妹「ひとはざまって、知ってる?」(166)
兄「ああ、プリンおいひ」
妹「あっ…ちょっとお兄ちゃん!」
兄「ん?」
妹「そのプリン、どこから出してきたの!?」
兄「妹が今日買ってきた紙袋の中から」
妹「ば、ばかー!」
兄「で、ひとはざまがなんだって?」
妹「あのね、ひとはざまっていうのは、夕方になると現れる奇妙な影のことなんだって」
兄「夕方に影?そんなのよくある話だろ」
妹「違うの。その影は、本来伸びるべき方向と真逆の方向を向いているんだって」
兄「逆?夕日側に伸びてるってことか」
妹「うん」
兄「なんだよそれ。気持ち悪いな」
妹「それが最近、このへんでも現れるらしいんだよ」
兄「はあ?ホントかよ」
妹「ほんとほんと」
兄「そのひとはざまってのは、なんか害とかはないのか」
妹「害っていうか、なんだろ」
妹「その影を見つけると、もう一つあったであろう世界に飛ばされちゃうんだって」
兄「なんだそれ。パラレルワールドか何か?」
妹「そんなようなものなのかも」
兄「ますますキモい」
ホラーものか
妹「それがその人にとっていいことなのか悪いことなのかは、そのひと次第らしいの」
兄「今のこの世界で充実してる奴は、向こうでは必ずしもそうとは限らないってわけか」
妹「そういうことでもあるし、出会った人がいなかったりするらしいの」
兄「ふーん。向こうではきっと、その人とは合わなかったんだろうな」
妹「そうなんだろうね」
妹「あっ、いけない」
兄「なんだ」
妹「わたし、学校に忘れ物取りに行かなくちゃならないんだった」
兄「それはお気の毒に」
妹「…もう、他人事みたいに言わないでよ」
兄「現に他人事だごるぁ~」
妹「ふんっ、お兄ちゃんのば~か」ベー
兄「ゆってろオマヌケ妹が」
妹「お、おまぬけじゃないもん。きょうのはちょっとした抜かりだもん」
兄「それをひとは間抜けと呼ぶ」
妹「ぐぬぬ…お兄ちゃんめ、おぼえてろ~っ!」バタン
兄「気を付けろよー。夕方は事故に遭いやすいんだからなー」
妹「わかってるよ~っ」
カー カー
妹「けんけんぱっ、けんけんぱっ」
妹「今日のごはんは何にしようっかなー」
妹「お兄ちゃんのすきなものにしようか」
妹「そうだ。お兄ちゃんの好きな肉じゃがにしよう!」
ブゥゥゥン…
妹「材料はあったかなぁ。う~ん」
妹「…まぁいいや。忘れ物取りのついでに、スーパーにでもよって材料を買ってこよう」
ブゥゥゥ…!
妹「ふふっ、お兄ちゃん喜ぶかなぁ」
妹「喜んでくれるといいなぁ」
妹「お兄ちゃんが喜んでくれると、私も嬉しい」
妹「だって、お兄ちゃんたら」
キキーーーッ
バキャアァァァンン
ドプッ ゴプゴプッ
「おい、誰か救急車を呼べ!」
ドクドクドク…
ブワァーッ
「うわっ…こりゃひでぇ」
「ぐしゃぐしゃだ」
「誰なんだこれ…どこの娘だ」
「顔もわからない」
ピクッ… ピクッ…
「 」「 」「 」 「」「」「
『ウーウー ウーウー』
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観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄
舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減
是故空中無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界乃至無意識界 無無明亦無無明尽 乃至無老死亦無老死尽 無苦集滅道
無智亦無得 以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒無想 究竟涅槃
三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多
是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚
故説般若波羅蜜多呪 即説呪曰
掲帝 掲帝 波羅掲帝 波羅僧掲帝 菩提僧娑訶
般若心経
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____
ヒソヒソ
「…かわいそうにねぇ」
「これで兄くん、独りになってしまったわねぇ」
兄「……」
「天涯孤独だわ」 「妹さんが最後の家族だったのに」
「お父さんは小さい頃に、既に亡くなってるんですって」
「お母様のほうは?」
「それが……自殺で」
ヒソヒソ ヒソヒソ
兄「……」
「あんたのとこで、引き取りなさいよ」
「はぁ…?冗談じゃないわ」
「うちにはそんな余裕、ないですから」
ヒソヒソ ヒソヒソ
兄「…」
ヒソヒソ ヒソヒソ ヒソヒソ
兄「…」
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
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妹(ひとはざまって、知ってる?)
兄「…なんだっけ、それ」
妹(ひとはざまは、その人が持っているであろうもう一つの世界だよ)
兄「もう一つの世界?」
妹(そう)
妹(お兄ちゃん。それ、使ってみたら?)
兄「どうして」
妹(もしかしたら、モう一度会えるかもしレないよ?)
