モバP「在るが儘に、我儘に」 (43)
モバマスSSです。
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MBF出られる方は頑張って下さい。
事務所
志希「お疲れ様~」
P「お、お疲れ様」
志希「んー疲れちゃったよ」
P「まぁ、それだけ人気が出てるってことで」
志希「誰かに期待されるのは悪くないんだけどねぇ」
P「お茶でも飲むか?」
志希「キミが淹れてくれるの?」
P「俺が淹れても上手くないだろうし、自販機で買ってくるよ」
志希「別に淹れてくれてもいいんだけど…アタシの部屋に来た時に淹れてくれたじゃん」
志希「折角だし付いていくことにするよ」
P「そうか」
志希「うん。善は急げ~」
P「何がいいんだ?」
志希「当てられたらアタシはキミのお願い聞いてあげようかな」
P「質問はしていいのか?」
志希「三回までね」
P「分かった」
志希「うんうん」
P「温かい?」
志希「冷たいね」
P「炭酸?」
志希「炭酸だね~シュワシュワ」
志希「あと一回だけど大丈夫?まだ、候補一杯ある気がするけど」
P「そうだな……それじゃ最後の質問な」
志希「どーぞ」
志希(何を聞いてくるんだろ?)
P「選ばれし者の知的飲料?」
志希「ぷっ…!あはは」ケラケラ
P「回答は?」
志希「せいかーい♪よく分かったね」
P「そうだよな」ポチ
志希「ん~ありがとね」
志希「それにしてもよく分かったね」
P「まぁ、部屋に行った時に転がってたろ?」
志希「そうだっけ?」
P「俺が片付けたんだから間違いないって」
志希「にゃはは。それじゃ、バレてたんだね」
P「まぁ…そういうことになるな。炭酸コーヒーとか買ってやっても良かったけど」
志希「…んーそれにはシキちゃん惹かれない」
P「だよな。正直俺も惹かれない」
志希「気が合うね~」
P「結構な人数と気が合いそうだな」
志希「そうかな?」
事務所
志希「ん~キミは優しいよね」
P「そうか?」
ガチャ
晶葉「ふぅ」
P「お。お疲れ」
志希「おつかれー」
晶葉「お疲れ様。助手も休憩か?」
P「まぁな。志希も帰ってきたことだし」
志希「ドクターペッパー買って貰っちゃった」
晶葉「そうなのか…」
志希「なんだかアタシだけ奢って貰うの悪いからキミも飲む?」
P「いや、大丈夫」
志希「ありゃ、キミの好みじゃなかった?」
P「たまに飲むと美味しいと思う程度だな」
晶葉(と言うかそれ、間接キスじゃないか?)
志希「遠慮せずにグイっと」
P「まぁ…そんなに言うなら…」
ゴクッ
P「久しぶりに飲むと美味いな」
志希「たまにだもんね。んーおいし。頭がくるくる回りそう」ニコニコ
晶葉(特に疑問も持たずに飲んでるし…なんなんだ)
P「晶葉、難しい顔してるけどどうしたんだ?」
晶葉「別になんでもないさ」
P「ならいいけどね」
志希「そう言えば晶葉ちゃん」
晶葉「ん?」
志希「何か面白い発明品ない?」
晶葉「唐突だな…」
志希「なんとなく聞いてみただけだからね~。ちょっとした時間潰し?」
晶葉「そうだな…この間作ったロボがそこにあるけども」
志希「おー。さっきから動いてるコレ?」
晶葉「そうだな。掃除関係のロボだな」
志希「ふーん……なるほど」
晶葉「どうかした…あ、したんですか?」
志希「敬語はいらないよー」
晶葉「そうか助かる」
志希「アタシも堅苦しいのは嫌いなんだよねぇ」
晶葉「そこは似た者同士かもしれないな」
志希「そこは。って言う辺りが晶葉ちゃんの良い所だね」
晶葉「……気を悪くしたら謝る」
