男「眠って、夢見て、夢日記」 (51)


男「おいおい! どこに逃げても居るぞ!」

友「思ったより感染が早いな......男、これを使え!」

男「こんなの持ってたのなら早く言えよ!」

友「戦わず勝つのが最善! おっとまた来たぞ、こっちだ!」

男「コイツら一体どれだけいるんだよ......」

友「おいぐずぐずするなーーってすぐ右、じゃなくて左から来てる! 撃て!」

男「お、おう! ってあれ? 撃てないぞ!?」

友「安全装置[セーフティ]が掛かったままだ! あっ男! 危ない!」

男「糞! 間に合わーー」

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男「なっ!!」

男「............夢か」

男「げ、8時かよ。学校間に合わないな」

男「えーと今日の夢は"市街""友""戦う"......っとこれでよし」

男「さて学校行こうかな」


担任「14世紀半ばに黒死病、つまりペストが大流行しーー」

ガラガラ

担任「ん?」

男「ギリギリセーフティー!」

担任「な~にがセーフティだぁ? もう2時間目だぞ! さっさと席につけ!」

男「ごめんなさーい」

担任「続けるぞ。そのペストで欧州はーー」

友「おい、どうしたんだよ。珍しく大遅刻だな」ヒソヒソ

女「また変な夢でも見てたんじゃないの?」ヒソヒソ

男「いやあ目覚ましセットし忘れて。ちょっとびびったけど、遅刻は確定だから安心してゆっくり来れたよ」

担任「はい男君、自信ありそうなのでどうぞ答えをどうぞ」

男「あ、すみませんっ。静かにします」

非安価
カタツムリペース


男「すべからく 学校終われば 即帰宅」

友「友達いないの?」

女「あらいないのね」

男「俺の素晴らしい川柳を勝手に哀しい短歌にするな」

友「どっかいかない? カラオケとかボウリングとか」

女「どうせ暇でしょう?」

男「俺は真面目君なんだ。すまんな」

友「またか。普段家帰って何やってんの?」

男「何も。寝るだけ」

女「つまらないわね」

男「健康のためだ。後で埋め合わせはするから」

友「そうか。じゃあまた明日なー」

女「バイバイ」

男「おう」


男「............」


男「本当に何もすることがない......」

男「とりあえず夕食と入浴くらいか......」

男「............寝よ」


女「男聞いてる?」

男「聞いてるよ」

女「それで調べたらそういう人結構他にも居るみたい」

男「へぇそうなのか」

女「で友にはもう言ったのだけど」

男「うん」

女「実は私も............その内の一人なの」

男「は?」

女「ほらここに手術の痕がーー」


ジリジリジリジリジリジリジリジリ

男「わっ!!」

男「............夢か」

男「............」

男「夢とはいえ気になるな」

男「"学校""女""元男性"っと。よし学校行こう」


男「さて、教室に女は......あれ?」

友「あ、男! 今日は遅刻して来なかったのね!」

男「当たり前だ。それより友、お前何で女の席座ってるんだ?」

友「え、何言ってるの?」

男「は?」

友「私が女よ。友と入れ替わってしまったの。気付いて欲しかったわ」

男「何寝言言ってるんだ?」

友「ひどい......そりゃあ私は友より付き合い長い訳じゃないけれどーー」

男「ええと、女はそろそろ来るかな」

友「ちょっと男聞いてる?」

男「ああ聞いてるよ」

