モバP「ウサミンロボの遁走」 (15)
立ったら書く、短めで晶葉ちゃん誕生日おめでとうなモバマスSS。
ここには初投下なんでなんかもたついたりしたらごめんなさい。
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梅雨真っ只中の昼下がり、六月の雨がしとしとと降り続く中、このアイドル事務所にも少しだけ重い空気が立ち込めています。
少々不機嫌そうな顔をしたツインテールの少女が一人、事務所のソファで何やらぼやいているご様子。
晶葉「全く、プロデューサーの方から呼んどいて遅れるとはなあ」
菜々「まあまあ、プロデューサーさんも最近何かと忙しいみたいですし。もう少しで来ると思いますよ」
宥めるようにメイド服を着た女性がそう言うと、少女はソファにぽふ、と寄りかかって疲れた様子。
それを見たのかメイド服の女性は少女の前にこと、と湯呑を置きました。
菜々「ウサミン星特製のお茶ですよ、飲むとたちまち楽しくなっちゃうんですから」
晶葉「……何か危ないモノでも入ってないだろうな、ウサミン星人」
菜々「ナナの愛情がたーっぷりつまってますよ、キャハっ☆」
晶葉「……はぁ」
菜々「な、何ですかその対応。さすがのナナでもちょっと凹みますよ?」
晶葉「いやあ、プロだなあと思っただけさ」
菜々「あんまり褒められてる気がしませんね……」
晶葉「これは……紅茶か」
一口だけ湯呑に口を付けた後に、不思議そうに少女が言います。
それを見た女性は何やら自慢げな様子。
菜々「メイドさんをやってた頃、ナナの入れる紅茶は一番人気だったんですから!」
晶葉「いや、湯呑に入っていたからついな」
菜々「……カップが皆食器洗い器の中に入っててそれしか無かったんです」
晶葉「いや、固定観念に囚われているうちは私もまだまだだなと思ったのだよ」
そういうと、少女はもう一口紅茶を飲みました。
まだ熱い紅茶を恐る恐る、小鳥のように飲む少女は非常に愛らしいのです。
晶葉「うん、美味しい。有難うなウサミン」
菜々「どういたしまして♪」
そういうと、女性は笑顔を浮かべます。
それとは対照的に、少女の方は何やら思い悩んでいる様子でした。
菜々「しかし晶葉ちゃん、何か困った事でもあるんですか?元気ないですよ」
晶葉「少々面倒なことがあってね、寝不足なんだ」
そう言うと、少女は一つあくびをします。
それを見た女性は心配そうな顔でこう言いました。
菜々「何か困ったことがあったら、ナナも力になりますよ?」
晶葉「ラボに置いてあったロボが一個だけ消えていたんだ、お月見の時に使ったロボを覚えているだろう?」
菜々「ええ、あの時は助かりましたよ。でも、消えるなんて不思議ですねえ」
晶葉「私のラボなんて大体私しか入らないし、それ以外のものは触られた形跡もないんだよ」
菜々「それじゃああれですよ、電波でビビっと居場所が解ったりはしないんですか?」
晶葉「探知機能も付けてあるんだが、反応しないんだ」
少し困ったような顔をしてそう言うと、少女はまた一つ大きなあくびをします。
それを見た女性は、正座をしてぽん、と膝を叩きました。
菜々「お疲れのようなら、ウサミン特別膝枕はどうですか?」
晶葉「大変喜ばしい申し出だけど、少し仮眠室で寝させてもらうよ」
菜々「あら、残念です。今なら特別サービス期間でしたのに」
晶葉「また、次の機会に頼むよ」
簡易ベッドに寝転んだすぐ後に、少女は寝息を立て始めます。
よほど疲れていたのか、少しだけ安心した様子で目を瞑っていました。
その様子を見た女性は、少し微笑んだ後に携帯電話を取り出して誰かに連絡を取ろうとしています。
二つ折りの携帯電話と少しだけにらめっこした後に、女性は仮眠室から出ていきました。
事務所の前の横断歩道を渡ろうとしたときに、携帯電話からメールの着信音が鳴る。
確認すると、それは菜々さんからのメールだった。
『かわいいでしょ?』とタイトルの付けられたメールには晶葉の寝顔が写された写真が添付されている。
早く来てくれないと起きちゃいますよ、と書かれた本文を確認すると携帯電話をまたスーツのポケットにしまおうとする。
幸子「あ、ちょっとまだ見てる途中ですよ」
モバP「覗き見はよくないと思うぞ、幸子」
幸子「ボクの方に画面を傾けて見せつけるようにしてたのに……?」
モバP「何の事だろーなあ」
そういうと空とぼけた様に上を向いた。
まゆ「モバPさん、前を向かないと危ないですよお?」
まゆにきゅっと袖を引っ張られる。
よく見ると目の前の信号は赤だ。
モバP「ああ、有難うなまゆ」
まゆ「幸子ちゃんも、晶葉ちゃんがかわいいのは解りますけどね?」
幸子「むう、ごめんなさい」
まゆ「こういう慣れた場所が一番危ないんですから、気を付けましょうね?」
言い聞かせるようにそう言うと、まゆはぽん、と幸子の頭を叩いた。
モバP「まゆはお姉さんみたいだなあ」
まゆ「まゆはお嫁さんの方がいいんですがねえ」
モバP「何の事やら」
少し上を向くと、信号が青に変わるところが見えた。
短い横断歩道を渡って事務所の中に入ると、少しだけ甘い匂いがする気がした。
部屋の中には新たに三人、人が入ってきました。
細身のスーツを着た男性と、リボンを沢山つけたおっとりとした少女、それにショートカットの少し生意気そうな少女がついていきます。
その三人が入ってくるのを見て、メイド服の女性が出迎えに行きました。
菜々「プロデューサーさん、まゆちゃんに幸子ちゃんお帰りなさい♪」
モバP「ああ、ただいま」
まゆ「菜々さん、ただいまあ♪」
幸子「遅くなってすみません」
モバP「菜々、冷蔵庫空いてるかな?」
菜々「ええ、いない間にちょこっと整理して空けときましたけど」
モバP「それじゃあ、これを入れといてくれないかな」
菜々「ええ、了解です」
スーツの男性が差し出したのは何やら両手に収まるぐらいの箱。
メイド服の女性はそれを受け取ると、給湯室にある冷蔵庫に向かいました。
菜々「……あれ?」
冷蔵庫の中を見たメイド服の女性が何やら不思議そうな顔をしています。
菜々「誰か、ホイップクリームとかいちごとか冷蔵庫に入れました?」
幸子「菜々さん、ボクたちはケーキを買いに行ったんですけど……」
まゆ「まゆも知りませんよお?」
モバP「俺も知らないなあ」
菜々「むう、さっき見たときはこんなの無かったのになあ」
メイド服の女性は怪訝な様子でしたが、少しだけ端っこにそれらを寄せて箱をすっぽりと冷蔵庫の中に収めました。
菜々「それじゃあ、他の準備を終わらせちゃいましょうか」
モバP「俺は車の中に置いてある荷物を取りに行くけどどうする?」
幸子「じゃあボクが手伝いま……」
ショートカットの少女をにこやかにリボンの少女が見つめています。
しかし、その笑顔にどことなく寒気を感じるのは私だけなのでしょうか。
菜々「まゆちゃん、たまには譲ってあげるのも年長者の余裕ってやつですよ?」
まゆ「……まあ、仕方ないですねえ。それなら菜々さんのお手伝いをすることにします」
ショートカットの少女は少しほっとしたような顔をしてメイド服の女性に少しだけ頭を下げました。
そして、少し早足で事務所のドアから出ていきます。
その様子を、少し苦笑いを浮かべてスーツの男性が見ていました。
モバP「それじゃあ、俺も行ってくるよ」
そう言うと、スーツの男性もこの部屋を立ち去りました。
ドアにストッパーをかけてから、外に出ていく様子をリボンの少女は微笑みながら見つめています。
メイド服の女性はちょっと困った様子でリボンの少女に何時声をかけるべきかを迷っていました。
事務所の入っているビルの地下にある駐車場。
特に何の変哲もないシルバーの自動車の前にボクは立っています。
向こうから少し困った顔をしてプロデューサーさんが走ってきました。
モバP「いやあ、すまん。もう若い力にはついていけないんだ」
少し息を切らしたプロデューサーさんは、ポケットを探って自動車の鍵を探そうとしている様子。
少々手間取った後に見つけたらしく、ジャケットの右のポケットから鍵を取り出して自動車のロックを解除しました。
モバP「幸子たちのは後部座席にあるから、それを上に持ってってくれ」
幸子「ええ、解りました。プロデューサーさんのは別なんですか?」
モバP「俺のはちょっと重いからトランクに入れてあるんだよ」
そう言ってプロデューサーさんがトランクから取り出したものは何やら大きな箱。
ボクはそれが何であるかを把握すると、少し呆れました。
幸子「……もしかしてそれが、晶葉さんへの誕生日プレゼントですか」
モバP「ああ、前からあると便利だろうなとは思ってたしな。ちひろさんに許可もとったぞ」
幸子「そういえば今日はちひろさんの姿が見えませんね」
モバP「何でも大事な会議かなんかがあるらしくて来られないって文句言ってたぞ、何で今日なんでしょうねえって。」
幸子「プロデューサーさんよりちひろさんの方がお仕事多いですもんね」
モバP「ぐっ、それは言わない約束だったのに……」
ワザとらしくガクッと肩を落として膝をつくプロデューサーさん。
幸子「まあ、ボクも最近は少しづつ忙しくなってきましたし努力は認めてあげますけどね」
素直に感謝の言葉が出せない事が少しもどかしく思えます。
少し照れているのを隠すように、ボクは後部座席の荷物を取ってそそくさと事務所の方へ戻っていきます。
モバP「ああ、それちひろさんの分も入ってるからなー」
幸子「ええ、解りました。責任をもってちゃんと持っていきますよ」
プロデューサーさんはまだ大きな箱と悪戦苦闘しています。
何時まで経っても終わりそうにないので、ボクは仕方なく独りで事務所に戻る事にしました。
メイド服の女性はてきぱきと事務所の机に人数分、五人分のカップを並べていきます。
白地には野いちごの花の模様が入っている、この事務所にある中で一番値の張るティーカップです。
菜々「この来客用のティーカップも全然使いませんよねえ」
まゆ「この事務所にお客さんって来たことあるんでしょうか?」
菜々「まゆちゃんが面接に来た時が多分このカップの一番最近の出番でしたよ」
まゆ「……随分前のお話ですねえ」
リボンの少女は、メイド服の女性と話しながら部屋を片付けていました。
テーブルや床を拭いて綺麗にした後、少し散らかっている事務所の中の備品をまとめています。
まゆ「それじゃあ、もうそろそろ晶葉ちゃんを起こしてきますね」
菜々「ええ、頼みましたよまゆちゃん。ナナはケーキの準備をすることにしましょう」
二人とも、それぞれの方向に向かって部屋から出ていきます。
仮眠室に入ったリボンの少女は、ぐっすりと寝ているツインテールの少女を少しだけ見つめていました。
まゆ「……やっぱり、晶葉ちゃんもこうしてみるとかわいいのよねえ」
ツインテールの少女のほっぺたをつんつんとつついてそう言いました。
まゆ「……今度、皆でお洋服を買いに行きましょう」
そう言ったリボンの少女の顔は少しだけ何か企んでいる様子でした。
その顔に、少しだけ楽しさがにじみ出ていたことに私は気付きます。
少しだけ目を閉じて笑った後に、リボンの少女はツインテールの少女の肩をぽんぽん、と叩きました。
まゆ「晶葉ちゃん、そろそろ起きてくださあい♪」
少女の声は、間違いなく嬉しそうでした。
目が覚めると、目の前にピンク色のリボンが飛び込んでくる。
もう一回目を瞑ると、大きなあくびが出た。
晶葉「ふあ、今何時だいまゆさん」
まゆ「午後三時を少し回ったところですよお、いい夢は見られましたか?」
晶葉「覚えて無い位にはいい夢だったよ」
私はそう言うと体を伸ばした。まだ少しだけ全身がぎこちない感じがするが、寝る前よりは重くない。
まゆ「向こうで皆が待ってますよ、早く起きて来てくださいね」
そういうとまゆさんは応接室の方に向かった。
私もそれに続こうと簡易ベッドから起き上がったところに何かに躓いてしまった。
晶葉「おっと」
何を蹴っ飛ばしたのだろう、と思ったがそれらしいものは足元を見ても存在しなかった。
少し不思議に思ったまま、まゆさんの後について応接室に向かった。
……少し痛みを感じます。
リボンの少女の後をついていくようにして部屋にツインテールの少女が向かいます。
少女たちが来るのを見て、メイド服の女性と、スーツの男性、ショートカットの少女がそれぞれにっこりと笑いました。
そして。
「「「「ハッピーバースデー、晶葉(ちゃん)(さん)」」」」
四人がそう言うと、ツインテールの少女は少し照れくさそうにありがとう、と言いました。
その後に、めいめいが少女に渡すためのプレゼントを取り出しはじめます。
菜々「ナナからは、このウサミン印のポーチを進呈しましょう!」
メイド服の女性が取り出したのは桃色のうさぎが描かれたポーチでした。
ツインテールの少女は、箱からそれを取り出して大事そうに触っています。
菜々「晶葉ちゃん、細かい持ち物が多いから役に立つかなと思いまして」
晶葉「ありがとう、大切に使わせてもらうよ」
幸子「それじゃあ次はボクですね、ボクからはこれをあげましょう!」
ショートカットの少女が手に持っているのは細長い箱でした。
晶葉「これは、タンブラーか?」
ツインテールの少女が箱から取り出したものは、細かい花柄の描かれているタンブラーでした。
幸子「その通りです、この間パソコンをいじりながら紅茶を飲んでいる時に手にあててこぼしていたでしょう?」
晶葉「ああ、あったなそんな事……」
幸子「そんなときにカワイイボクが犠牲にならなくても済むように飲み口が開いていてもこぼれにくいんですよ!」
晶葉「もしかして幸子、結構根に持つタイプだったりするだろう?」
幸子「ボクは優しいですから、二度同じ過ちを繰り返さないように導いてあげるんですよ」
私は知っています。
この間事務所でショートカットの少女のノートにツインテールの少女が紅茶をぶちまけたことを。
ツインテールの少女は結構それで落ち込んでいたのです、許してあげてください。
まゆ「晶葉ちゃん、言っておくけど幸子ちゃんあの後晶葉ちゃんにちょっときつく言い過ぎたってまゆに泣きついてきたのよお?」
幸子「ま、まゆさん!」
ツインテールの少女はそう聞くと、少しだけ笑っていました。
晶葉「ありがとう、大事に使わせてもらうよ。今度はノートにこぼさないように」
ショートカットの少女は、少しだけ苦笑いを浮かべていました。
まゆ「それじゃあ、次はまゆからですねえ」
そう言うと、リボンの少女が取り出したのは小さな袋。
ツインテールの少女も合点がいったようにそれを受け取ります。
晶葉「ありがとう、今ここで付け直してもいいかな?」
まゆ「あら、よく解りましたねえ。まだ中に何が入っているか言ってませんよ?」
晶葉「解るさ、じゃあちょっとまゆさんこっちに来てくれるかな?」
そう言って、リボンの少女とツインテールの少女が洗面所の方に向かいました。
少し間を置いた後、ツインテールの少女は新しい真っ白なリボンをつけて戻ってきました。
モバP「おお、なんかちょっと新鮮だな」
幸子「もうちょっと気の利いたこと言えませんか?プロデューサーさん」
モバP「うん、何時もの衣装は赤だけど今度は白も入れてみよう」
ショートカットの少女は少し呆れた様子でした。
その後に、新しいリボンをつけたツインテールの少女に向かってこう言いました。
幸子「よく似合っていますよ、晶葉さん」
晶葉「あ、ああ。ありがとう。なんだか落ち着かないものだな」
少し控えめにフリルのついたリボンを揺らし、ツインテールの少女が言いました。
普段は余りそういったものをつけないからか、少し照れている様子でした。
まゆ「晶葉ちゃんはかわいいんだから、照れなくてもいいんですよ?」
菜々「そうですよ、ビビっと来てます!」
モバP「いつも結構フリルとかついた服着てるじゃん、晶葉」
晶葉「バッ!馬鹿!余り変なことを言うな!」
幸子「プロデューサーさんって結構空気読めないって言われません?」
モバP「おう、何でか知らないけど幸子によく言われる」
菜々「いつもかわいいお洋服を着てても白衣で隠しちゃうんですもの。プロデューサーさんの前では別みたいですけど」
メイド服の女性が少し意地悪そうにそういうと、ツインテールの少女は顔を真っ赤にして俯いてしまいました。
それを見てリボンの少女が追い打ちをかけるように言います。
まゆ「今度、皆と一緒にお洋服を見に行きましょうね♪」
幸子「ボクの行きつけのお店を紹介しましょう!」
菜々「わあ、楽しみですねえ♪」
モバP「俺も……」
幸子「モバPさんは荷物持ちに決まってるじゃないですか」
まゆ「晶葉ちゃんもプロデューサーさんにはかわいい所見てほしいですもんねえ?」
菜々「あ、そろそろオーバーヒートしそうですよ」
さっきよりもさらに顔を真っ赤にしてツインテールの少女が俯いています。
十分可愛いのに、彼女は自分の容姿に少しまだ自信が持てないようです。
モバP「かわいいんだから別にそんな照れなくてもいいのになあ」
あ、爆発しました。
ツインテールの少女が落ち着くのを待って、次はスーツの男性が自慢げに言いました。
モバP「俺からのプレゼントはまずはこれだな」
スーツの男性は、大きな箱を指さして言いました。
晶葉「気付いてはいたが、あれは何だ?」
モバP「ちひろさんに頼んで、事務所に共有のコンピュータを置くことにしたんだ、好きに使っていいぞ」
晶葉「確かに事務所でも大きな画面を使いたいとは言ったが……」
モバP「まあ、どうせ事務所でコンピュータを使うアイドルは晶葉だけなんだ、専用と思ってもらっていい」
晶葉「まあ、有難く使わせてもらうよ」
モバP「あとは、これだな。さっきのはちひろさんとの兼用みたいなもんだし」
スーツの男性はそう言って小さな箱を取り出しました。
その中に入っていたのは小さな歯車をモチーフにしたブローチでした。
幸子「へえ、プロデューサーさんにしては気が利いてますね」
まゆ「どこで見つけてきたんですかあ?珍しい」
モバP「いや、幸子の買い物に付き合ってた時に偶然見つけてな、これはいいと思って」
晶葉「……やっぱり」
菜々「空気読めません、ですね」
モバP「え、すまん。気に入らなかったか」
幸子「そういう事じゃないと思いますよ……」
晶葉「まあいい、貰っといてやろう。ありがたく思えよプロデューサー」
モバP「何で俺の時だけそういう言い方なんですか……」
そうは言ったものの、ツインテールの少女は一番嬉しそうに歯車のブローチを握っていました。
私には解りますよ、彼女は少し照れ隠しをしてるんだと言う事も。
菜々「それじゃあ、ケーキを食べましょうか。お茶どうぞ♪」
晶葉「ああ、ありがとう菜々さん」
メイド服の女性が手順よく紅茶をカップに注いでいきます。
赤褐色の液体はみるみるうちにカップを満たし、五つのカップにキッチリとおさまります。
モバP「それじゃあ改めて、お誕生日おめでとう」
その言葉を合図に、カップがかちんと音を立てます。
紅茶を一口口に含んだ後、ツインテールの少女がふとこちらを向きました。
晶葉「ぶフッ!」
菜々「ど、どうしたんですか晶葉ちゃん!」
まゆ「紅茶に毒でも入ってましたかあ?」
菜々「し、失礼な!この紅茶にはウサミンパワーが豊富に含まれているだけで……」
幸子「それは何と言うか……」
モバP「菜々、早く話して楽になろう」
菜々「嫌ですよ!っていうか何もしてませんよ!」
晶葉「違う、違うんだ」
菜々「ですよね、ですよね!」
晶葉「何故あれがここにあるんだ!」
そう言ってツインテールの少女はこちらの方に指を向けます。
何があるのでしょう。え、私ですか。
晶葉の指が向いている先にはお月見のイベントの時に使ったロボが一台。
ピコピコと音をさせてこちらへ向かってくるところだった。
まゆ「……全然気が付きませんでしたあ」
晶葉「昨日からこいつが行方不明だったんだよ、全くどうやってこんなとこまで」
モバP「まあ、見つかったなら良かったじゃないか、運ぶのも大変だろうし車で運んどいてやるよ」
幸子「しかし、晶葉さんの家からここまでどうやって来たんでしょう?まさかひとりでに?」
晶葉「そんなとこまでプログラミングした覚えはないんだがなあ……」
不思議そうな表情でウサミンロボに向き合う晶葉。
すると、ウサミンロボが何かを持っていることに気づいてそれを取り上げた。
晶葉「これは……」
菜々「お団子の上にクリームといちごが載ってますねえ……」
モバP「その周りに一個づつオメデトウって書かれた団子もあるな」
幸子「まさか、それバースデーケーキなんじゃ……」
晶葉「確かに団子を作って配る機能はつけたとはいえ……」
菜々「まさか、あの冷蔵庫にあったホイップクリームとかもこの子が入れたんじゃ」
あることないことを言っているうちに、ロボットの頭の画面が切り替わる。
そこには書いてあった文字は。
ロボ『HAPPY BIRTHDAY DEAR MASTER』
そしてスピーカーから流れるハッピー・バースデー・トゥ・ユーのメロディ。
晶葉「……面妖だ」
いちごの載った団子をほおばりながら、晶葉はそう言った。
おわり
乙乙乙
ウサミンロボは可愛い
おつ
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