男「わ、わかったから、とりあえず包丁はおろそう……な?」
幼「だーめ!男ちゃんが悪いんだよ?わたし以外の女の子とベタベタするからあ!」
男「馬鹿言え!あれはクラスメイトとして普通にしゃべってただけだろ!」
幼「ちがうもん!ちがうもん!ちがうもん!」
幼が子どものように手足をジタバタさせていた。
包丁は今も握りしめたままだった。
しかも、二刀流だから余計にたちが悪かった。
狂 っ て い る 。
俺たちはいつから変わってしまったんだろう。
こいつも昔は可愛げがあったのに。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1386529125
幼「とにかく、わたしとの約束守ってね!明日からは他の女の子としゃべっちゃダメだから!」
男「ひ、一言も?」
幼「当たり前だよー!いいかげんにしないと、わたし怒っちゃうよ?」
幼は頬っぺたを膨らませながら、両手をブンブン振り回した。
風を斬る乾いた音がした。俺は思わず身震いをした。
考えるべきことは山ほどあった。
だが、今は一つのことだけを考えていればいい。
幼を落ち着かせることだけを考えていればいい。
男「とりあえず、>>4しよう……」
1、幼の言うことを聞く
2、逃げる
3、自由安価
2
男「逃げよう」
今のあいつに必要なもの、それは頭を冷やすことだ。
だから、しばらくの間一人にさせておこう。
そうすれば、自分の犯した過ちに気づくはずだ。
その時はあいつを寛大な心で受け止めてあげよう。
それで、いつもの俺たちに元通りというわけさ。
そうと決まればまずは……
男「幼、プレゼントやるよ。お前の欲しい物なら何でもやるよ」
幼「え?いきなりどうしたの、男ちゃん」
男「遠慮すんなよ。それでお前の機嫌が直ってくれるなら万々歳だからな」
幼「…………ふーん」
幼は首を傾げてしばらく考え込むようなしぐさをした。
目を閉じたり開いたりするのを三回ほど繰り返しただろうか。
あいつは再び口を開いた。
幼「……ほんとーになんでもいいの?」
喰いついた!
そんな幼に対して、俺はすかさず答えてやる。
男「いいぞ」
幼「ほんとーのほんとにぃ?」
男「しつこいぞ」
幼「えへへっ!」
幼は口元に人差し指を当てながら、やわらかく微笑んだ。
不覚にもかわいいと思ってしまった。
男「いかんいかん。幼相手に翻弄されてどうするんだ!気合を入れろ、俺!」
気を取り直して……
男「で、お前は何が欲しいんだよ」
幼「うーんと、それはねー……」
なんだろう。
幼はいきなり俺の前にグッと顔を突き出してきた。
その目はいつの間にか閉ざされていた。
幼「んっ」
そして、何かを促すような声をあげる。
これは……?
男「……なにやってんだよ」
そんな俺の言葉に幼は頬っぺたを膨らませた。
幼「もー!なんでわかんないかなー?」
男「は?」
幼「……キス、だよっ」
男「ぶっ!!」
狂 っ て い る 。
こいつの思考回路は相変わらず理解できなかった。
幼「んっ」
幼はもう一回目を閉じた。
期待するような笑顔でおねだりをしてくる。
そんな幼を見ていると悲しくなった。
俺の心は罪悪感でいっぱいだった。
男「幼、ごめん」
俺は幼の目の前からそっと離れて、窓枠に片足をひっかけた。
そして、そこから一気に飛び降りた。
ここは二階だ。打ちどころが悪くない限り死ぬことはないだろう。
命がけの逃亡劇だった。
男「~~~~~~~~ッ!!」
男「足がジンジンする……」
無事……着地できたと言えるのだろうか。
流石に死にさえはしなかったが、骨には結構響いた。
男「まあ、結果オーライだ」
あまり気にしないことにした。
沈みかけの夕陽に照らされて、あたりの景色は茜色に染まっていた。
いつの間にか夕方だった。
男「これからどうっすかなー……」
正直、行くあてはないのだが……
男「>>11に行くか」
1、商店街
2、幼のところ