友「じゃあこの前の......ホ、ホテルでの事は遊びだったって言うの!?」

男「ホテル!?」


女「ちょっと友? 廊下まで丸聞こえだけど?」

友「あ」

男「だよな」

女「今朝は好き放題やりすぎよ? 慎みという言葉は辞書に載ってなかった? どうなの?」

友「ごめんなさい。確かにやりすぎました」

女「普通そういうネタ選らばないわよね? 確かに軽薄な友にはぴったりだけれどあり得ないわよ?」

友「はい......」

女「それに男? 何でホテルで動揺したの? 勘違いされるからやめて頂戴?」

男「はい......」

女「......まあ許すわ」



男「というわけでクールビューティーな彼女は、男勝りな性格なのだ」

女「何か言ったの?」

男「あ、いえ何も」


男「今日もちょっと疲れたな......」

男「............」

男「そろそろ寝るか」


扇動家「他国は我々の国を操ろうとしている! 我々の国に自由を!」

扇動家「輸入品や他国の技術に惑わされてはいけない! 今こそ結束の時!」

扇動家「労働主義国に海外企業は不必要! 我々は愛国者だ!!」



男「なんだあれ」

友「わからない。政治活動かな」

男「それにしては胡散臭い」

友「周りの人も珍しくうるさがってるな」

男「この国も大変だなーー」


ジリジリジリジリッ

男「はぁ。夢か」

男「"市街""友""扇動家"っと。これ毎回ノートパソコンに打つの面倒だ」

男「父さんのお願いだから仕方ないけど」

男「......学校行くか」


友「オッス男!」

女「おはよう」

男「おはよう諸君。今日も清々しーー」

友「男は今朝のニュース見たか!?」

男「? いや見てない」

女「やっとPear社のスマホの発売日が決まったのよ」

友「しかもこの国で限定販売」

男「......なぜ二人ともそんなに目を輝かせている」


友「はじめから入ってる新アプリ『PINE』が物凄い便利っていう話」

女「まず相手との連絡は無敵でどんなものでも快適に出来る」

友「データの保存や編集もサクサク、ゲームは1000個以上」

女「端末本体はというと、バッテリー長持ち、防水防塵、耐衝撃。そして軽量」

友「サイズは3つから選べる。カラーは10種類」

男「そんなに高スペだとお値段が」

友「なんとお値段たったの10万円」

女「同社からの機種変で1万円引き、他社からの乗り換えで2万円引き」

男「安いな。まあ今ので十分事足りてるから要らないが」

友「なんだ案外反応薄いじゃん」

女「ほとんどの人は欲しいと言いそうだけれど」

男「とりあえず買った人の反応を見てからだな......」


男「今日も疲れた~」

ピンポーン

男「誰だろう」

宅配の人「宅配便でーす。男さんのお宅で間違いなかったですか?」

男「はい」

宅配の人「ここに印鑑を」

男「はい」

宅配の人「ではでは~」

男「どうも~」


男「父さんからだ。開けてみよう」

男「手紙とプチプチにくるまった物だな。えーと

  親愛なる息子へ

  そっちでの生活はどうだ? キツイと思うが頑張ってくれ。
  そこで生活が便利になる物を送る。ウチのとこの新型スマホS-2501だ。
  既に入ってるPINEというアプリ、かなり有能だが使いこなせるかな?
  使う時は付属品を端末本体に差し込んで使ってくれ。必ずだぞ。
  それと夢日記は順調か? 面倒臭がらず朝しっかりパソコン開いてくれ。
  それじゃまた
                         父より」

