ある犬飼いの話 (12)
その犬飼いに出会ったのは、ある旅先でのこと。
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女「うわあ、犬がたくさんだ」
女「売り物ですか?」
男「ん、買う?」
女「えっ?」
男「ウチは登録とかやってないから、すぐ買えるよ。どうする?買う?」
出先であまりにも暇だった私が入ったのは、看板に【犬屋】とだけ書かれた小さな店だった。見るからに薄汚く、闇犬を扱ってるのはわかりきっていたが、興味本位で足を運んだ。
中に入ると犬に囲まれた男がいた。中肉中背、一目見ても犬飼いだとは分からないような、そんな外見をしていたと思う。
女「え・・・でも」
男「でも?闇犬を扱ってるから買えませんって?」
女「・・・」
男「でもアンタ、犬に興味があるから入ってきたんだろ?触るだけ触っていけよ」
犬を飼うには、いやヒトが生物を飼うには登録が必要だ。亀やヘビから犬ネコは勿論、象やキリンまで『登録』しなくては買えない。
「動物保護法」で取決められた事だ。つまり、ここで犬を買ってしまうと私は犯罪を犯した事になる。
男「ほら、そこで棒立ちになるなよ。こっちに来いって」
男に引きずられて私は犬の大群の方へ近づく。
女「いや・・・でも!」
男「買わないなら罪にはならんって、さあさあ、どうぞ触ってくださいよ」
男のうやうやしい態度が癇に障るが、ついに従った。
女「・・・おぉ」
男「初めてか?いい手触りだろ?」
女「・・・うん」
男「十万でやるよ」
女「・・・」
男「欲しいのか?」
女「・・・欲しい」
男「五万でいいや、どうするよ」
人は欲望には逆らえないんだなとつくづく感じることになった。
結局まけにまけさせて、三万でその犬を買ってしまった。
女「・・・ふふふ」スリスリ
男「ベタ惚れだな、中型犬が好きなのか」
女「このくらいの大きさの方がいいよね」
男「でも外で散歩なんて出来ないぞ、・・・まあこの辺りなら取り締まりもキツくないし、別に散歩させてもいいんだけど」
女「私結構都会に住んでるの、どうしたらいい?」
男「さあね」
女「え?ちょっと! 人に売り付けるだけ売っといてそれはないでしょうが!」
男「さあ?買う買わないは本人の自由だろ? 嫌なら三万で引き取ってやるよ」ニヤニヤ
女「・・・最低。」
男「引っ越せよ」
女「は?」
男「出来るだけ田舎に、何ならウチでもいいや」
女「・・・そんなこと出来るわけ・・・」
買ったばかりの中型犬が、妙に愛おしく見えた。
手放しがたい。幼い頃からどーしても買いたかった、でも買えなかった犬が自分の膝元に居る・・・
男「じゃ、来週からウチってことでいいな、洗濯と掃除はよろしく。食事は俺がやるから」
女「アンタに都合のいい奥さんを演じないとダメなのね、給料貰える勢いだわ、三万くらいで手を打ってあげようかな」
男「むしろ俺が毎月三万貰いたいがな、家賃くらい払えよ」
女「説明責任もしなかったソッチのせいでしょ、絶対、払わないから」
男「・・・ちぇっ」
女「可愛いねー」ヨシヨシ
犬「・・・ハアハア」
男「早くしないと終電遅れるぞ」
女「また来るからね、いい子にしてるんだよ?ポチ」
男「その犬ポチって名前にしたのか」
犬「・・・クゥーン」
女「じゃ、来週荷物持ってくるから」
男「おう」
男「ポチ、か。ダッサイ名前付けられたな」ヨシヨシ
犬「ハアハア」
男「買い手付いただけ良かったじゃん。俺、てっきり冷やかしに来たのかと思ってたよ」
犬「ハアハア」
男「・・・」
男「未だに犬買いに来る奴とかいるんだな」
犬「・・・クゥーン」
今日はここまで。今後も中身の薄いSSを投稿したりしなかったり
雰囲気SS目指して頑張る
期待
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