兄「会える?」
妹(そうだよ。オトウサンにも、オカアサンにも、アエるかもシれない)
兄「何故会えるの」
妹(向こうは、モつとベツノせかいカもしれないからだよ)
兄「別の世界」
妹(そうだよ)
妹(オトウサンが死ななかったせかい)
妹(オカアサンが自殺しなかったせかい)
妹(わたしが、死なナカっタセかイ)
兄「どうやって行くんだっけ」
妹(昼と夜 のはざま のじか んに、死にたい と思 ってそとをほっ つき歩け ばいい ん だよ)
妹(そう すれば、影 が逆に 伸 びて いく)
妹(そして、それに、飲ミ 込 マ レル の)
妹「だカ ら いこ う よ い っ し ょ に」
兄「………」
兄「話しかけられるなんて、世も末だ」
____
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観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄
舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減
是故空中無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界乃至無意識界 無無明亦無無明尽 乃至無老死亦無老死尽 無苦集滅道
無智亦無得 以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒無想 究竟涅槃
三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多
是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚
故説般若波羅蜜多呪 即説呪曰
掲帝 掲帝 波羅掲帝 波羅僧掲帝 菩提僧娑訶
般若心経
________
____
カー カー
兄「死にたい」
兄「死にたい」
兄「今すぐ、死にたい」
兄「今すぐ、死にたい」
トボトボ
カー カー
兄「あいたい」
兄「あいたい」
兄「妹に」
兄「あいたい」
兄「今すぐ」
兄「あいたい」
トボトボ
カー カー、 .;l/.,./:@:/.,./:@-0op:lp@
兄「おれはひとりになったらしい」
兄「りょうしんは、とっく「」:にしん:;、だらしい」,.:@^[]:\
/;:[:/:/
兄「いもうとも、あっとい。、khうまにしんだらしい」\/./.\[:[:]
o;:@pinvtcrxezwionm,./:[]\
兄「おれは:・ひとりに「ー098なっっ」「らしい」
。cxmンbzv890ー67890
トボトボ
兄「だが、それはもうどうでもいい」
兄「別の世界に行くんだからな」
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観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄
舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減
是故空中無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界乃至無意識界 無無明亦無無明尽 乃至無老死亦無老死尽 無苦集滅道
無智亦無得 以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒無想 究竟涅槃
三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多
是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚
故説般若波羅蜜多呪 即説呪曰
掲帝 掲帝 波羅掲帝 波羅僧掲帝 菩提僧娑訶
般若心経
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(………………)
カー カー
兄「何かに飲み込まれたと思ったら、ここに立っていた」
兄「ここは奇妙だ」
兄「左にあったものが右にあって」
兄「右にあったものが左にある」
兄「位置が違う」
兄「けど、それはそれだけであって、ここは以前と変わらぬあの街だ」
般若心経
兄「またこれか」
兄「もうさ、これはききあきたんだよね」
兄「もうさんかいくらいきいてるからさ」
父 母 そして妹
¥・。:][-08765クァqウェdfvbんm,。/\][-08う7ytrfdんh
mぉいうygfdfrtgyhjukol0p@^[]\/\][^[][^[];@[]/.;/.,./:[^[\]/,l;:[^@
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;p@「」:;
;p@:¥」「@;・:¥
。lp@:・。lp@「」「^@:」¥
摩訶般若波羅蜜多心経
観自在菩薩
行深般若波羅蜜多時
照見五蘊皆空
度一切苦厄
兄「……」
トボトボ
舎利子
色不異空
空不異色
色即是空
空即是色
受想行識
亦復如是
兄「…」
トボトボ
舎利子
是諸法空相
不生不滅
不垢不浄
不増不減
是故空中無色
無受想行識
無眼耳鼻舌身意
無色声香味触法
無眼界乃至無意識界
無無明
亦無無明尽
乃至無老死
亦無老死尽
無苦集滅道
無智亦無得
以無所得故
菩提薩捶
依般若波羅蜜多故
心無圭礙
無圭礙故
無有恐怖
遠離一切顛倒夢想
究竟涅槃
三世諸仏
依般若波羅蜜多故
得阿耨多羅三藐三菩堤
故知般若波羅蜜多
是大神呪
是大明呪
是無上呪
是無等等呪
能除一切苦
真実不虚故人
説般若波羅蜜多呪
即説呪曰
羯諦
羯諦
波羅羯諦
波羅僧羯諦
菩提薩婆訶
般若心経
妹「お兄ちゃん。これがどういうことだか分かる?」
兄「…さっぱり」
妹「もう、これだからお兄ちゃんはっ」
兄「あいた」
カー カー
妹「とりあえず、長くなるからあそこのベンチに腰掛けよ?」
兄「そうだな。暫く歩きまわってたから疲れた」
妹「ふふっ。お兄ちゃん、ほんとに会いに来てくれたんだね」
兄「まあな」
妹「………お兄ちゃん」ギュー
兄「こ、こら、やめろよこんなところで」
妹「えへへ~」
カー カー
兄「なあ妹」
妹「ん…なあに?」
兄「ここはどこなんだ?」
妹「ここはね、ひとはざまの世界だよ」
これは期待
兄「ひとはざまって、一体何なんだ」
妹「全てが入り交じる場所だよ」
兄「全てが?」
妹「そう。全てが入り交じっているから、私のようなものが入ることもできる」
妹「全てが入り交じっているから、五万とある他の世界ともつながっているの」
兄「それじゃあ、ここは俺のもう一つの世界?パラレルワールド?」
妹「ううん。これはお兄ちゃんの言うもう一つの世界が、なんとなく流れこんで映っているだけの再現された世界」
兄「ということは、まだ俺はもう一つの世界にたどり着いてないってわけか」