男「......とりあえず発売日まで放置でいいか」

男「やることやって寝よう」


先輩「ああ男くんね............こんにちは............」

男「先輩、何でこんな廃墟に居るんですか?」

先輩「......え......廃墟? そうね、言われてみれば、少し汚いわね」

先輩「掃除......しましょうか」

男「先輩?」

先輩「ほら、雑巾で水ぶきですよ」

男「はい......って先輩何でスカートの中何も履いてないんですか!?」

先輩「え......あれ......あ......ぐぁあああああ!!」

男「なんだ!?」

女「男! こっち!!」

男「わかった!!」

女「階段気をつけて」

男「おう! ってあっーー」


ビクッ

男「!!」

男「ハハダッサ俺。階段をおりる時コケるとか」

男「にしても好きだった先輩があんな風になるのは、夢とは言え気分悪いな」

男「ちょうど起きる時間か。"廃墟""先輩"えーっと......"発狂?"っとこれでいいかな」

男「そういえば、なんで皆はめったに他人と会話しないのだろう」

男「クラスで喋ってるの友と女の3人しかいない。皆一人で読書やゲームしてる」

男「急に大声出したらうるさいって言われるのかな」

男「そろそろ学校行くか」


男「うわああ化学的に結合してるううう!!」

教室「............」シーン

男「クリュニー修道院たってきたあああ!!」

教室「........................」シーン

友「発狂してる」

女「疲れてるのよ。そっとしておきましょ」



男「うーむ。ここではこれが当たり前なのか?」


男「はっはっ、はっはっ」タッタッタッタッ

実況「男選手、フォレストA地点まで時間ギリギリだあ!!」

男「糞! 間に合え!」タッタッタッタッ

実況「おっと男選手、フォレストA地点無事時間内に通過!!」

男「はあ、はあ、はあ、はあ」タッタッタッタッ

実況「次はB地点ですが無理そうかあ!?」

男「はあ、はあ」タッタッタッタッ

実況「さぁ間に合わなければ即死亡のレース、男選手は走りきれるのか!?」

男「はああ、はああ」タッタッタッタッ

実況「おっと残念時間切れ~。それではさようなら~」ジリジリジリジリ

男「うわああああーー」ジリジリジリジリ


ジリジリジリジリジリジリジリジリ

男「ーーあああああ!!」

ジリジリジ

男「............」

男「ここに来てから物騒な夢ばかりだ」

男「"森""自分""走る、しかし死"」

男「学校に行こう」


男「今日は基礎運動能力測定か」

友「短距離ならかなり自信ある」

女「私も」

男「へぇじゃあ50mで勝負しよう」


-------------------------


男「お、おい......嘘だよな?」

友「まあ人間が計測してるし」

女「誤差がでるよね」

男「それでも速すぎないか......」

友「そんなことはないと思う」

男「友5秒中盤、女6秒前半って」

男「陸上競技で新記録狙えるぞ」

友「............」

女「............」

男「......あれ?」


男「あれから二人は黙り込んじゃったし一人で帰るか」

男「......地雷踏んだかなぁ......」

男「............」ピタッ

  ............

