
魔王「ゆ、勇者ァッ……! 勇者ァァァァァッ!!!」ギュルルルルルッ
魔王「ウギャアァァァァァ……!!!」
じゃあ最初から肉焼いてこいや
こうして、勇者はみごと魔王を滅ぼし、故郷に凱旋を果たした。
人間界を覆っていた暗黒の霧は跡形もなく消え去り、人々の顔には笑顔が戻った。
しかし、勇者がこの勝利のために支払った代償は、決して軽いものではなかった……。
― 城 ―
国王「勇者よ……よくぞ魔王を倒した!」
国王「おぬしの功績には、多大なる名誉と財宝で報いることを約束しよう」
勇者「ははーっ! ありがたき幸せ!」
国王「――しかし!」
国王「おぬしの焼き肉店は、食中毒を起こした罪で無期限の営業停止処分とする!」
勇者「トホホ……」
<おわり>
焼きたて肉の誘惑には魔王も敵わなかったか…
乙
腐敗臭するだろ普通
>>16
勇者が火を起こす道具持ってりゃ話しは別だけどたぶん持参してなかったんだろう
それより魔王に食中毒させたくらいで見逃してy・・・・・・やっぱダメか?
新大久保出身かな乙
乙
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