妹「そう。ここはそこに行くための入り口に過ぎないの」
説般若波羅蜜多呪
兄「またこれだ…。これさっきから耳に流れ込んできてうるさいんだけど」
妹「ふふっ、お兄ちゃんは、この言葉の意味が理解できた?」
兄「全然。何がなんだかさっぱりだ」
妹「やっぱりお兄ちゃんにはむずかしいか~」ピト
兄「こらっ、すきあらばくっつくなっ」
妹(………………)
妹「ねぇねぇお兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「ここに来る間に、死にたいって思った?」
兄「…ああ」
妹「…本当に、強く『死にたい』って思ったの?」
兄「思った。妹がいない世界は、いらないと思った」
妹「…………本当に強く『死にたい』って思ったんだね」
兄「なんだよ。死にたいと思いながら歩けっていったのはお前だろ?」
妹「ここに来るにはそうするしか無いから仕方がなかったの!」
兄「ちぇ…なんだよ、もう」
菩提薩婆訶
妹「とにかく、お兄ちゃんにはこの言葉の意味をわかってもらわなくちゃならない」
兄「いっとくけど、俺はもう向こうの世界に戻ろうとは思わないからな」
妹「どうして?」
兄「向こうには、妹も、両親も、何もないからだ」
妹「……」
兄「だから俺は、このひとはざまの向こうにある、お前がいる世界に行く」
妹「……」
妹「帰らなきゃダメ」
兄「は?」
妹「お兄ちゃんは、帰らなきゃダメだって言ったの」
兄「なんだよそれ。最初の話と矛盾してるじゃねえか」
妹「…」
なにこれこはい
妹「たしかに、わたしは死んだ後、お兄ちゃんにここに来るように促したよ」
兄「だろ?なのになんで」
妹「一人じゃ寂しいから、お兄ちゃんをもう一つの世界に引きずり込みたい、連れて行きたいって」
兄「……な」
妹「それで…お兄ちゃんを連れ去った後、向こう側に居るであろう自分を、殺すなり取り憑くなりして入れ替わろうと思ったの」
兄「……………」
妹「ドッペルゲンガーってこういう事かーなんて、うっすら思った」
妹「でも……やっぱり、やめた」
兄「なんで…」
妹「だって、今までお兄ちゃんと一緒に居た記憶を、全否定することになるじゃない」
兄「…」
妹「わたしはあっさりと死んじゃったけど、お兄ちゃんにはそうなってほしくない」
兄「…」
妹「お兄ちゃんが肉体的に死ななくても、自身が綺麗サッパリ消えたら、それは死んだと同義」
兄「…」
妹「自分の勝手な思いで、お兄ちゃんを振り回すのはやめようと思ったの」
妹「だって…わたし以外にも、お兄ちゃんの周りに人はいるんだから」
兄「………」
妹「死者のわたしに、もともと干渉する権利はなかったんだよ」
是諸法空相
不生不滅
不垢不浄
不増不減
妹「だから…最後である今に、お兄ちゃんにはこの言葉の意味をわかってほしい」
兄「…」
妹「この言葉の意味が分かれば、きっと向こうでも強く生きていけるはずだから」
兄「…」
兄「はぁぁ………」
妹「…」
兄「…妹。俺は既に存分に振り回された後だ。ここまでこさせといてそりゃ無いわ」
妹「…ごめん。わたしの思惑通りに事は進まなかったみたい」
兄「なんだよそれ…。俺は向こう側に行きたいってのに」
妹「……」
兄「妹がいる向こう側の事、もう知っちまったってのに。なのに帰れとかないわ」
妹「………ごめんなさい」
兄「あーあ……大失敗だったな、こりゃ」
妹「うん……。大失敗だった」
兄「…」
妹「本当に…ごめんなさい……」
兄「……」
妹「…」
兄「…大失敗だったのならさ」
妹「…」
兄「もう、ここで一生暮らさないか?」
妹「え…?」
兄「ここなら、妹といつまでもいられるし」
兄「向こうの妹も殺さずに済む」
妹「……」
兄「ここならしなない」
兄「ここならしなない」
兄「ここならしなない」
ここならしなないここならしなないここならしなないここならしなないここならしなないここならしなないkfw]oekcp@ r f0[pmktojijkegwfov利源jkfkじあああああああがっがああhがっがっががっががあああああああああああああがっがっががっががあああがががあああああああああ
兄ここなら、もうずっと、妹といっしょに暮らせる気がする
妹「……
兄だからさ、ここで住もうよ。な?」
妹………それは、できないよ
兄「は?なんでだよ?
妹「だって、わたしはもう、死後のルールを、破っちゃったもの」
兄「死後のルールってなんだよ」
妹「そのまんまの意味だよ」
兄「…魂で現世のせかいを彷徨う間は、これこれどうこらをするな。とかか?」
妹「………うん」
兄「でもさ、お前は特にルールを破ってないだろ」
妹「破ったよ」
兄「なにをだよ」
妹「……わたしは、お兄ちゃんを連れて、別の世界へ逃げようとした」
妹「死後のルールが適用される『現世とそのひとはざま』から、死後のルールが適用されない別世界へ逃げようとした」
兄「…な」
妹「だから、不届き者な魂のわたしには、四十九日は与えられない」
ここにいるのは、ほんの僅かな意識 残留思念
兄「だ…だからって、今すぐ消えるわけじゃないだろ…?」
妹「…………」
兄「は……は、まさか今すぐ消えるんじゃないだろうな」
妹「……」
兄「ふ、ふざけんな。俺はまだ、お前と話がしたい」
妹「……」
兄「ここまできちまったんだ。ここでさよならなんて言わせないからな」
妹「……ごめんね、お兄ちゃん」
兄「そ…そうだ。死後のルールが適用されない世界」
兄「つまり、俺のもう一つの世界、パラレルワールドに行けばいいんだ」
妹「…」
兄「おい妹、さっさとここからおさらばするぞ。じゃないとお前が消えちまう…!」
妹「……わたしは、お兄ちゃんを、連れ去りたくない…………」
兄「何言ってんだよ、俺自らが行きたいって入ってるんだぞ。それは『連れ去る』じゃないだろ?」
妹「……それでも、わたしはお兄ちゃんを、こんな所にまで連れてきてしまった」
妹「自分の勝手な、したいがままな気持ちで…」
兄「……」
妹「今のわたし、妖怪や悪霊と同じだ…。お兄ちゃんを連れ去ろうとした、汚れた魂を持つ悪霊だ……」
妹「お兄ちゃん……ごめんね…ごめんね」ポロポロ
兄「な…泣くなよ。泣くんだったらさっさと向こうの世界にいくぞ!」
妹「嫌だ…わたしはお兄ちゃんを連れ去りたくない…連れ去りたくない!」
兄「連れ去るんじゃない、一緒にいくんだよ!」
妹「嫌だ…嫌だ…、お兄ちゃんを連れ去りたくない、連れ去りたくない連れ去りたくない連れ去りたくない連れ去りたくない!」ガクガクガク
兄「だから…!」
妹「お兄ちゃんに……大好きなお兄ちゃんに、汚れた姿を見られたくないの!」
兄「…え?」
妹「ごめんなさい……お兄ちゃん」
妹「わたし、お兄ちゃんが好きなの…。たまらなく、大好きなの……」
兄「…妹」
妹「だから…」
妹「だから……、そんなお兄ちゃんに…」
妹「……そんなお兄ちゃんを」
妹「わたしは…」
兄「…」
カー カー
兄「あれ…」
兄「妹…?」
カー カー
兄「おい………妹」
カー カー