志希「そう言う訳じゃないって」アハハ
志希「ふんふん。ここがこうなってこうなってるんだ~」
晶葉「機械の方も分かるのか?」
志希「少しだけね。機械は良い子だから好きなんだよね」
晶葉「良い子?」
志希「うん。だって、こうやって…ああやって…バチンって繋げばちゃんと動いてくれるじゃん」
晶葉「あぁ、なるほど」
志希「アタシが専門の分野は割と裏切っちゃうからなぁ…」
晶葉「何が起きるか分からないから楽しいという側面もあるんじゃないのか…?」
志希「それはそうだけどね」
志希「つまんない?」
晶葉「なに?」ピク
志希「いや、なんか方程式というか図面通りに結果が出ることに満足いってないのかなぁって」
晶葉「決してそういうことはない」
志希「そう?」
晶葉「あぁ、ゼロからこれを創造するのは割と楽しい作業だ」
志希「あ、そこは分かるかも」
晶葉「だから、決してそういうことでは……」
志希「でも、晶葉ちゃんが今一番抱えてる問題はきっと方程式に当てはめても答えは出ないし、
それこそ図面なんてない感じだよね」
晶葉「なっ……!」
志希「んー、ちょっと正しい表現じゃなかったね。そうだね……時計仕掛けの摩天楼とでも言うのかな?」
晶葉「前にそんな映画がテレビで再放送してたな」
志希「だよね~この間テレビでやってたよねー」
志希「結局、図面に書いてなかった赤と青の線。どっちを切るかは理屈でも理論でもなくただの感情だったね」
晶葉「そうだったかな」
P「お、何の話だ?」
志希「映画の話~」
P「志希が映画見るなんて意外だな」
志希「心外だね。アタシだって映画の一つや二つ……」
志希「……」
P「ないんだな」
志希「そーとも言う♪」
晶葉「何と言うか…自由だな」
志希「自由?自由ってのはこういうことだにゃ」ポフ
晶葉「なぁぁ!?」カァ
志希「んーすりすり」
P「どうした?」
志希「自由ってのはこういうことなのだ!」ドヤ
P「楽しそうだな」
晶葉「邪魔じゃないのか…助手」
P「ん?まぁ、これ以上は怒るけどな」
志希「そんなこと言って、キミは甘いもんね」
P「デコピンしていいか?」
志希「それはパース♪」ヒョイ
志希「それじゃ、今日はもう帰るね~」
P「送ろうか?」
志希「晶葉ちゃんの方に付き添うわないとじゃない?」
晶葉「私も…もう終わりだ」
志希「それじゃ一緒に帰ろうか」
晶葉「…あぁ」
車内
志希「~~♪」
P「やけにご機嫌だな」
志希「特に理由はないけど、強いてあげるならドクターペッパーを買って貰ったからかな」
P「安いな」
志希「誰に買って貰ってもこうなる訳じゃないからね?」
P「そうなのか」
志希「ふふーん」
晶葉(なんだか…蚊帳の外だ…)
志希「さっき口ずさんでたのはキミも知ってる曲だよ」
P「そうだな」
晶葉(あれは確か……)
P「この間のデビュー曲だな」
志希「正解。って言うのは流石にキミに言うのは無粋だよね」
志希「アタシと二人三脚で作った訳だし」
P「そうだな」
志希「アタシの匂いは脳下垂体に届きそう?」
P「まだまだだな」
志希「むぅ…中々手厳しいね」
P「そんな簡単に届いても満足しないんじゃないか?」
志希「んー。確かにハードルは高い方が…ってのもあるけどさ、簡単に越えられるならそれでもいいんだけどね」ポリポリ
志希「そう思うわない?晶葉ちゃん」
晶葉「ん?そ、そうだな」
P「そんなものか。てっきりハードルや障害が大きいほど燃える。とかそういう感じかなと思ってた」
晶葉「少なくとも私はそこまで熱血なタイプではないと自覚しているが」
志希「アタシは飽きちゃったら終わりかも~」
