――休日の事務所・昼――
<ガチャ
北条加蓮「ただいまー」
高森藍子「あっ、お帰りなさい加蓮ちゃん。お疲れ様ですっ」
加蓮「藍子ー。ただいまっ。あ、菜々ちゃんもいる。何してんのー?」
安部菜々「お帰りなさいませお嬢様っ! キャハッ☆」
加蓮「……メイドモード?」
菜々「おおっとつい」
※単発作品ですよー
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1458740237
藍子「菜々さん、今、"ウサミンノート"を作ってる最中なんです。だからメイドさんになっちゃったのかもしれませんっ」
菜々「えっちょっと待って藍子ちゃん加蓮ちゃんにそのお話は」
加蓮「ウサミンノート?」
藍子「はい。ウサミン星について色々と書いてあるノートで。ふふっ、とっても素敵なんですよ♪」
菜々「ちょちょちょっ待ってストッ」
藍子「ウサミン星人はみんな地球が大好きなこととか、ウサミン星で流行ってる遊びとか、あとっ、流行ってるテレビ番組も書いてありましたっ」
加蓮「ええと、つまりそれって……設定資料集?」
菜々「ちーがーいーまーすーっ! 設定じゃなくてウサミン星は実在するんですーっ! これはウサミン星の、そう、議事録みたいなものです!」
菜々「藍子ちゃんも! ほらもー加蓮ちゃんに言ったらこういう反応が――じゃなくってっ! そう! このノートは、ウサミン星のトップシークレットなんですよぉ!」
藍子「ご、ごめんなさいっ」
加蓮「あははっ。テーブルの上に……すごいノートの数だね。1、2、……え、まさかこれ、ぜんぶウサミン星の設定資料?」
菜々「だーかーらー、設定じゃないんですってば! 議事録ー!」
加蓮「10冊はあるよね?」
藍子「これ、バージョン13って書いてありますよ」
菜々「ウサミン星を語るにはそれだけ必要だってことですよ! それに時々こうして見返しておかないと設定とか忘れちゃいそうだし――」
加蓮「おーい、自分で設定って言ってるよー」
菜々「ハッ! い、いやぁほら、ウサミン星のことでも話して良いこととダメなこととか、そのぉ、……こ、国家機密とかね?」
加蓮「例えば裏でこっそり近くの星を攻撃してるって設定があったり?」
藍子「だめですよ加蓮ちゃんっ」
加蓮「え?」
藍子「ウサミン星は、みんなが楽しく、幸せに暮らしている星なんです。そんな物騒なことなんてないんですっ。ですよねっ、菜々さん!」
菜々「ええもちろん! 大人の世界のドロドロなんてウサミン星には無縁なんですよ! キャハッ☆」
加蓮「なっ……う、ウサミン星のことを、藍子に駄目出しされた……!?」
菜々「現実の世界じゃ、どーしてもそういうのがあっちゃいますからねぇ。せめて空想の世界くらいは幸せでもいいじゃないですか」
菜々「みんなが幸せ、みんなでハッピーエンド。ナナはホントは、そーいうのが好きなんですよ♪」
藍子「ふふっ♪」
加蓮「……それで、ウサミンノートを作ってるんだよね。これだけあるのにまだ作るんだ」
菜々「もちろんですとも! 同じお話を何度も聞くのは楽しいですけど、たまには新しいお話もお届けしたいですから♪」
加蓮「新しいお話、か」
菜々「ナナ、昔から同じ本を何度も読むのが好きだったんですよね。好きなお話は何度見ても、ドキドキして、ワクワクして……」
菜々「でもこの事務所には、新しいことに挑戦する子がいっぱいいますからね! それを見てたら……ナナ、負けてられません!」
加蓮「…………」
藍子「…………」
菜々「それに、新しいお話を待ってくれてる人もいるかもしれませんから――いえっ! きっといる筈です!」
菜々「キャハッ☆ ファンの為なら、不詳この安部菜々、ウサミン星の秘密をいっぱい明かしちゃいますよ~!」
加蓮「……そっか。ふふっ」
藍子「さすが菜々さん、ですねっ」
加蓮「私も作るの手伝いたいなっ。あ、そうだ。今日さ、取材現場でクッキーもらったんだ。ほら、藍子と、菜々ちゃんの分もっ」