男「............」

男「何故か尾行されてる。しかもぬるい」

男「............」

男「............」

 ......タッタッタッタッタッタッタッタッ

男「!!」

男「糞!!」タッタッタッタッ


男「はあ、はあ」タッタッタッタッ

?「......」タッタッタッタッ

男「なんだよっ、はあ、はあ、あいつっ」タッタッタッタッ

?「......」タッタッタッタッ

男「まだっ、追って、来るのかっ」タッタッタッタッ

ヴーンヴーン

男「何だよこんなときに、って友からだ」ピ タッタッタッタッ

男「すまん友! ちょっと今ーー」タッタッタッタッ

友『○×森だ!』

男「えっ?」タッタッタッタッ

友『いいから急げ!』

男「ああ分かった!」ピッ タッタッタッタッ


男「はあ、はあ」タッタッタッタッ

?「......」タッタッタッタッ

男「なんだよっ、はあ、はあ、あいつっ」タッタッタッタッ

?「......」タッタッタッタッ

男「まだっ、追って、来るのかっ」タッタッタッタッ

ヴーンヴーン

男「何だよこんなときに、って友からだ」ピ タッタッタッタッ

男「すまん友! ちょっと今ーー」タッタッタッタッ

友『○×森だ!』

男「えっ?」タッタッタッタッ

友『いいから急げ!』

男「ああ分かった!」ピッ タッタッタッタッ

連投やっちまったすまぬ


男「はあ、はあ」

友「こっちだ急げ!」

男「友何でーー」

友「話は後だ」タッタッタッタッ

男「はあ、はあ」タッタッタッタッ


--------------------------


友「よし。ここまで来れば安心だ」

男「森の反対側まで来たのか」

友「尾行は振り切った。来た道を帰ろう」

男「友、何で俺が尾行されてたか、何で友がそれを知っていたか」

友「............」

男「知ってるなら教えてくれ」

友「今俺が言えるのは、お前が予知夢を見れるということだけだ」


科学者「私はただの雇われた研究者だ」

男「一体どうしてこんなことに」

科学者「わからない......いや、わかっていたかもしれないが、こればかりは仕方なかった」

友「現状で何か対応策はあるのか」

科学者「一つだけある。少し強引だが......」

友「教えてくれ、親父」

科学者「電ーー」


男「今日も緊張感ある夢だったなあ」

男「"友""友の父""研究室"」

男「よし。気をつけて学校行こう」


女「おはよう、男」

男「おはよう。今日は早いな」

女「うん。今日、放課後何か用事ある?」

男「いや、無いけど」

女「じゃあちょっと付き合ってくれない?」

男「分かった」

-------------------------

キーンコーンカーンコーン

友「それじゃ先帰るわ」

男「うん」

男「............」

男「皆帰ったぞ」

女「そうね」

男「俺は何をすればいいんだ?」

女「私と付き合って欲しいの」

男「え?」


女「どうなの?」

男「まあ、良いけど」

女「そう。良かったわ」スルスル

男「ちょっ何で制服脱ぐの!?」

女「恋人同士ならこういうことしても良いでしょ」サー パサ

男「物事には途中計算というものがあって......って目のやり場に困るんだが」

女「ここをよく見て欲しいの」

男「え、本気で言ってる?」

女「寒いから早く。そうそこ」

男「初めて女の人の見るんだが......あ、あれ? 形が何か変」

女「下の方の左右に何か見える?」

男「何かの跡だ」

女「手術の跡よ。私、実は元々男性なの」

男「あっ!!」

女「これが全てよ」

男「......」

女「私の役目は終わった」

男「どういうことだ」

女「............」キラン

男「おい! やめろ!」

女「また、私ーー」


男「!!」はぁ はぁ はぁ はぁ

男「............」

男「............」カタカタ カタカタ カタカタ カチッ

男「............」ピ

アナ『Pear社の新型スマートフォンが今日発売です』

ナレ『お店の前にはながーーーい行列が出来ていました。話を聞いてみると』

Q.いつから並んでいるんですか?