3、学校
4、自由安価
女友達の家
女友「なーるほどー。それでわたしのところに来たってわけかー」
女友はティーカップ中の紅茶を一気にあおった。
それを机の上に勢いよく叩きつけた。
女友「ぷはーーーーッ!!この一杯のために生きてるって感じだよねえ」
そして、おっさんのようなことを言いだした。
外見に反して、色気のないやつだ。
女友「男も飲んでみなよー。アッサムティー、おいしいよー」
どうやら紅茶は俺の分も用意してあるようだった。
手元のティーカップからは尾を引くように白い湯気が立っていた。
その気遣いはありがたいのだが……
男「いい、俺は猫舌なんだよ」
女友は大きく溜め息をついた。
女友「なーんでこんなかわいい女の子の誘いを断っちゃうかなー。女友さんに失礼だと思わないのー?」
男「お前、それを本気で言ってるなら頭わいてるぞ」
女友「ちえっ!つーれないんだー。そんなんじゃ、幼ちゃんが怒るのも無理ないかもねー」
男「あ」
少し遅れて、俺はハメられたのだと気づいた。
女友は俺なんかより、一つも二つもうわてだった。
こいつの勘が鋭さには恐れ入る。
敵には回したくないタイプだと思った。
女友「男は幼ちゃんの気持ちをちゃんと考えたことある?部屋に一人置き去りにされた幼ちゃん、もしかしたら泣いてるかもよ?」
女友の言葉が俺の胸に深く突き刺さった。
膝をすりむいた時のように、そこはジクジクと痛んだ。
女友「わたし、男の考え方は立派だと思うよ。でもね、逃げちゃだめだと思うんだー。」
女友「男が大変なのは痛い程よくわかるよ?でも、もう一度よく考えてみなよ。今は自分の気持ちだけが一人で突っ走ってるんじゃないかな?」
俺は何も言えなかった。
罪悪感に押しつぶされて、頭はどんどん垂れ下がっていくばかりだった。
女友「……どうすればいいのかは言わなくてもわかるよね?」
男「…………」
男「そう、だな……今の俺は>>18だけだ」
1、幼のところに帰る
2、もうちょっとゆっくりする
3、漫画貸してくれよ
4、自由安価
4、とりあえずアッサムティーを飲む・・・あれ?意識が・・・
男「俺、幼のところに帰るよ」
女友「うん、それでこそ男だよ!」
俺の言葉に女友は満足そうに頷いた。
女友は頼りになる。いくら感謝しても足りないぐらいだった。
何かできることはないだろうかと考えた。
そして……
男「せっかくだから、アッサムティー飲んでみるよ。女友がついでくれたんだし」
俺はティーカップをつかんで、口を持っていこうとした。
だが、そんな俺を見て、女友は顔を真っ青に叫んだ。
女友「だ、だめだめだめだめーーーーッ!!」
女友が慌てた様子で俺の手をつかんでくる。
何を考えているのかはさっぱり検討がつかないが、意地でも俺に紅茶を飲ませないつもりらしい。
男「離せよ」
女友「べ、別に無理して飲まなくてもいいじゃんよー!男は猫舌なんだからさー」
男「お前、冷や汗がヤバいぞ?なにをそんなに焦ってんだよ」
女友「あ、焦ってないから焦ってないから!とにかく、黙って女友さんの言うことを聞きなさいっ!」
女友は必死の説得を試みるが、それは逆効果に終わった。
そう言われると余計に気になるのが人間というものだった。
そして、俺たちは男と女なので、少なからず体格差が存在する。
女友の必死の抵抗もむなしく、遂に俺は紅茶を喉の奥に一気に流し込んだ。
女友「あ」
女友はあんぐりと口を開けた。
そして、力を失ったように俺から手を離した。
男「うん、なかなかイケるじゃん。お前、結構いれりゅのうみゃいんだな」
あれ、おかしいぞ。
急に呂律が回らなくなってきた。
おまけに、目の前の景色がぐにゃぐにゃと歪んでいる。
気がつけば、平衡感覚も失っていた。
男「ひゃ、ひゃれ?」
状況を理解できないままに、俺は床に倒れ伏せることになった。
女友「あちゃー……」
上の方で女友の声が困ったような聞こえた。
こいつ、まさか……?