藍子「ありがとうございます♪ じゃあ私は、あたたかいココアを入れてきますねっ」スクッ
菜々「かたじけないですっ。って、ホントはナナがやらなきゃいけないことなのにー!」
藍子「ふふっ。たまには、メイドさんがお世話されちゃってもいいと思いますっ」テクテク
菜々「……ですね!」
<ええっと、ココア、ココア……
菜々「…………」ジー
加蓮「え、何」
菜々「…………変なこと吹きこもうとしてませんよね?」
加蓮「なにその反応ー!? 人がせっかく素直に手伝おうって言ったのに!」
菜々「いや、だって加蓮ちゃんですし」
加蓮「いくら私でも菜々ちゃんのマジモード見てからかおうなんて思わないって! ひどくない!? 菜々ちゃんは私のことを何だと思ってるの!?」
菜々「アンタいくつ前科あるんですか」
加蓮「あー、いいんだいいんだ、そういうこと言うならもー手伝ってあげない。藍子を誘って遊んでくる。じゃーねー」スタッ
菜々「ああっごめんなさいつい!」ガシッ
加蓮「はーなーせー!」
菜々「ひ、日頃のお返しってヤツで……ほら、水に流しましょ? ね? ね? 加蓮ちゃんもウサミン星にご招待しますから♪」
加蓮「もーっ」スクッ
藍子「お待たせしました~。……あれ? おふたりとも、どうしたんですか? なんだか息が荒いような……」
加蓮「なんでもないでーす」
菜々「終わったお話ですよ♪」
藍子「はあ……」
<あっ、このクッキーおいしい
<ココアもいい感じですね! 藍子ちゃんなら今すぐメイドさんになれますよ☆
<ふふっ、似合いそうだね
――数十分後――
菜々「……ふーっ。よしっ! これくらいで大丈夫ですね。加蓮ちゃん、藍子ちゃん、サンキューですよ! キャハッ☆」
藍子「お疲れ様ですっ」
加蓮「お疲れー。っていっても、ぜんぜん役に立てなかった気がするー……」
藍子「あうぅ、それは私もかも……。設定を考えることが、こんなにも難しいことだとは思いませんでした」
菜々「」グサッ
加蓮「藍子藍子。さらっと設定とか言うから菜々ちゃんにダメージ言ってる」
藍子「あっ……! ご、ごめんなさい菜々さんっ! そういうつもりじゃ……」
菜々「い、いいんですよ、ええ……」ヨロヨロ
菜々「藍子ちゃん"には"悪意がないってこと、分かってますからね、ええ」
加蓮「……ん? それって私なら悪意があるって思ってるってこと?」
菜々「…………」ジトー
加蓮「えーっ? それは……ほら、菜々ちゃんが悪いんだよ」
菜々「ナナのせい!?」
加蓮「いじってください~って全身で言われたら、ほら……ね?」
菜々「誰もそんなこと言っとらんわ~! ……ごほんっ」
菜々「でもおふたりともグッドアイディアがいっぱいでナナ嬉しかったですよ!」
菜々「加蓮ちゃんの"ウサミン星のハンバーガーは素敵な魔法で作られている"っていうアイディアも」
菜々「藍子ちゃんの"ウサミン星には毎日景色の変わる場所がある"っていうアイディアも」
菜々「聞いててすっごくワクワクしましたからね! あったらいいなぁ、って♪」
加蓮「……自分で言って何だけどさ、ハンバーガーを魔法で作るのって正直どうなの?」
菜々「いやぁほら、食物連鎖的なイメージを消せるっていうか」
加蓮「変に生々しいんだね……」
菜々「歳を取るとどーしても現実から目を背けなくなっちゃうっていうか」
加蓮「……、……うーん、私はそこまで現実を嫌だと思うことはないなぁ」
菜々「そうなんですか? 加蓮ちゃんも色々と苦労してるイメージでしたが――」
加蓮「気付いて菜々ちゃん。私は16歳で、17歳と1つしか違わないっていうことに」
菜々「ハッ! ……周りくどいんですよぉ! 気付いたら素直に言ってくれてもいいじゃないですか!」
加蓮「いじっていいってこと?」
菜々「そうじゃないですーっ!」
藍子「まあまあ……。でも、菜々さんのお話を聞いていると、ウサミン星が本当にあるみたいに思っちゃいますよねっ」
菜々「」グサッ
加蓮「あ、あのさ。今日の藍子はどしたの……? 無自覚毒舌キャラでも目指してるの?」
藍子「へ?」
