誓子「何よりも今を見つめて」 (27)
誓子「はぁ……」
誓子(外は快晴。ぽかぽかしてて気持ちいのに、今日も教会の手伝いかー)
誓子(大学は推薦で決まったけど、学部が神学部だからって父さんが厳しいのよね)
誓子(ここ最近ずっと手伝え手伝えって……)
誓子(いくら私が暇だからって、何もこんなに手伝わせなくても)
誓子「はぁっ……」
???「すいませーん」ガチャ
誓子(いけないいけない、こんなんじゃ来る人に失礼だわ!)
誓子「はーい」タッタッタッ
誓子(今日も頑張らないと!)
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穏乃「あのー、懺悔室って今日使えますか?」
誓子「はい! 大丈夫ですよ」
穏乃「では、お願いしていいですか?」
誓子「分かりました」
誓子(あれ? この人どこかで見たような……)
誓子(……思い出した! 確かインハイ決勝に出てた阿知賀の大将!)
誓子(観光旅行にでも来てるのかしら?)
穏乃「あのー、どうかされました?」
誓子「あっ、ごめんなさい。ちょっとボーっとしちゃって」
穏乃「それならいいんですけど……」
誓子「じゃあ気を取り直して……懺悔室へどうぞ」
穏乃「ありがとうございます」
誓子(ほんとに高鴨さん、よね……? それにしてはやけに落ち着いてるような)
誓子(決勝で見たときは、爽みたいに活発そうなイメージだったけど何かあったのかしら?)
誓子(……せっかくだしちゃんと聞いてあげましょうか)
――懺悔室
誓子「では、今から始めますね」
誓子「私に続いてください」
誓子「父と子と聖霊の御名によって。アーメン」
穏乃「父と子と聖霊の御名によって。アーメン」
誓子「神の慈しみを信頼して、あなたの罪を告白して下さい」
穏乃「……はい、分かりました」
穏乃「私はある部活をしているんです」
穏乃「その部活で全国大会に出て」
穏乃「あと一歩で優勝ってところまで来たんです」
穏乃「でも……」グスッ
誓子「大丈夫ですか?」
誓子(大会の決勝、やっぱり高鴨さんだ……)
穏乃「私の力が足りないせいで優勝に届かなかった」
穏乃「……分かってるんです。単なる私の力不足だったってことは」
穏乃「でも、どうしても清算できなくて」
穏乃「チームのみんなにも心配かけて……」
穏乃「だから、今日は気持ちを切り替えるために、ここに来ました」
誓子「……大変だったんですね」
誓子(臨海と清澄、そして白糸台の大将戦は凄かったものね)
誓子(……決勝かぁ)
誓子(私だってあの準決勝の結果は悔いてる)
誓子(あれで私の夏は終わってしまった)
誓子(だからこそ、まだ先がある彼女には頑張ってほしいかな)
誓子(その思いをそのまま伝えましょうか)
誓子「……あなたはこれからどうしたいのですか?」
穏乃「それは……
穏乃「もちろん、みんなと楽しく麻雀をやりたいです!」
穏乃「でも、どうしても……」
誓子「ならば、迷う必要はありません」
誓子「結果というのは、努力が形となって表れたものの一つです」
誓子「それは真摯に受け止めなければいけません」
穏乃「……はい」
誓子「でも、大事なものはそれだけではありません」
誓子「一番大切なのは、その結果を受け止めた後どう行動するか」
誓子「あなたが、何を本当に大切にしたいかを思いだしてみてください」
穏乃「私が本当に大切にしたいもの……」
誓子「そうすれば、自ずと道は開けます」
誓子「過去ではなく、今を見てください」
穏乃「今を見る……」
誓子「それと……」
穏乃「?」
誓子「私個人としても、あなたは元気いっぱいでいる方がいいと思います」
誓子「来年からも、元気に頑張ってくださいね!」
穏乃「……はい!」
穏乃「なんかよく分からないけど分かりました!」
穏乃「ありがとうございます!」
