モバP「アイドルと写真と思い出と」 (39)

ちひろ「プロデューサーさん…何してるんですか?」

プロデューサーさんのデスクの上には大量に折り重なるように散らばった写真。

私は熱心に何か作業をしているプロデューサーさんの背中に声を掛けます。

P「…わっ!?」

P「な、なんだ…ちひろさんですか…」

ちひろ「……私ではご不満ですか?」

私はワザと不機嫌そうな顔を作ります。



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P「そういう訳じゃ…」

分かりやすく慌て出すプロデューサーさん。

ちひろ「およよ…いいんです…どうせ私なんて箸にも棒にもかからない女ですから…」

追い打ちにプロデューサーさんに背中を向けて泣き真似をひとつ。

P「か、勘弁してくださいよ…!」

心底困ったような声を出すプロデューサーさん。

ちひろ「冗談ですっ♪」

ちひろ「それよりなんですかそれ?」

あんまり虐めるのも可哀想です。ケロっとした顔で私は振り返ります。

P「…ちょっとアルバムを作ってただけですよ」

プロデューサーさんは少しためらった後にそう言います。

ちひろ「アルバム…ですか」

ちひろ「そういえばプロデューサーさんっていつもカメラを持ち歩いてますけどカメラにこだわりとかあるんですか?」

プロデューサーさんが写真を撮るのは珍しいことではない。

それに私からすれば少しくすんだシルバーのデジカメとプロデューサーさんはセットのようなものです。

お?ちひろ大勝利なのか?

P「…そういうのはないですね、現にこのカメラも特に最新のカメラでもモノが良い訳でもないですから」

プロデューサーさんは小さく微笑みながらデスクの上に乗ったデジカメに目を落とします。

P「それにあんまり大きいカメラだと逆に持ち歩けませんからね」

ちひろ「ふふ、そうですね、あんまりゴツいカメラを持ったプロデューサーさんは想像できないですね」

おっかなびっくり中腰でカメラを構えるプロデューサーさんを想像して小さく吹き出す。

P「…それはあんまりじゃないですか…?」

不満気な顔をするプロデューサーさん。

P「まぁ俺は下手くそですからねー、俺なんかがそんな良いカメラなんて恐れ多いかもですねー」

ちひろ「そんなに拗ねないでくださいよ…」

ジト目でこちらを見てくるプロデューサーさん。

P「はは、冗談ですよたまには俺が冗談言ってもいいでしょう?」

一転して今度はケロっとした顔をするプロデューサーさん。

ちひろ「…プロデューサーさんのデスクの上の物荒らしていいですか?」

私はデスクの上に大量に積まれた写真を見ながらそう言います。

P「鬼ですかっ!?貴方は!?」

目を見開いて驚くプロデューサーさん。

ちひろ「まぁ、茶番はどうでもいいんでそれ見せてくださいよ」

そう言って私はプロデューサーさんの持つアルバムを指さします。

P「…いいですけど写真の出来には期待しないでくださいね?」

そう言ってプロデューサーさんは私にアルバムを手渡します。

ちひろ「って何冊あるんですかこれ…?」

プロデューサーさんがヒョイヒョイと私のデスクの上に大量のアルバムを積んでいきます。

P「そうですねぇ、所属アイドルが増えてからは加速度的に冊数は増えましたね…」

ちひろ「はぁ、物好きですねぇ…」

そう言って私は手近にあった一冊を手に取って表紙を捲ります。

ちひろ「…これは…凛ちゃん?」

私が開いたアルバムの1ページ目には制服姿ですました顔の凛ちゃんが居ました。


渋谷凛(15)
http://i.imgur.com/JYPVTxl.jpg

ちひろ「……これって時期的に大分…」

P「えぇ、そうです。俺がプロデューサー始めた当時ですね。懐かしいですよね」

プロデューサーさんは私の手元のアルバムを覗きこみながらそう言います。

ちひろ「これは…?」

閉じられた写真の中には小さなメモ書きが表向きに入っていました。


【宜しく、初めての担当アイドル】

P「その時のことを簡単にメモして写真と一緒に綴じてるんです」

……マメですねぇ…。

P「この頃の凛は結構クールでしたよね」

プロデューサーさんは楽しそうに喋り出します。

P「俺がカメラ向けると露骨に嫌な顔してましたよ」

ちひろ「そりゃそうですよ、いきなりカメラ向けられれば皆そんなもんです」

P「そういうもんですかね…?」

ちひろ「そういうものですよ」

P「まぁ、乃々なんかは写真撮ろうとすると逃げるんで撮りがいがありますね」

…乃々ちゃん、可哀想に…。


森久保乃々(14)
http://i.imgur.com/qOSlHQF.jpg

ちひろ「というか凛ちゃんは今でもクールですよ?」

P「そうですか?最近は歳相応に無邪気な所も見せてくれて微笑ましいと思いますよ」

ちひろ「プロデューサーさんの前ではそうでしょうよ」

P「…どういうことです?」

心底不思議そうなプロデューサーさん。

……呆れた…。

P「…このメモの時みたいに未だに凛からまぁ悪く無いかなぐらいの評価だったらちょっと寂しいですね」

ちひろ「歳相応とか無邪気とかそういう所を見せてくれてるのもプロデューサーさんが信頼されてるからですよ?」

ちひろ「…そういう面を出しても大丈夫だって思われてるってことです」

ちひろ「もうちょっと誇ってもいいと思いますよ?」

…少し差し出がましいことをしたかもしれません。

P「…ありがとうございます」

ちひろ「……ちょっとお節介だったかもしれませんね」

私は小さく呟いてアルバムのページを捲ります。

期待

ちひろ「これは、初めてのライブですか…?」

そこには緊張しているのかおっかなびっくりな表情の凛ちゃんが居ました。

ちひろ「…まぁ、当然ですよね…」

P「何がですか?」

ちひろ「いえ…なんでもないです」

P「あはは、やっぱりこのときはまだ凛の表情が堅いですね」

右端に同様挟まっていたメモ書き。

【反省点の多かった初ライブ】

プロデューサーさんはアルバムに手を伸ばしスッっと写真の凛ちゃんの頭を指先で撫でます。

ちひろ「ある意味プロデューサーさんの初めてのライブでもある訳ですから思い入れもあるんじゃないですか?」

P「そうですね、今となっては後悔だらけですよ」

ちひろ「…後悔ですか?」

P「えぇ、あの時もうちょっと上手く出来たんじゃないかとかね…」

P「それに初めてのLiveが終わった後の凛にまともにプロデューサーらしいこと出来ませんでしたからね」

凛『お互い様だよ』

P「うぉっ!?」

ちひろ「い、いつからいたんですかっ!?」

振り返るとそこには仏頂面の凛ちゃん。

凛「なんか私の写真がこんなにあるとなんかプロデューサーがストーカーみたいだね」

P「その理屈だと俺は一体何人ストーキングしてるんだろうな」

プロデューサーさんは大量に積まれたアルバムを見てボソッっと呟きます。

そんなプロデューサーさんを無視して凛ちゃんは私は手元のアルバムのページを捲ります

ちひろ「凛ちゃんの表情もだんだん明るくなっていきますね」

写真の中の凛ちゃんは感情表現の幅を少しずつ広げていきます。

ちひろ「…はぁ、マメですねぇ…」

【ニュージェネレーション結成】【CDデビュー】

【ローソンキャンペーン抜擢】

写真1枚ごとに一緒に挟まれているメモ書き。

凛「…なんかお父さんみたいだよね」

…何かに似てるなと思ったらなるほど確かにお父さんみたいですね。

P「…そんな歳食ってないぞ?」

P「……ないぞ?」

なんで微妙に自信なさげなんですか。

凛「でも最初の頃の写真のことは忘れて欲しいかな」

凛「…あの頃はちょっとだけ生意気だったから」

P「そうでもないだろ、仕事には昔から前向きなやつだったよお前は」

凛ちゃんの頭に手をやりポンポンとするプロデューサーさん。

凛「そ、そうじゃなくて…」

凛「……えと、可愛げ、無かったよね?」

P「凛は昔から可愛いよ」

凛「そっか、そっか……ふふ…」

……はぁ、女の子してますねぇ…。

妙な雰囲気になりそうな二人をスルーして私はアルバムをバサバサと開いていきます。

ちひろ「中々こうやって見ていくと面白いですね」

ある意味このアルバムはプロデューサーさんの見てきたものであり、写真と一緒に思い出が綴じられているのでしょう。

凛「…写真がブレブレのとかこっちを見ていないのとかも結構あるんだね」

P「…まぁ、俺が下手くそなのもあるんだろうけどな」

凛「これとか凄いね…」

ちひろ「これは酷いですね」

凛ちゃんの視線の先には掌でレンズを覆われたのか殆ど何が写っているのか分からない一枚。

メモ書きには【関裕美、記念すべき最初の一枚は掌】

ちひろ「メモ書きの内容がだんだん馴れ馴れしくなってますね」

P「そうですね、俺もこの頃には人数も増えて私情が多いに入ってます」

凛「アルバムなんだからこのくらいでいいよ」

凛「……私のにももうちょっと私情込めてくれても良かったのに」

ジトーっとした目でプロデューサーさんを見る凛ちゃん。

P「仕方ないだろ、あの頃は写真撮るだけでも俺にはハードルが高かったんだよ」

プロデューサーさんは少し困ったような顔で微笑みを浮かべます。


関裕美(14)
http://i.imgur.com/GdGP3Yz.jpg

凛「裕美、視線合わせてくれてないない写真のほうが多いね」

ちひろ「本当ですね。みんな視線が斜め向いたりそもそも後ろ向いてたり…」

P「きちんと撮らせてくれる期間よりそっぽ向いてる期間の方が長かったですね」

ちひろ「裕美ちゃんには結構手を焼いたんですね」

P「…そうでもないですよ」

P「…ほら」

そう言ってプロデューサーさんはアルバムを何枚か捲ります。

そこには【どうやら忙しくなるらしい】と書かれたメモと笑顔でこちらを覗きこむような裕美ちゃんの写真がありました。

ちひろ「このメモのどうやら忙しくなるらしいってどういうことですか?」

P「…仕事が楽しいって、沢山仕事して俺を振り回してくれるって言ってくれた時の写真ですね」

ちひろ「ここに来て一気に枚数増えますね…」

写真の数だけプロデューサーさんの一言メモの枚数も増えていきます。

【アイドルサバイバルハロウィンにて】【血だけじゃ栄養偏っちゃいそうなヴァンパイアです】

【裕美と食事、スペインにて】    【もっと私らしく!】

P「日常でもコロコロ笑うようになってこれから裕美がどうなっていくのか楽しみ……」

凛「…私と枚数そんなに変わらないんだね」

P「ん……?」

凛「プロデューサーはもっと最初のアイドルを大事にするべきだと思うよ」

P「…?あ、あぁ…」

ちひろ「……ふむ」

…これは面白そうな流れです。

ちひろ「という訳で連れて来ました」

裕美「な、何……?」

P「なんで裕美?」

ちひろ「本人抜きで話するよりはこっちのほうが楽しそうですから」

裕美「写真…このアルバムの…?」

裕美ちゃんは私の肩越しにアルバムへ視線を向けます。

裕美「わわっ、何これ…?」

P「よく撮れてるだろ」

裕美「…良く撮れてるけど結構恥ずかしいかな…?」

凛「いいよね、裕美は…プロデューサーに良い写真一杯撮って貰えて」

裕美「そうかな…?」

裕美「でもプロデューサーさんいつも凛さんのことばっかり喋ってるよ?」

凛「…えっ?」

ちひろ「…プロデューサーさん、凛ちゃんの写真ってこれで全部なんですか?」

P「いえ、別のアルバムにも綴じてありますけど?」

凛「…ふふ…そっか、そっか」

凛「プロデューサーは本当にしょうがないね」

なんか凄く良い笑顔の凛ちゃん。

……ご満悦です。

パラパラとアルバムを流し読みしていると周子ちゃんの写真で目が止まりました。

ちひろ「…なんで周子ちゃんの写真ってプロデューサーさんとのツーショットばっかりなんですか?」

裕美「えっ?」

P「それは俺が撮ろうとすると周子のやつカメラ引ったくって無理やりツーショットにするんですよ」

P「記念にするならこっちのほうがいいよねーなんて軽く言われちゃうと断る理由もないですから」

裕美「…アイドルなんだからそういうの良くない…ことはないけど控えたほうがいいと思うよ!」

裕美「ね、ねっ!凛さん!」

凛「うん、そういうのアイドルとするのは駄目……じゃなくて少し控えたほうがいいかな!」

……撮りたいんだ…二人共…。


塩見周子(18)
http://i.imgur.com/qOSlHQF.jpg

画像でワロタ

P「そういえばみくとかも枚数は多いかな」

ちひろ「そうなんですか?」

プロデューサーさんは山積みにされたアルバムから一冊を抜き出し、開きます。

P「撮ろうとすると近寄ってくるし積極的ですから撮りやすいんですよ」

裕美「…これってどういう状況なの?」

裕美ちゃんの視線の先には【お昼寝みく】と書かれたメモと誰かさんに膝枕されて眠るみくちゃんの写真。

P「可愛いよなぁ、カメラ持ち歩いてて良かったと思うよ」

可愛いですけど今はそういう話じゃないと思います。


前川みく(15)
http://i.imgur.com/0LG39eT.jpg

画像間違えた。
みくにゃんのお婿さんになります。

>>25
森久保じゃーん

周子の画像がむーりぃー

>>25
修正

塩見周子(18)
http://i.imgur.com/xFAfjBw.jpg

P「Pちゃんはたまにはみくを甘やかしてもいいと思うにゃって言いながら膝に転がり込んで来たんだよな」

P「適当に構ってたら途中で寝ちゃって……」

凛 裕美『そういうの良くないと思うよ!』

……ですよね…。

P「……?」

貴方は貴方で何キョトンとした顔してるんですか。

凛「プロデューサーは担当アイドルに甘すぎると思うよ」

裕美「う、うん…良くないよ…た、多分……?」

…貴方達も二人共担当アイドルでしょうが。

ちひろ「というか最初から気になってたんですけどそこに積まれてる写真って何なんですか?」

P「ちひろさんが来るまでは最近の写真をアルバムに綴じようとしてたんでそれですね」

ちひろ「…そういえば私が声掛けるまでは何かしてましたね」

ちひろ「見てもいいですか?」

P「いいですよ」

凛「…私も…」

裕美「…結構あるんだね」

凛 裕美『ねぇ……』

凛 裕美『なんで皆ブライダル衣装なの……?』

P「そりゃブライダルの仕事だからな…」

凛「…なんで加蓮と腕組んでるの…?」

裕美「…なんで泉さんの写真に挟んであるメモが【どうやら良妻らしい】なの……?」

P「加蓮がカメラあるんだから撮らなきゃ損だよねって言うからまぁいいかなって」

裕美「えっと…この【良妻】っていうのは…」

P「ははは、俺は泉を支える【良妻】らしいぞ」

……プロデューサーさん好かれてますねぇ…。

北条加蓮(16)
http://i.imgur.com/xO1uWFq.jpg
大石泉(15)
http://i.imgur.com/nKcI7ox.jpg

凛「…ふーん、へぇ」

凛「うん、ニューウェーブも居るし丁度いいよね」

凛「…次はニュージェネレーションがそういうお仕事向いてると思うよ、プロデューサー」

…完全に私情です。

裕美「凛さんずるいっ…」

裕美「わ、私もそろそろユニット組んでみたいかなっ!」

裕美「スペインツアーで皆ユニット組んでて羨ましいなって思ってたんだ!」

裕美「えと…嘘じゃないよ…?」

最近アクティブになった裕美ちゃんはどこに行くんでしょう。

裕美『でもその前に……』

凛『ツーショット写真と膝枕は今でも出来るよね…?』

P「この熱い中膝枕とか正気か!?」

ちひろ「しょうがないから今日は私が撮ってあげますよ」



ちひろ「…このカメラは一体誰の写真を一番多く撮ることになるんでしょうね?」

私はプロデューサーさんの小さなカメラを構えながらそんな呟きを漏らすのでした。

END

終わり。見てくれた方に感謝。

しぶりんとひろみんに取り合いされたかっただけです。他意はないです。

乙。面白かった
日記編も読み返そうかな

おっつおっつ

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