自分で書け

勇者「そもそもなんでこの平成の世に魔王なんだよ！」

勇者「しかも勇者くじ引きで決めるとかアホかあの首相は！」

勇者「せめて女神に選ばれたかったわ！」

勇者「大体自衛隊とかそういうのどうした！」

勇者「あ～！！俺今年受験だったのに何でこんなことに！！」


みたいな感じでｵﾅｼｬｽ！

>>3
君ならやれる
頑張るんだ

( ・∀・)わくわく

勇者「しかも装備ってこれ・・・もろコスプレじゃねぇか！」

勇者「さっきから町の人には白い目で見られるし・・・」

勇者「剣にいたってはちゃんと支給されたものなのに職質されたぞ！」

勇者「渡された金も５００円だけとかアホか！」

勇者「腹へってコンビニ行ったらなくなったわ！」

勇者「・・・しかもその先の金は自分でどうにかしろ?だぁ？」

勇者「モンスター倒して出てきたコイン今は使えねぇよ！」

勇者「魔王討伐なんて誰が行くか！！」


勇者「・・・でもすっぽかしたら懲役２０年だっけ？」

勇者「畜生！あの首相いつもは曖昧に言葉濁すくせに今回に限って思い切りやがって！！」

乗っ取るまーす

勇者「魔王討伐なんて誰がいくか！」

王様「……それでは困るのだ。考えを改めてはくれぬか？」

勇者「嫌だね」

王様「すまぬ、聞こえなかった。もう一度申してくれぬか」

勇者「俺は魔王退治には行かない！」

王様「大臣、静かに。もう一度言ってくれ」

大臣「えっ」

勇者「だから、行・き・ま・せ・ん！」

王様「すまぬのう……年のせいかよく聞こえなかったのじゃが」

勇者「………………ボケ老人……」

王様「何じゃとぉ！」

勇者「嘘だよ！やっぱり聞こえてるじゃねーか！」

勇者「大体、何で俺なんだ！人なら他にいくらでも居るだろ？」

王様「そうでもない。剣も魔法もある程度の才能がある者など中々に稀有だぞ」

勇者「ハッ、どっちも専門職にゃ劣るだろうが！」

王様「これこれ、そう自分を卑下にするでない。大丈夫、お主なら出来る」

勇者「王様……」

王様「さあ、行ってくれるな」

勇者「本気でそれで「分かりました！」ってなると思ったんですか？」

王様「何だよぉ！さっき行きますと申したであろ～う！！」

勇者「仮にも一国一城の王が駄々こねんな見苦しい」

王様「えぇいクソッ！何がそんなに不満なんじゃ！」

勇者「きつい・汚い・危険。こんな３拍子そろった頼み誰が聞くってんだよ！」

王様「んなもん今のご時世どこも対して変わらんわガキが」

勇者「ガっ……！親の老後とか心配だろ！」

王様「お主が魔王討伐に向かってくれるならこちらで世話をしよう」

勇者「俺には昔から仲の良い幼なじみが」

王様「あの娘、君の親友とデキてるよ」

勇者「えっ……？」

勇者「あぁクソぅなんか最近「俺、邪魔しゃね？」と思うときはあったけどさぁ…」

王様「さあさあ、その恨みを魔王にぶつけて来るが良い」

勇者「遠いわハゲ。八つ当たりしに行く距離じゃねえだろ？ちったあ考えろアホ」

王様「その道程で新たな恋が芽生えるかもよ？」

勇者「しばらく無理っすわ。鬱なんで今日はもう……」

王様「あ、じゃあ次いつ空いてる？」

勇者「何でそんな親しげなんだよ！」

王様「案外元気じゃん」

勇者「い、いや違いますってツッコミの才能が開花しただけっすから。自分脇役っすから」

王様「まあまあ、そう自分を卑下にするでない」

勇者「オメーそれさっきやったろ！もうネタ切れかよ！もう帰るから次回までにネタ仕入れとけよ！」

王様「おぅ……すまぬな…」

勇者「あぁ……これで帰れる……」

兵士「待ちたまえ」

勇者「ありゃ……会話聞いてなかったんですか？今日はもう帰りますって」

兵士「ですからこちらの退城届にサインを」

勇者「あぁハイハイすみませーんってこれ誓約書じゃん危ねぇな！」

王様「チィッ！惜しい！」

勇者「惜しくねーよバーカ！しつこいんだよ帰らせろジジイ！話し相手が居ねぇならまた来てやるから、な？」

王様「はぁ……全くしょうがない奴じゃ…」

勇者「やっと帰らせる気になったか……遅いんだよクソ」

王様「誰か！この輩を不敬罪で即刻引っ捕らえよ！」

兵士達「はっ！！」

勇者「なっ、この野郎！何を言って……おい離せ！ちょっヤメ…」

王様「仮にも一国の長たるワシに何度も、そう何度もそんな口を利きおって！ワシ結構繊細なんだぞ……」

勇者「あれ？繊細ってガキっぽいって意味でしたっけ？」

王様「貴様っ、この後に及んで……！兵よ、コイツを今すぐ地下牢にぶちこめ！」

兵士達「はっ！！」

勇者「痛っ、痛いって！鎧の隙間に腕挟まってるって！そんな両サイドから抱えなくても自分で歩きますから！」

兵士小「いいやダメだ。王様から絶対に降ろすなと命令されている」

勇者「じゃあせめて人変えてよ。なんだアンタらの身長差あきらかに人選ミスだろ」

兵士大「これも王の命だ」

勇者「あの野郎……」

―――――

兵士小「着いたぞ」

勇者「そうかい。じゃ、とっとと降ろせ」

兵士大「よっ…と」

勇者「おいコラ投げ――痛ったぁ！！」

兵士小「気が変わったらコチラの誓約書にサインをしておけ」

勇者「ケッ、誰がするかよ……」

どう話進めるんだこれ

勇者「つーか、罪人に魔王討伐迫るとかどうよ？流刑かっての」

勇者「あーーもーーチクショーーー、今日一日で国を嫌いになれそうだわー……」

勇者「俺、この牢を出たら国を捨てるんだ」

勇者「なーんつってね」

勇者「あー、マジでそうすっかなー」

勇者「でも脱獄から国外逃亡まで罪人じゃーん。逃げきれるかー？」

勇者「どうにか大手を振って国外脱出をできる方法ないかねー…」

勇者「………あった」

勇者「いや……でも…これは……うーん」

囚人「うるせえ！静かに出来ねえのか！」

勇者「うわっ！すみませーん！！」

「オラッ、いつまで寝ておる」

勇者「あぁ…？誰だ、このマヌケな声」

王様「大臣じゃよ」

大臣「えっ」

勇者「あぁ、アンタか……」

王様「気分はどうかね？つっても一日程度で貴様の」

勇者「ほらよ、誓約書」

王様「その歪みに歪んだ心に劇的な変化が起こるとも――うむ？」

勇者「行ってやるよタコ」

王様「あれ？キミ双子の弟とかだったりする？ヤケに聞き分けよくない？」

勇者「本人じゃタワケ。分かったらとっととここ出せノロマ」

王様「貴様っ、貴様っ！ワシの決意するまで散々痛めつける計画をっ……！」

勇者「行って欲しいのか行って欲しくないのかどっちだよ……」

勇者「ほらいつまでもこんな茶番してないで早く出せ」

王様「もうしばし待て」

勇者「んだよ嫌がらせならそっちのオッサンにしてろよ…」

大臣「えっ」

王様「貴様がこんな直ぐに決意すると思っとらんかったからまだ準備ができとらんのじゃよ！」

勇者「準備？お前の心の準備か？現実受け止めろ小心者」

王様「旅立つ貴様に渡す物資の量とかまだ決まってねぇんだよ……」

勇者「お前に俺に物資くれる気があったのか。超お人好しだなっ！！」

王様「こっちにも建前とかいろいろあるの！それぐらい察せよ！！」

勇者「お前の見栄とかどうでもいいよ。いいから牢から出せ」

王様「あと一日待っとれよ気の短いやっちゃな。何かあんのか？」

勇者「それは……ほら、アレだよ。親に別れの挨拶とかさ……出発直前じゃ色々あれだろ？」

王様「貴様に親を尊ぶ心なんかあるのか？実はマザコン？」

勇者「こんだけ心込めて話し相手してやってるだろ？そっちこそ心無い人間ってヤツだよね？」

王様「今、心の底からイラついておるわ」

勇者「へー」

王様「ムカっ！あーもう、とにかく明日まで待て。直ぐに城から追い出しちゃるわい！」

勇者「自分でムカとかいうなよキモイなぁ…」

王様「もうっ！もうっ！！」

勇者「クソッほんと使えねえなあのタヌキ。起こしといて明日まで待てとか何様だよ」

勇者「つーか腹減ったなあ……飯はまだか気の利かない…」

勇者「そもそもに窓が無いから時間が分からん……今どれくらいだ…？」

勇者「………囚人用の飯とか美味くないんだろうなぁ……」

勇者「見栄を張るならせめて客間にでも通せよ。こちとら勇者様だぞ…」

勇者「勇者が前科持ちってショボいなぁ……」

勇者「消してくれるよう、強請ってみるかぁ……」

勇者「………」

勇者「zzz…」

私怨

支援

「キミ、起きなさい」

勇者「んぁ…？なんだ、もう一日経ったの？」

兵士「いえ、そうでは」

勇者「んじゃ何の用よ？」

兵士「食事を出したくないから一旦家に帰せ、と」

勇者「あのケチ……」

兵士「それと」

勇者「もういいよ飯食いに帰るよアンタも俺に嫌がらせするよう命令されてんのか！！」

―――――

勇者「クソッ！何だあの野郎どこまで陰険なんだよ！！」

「あの、すみませんが」

勇者「ああえっとはい？」

「あなたが勇者様ですね？」

勇者「へっ？」

――酒場――

勇者「―――ええっと、つまり…」

賢者（女）「はい、王の勅命によりあなたの旅に同行させていただく、ということです」

勇者（女はしばらくいいっつったろ………ああだからか）

勇者「そっか。よろしく」

賢者「恐れ入ります。……あのそれでなのですが、実はもう一人」

「―――すまない、待たせたな」

賢者「遅いですよ！まったくあなたは……」

勇者「その格好…戦士か」

戦士（女）「そうだ。よろしく頼むよ」

勇者（……あの野郎はこっちのモチベーションとかを考え、た上でこれか）

勇者（それに王の勅命ってことは……監視も兼ねてるのか？セコイな）

戦士「ん、どうした？考え事か？」

勇者「えっ、あっああ、よろしく」

>>10 訂正

勇者「魔王討伐なんて誰がいくか！」

王様「……それでは困るのだ。考えを改めてはくれぬか？」

勇者「嫌だね」

王様「すまぬ、聞こえなかった。もう一度申してくれぬか」

勇者「俺は魔王退治には行かない！」

王様「大臣、静かに。もう一度言ってくれ」

大臣「えっ」

勇者「だから、行・き・ま・せ・ん！」

王様「すまぬのう……年のせいかよく聞こえなかったのじゃが」

勇者「………………ぃきぁす……」

王様「よし来た頼んだぞ！」

勇者「嘘だよ！やっぱり聞こえてるじゃねーか！」

改めて>>27から

勇者「じゃあ、顔合わせも済んだことだしまた明日、城で」

戦士「そうか。では明日に」

勇者「………で」

賢者「………」

勇者「たしか、あの人と一緒に城に部屋が用意してあるんじゃないの？」

賢者「それはそうなのですが…」

勇者「ですが？」

賢者「これから苦楽を共にする仲間として、早く心を通わせねばと思いまして」

勇者「……………あ、そう」

賢者「たとえあなたが、魔に対抗すべく作られた冷酷無比な人造人間であったとしても！」

勇者「……一応聞くけど、その話誰から聞いた？」

賢者「それは、王からですが……」

勇者「やっぱりかあのホラ吹き野郎……」

勇者「というかアンタそれ信じたの？」

賢者「と、言われますと…？」

勇者「俺、人造人間じゃないからね？」

賢者「あら？で、ではもしかして、ジョークだったのでしょうか？私てっきり……」

勇者「ジョ……まあ、うん」

「やあやあ、勇者様」

勇者「ゲッ」

親友「聞いたぞ。お前、魔王討伐に向かうことにしたんだってな」

勇者「出来ればお前には会いたくなかったよ……」

親友「おいおいヒドいな。何も言わずに旅立つつもりだったのかよ」

勇者「そう……なりますかね」

親友「ハッハッハ、不安がらせたくなかったってか？そんな寂しいこと言うなよ！」

勇者「ハハハ……すまんね」

幼馴染「あら？」

親友「ほら、お前も来いよ！勇者様が旅立ちの挨拶に来てるぞ！」

勇者「うっ……おぅ」

幼馴染「え？あっ！もう出ちゃってたかと思ってたわ！もう～」

勇者「あっ、はい、出発明日なんで、すみません…」

幼馴染「さっきまで２人して街中探し回ってたのよ？」

親友「そうそう！しかも結構外れの方までだぜ？」

幼馴染「そしたらさ、結構綺麗な景色の場所見つけちゃってね」

親友「何かそれ見てたら急に寂しさがこみ上げてきてさぁ！」

幼馴染「それで２人してワンワン声上げて泣いちゃったの」

親友「もう肩とか抱き合っちゃってさあ」

幼馴染「い、今思い返すと恥ずかしかったねあれ…周りに誰も居なくて良かった」

親友「そ、そうだな…ハハハ」

幼馴染「フフッ…ウフフッ…」

勇者（…………帰りたい……）

勇者「疲れた……」

賢者「あのお二方は勇者様の友人ですか。とても仲が良かったですね」

勇者「そーだね……」

―――――

勇者「母さん、ただいま」

母「おかえりなさい。聞いたわよ、あなた魔王を…」

勇者「あぁ、うん。今そこで友達とも話したよ」

母「自分の意志で決めたことなら、私も応援してるからね」

勇者「あ、ありがとう」

母「ところで、そちらはどなた？」

賢者「こんばんは、お母様。私は王の命で勇者様の旅に同行することになった――」

母「まあ、そうなんですか…！こんな子ですが、どうぞよろしくお願いします」

賢者「いえ、そんな！私の方こそ不束者ではありますが―――――」

母「あらあら―――――」

勇者「お、俺もう休むよー…」

勇者「何だろう……逃げる気で居るのが少し」

勇者「も申し訳なくならないな。せめてもうちょっと引き留めようとするとか無いのかみんな」

勇者「相手は魔王だぞ？勝てるかどうかも分からないんだぞ？」

勇者「そもそも魔王の元までたどり着けるかもさぁ……」

勇者「まいいや。俺には関係の無い話だしな～」

勇者「それにしても問題はあの２人だ。俺にやる気が無い事を知ったらどうなるんだろう…」

勇者「まあ、それは国を出てから考えるとして――」

賢者「勇者様」

勇者「うわぁおっ！！何！母さんが空いてる部屋あてがってくれたんじゃなかったっけ！」

賢者「いえ、それは丁重に断らせていただきました」

勇者「そうなの？で、なんで俺の部屋に来たの？」

賢者「これから長い旅路を行く仲間として、寝食を共にすることに早く慣れねばと思いまして」

勇者「え、じゃあ何？君もここで寝る」

賢者「もちろんです！たとえあなたが人造――」

勇者「君さっきまで俺の母さんと会話してなかったっけ？」

>>34 訂正

× 勇者「え、じゃあ何？君もここで寝る」
○ 勇者「え、じゃあ何？君もここで寝るの？」

支援age

賢者「そういうわけなので、失礼します」

勇者「ああ、ベッド使う？どうぞどうぞ」

賢者「……？どこへ行くのですか？一緒眠りましすよ？」

勇者「何だって？」

賢者「ですから、一緒に身を寄せ合って眠りましょう、と」

勇者「だっ、なんでそうなるのさ！いーよ俺は床で！」

賢者「お待ちください！これは、極寒の地にて布切れ一枚で身を寄せ合って寒さを凌ぐ時の事を想定していて――」

勇者「何だよそれ！どんだけネガティブな想定なんだよ！考えたくねえよそんな状況！！」

賢者「ですが！」

勇者「ですがも何も無い！アレだ、勇者たるもの常に最善をのみを考えそれを成すの！だからそんなこと要らん！」

>>37 訂正＋改訂

× 賢者「……？どこへ行くのですか？一緒眠りましすよ？」
○ 賢者「……？どこへ行くのですか？あなたも一緒ですよ？」



賢者「………」

勇者（………流石に屁理屈すぎたな。何かスゴい引かれてるわ）

賢者「素晴らしい！」

勇者「へっ？」

賢者「ああ、勇者様がその様にお考えだったとは知らず、私は、私は……」

勇者「あー……えっと」

賢者「ああいけない！私は今また最善で無い考えをしてしまっている！」

勇者「あーっと…おやすみ。明日には出発なんだしあんまり考え込まずにしっかり寝ときなよ？」

賢者「はい！お気遣いいただき、ありがとうございます！」

勇者「ああ、うん……」

母「起きなさい、起きなさい。私のかわいい――」

勇者「あぁ…母さん、おはよ」

母「おはよう。もう朝ですよ。今日はとても大切な日。あなたが――」

勇者「うーんと……ああそうか。今日旅立つんだっけ」

母「まったく…もっとしっかりしなきゃダメよ？これからしばらくは起こしてあげられないんだから」

勇者「…………そうだね」

賢者「あっ！勇者様、お目覚めになられましたか」

勇者「うん…おはよう、早起きなんだね。……何でエプロン？」

賢者「泊めて頂いたお礼に何か出来ないかと思いまして」

母「どうしてもって言うから、朝食を作るの少し手伝ってもらってたの」

勇者「ふーん…料理できるのか」

賢者「はい！旅をするにおいて、どんな技術や知識が役に立つかは分からないですから！」

勇者「そ、そう」

勇者「ごちそうさま」

母「ええ、おそまつさま」

勇者（……そういやいつ頃に城に行きゃいいんだ？アレが使者とか寄越してくれるタマか？）

賢者「勇者様？」

勇者（まあ、コイツも居るからなんとかなるだろ）

賢者「あ、あの…どうかなさいましたか？」

勇者「ん？ああスマン。……もう母の手料理を食べられないんだなと思うと、流石にちょっとね」

母「大丈夫よ。帰ってきたらまた作ってあげるから、ね？」

勇者「………うん、そっか。ありがとう」

「おーい！迎えに来たぞー！」

母「きっとお城の人ね。後は私が片づけるから、さあ、行ってらっしゃい」

勇者「…うん、行ってきます」

賢者「お母様、お世話になりました」

母「いえいえ。こちらこそ、あの子のことよろしくお願いします」

賢者「い、いえそんな私こそ――！」

―――――

戦士「やあ。昨日ぶりだな」

勇者「あー…あの野郎ちょうどいい着地点を見つけたな」

戦士「何の話だ？」

勇者「気にすんな。もう直ぐに城に行かないとマズい感じか？」

戦士「いや、まだ少しあるぞ。あれ？もう１人はどうした、一緒だっただろう？」

勇者「ああ、彼女なら……何か母さん相手に熱く語ってるよ」

戦士「あー……ああなると長いだろう」

戦士「ハッハッハ、結局ギリギリになってしまったな！」

賢者「も、申し訳ございません！私のせいで…」

勇者「あー…そんなに気にすんな」

―――――

王様「よくぞ来た、魔王討伐の命に就きし勇敢なる者達よ」

勇者「えっ………何？」

王様（オラァ貴様！魔王討伐の命に就く者を見ようと国中の者が来ておるのじゃぞ！もっと行儀よくせいや！！）

勇者（へーへー悪ぅございました）

王様「世界を滅びに向かわす魔族を率いる魔王。その討伐を成し遂げたいというそなたの願い、しかと聞き届けた！」

勇者（脅して聞き届けさせられたんだがな）

王様（さあ、なんのことであったかな？）「このままではやがて世界は魔王に滅ぼされてしまう！頼んだぞ、勇者よ！」

勇者（テメェ……）「ハイ！お任せください！」

王様「この勇敢なる若者達の旅路に、祝福があらんことを……！」

賢者（２人からの凄い気迫が伝わってくる……私ももっとしっかりしなくては…）

戦士（気迫というか……殺気？）

先はなげーな

「頑張ってー！」
「頼んだぞー！」
「無事帰ってこいよー！」


賢者「いよいよ、という感じですね。なんだか気持ちが高ぶってきた気がします」

戦士「うむ。私もだ」

勇者「見送ってくれてるみんなの眼が希望に満ちてるなぁ…」

戦士「実際、私達は彼らにとって希望なのだろう」

勇者「あー…なるほど」

賢者「私もなのですが、勇者様、もしかして緊張しているのですか？」

勇者「ハハハ…そりゃあまあね」

勇者（………）

勇者（……世界なんて勝手に背負わせてくれるなよ）

勇者（魔王討伐なんて誰がいくか！）

ところで俺ドラクエシリーズやったこと無いしオリジナル設定だから

兵士「領内の港街まで馬車を用意してあります。お使いください」

賢者「それは助かります」

勇者「２人が来てから若干待遇が良くなった気がする……あの野郎ムッツリか？」

戦士「勇者殿、どうした？」

勇者「いや、別に。それじゃ行くか」

賢者「はい、そうですね。向かいましょう」

勇者「武器屋へ」

賢者「はい！……はい？」

戦士「まったく…先に用意しておこうと思わなかったのか？」

勇者「貰える資金から買えばいいかと思って…」

戦士「しょうがないヤツめ」

勇者「すまん………っと、ここだ」

武器屋「いらっしゃい！おっ、勇者さんじゃないか！いいのあるよ！」

勇者「さて、どれにしようか」

戦士「勇者殿の体格なら、この辺りがいいんじゃないか？」

勇者「どれどれ……うん、それじゃコレで」

武器屋「まいどあり！」

勇者「さて、それじゃ」

戦士「次は道具屋へ、なんてな」

勇者「え、はい。そのつもりですが」

戦士「やれやれ…」

戦士「まあ、そんなことだろうと思って賢者に道具屋に行くよう頼んでおいたよ」

勇者「あれ、そういえばいつの間にか居ない」

戦士「門の所で落ち合うことにしてある。行こう」

―――――

戦士「おや、先に戻ってたか」

勇者「あー、ごめんその、待った？」

賢者「いいえ、私も今来たところですよ」

戦士「さて、もう寄る所もないんだよな」

勇者「ああうん。オーケー、オーケー」

賢者「では、気を取り直して……」

親友「おぉーい！もう行くのかー！」

勇者「………ハァ…」

私怨

勇者「えーっと、何か用か？」

親友「おいおい、せっかく見送りに来たんだぜ。もっと喜べって」

勇者「そうなのか、そりゃどうも。ところで」

幼馴染「ちょっとー！先行かないでってばー！」

勇者「………そりゃ居るよな、やっぱ」

幼馴染「この人、結構繊細な所もあるんで支えて上げて下さい」

賢者「そうですか。肝に銘じておきます」

親友「コイツ、ワリと考え無しなところがあるんで気をつけてやって下さい」

親友「そうか、承知した」

勇者「ちょっヤメテそういうの。あと意見統一してくれ」

戦士「とても仲が良いんだな」

勇者「そうっすね。……さて、もう行くよ」

親友「そうか…少しの間寂しくなるな」

幼馴染「絶対、帰ってきてね」

勇者「……ああ」

賢者「では、参りましょうか」

勇者「ああ、頼む」

親友「行ってこーい！勇者ぁーー！！」

幼馴染「お願いねー！！」

勇者「………っ、お前ら元気でやれよーっ！！」

勇者「街、もう見えなくなっちゃったな…」

戦士「この足なら日没までには港町に着くだろう」

賢者「着いた後は、魔の根城たる大陸まで船を出していただいて……」

勇者「そ、それなんだけどさぁ」

賢者「はい、何でしょうか？」

勇者「真っ直ぐ乗り込むってのはー…ちょっと、というかかなり無茶だと思うんだ」

戦士「では、どうする？」

勇者「だから…こう、各国を回って魔王側の勢力を削り、それから魔王を叩くってのはどうかなと」

賢者「ですが、そうなるとかなりの歳月を要するのことになってしまうのではないでしょうか？」

勇者「いや、そりゃあそうだけどさあ。真っ向から一気に乗り込むってのは無謀すぎるって」

賢者「ですが、時間をかけている間に世界が疲弊してしてしまっては―――」

勇者「でも―――！」

賢者「ですが―――！」

戦士「……ところで、この国から奴らの住処までの直通便なんて、そもそもあるのか？」

勇者・賢者「えっ？」

勇者「あー…そういやどうなんだろ。御者さーん、そこんとこ分かりますー？」

御者「………」

勇者「おーい……あれ？何か棒が」

戦士「矢だ！どこからっ！」

勇者「ちょっと！おい！」

御者「………」

賢者「駄目です……この方はもう…」

戦士「手綱は私が代わろう！くっ、この！止まれ！！」

賢者「な、何とかなりそうでしょうか…」

勇者「ありゃ？何かうっすら浮遊感が…？」

戦士「しまっ、落とし穴だっ！」

「かかった……行くぞっ！」

―――――

戦士「２人とも、無事か…？」

賢者「はい…何とか…」

勇者「痛ってえ……誰が落とし穴なんか…」

「全員、そこを動くな！」

「命が惜しけりゃ金目の物を全部置いていけ！」

勇者「……盗賊か」

盗賊ａ「どうした、さっさとしねえか！さもないと」

勇者（ここで身ぐるみはがされて逃げ帰ったらみんな諦めてくれたり……いや情けないとか言って蹴り出されそうだな）

賢者「お待ち下さい」

盗賊ｂ「あぁ？何だ？」

賢者「私達には魔王討伐という重大な使命があるのです。どうか見逃しては頂けないでしょうか」

盗賊ａ「魔王討伐？」

賢者「そうです。魔族の駆逐は私達人間皆の願い。ですからここは人間同士助け合って」

盗賊ｃ「いやいや嬢ちゃん。同じ人間同士、しかも男女だってなら他にやることがあるだろう？」

盗賊ｄ「俺等と来いよ。そうしたらもっと俺等の為になること教えてやるぜ」

賢者「分かりました、あなた方は―――」

戦士「勇者殿、伏せろ！」

賢者「―――邪魔です。消え失せなさい」

盗賊ｅ「ぁんだとこのアマぁ！！」

賢者「ギラ」

盗賊ｄ・ｅ「あっ……ぐあぁぁぁ！！」

戦士「私達も行くぞ！」

勇者「魔王討伐に出て初めて戦う相手がまさか人間とは……」

戦士「ふんっ！」

盗賊ｂ「うぎゃあっ！！」

盗賊ａ「このヤロォ！」

賢者「バギ」

勇者「うわ…人間相手でも容赦ないなアイツ等……。なあ君達、命がある内に帰ってくれよ」

盗賊ｃ「ぐあっ！くそっ！！」

賢者「勇者様！手加減などする必要などありません！」

勇者「あのなぁ、同じ人間同士もっと仲良くしろってー！！」

賢者「この者達は私達の使命を軽んじた万死に値する者達です！ですから――」

盗賊ｆ「こっ、このぉ」

戦士「もう一人居た？最初に矢を放った奴か！」

勇者「ヤバっ、危ない！」

賢者「えっ？」

勇者「がはっ！っ痛ぇ……メラ！」

盗賊ｆ「な、うわぁぁ！」

勇者（………あークソ、痛いなぁ）

賢者「勇者様！そんな、私を庇って……」

勇者（なあ、どうせ人間同士でもヤリ合うんだし…魔王討伐とか、無駄じゃね？）

―――――

勇者「うぅん……」

戦士「気が付いたか？」

勇者「うん、おはよう……ってあれ、夜？」

戦士「ハッハッハ、もう大丈夫そうだな」

勇者「……？あーそうか俺、矢が刺さって…」

戦士「怪我なら彼女が治癒してくれたよ」

勇者「そうか、ありがと……寝てる」

戦士「おや？さっきまで起きていたんだがな」

勇者「ところでさぁ」

戦士「気にするな。お前は間違ってないよ」

勇者「…………俺、腹減ったんだけど…」

戦士「おっと」

勇者「で、あの後どうなったの？」

戦士「結果だけ言うなら、全滅させた」

勇者「…………そう」

戦士「………」

勇者「……そういえば馬車は？」

戦士「流石に駄目になってた。まあ、もう港町までもそう遠くないし、徒歩でも何とかなるだろう」

勇者「ありゃ、残念」

戦士「……見張りを代わってもらってもいいか。私も少し…」

勇者「分かった。おやすみ」

―――――

賢者「むにゃ…？」

勇者「ん、起きた？」

魔物（雑魚）「きゅー？」

賢者「勇者様……おはようございます――って、ま、魔物が！勇者様、魔物が！」

勇者「あ、コレ？何かかわいいんで拾ったんだけど」

賢者「ゆ、勇者様！今すぐそれをこちらへ！たとえ力が弱くともそれは魔の眷属、成敗いたします！」

勇者「ヤダよかわいいのに！」

賢者「勇者様！」

雑魚「きーっ！」

勇者「こっコラ！お前が怒鳴るから暴れ、うわ噛むな痛い！あっ待て！」

戦士「ぅん……おや、コイツはなんだ…？朝ご飯にちょうどいいかもな」

雑魚「きゅっ」

勇者「やめてーっ！！」

勇者「こういうの好きかなと思って拾ったのに……駄目だこの人達危険すぎる。ほら、お逃げ」

戦士「面目ない…」

賢者「勇者様！昨日といい今といい、一体どういうつもり何ですか！私達は――」

勇者「大きな使命を背負ってる、だっけ？」

賢者「その通りです！たというのにあなたは――」

勇者「分ーった分ーった。俺達は分かりあえそうにないのが分かった。もうしない」

戦士「勇者殿、その言い方は…」

勇者「いいよもう。朝飯食ってとっとと出発しよう」

話進まなすぎじゃね

戦士「ようやく港町に着いたな」

勇者「………」

戦士「とりあえず昼食にしようか」

賢者「ここに来るまでに、計８匹も魔物を逃がすなんて……ブツブツ」

戦士「えーっと」

勇者「………」

戦士「あっ、未確認飛行物体！」

勇者「誰が引っかかるかそんなもん！」

賢者「えっ」

勇者「えっ…」

賢者「わ、私は、飛行する魔物が飛来して飛んでくる可能性を考えて…！」

勇者「あぁ…うん、ごめん」

賢者「あ、謝らなくて結構です！大体あれは戦士が変な事を言うから……」

戦士「ハハハ、すまない」

賢者「まったく…」

戦士「あれは跳躍している女性だな」

勇者「えっ」

賢者「えっ？」

「邪魔邪魔ー！どいてどいてー！」

戦士「おや」

勇者「痛ってぇ……港町ってのは人が空から降ってくる所を指すんだったか…？」

「あ痛たたた…どいてって言ったじゃん……」

憲兵ａ「盗人、待てーい！！」

盗人「ヤバッ！もう追いついてきた！」

憲兵ｂ「貴様等、そこの盗人の仲間か！」

戦士「いや、私達は」

盗人「はーい！その通りでーす！それじゃ後よろしく！」

憲兵ｃ「やはりか！ひっ捕らえろ！」

勇者「やはりって何だおい。ちょっ待っ――」

―――――

憲兵隊隊長「本当に申し訳ない！勇者様方を捕らえてしまうとは！部下には私からキツーく――」

戦士「いやそんな、気にしていませんから」

賢者「私達が……盗人…」

勇者「腹減った……」

戦士「ハハハ……」

―――――

勇者「疲れた……」

戦士「そういうな。昼食もご馳走になったじゃないか」

勇者「それはそうだけどさぁ。今日はもう宿で休むわ……」

賢者「いいえ」

勇者「へっ？」

賢者「こんな仕打ちを受けては黙っていられません！さっきの人を私達で捕まえましょう！」

勇者「えぇー……魔王討伐以外には目もくれないんじゃなかったのかよ…」

戦士「どうせ出航は明日だ。それまでならいいだろう？」

勇者「マジでやるの？」

戦士「彼女だけでは心配だろう？」

勇者「あー……まあ」

戦士「…これからは、やりすぎないよう気をつけよう」

勇者「えっ、ああ……」

戦士「おーい待て！私達も手伝うんだろ？」

―――――

勇者「んで、どこから探す？探すからには捕まえるぞ」

賢者「ええ、もちろんです。それでは――」

盗人「おや？」

戦士「おや」

盗人「やーやーやーさっきはあんがとね！」

賢者「どういたしまして。それでは」

勇者「お礼に、ちょっと捕まってくれ！」

盗人「おおっと！機嫌悪いねー、関わらない方が身の為だよね？バイバーイ！」

勇者「あぁクソ、待てぇ！」

―――――

勇者「アイツ、足速ぇな……」

戦士「このままでは逃げられてしまうぞ」

賢者「ならば、これで……」

勇者「待て、何を――！」

盗人「そろそろ撒いたかな？」

勇者「………」

盗人「ありゃ？まだついて来てる？意外とやるねー」

戦士「………」

盗人「っと、嘘ぉ？回り込まれた？」

賢者「………」

盗人「しまった、ここ行き止まりじゃん！あたしが追いつめられるなんて……」

勇者「よぉ！そんなとこで１人何してんだ？」

盗人「なっ！あ、アンタ達が追いつめたんでしょ！ほら、アンタ達がひーふーみー……あれ？」

賢者「幻影を見せる魔法ですよ」

勇者「端からみれば、お前は大慌てで勝手に袋小路に突っ込んで行ったように見えるってワケだ」

盗人「なっ、はめられたってワケ？」

戦士「残念だったな、もう逃げられんぞ」

盗人「だがしかし、あっまーい！」

勇者「なっ！コイツ、俺達を飛び越え――！」

賢者「逃がしません――ヒャド！」

勇者「お、お前！人相手に……ってあれ？どこに放った？」

盗人「へっへーん！当たってないよーだ！」

賢者「ええ、元々あなたは狙っていませんからね」

盗人「えっ？うわっ足下に氷がバラ撒かれて……ギャフン！」

勇者「ギャフンとか本当に言う奴初めて見たな」
盗人「おぉ、尻打った…乙女のケツに何つーことを……ちょっとお兄さん、何かなってないか見てくれない？」

勇者「とても乙女の言う台詞とは思えんな」

盗人「ぶー、女の子２人も侍らせてる癖に何か反応薄くない？」

勇者「………色々あってな…」

―――――

憲兵隊隊長「ご協力、感謝します」

賢者「いえそんな、当然の事をしただけですから」

盗人「きーっ！覚えてろー！」

勇者「お前誰だっけ？」

盗人「バカにすんなーっ！」

―――――

勇者「よーし、今度こそ休むぞー！」

賢者「すみません、お付き合いいただいて」

勇者「言い出したのは自分だろうに」

賢者「ええ、そうでしたね。すみません」

勇者「……？あー違う、変な意味はないから」

賢者「ですが……いえ、ありがとうございます」

勇者「だから気にするなって」

勇者（……どうせ、この国を出たらお別れだしな）

戦士「別にブレーキは要らなかったかもな」

賢者「あなた達は私を何だと思っているんですか……」

戦士「おっと聞かれていたか。すまない」

賢者「いいえ……多分１人で彼女を追いかけていたら、私はもっと無茶をしていたでしょうから」

戦士「……意外だな。お前が折れるとは」

賢者「あなたにまで心配されたのが悔しかっただけですよ。ですが」

戦士「何だ？」

賢者「それだけ私が間違っているということでしょう。もっと精進しなければと思い知りました」

戦士「あまり無茶はするなよ」

賢者「そうなったら止めて下さるんでしょう？」

戦士「ハッハッハ、そうだったな」

勇者「おーい、何してんだー！早く休もうってー！」

勇者「ついに国を出るのか……」

戦士「緊張しているのか？」

勇者「…まあ、色々と」

賢者「――分かりました、ありがとうございます。もう乗り込んで良いそうです」

勇者「よし………行くか」

――甲板――

勇者（……ついに国を出られた）

勇者（あとはあの２人をどうにかすれば……）

勇者（どうする？２対１じゃ―――いやいや何を考えてるんだ俺は）

勇者（……もういいや。向こうについてから考えよう）

「何か難しい顔してるー」

勇者「お前は……」

盗人「やや、また会ったねー」

勇者「誰だっけ？」

盗人「おいこら」

勇者「冗談だギャフン娘」

盗人「ちょーちょー、変なあだ名を付けるでない」

勇者「そうだ、一応聞いておくけどお前双子の姉とかいる？」

盗人「本人じゃタワケ。こんな美少女が世界に２人も居るわけなかろう！」

勇者「俺の記憶じゃ自称美少女様は憲兵にしょっぴかれたハズなんだが」

盗人「美しさって罪よね……って自称って何よ！美的感覚狂ってんじゃないの？」

勇者「分かった分かったハイハイ美人美人」

盗人「喧嘩売ってんのか！」

勇者「いくらで買う？でお前、脱走してきたのか？」

盗人「もちろんタダで、さもなくば盗む。あんな所、私にかかりゃ余裕よ！」

勇者「そいつぁ頼もしい。今度はここの船室からの脱出に挑戦するか？」

盗人「やめてー！」

勇者「見なかったことにしてやるからあっち行きなさい、シッシッ」

盗人「おや、魔王討伐の勇者様ともあろうお方がこの世紀の大怪盗たるワタクシめをお見逃しになってくれると？」

勇者「知ってたのか……どうせ密航なんだろうけど、どうでもいいしな」

盗人「憲兵さんトコの庁舎で聞いたー。こんな美少女捕まえといてどうでもいいとかヒドくない？」

勇者「自分から話しかけてきたんだろ……もしかしてナンパか？」

盗人「違わい！にしてもアレだね君は。魔王討伐なんて言ってるワリにやる気が感じられんね」

勇者「うっ……気のせいだろ」

盗人「……？まいいんだけどさ別に。魔族が居ようが居なかろうがあたしに銭が入るわけじゃないし」

勇者「そういうもんか」

盗人「いや待って！魔族が居なくなればもっと人の行き交いが増えるかも！カモがいっぱい！頑張れ勇者様～！」

勇者「うわ頑張りたくねー」

盗人「そこを何とか勇者様～」

勇者「えぇいすり寄るな鬱陶しい！船員呼ぶぞ！」

盗人「おっとっとっと…機嫌悪いねー、そういうのに効くお薬あるよー、買う？」

勇者「いらねーよ」

盗人「疲労回復、精力増強、その他色々な効果あるよ～」

勇者「胡散臭っ！本当に効果あるのかそれ！」

盗人「飲めば分かる！」

勇者「よしじゃあ……とかならねーから！」

盗人「今ならおまけしてもう１本売っちゃうよ！」

勇者「それはおまけとは言わん！」

盗人「そんなこと言わずにさー。ほら腕絡めて胸ギュッてしてあげるから」

勇者「そんな餌には釣られん」

盗人「キミもしかして女に興味無い？でも大丈夫、この薬を飲めばたちまち」

勇者「しつこいわ！」

盗人「駄ぁ目だコイツ、ケチだ。そうだ、キミのお仲間なら買ってくれるかも」

勇者「アイツら俺よりやる気に満ちてるから捕まると思うぞ」

盗人「チッ、使えねえ」

勇者「なんだろうお前、少し誰かに似てる気がするんだが……」

盗人「何それナンパ？」

勇者「違わい。もう分かった、俺が船内に帰るよ。じゃあな」

盗人「え～、もうちょっと遊ばれてこうよー」

勇者「遊ぶな！ハァ…疲れた……」

盗人「あ、未確認飛行物体！」

勇者「そのネタはもうやったんだよ。じゃあな」

盗人「いや違っ！本当だって、あれ！」

勇者「あぁ？……あれは――」

勇者「大変だ！飛行する魔物が飛来して飛んできた！」

賢者「アレはもう忘れて下さい！」

盗人「落ち着けバカタレ」

戦士「おや、お前は。何故ここに…？」

盗人「話はあとあと！魔物が飛んできてるんだってば！」

―――――

魔物「グギャァァァ！！」

戦士「あれでは剣が届かん…」

賢者「任せて下さい――イオ！」

魔物「グゲッ！」

勇者「落ちてくる…行くぞ！」

ちょっとだけ勇者ぽくなってきた感

戦士「ぉおおっ！」

魔物「グッ！」

戦士「くっ、中々に硬い！」

勇者「頭なら、どうだっ！」

魔物「グァァッ！！」

勇者「うわっと！火ぃ吐くぞコイツ！」

賢者「このぉ―――バギ！」

魔物「グゥ……」

戦士「効果が薄いか…！」

「どいたどいたー！」

賢者「な、待ちなさい！危険です！」

盗人「行っくよー……ジャーンプ！」

魔物「ギッ！」

盗人「フッフッフ、この子はうなじが弱いのさ、ってね」

勇者「何やってんだ馬鹿！」

盗人「自分の身くらい自分で守らんとと思ってね！」

戦士「違う！そいつはまだ――！」

魔物「ギァァァァ！！」

盗人「うわっほぉ立ち上がったぁ！助けてー！！」

賢者「こ、これでは魔法を使うと彼女にもっ…！」

勇者「アホか！もうそこでそいつの口押さえつつぶら下がってろ！」

盗人「出来るかーっ！あっ、このままじゃ落ち――た」

勇者「ああもう！戦士、その馬鹿任せた！賢者、アイツを怯ませろ！」

戦士「おうっ！」

賢者「はいっ―――ヒャド！」

魔物「ギャァァァ！！」

勇者「確かここだったな…喰らえぇっ！！」

魔物「グッ…ブ…」

戦士「やったか？」

勇者「いや、気絶してるだけだ」

賢者「では、今の内にトドメを――」

勇者「あーっと………縛って転がしとくとかじゃ駄目？魔物でも命取るのはやっぱ……」

戦士「流石に船上では……」

勇者「だよな………クソッ、夢に出るなよ…」

賢者「……お待ち下さい勇者様。私がトドメを刺します、ですからあなたは――」

勇者「…………………っ……すまん…ごめん――頼む」

賢者「いいえ……では―――」

―――――

勇者（………）

勇者（……なんで勇者なんかやらされてるんだろう、俺。ただちょっと戦闘力があるってだけだろ）

勇者（あの２人の方がよっぽど勇敢だよな、ホント）

勇者（あいつらなら魔王くらい余裕だろ…）

勇者（魔王討伐なんて誰がいくか。船が到着したら……）

―――――

「おーいヘタレ、起きてるかー？」

勇者「……お前には他人を気遣う心ってのは無いのか？」

盗人「生憎持ち合わせは無くてね。船に乗れないくらいスッカラカンだよ」

勇者「それで盗みを働いてたと」

盗人「いやー、それは元からなんだけどさ」

勇者「………で、何しに来た。帰れ」

盗人「お金くれたら帰るよ？」

勇者「…………寝る」

盗人「ヒドっ！おら、起きろ！」

勇者「……お前、あれだけ目立つ行動したのになんで捕まってないんだよ。密航者だったろ？」

盗人「あれだけ目立ったからね。恩情をねだったってーワケ」

勇者「セコい真似を……」

盗人「魔物、いや人もさぁそうやって利用していく為の物だと思っておけばいいんだよ」

勇者「そうかよ……。―――――なら」

盗人「何？どした？」

――次の大陸・港――

賢者「暑いですね…」

戦士「この大陸には砂漠もあるそうだからな…」

賢者「しかし、先へ向かう為には砂漠を渡らなければいけないんですよね？」

戦士「ああ、しっかり準備をせねばな。………ところで勇者殿は？」

賢者「あ、あら？入港の時には確かにお姿があったハズなのですが……」

―――――

勇者「………」

盗人「盗めるものなら人の目も盗むってね」

勇者「………」

盗人「こうして魔王様の時代はまだまだ続くのでしたー、まる」

勇者「………」

盗人「冗談だって。そんな目で見つめんでも」

勇者「………」

盗人「んじゃそろそろあたしも行くよ。縁があったらまたヨロシク！」

勇者「……ああ」

勇者（………）

勇者（……これでもう、俺は―――）

―――――

勇者（――これでもう俺は勇者じゃない。そう思っていた時期が俺にもありました）

勇者「隣国なんだ、顔が知れてて当たり前だろ馬鹿がっ！」

勇者「別の国へ行こうにも、魔物のお陰で長期航海は無理ときた」

勇者「余所の国へ行くのに砂漠を縦断して大陸の北に行かにゃならんとはな」

勇者「勇者だ何だと騒がれないように砂漠越えの用意をしてたらもう夜だし…」

勇者「まあ今くらいの方が人通りも少なくて動きやすいがな！」

勇者「………」

勇者「……さ、さあ、今の内に砂漠の手前まで移動して―――」

「居た！」「お待ち下さい！」

勇者「……！お前等…」

賢者「勇者様…どこへ行くのですか？」

勇者「何の用だよ」

戦士「突然居なくならないでくれ、心配するだろ」

勇者「もう放っといてくれ！！」

賢者「そんな――」

勇者「魔物も禄に倒せない奴なんか要らないだろ！！」

賢者「……！わ、私は…そういうつもりでああしたワケでは――」

勇者「うるさい！知るか！魔族を根絶やしにしたきゃお前等だけでやれ！！」

戦士「お前っ…！」

勇者「来ないでくれっ―――ギラぁ！」

賢者「きゃあっ！あっ、勇者様、待っ――！」

勇者「魔王討伐ならお前らだけで出来るさ………じゃあな」

――砂漠・日中――

勇者（………あー…）

勇者（夢……だっけ？）

勇者（ついさっきの出来事だった気もするなぁ）

勇者（のど乾いた……）

勇者（水は……さっき魔物から逃げた時にどっかやっちゃったんだっけ）

勇者（魔物と戦うのを止めた直後にこれかよ）

勇者（魔王討伐に行かなかった報いなのか？）

勇者（でもまあ、これで――）

初期アムロみたい

――オアシス――

「知ってる顔が転がってるとかやめてよね」

勇者「………あぁ？この気の抜ける声は…」

盗人「おっとと起きた？最近良く会うねー、元気だった？」

勇者「ほざけ」

盗人「ちょーちょー、折角ここまで運んであげたんだからお礼くらいくれても良くない？」

勇者「お前が？俺を？何で？」

盗人「ひょっとして信じてないの？ヒっドーい！」

勇者「だってお前……ハイハイ悪かった悪かった」

盗人「なっ！まあ言葉はいいや現物よこせ現物」

勇者「残念だが渡せるものなんて何も持って――まさかお前盗ってないだろうな？」

盗人「あはは～遭難中に無くしちゃったかな～？しょうがない、向こうにキャラバンが居るから何か奢んなさい」

勇者「お前盗っただろう」

盗人「所持品を返して欲しくば奢れ！」

勇者「それは奢りじゃなくて脅しだ」

商人「おっ気が付いたのか兄ちゃん！よかったな！」

勇者「あぁ、はい」

盗人「おっちゃーん！えーっとね、これとーこれとーこれとー……」

勇者「おい、俺そんなに金無いからな」

商人「そいつぁ良い事聞いたな。じゃあよ兄ちゃん、ちょっくら街まで用心棒頼まれてくれよ。そしたら――」

勇者「嫌です」

商人「そ、そうかい。困ったなあ、ここまで護衛してくれた姉ちゃん達は魔物退治だーとか言ってどっか行っちまうしよぉ」

勇者「……！」

商人「ん？どうした兄ちゃん」

勇者「いや……なんでも無いです。それじゃあ」

盗人「おーい待て、奢る約束したでしょーが」

商人「おーい待て嬢ちゃん、服の中の精算してない商品置いてけ」

>>92 ×精算 ○清算


盗人「魔物ってーとやっぱアレかなー？」

勇者「アレ？」

盗人「聞きたい？ん？ん？」

勇者「別に…」

盗人「実はこの大陸、ちょっと前まではこんな砂漠なんてなかったハズなんだけどさ」

勇者「何か話してないと気が済まないのかお前？」

盗人「何か１匹の魔物が原因で今の環境になっちゃったみたいでー」

勇者「………」

盗人「あの２人はどっかでその話を聞いたのかもねー」

勇者「………」

盗人「キャラバンが着いてすぐに向かったなら、あの２人が魔物の住処に着くまでもうちょっとかかるかなぁ」

勇者「だから何だよ」

盗人「べっつにー？」

勇者（関係無いんだよ。アイツ等がどうしてようと、仮に死――）

勇者（……っ）

勇者（魔王のところに真っ直ぐ行ってろよ。そういう方針だったろ、何で――）

勇者（……まさか）

勇者（い、いやいや、アイツ等の性格なら困ってる人は元々放っておけないだろう）

勇者（でも、もし………）

勇者「ああもう、俺はもう勇者じゃない！そうだろ！」

勇者「俺は魔物と人が戦うのを止めるだけだチクショウ！！」

盗人「ねえ博愛主義者」

勇者「うるさい！自分勝手な俺様は急いでるの！」

盗人「だからー、急いでるんなら手ぇ貸すよ？」

――砂漠――

戦士「随分歩いたな」

賢者「もう何か見えてきても良い頃だと思うのですが……きゃっ！」

戦士「流砂か。ん、あれは！」

魔物「シャアアア！！」

賢者「あの魔物がこれを？」

戦士「恐らくな。それに、今までの魔物とは別格に見える」

賢者「では、この魔物が！」

戦士「そういうことだろう、やるぞ！」

しえん

戦士「っと、流砂のせいで動きづらいな……」

賢者「お任せください―――トラマナ！」

戦士「よし、これなら行ける。援護を頼むぞ！」

賢者「はい―――ピオリム！」

戦士「はぁぁっ！！」

魔物「ァァァァ！」

戦士（弱い？何故こんな奴が放置されて居たんだ？）

魔物「ジジジジジ…」

戦士「まあいい。畳み掛け――」

賢者「あぁぁっ！」

雑魚達「ゲゲゲゲ…」

戦士「賢者！なっ、魔物の群？クッ、一度態勢を――」

魔物「シャアッ！！」

戦士（しまっ、賢者が襲われたせいでトラマナの効果が切れて――）

戦士「ぐあっ！」

賢者「い、今回復を――」

雑魚「ゲゲッ！」

賢者「ぁうっ！」

戦士「こ、このままでは…」

魔物「ジジジジ…シャッ！！」

戦士（やられる……！）

「やいばのブーメランっ！飛んでけぇ！！」

魔物「ジッ！」

戦士「何っ！」

「あああぁぁぁぁぁ―――ベギラマぁっ！！」

雑魚「オアォォッ！」

賢者「これは…？」

盗人「ふぅー……間一髪ってカンジ？」

勇者「ハァ……間に合った…」

賢者「ど、どうしてここに来たのですか！あなたは戦うのはお嫌いだと――」

勇者「ふざけんなよ……」

勇者「ふざけんなよ！知り合いが危険な事してて放っておけるワケ無いだろ！！」

勇者「お前等なんで真っ直ぐ魔王討伐に行ってないんだよ！なんでまだこんな所に居るんだよ！」

勇者「俺はっ！俺は魔王も世界もどうでもいい！勇者もそうだ！」

勇者「もし勇者なんてものが無ければ俺は今日も平和に生きていたし魔物も殺さなかっただろう！」

勇者「お前等が悪いんだ！お前等が俺の前に出てきたから！」

勇者「お前等が居なきゃ、俺は後腐れ無く逃げ出せたんだ！」

魔物「キシャアアッ！！」

勇者「そこの魔物！テメェもそうだ！何やってんだよ！！」

勇者「もうとっくにテメェの住みやすい環境は創り終えてただろ！もっと慎ましくしてろよ！」

勇者「だからコイツ等が退治しに来た！だから――」

勇者「――だから斬らなきゃいけなくなったんだ！！」

勇者「だああぁりゃあぁっ！！火炎斬りぃ！」

魔物「ジッ！……ジジジ」

雑魚達「ゲゲゲゲ…」

勇者「囲まれたか―――ニフラム！」


戦士「アイツめ、言いたいだけ言って行って…」

賢者「今は話し合える状況でもありませんし―――ベホイミ」

戦士「そうだな。先にやるべきことがある」

賢者「ええ―――トラマナ」


勇者「ハァ…ハァ……」

魔物「シャァァっ！」

勇者「来るかっ…！」

賢者「メラミ！」

魔物「ァアァァッ！」

勇者「っ！」

戦士「勇者殿っ！」

勇者「お前等……お、俺…」

戦士「話は後だ！……やれるな？」

勇者「……やってやるさ！」

魔物「ジジジジ――」

賢者「もう魔物を呼ばせはしません―――イオラ！」

魔物「ジュッ…！」

戦士「そこだっ、疾風斬り！」

勇者「終わりだ！稲妻斬りぃ！」

魔物「ォォオォオォ………」

―――――

勇者「ハァ…ハァ……」

戦士「なんとか退治できたな。これでこの砂漠がこれ以上大きくなることも――」

勇者「ごめん。俺、お前等に…酷いこと言って…」

賢者「私達は、魔王討伐の為にこれから更に戦いに身を投じることになるでしょう。あなたは――」

勇者「俺は、戦いたいワケじゃない」

賢者「でしたら…」

勇者「でも俺は、お前等が戦いに行くのなら――お前等を守りたい」

戦士「……それで良いんだな？」

勇者「お願いします。また、仲間として――」

「そんな、こちらこそ」「またよろしく頼むぞ」

戦士「そういえば、よく私達に追いつけたな」

勇者「ああ、それはアイツが魔物と遭遇しないよう……あれ？居ない。どこ行った？」

―――――

盗人「やっぱ人ってのは元気な方がいいよねー」
商人「嬢ちゃん、何の話だ？」

盗人「おーっと悪いね。独り言っすよー」

商人「いやーぁしかし、街までの護衛を引き受けてくれる人が居てありがてぇ」

盗人「気にしなーい気にしない」

商人「そう言うねぃ、このまま誰も来てくれなかったら――おっ」

盗人「うーん、気持ちいい風だねぇ」

――オアシス――

賢者「ルーラ！――着きましたよ」

勇者「疲れた……もう魔力空っぽだわ…」

戦士「ここで一晩休んでいくとしようか」

――夜――

戦士「勇者殿、調子はどうだ」

勇者「ああ、もうだいぶ疲れも取れた」

戦士「そうか、それなら丁度いい。少し稽古に付き合ってもらえないか？」

勇者「ああ、分かった」

つ④

戦士「はやぶさ斬りっ！」

勇者「ぐわぁ！……痛たた。やっぱり剣じゃ――」

戦士「動くな」

勇者「っ……」

戦士「賢者の手前ああ言ったが、残念なことに私の立場上お前を許すワケにはいかないのだよ」

勇者「………」

戦士「王の命でな。お前が一度でも背こうとなったらその時は即時切り捨てよとの事でな」

勇者「……なるほど、お前がお目付役だったってことか」

戦士「一度失った信頼は取り戻せないということだ。ではな――」

勇者「………」

戦士「と、こんなところか」

勇者「……へっ？」

戦士「国を、そして世界を見捨てた若者は死んだ」

勇者「えーっと…」

戦士「実は、お前と分かれた後、賢者に引かれてすぐに出発になったせいで連絡が遅れていてな」

勇者「………いいのか、それ」

戦士「ハッハッハ、運が良かったな」

勇者「いいのか、そんなんで」

戦士「結果としてまた旅をするのだから別にいいだろう」

勇者「そんなもんなのか？」

戦士「……なんだ、斬られたかったか？」

勇者「それは勘弁！」

戦士「さてと、私の言っておくべき事はこんなところだ」

勇者「そ、そうか」

戦士「というワケでバトンタッチだ」

賢者「え、わ、私は――」

戦士「何かあったから来たんじゃ無いのか？」

賢者「そ、そうではあるのですが、その――」

勇者「………」

賢者「あの、あなたが王の使いだという話は――」

戦士「うん？待て、私にか？」

戦士「まあお前にも話していなかったし、そういうことなら」

勇者「あ、じゃあ俺席外すよ」

賢者「いいんです違います合ってます茶化さないでください私は勇者様と――！」

戦士「ということだそうだ。では私は先に休むよ」

勇者「まあそれはそうだよな…えーっと」

賢者「その……」

勇者「………」

賢者「………」

支援

賢者「あの……本当によろしいのですか？私達と旅を続けて…」

勇者「ああ、大丈夫だ。もう逃げない」

賢者「魔物達と戦うことはこれからまた幾度もありますよ？あなたが本当は嫌だというなら――」

勇者「……えっと、もしかして俺の事嫌いか？」

賢者「そんな！私が来て欲しくないということでは無く――」

勇者「じゃあ……俺が分かれる時に言ったことを気にしてるのか。本当、ごめん」

賢者「………私達の旅の目的、魔王討伐が同時に魔族を衰退させる事であるのは事実です」

勇者「なあ、魔王ってのは本当に討伐するしか道は無いのか？」

賢者「えっ？」

勇者「もし魔族の世界侵攻をやめてくれるなら、俺はそれでいい」

賢者「それは……」

勇者「討伐の前に一度でいい、説得がしたい。魔王討伐の為だけになんて俺はいかない」

戦士「もし魔王が悪逆非道だったらどうする」

賢者「あっ、あなたは聞いていたんですか…！もう眠ったのでは――」

戦士「私は休むとしか言っていないぞ？」

勇者「その時はそりゃもちろん元の目的を果たすだけさ」

戦士「もし、魔族の排除だけを考える人達が反発したら？」

勇者「うっ……悪い魔族だけはやっつけるから、あとは王様なんとかしてくれないかな…」

賢者「………」

戦士「………」

勇者「ごめんもっとシッカリ考えるから待って」

戦士「まあそれでいいか」

勇者「えっ？」

戦士「勇者だなんて言うが私達は結局小間使い。少しくらいの誤差は多めに見てもらおう」

勇者「いいんだろうか、そんなんで…」

戦士「気がかりなら、もっと別の道を考えておくしかあるまい」

賢者「魔王の元にたどり着くまではまだ時間もかかりますし、私達も共に考えます！」

勇者「ああ、うん。そうだね……頑張る」

――翌日・大陸の北――

勇者「――砂漠を抜けてここまで来たけどさ」

賢者「こちら側は、あまり活気が無いのでしょうか？」

勇者「というより、港が無いんだが」

戦士「たしかこの国と隣国は以前交友があり、その証として橋をかけたとか……あれだろうか？」

勇者「止めて、あんなでかい橋渡るとか考えたくない。先のほう霞んでるよ？」

戦士「これだけの大きさだ。馬車か何か用意してあるだろう」

勇者「それもそうだよな」

賢者「管理用と思しき建物がありますね」

勇者「でも…何か…」

戦士「人の気配が無い…？」

賢者「……しばらく使われていないよう見受けられますね」

勇者「じゃあ……」

戦士「歩いていくしかないだろうな」

勇者「よーしいいぜ分かった、一日で渡りきってやる、見てろ！」

戦士「勇者殿は橋を渡り始めてから随分と気合いが入っているな」

賢者「それにしても本当に大きな橋ですね、一体どれほどの技術が注ぎ込まれているのでしょうか？」

「そこの者共、止まれ！」

勇者「……？」

番兵ａ「我が国は現在総ての外交を禁止している。よって貴公等をこの先へ通すわけには行かぬ」

勇者「渡り始める前に言ってくれよ……」

賢者「待ってください。せめてそちらの国を通過するだけでもさせてはもらえないのですか？」

番兵ａ「例外はない。引き返すのだな」

番兵ｂ「いや待て。この者達は――」

戦士「……？」

番兵ａ「なるほど、貴公等は魔王討伐の勇者達であったか。分かった」

賢者「では――」

番兵ｂ「ひっ捕らえろ！」

勇者「何だって？おい、待て、どういう――」

――３番目の大陸・城の地下牢――

戦士「一応、一日で渡りきるには至ったな」

勇者「そうだな……。でも何だってんだよこれ！」

賢者「ツタの牢屋……連れてこられる時の景色もそうでしたけど、この国は緑が生い茂っていますね」

戦士「今回は国からの資料がないのでよくは分からないが、まあそういう大陸なのだろうか」

勇者「しかし、どうするかねこれ」

賢者「すみません…私が解錠の魔法の習得に至っていれば……」

勇者「すまん。そういう意味じゃないから気に病むな」

「――貴様等が魔を滅する為に遣わされたという愚かなる人間共か」

勇者「……何だろう、凄く俺の嫌いな雰囲気がするあなたは何者で？」

女王「無礼にも我に訪ね事か人間？だがまあいい、教えてやろう。我はこの国を統べる女王である」

賢者「女王様、なぜ私達は捕らえられなければならないのですか！」

女王「簡単な事。貴様等が魔を滅ぼさんとするからよ」

勇者「なっ、待ってくれ！俺達は――」

女王「聞かぬ。貴様等は明日には処刑してしまう身。そのような者達の話なぞに興味は無い」

勇者「なっ、処刑？おいふざけんな待て！」

戦士「マズいな、どうする？」

賢者「仕方がありません。私が魔法で牢を破壊して――」

「待て！」

勇者「声？何処からだ？」

戦士「床の隅の板が外れているな。ここからか？」

「来い。助けてやる」

戦士「ということだが、どうする？」

勇者「……正面切っての脱出よりはマシかな？」

賢者「幻惑の魔法を使っておきました。抜け出したことに気づかれるのが少しは遅れると良いのですが…」

「……あんまり期待はしない方がいい」

戦士「暗がりで姿が分からないが、助かった。礼を言おう」

「気にしないでくれ。……しかし良くすぐに信用したな」

勇者「状況が変わるならなんでも良かっただけだ。罠ならとっちめてやるからな！」

「なるほど……そら、出口だ」

戦士「ここは…？」

「街から離れたところにある俺の家さ」

勇者「いやー助かった。ありがとうござ――アンタは！」

賢者「……？この方は勇者様のお知り合いなのですか？」

勇者「ああ、俺の――父さんだ」

父「よう。大きくなったな」

戦士「勇者殿の父上？なぜこの国に？」

父「昔はどこも人種差別が酷くてな。この国に強制送還されてしまったんだよ」

勇者「父さんが居るってことは、ここは――」

父「ああ、エルフの国さ」

賢者「……！そ、それでは勇者様は……」

勇者「まあ、うん……そういうこと」

父「母さん、元気にしてるか？」

勇者「多分。俺が旅立つ時は元気だったから」

父「……そうか。しかしお前が勇者とは、逞しくなったもんだな」

勇者「というか父さん！元気なら何で帰ってこないんだよ！」

父「……この国の女王には会ったろ？彼女は選民思想が強過ぎてな、今エルフは国から出ることすらかなわないんだ」

賢者「そんな……」

父「まあ気にするな。明日にはこの大陸から出れるよう手配してやるから今日は泊まっていくといい」

戦士「そんなことが出来るのか？」

父「俺は人間が不当に捕まえられる度にそうしてきてるからな。任せてくれ」

勇者「そうか…ありがとう」

―――――

勇者「俺はハーフだから剣も魔法も使えるんだ」

戦士「なるほど」

勇者「人の身での魔法習得は、それだけで多くの修練が必要だって――」

賢者「ええ、その通りです」

戦士「とりあえず、どうするんだ？」

勇者「どうもこうも、先へ向かうだけだろ？」

賢者「ですが、この国の現状は放っておいて良いとは――」

勇者「一国の長に真っ向から楯突くのは流石にマズいさ」

賢者「そう…ですね。すみません」

勇者「……謝らないでくれって」

勇者は最初から勇者じゃなくて勇者になっていくものなんですね分かります

―――――

父「――この森を抜けた先に港がある」

賢者「港…ですか？ですがこの国は現在外との繋がりは断っていると――」

父「安心しろ。港は女王に反発する者達が集っていて、隣の大陸と行き来出来るようになっている」

勇者「分かった。色々と助かったよ」

父「何、気にするな」

「居たぞ！逆賊共だ！」

戦士「追っ手か！」

父「お前達はこのまま行け、俺が引きつける」

賢者「そんな、それではあなたが――」

父「気にするな、何とかなるさ」

勇者「………なあ、俺」

賢者「引き返しましょう」

勇者「……いいのか？」

戦士「当たり前だ。急ぐぞ」

勇者「…すまない、ありがとう」

―――――

兵士ａ「他の者達は何処へ行った、答えろ！」

父「他の？知らないな。気のせいだったんじゃないか？」

兵士ｂ「貴様っ！」

「メラ！」

兵士ｂ「ぬわっ！何者だ！」

勇者「答えなきゃ分からないか？」

父「お前等、何で――！」

兵士ａ「ぐぬっ、捕らえろ！」

賢者「ラリホー！」

戦士「水面蹴り！」

兵士ａ「おのれ人間風情が！どうした、早く――」

勇者「お前で最後だよ。寝てろっ！」

兵士ａ「がっ……」

賢者「お父様、ご無事ですか？今縄を――」

「ノコノコと戻ってこようとは、やはり人間は浅はかであるな」

勇者「お前は……！」

女王「しかし彼奴等、たった４人捕らえることも適わぬとは思わなんだな」

父「マズい、お前等逃げろ！」

女王「もう遅い。我が前にひれ伏すがいい―――ラリホーマ」

勇者「しまっ――」

女王「さて、このまま命を絶って――」

賢者「このっ―――ギラ！」

女王「ほう、運の良い奴。範囲から外れていたか―――マホカンタ」

賢者「なっ！あぁっ！」

女王「貴様等程度がいくら居ようが我にはかすり傷一つ付けられぬ」

賢者「そんな……」

女王「さて、ではまず貴様から滅してやるとしようか」

賢者「くっ……―――ルーラ！」

女王「尻尾を巻いて逃げるか……まあ良かろう。それだけ我がいたぶる時間が延びるまでだ」

――エルフの街・裏路地――

「ザメハ！―――ふぅ…これでひとまずは――」

勇者「うっ……ぅうん…」

賢者「皆さま、体調の程はいかがですか？」

父「気にしなくていい、眠っていただけだ」

「――奴等はこの辺りに降り立ったハズだ。辺り一体を捜索しろ！」

戦士「もう追っ手が…！」

勇者「くっ……どうする…」

「あなた達は勇者様方とお見受けできる」

戦士「…誰だ！」

賢者「憲兵の方達では無いようですが、あなたは…？」

青年「私は反女王派の者です。どうぞこちらへ、匿ってさしあげます」

――民家・地下倉庫――

青年「もう大丈夫です。憲兵達は別の地区へ向かいました」

勇者「そうですか。ありがとうございます」

戦士「ひとまずは安心、と言ったところか」

父「この様子だと、家の方ももう押さえられていそうだな」

賢者「巻き込んでしまい、申し訳ありません」

父「気にするな。好きでやったことだ」

勇者「で、これからどうする？」

青年「我々のアジトへお連れ致しましょう」

父「反女王派の、というと隠れ港か？」

青年「ええ、そしてどうか、勇者様方のお力をお貸し頂けないでしょうか」

勇者「それはつまり、君達――反女王派にですか？」

青年「ええ、その通りです」

賢者「勇者様、どうしましょうか？」

勇者「まあもともと向かうハズだったし、とりあえず話だけでも聞きに行こう」

戦士「しかしどうやって行くんだ？私達は一度そこへ向かおうとして失敗しているんだぞ？」

青年「下層を通れば比較的安全にアジトまでお連れできるハズです」

勇者「下層？」

父「この大陸では特大の植物同士の根っこが絡み合って天然の迷宮が地下に形成されているんだ」

青年「この街の郊外から隠れ港までのルートを案内します」

賢者「分かりました、では急ぎましょう。また憲兵達が捜索をしにくるかもしれませんから」

――大陸下層・迷宮――

青年「では、離れずについてきてください」

勇者「なあ、父さん」

父「何だ？」

勇者「始めからこっち通れば良かったんじゃないの？」

父「日々変化していく迷路の通り方なんてこの国へ戻って少ししか経ってない俺には覚えられん」

勇者「“少し”って…父さんがこっちに戻されたの俺が生まれる前じゃ」

父「ん？すまん、エルフと人では時間の流れが違うからな」

勇者「なるほど……って、時間の使い方も違うの？」

父「基本的に、使う道を人づてに知るくらいでしか迷宮のルートは分からないからな」

勇者「なら誰かに聞くとか……父さん、もしかして友達とか居ない？」

父「気にかけるな」

戦士「人と恋仲になったせいで敬遠されがちだったのだろうか？」

賢者「それでお１人で郊外に……」

勇者「いやでも、ハーフの俺でも少しは……居たよ？」

父「……今の間、いや気にしないでおく」

賢者「やはりお２人は親子なのですね。よく似ていらっしゃって……」

勇者「そのまとめ方は止めて」

つ④

支援

――反女王派アジト・エルフの国の港――

青年「リーダーの元へ案内します。このまま着いてきてください」

勇者「何か物々しい雰囲気だな…」

賢者「彼は力を貸して欲しいと仰っていましたが…」

戦士「あまり良い予感はしないな」

―――――

青年「勇者様方をお連れしました」

リーダー「ご苦労、もう下がっていいぞ」

青年「は！」

勇者「……それで、力を貸すっていうのはどういうことで？」

リーダー「我々は近々あの女王を討つ計画を立てていてな。それに協力して欲しいのだ」

父「クーデターか」

勇者「……その話は断っても良いんですか？」

リーダー「もちろんだが、どちらにせよ君達にはここに数日滞在してもらわねばならないぞ」

勇者「それはなぜ？」

リーダー「計画の準備で忙しい今、君達を出港させてやる暇がないからだ」

勇者「そうですか」

リーダー「加えて、計画が失敗かつ人員の損耗が激しかった場合、より出港は遅れるだろう」

勇者「なるほど」

リーダー「それで、あなた達は我々に協力してくれるだろうか」

父「まあ待て。女王を玉座から退かせたとして、その後はどうする気かね？」

リーダー「そこは平気だ。後にその座に沿えるべき人物はもう決まっている」

勇者「そうか。で、俺達の答えだけど――」

―――――

父「俺はここで保護されておく。じゃあな」

賢者「お世話になりました。それではまた」

戦士「……本当に引き受けてしまってよかったのか？」

勇者「ああ。俺達が居ることで若干でも被害を軽減できるかもしれないから」

賢者「確かに、ここの方達は少し気が勝り過ぎている気がしますね」

戦士「彼らだけでは無茶なことをやりかねない、か」

勇者「まあそういうことだ。さてと、計画の準備は明日までかかるそうだしもう休むか」

――翌日・エルフの街近辺――

勇者「俺達は、彼等が動き易いよう兵士達を引きつけていればいい」

賢者「陽動ですね。なるべく他へ意識が向かないよう派手に動きましょう」

戦士「そろそろ時間だな。街へ入ろう」

―――――

勇者「そら、俺はこっちだよ―――イオラ！」

賢者「直撃はさせませんが、お気を付けを―――ヒャダイン！」

兵士達「ぬっうわぁぁあ！」

賢者「随分引きつけましたけど…」

戦士「連絡係が来ないな…何かあったのか？」

「それはそうだろう。他はすでに全て制圧したからな」

勇者「何っ！」

女王「さあどうする？また退くか？」

勇者「そっちから来てくれたなら……お前は、ここで！」

女王「抜かせ雑魚が―――バギクロス」

勇者「ぐっ、がぁぁ！！」

戦士「ク…ソ……」

賢者「い、今回復を――」

女王「させんよ――メラミ」

賢者「あぁあぁぁっ！！」

女王「さあ弱者は消えろ―――ザラキーマ」

勇者「―――」

女王「アストロンで我が術を避けたか。ならば、当初の通り――」

女王「兵士共、その鉄塊共を城前の広場まで運んでおけ」

兵士達「は、はい！」

―――――

「リーダー……勇者様達が」

リーダー「――そうか。例の物は？」

「そ、そちらは既に用意出来ていますが」

リーダー「ならば、行くぞ」

「は！」

――城の広場・処刑台――

勇者「くっ……」

女王「これより、魔を妬み滅ぼさんと画策した愚かなる者共に罰を与える」

女王「その命をもって責任を取るが良かろう。では処刑を――」

「ちょーっと待ったぁ！」

女王「誰だ！」

勇者「お前は――」

盗人「まさかまた君等の命の恩人になろうとはねぇ……」

女王「この国には賊が多くて適わぬな。兵よ、こやつも――ぬ？」

リーダー「兵は我々が押さえた。もうお前だけだ」

女王「ほう…。ならば我が直々に貴様等に裁きを与えるまでだ！」

リーダー「裁きだと？お前にそんな権利があると思っているのか？」

女王「我は王だぞ？最も他者を裁くに相応しいだろう？」

リーダー「お前が王？自分の姿を良く確認するがいいさ、コイツで！」

女王「なっ、それは――！」

リーダー「ラーの鏡よ！彼の者の真の姿を白日の下にさらけ出せ！」

「ぬあぁぁあぁぁぁ！！」

魔族「ぐっ………おのれぇ！」

リーダー「みんな見ろ、コイツは魔族だ！女王などではありはしない！」

「そんな…あれ！」
「魔族？魔族が女王のフリを？」
「た、大変だ！皆に伝えなければ！」

盗人「大丈夫ー？」

賢者「え、ええ…ありがとうございます」

盗人「いやー、ごめんね？アイツの正体を公衆の面前で暴く必要があったからさぁ」

戦士「しかしラーの鏡だと？あれはたしか我が国の宝物庫に――」

盗人「さ、さあ！あの偽女王をやっつけちゃおー！」

勇者「おいお前」

魔族「ええい、この姿を見られたとて見た者を全員消せばいいだけのこと！」

リーダー「あの魔族の息の根を止めるぞ、全員かかれ！」

「「「「おぉーっ！」」」」

勇者「よし、俺達もやるぞ！」

戦士「おう！」

賢者「お気をつけて――スクルト！」

魔族「小賢しい屑共め、我が姿を見破ったとて我の魔力を覆したワケじゃなかろう」

リーダー「これだけの数を前にしてまだ生きていられると思っているのか！」

魔族「我の葬れるなどと本気で思っているのか―――ベギラゴン！」

リーダー「ぐぁぁ！クソッまだだ、剣を離すな！！」

戦士「おぉぉっ！魔神斬り！！」

魔族「くっ……魔力も碌に扱えぬ雑魚共が調子に乗りおって！」

盗賊age飽きた

勇者「なら、これでぇ…真空斬り！」

魔族「がはっ！貴様ぁぁ！！」

リーダー「このまま押し切るぞ！」

盗人「食らえぇ、真空波っ！」

魔族「その程度でぇ……―――イオナズン！」

勇者「ぐわぁぁあっ！！」

魔族「ハァ………貴様は存外に厄介だな。真っ先に潰してくれよう」

勇者「クソッ！火炎斬り！」

魔族「遅い―――バシルーラ」

勇者「うわっ！しまった、剣が……」

魔族「これで何もできまい。さあ、無様に這い蹲れ――」

>>141
ごめん俺も

つ ④

勇者「クソッ―――ベギラマ！」

魔族「通じぬよ―――マホカンタ」

勇者「ぐあぁ！」

賢者「このぉ―――メラミ！」

魔族「人間にしては魔力があるようだが、無駄だ」

戦士「疾風斬りっ！」

魔族「まだ来るか。邪魔な奴め――」

賢者「メラミっ！」

魔族「だから効かぬと――っ？」

賢者「徐々にですが、あなたも消耗しているようですね―――メラミ！」

魔族「そうか、少々魔法を使い過ぎたな。だがそれが――」

「メラ！」
「バギ！」
「ヒャド！」

リーダー「このまま奴を釘付けにしろ！―――イオ！」

魔族「そんな微々たる魔力、蚊ほどにも――」

戦士「そこだっ、魔神斬り！」

魔族「なっ！」

勇者「うぉおぉぉ―――ライデイン！」

魔族「ぐっ……貴様等ごときぃぃ！！」

賢者「喰らいなさい―――マヒャド！」

魔族「ばっ、ぐああぁぁぁっ！！」

リーダー「奴の障壁が消えた！全員、たたき込め！」

魔族「貴様等風情が……我を、我をぉぉ……」

勇者「終わりだっ―――ライデイン！」

賢者「もう一度―――マヒャド！！」

魔族「ああぁぁあぁぁぁぁぁっ！！！」

―――――

リーダー「我々の勝利だ！皆に伝えろ！」

「はい！！」


勇者「悪は滅ぼした……なんてな」

賢者「この国は、もう大丈夫でしょう」

戦士「夜には今後この国を治める方が挨拶をするそうだ」

勇者「そういえば誰なんだろう？」

―――――

兵士「次期の統治者をお呼びします。どうぞこちらへ」

女王「皆さま、ごきげんよう」

勇者「………はっ？」

賢者「あの方、魔の者が化けていた人に似ていますね……」

戦士「いや、纏う雰囲気こそ違うがあの姿はどう見ても――」

勇者「本人…だよね？」

賢者「えぇっ！どういう事ですか！」

勇者「俺に聞かないで」

盗人「説明しよう！」

勇者「うおっ！背後から大声で話しかけるな！」

盗人「そこ、話を聞く！えー、彼女はですねー――」

父「彼女こそがこの国の本物の女王だったというワケだな」

勇者「どういうこと？」

父「あの女王様は、偽物に姿と魔力を奪われて反女王派の元で匿われていたんだ」

戦士「それで姿が似て――いや、偽物が姿を真似ていたということか」

盗人「ちょっパパ、あたしが説明しようとしてたのに横から掠めていかないでよ！」

勇者「いーよお前が説明したら無駄に長くなりそうだ……うん？」

勇者「聞き間違いか？誰が誰の何だって？」

盗人「……？いやだからこのオジサンが――」

勇者「ちょっと待て。ヘイ親父ちょっと」

父「おい、落ち着け。アイツは――」

勇者「アンタは！母さんという者が！ありながら！」

父「だから違う！あれが勝手に父親呼ばわりしてるだけで、アイツは――」

勇者「おう何だ何だってんだ答え次第では親といえと容赦は」

父「だから、アイツは……あー…何だ？」

勇者・盗人「おいポンコツ殴るぞ？」

勇者「止めろハモるな何なんだお前！」

父「あーっと……だからな…」

戦士「とりあえず部分部分でも説明してみては？」

父「そ、そうだな。ソイツは俺が国に戻ってから引き取った――」

盗人「偽女王のせいで親がポックリ逝ったから世話になってたって話よ！」

父「そうそう。そういうことだ」

勇者「ああ……そういう事…」

盗人「どうだ！あたしが説明した方が早かったろ！よし、君のことはこれからお兄ちゃんと――」

勇者「いや、お前エルフだし俺より年上だろ？」

盗人「お兄ちゃんと呼――」

勇者「仕切り直さんでいい」

勇者「もういいや……いい加減女王様の話聞くか」

賢者「もう終わってしまいましたけど……」

勇者「おぉ…」

――翌日・エルフの国の港――

女王「この様な事態のせいであなた達に尽力して差し上げることが出来ず申し訳ありません」

勇者「いやそんな、こっちから頭を突っ込んだことなんで」

女王「ですが、せめてもということでこちらを」

勇者「これは…」

女王「エルフの技術で作られた武具です。今後のお力沿えが出来ればと」

勇者「これは助かる。ありがとうございます」


父「頑張って来いよ」

勇者「もちろん。父さんこそ折角国が落ち着いたんだしちゃんと母さんに会いに行けよ」

父「気にしなくともそのつもりだ」

勇者「そっか。じゃ、行ってくる」

父「そうか。じゃあな」

――船内――

賢者「まさか魔族が出てくるなんて……」

勇者「全くだな」

戦士「やはり、砂漠の国の魔物も魔王の手の者だったのだろうか」

勇者「だろうな。だから――」

勇者「あんなのをのさばらせる魔王なんて俺達で一発ガツンとやりにいくぞ！」

勇者らしくなったのう

――最後の大陸の眼前――

戦士「冷えるな……」

賢者「あ、あら大丈夫ですか？」

勇者「エルフの国からの支給品に防寒具があったぞ。お前も使え」

戦士「そうか……ありがたい」

勇者「でーっと、ここからの進路はどうなってるんだ？」

戦士「魔の根城の大陸までは陸続きのようだ。魔物も今までより強力なものが居るやもしれない」

賢者「ですが今の私達なら、どんな困難でも切り抜けられるでしょう」

戦士「うむ。ただ…」

勇者「何かあるのか？」

戦士「というより、長らく他の国と断絶されていた手前ここの情勢が全く分からない」

賢者「でしたら、気を引き締めて向かいませんと！」

戦士「とはいえ大して事前情報が無かったのは今までも同じか」

賢者「でしたら余り気負いせずに今までの実力を出し切りましょう！」

勇者「おーいどっちだー」

ほ

し

>>154 訂正
現在地は一応陸地の一部が繋がっているが大陸としては最後から一つ手前の所

――港――

勇者「………」

賢者「………」

勇者「今回は上陸時にいきなりトラブルってのはなかったか」

賢者「あの……」

勇者「で、進むに当たって何か目印になるような場所とか分からないか？」

戦士「エルフの国がああなる以前に作られた地図だと、やや進んだ所に街があるということになっているな」

勇者「なら、とりあえずはそこを目指そうか」

賢者「は、はい分かりました――それであの」

盗人「ヘッヘッヘー」

勇者「………何で居るかなぁ」

盗人「偽女王が居ようが居まいが、人間を信用してないエルフってのはやっぱ居てね」

戦士「私達の動向を見定める者が選出されたワケか」

盗人改め盗賊「そうそう。で、既に顔を見知ってるあたしが選ばれたのさ。改めてよろしくぅ！」

――雪原――

勇者「……？」

賢者「勇者様、どうかなさいましたか？」

勇者「何か、静かじゃないか？」

盗賊「あたしずっと喋ってたんだけど」

勇者「……そういう意味じゃなくてだな」

戦士「この大陸に来てからまだ一度も魔物と遭遇していないからでは？」

賢者「そういえばそうですね」

勇者「気配みたいなのは感じるし、魔物が居ないとかじゃなさそうなんだよな」

賢者「この辺りは夜行性や冬眠している魔物が多いのでしょうか？」

盗賊「別に襲って欲しいワケでもないしそのほうが良いんじゃない？」

勇者「まあ、それもそうだが」

戦士「こちらの隙を伺っているのかもしれないし、警戒しておこう」

―――――

賢者「日が傾いてきましたね……」

勇者「目標にした街まではまだ遠いのか？」

戦士「ああ、まだそれなりにかかるな」

勇者「となると野宿か……寒さを凌げる所でもあるといいんだが」

盗賊「おっけ、ちょい待ちぃ―――鷹の目！」

戦士「何かあるか？」

盗賊「何も無いーかな？――っと村があるね。あっちの方角」

戦士「村？地図には乗っていないようだが…」

賢者「となると、魔が世に広まった以降に出来たということでしょうか」

勇者「とにかく行ってみよう」

――村――

勇者「やっと着いた……日が沈むとより一層寒いな」

盗賊「まだエルフの国の側だから、それでもまだマシなほうだけどね」

戦士「これ以上寒くなるのか？想像できん……」

勇者「ひょっとして寒いの苦手か？ならとっとと宿を探すか」

戦士「ああ、助かる…」

賢者「あの、すみません。私達は旅の者なのですが――」

青年「う、うわっ！」

賢者「あら？」

戦士「行って、しまったな……」

盗賊「何か感じ悪ぅ～」

やっときたか

勇者「この辺りの事情的に、旅人とかが来たことがなくて驚いたとか？」

賢者「申し訳ありません、私がもっと慎重に振る舞っていれば……次こそは！」

盗賊「でも何かどこも閉め切っちゃってるねー」

戦士「これでは次は……」

賢者「そ、そんな！私は彼にとってそんなにも恐ろしく映ってしまったのでしょうか……」

勇者「そんなことは無かったと思うが、でもこれは…？」

賢者「だとすると、何かこの地方独特の言い回しでもあるのでしょうか…？」

「――この村に何用ですかな？」

賢者「は、はい！わっわた私達は――！」

魔族「まあまあ、落ち着きなさい」

勇者「なっ、魔族！」

盗賊「そんな、あたしがこの距離まで気づかなかったっていうの？」

魔族「おや、驚かせてしまったかい？これはすまない」

勇者「用事があるのは俺達にだよな？なら場所を変えたい、いいか？」

魔族「ええ。立ち話も何でしょう、どうぞこちらへ。私の家がありますので」

賢者「あなたの家、ですか…？」

魔族「残念だがこの村には宿が無くてね。だから私の家へ招こうかというのだが」

盗賊「へぇ、随分と気前の良いことで」

魔族「この村の村長として当然ですよ」

勇者「………うん？今――」

戦士「村長、と言ったか？」

魔族「ああそうか、自己紹介がまだでしたね。私はこの村の村長で――」