菜々「い、いいんですよ、ええ……」ヨロヨロ
加蓮「大丈夫って顔してない」
藍子「???」
加蓮「あーあー……」
菜々「ほ、ほら、それだって想像してみたら楽しいじゃないですか」
加蓮「どゆこと?」
菜々「例えば藍子ちゃんがこんな子だったら! って感じでっ。もし藍子ちゃんが、加蓮ちゃんの言う無自覚毒舌キャラだったら――」
菜々「…………」
菜々「…………」カタポン
藍子「ふぇ?」
菜々「藍子ちゃんは、今の藍子ちゃんのままで、いてください、お願いします」
藍子「は、はい、がんばります……?」
菜々「この3人でいると、もう藍子ちゃんだけが心の癒やしで」
加蓮「あーまたさりげなく私をディスってるー! 菜々ちゃんがそーいう人だとは思わなかったなぁ」
菜々「はいはい自覚してることをわざとらしく言わないでください」
加蓮「あれ、反応が冷たい」
菜々「それくらいならナナにも分かりますからね。だいたい、もし加蓮ちゃんがもっと素直だったらとか、それこそ想像しようとしてもなかなかできないですよっ」
加蓮「うーん、なんか私のイメージがだんだん変な方向に向かってるなぁ……」
藍子「菜々さんは、想像することが大好きなんですねっ」
菜々「へ? あー、そうかもしれませんねぇ」
加蓮「そうじゃなきゃウサミンノートが14冊目に突入したりしないでしょー」
菜々「キャハッ☆ 実は、ここだけのお話なんですが……!」
藍子「ごくりっ」
加蓮「ふんふん」スッ
菜々「って加蓮ちゃん? どうしてそこでスマホを取り出すんですかねえ?」
加蓮「え? "ここだけのお話"って広めてくださいっていうフリなんじゃ」
菜々「違うわー! ああもうっ! というか別にここだけのお話って訳でもないんですけど!」
加蓮「じゃみんなに教えてあげてもいいってことだね」
菜々「いいから真面目に聞けやー!」
藍子「もう、加蓮ちゃんっ。菜々さんをいじめないでくださいっ」
加蓮「ごめんごめん。スマホぽいーっと」ポイー
菜々「ぜー、ぜー、そ、そーゆー態度だから加蓮ちゃんへの信用がどんどん落ちていくんですよぉ!」
加蓮「菜々ちゃんはそれでも私を信じてくれるでしょ?」
菜々「それは、まぁ……いやそうじゃなくて!」
加蓮「で、何なに? ウサミン星の新しい秘密?」
菜々「いえいえ、ナナの秘密ですよ!」
菜々「実はナナ、子供の頃から童話や絵本が大好きで。よくお母さんに読んでもらって、メルヘンでファンタジーな世界にいつか行ってみたいなぁって」
菜々「だから、想像することや空想することが大好きなんです。キャハッ☆」
藍子「わぁ……!」
加蓮「そっかぁ……」
菜々「……な、なーんてっ。ナナのひみつその100くらいですよ! ファンのみんなにはまだ教えていない、ここだけのひみつです!」
藍子「ふふっ、得しちゃいました♪ みんなの知らない菜々さんのナイショ、ですねっ」
菜々「ええ! そうですとも!」
藍子「♪」
加蓮「空想、かー」
藍子「? 加蓮ちゃん?」
加蓮「あ、ううん。私もちっちゃい頃によくやってたなーって、ちょっと思い出しちゃった」
菜々「加蓮ちゃんもナナと同じでしたか!」
加蓮「あはは、童話じゃないけどね」
加蓮「テレビでさ、アイドルのステージを見て。そこで踊ってる自分を想像したり、インタビューに答えてる自分を思い描いたり」
加蓮「その度に、自分じゃ無理だって現実を思い知らされるけどさ。でもいつか……なんて思ったら」
加蓮「想い続けてよかったなぁ、なんて――」
加蓮「……も、もう。ただの妄想の話だよ。そう、ただの妄想」
藍子「ふふっ。加蓮ちゃんと菜々さん、おんなじなんですね」
菜々「加蓮ちゃん……。……も、もーっ! それならそうと早く言ってくれれば!」
加蓮「別に言うことじゃないし……。昔の話なんて……そ、そう、恥ずかしいだけだもん。むしろ菜々さんよく昔の話とかできるね。恥ずかしくないの? 大の大人が『昔はよかったなぁ』って言うのってもうアレだよ末期だよ? ホントは2×歳じゃなくてさんじゅ――」