30代・男性『5時位ですかね。昨日から居たんですけど徹夜は禁止ということらしいので』

20代・女性『7時です。早く来たと思ったんですが結構後ろの方ですね』

アナ『発売開始はもう間もなく11時からーー』

プツン

男「............」

男「サボろ」


男「あれ。友からメールだ」

男「『新型スマホ持って家を出ろ。今向かう』......なんだこれ」

男「とりあえず言う通りにしよう」 

男「ええと、これをここに差し込んで。よし」

男「とりあえず出よう」ガチャ

大勢の人「............」

男「何でこんなに人が」

大勢の人「!!」ドタドタドタドタ

男「まずい! こっちに向かってくる! とりあえず家に」バタン

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

男「あぁぁぁぁぁぁ!」ガクガクガクガク

ガッシャーン

男「ぅわあぁっ!」ビクッ

友「怯え過ぎだ。向こうはただの人間だぞ?」

男「友!」

友「ついてこい!」

男「ああ!」


ヴーンヴーンヴーン

男「あれ、寝ちゃってたか」

男「友からメールだ」

男「『新しい方のスマホ持って学校に来い!』って......」

男「!!」

ガッシャーン

大勢の人「............!」

男「ヤバ............逃げる!」

ドタドタドタドタ

男「スマホ持ってる付属品付いてるオッケ」ガチャ

ドタドタドタドタ

男「学校か」タッタッタッタッ


男「校門に友だ」タッタッタッタッ

友「おお男、早かったな」

男「大遅刻だ」

友「校舎に入ろう」



プツ キーーーン

男「んっ。外か?」

スーツのおっさん「私はずっと訴えてきた! だが誰も聞きはしなかった!」

ス「国民が国民を死に導いたのだ! 政府が国を死に導いたのだ!」

ス「私は私の責務を......ぐうわあああああ」

男「なんだ!?」

友「正しかった政治家さ。彼ももう駄目だね」

男「混乱してきた。何故こんなことに」

友「............」

男「ここに来る時、意識の朦朧とした人達が大勢歩いていた」

男「大半が女性。男性も少数いた」

男「女性は口の周りに赤褐色の液体が、多くの男性は地面に倒れていた」

男「一体何なんだ」


友「事情を知ってる人がいる。今から行こう」

男「分かった。場所は?」

友「ここの地下だ。Pear社の研究施設がある」

男「そんなベタな」

友「そこらの事も説明してくれる。とりあえず行こう」


男「そう言えば生徒や先生は?」

友「臨時集会があってその時に全滅」

男「まさか、女も!?」

友「俺と女は抜け出して外の様子を伺っていた。外が混乱してるのを確認したとき女は急いで学校から出ていったよ」

男「そんな!」

友「女なら大丈夫だ。彼女にもすべき事がある。それよりここをおりるぞ」

保健室]

男「こんなど真ん中に......全然気付かなかった。というか、よくある床下収納かと思っていた」

友「暗いから階段踏み外さないよう気をつけろ」


研究室]

男「研究室の札が見えた。あそこか?」

友「そうだ。入ろう」



科学者「来客かな?」

友「そうだ。例のーー」

科学者「ああ君か。話は聞いている。それで何が聞きたい」

男「一体何がどうなってるんですか」

科学者「何故このようになってしまったかは分かる。1から説明しよう」

男「お願いします」


科学者「事態を引き起こした"皮"と"あん"について説明する。"皮"はスマートフォン、君も持っているそれだ。
    人々の豹変はそれによって起こっている。ただし持っているだけではあの様にはならない。そのスマ
    ートフォンのアプリPINEを起動することにより"あん"が働く。その"あん"というのが昔話題になった
    サブリミナル効果だ」

男「確か識閾下云々ってやつですよね。でもそれは効果がーー」

科学者「そう。劇的な効果は得られない。だから私達は研究を続けてきた。そしてやっと、任意の無意識を引
    き出す事に成功した。識閾下の刺激を認識させる事に成功したんだ。これを限定廃閾と名付けた」

男「でも一体なんの為にそんな研究を」

科学者「例えば限定廃閾を使うと癖を常に意識出来るようになる。爪を噛む為に手を口元に持ってくる筋肉の
    動きを認識出来るようになるから手を動かす前に気付ける。他にも夢遊病や吃り等の治療も見込める。
    私はそれがやりたかった。ところで君はこしあん派? つぶあん派?」

男「えっ? うーん............つぶあん派ですかね」

友「!」

科学者「素晴らしい。君は立派な大人になれる。話を戻すと実はこの"あん"はつぶあんだ。あんこはサブリミナル効
    果、つぶは限定廃閾。PINEを起動すると"無意識"に命令が刷り込まれ、幾つかの機能のうちのどれか一つを
    使うことでその命令を強制認識させる。具体的にどんな命令かは分からないが、とにかくPear社はそういう
    使い方をした。そしてこの技術はCMにも使われている。だから残念ながら、都市部は壊滅だ」