男「な、にを、まぜ、た……?」
女友「あははー……しびれ薬です……」
男「どう、して……?」
女友「わたしだって、わかんないよー!」
女友の声は震えていた。
恐らく涙目になってるんだろう。
こいつを信用しすぎた俺が馬鹿だった。
俺が全てを諦めかけたそんな時だった。
女友「ひゃあっ!!」
男「な、なんだあ?」
ガラスの割れる大きな音が俺たちの耳をつんざいた。
部屋の至るところに粉々に砕けたガラス片が散らばった。
俺はゆっくりと音の方向に目を向けた。
ぼやける視界の先に映ったのは……
幼「よかったあ、男ちゃん!会いたかったんだよー!」
バールを片手に構えた幼だった。
花が咲いたような明るい笑顔を湛えていた。
幼「安心して!男ちゃんをたぶらかす泥棒猫はわたしが退治してあげるからね!」
俺の姿を確認した幼はそう言ったあと、バールを強く握りしめた。
女友「泥棒猫って……わ、わたしぃッ!?」
あながち間違いでもないような気がしたのは、俺の気のせいだろうか。
男「は、ははは……」
この状況を笑って誤魔化そうとしてみたが無理だった。
ただ、顔の皮膚が引きつっただけだった。
女友「お、男ー!なんとかしてよー!」
涙目の女友が俺の身体を思いっきり揺さぶってきた。
男「いや、無理だろ」
女友「えええええええ!!」
時間が経って、しびれ薬の効果がおさまってきたのだろうか。
俺はまともにしゃべれるようになったし、視界もクリアーになってきた。
だが、体はまるで金縛りにあったかのようにビクともしない。
女友「お願いっ!幼ちゃんを説得してよ!このままじゃわたし何されるかわかんないよ!」
男「はああああああああああッ!?」
失望した。
女友がここまで勝手なやつだとは思わなかった。
男「でも……」
目の前で惨状が繰り広げられるのは寝覚めがよくない。
俺がどうにかするしかないのだろう。
唾をゆっくり飲み込んだ。
男「幼」
幼「男ちゃん?」
幼の潤んだ瞳がこちらに向けられる。
やるなら今だ!
男「>>26」
1、ごめんなさい
2、バールの正しい持ち方はこうだろ?
3、お前なんか嫌いだ
4、自由安価
↑
男「ごめん……」
男「ごめんな、幼」
その言葉は自然に俺の口をついて出てきた。
幼は一瞬、驚いたように目を見開いた。
だが、それもすぐに元の笑顔に戻った。
幼「なんで、男ちゃんが謝るの?男ちゃんはなんにも悪くないのにー」
男「これは真面目な話なんだ!頼むから真剣に聞いてくれ、幼!」
幼はビクッと肩をすくめた。
そして、小動物のように身を震わせている。
おどけたような態度の幼を見ていると、つい声が大きくなってしまった。
幼「なに言ってるの、男ちゃん?わたしはいつも真剣だよお」
男「だったら……!」
幼「男ちゃんが嘘ついたのはとっても悲しいよ。でも、それはわたしがいけない子だったから……」
幼「わたし、いけない子なんだよ。男ちゃんに怒られるのは当たり前なの。だからね……」
幼「だからね、男ちゃんはなんにも悪くないんだよ?」
幼は今にも泣きそうな目をしていた。
だけど、口元だけは強がって笑っていた。
幼はいつも俺の傍で笑顔でいてくれる。
でも、実際は違っていたのかもしれない。
もしも、それが見せかけの笑顔だったとして、心の中では泣いているのだとしたら……?