誓子「では」
誓子「それでは、神のゆるしを求め、心から悔い改めの祈りを唱えて下さい」
穏乃「……」
誓子「全能の神、あわれみ深い父は、御子キリストの死と復活によって世をご自分に立ち帰らせ、罪のゆるしの為に聖霊を注がれました」
誓子「神が教会の奉仕の務めを通して、あなたにゆるしと平和を与えて下さいますように」
誓子「私は、父と子と聖霊の御名によって、あなたの罪をゆるします」
穏乃「アーメン」
誓子「はい。以上で懺悔は終わりになります」
――ホール
穏乃「ありがとうございました!」
誓子「どういたしまして。そう言ってもらえるとこっちも嬉しいわ」
誓子「じゃあ、元気出して頑張ってね! 高鴨さん」
穏乃「え? 何で私の名前を……」
穏乃「って、あーー! 有珠山の次鋒の人!」
誓子「あら? 知っててくれたんだ」
穏乃「はい! なんたって準決勝ですからみんな見てますもん!」
誓子「ふふっ、それを言うなら私だってもちろん決勝を見たわ」
誓子「私達ではたどり着かなかった場所で堂々たる麻雀を打って」
誓子「素晴らしかった」
穏乃「いえ、そんな……!」
誓子「ふふっ、元気になったみたいでよかったわ」
誓子「その元気を忘れないで頑張ってね!」
穏乃「はい……! 本当にありがとうございました!」
誓子「じゃあ、またどこかの卓で」
穏乃「はい!」ガチャ
「シズ! どうだった?」
「大丈夫! もう元気百倍!」
「よかった……」
「じゃあみんな! もう一回観光に出発しよっ!」
「あっ、待ちなさいよー!」
誓子「ふぅ。無事に解決できたみたいね」
誓子「元気が戻ったみたいでよかった」
誓子(今を見てください……か)
誓子(我ながらよく言えたものね)
誓子(私さえもっと頑張ってたら決勝行けたのかしら)
誓子「はぁ……」
???「……すいません」ガチャ
誓子(……また? 今日は多いわね)
誓子「はい」
???「懺悔をしたいのですが……」
誓子(フード被ってて顔が見えないわ……見るからに怪しい)
???「よろしいでしょうか?」
誓子「あ、はい」
シズチカか!期待
誓子(まあ、今日は誰もいないし懺悔くらいならいいかしら)
誓子「では部屋の方へどうぞ」
???「ありがとうございます」
???「あ、その前に一ついいですか?」
誓子「何でしょうか?」
???「先程出て行った人、ものすごく幸せそうでした」
???「あれはあなたが?」
誓子「……ええ。私が懺悔を聞きました」
誓子「ただ、解決したのは彼女自身です」
誓子「彼女は、今を見つめて一番大切なものを見つけられました」
???「……それは素晴らしいですね」
???「ぜひ、私もよろしくお願いします」
――懺悔室
誓子「では」
???「はい」
誓子・???「父と子と聖霊の御名によって。アーメン」
誓子(意外。この人、懺悔の仕方知ってるのね)
誓子「神の慈しみを信頼して、あなたの罪を告白して下さい」
???「はい」
???「私は、今迷ってるんです」
???「自分がどの道を行くべきか」
???「もう自分の好き勝手にできる歳は過ぎたと思ってます」
???「……昔っからバカばっかりやってきました」
???「そのせいでいろんな人に迷惑かけて」
???「親よりも一緒にいた友達に一番迷惑かけちゃったかな」
???「それでも、そいつらは笑顔で付いてきてくれた」
???「そいつらがいたから、私はここまで来ることが出来た」
???「だから……」
???「そんな自分を変えてしまうとそいつらとの縁も切れちゃいそうで」
???「でも、未来を見据えるならもう変わらないといけない」
???「……ねぇ、どうしたらいいですかね?」
誓子「……」
誓子「私には分かりません」
誓子「ただ……」
誓子「その友人たちは、あなたの進むべき道はあなたに決めてほしいと思っているんじゃないでしょうか」