兄「どこだよ……」
カー カー
兄「冗談はよせよ………」
兄「なぁ…」
兄「ふざけんなよ…」
兄「中途半端に余計なこと教えて」
兄「中途半端に置いていきやがって」
兄「そんで…変に良心に戻りやがってよ…」
兄「なぁ…」
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観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄
舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減
是故空中無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界乃至無意識界 無無明亦無無明尽 乃至無老死亦無老死尽 無苦集滅道
無智亦無得 以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒無想 究竟涅槃
三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多
是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚
故説般若波羅蜜多呪 即説呪曰
掲帝 掲帝 波羅掲帝 波羅僧掲帝 菩提僧娑訶
般若心経
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妹が言う『汚れたわたし』
魂だけの妹にとって、生物の法則を無視する行為は
あちらの人にとっては犯罪のようなものだったのだと思う
『生きているものを、別世界へ連れ去る』
これは、妖怪や悪霊の行為と同じで、認められざる行為なのだと思う
妹(だから…だから……、そんなお兄ちゃんに…そんなお兄ちゃんを……)
パラレルワールドとは、自分が起こす行動と選択によって、幾千にも広がっていく世界のことである
もう一つの世界。もう一つの自分の世界
ということは、移動した先にはもう一人自分がいるわけだ
二人いる訳にはいかない
片方の自分は殺さねばならない
妹は、やはり自分の私欲で俺を巻き込みたくなかったのだろうと
『大好きなお兄ちゃんに、大好きなお兄ちゃんを殺させたくない』
あの時、妹はそう言おうとしたのだろうと
ふと思った
思うことにした
_________
____
観自在菩薩 観音菩薩は
行深般若波羅蜜多時 智慧を完成するための行いを深く実践していた時
照見五蘊皆空 存在するものの五つの構成要素である『体 感覚 イメージ 感情 思考』には、すべて実体がないと見抜き
度一切苦厄 一切の苦しみやわざわいを取り除いた
兄「……」
トボトボ
舎利子 私の声を聞くものよ
色不異空 形あるものは実体なきものに異ならず
空不異色 実体なきものは形あるものに異ならない
色即是空 形あるものはすなわち実体なきものであり
空即是色 実体なきものはすなわち形あるものである
受想行識 感覚も、概念も、意志も、認識も
亦復如是 また同様に実体がない
兄「…」
トボトボ
舎利子 私の声を聞くものよ
是諸法空相 この世のすべてのものには実体がないという性質がある
不生不滅 生ずることもなく、滅することもなく
不垢不浄 汚れることもなく、汚れなきものでもなく
不増不減 増えることもなく、減ることもない
是故空中無色 それゆえ、実体がないという中においては、形はなく
無受想行識 感覚も、概念も、意志も、認識もない
無眼耳鼻舌身意 眼も、耳も、鼻も、舌も、身体も、意識もなく
無色声香味触法 形も、音も、匂いも、味も、触覚も、法則もない
無眼界乃至無意識界 眼に映る世界もなく、精神の世界もない
無無明 迷いもなく
亦無無明尽 迷いがなくなることもない
乃至無老死 老いや死もなく
亦無老死尽 老いや死がなくなることもない
無苦集滅道 苦しみも、苦しみの原因も、苦しみをなくすことも、悟りへの道もない
無智亦無得 知ることもなく、何かを得ることもない
兄(……)
トボトボ
以無所得故 何も得るものがないからこそ
菩提薩捶 悟りに至る者は
依般若波羅蜜多故 智慧を完成しているがゆえに
心無圭礙 心にとらわれるものがない
無圭礙故 心にとらわれるものがないがゆえに
無有恐怖 恐怖におののくこともなく
遠離一切顛倒夢想 一切の倒錯した想いから遠く離れ
究竟涅槃 究極の平安の境地に入っているのである
三世諸仏 過去、現在、未来の悟りの境地に至る人は
依般若波羅蜜多故 智慧を完成しているがゆえに
得阿耨多羅三藐三菩堤 この上もなく正しい悟りの境地に到達するのである
故知般若波羅蜜多 そして知るがよい、智慧の完成とは
是大神呪 大いなる神聖な言葉であり
是大明呪 大いなる悟りの言葉であり
是無上呪 無上の言葉であり
是無等等呪 無比なる言葉であり
能除一切苦 すべての苦しみとわざわいを取り除く
真実不虚故人 偽りなき真実であることを
説般若波羅蜜多呪 その言葉は智慧の完成の境地において、このように説かれた
即説呪曰 すなわち
羯諦 いきて
羯諦 いきて
波羅羯諦 悟りの彼岸にいきて
波羅僧羯諦 悟りの極みにいきて
菩提薩婆訶 悟りよ幸あれ
般若心経 ここに、智慧の完成に至る者の心を終える
兄「そうだ…」
兄「生きていれば、また妹に会えるかもしれない」
兄「前に行けば、またどこかで妹に会えるかもしれない」
兄「この世界は」
兄「人間(ひとはざま)は、すべての世界に通じている」
兄「だったら、妹に会えるかもしれない」
兄「そうだ」
兄「俺は妹に会うまで帰らない」
兄「ここで、見つかるまで探し続ける」
兄「絶対に見つけ出してやる」
兄「それで」
兄「妹に一発、かつを入れてやるんだ」
トボトボ
ここは何時まで経っても夕方
何時まで経っても空が赤い
早く家に帰らなければいけないような
いつまでもここに居てはいけないような
寂しいような
気になる
支援支援
どや顔で「人間(ひとはざま)」とかやめろ
みんな知ってるよ
>>79
鏡見てろアホ
お前みたいなレスがあると興ざめするんだよ
カー カー
巫女「あの」
兄「ん?なんですか」
巫女「えと、この世界って、一体何なのでしょうか」
兄「さあ。よくわかんないです」
兄「バスや電車の中は全然人が乗ってないし」
兄「街にもほとんど人がいない。その人というものもぼやんと霞んでて透明で、話さない」
兄「それに、何日経っても夕方で」
巫女「はあ」
兄「そういうあなたは何者?」
巫女「あ、わたくし神社に仕えております、巫女と申します」
兄「ふうん」
巫女「あの、私、貴方様と行動をを共にしてもよろしいでしょうか」
兄「いいですよ。俺もちょうど連れが欲しかったところだし」
巫女「ありがとうございます」
兄(俺が会うはずだった、知り合いか何かかな)
兄(…まあいいや。不思議と嫌な気分じゃない)
トボトボ
テクテク
カー カー プープー トウフハイカガ?