男「お前のことなら、何でも知ってるつもりでいたのに」
男「実際は……何も知らなかったんだな」
男「馬鹿みたいだよな、俺」
幼「男ちゃん……」
幼の一番近くにいたはずの俺が、一番何もわかってあげられなかった。
女友でさえ、幼が何を考えてるのか簡単に予想がついたっていうのに。
悔しくて、情けなくて、仕方がなかった。
だから……
幼「あ……」
しびれ薬の効果はすっかり弱くなっていた。
とはいっても、完全に消えて無くなったわけじゃない。
俺はふらつきながらも立ち上がり、幼の肩を抱き寄せた。
そして、幼の目をじっと見つめた。
これは俺の決意表明だった。
男「俺、お前のこと、これからもっとちゃんと知りたいって思う!!」
男「今度は逃げ出さないって約束するから!!お前のこと真正面から受け止めるって約束するから!!」
男「頼むッ!!幼ッ!!俺にもう一度チャンスをくれ!!」
幼「おとこ……ちゃん」
幼の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
そして、堰を切ったように次から次へと溢れだした。
バールが床に落ちる音があたりに響き渡った。
幼「ばかばかばかばかばかあっ!!」
幼は俺の胸に何度もパンチを繰り出した。
威力はそれほどでもないけど、不思議と俺の胸には重く響いた。
それは今まで溜めこんできた想いを一気にぶつけるかのようだった。
幼「わたし、ほんとは寂しかったんだよ!!」
男「ごめん」
幼「ものすごーく怒ってるんだからねっ!!」
男「ごめん……」
幼は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、俺を上目遣いにじっと見つめてくる。
そして、ふて腐れたような声音で言った。
幼「男ちゃん、さっきからそればっかり……」
幼「わたしバカだから、謝ってばっかじゃわかんないよ」
幼はそっと目を閉じた。
いつの間にか俺たちの顔は、鼻が触れ合いそうなほどに近づいていた。
幼「約束、守ってくれるんだよね?わたし、信じていいんだよね?」
男「お、おう」
幼「じゃあ、嘘じゃないってこと……」
幼「証明して……?」
お互いの息遣いが聞こえてくるほどの距離だった。
心臓が狂ったように激しく脈を打っていた。
そして、俺たちの唇が今にも触れあおうとしたその時だった。
女友「あ、あのー……お楽しみのとこ、申し訳ないんですけどー……」
男「……ん?」
男「あ」
後ろに目を向けてみると、女友が気まずそうに立ち尽くしていた。
部屋の中にいたはずなのに、すっかり存在を忘れていた。
男「待てよ?」
ということは、今までの恥ずかしい台詞を一言一句逃さずに聞かれていたことになる。
眩暈がした。
女友「もしかして……わたし、お邪魔だったりしますかー?」
女友が困ったように苦笑いをしていた。
幼「男ちゃーん、はやくーーーっ」
待ちきれなくなったのだろう、幼が思いっきり唇を突き出してきた。
男「わあっ!」
危ないところだった。
咄嗟に身を引いていなかったら、今頃唇にキスをしていただろう。
ナイス、俺の反射神経!