P「なるほどな」
P「そういやCDと言えば……」
P「いつか晶葉も出そうな」
晶葉「お、おぉ!任せておけ!」
志希「晶葉ちゃんの歌期待しとくね」
晶葉「あ、あぁ」
志希「どんな歌詞なんだろにゃ……むむむ」
志希「キミの回路にパルスを打ちこんでキミの心も支配しちゃう♪とか?」
晶葉「それはかとなく不穏なセリフが混じっている気がするのだが…」
志希「そうかな?それだったら……いつかロボの力を借りない私を観てくれとか?」
晶葉「ん?」ピク
晶葉「さっきと随分趣が違った歌詞だな」
志希「特に意味はないけどね。ただ思っただけだから~」
P「作詞のセンスもあったりするのかもな」
志希「どうだろうねぇ。キミの方がありそうだけどね」
P「俺か?」
志希「うん。だって色々なアイドルを見てる訳だし、色々策を講じたりしてる訳だしね」
P「策士ってか」
志希「おー。流石だね」
晶葉(ロボの力を借りない私…か)
志希「おっ!アタシの家に先に着いちゃったね」
P「距離的に遠いからな」
志希「このままスルーしてキミの家にご招待でもいいけどね」
P「もう遅いから帰れって」
志希「はーい。いつか期待しておくね」
P「……」
志希「沈黙は雄弁だよ。それにキミの匂いは正直だね。それじゃバイバーイ♪」
P「…ったく」
P「志希の後で悪いな」
晶葉「あぁ、それは別に構わない。こうして送って貰ってる訳だしな」
P「そうかそれならいいが……」
晶葉「うむ」
晶葉「しかし、随分と助手は志希と仲が良いのだな」
P「まぁ、向こうから絡んでくるだけだけどな」
晶葉「しかし満更でもなさそうだ」
P「そうかもな」
晶葉「それが私的には少し面白くない」
P「ん?」
晶葉「あー…今のは失言だ。私らしくないボーンヘッドだ」
P「そうか。それじゃ気にしないでおく」
晶葉「ありがとう」
晶葉「さっきの志希が言っていた歌詞の話になるんだが」
P「あぁ、適当に言ってたアレか」
晶葉「そうだ。そこの一節にもあったと思うが、それを踏まえて聞きたいことがある」
P「あぁ」
晶葉「私からロボを取ったら何が残るのだろうか?」
P「池袋晶葉」
晶葉「んんっ!?」
P「どうした?」
晶葉「いや、それはこっちのセリフだ!いきなりなにを言い出すんだ」
P「そのまま回答しただけだぞ。ロボットが作れなくても晶葉は晶葉だろ?」
P「勿論、アイドルでロボットを作れるってのは売りの一つになるだろうがライブだって結局晶葉自身が踊ったり歌ったりする訳で」
P「そんな風に考えてるよ。勿論、今こうやってロボットを作れる。アイドルも出来るからこそ今の人気なのも事実だ」
晶葉「それはそうだろうな。なんせ私は天才だからな」
P「そうだな」
晶葉「以前、助手が言っていたな。天才の『才』の字には十に斜めの閃きが必要だと」
晶葉「大切なことを失念していたすまない」
翌日
事務所
志希「おっはー」
P「おっはー」
志希「今日もノリいいね~」
P「たまたまだ。ほいコーヒー」
志希「お、気が利くね~」
P「何だか気に入って貰ってるみたいだからな」
志希「うん。キミの淹れた苦いコーヒーは目が醒めるよ」
P「褒めてないなソレ」
志希「目が醒めるって言ってるじゃん」
ガチャ
晶葉「おはよう…くぁ」
P「眠そうだな」
晶葉「あぁ…あれから少し考えことをしていてな」
P「そうか。ほらコーヒーでも飲むか?」
晶葉「あぁ、ありが……苦いなこのコーヒー」
晶葉「淹れた人の技量を疑う」
P「目は覚めるだろ?」
晶葉「否定はしないが…」
志希「あれだね。キミはシキちゃん専用のコーヒーメイカーだね」
