櫻井桃華「この素晴らしき庶民文化探究を、休日に」 (108)

●注意●
・短編形式
・非シリアス
・嘘知識、誤情報、超偏見、謎集団が見受けられます
・独自解釈している点が多々ありますので、ご了承ください

●登場人物●
櫻井桃華、他
http://i.imgur.com/SYbBRVX.jpg


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1464015526


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【真っ暗な部屋】


千秋「(私の名前は、黒川千秋)」

千秋「(職業は学生、兼……アイドルよ)」

千秋「(私は、自分で言うのも変だけど……割といいとこ育ちのお嬢様、というやつね)」

千秋「(アイドルとしてはまだ駆け出しで、温室育ちのせいか激しい運動、特にダンスは得意ではないけれど……)」

千秋「(でも、やると決めたからにはどんな苦難でも耐えてみせる。そしていつかは頂点に……)」

千秋「(……)」

千秋「(とまあ、私個人の意気込みは置いておきましょうか)」

千秋「(………)」

千秋「(暗くて……まったく辺りが見えないわ。号令はまだかしら)」


千秋「(先ほども言ったけれど、私は『いいとこ育ちのお嬢様』)」

千秋「(そのためか……、芸能界に足を踏み入れてからというもの、俗っぽい文化やコミュニケーションに直面する機会が爆発的に増えて、色々と戸惑ったり……)」

千秋「(突拍子も無い行動や発言で、周囲の空気を凍りつかせたり訝しげな顔をされたりすることも多々あったわ)」

千秋「(そのことに対して気後れない。でも、もう少し上手に付き合っていけたらとは、ひしひしと感じてる)」

千秋「(今後の活動でトラブルがあっても大変だし、なにより……)」

千秋「(事務所の仲間と同じ感覚を共有して笑いあいたい、もっと仲良くなりたい。私自身、あまり人付き合いは得意な方じゃないのだけれど……)」

千秋「(……)」

千秋「(……それを見兼ねてかどうかは知らないけれど……)」

千秋「(深くは触れた事もない庶民の文化に、悪戦苦闘していた私は……………)」










日曜日『チンチコーール!!』









桃華(日曜日)「……ふぅ」


千秋「(…………)」

うんこしてぇよ


千秋「(……一ヶ月前、そんな私は……)」

琴歌「千秋さん、紅茶です♪」スッ

千秋「わっ!! ……あ、ありがとう西園寺さん」

千秋「(琴歌、横にいたんだ……今まで真っ暗だったから分からなかった)」

千秋「(……)」

千秋「(……一ヶ月前に私は、同じ所属で年下の櫻井桃華に『庶民文化探究』を目的とした、この……」

千秋「(【七曜会】という得体の知れない集団? サークル? ……に、招待されたのだった)」

千秋「(あと、この七曜会では読んで字の如く、所属メンバーはお互いの名前を七曜で呼び合っている)」

千秋(水曜日)「(……意味があるのかは分からない。ちなみに私は水曜日)」

桃華(日曜日)「挨拶も済みましたし、どなたか蝋燭に灯をともしていただけるかしら?」

ライラ(火曜日)「じゃあライラさんがつけますですよー」

琴歌(月曜日)「本日は奮発して、お茶菓子も持って参りましたわ♪」

ライラ「おー……!」パチパチ

千秋「……」カチャ


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黒川千秋
http://i.imgur.com/BcJKBOr.jpg
西園寺琴歌
http://i.imgur.com/B6Mc6qt.jpg
ライラ
http://i.imgur.com/cxzJRFg.jpg

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【幕間①】


━━七曜会・喧伝━━

生き甲斐と夢を持ち、
充実したアイドル人生を送りたいとお望みならば、
是非とも七曜会に入りましょう。

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【七曜会本部】


月曜日「チンチコール!」

火曜日「チンチコールー」

水曜日「ち……チンチコール……」

水曜日(千秋)「……」

桃華「ごきげんよう、皆さま」

ライラ「おはようございますー」

千秋「……この挨拶、どうにかならないの?」

桃華「ど、どうにかとは? これは格式と伝統ある礼儀ですのよ?」

千秋「(なんの伝統よ)

琴歌「あら? 木曜日さんと土曜日さんはお休みですか?」

桃華「木曜日さんが欠席とは珍しいですわね。まあいいでしょう」

千秋「今日は4人ね」

桃華「ちあ……水曜日さんは今日で3回目の参加ですわね」

桃華「ハリキって参りましょう♪ 今日も庶民の方々の文化を存分に学ぶのですわ!」


千秋「(この【七曜会】、簡単に説明すれば……)」

千秋「(『庶民文化探究』、つまりは世間知らずの私達が処世術を身に付け馴染むために、場所やジャンルを問わず)」

千秋「(好奇心と向上心を糧に、庶民の文化を身をもって学習するサークルみたいなもの)」

千秋「(……なんかもっと小難しい活動概要の説明をされた気もするけど、あんまり覚えてない)」

桃華「前回の活動も、非常に有意義な結果でした」

ライラ「スープバー、とっても美味しかったですよー」

千秋「(前回は……、たしか『庶民の持て余した時間の有効利用方法』というテーマのもと)」

千秋「(スープバーのみで24時間不眠不休耐久ファミレスを、私と櫻井さんとライラさん、あと木曜日の4人で行った)」

千秋「(3時間くらいで、私以外は寝落ちで脱落した。私は学校の課題が頗る捗ったけど……)」

千秋「(……翌日、体調を崩したのは言うまでもない)」


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【幕間②】


━━七曜会・要綱(現在)━━

庶民の文化を愛し、尊び、じかに触れ学び、
自分達の見識を広めることを唯一の目的とし、
理解しあえる可能性の発見を至上の喜びとする。

最終的な到達点は、
処世術として殊勝な振る舞いと正しい知識、
そして家柄や境遇は違えど良き隣人として対等に、
偏見や固定観念を払拭し隔てなく、
仲間たちとのより良い関係を円滑に築ける交流の形と心構えを身に付ける。

(以下略)

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【七曜会本部】


ライラ「はー」

ライラ「コトカさん、これは美味しい紅茶でございますね」

琴歌「ドイツの老舗メーカー、ロンネフェルトのダージリンですわ♪」

千秋「ん……。ほんと、美味しい」

千秋「ふわっとした清涼感で……クセも無いし、甘いお茶菓子が良く合うわ」

琴歌「ふふっ♪ 気に入って頂けたのならなによりです」

琴歌「……あら?」

桃華「…………」

琴歌「桃華さん、お口に合いませんでしたか……?」

桃華「いいえ、違います」

桃華「折角お持ちいただいたのに、口を付けず申し訳ありません。ですが……」

桃華「わたくしがこのダージリンを飲まないのは、上品な香りで鼻を慣らしたくないからですの」

琴歌「?」

千秋「(……?)」

ライラ「このチョコレートも美味しいですよー」モグモグ

桃華「わたくしがこのガトーショコラを食べないのも、上質な味わいで舌を染めたくないからですの」

琴歌「……」

琴歌「…………」

琴歌「チンチコーラ、日曜日……?」

千秋「(っ!?)」

千秋「(ち、チンチコーラ!? 『ラ』!?)」

千秋「(な……なにその掛け声!?)」


桃華「本日の七曜会の活動テーマ、それはズバリ!」

桃華「『グルメ』、ですわ!!」バンッ!

桃華「グルメ!」

ライラ「ぐるめ」

琴歌「グルメ……っ!」

千秋「庶民の、ポピュラーな食べ物……」

桃華「皆さまも一度は聞き覚えがあるかもしれません。世間一般……いえ、庶民一般では……」

千秋「(庶民一般……?)」

桃華「直訳で『ガラクタ』とまで言わしめる風体の料理が伝播し、それが魂を喚起するまでの美味しさである、と」

琴歌「が、ガラクタ……!?」

千秋「(ジャンクフードの事かしら?)」

桃華「名前からは味までとても想像できませんわ。しかし、庶民の方々の発想力・生命力・創造力にはわたくし、この七曜会の活動を始めてからというもの常に度肝を抜かれています」

琴歌「はい。私も、自分の見識を無さを悔やむばかりですわ」

琴歌「庶民の生活とはかくも逞しく、そして美しいと……」

千秋「(……)」

桃華「この世界には人類……いえ、庶民のまだ見ぬ未知の可能性がたくさん溢れています」

桃華「差しさわりのない程度に、ある程度の予備知識は確認しましたわ」

桃華「さあっ! ライラさんが紅茶とお菓子を食べ終えたら、本日もその可能性と文化を存分に探究しに事務所へ参りましょう!」

琴歌「チンチコーレ!」

ライラ「チンチコーレー」

千秋「……」


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【幕間③】


━━七曜会・合言葉━━

「チンチコーラ」(疑問・質問)
「チンチコーリ」(意義・否定)
「チンチコール」(挨拶・先生)
「チンチコーレ」(祝福・賛成)
「チンチコーロ」(禁句。意味は不明)

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【事務所 ソファー】


加蓮「あむっ」

加蓮「……」モグモグ

加蓮「……ん」

加蓮「……」ズズー

加蓮「……」

加蓮「……はぐっ」

加蓮「……」モグモグ

カタッ


加蓮「(……?)」クルッ





桃華「……」ジー

琴歌「……」ジー

ライラ「……」ジー

千秋「……」ジー







加蓮「!?」ビクッ

加蓮「う、うわあああぁぁっ!!」

桃華「あ」

加蓮「な、なに!? 私の後ろで何やってんの!?」

加蓮「プレーリードッグみたいに4人並んで覗き込んで……ホント何? どうしたの?」

ライラ「これは、ハンバーガーでございますです」

琴歌「まさしくジャンクフードですわ」

加蓮「え?」

桃華「庶民的!」

ライラ「しょみんてき」

琴歌「庶民的……!」

千秋「実に庶民的な食べ物ね」

加蓮「(えっ、どうしよう。フツーにむかつく……)」


千秋「品のな……いえ、豪快な食べっぷり」

琴歌「庶民的ですわ」

桃華「テーブルの雑誌をめくりながら、片手でかぶりつく気取らないその姿……!」

琴歌「実に庶民的ですわ……!」

ライラ「おー……!」キラキラ

加蓮「あれっ? これバカにされてると思ったらまさか褒められてるの?」

加蓮「(千秋さん、コレは一体……?)」チラッ

千秋「(ごめんね北条さん。少しの間だから……)」

桃華「加蓮さん? 貴女が今召し上がっているのは、庶民一般で言う所のマクドナルドのハンバーガーという代物ではなくて?」

加蓮「う、うん。そうだけど……(庶民一般……?)」

桃華「マクドナルド……。休日のお出かけで小腹を空かせたファミリー、あるいは勉強の場を求める学生達にとって、もってこいのお店と聞いています」

桃華「空調が効いた涼しい店内、安くて食べやすいメニュー。敷居も高くなく懐が広い、国内でも屈指の人気を誇るファーストフード店ですわ」

桃華「また、デートでカップルが憩いの場としてよく活用するとも……」

ライラ「おぉー……」キラキラ

加蓮「……」

ライラ「……」キラキラ

加蓮「(……)」

加蓮「ライラ? 良かったらこれ、食べる?」

ライラ「カレンさん、よろしいのでございますか?」

加蓮「うん。まだ2つあるしね。奈緒は食べないだろうし」スッ

ライラ「ありがとうございますー」

ライラ「……」カサカサ

ライラ「……」パクッ

桃華「ら、ライラさん! お味の程は!?」

琴歌「は、歯ごたえは如何ですかっ!?」

ライラ「……」モグモグ

ライラ「……」ゴクン

ライラ「はー……っ」

千秋「……どう?」

ライラ「はい、これは美味しいものでございます」

桃華「なるほど……!」

琴歌「つまりShake Shackのハンバーガーのように肉厚でジューシー、と……!」

千秋「クラウンハウスという所で一度食べたことがあるけど、そんな感じかしら……」ブツブツ

桃華「わたくしも以前これと似たような、神戸牛と黒トリュフを惜しげもなく使ったメニューを食べた経験がありますが……つまりそれ以上、と」ブツブツ

加蓮「(何言ってんだろこの人達……?)」

ライラ「……」モグモグ


琴歌「……しかし」

桃華「?」

琴歌「先ほど、桃華さんから渡された広告の物と見比べると、少々、外見が違うような……なんというか……その……」チラッ

千秋「……写真詐欺?」

琴歌「い、言ってません!」

桃華「琴歌さん。貴女の仰ることは紛れもない事実ですわ」

桃華「広告媒体では見栄えの良い写真を使用し、集客する。しかし実際に店頭で販売する実物は、コストを極限まで削減した似て非なる劣悪な低品質物」

琴歌「わ、私はそこまで言ってません、桃華さんっ!」

桃華「しかし全ては、利益の追求のみに向けられる純粋な熱意、あくなき商売魂ですわ」

琴歌「商売魂……」

千秋「買い手の期待を裏切ってまでも、それは貫くべき意思なのかしら」

桃華「千秋さん、それは少し違います」

桃華「生産者は商品で利益を求めるのは至極当然ですが、それは顧客あっての物種。その顧客をないがしろにするなど、有り得ません」

桃華「それは『夢』や『幸せ』を提供しているからに他なりませんわ」

桃華「それにたとえ写真に多少食い違いがあっても、ライラさんが言っていた通り、味は確かですのよ?」

桃華「その美味しさに加え、目には見えない充足感・多幸感。それを上乗せしたら、全て嘘偽りなく釣り合います」

桃華「彼等は決して期待を裏切らない。お客様第一の精神と呼ばれる至上のコンプライアンスですわ」

千秋「なるほど……。つまりギャップを狙っているのね」

千秋「粗悪な見た目で騙されたと思いきや、その味は筆舌に尽くしがたい絶品……。一つで二度の驚きを体験できる、一種のエンターテイメント性を孕んでいる」

千秋「深い」

琴歌「そういう意図があったんですね。確かに奥が深いですわ」

琴歌「夢や幸せの時間を提供する……。どこか、私達アイドルと似ています」

加蓮「(何言ってんだこの人達)」

ライラ「……」モグモグ


桃華「また、マクドナルドでは高い利益を得るために、抱き合わせ商法と呼ばれるものを随時行っていると聞いていますわ」

千秋「抱き合わせ商法?」

桃華「はい。えーっと………」

桃華「……加蓮さん? マクドナルドで、玩具をオマケとして販売する商品は何と言っていましたか?」

加蓮「ハッピーセットの事?」

桃華「ッ!?」ビクッ!

桃華「は……ハッピーセット!?」

加蓮「え? そうだけど……」

桃華「(……っ!?)」



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★櫻井桃華学習帳★

・ハッピーセット【形容詞】:はっぴーせっと
他者の人格を攻撃、または激しい罵倒や挑発の際に使用する形容詞
用例)「てめぇの頭はハッピーセットかよ!!」
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桃華「グ……グーゼンですわ。まったく意味が違いますもの……」プルプル

加蓮「ど、どしたの桃華? 頭抱えて……」

桃華「い、いえ。なんでもありません」


千秋「ハッピーセット。まさに読んで字の如く、櫻井さんが言っていた『幸せ』や『多幸感』ね」

桃華「そ、そのハッピーセットです。たいして美味しくも人気もない商品を、巷で人気のアニメ等とタイアップするだけで飛ぶように売る商法、と聞いたことがありますわ」

加蓮「(……)」

琴歌「それは在庫のロスを上手に削減する目的もあるんですね!」

千秋「庶民は効率の鬼ね」

千秋「これは私達の業界で言う所の、バーター出演と通じている所があるわ」

千秋「所属の有名アイドルをテレビやライブ等に出演させる際に、格下のアイドルと組ませて出演させることで、プロダクション側にとっては利益率や知名度を高めたりする効果があるという、あの……」

琴歌「厳しい業界を生き抜く知恵とも言えますわ。本当に鮮やかな手腕です」

桃華「このハンバーガーも然り。幾ら美味しかろうと、売ればければ意味がない」

桃華「それを憂慮し、発想を飛躍させるのです。ならば売れ筋の良いものとセットで販売させてしまおう、と」

千秋「……じゃあ、そのセットで付けている人気アニメとタイアップした玩具というのはどれの事?」

加蓮「(!!)」

桃華「さぞ大衆に受け入れられそうな、可愛らしいキャラクターなどが抜擢されやすいと聞きましたわ!」

琴歌「なるほど! 低年齢層をターゲットに絞り、心をがっちり掴むのですね♪」

加蓮「え、えっと……」

千秋「?」

桃華「どうしましたの、加蓮さん?」

加蓮「(……)」

加蓮「……こ、これです」スッ






http://i.imgur.com/77LiL6R.jpg






桃華&千秋「(───ッ!?)」



桃華「こ……、この邪悪なオブジェは一体!?」プルプル

琴歌「た、大衆に受け入れられそうな、可愛らしいキャラクター……!?」ガクガク

桃華「し、しかも3体も!? 加蓮さん、貴女は一体……?」

加蓮「ち、違うって! わ、私は、奈緒がコレを欲しいって言ってたから3つも頼まれて……!」

千秋「に、人気作品とタイアップという名目で、低品質でチープな玩具を付けるだけで高額でも飛ぶように売れる……、庶民は湯水のごとく金を落とす……」

桃華「偏見ですわ千秋さん! これは『ハッピーセット』……つまり、し、しし幸せの、しょ、商品っ!」

桃華「し、庶民の方々は……こ、これを幸せと享受し、精神の安寧を……!!」

琴歌「い、いえっ! 待って下さい桃華さん、千秋さん!!」

桃華&千秋「!!」

琴歌「これは……ある種、もはや芸術の域と呼べるのでは?」

桃華「げ、芸術!!」

千秋「こ、これが芸術……!?」

琴歌「そうですわ。崇高な芸術とは、かくも大衆からは理解されにくいものです」

琴歌「ならばこのハッピーセットの玩具も……つまり私達の理解が至らないだけで」

琴歌「庶民の芸術なのではないでしょうか」

桃華「芸術っ!」

千秋「なんということなの……」

千秋「どうやら私達は庶民の文化はおろか、その審美眼や感性すら……理解とは程遠い所にいるのかもしれない」

桃華「憧れとは……理解とは程遠い感情ですわね」

千秋「(……憧れ?)」

加蓮「……」

ライラ「ふはー……っ」カサカサ


桃華「……加蓮さん」

加蓮「は、はい」

桃華「わたくし達はまたひとつ庶民の文化の一端に触れ、その理解を深めることが出来ましたわ」

桃華「貴重な時間をありがとうございました」ペコリ

桃華「それでは、次へ参りましょうか。みなさん」

琴歌「お食事中失礼しました。では……」ペコッ

ライラ「カレンさん、このハンバーガーはとても美味しかったですよ。ありがとうございますです」ペコー

千秋「北条さん、その……」

千秋「…………」

加蓮「……」


───ガチャ、バタン


加蓮「……」

加蓮「…………」

加蓮「………………」




ガチャ!


奈緒「おっ待たせー加蓮」スタスタ

加蓮「……」

奈緒「いやー、ある意味スゲーなこのクオリティ! 比奈さんも興味津々だったよ」

奈緒「将来プレミア付くとか冗談で言ってたけど、流石に無いよなー。これじゃ───」



加蓮「だああああぁァァーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」



奈緒「───!?」ビクッ

加蓮「庶民で……、庶民で何が悪いっ!!」

加蓮「奈緒、私はジャンクフードが好きだ! 奈緒、私はジャンクフードが好きだ!!」

奈緒「お、おい加蓮!?」

加蓮「奈緒!!」

加蓮「私はジャンクフードが大好きだ!!!」

奈緒「(えっ、HELLSING?)」

加蓮「こちとらこの世に生まれ落ちた時からマックの玩具と生を共にした、ジャンクフードが体にも舌にも染みついたド庶民じゃい!!」

加蓮「そんなに庶民の食い方が知りたきゃあ、ハンバーガー100個でも200個でもナンボでも持ってこいやセレブでもがァ!!」

加蓮「そしたら私の咀嚼のタイミングも一挙手一投足夢に出てうなされるまで眼前で見せつけてやれろろォォァ!?」

奈緒「お、おい落ち着けって!」

加蓮「奈緒も奈緒だッ! こんなちゃちで不気味な人形のために鑑賞保存布教用とかほざいて3つも買いやがってぇぇぇ!!」バキィ!

奈緒「ッ!? ああああぁっ!! サスケの首がああァーーーーーーっっ!!」


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──

北条加蓮、神谷奈緒
http://i.imgur.com/R7ebTKC.jpg

また明日

もしや牛丼の人…?

サスケェ!

なにこの語彙力表現力が豊富なギャグSS

サスケはおめーのおもちゃのちゃちゃちゃ!

チャクラ宙返り草生える

街の七曜会か

これは琴歌の出る貴重なSS

加蓮は犠牲になったのだ…

チャクラ宙返りは3000円くらいの値打ちのある立派な芸術品だぞ!!!
乙乙

西園寺桃華……???

(追加メンバーに入りそうなのは、ゆかり、菲菲、星花…)
(だがしかし、)
(島村家が庶民だなんて、絶対認めねぇ!)

勝手なイメージだけどメアリーとかも裕福そう

▲訂正

>>5
×千秋「(琴歌、横にいたんだ……今まで真っ暗だったから分からなかった)」
○千秋「(西園寺さん、横にいたんだ……今まで真っ暗だったから分からなかった)」

>>13
×(挨拶・先生)
○(挨拶・宣誓)

>>19
×桃華「憧れとは……理解とは程遠い感情ですわね」
○桃華「憧れとは……理解から遠い感情ですわね」

>>20
×加蓮「そんなに庶民の食い方が知りたきゃあ、ハンバーガー100個でも200個でもナンボでも持ってこいやセレブでもがァ!!」
○加蓮「そんなに庶民の食い方が知りたきゃあ、ハンバーガー100個でも200個でもナンボでも持ってこいやセレブどもがァ!!」

──
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【幕間④】


━━七曜会・規律━━
ルール1:活動中は基本的に相手を見ること
ルール2:日曜日には基本的に服従
ルール3:基本的に本名を出さない
ルール4:処分を受けた者はその処分者に基本的に従う
ルール5:セクハラは基本的に厳罰
ルール6:七曜会のヒミツは基本的に漏らさない
ルール7:恋愛可。お金で買えない価値がある
ルール8:常に視野を広げ目標に邁進すること
ルール9:???
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──
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【レッスンルーム前 自販機】


夏樹「……」ゴクゴク

夏樹「ぷは……」

夏樹「…………」

夏樹「……ン?」



桃華「あら、夏樹さん。お疲れ様です」

ライラ「おつかれさまでございます」

琴歌「お疲れ様です♪」

千秋「お疲れさま。今レッスン中?」

夏樹「ん、お疲れさま」

夏樹「終わって一息ついてたトコさ。だりー待ちでね」

夏樹「だりーの奴、今日は精彩を欠いてたって、いま明さんにこっぴどく注意されててな」

ライラ「おー……!」キラキラ

夏樹「?」

ライラ「……」キラキラ

桃華「夏樹さん、その飲み物は?」

夏樹「これか? そこの自販機のファンタだよ、ファンタグレープ」

琴歌「まあっ!」パンッ

千秋「……?」

琴歌「私、コマーシャルで見たことがありますわ! 体がハジけ飛ぶ美味しさの、炭酸飲料ですね♪」

千秋「(か、体がハジけ飛ぶ……)」

夏樹「ハハハ。そいつはロックな飲み物だね」

夏樹「でも安心しなよ琴歌、流石に爆発はしないからさ」

琴歌「ふふっ♪ じゃあ折角なので、私も一本購入いたしますわ!」スッ

ガチャコン♪ ピッ!
ガコン!


琴歌「よっと……つめたっ」ガサガサ



───ピピピピピピピ…


琴歌「(……?)」


ピ……ピ……

ピンポーン♪


夏樹「おっ!」

琴歌「な、何の音……?」

夏樹「やったな、大当たりだぜ琴歌!」

琴歌「な、何がですか??」

夏樹「クジ付きの自販機さ。数字が揃うと、当たりでもう一本貰えるんだ」

琴歌「!!」

琴歌「本当ですかっ! や、やりましたわ♪」グッ

桃華「おめでとうございます♪」

夏樹「良かったな」

千秋「日頃の行いの賜物ね」

ライラ「おめでとうございますー」

パチパチパチパチ♪
 パチパチパチパチ♪


琴歌「え、えへへ……あ、ありがとうございますっ♪」

琴歌「ではもう一本は、ライラさんにプレゼントです♪」スッ

ライラ「コトカさん、貰ってもいいのでございますか??」

琴歌「はい、モチロンです」

ライラ「ありがとうございますー」

ライラ「……」カシュッ

ライラ「……」ゴクゴク

桃華「ら、ライラさん! お味の程は!?」

琴歌「の、飲みごたえは如何ですかっ!?」

ライラ「……」ゴクゴク

ライラ「……」ゴクン

ライラ「ぷはーっ」

千秋「……どう?」

ライラ「はい、これは美味しいものでございます」

桃華「なるほど……!」

琴歌「つまり、ポール・ジローのグレープジュースさながら甘美なテイスト、と……!」

千秋「イタリアのフランチャコルタのような、熟したシャルドネの豊かな風味が、柔らかく滑らかな泡で口いっぱいを優しく包むような感じかしら……?」ブツブツ

桃華「炭酸飲料……。あまり馴染みはありませんが、ホテルのサービスで付くペリエやオレッツァに勝るとも劣らない爽やかな喉ごし、と」ブツブツ

夏樹「(……?)」

ライラ「……」ゴクゴク


琴歌「では私も、いざっ! ……っと!」カコン!

琴歌「ふぅっ!」グイッ

夏樹「お。良い飲みっぷり」

琴歌「……っ、……っ……っ!」ゴキュゴキュ

桃華「イッキ、イッキ」パンパン

ライラ「ハイハイハイ」パンパン

千秋「(!?)」

夏樹「っ!? お、オイ無理させんなよ」

桃華「? 炭酸一気飲みは庶民一般のユーモアな召し方ではありませんの?」

夏樹「ち、違うよ。どこの世界の常識だ……(庶民一般……?)」

桃華「そうなんですの? これは学習帳を修正しなければなりませんわ」

琴歌「ぷはぁーーっ!!」

千秋「美味しい?」

琴歌「はいっ♪ 絞り立てのような、実にフレッシュな喉ごしですわ♪」

琴歌「ぶどう一粒一粒の果実が弾むようなジューシー感と、まろやかな甘味の中にピリピリと力強い炭酸っ!」

琴歌「まるで冷たい玉が喉の奥でパチパチとハジけるような衝撃、そして全身を活力が駆け巡るような解放感っ!」

琴歌「後味もサッパリで、まさに謳い通りのハジけ飛ぶような爽快感でしたわっ!」

琴歌「フッ!」ドヤッ

夏樹「おー……、なんか食レポっぽいぞ」パチパチ

千秋「(西園寺さん……すっごい涙目。炭酸キツいのかしら……)」

琴歌「ふ、ふふふっ……! こう見えて、こっそり練習しているんです!」

琴歌「食レポのお仕事ならいつでもバッチこいですわっ!」ドヤッ!

桃華「流石ですわ、琴歌さん♪」

夏樹「ナチュラルで良かったぜ」

千秋「ええ、ホントに」

ライラ「ライラさんも頑張りますですよー」

パチパチパチパチ♪
 パチパチパチパチ♪


琴歌「え、えへへ……あ、ありがとうございますっ♪」

琴歌「(……♪)」チラッ


【★まるごとグレープの恵み エキス入り♪】


琴歌「(……?)」チラッ







【無果汁】






琴歌「(───ッ!?)」ゾクッ!

琴歌「げふぅっ!!」

千秋「さ、西園寺さん!?」


琴歌「ゲホっ! ゲホッゲホッ!!」ガクン!

千秋「!」

夏樹「おい、大丈夫か?」

琴歌「あぐっ……!」

琴歌「く、苦しいっ!!」グググっ

夏樹「(!?)」

琴歌「か、か、果汁が!? む、むむむ無果汁ッ!?」ガクガク

桃華「無果汁!」

ライラ「むかじゅー」

琴歌「無果汁……っ!」

千秋「果汁が……ゼロパーセント?」

琴歌「Non calorie fruit juice!?」

琴歌「あぅっ、あう……、あァ………っ!!」ガクガク

桃華「琴歌さん! お気を確かに!!」

琴歌「グ、くっ……フゥー、フゥー……」プルプル

夏樹「(……)」

琴歌「はぁッ、か、はッ……! ……わ、私は今いったい何を摂取したのでしょう桃華さん!?」

琴歌「カラダが熱いっ、胸が苦しい! は、激しい悪寒が身を刺すような……!」

琴歌「ば、爆発四散しますわっ!!」

桃華「琴歌さん!!」

夏樹「(楽しそうだなコイツら……)」

ライラ「……」ゴクゴク


琴歌「さ……先程のハンバーガーのミートパテですら、どの部位かは謎であれど100%ビーフが使用されていました!」

琴歌「つまり有肉! 有肉ですわっ!」

夏樹「ゆ……有肉て」

琴歌「謎肉であれど、無肉ではありませんでした……ですがこれは無果汁!!」

琴歌「エキス入りと堂々と謳っておきながら……無果汁!!」

琴歌「恐怖の極みですわ!」

琴歌「けふっ!」

千秋「だ、大丈夫?」

琴歌「こ……、これはレッキとした不正表示防止法違反ですっ!」

琴歌「夏樹さん、目を覚ましてくださいっ! この劇物は今すぐポイしましょうっ!」ガシッ!