菜々「ちょっと素直になったらこれですよ!」
藍子「まあまあ。加蓮ちゃんなりの照れ隠し、ですよっ」
加蓮「むぅー……」
――少し経ってから――
加蓮「菜々ちゃんってやっぱりズルいなぁ」
藍子「ずるい、ですか?」
加蓮「うん。なんていうか……ズルい」
藍子「はあ……」
菜々「そういう加蓮ちゃんもズルいと思いますけどねぇ」
藍子「じゃあ、2人ともずるいってことでっ」
加蓮「……そういう藍子が一番ズルいね」
菜々「それはナナも同感ですねー」
藍子「えええ!?」
加蓮「はー。もう、久しぶりにマジな話したら疲れちゃった。どっか出かけたいなー」
藍子「じゃあ、少しおさんぽしましょうか♪」
藍子「あっ……でも、加蓮ちゃんはお仕事があったんですよね。体力、大丈夫ですか……?」
加蓮「ん、へーきへーき。菜々ちゃんと喋る方が100倍疲れる」
藍子「もうっ、またそういう風に」ペチ
加蓮「いたいっ」
菜々「若い内は疲れるくらいがちょうどいいんですよっ。ナナも大人になってからは、あれをやっておけばよかった、これをやっておけばよかったと……面倒臭がっていた昔の自分を叩き起こしたい気持ちで、」
加蓮「17歳」
菜々「ハッ! ……そ、それはともかく。あー、えー、ナナは17歳なのでぇ、大人がそういう風に言っても実感が湧かないっていうか……ね?」
藍子「ほら、加蓮ちゃん。そういうことにしちゃいましょうっ」
加蓮「はーい。……やっぱなんか今日の藍子ってこう……(小声)」
藍子「?」
加蓮「ううん、なんでも」
菜々「そうそう、出かけるというのならばナナに1つ案が!」
加蓮「行きたいところでもあるー? 私はどこでもいいよ、テキトーについてく」
藍子「私も、菜々さんの行きたいところについていっちゃいますっ」
加蓮「案外ウサミン星に行けたりしてね」
菜々「加蓮ちゃんと藍子ちゃんをウサミン星にご招待したいのはやまやまなんですが、そこら辺は大人の事情がありましてねー……」
菜々「そうじゃなくてです。昔話をしたせいか、久々に童話を読みたくなっちゃいまして」
加蓮「ってことは」
藍子「本屋さんですか?」
菜々「それでもいいんですけど、ナナ的には――」
――図書館前――
<ワイワイ
<ワイワイ
加蓮「あれ?」
菜々「なんだか賑やかですねぇ」
<とりゃー!
<バリアー!
<ちょっとだんしー、うるさい!
<このふく、おかあさんにかってもらったの!
<かわいー
藍子「わっ、子どもたちがいっぱい……!」
菜々「何かイベントでもあるんですかね?」
加蓮「えーっと……」ポチポチ
加蓮「あ、見て藍子、菜々ちゃん。これ」スマホミセル
菜々「んー?」
藍子「絵本の読み聞かせ、今月は××日……これって今日ですよね?」
菜々「読み聞かせ!」
加蓮「だね」
<はいはいみんな静かにー! ……静かにー! 他の人の迷惑になるから――
<ワイワイ
<ワイワイ
<静かにー!!
加蓮「……あれ? 今日って土曜日だよね? っていうか春休み……」
藍子「あっ、幼稚園の時、たまにお休みの日にお出かけとかあった気がしますっ」
加蓮「そうなんだ。……そういうのぜんぶ欠席してたからなぁ」
藍子「あっ」
加蓮「あはは、昔の話はしないって言ったのに……。ほ、ほら、その分はさ、今取り戻してるんだから。ね?」
藍子「……はいっ♪」
<ワイワイ
<ワイワイ
藍子「みんな、元気いっぱいですね……♪」
加蓮「子供だもんね、しょうがないよ」
菜々「ナナもよく苦労させられちゃいますねぇ。みんなしてウサミミに触らせてー触らせてーって言われちゃって。結局、スペアのウサミミぜんぶ使っちゃいましたよ!」
加蓮「ウサミミにスペアとかあるんだ……」
藍子「あっちの子、すっごくそわそわしちゃってる……楽しみにしてたのかな?」
藍子「……えいっ♪」パシャッ
菜々「加蓮ちゃんの分も、いつでも準備できてますからね!」
加蓮「いらない」
菜々「真顔で拒否することないじゃないですか~!」
<みんな、そろそろ入りますよー! はい、図書館ではどうしますか?