P「かもしれないな」
晶葉「なんだ。助手が淹れたのか……今度から少しだけミルクを入れてくれ」
P「あぁ、分かった。そう言えば新しい仕事が来たぞ」
晶葉「お、そうなのかありがとう」
P「まぁ、晶葉の頑張りのおかげだな」
志希「アタシの仕事は?」
P「いや、志希。お前CD出したばっかりで色々引っ張りだこだろうに…」
志希「そうだっけ?」
P「そうだっての」
志希「にゃはは~。そうだったそうだった」ポリポリ
P「…無理するなよ」
志希「おっ、心配してくれてるやさし~」
志希「…ありがとね」
志希「それじゃ!ミニライブに向けてレッスン行ってきま~♪」
晶葉「なんだか嵐のようだったな」
P「まぁ、らしいと言えばらしいよな」
晶葉「らしさか…そう言ってからだと変な話だが、この仕事は私らしくはないな」
P「そうか?」
晶葉「そうだろ?私がピアノを演奏するんだぞ?」
晶葉「私がプログラミングしてロボに演奏させるならともかく」
P「そっちの方が自分らしいか」
晶葉「と、私は思っているがな」
P「何事も経験だ。それに晶葉は天才だから出来るだろ?」
晶葉「れ、練習すればそれなりに…とは思うが」
P「なら、練習しよう。多分ロボにやらせることも出来るし、自分も出来るって所を見せる企画なんだろう」
晶葉「なるほどな…」
P「逆より大分簡単だ」
晶葉「逆?」
P「ピアノ弾ける人がロボ作るよりは簡単だろ?」
晶葉「そりゃ、そうだとは思うが……」
P「だろ?まぁ、晶葉はならきっとやってやれないことはないさ」
晶葉「言ってくれるな」
レッスン室
晶葉「ド、レ、ミ、ファ……」
志希「お、珍しいことしてるね?」
晶葉「ん?あぁ、次の仕事でな」
志希「演奏ロボでも作るの?」
晶葉「あ、いや、私が演奏するのだ」
志希「へー」
晶葉「意外と思うかもしれないな。実際私だって意外だと思ってる訳だし」
晶葉「お!」ピコーン
志希「どしたの?」
晶葉「楽譜をめくる機械。って言うのを閃いたんだが――」
志希「あ、それ見たことあるね」
晶葉「なんだ…もうあるのか」ハァ
志希「うん。この間見ちゃった。残念だね」
晶葉「まぁ、新しいものを発明するのは難しいからな。先人だって色々考えている訳だし」
志希「それはあるね~」
晶葉「敢えて失敗するということも大事だとは思うが、それはあくまで自分の中のノウハウってだけだし」
志希「ふんふん。時には遠回りすることが近道だったりするよね」
晶葉「…って私は何を語っているんだ。すまん。忘れてくれ」
志希「別にいいのに。そう言えば、晶葉ちゃんって天才って言われてるんだってね?」
晶葉「志希に言われると嫌味にしか聞こえんな」
志希「あらら、ひょっとしてシキちゃん嫌われてる?」
晶葉「そういう訳ではないのだが…嫉妬だろうなこの感覚は」
志希「嫉妬?」
晶葉「あぁ、私には志希みたいな才能はないだろう」
晶葉「一を聞いて十を識る。更に飛躍した考えを持っている人が天才のはずだから」
志希「おー、面白いこと言うね。今度使おうっと」
晶葉「志希は斜めの閃きばかりな気もするけどな」
志希「かもね。一も十も識らず。ってなんかオシャレ~」
志希「才能ねぇ……」フーン
志希「アタシってギフテッドって呼ばれてたんだ。知ってる?」
晶葉「あぁ、それはこの間聞いたが……」
志希「実際のところは知らないけどねー。科学者一ノ瀬志希はともかく、アイドル一ノ瀬志希は
神様から与えられたものじゃないのは事実だよ」
晶葉「え……?」
志希「理屈だけで解決出来なくて、感情だけじゃ整理出来ないそんなアイドルの世界じゃん?」