男「............」

科学者「私はこんな結末を望んだ訳ではない............でも私は無意識に、こうなると分かっていたかもしれない」

男「じゃあ何故Pear社に技術提供なんかしたんですか!」

科学者「こればかりは、仕方なかった......」

男「............」

科学者「私からの説明は、以上だ」


友「Pear社が何故こんな事をしたかはわからない。こうなってしまった以上、現状把握と被害拡大を防ぐしかない」

男「ああ......」

友「何か対応策はないのか?」

科学者「少々強引だが一つしかない」

友「聞かせてくれ、親父」

科学者「うむ。電波塔を破壊すれば良い。2本あるから両方ともだ」

友「なるほど。じゃあ俺は北の電波塔の破壊の方をやる。男は南のを頼む」

男「分かった」

科学者「ああそうだ、南の電波塔はPear社が設計した物でアンテナを壊しても意味がない」

科学者「地下にある制御装置を叩け。Pear社はこういう事を見越して緊急用の送信アンテナを広範囲に3つ設置している」

科学者「大アンテナが機能しなくなると小アンテナに切り替わるようになってるんだ」

友「この金槌でその装置をぶん殴ればいい。それと、なるべく人通りの多い道は避けて行け。2時間後またここで落ち合おう」

男「分かった」

科学者「頼んだぞ」

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男「鍵がかかってなくて良かった。案内があるな」

男「制御室は地下2階か。地下1階は電気関係になってる」



男「ここでイルミネーションの管理をやってたのか。普通の事務室みたいな感じだが」

男「それにしても汚いな。デスクは埃まみれで蜘蛛の巣が所々にある」

男「............色々疑問点があるが友に聞けば教えてくれるだろう。早く下にーー」

ガタッ

男「何だ!?」

??「誰......?」

男「女性?」

??「ああ男くんね............こんにちは............」

男「えっ先輩? こんな廃墟のような所で何やってるんですか」

先輩「......え......廃墟? そうね、言われてみれば、少し汚いわね」

先輩「掃除......しましょうか」

男「先輩?」

先輩「雑巾で......水拭き......」

男「先輩何かおかしいですよ......って何でスカートの中なにも穿いてないんですか!」

先輩「え......あ......ぐわあああああああ!!」

男「うわあ!!」

女「男! 伏せて!」

男「!!」

パシュ パシュ パシュ カランカランカラン

先輩「」バタッ

男「な......」


女「反応が鈍いわよ」

男「な......何してくれてるんだ......」

女「助けてあげたの。貴方を」

男「でも、殺すことないじゃないか」

女「殺さないといけなかったのよ。それが私の役目」

男「一体どういうーー」

女「あの人は敵なの」



女「あの人の父親がPear社の人で彼女もそこに就職して、今回のプロジェクトに参加していた」

女「私達の3つ上だから21歳ね」

女「若い女性が大きなプロジェクトのチーム入るのは稀で、目をつけていたのよ」

女「ちょっとスマートフォン起動してみて」

男「あ、ああ」

男「待ち受け画面になった」

女「PINEの横のアイコンをタップして」

男「......何だよこれ。タブが凄い量に増えてる」

女「取り込んでるの。あ、終わったみたい。その一番上のファイルを開いてみて」

男「......これは!」

女「日本人社員の名簿ね。英語で書かれてるけど読めるよね?」

男「ああ。上から数番目に先輩の名前がある。えーと......げ、現地指揮者!」

女「......私は、間に合わなかった」

男「......」

女「だから私の役目はここで終わり」

男「え......?」

女「............」カチッ

男「おい! やめろ!」

パシュ カッカラン

男「っ......何で......」

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友「無事に遂行したようだな」

男「ああ......」

友「急ではあるが、ここを脱出して安全かつ食糧その他完備の所へ向かう。俺の隠れ家[セーフハウス]だ」

男「ああ......」

友「どうした?」

男「いや............んん??」

友「?」

男「セーフハウス?」

友「そうだ」

男「何か引っ掛かる。何かが。忘れてるのか気のせいかもわからないが何かが引っ掛かる。しかも凄い重要な事のような気がする」

友「済まないが時間がない。どうにもまだ感染が広がっているみたいだ」

男「わかった。"感染"って、人から人にうつるのか?」

友「うつらない。ただ限定廃閾で人を殺すようになったりするから接触は避けたい」

男「なるほど」

友「それじゃ行くぞ」


友「よし、ここで良い」

男「いやまだ校門前なんだが」

友「安全策を取ってここから隣町までタクシーで行く。電車やバスは止まったからな」

男「タクシーは営業してるのか。随分呑気だな」

友「平日昼間にスマホ買う人、TVCMを視る人は限られるから感染者数は多くない。まだ全機能停止って訳じゃない」

男「俺も危なかったけどな。寝てたのが功を奏した」

友「随分呑気だな。っとタクシーが来たぞ」

男「ってベンツかよ! ハリヤーだろこれ」

友「それを言うならハイヤーだ」

科学者「待たせたな」

男「私物かよ!」

科学者「盗品だ」

男「おい」

友「無駄話は車の中で頼む」

科学者「3人と聞いてたが出して良いのか」

友「問題ない」

男「............」

科学者「わかった。発進するからシートベルトをしてくれ」

 

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