<しずかにー!
<しーっ!
<しぃーっ!
藍子「えいっ」パシャッ
加蓮「っと、私たちも入ろっか」
菜々「そうでしたね! 童話がナナ達を待っている~!」
加蓮「あはは、大げさだよ。……藍子も。ほら……って、いつまで写真を撮ってんの」
藍子「あっ待ってください加蓮ちゃん、もう1枚、いえ2枚だけ……」パシャパシャ
加蓮「はいはい」ズルズル
藍子「あと3枚だけ~~~~!」
――図書館内・1階――
……。
…………。
加蓮「あれ? 菜々ちゃんは?」
藍子「そういえば……いつの間にか、いなくなっちゃってますっ」
加蓮「藍子、絵本をじーっと読んでたもんねー」
藍子「か、加蓮ちゃんだってそうじゃないですか」
加蓮「あはは。どこ行ったんだろ?」
藍子「少し、探してみますか?」
加蓮「うんうん。菜々ちゃんのオススメとか聞いてみたいし――」
藍子「あっ……え?」
加蓮「藍子?」
藍子「あの、加蓮ちゃん。あっちあっち」クイクイ
加蓮「んー?」テクテク
加蓮「……え?」
藍子「ほら、あそこっ」
加蓮「絵本の読み聞かせしてるところに……」
藍子「混ざっちゃってます……」
「さぁ、いよいよしゅっぱつ!」
「さいしょに、みえてくるのは――」パラッ
<わあーっ
<たまねぎだ!
菜々「……!!」キラキラ
<すげー
<たまねぎ!
加蓮「…………」
藍子「…………」
「しばらく とぶと いわのトンネルが――」
「『このトンネルを こえたら――」パラッ
<わくわく
<どきどき
菜々「……!!」キラキラ
<でっかいきょうりゅうがいるんだぜ!
<あ、ちっちゃいのがいる!
加蓮「…………」ミアワセ
藍子「…………」ミアワセ
加蓮「…………あははっ」
藍子「…………ふふっ」
「これは、もしかして……」パラッ
……。
…………。
――地下1階・カフェコーナー――
菜々「はーっ。久しぶりにいっぱい楽しみましたよ♪ 来て正解でした!」
加蓮「……まさか子供に混じって読み聞かせを楽しんでるとは思わなかったよ、菜々ちゃん」
菜々「ちっちっち。絵本も童話も、子供から大人まで楽しめるんですよ」
菜々「ほら、お知らせにも書いてあったじゃぁないですか! 大人の方も一緒に、って!」
加蓮「そうだけどさー……」
藍子「……♪」ゴクゴク
藍子「そういう加蓮ちゃんだって、菜々さんのことを見守ってたじゃないですかっ。あの時の加蓮ちゃん、すっごく綺麗な笑顔でした!」
加蓮「私なんて見てないで菜々ちゃんを見てなよ、もー」
藍子「だって、たまたま見えちゃったんですもん♪」
菜々「んぐっんぐっんぐっ」ゴクゴク
菜々「ぷはーっ! 何度も読んじゃった本ですけど、やっぱりいいですね。ドキドキして、ワクワクして……ちっちゃい頃には見つけられなかった物が見つけられて。それに今日は、なんだか初心に戻れた気がしますよっ」
藍子「今日の菜々さんは、菜々ちゃんって感じでしたっ」
菜々「! もっと、もっと言っていいんですよ! ほら、せーのっ」
藍子「ええ? な、菜々、ちゃん……?」
菜々「キャハッ☆」
加蓮「あはは……楽しそうだね、菜々ちゃん」ゴクゴク
菜々「ええ! 加蓮ちゃんも藍子ちゃんも、どうでしたか? 楽しかったでしょ?」
藍子「はい! 私、童話を読んだのなんて、すっごく久しぶりで……読み聞かせなんて、ちっちゃい頃の思い出くらいしかなかったですっ」
加蓮「病院でもあったんだよね、ああいうの。子供が退屈しないようにって」
加蓮「あの時とはぜんぜん違う感じだった。図書館だからかな?」
菜々「いえいえ。それは、加蓮ちゃんの世界が広がったからですよ!」
菜々「藍子ちゃんもそう! 子供の時に読んだ本は、大人になってまた読み返すべきなんです! きっと世界が違って見えますよ!」
藍子「はいっ♪」
加蓮「そだね」
加蓮(……あはは、今日はもう、からかうのやめとこっと♪)
菜々「そうだっ! ナナもアレ、やってみたいです!」
藍子「あれ、って?」