誓子「他の誰でもないあなた自身に」
誓子「変わることが怖いなら変わらなくてもいい」
誓子「あなたが見るべきなのは、過去でもなく未来でもなく今です」
誓子「一日一日を、今を見て大切に過ごしてください」
???「……それは客観的な意見ですか?」
???「それとも、あなた個人としての意見?」
誓子「それは……」
???「私はあなた自身の口から聞きたい」
誓子「……」
???「なぁ、教えてくれよ……」
誓子「……!」
誓子「私は……」
誓子「私は、ありのままのあなたでいてほしい」
誓子「周りに流されないで、確固たる自分を持ったまま」
誓子「そのままの大人になってほしい」
誓子「無茶を言ってるのは分かってる」
誓子「……でも、それを実現してこそのあなたじゃないかって」
誓子「心からそう思うの」
誓子「だから、周りに流されて簡単に諦めないでほしい」
誓子「あなた自身を貫いてほしい」
???「……私を貫く」
???「私は……私で……」
???「……ありのままの私は」
???「……」
???「分かりました」
???「……ありがとう」
???「きっともう迷わずに頑張れます」
」
誓子「……こちらこそありがとう」
誓子「それでは、神のゆるしを求め、心から悔い改めの祈りを唱えて下さい」
誓子「全能の神、あわれみ深い父は、御子キリストの死と復活によって世をご自分に立ち帰らせ、罪のゆるしの為に聖霊を注がれました」
誓子「神が教会の奉仕の務めを通して、あなたにゆるしと平和を与えて下さいますように」
誓子「私は、父と子と聖霊の御名によって、あなたの罪をゆるします」
???「アーメン」
誓子「以上で懺悔は終わりになります」
↓
???「あなたのおかげで楽になりました」
???「ありがとうございます」
誓子「いえ……」
???「では、またどこかで」
???「……ありがとな、チカ」ガチャ
――翌日、学校
誓子(昨日の懺悔……あれってやっぱり……)
誓子(いや、考えても仕方ないわよね)
誓子(隠してきたってことはそう言うことだし)
爽「おはよっ!」
誓子「おはよう」
誓子「今日はやけに元気がいいわね」
爽「ふっふっふ、分かるかね桧森くん」
爽「……なんと、昨日神からのお導きをいただいたのだよ!」
爽「これで私は無敵……!」
誓子「はいはい。それは良かったわね」
誓子「で、神様はなんておっしゃったのかしら?」
爽「それはだなー!」
爽「『お前はお前だ! うじうじ悩んでんじゃねえ!』って言われた」
誓子「ぷっ。何それ」
爽「いやー。大会終わって静かにしたのが馬鹿らしく思えてきちゃった」
爽「やっぱりやりたいことやるべきだよなー」ウンウン
誓子「爽……」
誓子「そうね。それが爽らしいわ!」
爽「だからさ、決めたんだ!」
誓子「何を?」
爽「私達、卒業までずっと麻雀部に入りびたろーぜ!」
誓子「ちょっ……! いくらなんでもそれは」
爽「引退とか関係ない。私達は私達のやりたいようにやる」
爽「その方が楽しいと思うんだ!」キラキラ
誓子「……はぁ」
誓子「分かったわよ。卒業までだからね!」
爽「よっしゃー!」
誓子(やっぱり元気な爽が一番ね)
誓子(ふふっ、残りの高校生活が楽しみになってきちゃった)
誓子(……そう言えば)
誓子「あれ? 爽は進路ってもう決まってたっけ? 大学進学希望でしょ?」
爽「ダイガク……」
誓子「うん」
爽「……」
誓子「……」
爽「チカ」
誓子「何」
爽「……きっと神が導いてくれるから大丈夫! 部室いくぞー!」
誓子「あっ! こら待ちなさーい!」
カン!
以上で終わりになります。読んでくださった方々ありがとうございました。
乙カレー
乙
また書いちくり~
チカセン好きだわ~
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