志希「才能だけじゃどうにも出来ないなぁって」アハハ
志希「アタシは別に天才じゃないよきっと。ま、そんなこと言ったら嫌味に聞こえるね」
晶葉「あ、いや、そういう訳じゃないが……」
志希「それに、好きなものにドンドンのめり込んで天才って呼ばれるのは素敵だね」
晶葉「わ、私の場合自分で言ってるだけなのだが……」
志希「いいんじゃないの?自分で思わなきゃそうはならないだろうし」
晶葉「そ、そういうものか」
志希「…それにね。向こうにいて思ったのはアタシ達は他の人に比べて理解が早いけど、飽きも早い」
志希「アタシだって今こっちにいるし、最後まで黙々と研究して成果を出してたのは晶葉ちゃんみたいな人だったよ」
晶葉「…ありがとう」
志希「ん?お礼言われることは言ってないけどね」
晶葉「そっか…まぁ、手に入れたいものがあると自然に努力するものだものな人間は」
志希「そーそー」
志希「キミの努力の原動力が何かはアタシには分からないけどね」ジー
晶葉「な、なんだその眼は……」
志希「別に~……あげないよ?」
晶葉「な、なにをっ!?」
志希「胸に手を当てて考えてみなさい。にゃはは」ケラケラ
レッスン室
志希「ピアノか~」
志希「確かさっきはここをこうやって……こう…」
ちひろ「あら、志希ちゃんいたんですか」
志希「おー、ちひろさん。珍しいね」
ちひろ「そうですね。たまたまですけど。ピアノなんて弾けるんですか?」
志希「ううん。全然」
ちひろ「さっき、綺麗な音が聞こえた気がしましたけど…」
志希「そう?晶葉ちゃんがやってたのを真似してただけだけどね」
ちひろ(それで出来るのは凄いと思いますけど…)
志希「ちひろさんはどうしてここにきたの?」
ちひろ「あ、プロデューサーさんが忘れ物をしたらしくてですね」
志希「取りに来て上げたんだ。やさし~」
ちひろ「茶化さないで下さいよ」
志希「あはは。ごめんごめん。それじゃ行こっか」
ちひろ「いいんですか?」
志希「うん。もう飽きちゃった」
ちひろ「そうですか…ならいいですけど」
志希「そーそー。事務所に帰ろー」
ちひろ「お、おー…?」
撮影当日
車内
P「練習出来たか?」
晶葉「まぁな。この天才に不可能はない」
P「流石だ」
晶葉「なんだか流されている気がする…」
P「注文が多いな」
晶葉「確かにそうかもな」クスクス
P「随分と余裕なことで」
晶葉「そんなことはないさ、助手がいなかったら今頃ここに来ていないくらいは緊張してる」
P「流石に言い過ぎだろ」
晶葉「それはどうかな。それくらい助手の存在は偉大。ということだ」
P「それはありがとう」
晶葉「うむ。本当は後ろで聞いていてくれ。と言いたい所だが生憎そういう訳にもいかないな」
P「そうだな。撮影な訳だし」
晶葉「ロボに頼らない私を見せるのは初めてか?」
P「こういう場は初めてかもしれないな。なんだかんだでロボはいた気がする」
晶葉「そうだな。だから、このピアノは正真正銘私だけの曲だ。聞いて欲しい」
P「あぁ、期待しておく」
晶葉「期待…か。助手からの期待は悪くないな。成果見せてやる」
撮影現場
志希「おー、いたいた」
P「なんだ志希来たのか」
志希「来たってか近くで撮影やっててさ」
P「そう言えばそうだったな」
志希「知ってるから場所教えてくれた癖に~」
P「まぁ、そうだな」
志希「うんうん。それで始まりそ?」
P「もう始まるよ」
晶葉「……」スゥ
晶葉(大丈夫、大丈夫。心を落ち着けて…)
晶葉(冷たく、深く、精密部品を扱うように丁寧に)
晶葉(……うん!)