幼「なんでよけるのーーー!」
男「うるさい、マセガキ!普通、そういうのは恋人同士でやるもんだ!」
幼「嘘つかないっていったくせにーーー!」
男「そ、それは……」
言われてみればそうだった。
キスしないといけないんだっけ。
だが、それだけは恥ずかしくて、とても耐えられそうにない。
男「しょうがねえな。顔をこっちに向けろ」
幼「んっ♪」
待ってましたと言わんばかりに、幼は自分の唇の上に人差し指をのっけた。
つまり、さっさとしろということらしい。
男「…………」
だいぶ悩んだあとに俺は幼のおでこに軽く口づけた。
そして、幼の頬っぺたを左右に引っ張ってやった。
幼「いひゃい……」
男「当たり前だ」
幼は半泣きの状態で俺を睨んでくる。
申し訳ないが、まったく怖くない。
男「とりあえず、約束はちゃんと守ったぞ」
男「これで満足か?」
幼「う~~~~~~!」
幼は恨めしそうに唸っていた。
子どもか、こいつは。
男「といわけで、俺たちは帰るよ、女友。悪いけど、窓ガラスの代金は明日まで待ってもらえないかな?」
これ以上、人様の家に迷惑をかけるわけにはいかない。
さっさと俺たちは帰ることにした。
女友「う、うん……それはいいんだけど、そのー……」
女友にしては珍しく歯切れが悪い。
どうしたんだろう。
女友「幼ちゃんなんだけど、大丈夫かなってさあ……」
男「は?」
俺は訝しげに幼の方へと視線をうつした。
すると……
幼「男ちゃんの……」
いつの間にか幼は両手でパールを握りしめていた。
そして、大きく振りかぶって……
幼「ばかあああああああああああッ!!」
男「ちょ、ま……」
俺に向かって勢いよく振り下ろした。
プロローグみたいなものはこれで終わりです。
安価とってくれた人ありがとうございました。
続きは明日にでも投下します。
担任「では、テストを返却する。呼ばれたものから前に取りに来るようにな。じゃあ、まずは有野ー!」
黒髭の野太い声が教室を通り抜けた。呼ばれた有野くんは怠そうにイスから立ち上がった。
ちなみに黒髭というのは担任の愛称だ。あごから伸びる長い黒髭が特徴的だから、みんなからそう呼ばれている。
本人はこのあだ名を結構気に入っている……らしい。
男「…………」
俺はボーっとしながら、窓から見える景色を眺めていた。
青々と生い茂る新緑が、さわやかな風を受けてゆらゆらとなびいていた。
五月もあと数日で終わって、六月に入り、いよいよ梅雨の季節がやってくる。
溜め息をついたのは、俺は雨が大の苦手だったからだ。
担任「次、男ー!」
男「あ、はい」
いつの間にか俺は黒髭に名前を呼ばれていた。
そして、重い腰をあげて教卓の前に向かおうとしたら、その途中で女友に声をかけられた。
女友「ねえ、男ー。今回の国語さあ、わたし結構自信あるんだー」
男「それがどうしたんだよ」
女友「ね!勝負しようよ!」
男「……は?」
女友「負けた方がマックおごりだからねー!」
男「おい、ちょ、ま……」
なんだか知らないが勝手に決められてしまった。
だが、断ったら断ったで女友にヘタレとか言われるに決まっている。面倒くさい。
それから、俺は仕方なくテストを受け取りに行った。
黒髭は俺に答案用紙を渡す時に小声で言った。
担任「男、今回のテストは>>45だったな」
1、残念
2、まあまあ
3、よく頑張ったな
4、自由安価
4 いつもどおり完璧
担任「流石だな、文句なしだ。次もこの調子で頑張れよ!」
黒髭は満足そうな笑みを俺に送ってきた。
テストの結果はいつも通りの満点だった。
女友「ふっふっふ!男くんよ、テストの結果はどうだったのかな~?」
席に戻る途中、女友が嫌味な感じで俺に話しかけてきた。
こいつ、もうすでに勝った気でいるらしい。
だが、相手が悪かったな。
かわいそうだが、現実というものを思い知らせてやろう。
男「満点」
女友「…………」
女友「……え”?」
女友は笑顔のまま固まった。
そして、あっという間にその表情は青ざめていった。
女友「じょ、冗談だよね……?女友さん、嘘つくのはよくないと思うんだー」
男「現実から目をそらすな。あと、マック忘れんなよ?」
女友「ううううううう!男の鬼畜ーーッ!!外道ーーーッ!!悪魔ーーーッ!!」
女友は涙目のまま机に突っ伏した。
なんだか、ひどい言われようだな。
相手にするのが面倒くさいので、俺は女友をスルーすることにした。
男「ふう……」