お姉ちゃん「ちょっと、そこの二人」
兄「あ」
巫女「はい」
姉「あんたたち、ここが何なのか分かる?」
兄「いや。まったく」
巫女「私達も、そのことについて話していたところなのです」
姉「ふうん。目的は?」
兄「行方不明の妹を探す旅です」
姉「旅?」
兄「はい」
姉「じゃあ、そっちの美人な巫女さんは?」
巫女「私は、兄さんのお手伝いをしているのですよ」
姉「ふうん」
姉「ところであんた」
兄「あ、あい」
姉「あんた、あたしの弟にそっくりね。末の妹にもちょっと似てる」
兄「いや、俺に姉はいないです。さっきいった妹が一人だけで」
姉「えー、そんなことないと思うんだけど。本当にそっくりよ?と言うより本人ね」
兄「いやぁ」
兄(俺の姉にあたる人物なのだろうか。向こうでは三人きょうだいってことなのか?)
姉「ねえ。わたしもその妹ちゃん探し、手伝ってもいいかしら」
兄「それはまたどうして」
姉「だって他に人いないし。妹ちゃんの顔もそっくりかもって気になりだしたから」
巫女「兄さん。ここはお仲間になっていただきましょう。旅は道連れ世は情けと申します」
兄「そうですね。いいよ、姉さん」
姉「ありがとー」
この世界は豆腐売ってるのかw
④
ひとはざま
どうやって行くのか
昼と夜のはざまのじかんに、死にたいと思ってそとをほっつき歩けばいい
姉「で、これからどこいく~?」
巫女「そうですね。私暫く歩いていたものですから、できるだけ歩きたくないというのが本音です…」
巫女「わがままを言うようで、申し訳ありません」ペコペコ
兄「いやいや、俺もほっつき歩いてたんで同じですよ」
姉「あたしも。あぁ疲れた」
こういうの一回は考えるよな
すごく好きです
巫女「えと、電車やバスでどこか遠くに行くのはどうでしょう。これなら足を痛めることもありませんよ」
姉「お、いいわねそれ。弟はどう?」
兄「兄です」
姉「いっけない、素で間違えた」
兄「まったく」
巫女「ふふふっ」
姉「遠くまで行くのはいいけど、どのあたりまで行くのよ」
巫女「行けるところまでですよ」
兄「だな」
姉「うーむ、行けるところまでかー」
巫女「はい。ずーっと、ずーっと、遠いところまで」
巫女「帰ることを考えず、考える必要がなくなるほど、ずーっとずーっと、遠くへです」
兄「なんだか、わくわくするなぁ」
姉「そうね。あぁ、早く行きたい~」
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
姉「うおぉぉ見て弟!二段ベットがついてる!」
兄「兄です」
姉「いかんいかん。兄くんだったわね」
ガサゴソ
姉「見ろ弟!uno見っけたぞ!」
兄「うわぁ~すごいおねいちゃ~ん」
姉「いかんいかん。兄くんだったわ」
巫女「姉さん。うのってなんですか?」
姉「unoっていうのはなんだろ…ああ、処理に徹底したババ抜きみたいな感じのカードゲームよ」
巫女「カードゲームですか。私その手のものは花札くらいしか知らないのですが…」
姉「大丈夫よ。やってれば勝手に覚えてくくらい簡単なルールだから」
巫女「まぁ。それなら、私も頑張れそうです」
兄「いっちょやるか」
姉「おうよ、おt…兄くん、巫女さん!」
あがり!
姉「うがぁぁぁまけたあぁぁ!」
兄「ふっ…甘いな姉さん」
巫女「ふふふ、何だかコツが掴めてきました」
姉「コツって…一番最初に挙がったの巫女さんじゃん」
兄「んだ。思った異常に強かったなー」
巫女「私の中の何かが目覚めたのかも知れません」
山田舎の駅
カー カー
兄「さて、ここからどうしよう」
巫女「電車はここまでですし、バスも数時間に一本ですね」
兄「まいったな」
巫女「ええ…」
姉「ねーねー二人とも、ここにキャンプ場があるよー…!」
巫女「あら?」
兄「ほおお。結構な量のキャンプ道具だ」ゴソゴソ
巫女「これらは、みなレンタル用のものなのでしょうか」
姉「でしょうな」
兄「ちょうどいいや。ここにあるもの全部借りていこう」ゴトン
姉「ええ。この先宿があるとも限らないし、もしもの時には便利だわ」
巫女「備えあれば憂いなし。とも言いますからね」
兄「よし。それじゃあ二人共、これを外に運び出すのを手伝って」
巫女「はい」
姉「ほいさー」
カナカナカナカナ… リーンリーン
姉「よいしょーっとぉ!」ドサッ
巫女「ふう、キャンプ道具というものは、思った以上に重たいものなのですね」
姉「そうねー。特にこのテントの骨組みが異常なほど重いわ……くっ」
巫女「うふふっ」
姉「ところで弟はどこにいった?」
巫女「兄さんでしたら、ほら、そこに」
姉「んー?」
兄「おーい、ここにワゴン車があるぞ~」
兄「この中で運転できる人、いるか?」
巫女「え、えと…私は、お車の免許は持ってません」
姉「おー、あたしなら持ってるわよ。免許」
兄「宜しくお願いします」
姉「えー!あたしが運転すんのー!?」
兄「俺が運転してもいいっすけど、事故には遭いたくないでしょう?」
姉「ぐっ……いやだ」
巫女「姉さん。お車の運転を、よろしくお願い致します」ペコリ
姉「うぐぐ…そんなふうに丁寧にされると…」
兄「どうか」
姉「……」
姉「言っとくけど、あたしワゴン車みたいな大型車を運転したこと、一度もないからね?」
兄「無免許よりはましっす」
巫女「…」コクリ
姉「……ええい、どうなってもしらんぞ!」バタン
兄はなんか独特の喋り方だな
カー カー
ブゥゥゥン
姉「ぐっ…車体が重い。大型車だからかしら…?」
巫女「おそらく3人乗りなのと」
兄「キャンプ道具のせいかと」
姉「き、気が気でないのですが」ガクガク
兄「大丈夫大丈夫」
巫女「車は私達だけです」
ブゥゥゥン
姉「だいぶ登ってきたけど、ここどこよ?」