菜々「読み聞かせですよぉ! 童話を楽しむのもいいですが……やっぱりナナは大人ですからね。楽しんでもらう側になりたいですから♪」
加蓮「菜々ちゃんが読み聞かせかぁ……うん、すごく似合うと思うよ」
藍子「はいっ。今度は、私たちが聞く番ですね!」
菜々「キャハッ☆」
菜々「それに、それだけじゃないです!」
菜々「ナナはアイドルです。色々と大変なこともありましたが、今、こうして夢を叶えることができました!」
菜々「だから、みんなに伝えてあげたいんです」
菜々「夢見た世界は本当にあるんだって。メルヘンもファンタジーも、現実にできるんだって」
菜々「……ナナ、そんな世界に勇気づけられて今日まで来ましたから」
菜々「だから、今度はナナが勇気づける番です!」
藍子「菜々さん……!」
加蓮「…………!」
藍子「……す、すごいですっ、菜々さん! 私っ――!」グスッ
菜々「へ? ……えええええ!? えちょ、なんで泣いてるんですか!? 何か泣かせるようなことナナ言っちゃいました!?」
藍子「違うんです~~~っ、その、か、感動しちゃってぇ……!」
菜々「ちょ、ちょっとぉ!? ……ほらっ、他のお客さんがこっち見てる、こっち見てますから~~~!」
加蓮「…………」
加蓮(勇気づけられた世界へ。今度は自分が勇気づけられる番、かぁ……)
加蓮「ほら、菜々ちゃん。のんびりしてないでさっさと行こうよ」ガタッ
菜々「加蓮ちゃん! ちょ、ちょっと助けてください! 藍子ちゃんが泣きやまな――あああ~~~っ! 違うんですみなさん、ナナたっ、わ、ワタシ達はアイドルじゃなくてぇ! ええっと、そう、通りすがりのウサミン星人なんです~~~!」
加蓮「? 何か知らないけど……帰って相談しなきゃ。菜々ちゃんのやりたいこと、ぜんぶやるためにね」
菜々「加蓮ちゃんがすごく頼りになる目に!? いやそれよりも! あ~~~~! なんか人が増えてきてっ、ちょ、待っ」
菜々「って加蓮ちゃん!? ナナを置いていかないでくださ……藍子ちゃぁん!? 腰にしがみつかないでください! いやホントなんで大泣きしてるんですか!?」
菜々「……ああああああもおおおおおお~~~~!!」
――外――
菜々(はい。脱出するまで1時間くらいかかりました。ナナには何が何やら)
菜々(加蓮ちゃんはずんずん先に行っちゃうし、藍子ちゃんはやっと泣き止んだと思ったらファンサービスなんて始めちゃうし)
菜々(いやまあ、よく考えたらあんな目立つ場所で力説したナナにも責任はあるのかもしれませんが)
菜々(あぁ、もうクタクタですよぉ~~~。体力のなさが恨めしいっ)
菜々(……でも、ま)チラツ
加蓮「読み聞かせってどんな練習をするんだろ?」
藍子「ゆっくり喋る練習、とかでしょうか……。ほら、トークのレッスンみたいに?」
加蓮「あとは子供でも聞きやすい喋り方をするとか? そういうのは藍子の方が得意そうかな」
藍子「そんなことないですよ~。でも、私たちも一緒にレッスンしてみたいですねっ」
菜々(…………)
菜々「ちっちっち。おふたりともまだまだ甘ぁい! この安部菜々、伊達に2X年は生きてませんよぉ!」
加蓮「いやあの、外で何堂々と言ってんの……」
藍子「な、菜々さん? 17歳……なんですよね?」
菜々「ハッ! ……しーっ、しーっ」
菜々「ごほんっ。子供たちと接する時にはですねぇ、まず――」
菜々(ナナはアイドルで、そしてウサミン星人ですから。なんだってできるんです。だから――)
菜々(なんだってできるってことを……みんなに、教えたいっ!)
菜々(その為に、これからももっと頑張っちゃいますよぉ! キャハッ☆)
おしまい。読んでいただき、ありがとうございました。クリスマスメモリーズばんざーい!!
乙
ロベルト・ハイドンかと思った
乙、書くの久しぶり?それとも見逃してたかも?
酉付けて欲しい
乙!
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