自分の席に戻ったあとの俺は、答案用紙にもう一度よく目を通したあと、それを机の中に突っ込んだ。
男「……ん?」
それから、何人かの生徒が教卓と机の間を行ったり来たりしただろうか。
俺が黒板を退屈そうに眺めていると、隣の席の方から、突き刺さるような鋭い視線を感じた。
恐る恐る横を見てみると……
会長「随分と余裕でいらっしゃるのですね。流石、特待生に選ばれるだけの実力をお持ちのようで」
男「か、会長さん……」
視線の送り主は会長さんだった。眼鏡をくいっとあげて、すごい眼力で俺を睨みつけてくる。
現生徒会長のこの人はいろいろとすごい人だった。
お祖父さんが教育委員会の会長を務めているらしく、しかも実家はお金持ちときている。
成績も毎回学年二位をキープしているし、運動神経も抜群だ。
おまけに美人だ。まさに大和撫子といった容姿をしている。
完璧という言葉が似合う人は、この人をおいて他にはいないだろう。
ただ、融通が利かないことと、性格がきついのがたまに傷といったところか。
その性格のせいで、周りからは"鬼の会長"という異名で恐れられている。
会長「よろしいのですよ。わたくしのような者とは頭の出来が違うのでしょうから」
男「え、あのー……」
俺、何か彼女を怒らせるようなことをしたのだろうか。
そして、気がつけば授業終了のチャイムが鳴っていた。
会長「ですが、せいぜい足元をすくわれないようにお気をつけになることですね……!」
会長さんは吐き捨てるような強い語気で言い放った。
それを合図に俺から目を離した。
会長「起立……礼!」
俺は会長さんに何か声をかけようと思ったが、号令が終わると、彼女はすぐに教室を飛び出してどこかに行ってしまった。
俺に一瞥をくれることもなく。
午前の授業が終わると、クラスの連中はおのおのに散らばって行った。
昼休みの教室は、ところどころが空席でガランとしていた。
ほとんど連中は食堂か購買に向かったのだろう。
男「さて、俺はどうするかな?」
一応、自前の弁当を持ってきたから、場所はどこでも構わないのだが……
男「一人ってのもなんだし、せっかくだから>>52を誘ってみるか」
1、やっぱり一人
2、幼
3、女友
4、会長
5、自由安価
5 巨漢で従順な舎弟
男「いつも通り、幼でいいか」
あいつのことだ。
放っておいてもすぐに自分からやって来るだろう。
隣のクラスの授業が終わるまで、俺は机に突っ伏して待っていることにした。
それからしばらくたって、だれかが俺の肩に手をのっけてきた。
俺はすぐにそれが幼の手じゃないと判断した。
いや、そもそも女の手じゃない。これは、れっきとした男の手だ。
手のひらの大きさからして全然違う。
嫌な予感がした……
ラッパー「ヘイヨー!ホールミー!こんなところでウァッツアップ!オトコくん!」
顔をあげてみると、俺の目の前で2メートルの巨漢が一定のリズムで腰を振っていた。
いかついスキンヘッドがヘッドフォンの中にすっぽりと収まっている。
そして、肌はチョコレートのように黒い。
チャラ男「あっれ~~~?男センパイじゃないっすか~?チョリーッス☆」
そして、その後ろから金髪にピアスといった服装が思いっきり校則違反の優男が登場した。
多分、香水をつけているのだろう。なんだか甘い匂いがした。
ちょっとお近づきになりたくない連中だ……
男「で、こんなところまでなにしに来たんだよ……」
チャラ男「いや~、それなんすけど、ちょっとマジ聞いてくださいよ~!実はここだけの話なんすけど~」
チャラ男が俺の首に馴れ馴れしく腕を回してくる。
そして、俺の耳元に小さく囁いた。
チャラ男「なんつーか、敵のオヤダマのテーサツ?……ってやつっすよ。近々、デカい祭りがあるんす」
男「はあ?」
偵察やら、祭りやら聞き覚えのない単語が聞こえてくる。
なんだかいまいち要領を得ない。
チャラ男「ま~、ショーサイはここじゃあれなんで……」
チャラ男が親指で教室の入り口の方を示した。
つまり、場所をうつせということらしい。
チャラ男「ま、姉貴もマジ久しぶりに男センパイに会いたいって言ってますし~……どっすか~?」
チャラ男が歯を出して笑った。
断ったとしても、こいつらはしつこいからなあ……
さて、どうしようか。
男「>>57」
1、わかった、案内しろ
2、断る
3、自由安価
1
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません