男 「お前は一体」 少女 「誰なんでしょうね?」 (19)

男 「これは夢……?」

少女 「さて、どうでしょうか」

男 「でも俺はさっき寝たはず……」

少女 「そうですね」

男 「じゃあ夢だろ」

少女 「そうかも知れません」

男 「なんではぐらかすんだよ」

少女 「夢ですから」

男 「訳分かんねぇ」

少女 「……ふふっ」

男 「なんだよ」

少女 「つい可笑しくなって」

男 「訳分かんねぇ……」

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少女 「こんばんは」

男 「……今日もか」

少女 「連日飽きませんね?」

男 「強制だっつーの」

少女 「案外望んだのかも知れませんよ?」

男 「誰がだ誰が」

少女 「そりゃもう決まってるでしょう」

男 「ない」

少女 「またまた」

男 「俺は安らかに眠りたいんだよ」

少女 「今も眠ってるじゃないですか」

男 「寝起きクソ悪かったよちくしょうめ」

少女 「それは残念」

男 「他人事みたいに……」

少女 「他人事ですから」

男 「……それもそうだな」

少女 「こんばんは」

男 「あー、うん、薄々気付いてた」

少女 「何にです?」

男 「白々しいやつめ」

少女 「ふふふ」

男 「やめろ、笑うな」

少女 「ごめんなさいごめんなさい」

男 「ごめんなさいは一回」

少女 「はいはい」

男 「はいも一回」

少女 「はいはい」

男 「耳ついてんのか」

少女 「見ての通り」

男 「飾りのお耳か」

少女 「ピアスなんてつけてませんよ?」

男 「違う、そうじゃない、わざとやってるだろ」

少女 「もちろん」

男 「付き合いきれんな……」

少女 「ふふふ」

少女 「来すぎじゃないですか?」

男 「お陰で寝不足だ」

少女 「やめればいいのに」

男 「出来たらやってるわ」

少女 「モノは試しですよ?」

男 「いやもう試してるって」

少女 「気合が足りませんね、もっと未練を断ち切って」

男 「どこに未練があるってんだよ」

少女 「そりゃもう夢に」

男 「……ほんとに夢か? ここ」

少女 「……さて、どうでしょうね?」


少女 「……昨日はぐっすり眠れましたか?」

男 「久々にな、マジで来ないとは思わなかった」

少女 「さて、明日はどうでしょうかねぇ」

男 「ははは、この調子で未練とオサラバしてくれるわ」

少女 「やっぱり未練あったんです?」

男 「……ないに決まってるだろ」

少女 「それは、残念」

少女 「こんばんは」

男 「……今日は駄目だったか」

少女 「みたいですね」

男 「……そういやお前名前はなんて言うんだ?」

少女 「内緒です」

男 「なんでだよ」

少女 「夢ですから」

男 「……絶対聞き出してやるからな」

少女 「ふふふ、楽しみです」

少女 「……随分と、お久しぶりですね」

男 「……なぜか突然来れなくなってな」

少女 「……そのまま忘れて過ごしたほうが良かったんじゃないですか?」

男 「まだ……名前を聞き出してなかったからな」

少女 「あら、そんなことでしたか」

男 「そのために来たってのにそんなこととはなんだよ」

少女 「……サラですよ」

男 「サラ?」

少女 「そう、サラ、私の名前です」

少女 「改めてよろしくお願いしますね、男さん」

男 「ああ、よろし……ん? なんで俺の名前知ってるんだ?」

少女 「夢、ですから」

男 「……このほら吹きめ」

男 「そういやサラも夢とか見るのか?」

少女 「最近は、割と」

男 「どんな感じなんだ? なんか気になる」

少女 「天を自由に舞っていたのに、突然翼が消えたように真っ逆さまに堕ちていく」

少女 「そんな、夢です」

男 「堕天ってか、そりゃまた恐ろしい夢だな」

少女 「……何を意味すると思います?」

男 「なんだ、割と気にしてんのか?」

少女 「そういう訳ではありませんよ」

男 「まぁなんだ、あまり気負い過ぎんのもよくないぞ?」

少女 「気にしてませんって」

男 「嘘つけ」

少女 「私は正直者なんですよ?」

男 「……」

少女 「……なんですかその目は」

男 「……なんでもない」

少女 「男さんの嘘つき」

男 「ここにいるときの俺の体ってどうなってるんだ?」

少女 「魂が抜け出してる状態ですかね」

男 「……それって大丈夫なのか?」

少女 「現に寝不足ですよね」

男 「大丈夫じゃないってことか……」

少女 「影響はまだ小さいですが、長く続くとどうなるんでしょう、私にもそこまでは分かりません」

男 「……たまにはちゃんと寝るか」

少女 「それが吉ですね」

少女 「こんな日々がずっと続いて欲しいですねぇ」

男 「……そりゃどういう意味だ」

少女 「そのまんまの意味ですが」

男 「……あーそうか、お前はそんな奴だったなうん」

少女 「んん? なんですか男さん、どう捉えたんですか」

男 「やめろ、なんでもない、おいそのニヤついた顔をやめろ!」

少女 「最初は未練なんてないーなんて言ってたのにこれですもんねぇ?」

男 「やめろ……第一お前ははどうなんだよ!」

少女 「内緒です」

男 「はあああああ!?? それはズルいだろ!」

少女 「ズルくないです」

男 「ズルいだろ、なんで俺ばっかりお預け食らうんだよ」

少女 「男さんが顔に出しすぎなのが悪いんです」

男 「なんでだよ……それはどうしようもないだろ」

少女 「……ふふふっ」

男 「笑うな」

少女 「はいはい」

男 「はいは一回」

少女 「あはは、そうでしたね」

男 「最近、ここに来てたのは俺の意志とは関係ないんじゃないかと思うんだけど」

少女 「なぜです?」

男 「……あーほら、来たくても来れない時期があってだな」

少女 「名前聞く時のやつですか」

男 「思い出させないでくれ、恥ずかしさで死にたくなる」

少女 「自滅じゃないですか」

男 「男とはそういうもんだ」

少女 「適当なこと言わないで下さい」

少女 「……残念ですが、男さんとは今日限りお別れです」

男 「…………は?」

男 「なんでだよ、どうしていきなりそんな話になんだよ!」

少女 「……理由をお答えすることは、出来ません」

男 「待てよ……! 全部夢だったって言うのか!?」

男 「こんな日々が続けばいいって言ったじゃねぇか!」

男 「…………あれもこれも全部嘘だったって言うのか?」

少女 「夢なんかじゃ、嘘なんかじゃありませんよ」

少女 「あなたが忘れたって、私はあなたを忘れません」

少女 「……私は、ちゃんとここにいたんです」

男 「……本当か」

少女 「……私は、正直者ですから」

男 「待て……待ってくれサラ」

少女 「本当に、ごめんなさい」

少女 「あなたと過ごした時間は、とても、楽しいものでした」



少女 「……さよなら」


『 ○○市のアパートで、男性が首を吊って死亡しているのを、近隣の住民が発見し110番通報しました。机の上には「彼女に会いに行く」との書き置きがあり、警察は—――』ブツッ

悪魔 「メアは相変わらず回りくどいわねー! 殺すだけならわざわざ間隔開けずに喚んだほうが早かったじゃない?」

少女 「いいのいいの、私は楽しみたかったから」

悪魔 「最近の新入りはよく分からないわー」

悪魔 「それじゃ、あたしは別の仕事に行くから」

少女 「はーい」

少女 「……ふぅ」

少女 「狙い通り、身体を捨てて来てくたわね」


少女 「私は正直者なんですよ?」




少女 「ずっと、ずうっと可愛がってあげるわ、ねぇ、あなた……♡」

終わり

うわぁ…
あとあじわる…

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