【咲-Saki-】爽「ウスザンクエスト!」揺杏「捕らわれのユキ姫?」 (138)


爽「くっ!このままじゃヤバイか…?」

揺杏「あぁ…私もほぼMP使い切っちまった…」

誓子「でもこのままじゃユキが…」

成香「諦めちゃダメです!私達がやらなきゃユキちゃんは…!!」

爽「……そうだよな」

爽「弱音なんてらしくない事言っちゃったな…」ヘヘッ

揺杏「本当…馬鹿みたいだ」ハハッ

爽「さぁ皆、最後の大仕事だ!!行くぞ!!」カッ!


うおおおおおおおおおおおお!!


爽「って夢を見たんだけどさ?」

揺杏「ヤッベー…」


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注意 この物語は有珠山高校のキャラクターが登場しますが

キャラの崩壊、敵キャラにオリジナルのモンスター等のオリジナル設定が含まれています

そういったものが苦手な方は閲覧をご遠慮下さい。

では少しずつ投下していきます


爽「まぁ流石にそんな漫画みたいなこと無いよなー」ハハハ

揺杏「まぁな?」ハハッ

成香「有り得ないですよー!」アハハハ

誓子「まったく…またバカな事言って…」クスッ

由暉子「私が攫われる状況ってどんな状況なんですか…」

爽「まぁファンタジーお得意の、城下町でたまたまお姫様と間違われるみたいな感じだな」

揺杏「あぁなんか姫っぽいわ」

誓子「そうねぇ…でも」

誓子「私達なんで城下町に居るのかしら…?」

爽「そこだけが思い出せないんだよなぁ…」ウーン


揺杏「皆気付いたらここに居たんだっけ?」

成香「そうなんですよ…確か部室に行こうとしてて…」ウーン

誓子「皆ばったりと部室前で会って…」ウーン

揺杏「部室の扉を開けたら…」ウーン

爽「ファンタジーの世界だったと……じゃあもしかしてこの後って……」

バサッ!

由暉子「キャッ!?」

魔物「グヘヘヘ!この城の姫様は俺達が貰って行くぜ!」バッサバッサ

爽「やっぱりかーーーー!!」

揺杏「ユキーーーーー!!」

成香「本当にユキちゃんが攫われちゃいました!!」

誓子「どうすんのよ!爽のせいよ!?」

爽「私かよ!?」


揺杏「じゃあこの後の展開って…」

爽「私らがユキを助けに行くんだろうなぁ…」

成香「でも私達成り行きでここに居ますけど、本当に魔王なんか倒せるんでしょうか…?」

爽「ここまでテンプレ通りに事が運んだらもう何が起きてもおかしくないだろう…」

揺杏「多分この後の展開としては城に招かれて魔王討伐に『木のぼっこ』持って行かされるんだろ?」

成香「どこかで聞いた展開ですね…」

誓子「でも私達の中に勇者の血筋なんか誰一人…」

兵士「おや?これは伝説の勇者の娘さんの獅子原さま!王様が呼んでおりましたぞ!」

揺杏「ヤッベー…」


~王の間~

王「おぉ!良く来たな勇者爽よ!」

爽「はぁ…それでなんの用で…?」

王「実はワシの娘であるユキ姫とそなたの友人である由暉子さんがあまりにも似た容姿で魔王側の勘違いにより攫われてしまったようなんじゃ…」

揺杏「だろうな…てか目の前で攫われたしな…」

王「今回の件は事故とはいえ迷惑を掛けたのう…そこでわしから一つ頼みがあるんじゃが…」

成香「嫌な予感がします…」

王「今回の事件は今世界を恐怖で包んでる魔王ジャンパイの仕業なんじゃ…どうか勇者の娘であるそなたに魔王を討って欲しいんじゃ!」

誓子「もう驚かないわよ…」

王「そこで…この武器をそなたに授けよう!」

揺杏「はいはい『木のぼっこ』ね…」

王「この武器は我が城に伝わる伝説の武器『聖剣チューレンポウトウ』じゃ。きっと旅の助けになるであろう」スッ

揺杏「え……なにそのやたら光ってる剣……」


爽「おー!かっけー!かなり強そうじゃん!」キラキラ

揺杏「おかしいだろ!そんな武器スタート時に持ってたらゲームバランスおかしくなるだろ!!」

王「しかしその武器も魔王の呪いによって本来の力は出せぬのじゃ…すまない」グヌヌ…

揺杏「あ、そういう事か…」ホッ

王「せいぜい海を割り、空を切り裂き、大地を揺るがすのが関の山じゃろう…」ガックシ

揺杏「十分すぎるだろ!もうクリアまでまっしぐらだなおい!!」

王「お、そうじゃ!そなたらにも何か渡しておかねばな…ではこれを持って行くといい」スッ

王「『魔杖ダイサンゲン』と『聖杖ダイシャリン』それに『天槍リューイーソー』も持って行きなさい」

誓子「なんで魔王は現れてすぐにこの城を落とさなかったのかしら…」

揺杏「落とせなかったんだろうなぁ…」

成香「どの武器も強そうで素敵です!」キラキラ

王「では勇者一行に祝福の有らん事を!」クワッ!


爽「それじゃあ早速ユキを助けに行こう!」

揺杏「魔王の城の位置さえ解れば今すぐ討伐出来そうな武器持ってるけどな…」

誓子「それにしても爽はともかく私達にも職業って有るのかしら?」

揺杏「確かに、なんか魔法使いは適当に構えたら呪文とか出るんじゃね?」

誓子「そうね、じゃあ外に出て魔物相手に試してみましょうか?」

成香「で、でもいくら武器が強くても私達生身ですし…ちょっと怖いです…」

誓子「大丈夫よ、きっと私が僧侶だし成香の事は私が護るわ!」キリッ

成香「ちかちゃん…///」

爽(大魔道士だろうな…)ヒソヒソ

揺杏(もしかして魔王ってチカセン…)ヒソヒソ

誓子「そこの二人、私が魔法使いだった時は覚えてなさいよ…?」

爽・揺杏「ヤッベー…」


爽「外に出てみたけど本当にモンスター出てきそうだなぁ」

揺杏「最初の敵はスライムって相場が決まってるけど…実はこの世界だとこの武器がひのきのぼうクラスなんじゃ…」

成香「じゃ、じゃあすごく怖い敵が…」カタカタ

ガサガサッ

成香「ひっ!」ビクッ


(оωо)<きゅるる~ん!ポヨポヨ!


誓子「か、可愛い~!!///」ハワワー!

成香「こ、これがスライムって言うんでしょうか?///」ハワワー!

揺杏「なぁんだ、これは練習台に持って来いの相手だな」ニヤッ


誓子「何言ってるのよ!こんな可愛い子を痛めつけるって言うの!?」

成香「揺杏ちゃん酷いです!!」

揺杏「い、いやだって魔物だし…」アセアセ

成香「魔物にも心が通ってる筈です!私がお話してきます!」タッタッタッ

爽「あ、いや成香それは流石に…」

(оωо)<きゅるる~ん!

成香「こんにちは、あなた言葉はわかりますか?私達は争いたくなんかありません。あなたの王様の場所を教えて……」

(OωO)<きゅるっ! ドゴッ!

成香「げふぅっ!!」ズザザー

揺杏「成香ーーーー!!」アワワ!


成香「わ、私は大丈夫です……どうやら怖がらせてしまったみたいで……」アハハ…

(OωO)<きゅる!きゅる! ゴス!ゴス!

成香「ぐはっ!ごはっ!」ゲシゲシ!

爽「やばい!なんか成香のHPが黄色になってる気がする!」

揺杏「早く助けに……あれ?私が使おうと思ってた槍が無い……」

誓子「・・・・・」ザッザッ

(OωO)<きゅる?きゅるるる~ん! ポヨーン!

揺杏「あっ!チカセン危なーい!」

誓子「」ブンッ!


---後にこの瞬間を見ていた岩館揺杏氏はこう語る---


揺杏「いやぁ、今思い出すだけでもぞっとしますよ…なんか緑色の光が走ったと思ったら…」


揺杏「もう目の前にあの魔物は居なかったんです…え?いえ山が吹き飛ぶとかじゃなく、その魔物だけが」


揺杏「目を疑ったのはその次の光景ですね。チカセンの背中にね…鬼が見えたんですよ…比喩とかじゃなく本当に!」


揺杏「もうヤッベーって感じで…はい」


誓子「フゥー…」ゴゴゴゴ

揺杏「お、おい今の見たか…?」カタカタ

爽「あ、あぁ…ありゃ鬼だ…」カタカタ

成香「あ、ありがとうございますチカちゃん…」カタカタ

誓子「大丈夫?成香?怪我した所は私で治せるかしら…?」スッ

揺杏「チ、チカセンはちょっと休んでなって!もしかしたらかなり体力消耗してるかもしれないし!!」アセアセ

爽「そ、そうだな!ここは私達でなんとかするから!!」アセアセ

誓子「そう…?じゃあお願いするわね…?」

爽・揺杏(あんた絶対僧侶じゃねーから!!)カタカタ


爽「とにかく成香と揺杏どっちが僧侶かわかんないし…そもそも僧侶とかいるのか?」

揺杏「いやなんか僧侶の使いそうな杖とか貰ったし居るだろ…てか魔法ってどうやって使うんだ?」

爽「なんか治れ~治れ~…って念じてたら大丈夫なんじゃないかな…」

揺杏「そっか…治れ~治れ~…」

爽「治れ~治れ~…」

成香「いたたた…全然治りません…」グスッ…

爽「参ったな…まさか本当にチカが…?」

揺杏「いやそれは無いっしょ、成香もやってみ?」

成香「え…えっと…治れー!治れー!」シュゥゥゥ…

成香「はっ!?治りましたー!もう痛くないですよー!」ワァ!

揺杏「な?」

爽「だな…」


爽「って事は揺杏が魔法使いか?」

揺杏「って事になるかな…?」

誓子「なんで?私もまだなんの職業かわかってないじゃない」

爽「あれで本職じゃないとか有り得ないだろ…ダーマ神殿何週目だよ…」

誓子「そうかしら…?私昔から魔法少女に憧れてたのに…」シュン

成香「でも槍を使ってるチカちゃんもかっこよくて素敵でしたよ?」

誓子「ありがとう成香ー!そう言ってくれるのは成香だけよ!」ダキッ!

揺杏「でも魔法かぁ…あの武器を見た限り相当ヤバイ威力なんだろ…?」

爽「そうだな…念の為城から少し離れておくか…」

~城の外れの森~

爽「ここまで来れば問題無いだろ…じゃあ揺杏、あのモンスターに向かって呪文を一発お見舞いしてやれ!」

揺杏「でも呪文って何すれば良いんだ…?名前とかは?」

爽「まぁ呪文と言えばメラで良いんじゃね?」

揺杏「そっか…よーし!メラ!」ヒュッ

ガオン!

ヒュー…

爽「…えっ?」

揺杏「空間が…消えた…?」

誓子「ちょっと…それ本当にやばいんじゃないの?」

成香「あの…誤射は絶対にやめて下さいね…?」

揺杏「なんだこのクソゲー…」


揺杏「これでメラゾーマなんて打ったら…」ゴクリ

爽「…でもちょっと見てみたい気も」

誓子「ダメよ!見る前に私達が消えちゃうかもしれないんだから!」

揺杏「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!」

成香「ダメですって!なんか怖いですし…」

揺杏「そっかぁ…ダメかぁ…」

揺杏「でも今の内に呪文の幅を見ておかないと色々困るかもしんないよ?」

誓子「それはそうだけど…」

爽「よし!もうあのモンスターにやっちゃえ!揺杏!」

揺杏「いっけー!メラゾーマ!」ヒュン!

誓子「あ、ちょっと!」


モンスター「」シーン…

揺杏「…あれ?」

爽「なんも変化は無いな…」

揺杏「他のモンスターにも試してみるか…」

誓子「もうやめなさいって、そんな呪文は無いのよ」

揺杏「いーや!絶対になんか有る筈だ!行くぞー!」タッタッタ

~20分後~

揺杏「ダメだぁ…ここら一帯のモンスターに掛けたけどなんの効果も無い…」ハァハァ…

誓子「ほら、言ったでしょ?」ハァ…

爽「メラゾーマが不発なのは残念だったけどまぁ、メラでも十分すぎる位だからな」

揺杏「じゃあ次はメラミを…」

誓子「絶対にダメ!」


爽「それじゃあ冒険の続きをしようか、最初は一番近い『ピンフの村』だな」

成香「綺麗な水や豊かな鉱物で栄えてる村らしいです」

誓子「へぇ、よく知ってるわね。どこで聞いたの?」

成香「この勇者支援雑誌『ヒーロー』に書いてました!」

爽「勇者はそんなにイッパイいるのか…?」

揺杏「いよいよこの世界観がわかんねーな…」

爽「まぁ冒険の手引きが有るのは有り難いし活用させて貰うか…」

誓子「最初のボスバトル位は有るかもしれないわね」

爽「ゴーゴー!!」ビシッ!


~ピンフの村~

爽「なんだか話しに聞いてたのと随分様子が違うみたいだな…」

揺杏「なんか村人も薄汚れてて栄えてるとは思えねーな…」

誓子「あそこの人に話を聞いてみましょう」


誓子「すいません、ここってピンフの村で良いんですか?」

村人「あぁ…あんたら余所者か…?だったら早いところ帰った方が良い…」

成香「この村はもっと栄えてると聞いたのですが…何が有ったんでしょうか?」

村人「どうもこうも…最近魔王軍が勢力を増してこの村にもやってきたんだ…」

村人「それからと言うもの…この村の稼ぎはほとんど奴等に持ってかれてしまってな…」

村人「そろそろ奴等が徴収に来る。あんたらも身包み剥がされる前に帰んな…」


爽「よし、じゃあその魔物私達でなんとかしてやろう!」

村人「馬鹿な事を言うな!女子供がどうにか出来る奴等じゃないんだぞ!?」

揺杏「まぁただの女子供じゃあな…」

ゴロゴロゴロ!

成香「雷…でしょうか?」

村人「あぁ…奴等が来たんだ…俺は忠告したからな?変な気を起こすなよ?」


魔物「よぅ人間共!しっかり供物は揃えてあるんだろうな?」

爽「そんなもん用意してねーよ」

魔物「何ぃ!?貴様自分が何を言ってるのかわかってるのかぁ…?」

爽「だからお前ら魔物にやるものなんか…これしかねーって言ってんだよ!」ヒュン…

魔物「貴様、俺に剣を向けるとは良い度胸だなぁ…」ニヤッ

爽「向けたんじゃねぇよ…もう切ったんだ」

魔物「はぁ?何寝ぼけた事…」ズズッ…

魔物「ハ、ハレェ!?」パカッ

爽「勇者なめんな」ニコッ


村人「す、すごい!魔物を一瞬でやっちまった…」

村人「それに今勇者って…」

爽「まぁな、今日から勇者やってるよ?」

村人「今日からってあんた…」

揺杏「おいおい、なんかデカイのが来たぞ?」

ズシン ズシン

???「おいおい、なんだこの有様は…誰がやった?」

爽「私だよ、それにしてもデカイなぁ…姉帯さんとどっちがデカイかな…」

成香「それは姉帯さんに失礼ですよ!!」

???「何をブツブツ言ってやがる?貴様らまさか俺の事を知らないのか?」

トンパイ「この魔王四天王、東のトンパイ様の事を!」


誓子「東牌ねぇ…」

揺杏「なんかわかってきたな…もしかして他のって南、西、北なんじゃねーの?」

成香「三元牌は…三騎将とかですかね?」

誓子「そんな安直な…」

トンパイ「ほぅ…どうやら三騎将の事は知ってるみたいだな…」

誓子「そんな馬鹿な!?」

爽「まぁ大体流れは把握したか、どうする?今ならまだ謝ったら許してやるぞ?」

トンパイ「ガッハッハッハ!面白い事を言う人間だ!貴様らに頭を垂れる位なら死んだほうがマシよ!」

爽「そっか…じゃあ」ヒュッ…

トンパイ「死ねぇぇぇ!…あれ?なんで俺の身体が目の前に…?首が…ねぇぞ?」

爽「悪いけど死んでくれ…」

トンパイ「馬鹿な…俺様が人間如きに…人間如きにぃぃぃぃ!!」ブシャァァ!


村人「す、スゲェや…本当にこの村を魔物から救ってくれた…」

村人「本物の勇者様だ!おい皆!今日はこの村の解放祝いだ!宴の準備だーー!!」


ワッ!!


揺杏「おぉ!何?飯食わせてくれるの!?」

爽「確かにここに来てなんも食って無いから腹ペコだったな…」グゥゥ…

誓子「まぁ私達は何もしてないけど…今日はお言葉に甘えましょうか?」

成香「爽さん素敵です!」ワッ!

爽「うむ、苦しゅうないぞ?」


第一章~モンスターは友達?~  カン

取り敢えずはこんな感じでドンドン進めて行きます。

今後シリアス等も入ってきますのでそういったものが苦手な方も閲覧をご遠慮下さいますようお願いします。

では出来上がり次第また投下していきますので次回の更新でお会いしましょう

見ていただいた方ありがとうございました。では失礼いたします。


爽「ん…朝か…」ムクッ

爽「皆もう居ないな…私が最後かぁ…」フワァ…

ガチャッ

誓子「やっと起きた?もうお昼過ぎてるわよ?」

爽「うーん…寝すぎてだるい…」モゾモゾ

誓子「ほら、早く次の村に行かないといつまで経ってもユキを助けられないわよ?」

爽「そっかぁ…ユキ助けなきゃ…」モゾモゾ

誓子「そうよ、だから早く起きなさい」

爽「うん…起きるから…」モゾモゾ

誓子「……いや起きなさいよ」

爽「うん…」モゾモゾ

誓子「起きなさいって!」バサッ!

爽「わぁ…エッチー…」

揺杏「二人して何やってんの…?」


村人「勇者一行さまには感謝してもしきれません。本当にありがとうございました!」

爽「あぁ、別に気にしなくていいよ。遅かれ早かれこうなってた訳だしね」

揺杏「多分他にも、ここみたいに魔物に支配されてる村も有るだろうし…早いとこ助けてやんねーとな」

誓子「それで、成香のガイドブックには次はどこの村って書いてるの?」

成香「えっと…次はこの村の東に有る『イーペーコーの村』みたいです!」

爽「イーペーコーか、ほんじゃいっちょ救いに行きますか」

誓子「寝坊した癖によく言うわ…」

村人「勇者一行さまに神の祝福が有らんことを!」


~ピンフの村東~

爽「あぁ、本当寝起きの魔物討伐は辛いな…」

揺杏「メラ!」ガオン!

爽「腕も疲れるし、何よりレベルも全然上がらないから楽しみも無い…」

揺杏「メラ!」ガオン!

爽「それに魔物も強くなってる…気がする」

揺杏「メラ!」ガオン!

爽「これが勇者の業か…」

揺杏「メラ!」ガオン!

爽「…勇者がこんなに楽して良いのだろうか?」

誓子「揺杏が強すぎるのよ…」


~イーペーコーの村~

爽「なんの苦戦も無く寄り道もせず着いてしまった…」

揺杏「メラ強ぇ…」

誓子「見たところとても平和そうだけど…」

成香「この村は他の村と違って名産等が無い分、魔物達から狙われてないのかも知れないですね…」

爽「とにかく行ってみようか」


村人「おぉ、これは勇者ご一行様ではありませんか!」

爽「え?いやそうだけど…なんで知ってんの?」


村人「先日ピンフの村を救ったと言う噂を聞きまして、次に訪れるならこの村かと思い…」

村人「早速村一同を上げて宴の準備をさせていただきました!」

誓子「宴って…まだ私達行かなきゃならない所が山ほど有るのに…」

成香「まだお昼過ぎですし、ここで休むほど疲れては無いですしね…」

村人「この先は険しく長い道のりが続いてますので、この村でしっかり休んでから向かったほうがよろしいかと…」

爽「そうかぁ、じゃあお言葉に甘えて少し休ませてもらうか?夜にでもまた進めばいいだろ?」

揺杏「そうそう、別に今の装備なら昼も夜も関係無いって!」

誓子「うーん…まぁそれでも良いけれど…」

成香「・・・・・」


揺杏「うまっ!なにコイ…この肉!」バクバク

爽「美味いなぁ!これはスタミナ付きそうな料理ばっかりだ!」バクバク

誓子「どうしたの?成香は食べないの?」モグモグ

成香「は、はい…実はお腹がイッパイでして…」ハハッ

誓子「食欲無いの?体調が悪かったら言ってね…?」

成香「はい…あのチカちゃん…ちょっと良いですか?」

誓子「え?えぇ…どうしたの?」

成香「ちょっと…こっちの方でお話しましょう…」グイッ

誓子「な、成香?」アセアセ

誓子(これは…間違いないわ…)

誓子(今から私……告白される!!)ピーン!


誓子(食欲が無い、胸がイッパイで食べ物が喉を通らないって事ね…)

誓子(少し不安そうな顔、私に振られたらどうしようかと思ってるのね…問題無いわ、成香の受け入れ態勢は産まれた瞬間整ってるもの!)

誓子(そしてこの人気の無い所で…って事はもうそういう事ね…)

誓子「Q,E.D証明終了…」キリッ

成香「ち、チカちゃん…?」

誓子「あ、ごめんなさい!それでなんの用かしら…?」ソワソワ

成香「実は…とても言いづらいことなんですが…」モジモジ

誓子「いいのよ、成香の思ってる事は私にも良くわかるわ?」

成香「え?本当ですか!?」

誓子「えぇ、だから私の胸に飛び込んで来なさい?」ニコッ

成香「え…?胸に…なんですか?」

誓子「……おや?」


成香「あの、私の言いたかった事は…この村って少しおかしくないかなって事なんですけど…」

誓子「おかしい…?」

成香「はい、ピンフの村から噂を聞いたって言ってましたけど、昨日から私達…村の人達と一緒に居ましたよね?」

誓子「そうだったわね…」

成香「それなら、噂が流れるよりも早く私達がここに来てると思うんですよ…」

誓子「う~ん…確かにピンフの村の人は全員復興で忙しいって言ってたから…村からは出てなさそうよね?」

成香「それに…私達が次に向かう所をガイドブックで調べてみたら…」

成香「長くて険しい道のりなんて無いんですよ、少し行った所にすぐ次の村が有るんです!」

誓子「じゃ、じゃあこの村の人達って…」

成香「信用しちゃいけない人達かも知れません…」

誓子「爽達が危ないわ!早く戻りましょう!」タッ!

成香「は、はい!」


誓子「爽!揺杏!」バッ!

爽「ん?どうしたんだチカ、そんなに慌てて…」バクバク

揺杏「チカセンも早く食わなきゃ無くなっちまうぞー?」バクバク

誓子「あ、あれ…?」

成香「なんとも無いみたいですね…?」

村人「ささっ、勇者様こちらもどうぞ?」

爽「おー!これも美味そう!」バクバク

誓子「痺れ薬とか睡眠薬とか入ってると思ったんだけど…」

成香「私の勘違いだったんでしょうか…?」

誓子「まぁ、もしそんなものが入ってたら私も食べちゃってるから効果が出てるはずよね…」

成香「罪の無い人を疑ってしまうなんて…私は心の汚い人間です…」シクシク…

誓子「いや、それでもまだ信用は出来ないから少し様子を見ましょう?」


村人「ささっ!勇者様!こちらの酒は上等な物ですので是非とも!」

爽「あ、いや私未成年だからお酒は困る」モグモグ

村人「勇者様とも有ろうお方がそんな事お気になさらず!ささっ!」

爽「うるさいなぁ…未成年がお酒を飲んだら警察に捕まっちゃうだろ!」

爽「それに未成年者の飲酒、喫煙は成長の妨げになる恐れがあるから駄目なんだよ!」カッ!

村人「は、はぁ…申し訳ありません…」

村人(お、おかしい…こいつらの料理には象でも眠る睡眠薬が入ってるというのに…何故眠らない!)

村人(ここで勇者達を始末できなければ…魔王軍に始末されてしまう!)

村人(何としてでもこの村で始末せねば!)

村人「そ、それでは勇者様!村の者による踊りでも如何でしょうか!?」

爽「踊り?よさこいでも踊るの?」モグモグ


村人「よ、よさこいとやらはわかりませんがこの村の踊りは多少有名でして…」

爽「そうなんだ、じゃあ見せてもらおうかな」

村人(踊りに夢中になってる所で後ろから仕留めてやる…)ヘッヘッヘ…

~~~♪~~~♪~~~♪

爽「ふーん、ユキのアイドルデビューする時に使えるかもな」モグモグ

村人(さて…今の内にこいつでグサッと…悪く思わないでくれよ?)シュッ

爽「ん?あー!そうだ!」クルッ

村人「えっ!?」ピタッ

爽「悪いけどそろそろ行かなきゃ。後輩が待ってるんだ」

村人「そ、そんな事言わず!まだまだ余興も用意してますし…」

爽「う~ん…でもさぁ…」チラッ

爽「あんたもこんな所で死にたくないだろ?」

村人「!?」


村人「な、なんのことやら…」

爽「気付いてたよ、この料理に睡眠薬が入ってる事。でもなんでか私らには効かないらしい」

爽「どんな理由が有ったか知らないけどさ。私らもやんなきゃいけない事が有るんだわ」

村人「くっ…それでも…この村を守るにはこうするしかないんだ!」

爽「誰かに脅されてるのか…?」

村人「あんた達をここで始末しなきゃこの村は消されちまう!仕方ないじゃないか!」

爽「ハァ…あのなぁ?私達をここで殺してもどうせ魔王に皆殺しにされるんだからさ…」

爽「誰に言われたんだ?私達がなんとかしてやるよ」

村人「ほ…本当か?…俺はあんたの事を殺そうとしたんだぞ?」

爽「まぁ勇者だからな。命狙われるのには馴れてるよ」ニッ


村人「……ここから少し南に行った所に奴等のアジトが有る。そこに居るはずだ」

爽「そっか、それじゃあちょっと行ってくるわ」

村人「この村を…よろしくお願いします…!」

爽「おうよ。おーいお前らー!ちょっと出掛けるぞー!」

揺杏「ん?もう出発か?」

誓子「そうね、そろそろ行きましょうか」

成香「はい!」

爽「あ~…まぁちょっと違うんだけどさ…」


揺杏「何!?私達が殺されそうだったって!?」

誓子「じゃあ成香の言ってた事って…」

成香「そうですね…でも睡眠薬が効かなかったのは何ででしょうか…?」

爽「まぁ細かい事はわかんないけどさ、困ってるんだってよ。助けてやろうぜ」

揺杏「殺されそうになったってのに随分親切だな…」

爽「実際死んでないしな。私にも力が無かったらそうしてると思う」

爽「私達は弱い奴等を守ってやらなきゃな」

誓子「なんだか爽、こっちに来てから随分変わったわね…」

成香「正義の味方、素敵です!」

爽「昔から憧れてたんだ。ヒーローにさ?」ニコッ


~村の南 廃墟~

爽「こりゃ見るからに怪しいな」

揺杏「さっさと片付けちまおうぜ?ユキの事も気になるし」

誓子「そうね、急ぎましょう」

爽「おーい!魔物共ー!勇者様直々に会いに来てやったぞー!」

成香「何もそんな大声を出さなくても…」


魔物「ボス、勇者とか言う奴等が外に来てますけど…」

???「聞こえてるさ、どうやら奴等はしくじったみたいだな…」

???「まぁ良い、どうせその程度でやられる勇者なら我々の手を使わずとも死んでる筈だ」

???「手厚く歓迎してやらねばな…」クックック…


ゴウン…ギギギ

???「ようこそ勇者一行よ、そしてさようならだ」

爽「なんだアイツ、アレがここのボスか?」

ナンパイ「その通り…私の名は『ナンパイ』トンパイをやった位でいい気になるなよ?」

ナンパイ「ヤツは四天王の中でも最弱!四天王の面汚しよ!」ババーン!

揺杏「すっげー!生で聞けた!本当に言うんだ!」キャッキャ!

爽「なぁ!もう一回言って!もう一回!」キャッキャ!

誓子「ちょっ…ちょっと!プスー…失礼プスーでしょ!」プルプル

成香「四天王の中でも最弱…」メモメモ

ナンパイ「……貴様ら」ワナワナ

ナンパイ「絶対に生きて帰さん!!」ゴッ!

爽「それはこっちのセリフ…」スチャッ


ヒュッ! ヒュン!

爽「よっ!ほっ!なんだこいつの剣!くねくねして受け辛い!」カキン!キン!

ナンパイ「私の剣は水の様に捕らえ所の無い剣!この剣がいずれ貴様の喉笛を掻き切るのだ!」ヒュッ!

爽「うわっ!くっ!」キン!キン!

ナンパイ「ふはははは!どうした?これが勇者の実力か!?口ほどにも無い!」ヒュン!

爽「こん…のぉ!」

揺杏「メラ」ガオン

ナンパイ「な!?グァ!!」ドサッ

爽「揺杏!?」

揺杏「誰がタイマンって言ったんだよ…気ぃつけろよ?


ナンパイ「ひ、卑怯だぞ……」

揺杏「人質とって襲わせといて…よく言えたもんだな…」

揺杏「卑怯な手を使う戦いに、ルールなんて物は存在しないんだよ…じゃあな」ヒュッ

ナンパイ「クソォォォォォォォォォ!!」ガオン!

爽「悪い、ちょっと助かった…」

揺杏「あぁ、私昔からゲームやってて気になってたんだよね」

揺杏「なんでこいつ等味方居るのに一騎打ちしてるんだろう…って」

揺杏「結局理由はわかんなかったわ」ハハッ

誓子「でもなんだか少し悪い事をした気が…」

揺杏「世界の危機と騎士道精神じゃあ重さは釣り合わないって」ハハハ

成香「そう…ですね…」


揺杏「んー!疲れた…じゃあちょっと寝てから行こうぜ…」ンショ…

爽「そうだな…なんだか私も急に眠たく…」クラッ

誓子「私も…まさか睡眠薬の効果が…?」

成香「揺杏ちゃん…もしかしてこの事に気付いて…?」

揺杏「さぁね…じゃあお休み~」コテン

爽「zzzz」スピー

誓子「まったく…それならそうと…」カクン…カクン…

成香「チカちゃんも寝てて良いですよ?私が見張っておきますから!」

誓子「そう…?じゃあお願い…するわ…ね?」コテン

成香(揺杏ちゃん…あの時少し悲しそうな顔をしてました…)

成香(揺杏ちゃんも…本当は正々堂々…)

成香(世界を救うって、大変なんですね…)

揺杏「・・・・・」グッ…


~翌朝~

爽「ん~!良く寝た…」

揺杏「また爽が最後か…」

誓子「いつもの事よ、さぁ行きましょう?」

爽「あ、その前に村に寄って行かないとな」

成香「そうですね…」カクン…カクン…

誓子「ごめんね?成香ももう眠たいわよね…?」

成香「あ、大丈夫です!私は戦闘も出来ませんから…少しでもお役に立ちたくて」ハハハ

爽「ふむ…じゃあこうしよう!」


~イーペーコーの村~

村人「ほ、本当に奴等を退治してくれたのか!?」

爽「あぁ、これでもう安心だぞ」

村人「信じられない…ありがとう…本当にありがとう!!」

爽「まぁ、感謝してくれるのも良いけどさ。ちょっとお願いがあるんだけど」

村人「あぁ!俺達に出来る範囲なら力を貸すよ!」

爽「次の村まで馬車を出してくれないか?昨日の戦いでへとへとでさ?」

村人「そんな事ならお安い御用だ!それに食料も一緒に積んでおこう!」

爽「今度は睡眠薬抜きで頼むよ?」

村人「ハハッ、もちろんさ」ニコッ


爽「それで、次の村まで後どれくらいだ?」

村人「次の村までは馬車を使わなくても10分もあれば着くさ。ただあそこに寄る必要は無いだろうな」

誓子「それはどうして?」

村人「あそこの連中はなんでも閉鎖的でな。余所者なんか相手にしてくれないさ」

村人「もう一つ先の村までなら後三時間は掛かるが、身体を休めるには良いだろう」

揺杏「そうだな、成香も気持ちよく寝てるみたいだし」

爽「そうだ、次の村に行かないんだったら成香の持ってるガイドブックで確認しておこう」

誓子「そうね、えっと…」ペラッ

誓子「……なにこれ?」


爽「どうしたんだ?」

誓子「このガイドブック、見た事の無い文字で書かれてるの…」

揺杏「でも成香は普通に読めてたし…」

村人「ん?その本少し貸してくれないか?」スッ

村人「ふむ…これはエルフ文字だな…」ペラッ

誓子「エルフ文字…?」

村人「あぁ、昔からエルフ族が使ってる文字でな。でも今は数が少なくなってしまってね…読める人はそうそう居ないはずだよ」

爽「じゃあ成香は…そのエルフ族って事に?」

村人「いやぁでも頭の良い学者さんなら読める人も居るからそうと決まった訳じゃないけどね」

誓子「そう…そうよね…」

成香「zzzz」クー…

誓子(成香が誰であろうと、私は成香の味方だもんね…)ニコッ


第二章~龍の巫女~ カン

書き溜め分はこれで投下終了です。

更新頻度はマチマチですが、更新する時は上げておきます

では見ていただいた方ありがとうございました。

また次回の更新でお会いしましょう。失礼します。


メラのダメージの数値はどれくらいなんだろう


四天王2番目で早くもちょっとだけ苦戦なら後半大変になりそやね
あとスレタイの意味遵守するなら敵は有珠山てことに…

>>53
えっと…2万位ですかね…?とにかく強いです!

>>55
う、ウスザン(女子の皆が頑張る)クエストって事で…


……るか……おーい……成香!

成香「はいっ!」ビクッ!

爽「着いたぞー」

揺杏「それにしてもよく寝てたな」ケラケラ

誓子「大丈夫?体だるくない?」

成香「あ、はい大丈夫です!」

爽「まぁ色々事情が有って村を一つ飛ばして来ちゃったんだけど、なんて村だったか解るか?」

成香「え、えっと…ここが『チャンタの村』ですから…その一つ前は…」

成香「『ドラロークの村』って書いてますね…」

揺杏「ドラローク?」


爽「今まで役の名前だったのに急にカッコいい名前になったな…」

成香「なんでも古くから龍神信仰をしている村らしく、教徒以外にはとても閉鎖的だと…」

揺杏「なるほどねぇ~でもドラゴンとかこの世界に居るんだ?ワクワクしてきた!」

誓子「ドラローク……ドラロク……ドラ6?って事かしらね?」

爽「うわぁ…チカ急に駄洒落とかどうしたんだ…?」

揺杏「チカセンってそんなキャラだったっけ…?」

誓子「な、なによ!人が折角真剣に考えてるのに///」

成香「で、でもあながち間違いじゃないかもしれないですよ?ほら、ドラの語源はドラゴンだって言いますし…」

誓子「ほ~ら!成香もこう言ってるのよ?」フンッ!

爽「わかったわかった…」


爽「それでこのチャンタの村はどういう村なんだ?」

成香「えっと…なんでも世界中から富豪が集まってファッションショーなんかも開かれてる凄い村らしいです」

揺杏「へぇ、普通はそういうのって大きな街とかでやるのになんでこんな村で…?」

誓子「きっと街がこの世界にはそう多くないのよ。お城位でしか石造りの建物を見ないもの」

成香「なんでも、そのショーで優勝すると特別な衣装をいただけるようですね」

爽「そうか、考えてみれば私達って防具装備してないんだよな…それが強そうだったらショーに出てみるのも良いかもな…」

揺杏「でも肝心のモデルのユキは今居ないし…誰が出るんだよ…」

誓子「え?揺杏じゃないの?」

爽「揺杏だよ?」

成香「頑張って下さい、揺杏ちゃん!」

揺杏「げっろ……」


~チャンタの村~

司会「さぁさぁ皆さんお待ちかね!今日も綺麗所の集まったファッションショーが始まるよ~!」

揺杏「かなり本格的じゃん…やっぱり嫌だよ私…」

爽「仕方ないだろ?ユキが居ないんだったらスタイル的に揺杏しか居ないんだから」

誓子「そうよ、高身長に整った顔立ち。こんな理想の王子様居ないわよ?」

成香「素敵です!」

揺杏「成香はそればっかりだな…」ハハッ

成香「す、すいません…///」テレッ

揺杏「まぁそこまで言われたらしゃーないな…いっちょ優勝してくるか?」

爽「おう!頼んだぞ揺杏!」


~舞台裏~

揺杏「えっと…じゃあこれとこれを…」ポロッ

貴婦人「あら?あなた落としましたわよ?」スッ

揺杏「ん?おー悪いね!サンキュ!」ニカッ

貴婦人「」ズキューン!

揺杏「これで…よしっ!あれ?どうしたんだアンタ?おーい」

貴婦人「あ、あの…お名前を教えていただけませんか……///」ドキドキ

揺杏「私?岩館揺杏だけど」

貴婦人(あぁ…揺杏様…なんて素敵なお方なのかしら…///)ポー

揺杏「大丈夫かアンタ…?」


成香「揺杏ちゃん大丈夫でしょうかね…」ソワソワ

爽「男っぽい服を着てくれればいいんだけど…あいつ結構少女趣味なんだよなぁ…」

誓子「それでも揺杏なら結構良い線行くんじゃないかしら?」

爽「まぁそうだと良いけどな…」

司会「さぁそれではエントリー№15番 岩館揺杏さんの登場です!」

成香「揺杏ちゃんの番です!」ワッ!

キャー! ステキー! キャー! 

揺杏「ご機嫌よう…」ニッ

揺杏装備

頭:シルバーティアラ

体:ピンクのドレス

腕:星のブレスレット

足:薄桃色のハイヒール


爽「プッ!!」

爽「アッハハハハハハ!!何がご機嫌ようだよ!似合わねー!!」ケタケタケタ!

誓子「ちょっと!普通に綺麗じゃない!何笑って……」

爽「ご機嫌よう…」ボソッ

誓子「プフー!!」ブハッ!

成香「ちょっと二人とも!!揺杏ちゃんの顔引きつってますから…」チラッ

揺杏「」プルプル

爽「ご機嫌よう…」ボソッ

成香「くっ…揺杏ちゃんとっても似合ってますよー!」ニコッ

誓子「シルブプレ…?」ボソッ

成香「えひっwいひひひひひwwwww」ケラケラ!

揺杏「お前らなぁーーーー!!」クワッ!


揺杏「誰の為に私がこんな恥ずかしい格好してると思ってるんだよ!」バシバシ

爽「アハハハハ!悪かった!悪かったって!」ケタケタ

誓子「ちょっ!痛いって揺杏!アハハハハ!」プルプル

成香「アハハハハハハwwwヒィーwwwww」バンバン!

司会「あ、あの!岩館さん早くステージの方へ…」

揺杏「もういい!私帰るから!!」プンプン!

司会「え…えっとぉ…」アセアセ

揺杏「まったく…なんで私がこんな…」ブツブツ…

貴婦人(怒った顔も…素敵…///)ポー


揺杏「ったく…あいつら人の気も知らないで…」ブツブツ…

貴婦人「あ、あの…岩館様…少しお時間よろしいでしょうか?」

揺杏「ん?あぁ…あんたか…どうしたの?」

貴婦人「あの…ショーは残念でしたわね…とても良くお似合いでしたのに…」

揺杏「そうだろ!?結構自信有ったんだよ!」ズイッ!

貴婦人「は、はいっ!(顔がこんなにも近くに…///)」

揺杏「それなのにアイツら…人の事バカにしやがって…」プンプン!

貴婦人「あの…先程の方々とはどういったご関係で…?」

揺杏「それがさぁ…私達今魔王を倒そうとして旅してるんだけど、その仲間でさ?」

貴婦人「えっ!?それじゃあ貴女方が最近噂の勇者様ですの!?」

揺杏「まぁそういう事だね…」


貴婦人「感激ですわ!私まさか勇者様に会えるなんて!」キラキラ

揺杏「いや…別に私は勇者じゃ…」

貴婦人「きっと勇者様は素敵な方だと思っていましたわ…そして思ったとおり…」

貴婦人「何か入用でしたら私になんでも言って下さいまし!!」

揺杏「じゃ、じゃあちょっと防具とか貰いたいんだけど…(まぁ勘違いしてくれるならそれでも良いか…)」

貴婦人「かしこまりましたわ!今すぐ家の者に言って最高級の物を取り寄せますわ!」

揺杏「ありがとう、助かるよ」ニコッ

貴婦人「はぅぅぅ///」ボンッ


爽「はぁ…はぁ…お腹痛い…」ピクピク

誓子「もう!爽のせいでショーが台無しじゃない…」ピクピク

成香「くふっ…あははは…」プルプル

爽「成香はどんだけツボだったんだよ…」ハァハァ…

爽「それにしてもこうなると防具も手に入らなくなっちゃったなぁ…」

誓子「こうなったら少しくらいお金は有るし、ここの防具屋で買って行きましょうか?」

揺杏「おい、お前ら」ムスッ

爽「ゆ、揺杏…さっきはすまなかった…なんかおかしくなっちゃって…」ペコリ

誓子「私もごめんなさい…どうかしてたわ…」ペコリ

成香「わた、私…くふふふふ…」プルプル

揺杏「いい話を持ってきてやったけどやっぱりやめた」クルッ

爽「成香ぁ!!」

成香「ご、ごめんなさいー!!」


揺杏「それで、このお嬢さんが私達に出資してくれるそうだ」

爽「な、なんという慈悲深さ…感謝します…」

誓子・成香「感謝します…」

貴婦人「いえ、他でもない勇者様の為ですから…///」ポッ

爽「そうか…ここまでしてくれて本当にありがとう。私頑張るよ!」

貴婦人「まぁせいぜい、勇者様の足手まといにならないようにして下さいませ?」フフン!

爽「ん?」チラッ

揺杏「」フフン!

貴婦人「勇者様…こんなチンチクリンな配下を従えて魔王討伐なんて大変でしょうが、頑張って下さいまし…」

揺杏「ありがとう、このチンチクリンな部下達を従えて頑張ってくるよ…」ニコッ

爽・誓子・成香「」イラッ


爽「おい、これはどういうことだ揺杏」

揺杏「揺杏じゃないだろ?勇者様と呼べ下僕一号」

爽「なんだとー!?」ムキー!

誓子(揺杏、相当怒ってるみたいね…)ヒソヒソ

成香(でも勇者を語って善良な市民を騙すなんて酷すぎます!)ヒソヒソ

誓子(……本人目の前にしてあんなに笑ってた成香も相当酷いと思うけど…)ヒソヒソ

成香(……そうでした)ヒソヒソ

揺杏「とにかくこのお嬢様に防具を発注して貰っていてね、時間まで私はお屋敷で待たせて貰うから。お前らは雑草の本数でも数えてなさい」ハッハッハ!

貴婦人「まぁ、勇者様ったら」オッホッホ

爽「くっそぉ…揺杏のやつめぇ…」グヌヌ…

誓子「でも仕方無いわよ。元はと言えば私達が悪いんだし…」イッポン…ニホン…

成香「そうですね…戻ってきたらしっかり揺杏ちゃんに謝らないとです…」サンボン…ヨンホン…

爽「……わかったよ」ゴホン…ロッポン…


~貴婦人宅~

揺杏「それにしても本当にでっかいなぁ…」ハァー…

貴婦人「そんな事ありませんわ?ここは私の為に用意されたお家ですので、本宅はもっと大きいですわよ?」ウフフ

揺杏「へぇ~…金持ちってすげぇ…」

貴婦人「さ、お掛けになって?お腹も空いているでしょうから家のシェフに料理を持って来させますわ」

揺杏「やったぁ!朝から何も食べて無くて腹ペコだったんだよー!」

貴婦人「まぁ、そうでしたの?勇者様はやっぱり大変ですのね…」

揺杏「まぁね…」ハハッ…

揺杏(そういえばあいつらも何も食ってないんだよな…)

揺杏(いいや!私の事を散々馬鹿にしたんだ!あいつらの事なんか知るか!)フン!


貴婦人「うふふ、そんなに急がなくてもまだ沢山有りますわよ?」クスッ

揺杏「うめぇ!これマジでうめぇ!」バクバク

揺杏「これなら毎日食っても良いくらいだ!」バクバク

貴婦人「で、でしたら…本当に毎日……///」ゴニョゴニョ

揺杏「ん?ごめん聞こえなかった、なんて言ったの?」モグモグ

貴婦人「な、なんでもありませんのよ!さぁ!どんどん持ってきなさい!」アセアセ

揺杏「うっひょー!どれも美味そう!」ニコニコ

貴婦人(ずっとこうして居られたら、なんて幸せでしょう…でもこの人は勇者、世界を救う使命が有りますものね…)

揺杏「うめぇ!うめぇ!」バクバク


爽「なぁチカ……腹減った……」グゥ…

誓子「そうねぇ…朝から何も食べてないもの、仕方ないわ」グゥ…

成香「どこかでご飯を食べましょうか…?」グゥ…

誓子「でもここってお金持ちの人が多いから、私達のお金じゃ食べられない所ばかりで…」

爽「なぁ…雑草って食えるのかな…?」

成香「火を通せばなんでも食べられるんじゃないでしょうか…?」

誓子「それは駄目よ…人間としての尊厳は守らなきゃ…」

爽「腹減ったなぁ…」ハァ…

成香「そうですねぇ…」ハァ…


揺杏「ふぅ…食った食った…」

貴婦人「そろそろ発注した物も届きますわよ?」

揺杏「うん、何から何まで本当にありがとな?」

貴婦人「いえ、勇者様の為ですもの!」

揺杏「勇者…か」

貴婦人「おや?見て下さいまし、あの方達本当に雑草を数えているみたいですわ」クスッ

揺杏「え?」チラッ

貴婦人「見れば見るほど情けないですわね…あんな人達を連れて本当に魔王なんて倒せますの?」

揺杏「・・・・・」


貴婦人「なんなら私の父に言ってもっと腕の立つ兵士を就けさせても良いんですのよ?」

揺杏「いや…いいわ」

貴婦人「でもそれだと勇者様の身に危険が…」

揺杏「ごめん、もう良いわ…」

貴婦人「え…?」

揺杏「騙して悪かったな、私勇者なんかじゃ無いんだ。本物の勇者はあそこのチンチクリン」

貴婦人「ど、どういうことですの!?」

揺杏「バカにされた腹いせなんかに使っちゃって悪かったね…ご飯まで食べさせて貰ってさ」

揺杏「注文して貰って悪いんだけど、防具も受け取れない…ごめん」

揺杏「出来る限りのお返しはさせて貰うから…」

貴婦人「……でしたら」

貴婦人「今すぐ私にキスして下さいまし!!」

揺杏「キ、え!?キスって…えぇ!?」


貴婦人「私は、勇者と言う肩書きに靡いた訳では有りません!あなた自身に想いを寄せているのです…///」

揺杏「い、いやぁでも…そういうのってまだ早いかなぁって…」アセアセ

貴婦人「でしたら今召し上がった料理、発注した防具の代金は全て支払っていただきますわ!」

揺杏「そ、そんなぁ…!」

貴婦人「さぁ!どうしますの!?揺杏さん!!」ズイッ!

揺杏「ぅ…ぁぅぅ…///」

揺杏(ど、どうすれば良いんだー!!)


爽「羊が一匹、羊が二匹…」ポケー

誓子「横からバイソンが襲撃…すぐさま突撃…」ポケー

成香「テリーマンが助けて羊が三匹…」ポケー

爽・成香・誓子「アハハハハハハハハ!!」←空腹のあまり崩壊


揺杏「えっと…キ、キスは出来ない!!」

貴婦人「どうしてですの!?私はそこまで魅力に欠けますの!?」

揺杏「いや、あんたは確かに綺麗で良い人で…非の打ち所も無いんだけど…」

貴婦人「では…!」

揺杏「なんか…こういうのって違うと思うんだ…無理矢理とかそういうのじゃなくて…」

貴婦人「・・・・・」

揺杏「もし世界が平和になって、私も自由になったらまたここに来る」

揺杏「それからお互いの事を知って、他愛の無い話をして…それでもし、お互いの心が通じ合ったら…」

貴婦人「……ずるいですわ」


貴婦人「もしかしたら死んでしまうかもしれないのに…そんな状況であなたの事を待っていろなんて…」

揺杏「絶対に帰って来る」

貴婦人「そんな事…わからないじゃありませんの!」

揺杏「私さ、嘘はつくけど約束は守るから…だから、信じて待ってて欲しい」

貴婦人「わかりました…」

揺杏「それじゃあ…」スッ

貴婦人「お待ち下さい!」

揺杏「え?」クルッ

チュッ

揺杏「ふぇ…?///」

貴婦人「次に会った時は…あなたからして下さいまし…///」ニコッ

揺杏「は、はい…///」カァッ…


~バカ三人組~

爽「はっけよーい…のこった!」

誓子「のこった!のこった!」

成香「のこったのこった!!」

爽「のこった?のこったのか?」

誓子「のこってそう!限りなくのこってそう!」

成香「あと少しでのこりそうですけど…?」

爽・誓子・成香「のこりませんでしたー!」ケラケラ!

爽「いやぁ、やっぱり行司三人の相撲は面白いなぁ」トオイメ

誓子「いつももう少しでのこるんだけどねぇ」トオイメ

成香「のこらざる者のこるべからずですから」トオイメ


揺杏「///」ポー

爽「あれ?どうしたんですか勇者様?」

誓子「随分お早いお帰りですね勇者様?」

成香「下僕はお腹が空いてます勇者様?」

揺杏「あぁ…そう///」ポー

爽「なんか様子がおかしいな…」

誓子「心ここにあらずって感じで…」

成香「さっきまでの私達もそうでしたけど…」

揺杏「キスかぁ…///」ポー

爽・誓子・成香「!?」ビクッ


爽「えっ…?今キスって言った?」

誓子「何言ってんのよ、お魚の方に決まってるじゃない」

成香「でも揺杏ちゃん、ほっぺたに口紅が…」

揺杏「さぁ皆、ユキを救いに行こうぜ?」キリッ!

爽「てんめぇ!自分だけ飯食って女といちゃついて!防具はどうしたんだコラ!?」

揺杏「あのなぁ…勇者に必要なのは身を守る防具なんかじゃない…大切な人を護る」

揺杏「ハートだよ…」トントン

爽「うおぉぉぉぉぉ!離せチカ!私はアイツを殺さなきゃいけないんだ!!」グォー!

誓子「落ち着いて!あれは一過性のウザいやつだから!落ち着いて!」ガシッ!

成香「ハート…っと」メモメモ


貴婦人「勇者様!これもお持ちになって下さいまし!」タッ

揺杏「あれ…なんで…」

貴婦人「先程は失礼致しました。勇者様にはなんとお詫びすれば良いものか…」

爽「おうおう!そうだぞぉ!?どう落とし前つけてくれるんだぁ!?」クイッ

誓子「なんでしゃくれてるのよ…」

貴婦人「お詫びと言ってはなんですが…こちらに皆様用の防具一式に、多少のお金も用意しております」

成香「わぁ…凄いです…」

揺杏「で、でもこれは…」

貴婦人「良いんです、これは先程の私が働いた無礼に対するお詫びですの…それに」チラッ

貴婦人「報酬も少しだけ…先にいただいてしまいましたしね?」ニコッ

揺杏「な…///そうか…///」プシュー…

貴婦人「フフッ…可愛い人♪」クスッ


貴婦人「それでは、約束ですのよ~?」フリフリ

揺杏「あぁ!必ず!!」ブンブン

誓子「なーによデレデレしちゃって」ニヤニヤ

成香「でもあんなにたくさんお金もくれて、良い方でした…」

爽「成香は金さえくれれば誰でも良い人だもんな?」

成香「ち、違いますよ!変な事言わないで下さい!」

揺杏「とりあえず皆腹減ったろ?なんか食べに行くか?」

爽「当然だ!たらふく食ってやるからな!」

誓子「そうよそうよ!どれだけ待ってたと思ってるの?」

成香「私も食べます!」

揺杏「って言っても私はもう食っちゃったしどうしようかな…」

爽「雑草の数でも数えてろ!」ペッ!

誓子「羊でも数えてなさい!」ペッ!

成香「関取の居ない相撲もですよ!」ペッ!

揺杏「なんだよそれ…?」


~食後~

爽「ふぅ~…もう入らん…」ケプ

誓子「高いだけあって美味しかったわぁ…」

成香「幸せですぅ…」ホッ

揺杏「それじゃあ出発するか」

爽「あぁ、まだ先は長いからな。気張って行くぞー!」

誓子・成香・揺杏「おー!!」


揺杏(必ず戻って来るからな…)

揺杏「あっ!!」

誓子「何よ急に大きな声出して…」

揺杏「名前聞いてくるの…忘れてた!」

爽「へっへ~ん!ざまぁみろ~!」


第三章~バグ×ハート~  カン

今日はここまでです。明日には新しい話も投下出来ると思いますので少々お待ち下さい

では見ていただいた方、レスしてくれた方ありがとうございました

次回の更新でお会いしましょう。失礼します。


爽「そんで、この村では特に魔王の支配の影響とかは無さそうだったけど」

誓子「そうねぇ…よくあるイベントステージって言うか、寄り道ステージみたいな事だったのかしら?」

揺杏「いや、ここは寄らなきゃ駄目だろ!世界を救うモチベーションが大分変わる」キリッ

成香「最初から全力で救いましょうよ…」

爽「まぁ良いか、じゃあ成香!次の村までの道案内頼む」

成香「えっと…次は北東に向かって『トイトイの村』ですね。なんでも漁業の盛んな村だとか」

爽「よっし!腹ごなしにちょっくら魔物でも狩りながら進みますか!」

誓子「その事なんだけど…」

爽「ん?」


誓子「私達ってここまで冒険してきてレベルが上がってる気配、全く無いわよね…?」

爽「そうだな、あのファンファーレも聞こえてこないし…」

成香「あれは本人達には聞こえないのでは…」

揺杏「でもレベルの概念が無いRPGも有るからなぁ…主に最近のファイナルなんちゃらみたいな」

誓子「それならそれで私達を強化する何かしらのトリガーが有る筈なのよね…」

爽「確かにそうだな…でも桧森女史よ…」

爽「これ以上強くなる必要あるかな…?」

誓子「……そうよね、ごめんなさい」

揺杏「もう既に何週もしてる強さだもんな…」


爽「まぁ大抵は物語の中盤とかに露骨な強化イベントとか用意されてるだろうし、その時になったら詳しい話が聞けるんじゃないか?」

誓子「これはあくまでも仮説なんだけどね?この世界はゲームの世界なんじゃないかと思って…」

揺杏「そう考えるしかないもんな…この状況」

誓子「そこで私達は何回も繰り返しこの世界を冒険しているんじゃないかと思うのよ…」

爽「う~ん…でもそうなると私達がこの世界から抜け出す方法がわからん」

誓子「だからあくまで仮説なのよ。部室の扉を開けるところまでは覚えてるんだから、必ず抜け出す方法が有る筈なんだけど…」

成香「なんだか難しい話ですね…」

爽「目下の目標は魔王を倒すってことで良いんだろうけど…これからそういう所も考えて行かなきゃな」

揺杏「実は私達は元々ゲームの世界の人間でしたってオチも見た事有るしな…」

誓子「やめてよ怖い…」


爽「そんな事を話していると着いてしまったな」

誓子「トイトイの村ね」

揺杏「これはなんていうか…」

成香「完璧に支配されちゃってますね…」

爽「村の上にめっちゃ魔物飛んでるもんな…」

誓子「久しぶりの戦闘ね、順番的には私か成香が闘うのかしら…?」

成香「え!?私攻撃的な呪文なんて出来ないです!」

揺杏「大丈夫だって、なんか適当に言ったら出るから。ホーリーとか?」

爽「星を使うレベルの呪文はNGな…」


~トイトイの村~

爽「おうおう!勇者様のお通りだー!」

揺杏「出て来い四天王!」

誓子「ヤクザのカチコミじゃないんだから…」

???「お~う、いらっしゃい。待ってたよー」

成香「あれ?あの人でしょうか…?」

シャーパイ「俺は『シャーパイ』ってんだけどさ、率直に言うよ勇者一行」

シャーパイ「闘うのとか無しにしねーか?」

爽「は?」

揺杏「どういうことだよ…」


シャーパイ「俺はこの村を統治してるんだけどさ、他の奴等みたいな力に物を言わせてってのが好きじゃないんだ」

シャーパイ「だから働くのは個人の自由、それに給料だってしっかり支払ってるんだ。不満は無い筈だぜ?」

爽「そんなの誰が信じるっていうんだよ…」

シャーパイ「まぁそうだわな。じゃあ村の人間集めてくるからよ、ちょっと待ってな?」

揺杏「マジかよ…」

シャーパイ「はーい、皆一回集合~勇者様一行のおな~り~」パンパン

村人A「勇者様…?」

村人B「勇者様って事は…」

村長「・・・・・」


シャーパイ「はい、これで全員かな。じゃあ後は皆で勇者様を歓迎してやってくれ」

爽「…どういうことだよ」

村長「勇者様、遠路はるばるお越しいただきましてありがとうございます…この村の長ですじゃ…」

揺杏「なぁあんた、本当はアイツに弱みを握られてるんだろ…?それなら私達がなんとかしてやるからよ!」

村長「勇者様…お願いです」

村長「シャーパイ殿とは争わないでいただけませんか…?」

誓子「な、なんで…?」

村長「あの方は本当にこの村の者に良くしてくれるのです…村人達も今は皆あの方を慕っているのです…」

成香「そんな…魔物と共存なんて…」

シャーパイ「だから言ったろ~?俺なんもしてないってさぁ」


爽「まだ信用をしてる訳じゃないからな…」

村長「シャーパイ殿は魔王の目を誤魔化すために今も村の上に魔物を飛ばせているんです」

村長「そして今では魔物で溢れている海での漁も魔物を使い手助けしてくれております…」

揺杏「引っ掛かるなぁ…なんでそんな事をする必要が有る…?」

シャーパイ「俺はなぁ、風が好きなんだ…他の奴等じゃ出来ない事も風なら出来る」

シャーパイ「この星を一周する事も、邪魔な物を吹き飛ばす事だって。風は強ぇんだ、そして偉ぇんだ」

シャーパイ「他の奴等は力で組み伏すしかない事も、俺なら共存の道を取る事だって出来る。風はスゲェんだ」ニッ

爽「言ってることがよくわかんねぇな…」

誓子「とにかく他の人と同じ事をするのが嫌いって事…?」

シャーパイ「そういう事~」ケラケラ


成香「でも、なんだか村の人全員に睨まれてる気がします…」

爽「私達勇者なのにな…」

子供「この村から出て行けー!」ヒュッ!

揺杏「うわっ!石なんか投げるなよ、危ねーな!」

村人A「出て行けー!」

村人B「出て行けー!!」

村長「こ、これお前達!止めぬか!」

爽「なんだって言うんだよ…くそっ…!」

シャーパイ「静まれぃ!!」カッ!

村人「」ピタッ

シャーパイ「はい、そこまでね。そんなに信用無いならあんた等この村で泊まってったら?」

爽「はぁ?」


シャーパイ「信用してくれるまでどれだけでも良いさ、ここで暮らせば良い」

爽「…敵の根城で生活なんか出来るか」

シャーパイ「ごもっとも。でも一番手っ取り早いと思うけどな。おかしな動きが有ればいつでも俺を切り捨てれば良い」

揺杏「お、おい…あいつ正気かよ…」

爽「…それでいいんだな?」

誓子「爽!!」

シャーパイ「よし、じゃあまずはこの村に入村する新人勇者達をもてなしてやろう。皆、準備始めるぞ~」

村人「・・・・・」

シャーパイ「……まぁ不満なのはわかるけどよ。きっとあいつ等もこの村の事わかってくれるだろ?だからもてなしてやってくれや。な?」

村人「わかりました…」

爽「・・・・・」


シャーパイ「オーイ、そこ机曲がってるぞ~?爺さんの股が曲がってるからじゃねーのかー?」ケラケラ

村人「何をおっしゃる!ワシは左曲がりですじゃ!」ワッハッハ!

シャーパイ「そいつぁ悪かったな!」ハッハッハ!

シャーパイ「あれ?お前の所の子供まだ帰ってないのか?」

村人「えぇ…あまり遠くに行かないようにと言ったんですが…」オロオロ…

シャーパイ「仕方ねぇな…おい!お前らこの辺りの様子を見て来い。花畑の方が怪しい」

魔物「はい!」バッサバッサ

村人「ありがとうございます!ありがとうございます!」ペコリ!ペコリ!

シャーパイ「なぁに、アイツ今度誕生日だろ?少し位多目に見てやるさ」ニコッ

成香「本当に…村の人達と仲良くしていますね…」

誓子「えぇ…皆も楽しそう…」

爽「・・・・・」


シャーパイ「さぁ準備も整ったな、座ってくれ」

成香「こんなにいっぱいお料理も!」

爽「手をつけるなよ?成香…」

村人「コイツ!まだそんな事を!!」

シャーパイ「落ち着けっての、お前らはすぐに頭に血が上る。良く無い所だな」ハァ…

シャーパイ「考えても見ろ、俺以外の魔物から料理を出されてお前らは食えるか?」

村人「そ、それは……」

シャーパイ「それと一緒だ、こいつらが食えないのも仕方ない。そんでだ、誰か毒見してくれる奴は居るか?」

スッ

揺杏「なっ……」

シャーパイ「あのなぁ…全員で食ったら無くなっちまうだろうが!」ハッハッハ!

誓子「なんの躊躇も無く全員が手を上げるなんて…」


爽「いや、わかった。毒見はしなくていい、お前達を信用しよう」スッ

シャーパイ「そうかい?だったら熱いうちに食ってくれや。この村の魚はうめぇんだ」ニッ

揺杏「本当に良いのかよ…」

爽「あぁ、アイツは嘘なんかついてない。この村はアイツに守られてるんだ…」グッ…

成香「だったらこの村は安泰みたいですね!」

爽「あぁ、悔しいが私達なんかよりずっと安心だな…」

シャーパイ「ほぅら!お前達もたらふく食えよ?強くなんなきゃ俺からこの村は守れねぇぞー?」ハッハッハ!

子供「別に良いもん!」

子供「じゃあ僕大きくならない!」

子供「私大きくなったらシャーパイ兄ちゃんのお嫁さんになるー!」

シャーパイ「お嫁さんかぁ、そいつはいいや!」ハッハッハ!

誓子「フフッ…なんだかお兄さんみたいね…」ニコッ


爽「うん!美味い!これも美味いしあれも美味い!」バクバク

揺杏「おい!それ私のだろ!!返せよ!」

爽「早いもの勝ちだ!よこせ!」

揺杏「ふざけんなよ…!」

ギャーギャー!

誓子「まったく…なにやってんだか…」ハァ…

子供「お姉ちゃん、これも食べてー」スッ

誓子「ふふっ、ありがとう…あら?服に穴が空いてる。ちょっと待ってね…?」ゴソゴソ

シャーパイ「ん?」チラッ


誓子「はい、おしまい!もういいわよ?」ニコッ

子供「わー!ありがとうお姉ちゃん!ママー!」タッタッタ

母親「あら、どうしたの?」

子供「あのお姉ちゃんに服治して貰ったー!」ニコニコ

母親「あらまぁ、ありがとうございます…」

誓子「いえいえ、不恰好ですけど…」ハハッ

シャーパイ「おい、お前今のはなんだ?」

誓子「えっ…?裁縫の事?」

シャーパイ「サイホウ……それ、俺にも教えてくれ」

誓子「え!?お裁縫を?」

シャーパイ「そうだ。変か?」

誓子「まぁ…変では無いけど…」


シャーパイ「俺はまだまだ人間のする事をマスターした訳ではない。指導者はなんでも出来なくてはならんのだ」

誓子「…なんでそんなにこの村に固執するの?」

シャーパイ「俺は人間が好きだ。他の種と違って人間は一つで有ろうとするくせに一人にはなれない。」

シャーパイ「そんな弱さでこれまで種を繁栄させた事を俺は興味深く思っていたんだ。」

シャーパイ「そして試しにこの村を支配する前に、この村の者達に普段の生活をさせてみた。」

シャーパイ「すると驚く事に、なんとも気の抜けた…生存競争とはとても呼べない暮らしをしているではないか…」

シャーパイ「誰も奪う事無く、分け合い共に生活をする。俺は人間にこそ進化の手掛かりが有ると思っている。」

誓子「進化…?」

シャーパイ「俺は魔物が嫌いだ。他の種より強く生まれてしまったばかりに今の自分達の位置に胡座をかいている」

シャーパイ「俺は他の奴等とは違う。今の自分に満足などしていない」

誓子「意外と勤勉なのね…」

シャーパイ「よく言われる」ハハッ


誓子「でも村の人達と話してる時はそんな素振り見せなかったけど…」

シャーパイ「まぁな…なんていうか、あいつらにそういう所見せるのが嫌なんだ…」

シャーパイ「それに、砕けた話し方をすると相手も緊張しないようだ。それも学んだ」

誓子「そういうもの…?」

シャーパイ「そういうもんだ…いいから早く教えろ」

誓子「はいはい…」

誓子(なんだか思ってたよりも人間らしいのね…不思議な感じ…)

シャーパイ「こんなものに糸を通せるわけ無いだろ…」グニグニ…

誓子「ふふふ…馴れるまで我慢よ?」ニコッ


シャーパイ「ここで折り返す…?なんの意味が有るんだ?」

誓子「出来上がったらわかるわよ」

シャーパイ「球結び…?これじゃ糸が抜けてしまうだろ…?」

誓子「抜けないからやってみなさいって…」

シャーパイ「切るぞ?良いんだな?切ってもいいんだな?」

誓子「良いから切りなさいって…」

パチン!

シャーパイ「おぉ…出来ている…」

誓子「不恰好だけどなんとか様にはなってるわね」フムフム

シャーパイ「お前はなんだか母親の様だな」

誓子「え?あなたの!?」

シャーパイ「なんというか俺だけじゃなく人間のって感じだ」


誓子「まぁ確かにそういう道には片足突っ込んでるけど…」

シャーパイ「なんだ?チカコは聖母なのか?」

誓子「聖母って程じゃないけど…神様を信仰してるのよ。一応ね?」

シャーパイ「神は嫌いだ、アイツは平等じゃない」

誓子「まぁ、神様って言うよりその教えを尊重してるのよ?」

誓子「無償の愛を注ぐとか、右の頬を打たれたら左の頬を差し出すとか」

シャーパイ「無償の愛か…それは良いな」

誓子「あんた本当に魔王の手下なの…?」

シャーパイ「一応な、職業とするならそれは合ってる」

誓子「なんか変な話ね…」

シャーパイ「俺もそう思う」ハハッ


シャーパイ「よし、じゃあそろそろ戻るとしよう。時間を取らせて悪かった」

誓子「ううん、良いのよ別に…」

シャーパイ「チカコは優しいな。ここの皆にもそうしてやってくれ」

誓子「えぇ、もちろんそのつもりだけど…」

シャーパイ「そうか…」

誓子「…どうしたの?」

シャーパイ「チカコは世界を救う為に旅をしているのだろう?」

誓子「まぁそうね…」

シャーパイ「そうか…では一つ頼みを聞いてくれないか?」

誓子「何?」

シャーパイ「お前が俺を殺してくれ」

誓子「…え?」


誓子「何言ってるのよ…」

シャーパイ「魔王の城に行くには四つの結界が張ってある。それは俺達四天王の命でしか解けないのだ」

誓子「……嘘」

シャーパイ「本当だ。だからチカコ、お前の手で私を殺してくれないか?」

誓子「…嫌」

シャーパイ「この世界が滅んでしまってもか?」

誓子「そんなの…私に決められない…」

シャーパイ「やはりお前は優しいな」

シャーパイ「明日の朝だ…頼んだぞ」

誓子「・・・・・」


シャーパイ「さぁお前ら!子供はもう寝る時間だ!早く家に帰った帰ったー!!」

子供「えぇ~!まだ兄ちゃんと遊ぶー!」

シャーパイ「駄目だ!お前らはこの村を守るために強くならないといけないんだぞ?」

子供「ずっと兄ちゃんが居てくれれば安心だもん!」

シャーパイ「そう言うな、いつかはお前らも俺より強くなれるんだぞ?」

子供「嘘だー!」

シャーパイ「人間ってのはそういうモノだ!」ハッハッハ!

誓子「何よ……」

誓子(こんなの無理に決まってるじゃない…)グッ


爽「おぅチカ、どこ行ってたんだ?」

誓子「なんでもない…」

揺杏「なんでもないって…」

誓子「なんでもないってば!」バンッ!

成香「ち、チカちゃん…?」

誓子「あ…ごめんなさい……私もう寝るわね…」タッ

爽「どうしたんだ…?チカのやつ…?」

揺杏「さぁ…?」

成香「チカちゃん…」

誓子(もう…わけわかんない…)グスッ…


誓子(そりゃ私だって世界は救いたいけど…その為に犠牲を…ってなんか違う気がする…)

誓子(確かにあいつも悪いやつなんだけど…悪いやつじゃなくて…)

誓子「もおー!!どうすればいいのよ!」ボフッ…

成香「チカちゃん…起きてますか?」

誓子「成香…?」グシグシ

誓子「どうしたの…?」

成香「なんだか様子が変だったので心配になって…迷惑でしたか?」

誓子「うぅん…そんな事無い…」

成香「何が有ったか…聞いてもいいですか?」

誓子「……うん」


誓子「それで、私に殺してくれって言ってるの…」ハハッ…

成香「そんな…そんなのって…」

誓子「おかしな話だよね、敵を倒すのに戸惑って…悩んで…」

成香「そんな事無いです!」

誓子「成香…」

成香「チカちゃんは優しくて、かっこよくて、強くて、綺麗で……」グスッ…

成香「だから駄目なんですよぉ……」グスッ…

誓子「ふふっ…何それ?」クスッ

成香「なんで皆に言わないんですか…なんで皆を頼らないんですか…」グスッ

成香「一人で何でもしようとしてたら…いつかチカちゃんが壊れちゃいますよ…」

誓子「ありがとう、成香…でもね?」

誓子「これは私じゃなきゃ駄目なの…」グッ


~翌朝~

誓子「おはよう、いい朝ね?」

シャーパイ「おぉ、誓子か。来てくれてありがとう」

誓子「落ち着いてるのね、今からあなた死んじゃうのよ…?」

シャーパイ「あぁ、だが不思議と心が落ち着いてる。チカコは凄いな」

誓子「私は凄くなんか無いわ。この村の為にそこまで出来るあなたの方がよっぽど凄いわよ…」

シャーパイ「ハハッ、そうか…ありがとう」

誓子「ねぇ…提案なんだけど…」

誓子「あなた、私達と一緒に来ない?」

シャーパイ「…なんだと?」


誓子「もしこの村であなたを殺したりしたら、間違いなく私達がやったってばれる」

誓子「そうなると、もし世界に平和が戻ったとしても…いずれこの村の誰かが私達を狙って来る…」

シャーパイ「そう…なのか?」

誓子「この村の人達は優しいわ…あなたの為ならなんでもするでしょうね…」

シャーパイ「だが、もしそんな事をすればこの村は…」

誓子「えぇ…逆賊の村として全員殺されるでしょうね…」

シャーパイ「そうか…それは困った…」

誓子「だから今日からあなたは私達と旅に出るのよ!旅の最中で死んでしまったって事にすれば…」

シャーパイ「ふむ…英雄として名が残るか…」

誓子「それはわからないけど…でも皆の納得する死に方よ!」

シャーパイ「ふむ……」

誓子「」ドキドキ…


シャーパイ「そうだな、それで良いだろう。お前ら勇者の事まで考えていなかった。まだまだ思慮が浅いな…」

誓子「そ、そう…よかった…」ホッ

シャーパイ「何が良かったのだ?」

誓子「もう、こっちは断られたらあなたの事殺さなきゃいけなかったんだから!そんなの嫌よ!」

シャーパイ「そうか…すまなかったな。だがもし魔王の城まで私の命が有ったなら。その時は覚悟してくれ」

誓子「……えぇ」コクリ

シャーパイ「では改めてよろしく頼むぞ勇者達よ」

誓子「えっ?」

ゴソゴソ

爽「お、おぅ…」

揺杏「バレてたのかよ…」

成香「ち、チカちゃん…ごめんなさい…」


シャーパイ「それにしても私が村を空けている間、誰がこの村を守るのだろうか…」

村人「心配要らないよ、旦那…」

シャーパイ「お、お前達…」