巫女「ええと…ナビによるとここは……」
巫女「五蘊だそうです」
姉「ごうん?聞いたことない名前ね」
カナカナカナ…
兄「今日はこの辺りで一休みだ」
姉「っはー…疲れた」ドサッ
巫女「大きな神社ですね。ここ」
兄「巫女さん。ここは一発奉納の舞を」
巫女「そ…そそそそんな!人様に見せられるほど見栄えはよくありません…っ!」
姉「またまたぁ~。恥ずかしがらずにほーらほら」
巫女「また今度!また今度にしましょう!ええ!」
兄(なんだつまらん。ハァハァしたかったのに)
焚き火「パチパチ、メラメラ」
姉さんと一緒に、テントを組み立てる
巫女さんは、炊事をしている
あいかわらず空は真っ赤
姉「ほら弟。そこはしっかり支えてないとダメでしょう!」
兄「ぐぐ……いがいと辛いんです姉さん」
姉「何を言ってるの、男でしょう!ほら、こっちが紐引っ張るからしっかり支えてなさいよ」グググ
兄「あわわわわわ…」グラグラ
巫女「皆さん、お米が炊けましたよ」パタパタ
姉「おっ、いいにおい~」
兄「はぁ…はぁ…。姉が欲しいと思ったことはあるけど、やっぱ妹が一番だ…」
姉「なんか言った~?」
兄「いや。なんでも」
巫女「ふふ。お味噌汁もございますよ」
兄「うまい」
姉「やるわね巫女さん」
巫女「こう見えても花嫁修業を受けていた身なのでございます」
兄「花嫁修業……より良い嫁に育て上げるための大人の性教育とかですか」ハァハァ
巫女「ふぇ!?」
姉「…」バキャッ
兄「ぶえーっ!!」
パチパチ メラメラ
巫女「して、兄さんの妹さん探しのことですが」
兄「あ。はい」
巫女「兄さん自身、なにかお心当たりなどはございませんか」
兄「心当たり?」
巫女「はい」
兄「それはどういう?」
巫女「そうですね。ここになら妹がいるかも。とか、ここになら居そうだ。とかです」
姉「そういうのがあれば、当てずっぽうにウロウロするより確実だと思うんだけど」
巫女「ええ。出来れば、確固たる確信がほしいところです」
兄「うーん」
巫女「…」
姉「なにかないの?よく二人でここいったとか、ここは二人の思い出の場所だ、とか」
兄「………」
兄「そうだなぁ」
兄(妹との思い出の場所…)
兄(…)
兄(母さんが生きてた頃に連れていってもらった、旅行先とか……かな)
兄「うーん」
巫女「どうです?」
姉「なんか思いついた?」
兄「えっと…妹と一緒に行った旅行先なら」
姉「ほぉほぉ……」
姉「なるほどね。そういうとこなら、思い出の場所として深く心に刻まれるわね」
巫女「もしかしたら、そこで妹さんが彷徨っているかも知れません」
姉「その人にとって深く印象に残っているのなら、そこでどうにかなってるかも知れないわ」
兄「……」
兄(ひとはざまは、全てが入り交じっている?)
妹(そう。全てが入り交じっているから、私のようなものが入ることもできる)
妹(全てが入り交じっているから、五万とある他の世界ともつながっているの)
兄「……」
兄(妹が消えた後、どこに行ったのかは分からない)
兄(でも、全てが入り交じっているのであれば、妹が行ったところにも繋がっているはず)
兄(妹と関連のある場所へ行けば、そこに何かがあるかも知れない)
兄(少なくとも、全く関係のない場所よりは可能性があるはず)
兄「……」
巫女「…兄さん?」
兄「え?」
姉「なによ、急に黙り込んじゃって」
兄「あ、いや、考え事してただけです」
④
ジジジジ… カナカナカナ
ブゥゥゥン
姉「ふぁぁあ……」
巫女「あ、姉さん。居眠り運転は絶対にしないでくださいね」
姉「んなこといわれたって~。一日中夕方なんだもん。眠れないわよ~」
巫女「あわわ……と、止めて下さい、お車をとめてくださいぃぃ…」ガクガク
姉「眠くなったらね~」ファァ
巫女「……」ガクガクガクガク
姉「で弟。昨日言ってた思い出の場所、どこだっけ?」
兄「あ、えっと、静岡県の土肥金山です」
姉「金山か。確かに印象に残るわね」
巫女「何と言っても、金ですからね。印象は大きいものでしょう」
姉「ふむ、どれどれ。ここはナビさんの出番かなー」ポチポチ
兄「……!」
兄(なんだこれ…日本地図が、まるで鏡に映したみたいに)
グワングワン
兄「…!」
兄「……うえっ」
巫女「? あ、兄さんどうしました?」
兄「い、いや…なんか気持ち悪く」
巫女「ええっ…!」
姉「ちょ、ちょちょちょ!吐瀉物は窓の外にお願いーっ!」
キキキキーッ
カー カー
ブゥゥゥン
姉「ま…まったく。驚かせやがって…!」ペチ
兄「すいません、もう平気っす」
巫女「ふふ。もしもの時のために、今度からはビニール袋を用意しておきましょう」
姉「ええ。あたしもいつ体調悪くなるかわかんないわ」
巫女「備えあれば憂いなしです」ガサゴソ
兄「……」
兄(これ、もう東京じゃないじゃん。西京じゃん)
巫女「あ、皆さん」ゴソゴソ
兄「はい?」
姉「んあ?」
巫女「ほら、見て下さい。車から観光ガイドの本が出てきましたよ」
姉「へえー観光ガイド。巫女っち、ちょっとあたしに見せてくれる?」
巫女「か、構いませんが…前方にだけは注意してくださいね?」
姉「あいよー」ヒョイ
キュキキキッ
姉「わっと」
兄「うわっ!」
巫女「きゃ!?」
姉「あちゃーいかんいかん、ちょっとハンドル操作をミスした」テヘペロ
巫女「…もうっ、いいです私が運転しますから!!」
兄「巫女さん無免許でしょうに」
巫女「こう言っては姉さんに大変失礼なのですが、自分の腕のほうが信用できるに値する気が致します!」
姉「ななな、このワゴン運転しにくいのよ!?」
巫女「ですが、いつ崖から地球の中心核に引きつけられるのかと気が気でない時間を過ごすよりも自らが運転という行為に怯えるほうが何百倍も
姉「言っとくけど車の運転ってーのはそこらのゲーセンにあるような玩具仕様の子供だましな座席に座っているよりもはるかに
兄「イイヨーイイヨー!俺的にはそのまま絡みつくようなキャットファイトが見られればなんでもイインダヨー!!!」
姉「ゴキャッ」
兄「うわあぁぁぁ腕が再来年の方向にぃぃぃぃ」
ブルルン ブゥゥゥン
兄「えーそもそもね、我々の目的は妹を探す、これなんですよ」
姉「ぐっ」
巫女「申し訳ありません。綺麗さっぱり忘れておりました……」ペコペコ
兄「まあ、俺自身も忘れてたんですけどね」
姉「おいこら」
兄「でもまあ…見つけろと妹に言われたわけじゃないんで、ゆっくりなペースでも全然問題無いんです」
姉「独り善がりか…」
兄「そんなもんです。実際の所は」
巫女「でも、このまま何もせず彷徨い続けるよりはうんといいと、私は思いますよ」
姉「そうよね。生きたまま空虚に歩くのはもうごめんだわ」
兄「…例え妹が見つからなくても、何も得られないってことはないと思うんです」
兄「二人との楽しい思い出が残りますし」
巫女「! そ…そんな…///」イヤイヤ
姉「あ、あたしの弟はそんなこと言わないはずなんだけどっ。おかしいわ…!」///
兄「だから兄ですって」
姉「そっそれよりも!伊豆行く経過でここに行ってみない?」パラッ
兄「お……鎌倉の鶴ケ岡八幡宮っすか」
巫女「なかなかいいところですね」
姉「でしょ?行ってみる?」
兄「はい。ちょっとした寄り道ってことで」
巫女「私も賛成です。鶴ケ岡八幡宮」
姉「うっしゃ、それじゃあ鎌倉に向けて時速95キロで!」キュキキキ
巫女「ひゃぁぁやめて降ろしてぇぇ」
山の合間から海が見える
夕日も見える
まるで血の海真っ赤な海
妹の血を垂れ流したようだ
姉さんは主よ、人の望みの喜びよを聴く
巫女さんは俺の話を聞いて笑顔で言葉を返す
ふたりとも綺麗だ
ふたりがふたなりに見えた
カー カー
ブゥゥゥ
姉「ほーら弟、海が見えてきたわよ~」
兄「本当だ。きれいだ」
巫女「まるで水彩画のようですね。美しいです」
姉「どこまでが空で、どこまでが海面なのか分からないわねぇ」
カナカナカナ…
鶴ケ岡八幡宮
参道を行くと涙を流した大仏があった
優しい
兄「大仏だ」
姉「大仏ね」
巫女「ありがたや…」
カー カー
兄「これを見て下さい」
巫女「これは…木刀ですか?」
兄「はい」
姉「なーによこれ。あたしと一発勝負するってわけ?」
兄「あ、いや」
姉「いいわその挑戦受ける!さって薙刀はどこだ~?」ウロウロ
兄「まってぇぇぇぇ」
カナカナカナ…
兄「これ、いつだかにここで買ったんです。友人と」
巫女「そうでしたか」
姉「ちゃんばらはしたのー?」
兄「しました。年甲斐もなく」
巫女「ふふ」
姉「そうかそうか~」
姉「ちゃんばらにはなんとも言えぬ魅力があるわよね」
兄「はい。いつになってもやめられそうにないです」
姉「あたしとやるか?」
兄「い、いいっす。姉さん薙刀経験者っぽいし」
姉「ご名答~!」
姉「というわけで早速しょうぶ!」
兄「あいやいやいや」
巫女「うう、私は武術を身につけていません。私だけ蚊帳の外でございますか…」
兄「ややっ、巫女さんの涙が。(採取採取)」
姉「あららそんなことないわよ。ホラホラこっちへおいで」
巫女「あうぅ、姉さぁん」
姉「はいはい、よしよし~」ナデナデ
巫女「はぅぅ…///」
兄「うほほっ、カメラはどこじゃカメラは」ウロウロ
姉「ギロリ」
兄「あぁー大仏撮りてぇー」
カー カー
ミンミンミン リリリリーン
姉「さって、食うもん食って見るもん見たし。そろそろ次へと参りますか」
巫女「えっぷ」
兄「巫女さん、思った以上に大食いなんすね」
巫女「あわわ…見られてしまいましたか」
ブゥゥゥン
姉「おかーをこーえ、ゆこーおよー」
巫女「くちーぶえーふきつーつー」
兄「^@・。@△☓「[]い、あおーぞらー
伊豆
山がいっぱいで綺麗
海が見える綺麗
崖がいっぱい綺麗
夕日がなんともいえぬ美しさ
全てが反射し全てが自分でそのまま歩いていってしまい帰れない
愚かだったな
妹は居ないよ
土肥金山
カナカナカナ…
山には穴
あちこちが掘られ暗く
それらは俺を見据える
静かでどこも変わらない
俺は気づいた
妹はいない
すべてに気付いた
カー カー
兄「いましたか?」
姉「居ないわ」
巫女「ところそれといった人物は居ません」
兄「わかってましたよ」
姉「じゃあ、どうする?」
巫女「もう、ここでの目標は失ってしまいました」
兄「もうやめます」
姉「え?」
巫女「やめる?」
兄「やめます。この世界はもういい」
兄「その代わりに、巫女さんと姉さんが居た世界に行きます」
姉「ほんとうに?」
巫女「ほんとうに、私達の世界に来てくださるんですか?」
兄「ええ」
兄「だって姉ちゃんたち、俺を向こうへ連れていきたいんだろ?」
巫女「…」
姉「…」
兄「巫女さんは俺の従姉」
巫女「…」
兄「あねさんは俺の実の姉だ」
姉「…」
兄「もう一つの世界で死んだもう一人の俺
その現実が嫌だから、もう一人の俺であるこの俺を探しに来た
巫女「……」
穴埋めのために
そもそもこのひとはざまは、俺のもう一つの世界の空間が垂れ流しになって出来た、曖昧な世界だ」
兄俺や妹のような元の世界の人以外は、薄く霞んだもやにしか映らない
姉「…」
兄「「だけど、向こうから直接こっちに来た姉ちゃんたちは、今みたいにくっきり映ってる
兄「ここに直接居るから」
兄「いくつにもわかれた枝の先を、一番に走っている俺の元の世界」
巫女「…」
兄「それ以降の世界になると、下に行くにつれて空間同士の境目が曖昧になっていく」
兄「だから姉ちゃんたちは、こんなふうに簡単に俺の世界に入ってこれたんだ
姉…」
兄死後のルールがない、もう一つの世界。
空間への秩序が甘い、もう一つの世界
もう一人のおれがしんだ、もうひとつの世界
兄「姉ちゃんたちはここの世界の人間じゃない。俺を連れ去りに来た異界の者」
異形
巫女「……」
姉「……」
姉「ふふ」
巫女「ふふふふっ」
姉「うれしい」
姉「うれしい」
姉「生きてるの」
姉「おとうとが」
生きてるの
巫女「弟くん…」フラ
兄「…」
巫女「弟くん…」
巫女「生きている」
巫女「弟くん」
兄「…」
巫女「体が温かい、弟くん」
兄「…」
巫女「目が私達を見る。眼球が動く弟くん」フラフラ
巫女「お姉ちゃん、ずっとずぅーっと、弟くんに会いたかった」
兄「…」
巫女「だから、姉さんとここまで来たんです」
姉「そうよ。
眼球が動く、
体が温かい、
わたしの
かわいい弟」
兄「…」
巫女「弟くん……」ギュ
兄「…」
巫女「はぁぁっ……、弟くぅん」
姉「弟」
兄「…」
姉「あたしたちと一緒に、向こうの世界へ行きましょうよ」
兄「…」
姉「この世界はもういい」
姉「前の世界ももういい」
姉「すべてを忘れ、すべてを捨て」
姉「すべてをあたしたちに委ねて。
巫女「向こうの世界で…弟くんをまっています」
母が
妹が
姉「あんたか探してた妹ちゃんが、待ってるのよ」
姉 辛いことなんてない」
巫女 悲しいことなんてありません
姉「みんなあんたを待ってる
巫女 みんな、弟くんに会いたがっています
弟 …
姉 だから…おとうと
「私たちと一緒に」
「あっちの世界へ行きましょう?」
弟「 」
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::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::
「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
「とりもどした!!とりもどしたとりもどしたとりもどしたとりもどしたとりもどしたとりもどしたとりもどしたとりもどした!!!」
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
「させばちがでて、はなせばくちがうごき、ちかづけばがんきゅうがうごく、わたしのかわいいおとうと!!!」
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「ひきずれ!!ひきずれ!!はなすな、もうはなすな、ひきずれ!ひきずれひきずれひきずれひきずれひきずれ!!」」」
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「あl,pkj09u-y6y8tぐおbjんkmァsgdmかあhぎっぎぎあがあっがやあああああああああああああああが」
「:;lkじゃfこgじrじぎぃhkfmbんr9えひふあうあうあああっがあああがうあああがあがあああがあああああああははは!!!」
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::::::::::::::::::::::
あああああああああああああああがっっががががあああああああああがががっっがっっがががっがああああああああ:::::
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:いいいいいいいいいいいいぎぎいいいいいいいいいいいいいいぎぎいぎぎいいいいいいいいい:::::::
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たすけてたすけてああああああああああああああああががっっっがががががががあああああああああああああああああ
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:::::っっっっっっぎいぎぎいぎぎぎがあああああああぁあああああああぎあああああっああああああああっあああああああああ
い::::::::::::::::::::::::::::
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:あああああああああああああああああああっっっっっっががっがががっががっ:::::::::::::::::::::::
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ころせ
ここはいつでも夕暮れ
そうじゃなくなった
朝ができた昼ができた夜ができた
母ができた姉ができた従姉ができた
全部元へ戻ったみたいだでも違う何かが違う
妹が違う
世界が違う全部違う
違和感だらけ
今日も気持ちが悪い
全部がずれている気持ちが悪いなにもかも
たすけて
たすけてたすけて
たすけて
|∧∧
|・ω・`) そ~~・・・
|o④o
|―u'
| ∧∧
|(´・ω・`)
|o ヾ
|―u' ④ <コトッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ミ ピャッ!
| ④
これで終り
夕暮れは綺麗だけど怖い
コワイ
乙!
こええええ乙
おいおい猟奇エンドかよ…
兄に救いはないんですか(´;ω;`)
たまにはホラーも、いいな
乙
こういう基地外のフリしたようなやつの何が面白いのか分からん…
うーん、乙
俺は好きだけどな。乙
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