―事務所―
P「…」カタカタ…
P「うーん…」カタカタ…
瞳子「何やってるの?Pさん」
P「ん…瞳子か。いや、次のLIVEの演出イメージを作ってるんだが…」
瞳子「へえ…真面目なのね、感心するわ」
P「口頭だけで説明しても会場設営の人達も困るだろ。図面があればイメージを掴みやすいかな、と」
瞳子「用意を周到にすることは良いことね。それだけでリスクを軽減できるし」
P「そういうことだ」
瞳子「…の割にはあまり進捗が良くないみたいよ?」
P「う…痛いところを突いてくるな。なんかな~こう、ティン!と来るものが無いと言うか…」
瞳子「ティン!とくるものねぇ…」
P「友紀をここに出してみるか…?」カタカタ…
瞳子「…」
P「ん~…」ゴソゴソ
パカッ、ジャラジャラ…
P「…」モグモグ
瞳子「あら、ガム?…しかもボトルを常備なのね」
P「煮詰まるとイライラするからな…気分転換だよ」モグモグ
瞳子「タバコ、止めたの?」
P「いつの話してんだ。とっくに止めたよ」モグモグ
瞳子「前はところ構わずモクモク煙らせてたじゃない」
P「ちゃんと喫煙所で吸ってたよ!人聞きが悪いことを言うな!」
瞳子「あなた、周りからなんて呼ばれてたか知ってる?」
P「知らないし聞きたくもない」
瞳子「『煙突君』よ」クスクス
P「」
――
―――
――――
―1時間後―
P「…あぁぁ!思い浮かばん!」ガタッ!
P「休憩しよ…」スタスタ…
―談話コーナー―
TV<続いてはスポーツのニュースです…
P「…」スタスタ…ガタッ
瞳子「…お仕事は?」コポポポ…
P「休憩だ、休憩」
瞳子「ふーん…」ニコニコ
P「なんだよ、ニヤニヤして」
瞳子「ニヤニヤなんて…温かい目で見守っているのよ…お茶、どうぞ」トンッ
P「はいはいどうも。アイドルの皆さんのために精一杯頑張ります」ズズズー
P「瞳子にも、すぐ仕事持ってくるからな」
瞳子「ふふふ…期待に答えられるように頑張るわ」
TV<キャッツは快進撃!怒濤の10連勝目です
P「お、キャッツ10連勝目か。またあいつが騒ぎ出すぞ…」
瞳子「…」
P「そういや今日は麗さんのレッスンだったなあいつら…ま、友紀達なら大丈夫か…いや、菜々は大丈夫じゃないか?」
瞳子「…随分と肩入れしてるのね」
P「まぁな。ウチのメインユニットだし…」
瞳子「違うわよ」
P「?」
瞳子「友紀ちゃんによ」ジィッ…
P「そ、そうかな?自覚は無いが…」
P「友紀はこのプロダクションに入って最初のアイドルだったから、かもな」
瞳子「そう…」
P「納得してないご様子…本当にそれだけだぞ、多分」
瞳子「…私はどうなのかしら?」
P「はぁ?」
瞳子「このプロダクションじゃ私は一番後輩…そうよね」
P「そうなるな」
瞳子「でも昔…あまり思い出したくないけれど、前のプロダクションの頃から含めれば貴方の最初のアイドルは私。そうじゃない?」
P「ん?ん~…そ、そうなるのかな」
瞳子「そうよね、そうなるわよね」ニコニコ
P「何が言いたいんだ瞳子。全然理解出来ないぞ」
瞳子「いいえ何も?ただの状況確認よ…ニブチンなのは昔と変わらないわね」
P「???」
瞳子「もう良い時間よ、お仕事続けたら?」グイグイ
P「おい!ちょ、まだいいだろ…押すなよ」グイグイ
瞳子「敏腕プロデューサーは1分でも時間が惜しいんじゃないの?ふふふ…」
P「嫌味か!わかりました!仕事しますから!」
P「…ったく」スタスタ…
瞳子「…」
――
―――
――――
-しばらくして、再び事務所-
ガチャ!
友紀「たっだいま~♪あー疲れた!」
P「おーう。…菜々と響子は?」
友紀「響子ちゃんは家のお手伝いあるって帰ったよ。…ウサミンも『今日は限界だ』ってつぶやきながら帰っちゃった」
P「菜々…お疲れさん」カタカタ…
友紀「お?何々、何してんの?プロデューサー」
P「次のLIVEの資料作ってんの。…気が散るからあっちに行ってなさい」シッシッ!
友紀「ぶー。冷たいなぁ~…あ、今日のキャッツどうだったんだろ?!」
P「せわしない奴め。10連勝目だとさ」カタカタ…
友紀「ホント?!イェーイ!さっすがキャッツ!我らがキャッツ!ほら、プロデューサーも!」
P「おーキャッツキャッツ」
友紀「心がこもってない!もっとソウルを!キャッツと!トゥギャザー!」
P「覚えたての英単語を使いたがる中学生みたいだなお前」
友紀「なんか悪口言われた気がするけど今日のキャッツに免じて許してあげるよ!」
P「有り難きしあわせー(棒)」ゴソゴソ…
パカッ、ジャラジャラ…
友紀「もー。…あ、プロデューサーあたしもガムちょーだい」
P「ほい」ヒョイ
友紀「さんきゅ~♪さーて、ニュースでハイライトでも見よっと」モグモグ
スタスタスタ…
P「本当にせわしない奴だ…」
P「え~、ここからこの人を…」カタカタ…
-談話室-
友紀「ふっふ~ん♪キャッツ!キャッツ!」モグモグ
瞳子「…あら」
友紀「あ…うっ?!」ゴクン!
友紀(ビックリしてガム飲んじゃった…)
瞳子「お疲れさま。お茶、飲む?」
友紀「は、はい…」
瞳子「…」コポポポ…
瞳子「はい、どうぞ」トンッ
友紀「いただきます…」ズズッ
瞳子「…」
友紀「…」
シーン…
友紀(き、気まずい!)
瞳子「TV、見ないの?」
友紀「え?あ、キャッツだった!」ピッ!
TV<今日のスポーツを振り返ります…
友紀「お~!やってるやってる!」ワクワク
瞳子「ふふふ…」ニコニコ
-20分後-
TV<…以上政治のニュースでした。続いては…
友紀「…」ダラダラ
瞳子「…」ニコニコ
友紀(な、なんでこの人…)
友紀(ニコニコしながらこっちずっと見てるの?!)ダラダラ
友紀(おかげでキャッツの話なんかとっくに終わってるのに政治のニュースまで見ちゃったよ!)
友紀「…あの」
瞳子「…?なにかしら?」
友紀「あたしに何か用かな~って。アハッ、アハハハ…」
瞳子「用事、というわけでもないんだけど…友紀ちゃんとお話したいなぁと思って」ニッコリ
友紀「お、お話…?」
瞳子「えぇ。Pさんの事…とか」
友紀「プロデューサー?」
友紀(なんで今プロデューサーが出てくるんだろう?)