村長「もうあなたの力無しでも私達は立派にやって行けます…どうかお気になさらず」

シャーパイ「そんな訳無いだろう…私無しで魔物と闘えるものか…」

村人「何言ってんでぇ!人間様がそう簡単にやられるかってんだ!」

子供「僕、兄ちゃんよりずっと強くなってやらぁ!」ヘヘッ!

シャーパイ「お、お前達……」ツー…

シャーパイ「な、なんだ?何故私の目から液体が…眼球に損傷は……無いようだ……」グイッ


子供「あー!兄ちゃん泣いてらぁ!」

シャーパイ「泣く……そうか…これは涙か…魔物が涙を流すなんておかしいな…」ハハハッ

誓子「おかしくなんか無いわ…あなたは人間に多く触れ合うことで人に近い心を持てたのよ…これも進化ってヤツかしら?」クスッ

シャーパイ「チカコ……」ドスッ

シャーパイ「……あぁ…そうか…」ゴプッ

誓子「……え?」

北「裏切り者のシャーパイ!殺した!殺した!キヒヒヒ!」ズルッ

爽「おい……なにやってんだテメェ!!」ブワッ!


シャーパイ「北か……もう私の裏切りは……既に知られていたという事か……」

北「人間なんかに味方したばっかりに!愚かなシャーペイ!キヒヒヒ!」ケラケラ!

シャーパイ「あぁ…そうかもしれんなぁ……ただ…お前らと居るよりよっぽど……有意義な時間だったよ……」ニヤッ

北「死に損ないが!みっともない!みっともないよ!」ケラケラ!

誓子「・・・・・」ヒュッ…ドスッ

北「けはっ……は……?何これ……?何これ……?痛いよ……?お前……」ガフッ

誓子「こいつ…こいつが……」ドスッ ドスッ

北「ぐひっ!?げひぁ!?」ビクッ! ビクッ!

誓子「くそっ…くそっ…」ザクッ ザクッ

村人「うっ……オェ…」ウプッ…

爽「もう良いチカ…死んでる…」

誓子「このっ……このっ……このぉ…!!」グサッ ブシュッ

北「」ビクッ! ビクッ!

爽「チカ……誓子!」ガッ!

誓子「」ピタッ


シャーパイ「チカコ……どこだ……?居るのか……?」

誓子「……えぇ」スッ…

シャーパイ「すまないな……私はもうお前達と行けそうに無い……」ハハッ…

誓子「喋らないで…成香、まだ治せるでしょ?お願い……」

成香「チカちゃん……駄目です…傷が塞がりません!」グスッ

シャーペイ「私はお前達と体の造りが違うんだ……魔物とは難儀なものだな……」ハハッ…

誓子「何言ってるのよ…じゃあ自分で治しなさいよ…それくらい出来るでしょ…?」

シャーペイ「無茶を言うな……出来たらやってるさ……」ゴフッ…

誓子「お願い…死なないで…」

シャーペイ「チカコ……私のやってきたことは間違っていたか……?」

誓子「…いいえ」

シャーペイ「チカコは…私の為に泣いてくれてるのか……?」

誓子「…違うわよ…泣いてなんか…無いわよぉ……」

シャーペイ「ハハッ…チカコは……優しいなぁ……」スゥ

誓子「起きて…目を開けて…?お願い…」

シャーパイ「」

誓子「いやあああああああああああ!!」


村人「シャーパイ様ぁ……あぁ…」グスッ…

子供「兄ちゃん!起きてよ兄ちゃん!うわあああああん!!」ヒック…

爽「誓子…」

誓子「私にね…言ってたの…人間が好きだって…」

誓子「自分にまだ満足してないって……じゃあなんで…なんで死んじゃったのよぉ!!」

成香「チカちゃん…」グスッ…

誓子「なんで…なんでぇ…うっ…うぅ…」ヒック…

爽「皆で…弔ってやろう…」

揺杏「……あぁ」


爽「本当に……良いのか?」

村長「はい、この村はシャーパイ様が守ってくれていた大事な村です…後は私達に任せて行って下さい」

誓子「……ごめんなさい」

村長「あなたが謝る事はありません。あなたもシャーパイ様の為に…泣いて下さいました…」

村長「どうか…我々の村を…シャーパイ様の無念を…!」

爽「あぁ…任せろ…」

誓子「さ、行きましょうか…?」

揺杏「チカセン…もう、いいのか?」

誓子「えぇ…立ち止まっていても仕方が無いわ…それに、ユキが待ってるもの」

成香「…そうですね」

爽「よし、じゃあ魔王のヤツをぶっ飛ばしに行くとするか…!」ゴッ!

誓子(シャーパイ…あなたが守った村は…あなたが守りたかった人達は…私達が必ず守ってみせるから…)グッ…


第四章~心清らかな者への葬送~  カン


~由暉子が攫われてすぐ~

ジャンパイ「なぁ…いい加減なんか話してくれよぉ…余は退屈なんだよ…余だけに☆」テヘッ?

由暉子「・・・・・」

ジャンパイ「なぁ…なんで姫様喋ってくれないんだと思う?」チラッ

中「強引に連れ去ったからかと」

發「魔王様のお言葉を無視とは中々太ぇやろうだ!」ガッハッハ!

白「そんな怖い顔ばかりしてると可愛い顔が台無しだよ~ん?」ケラケラ!

由暉子(一体なんなんですかこの人達……)

ジャンパイ「じゃあ姫様には特別に王様の特技見せちゃうもんねぇ…」イソイソ

ジャンパイ「はい!これなーんだ?」チャリン

由暉子「……知恵の輪?」

ジャンパイ「せいか~い!ようやく喋ってくれたね!」ニコニコ


ジャンパイ「魔王様は頭も魔界一と言われた天才なので…こんなものちょちょいのちょいっと……」

中「おい、そろそろだぞ…」スッ…

發「お姫さんは俺に任せな…」ササッ…

白「僕チン逃げちゃうもんね~!」アハハハ!

ジャンパイ「あれぇ?おかしいなぁ…いつもなら簡単に…」カチャカチャ

ジャンパイ「こうして…こうして…」カチャカチャ

ジャンパイ「」ブチッ

ボンッ!!

發「ぐうううううううう!!」ビキビキ…

由暉子「きゃ、キャアアアアア!!」ブワッ!

中「大丈夫か姫君…」ガシッ

白「アハハハハハ!大爆発~!」ケラケラ!

ジャンパイ「……ありゃ?知恵の輪は?」キョトン

由暉子(本当に……なんなんですか一体!!)


ジャンパイ「ハァ…まぁ姫様が話してくれたから早速本題に入ろうか?」

由暉子「本題…?」

ジャンパイ「俺の子を産んでくれ!」

由暉子「絶対に嫌です」

ジャンパイ「なんでだよ!?高貴な血族同士が子を作るのは当然の事だろ!?」ガーン!

由暉子「いえ…まず私姫じゃないんで…」

ジャンパイ「え?」

由暉子「だから私、姫とかじゃないんで……」

ジャンパイ「そんな嘘つくほど嫌だった?」

由暉子「確かに相当嫌でしたけど、姫様じゃないのは本当です」

ジャンパイ「ほー…」


ジャンパイ「お前らこれどういう事?」

中「ハッ、今回の作戦は發に一任しておりましたので私は何も知りません」シレッ

白「僕チンもだよ~?」ヒラヒラ

發「お、お前ら汚ねぇぞ!?」アセアセ

ジャンパイ「どういうことだよ、お前の部下が低脳な脳筋集団でも流石にわかるだろ…?」ゴゴゴゴ…

發「い、いえその……この似顔絵を基に捕らえてきたんですけど……」スッ

ジャンパイ「あぁ……?」ジロジロ

ジャンパイ「……え、なにこれメッチャ似てるじゃん」ガクゼン

發「そ、そうなんですよ!!」ハハハハ…

ジャンパイ「…何笑ってんだよ?」ギロッ

發「ハッ……いえ……申し訳有りません……」グッ…

中(まだ力を抑えてるとはいえ…今にも地面に平伏しそうになる重圧…)グググ…

白(王様めちゃくちゃ怒ってるじゃ~ん…)グググッ…


ジャンパイ「ハァ…まぁいいや。それじゃあ今から本物攫ってきて」

中「ではこの者は如何なさいましょう?」

ジャンパイ「ん?本物じゃないんでしょ?殺しちゃえば?」

由暉子「こ、ころ……えっ!?」

中「かしこまりました…」

白「ねぇねぇ!僕チンにちょうだい!僕チンにちょうだい!」ハァハァ!

發「お前はすぐ散らかすから駄目だ…」

白「全部綺麗にするから!綺麗にするから!」ハァハァ!

ジャンパイ「まぁいいだろう。別に誰がやろうと一緒だろ?」

中「王様がそう仰るなら…」

白「やったぁ!バラバラにして遊ぶ?粉々にして遊ぶ?」ハァハァ…

由暉子「ヒッ…」


魔物「失礼致します!緊急の伝令が!」バサッ!

中「なんだ、手短に済ませろよ?」

魔物「ハッ!たった今『ジャンタク城』より勇者一行が出発したとの事です!」

ジャンパイ「勇者……?」ピクッ

魔物「しかもその女は勇者の一味と言う事です!」

ジャンパイ「ほう…面白い…それで奴等は?」

魔物「只今城周辺を散策中との事です!」

ジャンパイ「そうか…じゃあもうお別れだな…今回はここには辿り着けないみたいだな…」フフッ…

魔物「ん?…あぁ…えっ!?嘘だろ!?」ビクッ!

ジャンパイ「あ?どうした?」

魔物「えっと…その…勇者一行がピンフの村に到着したそうです……」

ジャンパイ「ハァーーーーー!?」ガタッ!


中「ジャンタク城の周辺といえば…」

發「危険度最高クラスの幻獣エリアだろ…?」

ジャンパイ「白!その女を殺すな!!」ガタッ!

白「へっ?どして?」キョトン

由暉子「……えっ?」カタカタ…

ジャンパイ「この女が人質として機能してくれることを祈ろう…」ゴクリ…

中「で、ですがいくらなんでも魔物ですら近付かないあの地域を、散策した挙句抜けるなんて…」

發「おい、その情報は確かなんだろうな…?」

魔物「は、はい!すぐ近くにトンパイ様の部下がおりまして…確かな情報かと…」

ジャンパイ「トンパイか…確か發の部下だったな?」

發「へ、へぇ…」

ジャンパイ「よし、確かめさせろ。本物の勇者なら容易く打ち破る筈だ…後くれぐれも勇者だという事は言うな。多分逃げるから」

發「わ、わかりました…」オズオズ…

※第一章へ戻る


~その後~

魔物「魔王様!勇者一行がトンパイ様を一瞬の内に屠ったとの事です!」

ジャンパイ「おい…ふざけんなよぉ…じゃあ本物かもしれないのかぁ…」イライラ…

魔物「次は恐らくイーペーコーの村かと…」

ジャンパイ「近くには誰が居る…」

魔物「…ナンパイ様です」

ジャンパイ「ナンパイかぁ…アイツビックリするほど弱いんだよなぁ…」ハァ…

ジャンパイ「それじゃあ…村の人間脅して勇者達を殺させろ。流石に村人までは警戒しないだろ!」

ジャンパイ「あとアイツには勇者は偽者だって言っておけ。じゃないと多分逃げるから」

魔物「ハッ!今すぐに!」バサッ


中「しかし魔王様…何故そこまで勇者を警戒して…?」

ジャンパイ「あぁ、お前まだ数百歳だもんな…知らないのも無理はねぇ…」

ジャンパイ「これは我々、魔王一族には避けては通れない関門でな…」

ジャンパイ「何故か俺達が魔界から征服しに来る時に必ず、クソ強い勇者が現れるんだ…」

中「で、ですがそれは勇者達が日々の研鑽を積み…」

ジャンパイ「そんなんじゃねぇんだ…何処の村の血筋とかじゃなく急にそんなヤツが現れるんだ…」

ジャンパイ「しかも何故か全員先代が勇者って肩書きを持っててな…訳がわからない…」

ジャンパイ「俺の親父も爺さんも…そんなぽっと出の勇者に殺されてる…」

中「では今回の勇者も…」

ジャンパイ「本物だろうなぁ…」

※第二章へ戻る

書き溜め分投下終了です。

また不定期な更新になりますが少々お待ち下さい

見ていただいた方、レスしてくれた方々ありがとうございました

ではまた次回の更新でお会いしましょう。失礼します

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