夏樹「ま、まあ落ち着けよな」

琴歌「……っ!!」

夏樹「(そんな潤んだ目で見つめられても……、よ、よわった)」

千秋「琴歌、落ち着いて」

千秋「無果汁と表記されているならば、果汁が入っておらずとも少なくとも法律違反ではないわ」

琴歌「そ、それはそうですが……。で、でしたら何故グレープなどと……」

桃華「グレープ果汁100%のジュースと、この無果汁のファンタの違いが分かります? 琴歌さん」

琴歌「……」

琴歌「モチロン。それは原材料と味の品質ですわ」

琴歌「このファンタがたいへん美味なのは認めます。しかし……っ」

桃華「……そう、それが一つ。もう一つは値段です」

桃華「たとえ体に悪い合成甘味料や食品添加物がふんだんに盛り込まれていようとも、たとえ原料にグレープの成分が全く含まれておらずとも」

桃華「生産者も消費者もお互い納得しているのです。安ければ、値段が安ければ……」

桃華「そして美味しければよい、美味しいから大丈夫だと、これを選択し続けているのです」

琴歌「つまり……企業が騙しているのではなく、人々はすすんで自分をごまかし、現実から目を背け続けているということですか?」

千秋「安価な代替品で、現実逃避を?」

琴歌「し……、庶民の方々は、精神の安定を図る術を獣の本能のように熟知されているのですね」

琴歌「もし私も、こんな恐ろしいものだとあらかじめ知っていたら、先ほどは……」

桃華「……いいえ。それは少し違います、琴歌さん」

琴歌「えっ?」

桃華「庶民の方々は自分を偽っているのではなく、理解しているのです。どちらの商品も、異なる美味しさを持つ魅力的な飲み物だという事実を」

桃華「たとえ果汁が入っておらずとも……、グレープのようなほのかな酸味と甘み、そして炭酸のハジけるような爽快感」

桃華「それはまさしく本物。琴歌さん、貴女が先程ほど感想を述べたように」

琴歌「……!」

桃華「決して、紛い物と貶めてはいけませんわ。これは無から有を、低コストから本物に近い美味しさを追い求めた技術者の研鑚の賜物なのです」

琴歌「無から、有を……!」

千秋「……革命的生産力っ!」

夏樹「(話についていけない)」

ライラ「……」ゴクゴク

ロックだなあお嬢様方は

この話についていけない常識人、夏樹
そこがロック


桃華「仮に……、一流の画家が手がけた絵画を、精巧な卓越した技術を持つ一流の贋作氏が模倣したとしましょう」

桃華「嗜みを持ち造詣が深いわたくし達ならば、本物を見分けることが出来るかもしれません。しかしもしそうでなければ……」

桃華「両者の違いを言い表すとすれば、せいぜい使われている絵の具の成分と、銘の有無くらいでは無くて?」

桃華「出来栄えではなく『本物』というステータスに囚われ、その物の本質を見失う」

桃華「断じて、あってはならない事ですわ」

千秋「……」

桃華「味は互角で、値段に大幅な差があるとすれば……、貴女はどちらをえらびますの? 琴歌さん」

桃華「更に判断材料として、庶民の金銭的状況を鑑みれば……答えは明白ですわっ!!」

琴歌「うっ……」

桃華「安くてウマい! 最強のツープラトン! 食品添加物が及ぼす健康リスクはノープロブレム!」

桃華「美味しいは正義、美味しいから大丈夫、なのですわ!!」

桃華「美味しいから大丈夫!」

ライラ「おいしいからだいじょうぶ」

琴歌「美味しいから大丈夫……っ!」

千秋「短く、太く生きる……これが庶民の生き様なのね」

夏樹「……」グビッ

琴歌「ですが……ですが納得できません!」

琴歌「だって添加物が……っ! 体に悪い添加物が……っ!」

桃華「庶民の方々の生命力を侮ってはなりませんわ。免疫力、新陳代謝、どれをとってもわたくし達より遥かに勝るバイタリティ」

琴歌「で、ですが……」

桃華「それに」

桃華「とある地上最強の庶民の殿方は、こう仰いました」

琴歌「?」

桃華『防腐剤、着色料、保存料……様々な化学物質、カラダによかろうハズもない』

桃華『しかしだからとて健康にいい物だけを採る。これも健全とは言い難い』

桃華『毒も喰らう栄養も喰らう。両方を共に美味いと感じ、血肉に変える度量こそが食には肝心だ』

琴歌「!!!」

桃華「強くなりたくば喰らうッッ! つまりブルーブラッドで貧弱なわたくし達とは一線を画す、彼ら庶民の強さの秘訣……それはッ!」

桃華「この添加物の摂取に他ならないのですッ!!」

琴歌「なっ……」

千秋「なんですって……!?」

夏樹「ライラ、それ美味いか?」

ライラ「はい、もうバッチグーですよー」ゴクゴク

夏樹「そうか。そりゃ何よりだ」ゴクゴク

最初、千秋も常識人かと思ってたがそんなことはなかったぜ!!
そして、夏樹は考えるのをやめたw

ライラさんは何食べても平気そうなイメージ
逆に出てきてはいないけどかな子はおかし以外を食べると体調崩すイメージ

よかった加蓮のように発狂するなつきちはいないんだね

琴歌「……っっ!」スッ

千秋「西園寺さん?」

琴歌「……ぐっ……っ……っ!」ゴキュゴキュ

琴歌「ぷはあっ!」

ライラ「はーっ……。御馳走さまでございました」プハー

琴歌「ハー、ハーッ…………夏樹さん……!」

夏樹「うん?」

琴歌「私、これからはもっともっと強くなりますわ!」

琴歌「私は今まで臆病だったのかもしれません。貴女達のように……ロックで鮮烈に、その生き様を見習───」

琴歌「───けふっ!」

夏樹「………まあ」

夏樹「今度奢ってやるよ、これ」

琴歌「はいっ! 是非っ!!」

桃華「では夏樹さん、お疲れ様でした」

千秋「お疲れさま」

ライラ「ナツキさん、お疲れさまでございました」

ライラ「……ヒクッ」

───スタスタスタ


夏樹「……」

夏樹「…………」ピッ

夏樹「………………」ガコン!




ガチャ!

李衣菜「ハァ……」トボトボ

夏樹「おっ。来たな」

李衣菜「アー……疲れた。もうダメ、明さん厳しスギ……」グッタリ

夏樹「元気出せって。ほら、コレやるから」スッ

李衣菜「おっ? ファンタじゃん」

李衣菜「へへっ、気が利くねぇなつきち。サンキュー」カコン

グビッ、ゴキュゴキュゴキュ、ゴキュゴキュゴキュゴキュ!


李衣菜「ぷっっはぁーーーっ!」

李衣菜「げふっ! あーっ、生き返ったッ!」

夏樹「……」

李衣菜「やっぱキツぅいレッスンの後には、炭酸イッキに限るよね♪ まあまだ全然残ってるけど」

李衣菜「疲れなんて全部ぶっ飛んじゃうね、うん。絶対中毒性あるよ、この炭酸の刺激は!」

夏樹「…………」

李衣菜「……うん? どしたのなつきち、じーっとコッチ見て……」

夏樹「……いや。なんつーかさ?」

夏樹「……アタシ達って、庶民だなって思ってさ」ハァ

李衣菜「はぁーん?」

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──


木村夏樹、多田李衣菜
http://i.imgur.com/pHEtyd9.jpg

また来週
番号振るの忘れてました、申し訳ない

何となくりーながふみふみに弁当作るSS思い出したけど、もしかして同じ作者さん?

超理論に見えて案外的を射ている…?

駄菓子屋にある着色料まみれの細長いゼリー喰わしてやりたい

ああ、これ美城十傑の作者さんか。納得

勇次郎のセリフというか刃牙の中の言葉はは大概頭がおかしいものも多いがこの台詞ははそれなりに説得力がある
日本人は清潔過ぎて海外で食あたりするとか最近は兄弟姉妹が少なくなった故一般家庭でアレルゲンに触れる機会が減りアレルギー持ちが増えたとかそこら辺を食に適応した話だな

黙れチンカス

言うほど勇次郎って庶民か?むしろセレブの部類でしょあの人

セレブがエア味噌汁なんぞ作る筈がない

続く?


▲訂正

>>17
×加蓮「ど、どうしたの桃華、頭抱えて……」
○加蓮「ど、どうしたの桃華ちゃん、頭抱えて……」

>>41
×千秋「琴歌、落ち着いて」
○千秋「西園寺さん、落ち着いて」

>>44
桃華「仮に……、一流の画家が手がけた絵画を、精巧な卓越した技術を持つ一流の贋作氏が模倣したとしましょう」
桃華「仮に……、一流の画家が手がけた絵画を、精巧な卓越した技術を持つ一流の贋作師が模倣したとしましょう」

──
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【幕間⑤】


琴歌「うぅ……」

千秋「どうしたの?」

琴歌「先ほどは勢いと流れで押し切られてしまったものの……」

琴歌「やはり、添加物が人間を強く健やかに育てるというのは、いかがなものかと」

千秋「……まあ、確かに。極論とも考えられなくもないかもね」

桃華「あら? では身近で分かりやすい例えがありますわ」

千秋「それは?」









桃華「事務所に常備されている、スタミナドリンクやエナジードリンクを飲んでみては如何でしょう?」









琴歌「ぜ、絶大な説得力……っ!」ガタガタ

ライラ「た、確かに……っ」ブルブル

千秋「!? ら、ライラさんッ!?」


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────
──

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【吉野家】


桃華「……」

千秋「……」

琴歌「……」

ライラ「……」グゥゥ



店員「おまたせいたしましたー」

店員「こちら牛丼並、お一つです。以上で御揃いでしょうか?」

ライラ「ありがとうございますー」

店員「ごゆっくりドウゾー」スタスタ

桃華「……」

桃華「噂どおり……いえ、期待通りですわね」

琴歌「オーダーを取ってから、10秒も立たずに品を持って来られましたわ……!」

琴歌「10分じゃないです、10秒ですわ……っ!」

千秋「……何かの冗談か、あるいは事前に仕込んだドッキリかと思ったくらいよ」

ライラ「じゃあ、いだだきますですよ」

ライラ「……」パクッ

ライラ「……」パクパク

桃華「ら、ライラさん! お味の程は!?」

琴歌「ひ、火の通り具合は如何ですかっ!?」

ライラ「……」モグモグ

ライラ「……」ゴクン

ライラ「おー……」

千秋「……どう?」

ライラ「はい、これは美味しいものでございます」

桃華「なるほど……!」

琴歌「つまり中南米のチキン・エンチラーダのような見た目の彩や豪奢さは無くとも、それを補って余りある美味しさ、と……!」

千秋「以前に浅草今半という老舗のお店で食べた牛丼より、ボリュームがありそうね……使っている部位のせいかしら?」

桃華「ライラさんの舌をそこまで唸らせるとは、なかなかの素材ですわ。銘柄はなんでしょう? 松坂? 神戸? それとも近江……?」ブツブツ

ライラ「……」モグモグ


ライラ「……」モグモグ

ライラ「…………」パクパク

桃華「(……)」グゥゥ

琴歌「ライラさんの思い切りのいい食べっぷりを見ていると、こちらもお腹が空いてきますわね」

千秋「(そういえば私も、朝から何も食べて無かった……)」

ライラ「……」モグモグ

千秋「……」

千秋「心なしか、このお店にはスーツ姿の男性の割合が多く見受けられるわ」

琴歌「……確かに!」

琴歌「くたびれたスーツを被り背中からでも倦怠感が漂う初老の男性……新品の靴と社員証が光る精悍な顔つきの男性……女性の客も……」

琴歌「どなたも、一心不乱に手元の牛丼をかき込んでいきますわ。さながら、何かに追われるように」

桃華「お二人とも、良い着眼点ですわ」

桃華「彼等は一介のサラリーマン。我が国の経済を担い導く、尊い企業戦士です」

桃華「戦いに明け暮れる彼等に休息を付く暇は無い。鬱屈した日常の中、流行の物事などには目もくれず、あくせく働き、懸命に汗を流し、帰宅すれば泥のように眠る」

桃華「仕事に従事する理由。それは生きがいやお金のためと人それぞれ……そこは言及しませんが」

桃華「一つだけ言える事は、その働く姿は美しく、非常に好ましいものですわ」

桃華「貴方達の身近にも、そのような殿方がいるのではなくて?」

千秋&琴歌「(……?)」

千秋「……日夜骨身を惜しまず働く彼等は、常に時間に追われている。つまり……」

桃華「察しがよろしくてよ、水曜日さん。この牛丼チェーンのモットーは早さと安さと美味さ」

桃華「つまり独り身で働き盛りの殿方のニーズに、完璧に応えた飲食店と言っても過言ではなありませんわ」


▲訂正

>>64
×桃華「つまり独り身で働き盛りの殿方のニーズに、完璧に応えた飲食店と言っても過言ではなありませんわ」
○桃華「つまり独り身で働き盛りの殿方のニーズに、完璧に応えた飲食店と言っても過言ではありませんわ」


桃華「庶民のおサイフに良心的な値段! 忙しい時にも手軽に食べれる量! そしてライラさん納得の美味しさ!」

桃華「マックがファミリーやカップルの憩いの場なら、吉野家はさながらサラリーマンの安住の地と言えるでしょう!」

桃華「Pちゃまもまだ新人の時、ここの並盛テイクアウトを三食に分けて一日を凌いでいたという苦節があったらしいですわ!」

千秋「へ、へえ……」

琴歌「しかし……」

琴歌「時間や生活が逼迫しているからとはいえ、これだけ美味しい物をゆっくり召し上がれないのは少しかわいそうですわ」

ライラ「……」モグモグ

千秋「確かにね」

千秋「でも今日は折角だし、ライラさんはゆっくり食べ───」

桃華「!!!」



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★櫻井桃華学習帳★

・ロット【名詞】:ろっと
一度で作る生産量や個数を表し、ジャンクフード店におけるあたりまえのマナーを指す名詞。4人注文単位が主流で、ロットバトルは早さと品格が求められる
用例)「当時私は向かうところ敵なしの、売り出し中のロットデュエリストで、その日も三田本店で大豚Wの食券片手に、隣のロッターにデュエルを申し込む」
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桃華「い……!」

桃華「いけませんわ千秋さんっ!」

桃華「ライラさん、食べる手を緩めてはなりません!!」バンッ!

桃華「ろ、ロットが! ロットが乱れてしまいますわっ!」

千秋「───!?」

ライラ「……」モグモグ


千秋「ろ……ろっと?」

桃華「ジャンクフード店における、命より重い遵守すべき戒律ですわ!! 基本は4名注文で1ロット……」

千秋「(1ロット!?)」

桃華「わたくし達4人は1つの注文のみ。つまりお店側からしたらおひとり様と同義……ならば、わたくし達が組まれたロットは……!」

桃華「先ほど琴歌さんが仰っていた御三方とのバトルですわ!!」

琴歌「ど、どういう基準の勝負なのですか?」

桃華「お店のマナーを守りつつ如何に早く食すか……、いいえ」

桃華「味わうのではなく、胃に流し込む。これが全て……!」

桃華「そこには穏やかな調律も模範となる規律も存在しない、食うか食われるかの弱者淘汰の厳しい現実……!」

千秋「(飲食店よね、ここ?)」

桃華「!! 女性客があわてて咽ましたわ、今がチャンスですライラさん! せめて最下位だけは───」




ライラ「……」パクパク

ライラ「………」ムシャムシャ

ライラ「…………」モニュ…モニュ…

ライラ「……………」ナポ…





桃華「───っ!!!」

千秋「ゆ、ゆっくり幸せそうに味わって食べている……」

琴歌「他の客との争いなど、まるで気にも留めず……」

桃華「ら、ライラさん…………あ、貴女は……っ!!」プルプル

ライラ「……」モグモグ


琴歌「こ……桃華さん?」

桃華「……」プルプル

千秋「あ……」

千秋「初老の男性が………ほかの二人も」

千秋「……食べ終えて、店を出てしまったわ」

桃華「……」

琴歌「これはつまり、私達は敗れたという事ですか?」

桃華「……ッ」

ライラ「……」モグモグ

桃華「ライラさん、貴女は……貴女は…………っ」




桃華「貴女は、庶民の食事作法の極致に至りましたのね……!」




琴歌「極致……?」

桃華「……はい」

桃華「とある孤独の庶民の殿方は、こう仰いました」

桃華『モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ』

桃華『独りで静かで、豊かで……』

千秋「……孤独な、食事?」

桃華「そうですわ。いかにお店の厳格な規律が存在しようが、周囲との兼ね合いや作法を強要されようが……」

桃華「食事と言う行為は、食べ物を胃に流し込み栄養を獲る生存の営みのみに非ず」

桃華「そこにあるべきは、何より豊かに、食を楽しむという心が前提としてなければなりません」

桃華「時間と金銭的に食事処の選択肢を余儀なくされても、いえ、余儀されるからこそ……!」

桃華「そこでの食事を全力で、値段以上の満足感求めて、心ゆくまで満喫する気概が」

桃華「胃だけではなく、仕事で摩耗した精神を潤すためには……庶民の方々には、必要なのではないでしょうか」

千秋「自分を慈しむ、食事……」

琴歌「ライラさんは、それを知っていたんですね」

桃華「……大勢の庶民の方々は、食事の本当の意味を見失っておられますわ」

桃華「顧客のニーズに応えるという思いやりと気構えは、素晴らしい事ですわ。しかし悲しきかな、その思いやりこそが……」

桃華「食の意味を見失わせてしまう結果に繋がってしまった」

桃華「食事を空腹を満たす過程としか認識できないうちには、本当の美味しさには辿りつけない」

桃華「わたくし達も反省し、この事実を深く受け止め啓発していかなければ……」

ライラ「はー……」

ライラ「……ふー」

ライラ「ごちそうさまでございました」


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【幕間⑥】


『櫻井桃華学習帳(通称・モモカ学習帳)』

櫻井桃華学習帳とは、庶民文化探究を目的とする七曜会リーダー・日曜日である櫻井桃華が活動に支障が出ないよう、とあるツールを使って独自に収集・調査した庶民文化の用語や知識や解説がまとめられた手記であり、全4巻から成る汗と涙の結晶である


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余計なことをゴチャゴチャ言わないライラさんが一番品良く感じる

ちゃまが賢すぎて一週回ってアホな子になっている気が…
かわいいから問題ないけども

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【外】


ライラ「吉野家の牛丼は、たいへん美味しかったですよー」

ライラ「バッチグーでした」

琴歌「ふふっ、確かに美味しそうに食べていましたね」

千秋「豪快と言うか……あまり丁寧じゃない食べ方のほうが、見ていて不思議と美味しそうに感じるわよね」

桃華「庶民の文化では、料理の美味しさを表す手法として食事中に衣服を脱衣する作法もあるらしいですわ」

千秋「脱衣!?」

琴歌「だ、大胆と言うか……どことなく前衛な芸術要素を感じますわ」

千秋「(そ、そうかしら……)」

桃華「……さて」

桃華「お昼時、そろそろ小腹が空きませんこと? わたくし達も、何か召し上がりましょうか」

ライラ「おぉー……そうですねー」

千秋「そうね。ライラさん以外、ご飯は食べてないし」

琴歌「どこかお店をさがしましょうか?」

桃華「いいえ月曜日さん。さがす必要も手間もありませんわ」

琴歌「?」

桃華「庶民の味方を頼りましょう。どこにでも点在し、物資は何でも揃っているという夢のようなショップを」

千秋「……それは?」

やっぱりのあさんの牛丼の人じゃあ…


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【ファミリーマート前】


琴歌「……」ペリッ

千秋「……」カサカサ

琴歌「『ファミチキ』……ファミリーマートの、フライドチキン」

千秋「安直……けど庶民らしい、覚えやすい親しみのあるネーミングね」

桃華「…………」ガサガサ

桃華「む、むぅ。手が油でべたべたになってしまいますわ」

ライラ「モモカさん、モモカさん」

ライラ「中腹からキリトリ線に従って、紙袋を破ればいいんでございますよー」ビリッ

桃華「! なるほどっ。賢いです、ライラさん!」

琴歌「確かに……どうせ不要な袋ですし、理に適っていますわね」

琴歌「……よっ」ビリッ

千秋「……えい」ビリッ

桃華「ふ、ふふっ……」ドキドキ

桃華「ではいただきましょう。このコンビニのフライドチキンとやらを……!」

桃華「Pちゃまがよくお昼に購入していらっしゃるから、興味があったんですの。このファミチキ」

琴歌「では、いただきます」

ライラ「いただきますですよー」

桃華「……はむっ!」

千秋「あむ……はふ」

ライラ「……」モグモグ


桃華「……琴歌さん。いかがでしょう?」

琴歌「はい、大きさは申し分ないですわ」

琴歌「お腹いっぱいにはならず、かといって足りないという量でも無い」

琴歌「『おにぎりやサンドイッチと合わせてちょっともう一品』という時に、まさにうってつけの絶妙なボリューム」

千秋「……確かに。価格もお手頃だし、なにより食べやすい」

千秋「商品を選んでいざレジでお会計! ……って時に横目に移る、このジューシーな憎い誘惑」

千秋「庶民の自制心・克己心では、容易に打ち勝てるものではないわ」

琴歌「肝心のお味は………はぐっ」パクッ

琴歌「むも……」パクパク

琴歌「ふむふむ! なるほふぉ!」モキュモキュ

琴歌「……」ゴクン

桃華「お味はいかがです?」

琴歌「はい、衣は小気味良く、サクサクとしています」

琴歌「お肉は程良い弾力で歯ごたえも良く、溢れ出る肉汁とスパイスの香りは噛むほど増して食欲をどんどん刺激しますわっ!」

琴歌「丁度良いバランスの美味しさ。その一言に尽きるでしょう」

琴歌「まさにライブ直前、楽屋でエネルギー補給用として一心不乱に齧り付く未央さんのお姿が浮かぶようなテイストでした」

琴歌「……これは違いますわ」

千秋「(……えっ?)」

ライラ「ごちそうさまでございました」

桃華「(……)」

桃華「ちょっと、美味しすぎますわね」

千秋「?」

桃華「次ですわ。次に行きましょう」


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【セブンイレブン前】


千秋「……はぐっ」パクッ

琴歌「……」モキュモキュ

桃華「……琴歌さん、こちらの『揚げ鶏』はどうですか?」

琴歌「はい。衣はうすくパリパリと、中身はまるっと肉厚でジューシー」

琴歌「味付けもほんのり抑え目の塩味で、油の香ばしい風味が堪らない。まさに『鶏肉』ってカンジの味で……」

琴歌「なんというか……ナイフやフォークのカトラリーで、自慢げに家族に取り分けている未央さんを髣髴とさせるテイストでしたわ」

琴歌「……これも違いますわ」

千秋「……」モグモグ

桃華「ふむ……」

桃華「確かに、フライドチキンとしてちょっと完成度が高すぎる気がしますわ。この『揚げ鶏』」

桃華「……次ですわ」

千秋「(えっ、まだ食べるの?)」モグモグ

千秋「(……)」モグモグ

ライラ「ごちそうさまでございました」





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【サンクス前】


千秋「(……うぷっ)」

琴歌「あむ……」パクパク

琴歌「………………」

琴歌「これは……!」

琴歌「大ぶりなお肉に、柔らかい衣……そしてなにより」

琴歌「わざとらしいガーリック風味のスパイスが、噛んだ瞬間ぶわっと鼻腔を通り抜けていきます」

琴歌「濃厚な味付けで、口の中にいつまでも残るこの香り……」

琴歌「登校中、これを咥えて食べながら走っている未央さんが頭をよぎる味わいでした」

琴歌「……残念ながら、これも違います」

千秋「……」

桃華「……香ばしいガーリック風味、濃い味付け」

桃華「惜しいですわ。しかし、わたくし達が求める味はこれでも無い」

桃華「……次へ参りましょう」

千秋「………………」

ライラ「……?」

ライラ「……チアキさん? 食べないのでございますか?」

千秋「え、ええ。ちょっとお腹いっぱい」

ライラ「なら、ライラさんが頂いてもよろしいでございますか?」

千秋「……うん」

ライラ「ありがとうございますー」


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【ローソン前】


ライラ「……」モグモグ

桃華「……はふっ、ふ」パクパク

琴歌「はむっ、んぐ」モキュモキュ

千秋「……」カシュ

千秋「……」ゴクゴク



桃華「……ッ!!」

琴歌「……!!」

桃華「こ、これはっ! この味は……っ!!」

琴歌「ま、間違いないですわ!!」

千秋「……?」

琴歌「け、怪我しそうなくらいザクザクとした分厚い衣!」

琴歌「噛めば噛むほど滲み出る、体に悪そうな安っぽい黄色の油っ!」

琴歌「肉の旨味が隠れるほど濃い味付けで、まさに庶民的……っ!」

琴歌「夕陽が背を照らす学校帰り、仲の良い友達と一緒にコンビニの外でこれをパクついている未央さんが頭に浮かぶような味っ!」

琴歌「ようやく……ようやく違和感がない未央さんの情景が思い描けましたわっ!」

琴歌「決まりですね!」

桃華「決まりですわ!」

桃華「コンビニのフライドチキンで最も庶民の方々の舌に馴染む味……」

桃華「……非の打ち所のない模範解答とも言える庶民的テイスト!」

桃華「マーベラス! この『Lチキ』、実にオイリーで美味しい、庶民的なフライドチキンですわ♪」モグモグ

千秋「はー……」

千秋「……」

千秋「(ファンタ、おいし……)」

千秋「(……)」

千秋「(なんだろう……、なんか疲弊してきた)」

ライラ「ごちそうさまでございました」


──────
────
──

──
────
──────
【外】


ライラ「モモカさん、モモカさんー」

桃華「いかがいたしましたの? 火曜日さん」

ライラ「ライラさん、最後にアイスが食べたいですよー」

ライラ「お店で買って来てもよろしいでございますですか?」

桃華「ふむ、アイス」

桃華「よろしくてよ。折角です、わたくし達も参りましょう」

千秋「(まだ食べるのね……)」

琴歌「私達も行きましょう、千秋さん」

千秋「……うん」

琴歌「ふふっ、リーダーに振り回されて少しお疲れのようですね」

琴歌「悪気はないのです。彼女にあるのは純粋な好奇心と、向上心」

千秋「……」

琴歌「……千秋さんも、少しでも有意義な経験が出来たら、それがなによりですわ」

琴歌「私は存分に楽しんでおりますので、それで満足ですけれどね♪」

千秋「向上心、ね」

千秋「(まあ……偏見やプライドとか捨てて、何事も一歩踏み出す勇気は大切よね)」

千秋「……行きましょうか」


━━━━━━━━━━
【スーパー】


ライラ「(……♪♪)」

ライラ「ライラさんは、このうずまきのソフトにするですよー♪」

琴歌「では私はこの破格のプライスの、ガリガリ君? にしましょう」

桃華「選り取り見取りで、悩みますわ……千秋さんはどれを選ばれましたの?」

千秋「そうね……」

千秋「この蓋付きのカップアイスにしようかしら?」

桃華「!!!」

桃華「か……、カップアイスっ!!」

桃華「ふ、蓋付きっっ!!」ガタン!

千秋「えっ?」

桃華「くっ……」フラッ

千秋「どうしたの、櫻井さん。そんなに驚いて……」

桃華「いいえ……な、何でもありませんわ」

桃華「DNAに刻まれた抗えぬ宿命、野生の本能とでも言いましょうか」

桃華「よもや貴女がそのカップアイスを選ぶとは……」

桃華「期待通りですわ水曜日さん!!」

桃華「わたくしも千秋さんと同じ物を選びましょう!! さあ、お会計へ!!」

千秋「(……??)」

ライラさんどんだけ食べるんだwwww


━━━━━━━━━━
【事務所 来賓室】


ライラ「……」ペロッ

ライラ「はー……っ♪」

ライラ「暑い日は、やはりアイスが一段とおいしく感じますですね♪」

琴歌「はふっ……」シャクシャク

琴歌「ほー、はーっ……。息が冷たいですっ」

琴歌「ほのかに香るソーダの清涼感に、この冷たい感触でシャクシャクと小気味良い歯ごたえ」

琴歌「氷菓子とはよく言った物ですが……、まるで凍った果実を口にしているようで、クセになりそうですわ♪」

千秋「ごちそうさまでした」

桃華「!」

ライラ「チアキさん、お味はどうでございました?」

千秋「うん? あー……うん。えっと」

千秋「なんかバニラエッセンスの風味が強くて、いかにも『バニラ』って感じだったわ」

千秋「美味しかったわよ、如何にも庶民的な味。もちろん、良い意味で」

桃華「……」

琴歌「あっ! 『あたり』の文字がありますわ! これが桃華さんも仰っていた噂に聞く、コレクターの心をくすぐるメッセージ付きアイス棒というものですね!」

琴歌「ふふっ、何も特典は無いとはいえ、少し嬉しいです。確か他にも、『あたらず!』や『あたいのこと好きなんだろ』など、色々なメッセージがあるとか」

ライラ「では、何にあたったのでございますか?」

琴歌「一期一会、このメッセージに巡り合えたという事実。それだけですが、たいへん満足ですわ」

ライラ「なるほど」


千秋「さて……」

桃華「千秋さん」

千秋「? どうしたの、そんなにじっと見つめて」

桃華「まだですわ」

千秋「まだ?」

桃華「まだ、『ごちそうさま』を言うのは些か早いのではなくて?」

千秋「……いえ、私はもう食べ終わったけど」

桃華「では、蓋の裏を御覧ください」

千秋「えっ?」




桃華「蓋の裏を御覧ください」




千秋「ふ、フタ?」

桃華「ええ。蓋、そしてカップの底」

桃華「いかがですか? まだアイスが僅かに残っているでしょう」

千秋「い、いや……でもこれ、余して捨てても別に差しさわり無───」

桃華「さあ、舐めるのです」

千秋「───えっ??」








桃華「舐めるのです」








千秋「」


千秋「な……、ななっ、舐める!?」

桃華「……」ペロペロ

千秋「(ち、躊躇なく!?)」

千秋「櫻井さん……そ、そんなこと……っ」プルプル

桃華「フフ、はしたないと仰いますか?」ペロペロ

千秋「!!」

桃華「高貴とはまるでかけ離れた、恥辱に塗れた卑しい行いと……わたくしを笑いますか?」ペロペロ

千秋「(笑えない)」

桃華「皿に残ったソース、茶碗にこびり付いた米粒、蓋に付いた僅かなアイス」

桃華「千秋さんの仰る通り、もはや残飯とも呼べぬ程の食事の残り香のような量……捨てても問題ないと思える、これらの物」

桃華「しかし、どうか思い直してくださいまし」

桃華「家計が困窮し、一日の食事にありつける事すら不安な庶民の視点から鑑みて」

桃華「……果たして、これらは本当に捨ててもよろしい物なのでしょうか? 本当に食べずに、後悔しない物なのでしょうか?」

桃華「フフフ……!」レロレロ

千秋「(ふ、不敵な笑みっ!)」

千秋「(櫻井さんがやっている行為は犬畜生にも劣るはしたない愚行、低俗の極み……!)」

千秋「(しかしどうだ、彼女の顔は『これが正しい振る舞いだ』と言わんばかりに、誇らしげに、自信が満ちている!)」

桃華「勿体無いですわ」

千秋「も、もったいない……?」

桃華「ええ」


桃華「いかにも。『もったいない』『MOTTAINAI』」

桃華「海外でもそのまま通用する、日本の作法・文化の一つ。我々の内に眠る、類まれなるエコ精神」

桃華「まだ使える物、まだ食べられる物をおろそかにし、捨てる事を戒める言葉です」

桃華「物資の節約と同時に、物の本来あるべき姿がなくなるのを惜しみ、嘆く気持ちを表し」

桃華「大量生産・大量消費が当たり前になった現代社会において警鐘を鳴らす……」

桃華「それこそ、庶民の方々の生活に漫然と備わる所作! それを体現する、わたくしのこの行動!」

桃華「我が心と行動に一点の曇りなし……! 全てが『正義』ですわ!」ペロペロ

千秋「こ……、この犬のように無様な行為が……! はしたない姿を衆目に晒すことが……!」

千秋「し、庶民の正義ッ!?」

千秋「ぐっ……!」プルプル

桃華「さあっ! 千秋さんもご一緒に!」ペロペロ

千秋「~~~~~っ……!」

千秋「私がっ……こ、こんなっ、屈辱的な、ま、マネを……っ!」プルプル


桃華「誤解ですわ、千秋さん。それこそ、庶民文化を知るための第一歩です」

桃華「恥も外聞も捨て……いいえ、恥とは思わず、全てを委ねるのですわ」

千秋「(け、けれど……っ! い、いくら庶民文化探究の体とはいえ、わ、私にだって……尊厳が……ぷ、プライドが…………っ!)」

桃華「さあ、カップの蓋を持って!」

千秋「……っ!」プルプル

桃華「そうですわ。そして、まだアイスが残っていた発見を天啓の如く喜び、夢中で、うっとりと笑顔で……」

桃華「とにかく、ひたすら舐めるのですわ!」ペロペロ

千秋「くっ……!」

千秋「(こんな……っ、こと───!)」

千秋「庶民……庶民を知るため……っ」ガクガク

桃華「千秋さん!」

桃華「必要なのは、偏見やプライドを捨てて、何事も一歩踏み出す勇気ですわ!!」

千秋「ぐ、く……ぅくっ……!!」プルプル

千秋「……」

千秋「…………」

千秋「……」ペロッ

桃華「いかがです?」

桃華「残業60時間を越え疲労困憊の末にようやく給料日を迎え預金通帳を開く瞬間の如く、あるいは3日間不眠不休で砂漠を練り歩いた末にようやくオアシスに辿りついたが如く」

桃華「……その達成感と法悦と共に、噛みしめる蜜のような味は?」

千秋「───ッ!」

千秋「(くやしいっ……けれど、……けれどっ……!)」

千秋「お、美味しいっ……っ!」

千秋「美味しいわ、櫻井さん……っ!」ペロペロ

桃華「フフフ……そうでしょうそうでしょう」ニコニコ

ライラ「ライラさんのうずまきソフトのカップには、なにも付いてないですねー」

ライラ「残念でございます」シュン

琴歌「私のアイスの棒も、もう木の味しかしませんわ」ガジガジ


──────
────
──

──
────
──────
【幕間⑦】


千秋「……」ペロペロ

千秋「……んっ」レロッ

千秋「あ」

千秋「……カップの底も?」

桃華「ええ、余すことなく全てをいただきましょう」

千秋「……うん」

千秋「あう…………な、舐めづら……」

千秋「……っ」ピチャ

千秋「はむ……」ペロッ

桃華「(……)」

琴歌「(……)」

ライラ「(……)」













桃華「(何でしょうか、この何とも言えない気持ちは…………琴歌さん?)」

琴歌「(千秋さん……堂に入ると言いますか似合うと言いますか、スゴく習熟しているような……とにかく、恐ろしいほどサマになっていますわ)」

琴歌「(何と言いますか……何か、悪い事をしているような……というより)」

琴歌「(何処となく官能的……イケナイ物を見ている気がしてなりませんわ)」

桃華「(偏見です。彼女は、庶民の心を知ろうとしている……ただそれだけなのです)」

桃華「(見守りましょう、彼女の行く末を……)」

ライラ「(ライラさん、もう一個買って来てもよろしいですかねー……??)」グゥゥ


──────
────
──

──
────
──────
【後日 事務所】


千秋「櫻井さん、ちょっといいかしら?」

桃華「?」

桃華「いかがいたしましたの、千秋さん? あらたまって」

千秋「実はね……」

千秋「ちょっと、言いにくいんだけれど……」

桃華「(……?)」


━━━数時間後━━━
【事務所】


ガチャ

加蓮「おはようございまーす」

奈緒「おつかれさまでーす」

シーン…


奈緒「ありゃ? 誰もいないのか」

奈緒「ふぅ」ドサッ

加蓮「珍し───」





桃華「……加蓮さん」スッ

琴歌「……」

千秋「北条さん? 今ちょっとお時間いいかしら?」





加蓮「───っ!?」ビクッ

奈緒「わっ!? び、びっくりしたぁ、ソファの後ろに隠れてたのか?」

加蓮「(うわ、セレブ組)」

加蓮「ど、どしたの? みんな神妙な顔つきで」

桃華「加蓮さん……」



桃華「先日は、大変ご無礼をお掛けしました……っ」



琴歌「不快な思いをさせてしまって、本当に……」

千秋「……ごめんなさい、北条さん」

加蓮「!?」

奈緒「?」


加蓮「えっ!? な、なにが……!?」ドキドキ

桃華「千秋さんから伺いましたわ」

加蓮「(……千秋さんから?)」

桃華「先日、わたくし達が去った後で、大変機嫌を損ねておられた、と」

加蓮「(……あっ!)」

奈緒「(あぁー)」

千秋「誰だって食事の最中にジロジロ観察されたり解説されたりしたら、いい気はしないわよね」

琴歌「それに私達は庶民庶民と、貴女の前でしつこく連呼していましたが……」

桃華「この言葉は、受け手によっては侮辱や皮肉にあたる用語であり、恐らくわたくし達のような者がそれを本人の前で発してしまうと、特にその意味が顕著に感じてしまうと……」

桃華「……本当に申し訳ありません」

琴歌「加蓮さんの気分を害してしまった上に、お食事の時間の邪魔までしてしまって……」

千秋「私も無自覚だったと言え、本当に失礼なことをしてしまったわ」

加蓮「(うっ……)」

加蓮「あー……、えっと」

桃華「……………グスッ」

加蓮「(なッ!? 涙ッ!!)」

奈緒「(オイ! 退路塞がれてんじゃねーか!)」

奈緒「(加蓮、どうすんの?)」

加蓮「(ど、どうすると言われましても……)」


加蓮「うーん……」

加蓮「と、とりあえず顔あげてよ! 3人とも」

桃華「うぅ……」

加蓮「……大丈夫だよ、全っ然! なんとも思ってないって! うん」

琴歌「本当ですか? 本当の本当に??」

加蓮「い、いや……まあ流石に初めはジロジロ見られたり庶民庶民言われたりで、これは何事かと驚いてたけど」

加蓮「でも不快とか迷惑とか思ってないよ。桃華ちゃん達もその事を分かったなら、次からはお互い配慮できると思うし」

千秋「……」

加蓮「それに……」

加蓮「桃華ちゃんや千秋さん達が、私達を見下したり侮蔑をこめた意味でそういう言葉を使うワケないって分かってるからさ」

桃華「加蓮さん……」

桃華「至らぬ配慮で、申し訳───」

加蓮「いいっていいって! 気にしてないから、謝らないでいいよ」

桃華「……はい、ありがとうございます。それと、お詫びとしまして……」

加蓮&奈緒「お詫び?」

桃華「今度、わたくしの実家のシェフに、加蓮さんのお好きなハンバーガーを用意させますわ」

奈緒「!」

奈緒「さ……、櫻井家お抱えの料理人!?」

奈緒「すっごい高級……いや、美味しそう。想像しただけで既に涎が」

桃華「ええ、腕によりを掛けさせます」

加蓮「ほ、ホント? それちょっと、いや、結構嬉しいかも……」


桃華「ですので是非とも今度、我が家にいらしてください。都合がよろしければ、奈緒さんもいかがですか?」

奈緒「えっ! アタシもいいのか?」

桃華「このような形がわたくしの誠意でお恥ずかしい限りですが……、今後も仲良くして頂ければ幸いですわ」

奈緒「いくいくっ! 絶対行くよ!」

加蓮「へへ……うん。そうだね」

加蓮「あの時、何か面白そうな事やってたんでしょ? 私も話とか聞きたいな」

桃華「! え、ええ! よろしいですわ」

桃華「わたくしも是非、貴女達と取り留めのない話に興じて、友好を深めてみたいとかねてより感じていましたの」

桃華「是非ともっ……!」ドキドキ

加蓮「うん♪ じゃあさ、LINEのIDと、あとメアド交換しよ?」

加蓮「今度と言わず、今日からお話ししようよ。ね♪」

桃華「……!!」

桃華「は、はいっ! ぜひっ!!」




千秋「……」

千秋「なんだかんだで、上手くまとまって良かったわね」

琴歌「ええ♪ 桃華さんも嬉しそうで何よりですわ♪」

奈緒「んー、まぁ何があったかは詳しく知らないけど……なんかラッキー」

奈緒「でもさ? 桃華が『お詫び』って言った時……、『まさか』と思ったな」

千秋「……まさか??」

琴歌「??」

奈緒「うん」






奈緒「あの時さ、加蓮が『ハンバーガー100個でも200個でもナンボでも持ってこい!!』って言ってたから……」

奈緒「ひょっとしたら、マジで持ってくるのかと」









桃華「ッッ!!!」ピシャーン!!







加蓮「えっ?」

奈緒「ん??」


琴歌「ッ!!」

琴歌「も、桃華さん……っ!」

桃華「ハ、はぅっ!!」ガクガク

加蓮「え……、ちょ、どしたの?」

桃華「か、加蓮さん……ひょっとして、貴女は……っ!」ガクガク

加蓮「えっ?」





桃華「そちらの方がお望みでしたのね!!」





琴歌「や、やはりそうでしたか……ッ!」ガタッ!

琴歌「質より量! 中身より外身!! 収益より規模!!!」

琴歌「大量生産、大量消費……効用主義経済学的信念ッ!!」

桃華「し、庶民の方々の基本概念……本能的選択傾向……っ!!」

桃華「うっかり忘れていましたわ……この櫻井桃華、一生の不覚!!」

加蓮「え? あ…………」

加蓮「えっ!?」

桃華「加蓮さんッ!!」バッ!

桃華「待っていてくださいまし! 2、3日程お時間を下さい加蓮さん!!」ピッピッピ!

加蓮「え、ちょ、ま、待───」

桃華「至急、貴女の要望の品をコンテナでダースで……あめあられと手配させますわ!!」

桃華「手配させますわーーーーっ!」ダダダダダダ!

加蓮「───!? こ、コンテナ!? ちょ、待って!」

加蓮「待って、待……ヤメロォ!!!」

千秋「……」

加蓮「ち……千秋さんっ、助けて!! というか止めて!!」

千秋「……」プイッ

加蓮「ち、千秋さん!!!」

加蓮「う、うわあああああぁぁーーーーーーーーーっ!!!!」ダダダダダッ!!


━━━━━━━━━━
【2週間後】


千秋「……」

千秋「(あれから3日後)」

千秋「(櫻井家の肝いりで北条さんの家に、ハンバーガーがぎっしり詰まったコンテナが12基空輸された)」

千秋「(……中身を見せて貰ったけど、ギラギラとどギツイ3原色で彩られた、従来のハンバーガーのイメージから凄まじくかけ離れた色合いの外国産ハンバーガーだった)」

千秋「(櫻井さん曰く、飢饉や民族紛争をハンバーガーで解決すべくハンバーガーショップを営んでいる知人がいるらしい)」

千秋「(添加物や保存料はどっぷりで、高温多湿の場所だろうがどんな環境だろうが、簡単には腐らないとのこと)」

千秋「(私も興味本位で一個だけ貰ったけど、味はすごく美味しかった)」

千秋「……」

千秋「(彼女との友好の手前、北条さんは『全部平らげてやるー!』と投げやりなカンジで意欲的だった。ちなみに神谷さんはハンバーガーアレルギーらしく、事前に断わっていたらしい)」

千秋「(そして、あれからもう2週間)」

千秋「(ファッティでケミカルなハンバーガーをキメ続けた北条さんがどうなったかは、誰も知らない。最近誰も姿を見てない)」

千秋「(最後に目撃した人物は神谷さんで、曰く『ジャンキーの眼をしてた』だって)」

千秋「(…………)」

千秋「(そんなこんなで、今日は日曜日のオフだというのに、私は事務所にいる)」

千秋「(何故なら…………第2、第4日曜日は……)」







日曜日「チンチコール!」

日曜日「さあっ!」

日曜日「今日も元気に楽しく、七曜会の活動を行いましょう!」

日曜日「ちなみに、今日は新メンバーが加入しますわ! 長らく欠番だった『金曜日』候補が遂に見つかりましたの♪」

日曜日「土曜日さんっ、さあ起きて下さいまし! 入会式の準備をしますわ!」

土曜日「んん……ん……、ふわぁ……」

土曜日「……あらぁ? すみません……つい気持ち良いお日柄だったもので……」

日曜日「水曜日さん。さあ、このフードをかぶって、ローソクと燭台を所定の位置に用意して頂いてもよろしくて?」

千秋(水曜日)「……」

千秋「(……まあ)」

千秋「(こんな日曜日も悪くは無いと、最近は思い始めた自分が)」

千秋「(少し怖かった)」

土曜日「……すぅ」

日曜日「土曜日さん! はやく起きて下さいまし!!」ガタガタ






終わり

──
────
──────
【オマケ】


濃密な暗闇が立ち込める室内。息をひそめる私の手に、ふつふつと汗が湧く。

空調が効いていないのか、嫌な温かさの空気が肌にしっとりとまとわりついている。

一寸先も見えない暗闇で、辛うじて拾える音は隣にいる土曜日と日曜日、二人の息遣いだけ。

撮影用に刃引きされた、それなりの重さの剣の小道具を持つ手も少し疲れてきたところ。主賓はまだかしら……。




もう間もなく、この部屋に一人の人間が訪れる。

その人は後に『金曜日』と名付けられ、私達のこの集団と活動を共にする運命にある……ハズ。この入会式がトラブルなく終了すれば。

その人は、知る由もないだろう。私もそうだったからだ




───右も左も分からない闇の中、いきなり剣の切っ先を喉元に押し当てられ

───恐怖に駆られる暇も与えられず、聖書っぽい物を読まされて誓いの言葉を述べさせられる

───そうすれば、晴れてこの『七曜会』の仲間入り。という寸法




……いまでも、ちょっとよく分からない。

というか私の入会の時は欠番を除いて全メンバーが揃っていたのに、今日は都合で3人(私含め)って……。

適当過ぎないかしら? こんなのでいいの、七曜会?




その時、奥から扉が擦れる音が聞こえた。新メンバーが外の扉に手を掛けたのだ。

「(き、来た……ようやく)」

バタン、と閉められ、カツンカツンとヒールが踏み鳴らされる。その靴音から察するに、金曜日(仮)は女性のようだ。

一段一段、ゆっくりと間を開け、慎重に外の階段を下りてくる音からは懐疑的とも不安とも取れる感情が伝わってくる。




その音が近づくにつれ、何故か私の胸に、ふとした不安がよぎった。

なんだろ……緊張? いや、違う。なんかざわざわする。

私達は状況的にイニシアティブを握っているのにも関わらず、圧倒的に追い詰められているような、重圧が扉の外から迫ってくる。

悪い予感を振り払うように、私は気を奮わせ、剣を握る拳にぎゅっと力を込める。



入会の段取りとしては、こう。



①階段を下り、この真っ暗な部屋の扉を新メンバーが開ける。おそるおそる踏み入った瞬間、土曜日がロープを引っ張り強制的に扉を閉める。慌てふためく新メンバー
②日曜日が優しい声で、新メンバーを部屋の中央に誘導する。しかし部屋は依然真っ暗で不明瞭。無理難題である
③不穏な状況を察したところで思考する暇を与えない。間髪入れず、私が新メンバーの首元に剣を突き付け、ドスの効いた声で脅すように『誓え』と言う
④土曜日も剣をかざし、私につづく。新メンバーの精神をこれでもかと摩耗させる
⑤あわあわと狼狽する新メンバーの言葉に耳を貸さず、部屋の中央に立つ日曜日は、手元の燭台にうっすらと火を灯す
⑥部屋の全容が明らかになる。中央には古びた宣誓書と燭台、そして黒いフードをすっぽり被り鋭い剣を向ける謎の集団が包囲。新メンバーは失禁寸前
⑦訳も分からず、恐怖と緊張で震えた声で、新メンバーは宣誓する。『我は誓う、七曜会の会員として、七つの巡礼を行い、七つの位階をきわめ、七つの(以下略)』
⑧入会式終了。電気をつけて、拍手で迎える。月曜日がいたら、お茶菓子を食べつつゆっくり過ごしたりもする場合もある





よし。私の時はこんな感じだったわね。あれももう二ヶ月くらい前かぁ……。



扉の外には、新メンバーがもうすぐそこまで迫っていた。

階段の最後の段を下り終え、いまだに入ってこない様子から察するに、この部屋の内部を慎重に伺っているらしい。

 「入っていらして、金曜日。どうぞ」

日曜日こと、櫻井さんがいつも通りの落ち着いた声で、来訪者にそう呼びかけた。

いよいよ本番。その声に応じ、扉に手がかけられ、ゆっくりと開かれる。

外の通路や窓にも暗幕をしっかりと貼り付けておいたから、光が一切漏れることは無く、新メンバーの面貌を視認することは出来なかった。




カツン、カツンと一歩、二歩。

新メンバーが足を踏み入れたその時、もの凄い勢いで扉がバン! と閉められた。

びっくりした……。手探りをする布擦れの音がしたから、おそらく土曜日が最初の工程を仕掛けたのだろう。

 「……なんなの? これ」

その時、来訪者の怒りを含んだような、どこか呆れ気味に溜息を混ぜた声が鋭く投げかけられた。

……そのぴしっとした声色に一瞬ひるんでしまったけど、これで彼女の位置がはっきりした。

私は剣を携え、その声のもとへと歩を進めていく。










A.「誓え」。来訪者に剣を突き付ける
B.「こんにちは」。電気をつけ、来訪者に朗らかに挨拶する








…………。

……なんだろう。さっき感じたプレッシャーと、今の女性の声色を無意識的に判断材料に入れてしまったからかしら。防衛本能と言うやつ?

私の頭の中に、行動を躊躇する選択肢が思い浮かんだ。


何を余計な事を考えているのだろう。早く私が行動に移さないと、次に進まない。

私は破れかぶれのような思いで、女性の首元にゆっくりと剣を突き出した。


「誓───」





ガシッ!





「───えっ?」

「……だから、なんなのコレ?」




ちょっ、えっ。

…………え?




剣が、まるで大木に中途半端な力で打ちつけた斧のように、うんともすんとも動かない。

……考えられる状況としては、私が突き出した剣をこの女性は素手で掴んで、その自由を奪ったというシュールな構図。

 「ふ、ふんっ! ……カ……っ!」

いや、でも……、私が情けない声を出して必死に両手で引っ張っているのにも関わらず、万力で固定されたかのように上下左右ピクリとも動かない……。

この人……、女性よね? 女性とは思えない怪力なんですけど。


 「ど、土曜日……っ!」

思わず、かすれた声を振り絞って、すぐ隣にいた土曜日に懇願するようなまなざしを向ける。

いますぐこのふざけた入会式を中止しなければ、怪我人が出るかもしれない。というか、間違いなく怒られるし、心証は最悪だろう。

この新メンバーは何か……、何かが危ない。胸が早鐘を打ち、私は内心パニックに陥りそうだった。

土曜日に思いとどまるよう、私は視線で強く訴える。

土曜日は不思議そうにきょとんとした面持ちで私を見つめた後、ハッと弾かれたように、納得した風な表情で笑いかけると───


 「……誓え」


私の願いは通じず、土曜日は剣を突き出し、入会式を敢行してしまった。どこまでニブい……天然なんだろう、この子は。

 「……桃華。そこにいるんでしょう」

 「ふざけていないで、出てきて頂戴。悪ふざけに付き合ってる暇、ないの」

 「き、金曜日……へっ、部屋の中央へ……」

櫻井さんの声が震えている。

すると、燭台に灯が灯され、部屋がぼうっと明るく照らされた。




炎が揺らめき、女性の顔を妖しく照らし出す。

その表情はいかにも不機嫌でございますと言わんばかりに口をへの字に曲げて、鋭い眼差しで私を睨みつけていた。炎の影で、よりいっそう怒っているかのような表情に感じられた。

どうやら癪に障ったようで、ダメ押しとばかりにチッと舌打ちまでして、掴んでいる剣をグイグイと寄せていく。

静まり返った部屋。世界が止まってしまったかのようだった。

ヘビに睨まれたカエル……女王に処刑宣告を打ち出されたしもべのように、私はポカンと口を開け、ずるずると引き寄せられていく。

この新メンバーの怒気……気迫にあてられ、手の震えが止まらない。そしてこの人に対し私がしている愚かな行為を自分の行為ではないと思いたくないくらい、恐ろしい事をしていると認識し、更に吐き気まで催してきた。

手を離す事にも考えが至らないくらい、頭は真っ白で……。



…………もう……あぁ……私、これからどうなるんだろう、なんかこの人の鞄からいびつな鞭が見えてるけど、これで叩かれるのかなぁ。

なんでこんな馬鹿な事やっているんだろう。七曜会? なにこの低俗な馴れ合いは……まったく、私はこの子達とは無関係ですから。

だ、だからそんな、今にも喰いつきそうな顔で私を見るのは、やめてください……っ!



あ、あぁ…………っ。

…………思えばあの時、普通に電気を付けて挨拶をしている行動を起こしていれば……。

私は、もう少し長く生きられたのかも────































 「……で?」

 「何を誓えばいいの? どこを読むのよ……コレ」







 ───!!



                                                 二日目に続く。(終わり)

続きません。
以上です。衝動的に書きました。
全員出さなかったのは書くのがアレだからです。
ありがとうございました、HTML化依頼出してきます

http://i.imgur.com/aeyuJ5g.jpg

あとがき

参考ネタはサウンドノベルの怪作「街」、グルメ漫画「刃牙」シリーズ、他多数。
当初は桃華の奇行の真意など書く予定でしたが、もっとグダグダになるのでやめました。
アタマをからっぽにして読める、毒にも薬にもならないSSと思って頂ければ幸いです。
ありがとうございました



また別の作品を読めることを楽しみにしていますよ

おつ
木曜日は誰だったんだろ?

民族紛争解決のケミカルバーガーはメタルギアが元ネタかな?
にしても街なんてネタ、今時誰も知らんだろう

庶民(豚)代表の二郎はまだですか?

アイスの棒はでんじゃらすじーさんかな?

何だかんだ付き合ってくれる時子はやさ

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