瞳子「Pさんから聞いてるわ、メインユニットのリーダーをしてるのよね?」
友紀「まぁ…一応、やってます」
瞳子「すごいと思って。素直に尊敬するわ」
友紀「あたしがリーダーだけど、あたし一人で全部取り仕切ってるわけじゃないです」
瞳子「?」
友紀「響子ちゃんもウサミ…菜々ちゃんもいて初めてユニットとしてやっていける。リーダーだけ頑張ってもそれじゃユニットじゃないでしょ?」
瞳子「…素晴らしいわ。あなたにはリーダーとしての素質が満ち溢れてるわね、とても眩しい」
友紀「いやぁ…照れるなぁ~」
瞳子「私があの時、もしあなただったら…」ボソッ
友紀「はい?」
瞳子「いいえ、なんでも…それで、このプロダクションの最初のアイドルとも聞いてるわよ?」
友紀「そうだったかな~?…ウサミンよりもちょっと前だからそっか、そうです!」
瞳子「スカウトで?」
友紀「球場でプロデューサーに声掛けられて…いつの間にかアイドルやってた、って感じです。アハハ…」
瞳子「妙なアグレッシブさを持っているものね、彼」
友紀「そうなんですよね…あぁ、そうだ」
瞳子「何かしら?」
友紀「ずっと思ってたけど瞳子さんがプロデューサーと昔からの知り合い、みたいな?雰囲気があって…」
瞳子「昔からの知り合い…かもね」クスクス
友紀「へ?」
瞳子「…私、昔アイドルだったのよ」
友紀「…うん、あ、はい」キョトン
瞳子「勿論今もアイドルとしてこの事務所にいるわよ?」
瞳子「若い頃アイドルをしてたの。結局売れないまま辞めてしまったけれどね」
友紀「えっあの…なんかすいません」
瞳子「何も謝ることはないわ事実だし。で、その売れない私をプロデュースしてたのが彼」
友紀「プロデューサーが?」
瞳子「あまり詳しくは話さない。申し訳ないけど思い出したくない記憶なの」
瞳子「私が辞めてから彼にも色々あったらしいわ。流れに流れて今はここでプロデューサーをやってるってついこの間再会した時に知ったのよ」
友紀「…」
瞳子「芸能界、ましてやアイドル業界なんて…もう二度とやるもんか、って思ってたけど…」
瞳子「Pさんに『もう一度アイドルやろう』って言われた時…すごく嬉しかったわ」
瞳子「だから私はもう絶対に負けない。Pさんのために、服部瞳子のために」
瞳子「…あなたにも負けないわよ、友紀ちゃん」
友紀「え?」
瞳子「Pさんは私達のプロデューサー。…あなた、それ以上を求めているんじゃないかしら?」
友紀「あ、いや、そんなこと…」
瞳子「私はそうよ」
友紀「!」
瞳子「彼の傍にいたい。アイドルとプロデューサー、ではなくね」
瞳子「だから彼の期待にはそれ相応の結果を見せるつもりよ。」
瞳子「今度は逃げない」
友紀「あたしだって!」
瞳子「あら…」
友紀「あ、あたしだって…瞳子さんには負けないよ!プロダクションのメインユニットだもん!トップアイドルになってプロデューサーに認めてもらうんだ!」
瞳子「…ふふふ、その意気よ。アイドルも、恋も、ライバルね…少し出遅れたけど必ず追いついて見せるわ」ニコッ
友紀「…思い出分の打点はそっちに譲ったからこれでフェアでしょ?」ニヤリ
瞳子「…少し熱くなったわね、…こう言った手前だけど、仲良くしましょう」
友紀「ライバルだけど同じ事務所の仲間だもんね。お互い頑張ろうよ!」
瞳子「ふふふ…」
友紀「ハハハ…」
-1時間後-
P「やっと出来た…」グッタリ
P「なんか談話コーナーがさっきまで騒がしかったが…」
P「何やってたんだ?あの二人」チラッ
友紀「アハハハ!瞳子さんの話面白いね!」
瞳子「ウフフ!友紀ちゃんのお話もユニークよ。…キャッツが少し好きになったわ」
P「…随分仲良くなったな、お前達」
友紀「あ、『煙突君』だ」
P「」
瞳子「ごめんなさいPさん、話しちゃったわ」
P「瞳子!お前、余計なことを!!」
友紀「煙突だって…ププッ」
瞳子「そうよ。常に白い煙が周りに漂っててね…」
友紀「あ、あは、あはははは!頭に浮かんじゃう!苦しい~!!」ゲラゲラ
P「やめろ!風評被害もいいとこだ!」
瞳子「まだあるわ…当時の常務にPさんが…」
P「それは本当にやめてください!お願いします」
おわり
終わりです。ありがとうございました。
乙
こういうの好き
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