晶葉「いつか、Pの好きな曲も弾けたらいいな」クス
晶葉「……!」
P「始まったな」
志希「おー上手だね」
P「出だしは好調だ」
志希「頑張れ~」
晶葉(流れるように。楽譜に書いた赤ペンは私の自信に。注意書きは私の表現したいものに音楽を近づける)
晶葉(正直上手く出来てるか分からない)
晶葉(きっとPは見てくれているだろう。生憎私が見れないのが残念だ)
P「頑張ってるな」
志希「うん」
P「志希もやってみるか?」
志希「アタシはいいかな」
P「そうか」
志希「うん。いつか晶葉ちゃんの伴奏で歌ってみたい気はするけど」
P「面白そうだな」
晶葉(次でラスト…結構辛いなコレ…もっと運動しておくべきだった)
晶葉(……ん?)
晶葉(私の書いた字じゃない…?)
『頑張れ。努力の天才』
晶葉(…粋なことをするなぁ、もう!)
P「なんかアイツ笑ってないか?」
志希「そうだねぇ」
P「テンションがおかしくなったか?」
志希「どうだろ?時限爆弾でも作動したんじゃない?」
P「……?」
志希「あはは。なーんてね」
パチパチパチ
P「お、終わったな。問題なくて良かった」
志希「うん。いい演奏だったね~」
P「あ、こっちに向かって手を振ってるぞ」
志希「でも、なんかしかめっ面してない?」
P「どうしたんだ一体……」
志希「さぁ?」
車内
P「お疲れ様」
志希「おつかれ~」
晶葉「楽しかった!なんて言うか…その、心臓がバクバクして自分が自分じゃないって感じで」
P「なんだかいいな」
晶葉「あぁ、なんて言うんだろうか…楽器が応えてくれた感じがする」
P「凄いなソレ」
晶葉「あぁ、きっとそんなことはないんだろうが、そう感じたのは事実だ」
晶葉「それと…志希」
志希「んー?」
晶葉「楽譜の最後のページに…」
志希「あ、バレちゃった?ごめんね~」
晶葉「いや…その…なんて言うか…ありがとう」ペコリ
志希「おー、まさかお礼言われると思ってなかったよ」
P「顔が赤いな志希」
志希「こういう時だけ目敏いねキミは…もう」ヤレヤレ
事務所
晶葉「助手よ」
P「どうかしたか?」
晶葉「いや、ありがとな」
P「どうした急に」
晶葉「ロボの力に頼らないでああいうことが出来たのが嬉しくてな」
晶葉「そういう切っ掛けをくれたのは助手だからな」
P「俺はプロデューサーだからな。アイドルの新たな魅力を発掘するのも仕事の一つさ」
晶葉「助手ならそういうと思ったよ」クスクス
晶葉「しかし、新たな魅力か…悪くないな」
P「だろ?」
晶葉「あぁ。こういうチャレンジは悪くないかもしれないな」
晶葉「助手が出来ると言ったことなら私もチャレンジしてみようと思う。自分の力で」
晶葉「勿論、ロボの力も私の力だとは思う。ただ、私だけの力で何かをすることも存外悪くないなと思ってしまった」
P「なるほどな」
晶葉「それでだな。お願いがあるのだが……」
P「ん?」
晶葉「その…今回のような仕事がいつあるか分からないだろう?」
P「そりゃそうだ」
晶葉「折角少しは弾けるようになったのだ。ここで腐らせるには勿体ないと思うのだ」
P「なるほど」
晶葉「だから…その、好きな歌を教えて欲しい」
晶葉「今度は、撮影でもなんでもないけれど助手の為に演奏とか…してみたいなぁ…と」ボソボソ
P「お、ありがとな。考えておくよ」
晶葉「ほ、ホントか?約束だからな」
晶葉「勿論、助手の為に演奏するのだから一番近い所で聞いてくれなきゃダメだぞ!」ニコ
事務所
P「さて…と」ピリリ
P「ん?志希?」
P「もしもし?」
志希『もしもーし』
P「志希か。どうかしたか?忘れ物か?」
志希『忘れ物はしてないよー。どこにいるの?』
P「今か?事務所出るところだ」
志希『おーグッドタイミングだね。ちょっと付き合って欲しいんだけど』
P「待て。志希。今どこにいるんだ」
志希『ん?すぐそこ』
P「ん?」
志希『屋上にいるんだ。暇なら来てよ』ガチャ
P「どうしたんだ…?」
屋上
P「志希?」
志希「こんな時間まで仕事って真面目だねぇ」
P「仕事が終わらなかっただけで…ってそんなことはどうでもいい」
P「事務所まで送ってから姿が見えなかったから帰ったのかと思っていたけど」
志希「正解は星を見ていたのでした」
P「そうだったのか」
志希「そ。そろそろ飽きたからキミに連絡したって訳」
P「いなかったらどうするつもりだったんだ?」
志希「キミが事務所の電気を消し忘れるとは思わないからね」
志希「次の日ちひろさんに小言を言われちゃうもの」
P「読み通りってか」
志希「ま。そんな感じ」
P「それでどうした?送ればいいのか?」
志希「そっちはどっちでもいいかな」
P「それじゃ――」
志希「―レディースエーンドジェントルメン♪」
志希「今宵は満月。この志希ちゃんのプライベートライブにようこそ」
P「……」
志希「昼間の晶葉ちゃんに当てられたのかな。たまにはアタシも真面目な所を見せないとね」
志希「真面目モードの志希ちゃん。とくとご覧あれ」
志希「―――♪」
志希「……ふぅ」
P「流石だな」パチパチ
志希「アンコールはいかが?」
P「是非とも」
志希「ぷはぁ…!」
P「お疲れ様。何か飲むか?」
志希「んー。今は大丈夫かな」
志希「それより、どう?真面目に歌ったら上手でしょ?」
P「あぁ、凄かった」
志希「キミの為に歌ったんだ。その意味をいつか考えてくれると嬉しいね」
志希「アタシの歌にメロメロになっちゃった?」
P「素晴らしいな」
志希「回答になってなーい」ブーブー
志希「アタシ達以外誰もいないこんな満月の夜。狼男じゃないけれど自分の感情を出しても良い気はするけどね」
志希「少なくともアタシは素のアタシで今ここに立ってるよ」
志希「キミの視覚に、聴覚に、嗅覚に、触覚に訴えてる」
スッ
志希「後少し手を伸ばせば、キミの味覚にも訴えられそう…」
P「かもな」
志希「うーん…この気持ちは嫉妬だね。きっと」
P「ん?」
志希「別になんでも。ただ、アタシは好奇心が人一倍強いんだ」
志希「さながら狂気の沙汰かも」
志希「いつかキミの匂いとアタシの匂い混ざり合って、溶けて一つの匂いになれたらいいのに…ね♪」
終わりです。
読んで下さった方ありがとうございました。
乙乙
タイプは違うけど天才と呼ばれる人の内面が垣間見れて面白かった
おつ
綺麗な話で良かった
あーるーがまーまーのー心でー
凄くきれいな終わりかただな
おつ
モバマスはSSで得た知識しか無いんだけど志希と池袋って同じくらい頭良いと思ってた
志希のが大分上なのな
>>41
個人的にはあきえもんは努力すればするほど結果が着いてくるタイプの天才、志希にゃんはSSで言ってるとおり一を訊いて十を知れるタイプの天才だと思ってる
そもそも年齢差があるんだから経験値にも差があるしな
晶葉の「天才」に対する背景は去年の七夕の短冊なんか見ると少しわかるかな
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません