女騎士「戦車前へ!」 (194)

昔、あるところに幼い少女がいた。

彼女は、いつも騎士たちの英雄譚を読んでいた。

そして憧れた。

死線を潜り抜け王の為に団結し戦う戦記。

数々の困難を乗り越え人の限界に挑戦する冒険譚。

そして、騎士と騎士が愛した女性によるラブロマンス。

少女はとにかく憧れた。

自分も騎士になりたいと思った。

しかし、時代は剣と魔法を使った戦いから、銃と爆弾の戦争へと移り変わり、

少女が大きくなるころには戦場を科学による殺戮が支配するようになった。




それでも、少女は騎士となった。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1449330959

「……どうしやした?ぼうっとして。あんたらしくないですぜ」

「……いや、すこし昔のことを思い出してただけだ」

「そうですかい。それより、コーヒーでもどうです、女騎士殿?」

女騎士「ああ、頂こう……すっかりさめてるな、運転手君」

運転手「そりゃあ、補給部隊の奴らが砲撃の中自転車で届けてくれたやつですからね、5時間前に」

女騎士「どうりで硝煙の味がするわけだな」




女騎士「無線機の調子は?」

通信手「ようやく魔力子管があったまってきたところです……はい、つながったはずです」

女騎士「貸してくれ……白騎士01より本部へ。命令はまだか」

本部『こちら本部、日の出とともに敵右翼へ突撃せよ。以上』

女騎士「了解」

女騎士「……まだ時間があるな」

戦争は変わった
魔法ものばっかだから期待

女騎士はぼんやりと昔のことを思い出していた。

父の死、革命、そして先の戦争。

女が軍隊に入るのには様々な制限があったが、皮肉なことに国を挙げての戦争がそれを取り払ってくれた。

士官することははすなわち騎士になることだった。少女は形だけとはいえ騎士になれたことがうれしかった。

しかし現実は英雄譚のように美しくはなかった。

初めての実戦で見たのは塹壕を埋め尽くす同胞の遺体。そして大地を、国土を蹂躙する鋼鉄の鎧。

戦車だった。

キューポラから頭だけを出すと、ゆっくりと空が白んできているのが見えた。

地平線近くの雲がオレンジに照らされる。

女騎士「日の出だ。全車エンジン始動」

『白騎士02、了解』

『白騎士03、わかった』

『白騎士05、了解』

エンジンの始動には時間がかかる。その日の早朝は特に寒いので、なおさらだった。

10分後、すべての戦車が起動した。

無線でその知らせが一号車へと入ってくる。

太陽はすでに顔を出していた。

女騎士は静かに、そして力強く告げる。動かす口からは白い息が漏れる。




女騎士「戦車前へ!」



その日の戦いが、幕を開けた。

敵、魔王軍の陣地は一見して簡単に突破できそうに見えた。しかし、2重の壕が張り巡らされ対戦車砲が隠されている。

女騎士「よく注意して進め」

戦場は雪原だ。女騎士の乗る戦車も白塗りされていた。遠くからだと目視では確認しづらい。

しかし問題はそのけたたましいエンジン音だった。鉄の塊を走行させるにはちょっとやそっとの馬力では足りず、
必然的にエンジンは大きく、そしてうるさくなる。

いずれ、気づかれる。しかし、戦いを有利に進めるためには、気づかれるその直前まで前進し相手に肉薄することが大切だ。

しばらく進むと、一面の白い大地がピカリと光り、次いで爆音と振動が車体を襲った。対戦車砲だ。

女騎士「気づかれた!戦闘用意!」

女騎士は冷静に思考した。第二射は必ず精度を高めてくる。そうすると直撃の危険性も高い。

女騎士「100M走行したら停車。三時方向、壕の切れ目に向かって榴弾。急いで」

彼女は閃光がまたたいた場所を正確に見ていた。戦車は砲を旋回させながら前進する。

4台の戦車を複数の場所からの砲撃が襲う。

魔王軍は偽装の達人だった。白い布に白い砲身で巧妙に砲を偽装していた。

1号車は命令どうりに前進し、停車。そして発砲する。ほかの戦車も同様に発砲し、それぞれ敵の砲撃を黙らせた。

派手な爆音とともに榴弾は砲を直撃し、やがて陣地には不気味な沈黙が訪れた。

女騎士は本当に不気味に思った。これで奴らが終わるはずがない。

女騎士「いったい何を隠しているんだ……?」

警戒が強まる。


その瞬間はやってきた。ある程度前進すると背後から叫び声にも似た声と共にキャタピラ音。

敵の軽戦車と歩兵だった。さらに前方の陣地からも砲撃が再開される。誘い込まれたのだ。

女騎士「古民家の中に隠していたのか!全車対戦車戦の用意を!!」

女騎士はハッチを閉じた。これから混戦になる。

歩兵を機銃で薙ぎ払い、ときにはひき殺しながら隊は前進していた。

女騎士「この距離なら敵の軽戦車ではこの戦車の装甲は抜けない!こっちから一方的に殴ってやれ!」

その直後、1号車は被弾し、激しい振動が襲う。しかし中のナットが少し飛び散るだけで装甲はびくともしない。

彼女の言葉の通りだった。

女騎士「白騎士03、05は敵陣地をたたけ!」

魔王軍は土手にも砲を据え撃ってきていた。これでは射的の的である。こちらのほうはすぐにだまった。


敵軽戦車がこちらに迫ってくる。300m、250m、そして200m。

1号車の砲塔の旋回が間に合わない。

女騎士「!!」

『fire!』


しかしすかさず2号車が発砲して事なきを得る。

女騎士「ありがとう白騎士02.おかげで助かった」

『いや、騎士様をお守りしただけですぜ』




歩兵は散り散りになって逃げて行った。

女騎士「気を緩めるな。前方から第二波がくる」

彼女の双眼鏡はやがてくる中戦車と自走砲の車列を捉えていた。陣地へとまた乗り込まれる前に陣地を奪わなければならない。




女騎士「白騎士01より本部へ、陣地を奪取した」

『よくやった。歩兵と砲を派遣する。そのまま陣地で待っていてくれ』

女騎士「食事は?」

『あったかいスープとサラミをやろう』

女騎士「楽しみにしている」


運転手「なにか嬉しいことでもあったんですかい?」

女騎士「なぜわかった?」

運転手「そりゃあ、女性の喜んでる姿なんざ戦場ではみれねえですからね、すぐわかりますよ」

女騎士「そういうものか」




ひとまず、本日の戦い、その前半が終わった。


女騎士「まだ、これからだ」

地獄は、と彼女は心の中で付け足した。




とりあえずここまで
登場人物&兵器紹介

女騎士 優秀な下級騎士(この国では士官のこと。中尉あたり)であり、英雄譚にあこがれ騎士となった。が、先の魔王軍との大戦で戦車や毒ガスにより地獄を見る。
その後新設された機甲師団に自ら志願する。年頃の乙女であるが筋骨隆々である。剣技も優秀。

運転手 白騎士01の運転手。もともとはパン屋。なのでパンにはうるさく、配給のパンに文句を垂れることもしばしば。いいやつ。

通信手 魔法使いでもあり魔法が使えるので簡単な治療もできる。よく苛立って無線機を殴る。

味方の戦車 重戦車。最新鋭の被弾経路を考慮した設計をふんだんに取り入れている。
ラジエーターの調子がよく悪くなる困ったやつだが、飼いならせば化ける戦車だ。

敵軽戦車 装甲が薄く、生産するようになってすぐ時代遅れになった。鉄の棺桶。やられ役。


騎士の指揮する戦車部隊とか完全に死亡フラグだよな

保身なき零距離射撃を敢行するオークが出てくる的なあれかと

最近絵をつけるのが流行っているみたいなので便乗してみる(ひらめアップローダは不調のようなので別所から)

今日は昼からやれると思います
戦災復興はしません(無慈悲)

出先なのでIDが一時的に変わります。ご了承を


女騎士「うまいな、このサラミ」モシャモシャ

運転手「いいもん食えんですね、戦車兵ってのは」モグモグ

女騎士「まあ、内地にいるやつらよりはいいもんが食えるさ。いつ死ぬかわからないんだからな」バクバク

女騎士は並みの男以上の量を食べる健啖家であった。厳しい戦場を生き抜くには食べるしかない。腹が減っては戦はできぬのだ。

その時、戦車の周りに固まっていた女騎士達の元に伝令の歩兵が飛び込んできた。

◆◆◆

魔王軍機甲師団の団長はオークであった。

彼はとても優秀な士官であったが、人一倍選民思想が強く、事ある事に自らと同じ種族であるオークを重要な役職に就けたがった。

魔王軍もその五割は領民からの徴兵である人間で成り立っている。それでは 不満も溜まる。当然だ。

そのため、彼は常に部下の士気の低さに悩まされていた。

「ええい、まだ第2波は橋を越えんか!」

「申し訳ありません閣下。……なにしろ木の橋は複数の戦車の荷重に耐えられないので、一両ずつ通過せねばならないのです」

「そんなことはわかっている!早くしろ!!」

「はっ、失礼します」

彼は非常に苛立っていた。

「で、先行した第3中隊はどうだ?我々の陣地は?」

「それが…中将閣下……」

「どうした。早く言え」

「第3中隊は壊滅。5両中四両が未帰還、死亡30、負傷20…「ふざけるな!!!」

「貴様だったはずだぞ!奴等の突撃は跳ね返せると言ったのは!!」

「それが…あの魔女が出たとの報告が…」

「魔女ォ!?そいつは誰だ!!」

「閣下はご存じないですか…先の大戦で戦車を生身で撃破し、この戦争で戦車隊を率い我軍に甚大なる被害を与えつづけている少女がいるという噂を…」

「そんな噂を真に受けるな!!これより我々は奪われた陣地を奪還しそのアマを叩き潰す!早く用意しろ!!」

「はっ!」

「魔王閣下命令第279号!前進せよ!」

魔王軍機甲師団第2中隊は中戦車を用意し終え、歩兵と共に攻勢準備地を出発しようとした。

「どうした三号車四号車?前進せよ!」

なかなか二台が前進しない。

それもそのはずである。三号車の乗組員は竜族であり、四号車はスライム族が乗り込んでいた。

言葉が通じないのだ

「前進だ!ぜ、ん、し、ん!!」

身ぶり手振りで示すと、ようやく二台が動き始めた。歩兵もそれに続き歩き始める。


こんな調子で第2攻勢は始まった。

魔王軍機甲師団第2中隊は陣地の前にまで進撃していた。
それを待ち構えるのは白騎士隊と陣地の野砲である。けたたましい砲撃音が鳴り響く。

「奴等、俺らの陣地にふんぞり返ってやがる。引きずり下ろしてやろう」

第2中隊6両に対して、白騎士隊は二両。二倍の数の差があった。

「その前に目の前の羊の喉元を食いちぎってやれ!突撃!!」

六両が二両に突撃する。しかし砲が当たらない。
白騎士隊二両は走っては停車、走っては停車を繰り返し、狙いをつけさせないのだ。

魔王軍は執拗に角度の修正を繰り返し敵戦車に当てようとしたが、これが裏目に出たのだ。

魔王軍第2中隊の隊長はオークだったが、彼はどことない薄気味悪さを感じていた。

(ヤツが、「魔女」がいない)

「………!まさか!!」

そのとき彼の乗る一号車を衝撃が襲った。砲塔を抜かれたのだ。砲手だったオークの残骸が落ちてくる様子を彼は呆然とした様子で眺めていたが、すぐに正気に戻りキューポラから頭を出した。そして車体より後方を振りかえる。


「……!!!!」


そこには「魔女」がいた。美しい金髪を靡かせる彼女を見た瞬間、彼は恐怖のあまり思わず失禁した。そして強く死を感じた。




「先程のお返し、させてもらおう」




魔女は不敵に笑った。

白騎士物語?

とりあえずここまでです
小林源文先生と宮崎駿監督のフレーバー強いです


このぐらいの時代の戦争物いいね
魔王軍言葉通じないのはヤバイっしょww


グダグタやってた頃のソ連並みの酷さ

撃つ、撃つ、走る、停車、そして撃つ。

白騎士01と白騎士03による背後からの強襲で魔王軍は混乱へと陥った。
そこに野砲の砲弾が降り注ぐ。
履帯を損傷し、または車体を、エンジンを貫かれ、瞬く間に敵戦車たち3台は行動不能に陥った。

女騎士「……また外した。第二射急げ」

しかし、のこり一両の中戦車は粘り強く戦った。スライム族が乗っていた4号車である。

彼らは臆病だった。臆病ゆえに、魔王軍の中でも特に慎重に行動した。その結果ここまで生き残り戦闘を続けることができたのである。

しかし、4両の戦車からの集中砲火にはさすがに勝つことはできず、それもやがて沈黙することになった。






『救援求む。こちら第5機甲師団第2中隊4号車。


            魔女だ!  魔女が出たんだ!!』

すべてが片付いた。



そう判断した女騎士は残る敵歩兵の始末に奔走する味方歩兵の援護へと回るよう、各車に指示をだした。

野砲の砲撃でできた穴に歩兵が隠れるとなかなかに厄介である。一艇の機銃がいまだにだまらない。車外のバケツを穴だらけにしていく。

ついに機銃手がそこへ機銃を向けようとした、その瞬間のことである。



けたたましいサイレン。そして地面に落ちる黒い影。


そして、大きな爆発が起きた。女騎士の視界が真っ暗になる。


女騎士「まさか……」




そこには、空を舞う異形の顔があった。



ついで爆風、車体が大きく揺らされる。


女騎士「急降下爆撃だ……!散れ!」


魔王軍はドラゴンによる急降下爆撃を得意としていた。

いまだかすむ視界で見渡すと、2号車が炎上しているのが見える。

爆弾をまともに食らったのだ。




そして、向こうを見渡すと、陣地は火の海だった。






魔王軍第5機甲師団 戦死53 負傷78 戦車9両損失 対戦車砲、野砲8門損失

味方師団      戦死20 負傷36 戦車1両損失 野砲3門損失






白騎士隊2号車の乗組員は、ついに帰ってこなかった

第一話 雪原の魔女 【終】 


やっぱ魔王といえば急降下か

今日はここまでです

世界観についてのご質問など受け付けております。というか自分が語りたいだけだからほっといても設定を公開します
ご閲覧ありがとうございました。まだまだつづきますのでよろしくお願いします

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira095920.jpg

あとようやくひらめの方にアップロードできたので改めて置いておきます。度々すいません

動力はファンタジー的な奴なのかな?
砲とかが実弾系なのか魔法なのか気になる

パン屋さんはきっとガチムチ

>>35 動力はガソリンエンジンで、砲弾は実弾ですが、電装系統が魔法に置き換わっているイメージです

しまった、IDが変わってしまった
↑のは1です。ご質問ありがとうございます

酉つかうといいお

酉をとり付ける(激寒)

今日ももうすぐ始めます

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira096001.png

の前に下手くそ女騎士を張っておきますね

炎上する陣地。

助けを求める声。




汽笛の音。



駆けずり回る衛生兵。

そして、それを見つめる自分



汽笛の音。



軋みを上げるキャタピラ。

むなしく聞こえる歓迎の声。




汽笛の音。







少女は夢から目覚めた。そこは列車の上だった。



運転手「ようやくのお目覚めですか?騎士サマ」

女騎士「どのくらい寝ていた?」

運転手「2時間ぐらいですかね、いまナパヤを越えたあたりです」

女騎士「もうそこまで来たのか。前線は近いな」

運転手「ええ、でもその途中で5人と一両、拾っていかなきゃなりませんぜ」

女騎士「忘れてないさ、……補充の兵だろう?」

運転手「そうです。……芋でもどうです?腹が膨らみます。それだけですがね」

女騎士「4個ほどよこしてくれ」

運転手「残念、3個しかないや。茹でてきます」


そこは列車の上だった。列車といっても装甲列車であり、戦車や野砲や兵員を満載している。据え付けられた武装だってある。

白騎士隊も戦車と共に乗車していた。これから前線へと向かうのだ。

新たな戦場がすぐそこで、大口を開けて待ち構えていた。

やがて朝が来て、列車はある街の駅で停車した。

ここでこの間の戦いで失われた2号車分の兵員と戦車を補充するのだ。

女騎士は、貨車に乗った戦車をつぶさに観察していた。

その戦車とは新型車両である。ついこの間正式に量産が決まり、工場から出荷されたばかりの新車であった。

傾斜した前面装甲を持ち、砲塔がない。この奇妙な構造の戦車は駆逐戦車というらしい。新たなカテゴリーに属する戦車だ。



その時、ハッチから顔を出した人影があった。

「こら、女なんぞが戦車を見てもつまらんだろう。どこかへいきなさい」

女騎士は少し苦笑して胸元の階級章を指さした。

「……! あなたはまさか白騎士隊の隊長殿!これは失礼しました!そうとは知らず!」

女騎士「いや、いい。それより君が……」

2号車車長「はっ!今日付けで白騎士隊へと配属される者です!よろしくお願いいたします!」

彼は新たな2号車の車長を務める人物だった。


2号車車長「先ほどからこれを観察しておいでだったようですが、なにかご質問などありますでしょうか?」

彼の馬鹿丁寧な口調に彼女は再び苦笑した。

書類によると、彼は戦車乗りとしては優秀だが性格に難あり、とのことである。

なるほど、性格に難ありとは馬鹿正直すぎるということだったか、と女騎士はひとり考えた。

白騎士隊にはどうにも変わったものが集まるようである。
隊長である女騎士本人が女性騎士という特殊な存在であるということもかかわっているのかもしれない。

話を戻そう。

女騎士「じゃあ質問させてもらう。この戦車の設計思想は?」

2号車車長「はい。それは『戦車を撃破するための戦車』というものです。戦車を待ち伏せして撃破するために車高は低く、
砲は強力な71口径88マルツを搭載しています」

女騎士「装甲は?」

2号車車長「80マルツあります」

女騎士「厚いな……」

女騎士は感心した。なるほど、戦車戦を考えて作られているだけあって砲口径は大きく、装甲は厚くなっている。

女騎士「君の実戦経験は?」

2号車車長「戦車乗りは3年間してきました。それにしてもあの戦いのときにこいつがあったら
……ということを考えてしまうくらいこれはいい戦車ですよ」

女騎士「わかった。ともかく君は今日から私の家族だ。よろしく頼む」

二人は強く握手した。彼の手は大きくごわごわしていた。

女騎士は他の4人の乗組員にも会って回った。歴戦の戦車乗りもいればまだ新兵のころが抜けきらないようなものもいた。

彼らのことをよく知り、実戦において作戦が最もうまくいくような指示を彼らに発することが女騎士の仕事である。これをおろそかにしてはいけない。




そうこうしているうちに列車が出発する時間がやってきた


女騎士「全員整列!点呼!」

点呼の声が上がる。その中には当然ながら先ほどの5人も混ざっている。

女騎士「全員居るな、乗車しよう」


列車は再び動き出した。
一路、前線へ

とりあえずここまで
もしかしたら今日もう一度更新できるかもしれません

出た!
ロンメ…ヤークトパンター!!

いい上司だなあ

列車はますます前線へと近づいていた。ときどき砲撃の音が聞こえる。

女騎士「次の戦場はドレスゲルか」

運転手「へい、そうですね」

ドレスゲルは元々石炭が産出する土地だったが、いまや戦争の最前線で両軍の奪い合いの対象となり果てていた。

女騎士「ところで、通信手君は何をやっているんだ?」

通信手は先ほどから熱心に通信機のダイヤルをいじっている。

通信手「あ、いや、……旅のお供に歌でもと思って、ラジオ局の電波がこないか探していたんです」

女騎士「そうか。で、なにか引っかかったか?」

通信手「はい。兵士の戯言の通信、我が国のくだらない戦況の放送……あ、ひとつ、いいものが。しかしこれは……」

女騎士「どうした?」

通信手「魔王国国営放送の、シャンソンですね……」

女騎士「いいよ、流してみてくれ」

通信手「いいんですか?敵の放送局ですよ?」

女騎士「構わないよ。音楽に敵味方はないさ」

しばらくすると外部スピーカーから、ノイズ交じりの、しかし耳に鮮やかな音楽が流れだした。

女騎士と戦車で戦場のヴァルキュリア思い出したのは俺だけじゃないはず
こういう魔法と人間以外の知的生命体が存在しつつも科学技術が発展していく世界は結構好き



  街はお祭騒ぎで浮かれてたわ
  
  太陽が輝き喜びがあふれ
  
  音楽に混じって 叫び声 笑い声が

  わたしの周りで炸裂してた

  大勢の人たちに突き飛ばされ

  ぼおっとなったわたしは

  突然振り向くと 後ずさりする

  あの人の腕の中に飛び込んだの



  群集に引きずり回され

  押し流され

  押しつぶされて

  一体になったわたしたちは

  流れにまかせて

  つながりあったわ

  花のように うっとりと 幸せに



  群集に押し流され

  踊るのは

  ファランドール

  手をつなぎあって

  有頂天で

  二人で飛び上がっては

  落ちてきたわ

  花のように うっとりと 幸せに



  喜びの笑いがはちきれて

  わたしはめちゃめちゃな気分

  すると笑い声にまぎれて

  あの人が飛び込んできたの………………

いつのまにか列車に乗っている他の兵士までもが、ラジオを聴きに集まってきていた。

女騎士「途切れてしまったな。だがいい歌だった」

通信手「魔族語がわかるんですか?」

女騎士「昔触れたことがある……しかしこういう恋愛をしてみたかったものだな」

運転手「何言ってるんですか、騎士サマはまだまだこれからでしょうに……
騎士サマならいい男なんていくらでも捕まえられますよ、ただでさえかわいいんだから」

女騎士「そうか……?ならよかった」

運転手「そうですよ……ハハハ、気づいてなかったんですかい?」

女騎士「軍隊生活が長いものだから、色事にはとんと疎くてな……ハハハ」

二人はしばらく笑いあった。

そうこうしているうちにやがて、ついにドレスゲルの粗末な駅へと列車が到着した。

もともとは立派な駅舎があったはずだが、それも敵の攻撃で無残にも焼け落ちていた。そのため、現在はバラッグのような建物で代替している。

女騎士「ここがドレスゲル……」

ドレスゲルの町はそこが激戦地だと一目でわかるような惨状だった。がれきとなった市役所の跡地には高射砲が鎮座している。

白騎士隊は全員で手分けして戦車を降車させると、燃料を補充しそのまま出発する。列車の遅れにより休憩している暇はない。

しかし、隊の士気は高かった。みな戦いの前で精神が高揚しているのだ。


目指すは、前線のさらに前線、最前線の荒野。

雪に覆われた大地に履帯の跡を刻みながら、合流した歩兵や野砲と共に前進する。

◆◆◆

魔王軍第5機甲師団の団長は部下からの報告を受けていた。

「鉱山確保のためのドレスゲル侵攻作戦は順調に進行しております」

「そうか。それは上々だ。この功績で何としても先の戦闘の汚名を返上せねばならない」

「まったくもってその通りです。
この作戦が成功すれば、必ずや閣下はさらなる名声を得ることができるでしょう」

「そうだな。しかし、新型の重戦車が優先的に回されるとは実に運がいい。それに、例のものもある
敵に機甲はいないのだろう?一方的に嬲り殺してやろう」

「それについてなのですが、閣下……」

「なんだ」

「例の白騎士隊が、今日列車でここへ到着したとの密偵の報告がありまして……」

団長は驚きのあまり椅子を蹴っ飛ばして立ち上がった。

「なんだと!あの忌々しい魔女め。まだ死んでいなかったのか……!!
まあいい。今度のわが軍は一味違うぞ。目にもの見せてやろう!!」


まあいい。こんどの」

とりあえずここまでです。文中のシャンソンは『群衆』。作詞、エンディケリセオ 訳詞 岸洋子です

用語、世界観解説から『どこそこの図、挿絵が見たい』などのご要望まで幅広く受け付けております
しばらくしたら再開します

元パン屋がどんな人なのかみたい

駆逐戦車! 駆逐戦車!

>>60 了解です

鉱山周辺の準備地で待機していた女騎士は、周りの戦場を歩いて確認していた。

その途中で、彼女は地面にぽっかりと空いた大穴を目撃した。

女騎士「この穴はなんだ?」

先に現地に入っていた護衛の歩兵が答える

「それは地下で石炭の採掘をした後の坑道をそのままにしてしまったがために、陥没してしまったところですね」

女騎士は納得したようだった。兵士の話によると、近頃軍用トラックがまるまる一台飲み込まれたという話である。

戦車もこれに気を付けなければならない。

>>61 了解です ありがとうございます

戦闘は向こうから仕掛けられた。こちらの鉱山めがけて進軍してきた魔王軍戦車と対戦車砲での撃ち合いになったということである。

しかし、こちらが茂みに隠れ奇襲したというのにほとんどの弾がはじかれてしまった。従来の対戦車砲が通用しないのだ。

これには現地司令部も焦りを隠せない様子であった。

そして、司令部はついに女騎士と白騎士隊へ出撃命令を下した。森の出口で待ち構え、戦車でたたきつぶす作戦だ。

しかし、女騎士はこれに反対した。

女騎士「わが軍の対戦車砲がはじかれるほどの戦車ならば、こちらの水準に相手が追い付いてきたというあかしであり、
従来の考え方に基づく戦法は通用しない恐れがある」

しかし司令部は考えを曲げなかった。敵が以前と比べて強大なものへと進化したことを認めたくなかったのである。

女騎士はしぶしぶ引き下がった。


そして夜の闇にまぎれて5台の戦車が準備地を出発した。


白騎士隊、出撃

あっ、なぜか酉とsagaがはずれた


森の出口にあたる場所で、5台の戦車は獲物を待ち構えていた。

やがて、エンジン音と雪を踏む音が響きだす。魔王軍だ。

女騎士「よし、始めるぞ。全車森の出口へと照準。用意しろ」

女騎士は双眼鏡をのぞいていた。

最初に先行する偵察車が出てきた。これをまず砲撃で叩き潰す。

女騎士「fire!!」

偵察車は大穴を開けられ横転した。

女騎士「これで向こうもこちらの存在に気付いたな……各車注意しろ」

1分後、森の出口から1台の戦車が出てくるのが見えた。

女騎士「第二射、fire!!」

弾は確かに当たった、しかし、この距離では致命傷にはならなかったようだ。

女騎士は緊張した。それは初めて見るタイプの戦車だったからだ。

砲塔は滑らかな曲線で構成されていた。そしてその砲口がこちらに向くのが見える

女騎士「まずい!各車散開せよ!!」

その瞬間、白騎士01のいた場所が爆ぜた。

女騎士は今の戦車ではよくて対等にしか戦いを進められないことを悟った。

女騎士「全車へ!敵戦車と600ヘイル以上の距離をとれ!」

遠距離から敵の装甲の弱点を貫くことを選んだのである。

女騎士「……私が陽動に回る!各車は敵の砲塔が横っ面をさらした時を狙って撃て!」

この選択は正解だった。たしかに魔王軍のこの戦車は砲塔の横が弱点であった。平らで弾をはじかないのだ。

白騎士01は敵戦車隊の側面に廻り、砲撃を開始した。

ぎりぎりまで接近し、走っては停車、射撃。走っては停車、射撃を繰り返す。

当然猛烈に弾を浴びるが、運がいいことに直撃弾は出なかった。

『fire!!』

ここでほかの白騎士隊の戦車の砲口が火を噴く。射出された弾の幾つかは敵の砲塔を貫いたようだった。

女騎士「やった!」


しかし、そのとき女騎士は敵戦車が再び動きだしたことに気付いた。

女騎士「……!砲塔をやられたはずなのにいったい何を……?」

猛スピードで突撃してきた3台の敵重戦車は白騎士01に衝突しようとした。白騎士01は急いで後退し難を逃れる。

運転手「やつらおれたちに体当たりする気ですぜ!」

女騎士「……なんという……」

女騎士は国を守るために殉ずるという魔王軍兵士の心構えに、少しの恐怖を覚える。

女騎士「ともかくも、零距離射撃する。徹甲弾用意。fire!!」

この距離では信管は作動しない。鈍い音を立ててエンジンに大穴を開けられた敵戦車は、沈黙した。

女騎士「これで全部か……?」

女騎士は森の出口に目を凝らす。しかし兵士すら出てくる気配はない。

彼女にはそれが不気味に思えた。あの待ち伏せの作戦を実行した隊だ。これだけでは終わらないはずだという
直感があった。

『帰投しますか?』

女騎士「まだ待て。何かくる」

女騎士の耳は地響きのような音を捉えていた。


それは巨大な戦車だった。

女騎士「多砲塔戦車……!!」

それは見れば見るほど奇妙な外観をしていた。

長い車体の真ん中に大きな砲塔が1つあり、その両脇に小さめの砲塔が2つあった。さらに銃搭とおぼしきものが見えるだけで5つついている。

その砲塔のすべてがこちらを向いたことがわかると、女騎士はとっさに身をキューポラの中へおさめた。

瞬間、激しい振動が巻き起こる。

女騎士「被害は!?」

運転手「今確認する……履帯が片方やられた!」

女騎士「そうか……白騎士02聞こえるか?」

白騎士02は新型の駆逐戦車である。そこに乗り込んでいる新しい車長は勢いよく答えた。

『ご無事ですか!?』

女騎士は真っ先に自分の身を心配してくれる車長の言葉に少しうれしく感じた。

女騎士「ああ、大丈夫だ。それよりあの戦車に5発ほど叩き込んでやれ」

『了解しました!」

『砲塔を5時の砲口へ!あののろまな象に5発叩き込め!』

『了解!』

そこからは一方的な戦いだった。見かけ上ほど多砲塔戦車は強くなかったし乗組員もよく統制されていなかったのだろう。

多砲塔戦車のそれぞれの砲塔はてんでバラバラな方向をむいたままだ。

こうなるとただの大きい的である。

多砲塔戦車は白騎士隊を驚かせるだけで終わったのであった。

白騎士01は履帯の修理をすませると、拠点02へと帰投せよとの指示に従ってきたときと同じ道筋を戻っていく。

もうあたりは夕方になろうとしていた。白煙を上げながら森の道を行く。

女騎士「今日の敵戦車、あれは新型だったな」

運転手「ええ。俺も見たことがねえ奴だった」

女騎士「本部に報告して、戦力の拡充と新型戦車の開発を要請しなければ……」

運転手「大変ですねえ、騎士サマってのも」

女騎士「ああ。おかげでこいつを読む暇もない」

女騎士は古ぼけた一冊の本の表紙を指で撫でた。

運転手「そいつはなんですかい?」

女騎士「これだよ、これ」

運転手「すいません、俺は字が読めねえんです」

女騎士「それは……すまなかった」

運転手「いえいえ。で、それはなんて書いてあるんです?」

女騎士「これはな、レイシア国英雄譚と書いてあるんだ」

女騎士は昔のことを思い出していた。
自分も幼いころ、このようにして父に題名の読み方を聞いた覚えがあった。

運転手「へえ……英雄譚ねえ。自分は竜殺しの伝説くらいしか聞いたことがないですねえ」

女騎士「竜殺しの英雄譚か」

運転手「ええ。自分も父からああいう風な男になれといわれて育てられましたよ。パン屋になりましたけどね……」

女騎士「はは、パン屋だって立派な仕事じゃないか。戦争が終わったら食いに行きたいよ」

運転手「ぜひお待ちしておりますぜ」



二人が他愛もない話をしている、その時だった。

またあのサイレンの音が聞こえた。

急降下爆撃だ。戦車に気付いたのだ。

女騎士はキューポラから顔を出した。

まさに今、一匹の竜がこちらに向けて爆撃を行おうと、降下の姿勢に入ろうとしているところだった。

女騎士は運転手に顔を向けた。



女騎士「運転手君。貴方、竜殺しをやってみたくないか?」

運転手は困惑した。

運転手「竜殺しですかい?それはどういう……」

女騎士は声を張り上げた。

女騎士「砲撃用意!目標、真正面!降下してくる竜!!」

その時戦車にのっていただれもが困惑した。だが、次の瞬間には女騎士の言わんとすることを理解した。



戦車砲で竜を撃ち落とす気なのだ。


女騎士は竜が爆弾を落とすぎりぎりまでひきつけようとした。

女騎士「まだだ……5、4、3、2、1」



女騎士「fire!!」




運転手は思わず目を閉じた。しかし、やがて襲い来るはずの地獄への振動は訪れなかった。

かわりに、叫び声にも似たなにかの断末魔が聞こえた。



女騎士は一安心した。弾は竜の翼に直撃し、すぐ横の森の中へ墜落したのだ。

女騎士「やった!!」

運転手は呆然としていた。砲手も、装填手も、機銃手でさえも、放心状態にあった。

女騎士は逃げる場所と時間のない状況の中、人生で最大ともいえる博打に出た。



そして、勝利したのであった。

敵新型重戦車6両、超重戦車1両を撃破し、竜1匹を戦車で撃墜する。

この前代未聞の戦果をあげた女騎士の名は敵味方問わず広まることとなる。



ともかくも、その女騎士当人はそこから帰投する途中、今日の食事のことしか考えていなかったことは、

ここには書かなくてもよい事実であろう。

第二話 竜殺し 【終】

今日はここまでです。ご閲覧ありがとうございました!

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元パン屋の運転手です

乙!
敵の新型重戦車見たい

味方には英雄だし敵には魔女だな確かに

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駆逐戦車です
敵の新型了解しました

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貼れてなかった見たいですね
失礼しました

人間側はドイツ戦車風なんだね

>>82
魔女の婆さんの呪いだ!
婆さん違うけど

俺のケツをなめろ!交信終了!!

というわけでしばらくしたらおっぱじめます

魔王国との戦争を繰り広げているいくつかの国のうちのひとつ、レイシア国の新聞には必ずその月の『英雄』を紹介する欄があった。

『英雄』とは、その月にあった戦闘のなかで多大な功績をあげた陸、海の軍人のことであり(航空兵力はほとんどないのだ)、
王都っ子のあこがれの的であった。プロパガンダ効果は抜群だ。

さて、われらが女騎士は帰りの列車で機甲師団本部のある王都北西へと帰還してきていた。
軍用列車は立派なつくりのホームへと入るなり、たくさんの数の兵士を吐き出し始める。彼

そのなかに白騎士隊のメンバーも入っていた。


女騎士「ようやく王都についたな」

運転手「久しぶりの温かい寝床ですね」

二号車車長「自分は王都は人生で二度目です。広いですなあ」


皆それぞれ感慨に浸っている。

すると、話しかけてくるものがいた。


「みなさん!こっち向いてください!」

その瞬間、強い光が瞬く。フラッシュをたかれたのだ。

「……はい、ありがとうございます!『今月の英雄』の欄のトップはこれで決まりですね!」

女騎士「まて、いきなり写真を撮っておいてなんだお前は」

運転手「写真を撮られたことなんて人生ではじめてだあ……」

記者「あ、申し訳ありません。自己紹介が遅れましたね。私はスベルダ新聞社の記者です」

彼は名刺を差し出した。そしてふたたび唐突に写真を撮る

通信手「スベルダ新聞社……女騎士さん、かなりの大手ですよ!」

女騎士は不審げな表情で彼を観察していた。

女騎士「それで、その新聞社の記者さんが何の用だ?」

記者「はい!『今月の英雄』欄用の写真とインタビューをさせていただきたいんです」

女騎士「『今月の英雄』……?なんで私にインタビューするのだ?」

記者「え?」

記者「……もしかして、ご存じないのですか?」

女騎士「?」

記者「今王都は貴女のうわさでもちきりですよ!戦車であの竜を落とした騎士がいるって!しかも女!」

女騎士「そうだったのか……」

運転手「そりゃ有名になっちまいますね」

女騎士「それで、さっそく私のことを嗅ぎつけて取材に来たわけだ」

記者「ご理解が早くて助かります。では、歩きながらでいいのでインタビューさせていただきますね」

記者「軍に入営なされてどのくらいになるのでしょうか?」

女騎士「あれは先の大戦のときだったから、4年前。14歳のころに騎士になった」

記者「それからずっと戦車乗りを?」

女騎士「いや、最初は騎兵だった。だけど一年もしないうちに戦車兵になった」

記者「それはどうして?」

女騎士「……言わないといけないか?」

記者「いえいえ、言いたくない事なのであれば結構ですよ。敵は手ごわかったですか?」

女騎士「ああ。魔王軍はいつもてごわい。それに先の戦いでは新型……おっと、これは軍機にあたるな」

記者「新型……なんですか?」

女騎士「言えない」

記者「新型……」

女騎士「それには答えられない」

記者「……質問を変えましょう。ずばり、お好きな方はいらっしゃるんですか?」

女騎士「……色恋には疎くてな」

記者「戦争が終わったらしてみたいことは?」

女騎士「特に考えてない」

質問攻めは本部に到着するまで続いた。女騎士は始終そっけない態度だったが、どこか緊張している様子もあった。

師団本部の前で記者と別れると、女騎士は中へと歩みを進めた。

前に立つ衛兵にかるくあいさつすると見事な敬礼を返される。

女騎士はこれだけで気が引き締まるような気がした。

赤いじゅうたんが敷かれた廊下を歩き、師団長の部屋のドアの前に立ちノックする。

女騎士「失礼します」

「入れ」

そこには太った男が待っていた。

女騎士「白騎士隊、王都へと帰投しました」

師団長「そうか。ご苦労だった。大きな手柄をあげてくれたようだな。まったく、君の身のは余るくらいの」

師団長は少し忌々しげに女騎士を見た。

女騎士「……それはどういう意味でしょうか」

女騎士も負けじと睨み返す。

師団長「言葉の通りだよ。下級騎士でしかも女の君にはもったいない」

女騎士「そうですか……あなたのその椅子もあなたにはもったいないように私には思えますね」

師団長「なんだと……!!」

師団長は怒りをあらわにした。

女騎士「言葉の通りです」

師団長「なめやがって!!貴様の部隊に優先的に新型をまわしてやったのは誰だと思っている!!」

女騎士「アレは私が独自に行った交渉の結果回してもらえることになったはずですが?
あなたはこれっぽっちも協力されていませんよね?」

廊下の外では白騎士隊のメンバーが待機していた。

通信手「あー……、またやってる」

2号車車長「そんなに仲が悪いのか……」

運転手「ひゅーひゅー!騎士サマやっちまえ!」


師団長「書類にハンコを押したのは私だ!」

女騎士「そうですか。ありがとうございます。では、これからもハンコ押しのお勤め、頑張ってくださいね」

師団長「貴様あ!!!今日という今日は我慢ならない!!」

頭に血が上った彼は引き出しから拳銃を取り出した。

次の瞬間、彼の首筋に何か冷たいものが当たる。

女騎士が剣を抜いて突きつけたのだ。師団長はのどをひきつらせた。

女騎士「……その引き金を引いたら、その瞬間貴方の首は飛ぶことになります、それでもいいのですか?師団長殿」

師団長は黙り込んだ。その肥え太った顔を悔しさにゆがませる。

女騎士「報告は以上です。失礼しました」

とどめとばかりに彼女は見事な敬礼をしてみせると、そのまま部屋から出て行った。


その夜、さんざん「一兵卒に落としてやる」だのと暴れまわる師団長を落ち着けることに
側近の兵たちが骨を折ったということは、ここでは語る必要のないことである。

その後、苦々しい顔をした師団長の副官から功績への見返りとしての休暇を言い渡された女騎士は、隊のメンバーと共に駐屯地へと帰還するのだった。

この分じゃ出世は当分見込めないな、と女騎士は思ったが、その顔はどこか晴れやかだった。

こうして白騎士隊はしばらく戦争を休むこととなる。しかし、彼らの戦いはこれから始まろうとしていた。

その時、冬を迎えようとしている王都には聖夜が近づいてきていたのであった。

第三話 一悶着 【終】

とりあえずここまでです。次は閑話を予定しています

女騎士の戦車の俯角ってどのくらいなんだ?

>>96 だいたい-5°から-8°を考えています

竜落とすには迎角じゃないのか

迎角は30°ほどとることができます
ドイツの虎戦車みたいなポジションと性能です

こういう世界観っていいよね
虎の砲を弾ける装甲で砲の横が弱点って事は新型はスターリンかな?

無能な上官は時に敵より怖いな

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敵の新型重戦車とその写真です

閑話をすこし書こうと思うのですが、内容について少しアンケートを。

①『女騎士と見る世界情勢の今』これまで間接的にしか語られることのなかった作中世界の現状の解説

②『戦車開発汗まみれ』女騎士たちの乗っている戦車が完成するまでの小ネタ

③『白騎士中隊王都にて奮戦す』休暇中の彼らの身にある災難が降りかかる。

このレスより下4まで安価をとります


だが欲を張れば全部かな

質問だけど魔法ってのはもう直接攻撃には余り使わない感じ?回路とかだけ?

まだ閑話より物語進めて欲しいかな…

>>104 魔法はこれからバンバン登場させなければと考えていたところです。
次の戦場では魔法の戦いが描かれると思います
下2まで安価です

下4じゃなくて時間制にすりゃよかったか……
あと一票です。下1

2

アンケートへのご参加ありがとうございます。現在この先の話を構成している途中なので、先に進まずに閑話を投下させていただきます。すいません。

では、間もなく始めます



これはちょうどドレスゲル攻勢から帰還する列車の中でのできごとである。

通信手はいつものように自前の野戦ラジオを戦車のバッテリーに接続し、空中を伝わっていくみえない波を捉えようとしていた。

『ザッ……我が国が魔王国との戦争を開始してから10年を迎えようと……』

通信手「もう十年なのか……」

女騎士「何が十年なんだ?」

通信手「あっ女騎士さん。いや、今年で魔王国との戦争が開戦してから10年になるそうですよ」

女騎士「もう十年なのか………」

通信手「長いですね……そもそも、我々はなぜ魔王国との戦争を開始したのでしょうか?」

女騎士「知らないのか?」

通信手「学校で大まかな流れは習いましたが、詳しくは……」

そこへ運転手もやってきた。

運転手「俺も知りたいですわ。なんでこの戦争は始まったんですかいね?学がねえもんで詳しくは知らないんですわい」

女騎士「わかった。じゃあ、少し講義しようか。なぜ戦争になったのか、それを理解するにはまずこの国と魔王国の歴史を紐解く必要がある」

>>101
前線視察に来ると死ぬ運命が待っています
しかもこれまた敵への恨みがものすごい勢いで溜まっているかのごとく

しかし、辻ーんみたいな、兵卒の任期のあるもっと迷惑なクズに比べれば、シンプルクズは簡単で良い

まず、この世界に神(いるのかはわからないが、私はあんまり信じていない)は3つの大陸を作り、多種多様な種族の人類を作った。
その中の一種族である、身体能力はさほどすぐれていないヒト族は、偶然にも真っ先に道具を作り出した。
そしてその道具や武器でほかの種族を地上から駆逐していった。有史以前の話だよ。
そして、人類が文明というものを築くようになったころには、
数の比率でいうとヒト族とそれ以外がだいたい半々になっていたと考えられている。これは最近の学説だ。

しばらくすると、3つの大陸の中で北半球に位置するこのアゼリア大陸にも文明が芽生えた。
それはいくつかのヒト族が治める王国だった。王国は異種族が作ったいくつかの国と戦争を繰り返すようになった。

中世にはいってしばらくすると、異種族たちはそのバラバラな国を束ねる更なるリーダーを求めるようになる。それが魔王だ。
異種族は魔王の名のもとに一つになり、魔王国ができた。当時、そして今でもっとも大きい国だ。

危機感を覚えたのはヒト族の王国だった。彼らもまた当時の共通の宗教だった十字教のもとに団結し、魔王国と争いを起こした。

これがかの有名な十字軍であり、今のこの国に流れるナショナリズムの源流だ。そして、両者の戦いはついぞ決着を見せなかった。

そしてしばらくは平穏な時代が続いた。
平穏な時代といっても魔王国との関係はよくならなかったし、こんどはヒト族が作った王国の間でも争いが起きた。
さらに、国の民間の商取引への介入による各地でのギルド制の崩壊が深刻な社会不安と経済恐慌を生み出したりもした。

そんな関係性に転機が訪れたのが、今から14年前のこと。

われわれの国から見て隣国にあたる王国の皇太子が魔王国の人間に暗殺された。

そして、これが引き金となって戦火が瞬く間にこの大陸を覆い尽くす。

経済的不安定、それのより高まる国民の不満、そして排外的思想の拡大。それらが悪い方向に働いた結果、
第一次対魔大戦が勃発したわけだ。

この戦いは宗教の戦いでもあったし、有史以前から続く種族の戦いでもあったし(このときにはすでに魔王国にも人間がかなりいたが)、魔王国は油田と魔鉱石の輸出を停止する措置をしていたので、経済の戦いでもあった。

大戦は元々ヒト族が作り上げたいくつかの王国対、魔王国とそれに味方する王国という構図になった。我が国はもちろん魔王国側と敵対した。

この戦いは、大量殺戮の戦争だった。この世の地獄がそこにはあった。

魔王軍は機関銃により我々騎士を馬ごと打倒し、魔法化学で製造した精神ガスを散布し、そして、塹壕を戦車で蹂躙した。

私はその時14歳だった。ずっと憧れていた騎士になったことに純粋な誇りと自信を持っていた。

そしてあの地獄の釜に放り込まれた……。

パン屋さん絵ありがとうございます

話を戻そう。ともかく、この第一次対魔大戦はこちらに有利となる条約を締結し終わった。これが4年前の話だ。

そして2年の間平穏な日々が続いた。いわゆる戦間期だ。しかし、その間、両陣営は急速な勢いで兵器の開発に力を注いだ。

相手に後れを取ってはいけない。そんな妄執にとりつかれた人々は、戦車をいつしか陸戦の王者にまで仕立てあげてしまったんだ。

そして、戦車の製造を禁止されていたはずの魔王国が機甲師団を4個率いて隣国に攻め入ったのは、2年前のことだった。

そうして今の戦争が始まった。

女騎士「これまでの歴史的経緯はこんなものかな」

通信手「そうだったんですね……じゃあ騎士は十字軍が発祥だったんですか?」

女騎士「よく知ってるね。もともと騎士というのは武装した聖職者のことだったんだ。彼らが危険な地域にある教会を守り、
教会の名のもと商人たちを守ったから十字教は商人たちと共に各地に広まったんだね」

運転手「俺には難しくて何が何だかわからねえです……」

女騎士「ははは、そうか。じゃあ、今の各地の戦況を見てみよう」

魔王国 広大な大地と資源、人口を擁し、陸、海、空軍を持つ。現在南の国教で接する3国と交戦中。同盟国は周辺の2国。占領国一国
       南部戦線 レイシア王国含む2国と交戦中。やや押されている。

レイシア王国 魔王国と交戦中。東と国境を接する国と同盟を結び共に戦う。陸軍(騎士団)のみ
       北部戦線 魔王国と交戦中 やや優勢。
       西部戦線 魔王国と交戦中 やや劣勢。

レイシア王国東の同盟国 内海に接し陸海軍を持つ。
       北部戦線 魔王国と交戦中 五分の戦い。
       海戦   魔王国とその同盟国の連合艦隊と交戦中。やや優勢。

レイシア国西の同盟国 魔王軍による侵攻を受け占領される。

女騎士は世界地図を取り出して説明していた。

女騎士「レイシア国は2月の大規模攻勢で北部戦線の魔王国の都市バレクスを攻撃する手はずとなっている。
我々も参加するぞ」

運転手「この戦争もじきにおわりますかねえ」

女騎士「我々が勝つ形で終わったとしても、次は同盟国の間で魔王国の分割争いが起きるだろう……なかなか一筋縄ではいかないものだな」

しばらく3人はうむむ、とうなっていたが、通信手が口を開いた

通信手「……大丈夫ですよ、きっと平和な時が来ます」

女騎士「そうだな。そのためにも、我々が勝たなければならんな」


女騎士は、国土を、そして国の人々を守るという騎士としての志を新たにするのであった。

窓の外の平原には、間もなく吹雪が訪れようとしていた。

閑話『女騎士と見る世界情勢の今』【終】

今日はここまでです

次回から本編へと戻ります。ご閲覧ありがとうございました。
ご質問や感想、挿絵のリクエストなど、どんどん受け付けております

この世界では航空機は発達してるの?

>>122 魔王国はもっぱら軍で竜を使っていますし、レイシア国も竜を飼い馴らす研究に心血を注いでいるので、
航空機は実用段階には至っていません。巨大な飛行船が航空兵力として注目されたこともありましたが、
魔王国の竜によって撃墜されることが続発したので、やがてそれも消えていきました。

しばらくしたら始めます。お待たせしてしまい申し訳ありません

期待

魔法。

素養を持つごく一部の人間にしか使用できない神秘の術。

魔法は古代、中世に急速に発達した。もう死ぬしかない人を癒し、錬金術によって世の中を便利にした。

しかし自然科学という学問がそうであったように、魔法もまた凶悪な一面を持っている。

火魔法は兵士たちを焼き尽くしたし、錬金術は恐ろしい毒ガスを作り出した。ひとたび戦争がおこると、魔法使いは皆人殺しの為に駆り立てられたのだった。

そして、この戦争も例外ではなかった。

◆◆◆

女騎士は戦車のキューポラから顔をだし、双眼鏡で雪原の地平線を見ていた。

通信手「何か見えますか?」

通信手はコーヒーを沸かしながら聞いた。

女騎士「小さく城砦が見える。あそこが目的地だ」

通信手「えっと……ノイベンカストラ城でしたっけ」

今回の任務は、北部戦線での孤立した部隊の救援だった。白騎士隊にはこの手の難しい任務がよく押し付けられる。

孤立したのは歩兵大隊3個である。情報伝達が遅れ彼らだけ撤退し損ねた。敵の進軍はすぐそこまで迫っている。
そこで中世から存在するノイベンカストラ城砦に逃げ込んだというわけだった。

本部は当初彼らを捨て石にし魔王軍を張りつかせ、その隙に壊乱した部隊を立て直そうと考えていた。
ひどい話だが、戦争とは非情なものだった。

ところがそれはしばらくののちに撤回された。

女騎士「まったく、変なところに王族がいたものだ……」

歩兵大隊隊長のひとりに王族の出の者がいたのだ。こうなると国として見捨てるわけにはいかない。

白騎士隊は最悪その王族だけでも連れて帰還せよとの命令を受けていた。

そのとき、野戦本部から通信が入った。

『本部より白騎士隊へ。ほかの戦車隊、歩兵隊と協同しながら突撃せよ』

女騎士は持っていたコーヒーを一気に飲み干し、声をあげた。

女騎士「白騎士01から全車へ!発進用意!やつらの背後をつくぞ」

『白騎士02、了解!』

『白騎士03、了解』

他の車長からも了承を示す通信が入る。



女騎士「よし、戦車前へ!」


この日の戦闘が幕を開けた。

女騎士「4時の方向にトーチカがある。撃て」

戦車砲の轟音が鳴り響き、その背後から歩兵が走り出した

奇襲に気付いた砲陣地から砲兵が逃げ出すのが見える。野砲の方向をこちらに向けて撃ってくるものもいたが、
すぐ歩兵の銃弾によって倒れていった。

包囲網に穴が開く。その瞬間のことだ。

突如として、3号車が炎に包まれた。

『脱出する!』

女騎士「三号車!なにがあった!火炎瓶か?」

女騎士はキューポラから身を乗り出して確認すると、黒いローブに杖を持った集団がみえた。

彼らはこちらに狙いを定めると杖を振る。
すると足元に幾何学的文様が浮かび、戦車の下にも同じ文様が浮かんだのが見えた。

通信手「魔法使いだ!!」

通信手は魔法の心得があった。そのため彼らが魔法使いだということに即座に気付くことができた。

女騎士「魔法使い!?この場から離脱しろ!焼かれるぞ!」

白騎士01はすぐ魔方陣の下から離れた。コンマ数秒後に火柱が上がる。

それはとても厄介な相手だった。魔法使いは戦車と比べてはるかにすばしっこく、
それでいて戦車と渡り合える戦闘力を持っていた。

「機銃がきかない!」

女騎士「どういうことだ!?」

通信手「おそらく奴らのローブには特殊な魔法が!きじゅうていどではなんとも……戦車砲くらいじゃないと!」

女騎士「そうか……運転手!車両を後退させろ!奴らとの距離をとれ!全車分散し私に倣え」

運転手「何をするんですかい!」

女騎士「戦車砲じゃないとだめなら、戦車砲をあててやる!目標、正面の黒ローブ!」

「あたりっこないですよ!」

女騎士「榴弾なら近くに着弾するだけでも違うはずだ!」

白騎士隊はスモークチャージャー(発煙弾を発射する装置)を使って目くらましをした後、いったんその場から後退した。

女騎士「煙が晴れたら撃て……よくねらえよ!」

黒いローブは何らかの意味があったのだろうが、白い雪原ではよく目立った。

爆炎をあげて発射された榴弾は、運よく黒いローブの魔法使いたちを吹き飛ばしたのであった。

城周辺まで到達した白騎士隊を迎えたのは、軍用車に乗り込んだ救出対象の王族その人だった。

王族「よくぞ参ったな。さ、早く私を本部まで連れて行ってもらおう」

女騎士は困惑した。

女騎士「しかし、ほかの者たちはどうしたのですか?歩兵三個大隊の兵たちは?」

その王族は顔をしかめた。

王族「奴らのことなどどうでもいいだろう」

女騎士「どうでもよくありません。どうしたのですか」

王族「歴史あるノイベンカストラ城を敵の手に渡らないよう死守せよ、と言ってきた。
奴らはみじめにも魔王軍なんぞに負け敵の中に取り残された敗残兵だ。このままのこのことかえってくるなんてしたら、わが王に顔向けできんだろう」

女騎士「……それは、玉砕せよ、ということか」

王族「そうだ。最後まで抗戦し、誇りある死を遂げるべきであると命じた」

彼がこの言葉を言い終わる前に、彼は地に倒れ伏していた。

女騎士が殴り倒したのだ。

女騎士「ふざけるな。お前のような無能な指揮官が、この状況を招いたのだろうが」

女騎士は冷たい目をしながら言った。

王族「誰に向かって口をきいている!」

女騎士「お前だよ。あいにく、お前のような無能と口をきいている場合ではないのでね、行かせてもらう」

王族「まて!俺を連れて帰ってくれるんじゃなかったのか!」

女騎士は振り返らずにそのまま戦車へと乗り込んだ。



運転手「……いいんですかい?」

女騎士「……本部にはこう言っておくことにした」



女騎士「王族殿は不在。歩兵三個大隊と、みじめな敗残兵が一名いただけだった、と」

その後、開いた包囲網の穴から歩兵三個大隊は戦車隊の援護を受け撤退。

しかし、そこに例の王族の姿はなかった。

話によれば、一人で脱出しようとしたところを敵に射殺されたとのことだ。

女騎士は、帰りの列車で一人ため息をついた。


女騎士「まったく、損な役回りだ」

冬の空はどこまでも晴れ渡り、女騎士の長い髪を冷たい風が揺らしていた。


第四話 黒いローブ 【終】

今日はここまでです。ご閲覧ありがとうございました

実際無能な上官殺しってあったらしいからな…


まあ、味方の兵士を後ろから打つと言う極悪非道なソ何とか軍があったらしいしね...上官の一人や二人ぐらいは普通に殺されてるさhahaha


敗戦直前の満州でむかつく上官を殺して埋めたって兵士の証言があったな

後ろ弾は各国軍隊で有る話

王族閣下は敵に撃たれたんですよ(目をそらしながら)
お待たせしました。間もなく始めます

2月。レイシア国の気象観測所は異常な冬を記録していた。
厳しい冷え込みと豪雪。レイシア国の北半分は雪につつまれた。

さて。その影響は戦争にも影響をもたらす。双方の兵士は凍え、エンジンや砲は凍りついた。

戦線は多少の勝ち負けはあれど、おおむねこう着状態にあった。

しかし、レイシア国騎士団本部は焦りを隠しきれなかった。
このままでは寒さが厳しい魔王国への前線の突出部が維持できない。雪に阻まれ補給もままならず、いつ突破されてもおかしくない状況だ。

この状況を打破すべく、騎士団本部ではある方針が策定された。
これは、前線が維持できている今のうちに大軍を送り込み、一気に魔王国の地方都市まで進軍しようという大胆なものだ。
この攻撃を実現するために、寒冷地仕様のコート、白塗りの鉄ヘルメット、燃料凍結防止剤などの生産が始まり、専用の教本が作られたりした。


歴史に残る大攻勢が始まろうとしていた。

◆◆◆

魔王軍はレイシア国が近いうちに攻撃を仕掛けるということを、情報部の活躍によってしっかりとつかんでいた。
そのため、あらかじめ侵攻が予想されるルートに見張りの部隊を配備し、それに備えた。

雪で白くなったアウトバーン(街道)のわき林に、一台の偵察車が潜んでいる。魔王国の見張り部隊の車だった。

偵察兵1「本当に来るんですか?やつらは」

偵察兵2「いいから黙って見張れ……おい、音が聞こえるぞ」


彼らの前方数十メートルを戦車の車列が通り過ぎていく。レイシア国の主力重戦車だ。

偵察兵1「ほんとにきやがった……えっと、いち、にー……両手の指の数じゃ足りねえ!」

偵察兵2「バカ!きちんと数えろ!かなりの大部隊だ!」

彼らの前を通り過ぎていく戦車は100台を超え、200台までに膨れ上がった。
始めてみる戦車の大部隊に、彼らは震え上がった。

偵察兵2『ほ、本部!200台近い戦車が52番路を北へ進軍していってます!!』

この報はすぐに魔王軍野戦本部へと届けられた。




◆◆◆
大攻勢の情報が漏れているようだ、との密告が本部に舞い込んだのは、作戦決行の1週間前だった。
これを受け、本部は急きょ侵攻ルートを変更し、元のルートには代わりに陽動部隊を配置した。

女騎士たち白騎士隊は、この陽動を任されていた。

白騎士隊は雪で白くなったアウトバーンを進む。女騎士はキューポラから身を乗り出し、あたりを常に見張っていたが、ふと何かに気が付いた。

女騎士「あそこに偵察車がいる」

砲手「撃ちますか?」

女騎士「いや、見張らせておけ。これは陽動だからな」

運転手「この寒い中ご苦労さんだ」

彼らはひとまず素通りした。


しかし、白騎士隊がその場から300mも進んだその時、女騎士はある指示を各車に出した。
女騎士は地図をしきりに眺めていた。

女騎士「その道を通ってぐるっと回って戻り、また同じ道をいくぞ。全車白騎士01に続け」

運転手「なんでそんなことをするんですかい?」

女騎士「あの偵察車の前を何度もとおってやるのさ。そうすると奴らは大軍が来たと思い込むだろう?」

はたせるかな、女騎士のもくろみは見事に成功し、魔王軍はまんまとだまされたのであった。

女騎士たちは進路をそのまま北へとり、先行した本隊への合流を目指す。

やがて夕方が迫ってきた。空気がどんどん冷えていく。

運転手「糞、ペリスコープが曇ってきやがった」

極寒の夜が近づいていた。



◆◆◆


戦車猟兵とは、その名の通り戦車を撃破するための狙撃手や対戦車兵のことだ。魔王軍にもこれにあたる兵科が存在した。

魔王軍戦車猟兵大隊長はヒト族の人間だった。彼は200台の戦車が魔王国本土に迫っているという報告に、
レイシア国に忍び込ませたスパイの情報に間違いがなかったことを確認したが、同時にある疑念を抱いた。

「数字が偏っている……」

報告によれば、重戦車200両、トラック50両、軍用車50両とのことである。
これだけ見たら大部隊が侵攻中だと思うはずだが、よく考えてみると戦車以外の軍用車の数が異様に少なかった。

本来なら戦車の補給の弾薬や補充の部品を持ち運ぶため、もっと多くのトラックが必要になるはずである。

「おかしい。念のため現地に行って調査する。車を出せ」

戦車の車列を発見した場所に向かった彼は、たしかにたくさんの戦車のキャタピラの跡があることを確認した。
また、彼は定規を履帯の跡に差し込んだ。沈み込みの深さから重戦車が刻んだ跡であるということがわかる。

「……この道をしばらく直進してくれ」

それでも疑念が晴れない彼は、乗っている車をさらに直進させた。

「……!! この履帯痕は!」

それは道からおおきくそれ、森の中を通って後退し、再び偵察車がいた場所から後方200mに戻る軌跡だった。

彼は眼を見開いた。



「…………どうやら、レイシア国には優秀な戦車乗りがいるらしい……」

彼はまんまとだまされたのであった。もうすでに来る戦車の大部隊に備え、大隊は移動と設営を完了させてしまっていた


大隊長は帰りの車の中で、静かに闘志を燃やしていた。





「我々をだました報い、必ず受けてもらうぞ」







とりあえずここまでです。ご閲覧ありがとうございました

お待たせしました。しばらくしたら再開します。

やったぜ

室内灯が切れ真っ暗になった車内を、ランタンの明かりが照らす。
鉄さびと油のにおいが漂う戦車の中で、乗組員は2人をのぞいて眠りについていた。
起きているのは女騎士と運転手だけである。

女騎士「今日中に本隊と合流することはできなかったな……」

運転手「明日までに合流できんと置き去りにされる可能性もありますね」

女騎士「あの師団長のことだ。それくらいはやりかねん……」

運転手「まあ、あしたには本隊に追いつけるはずです……何事もなければ」

二人の吐く息は白く、鉄の棺の中は凍りそうなくらいに冷えている

女騎士「そうだな。まずは前進することに努めよう」

その時、ごんごん、と鈍い音が響く。誰かが戦車の外板をたたいているのだ。

女騎士は不審に思い腰の剣に手をかけながらハッチを開く。
そこにいたのは見張りとして立っていてくれた歩兵の一人だった。

まだ若い歩兵は息を切らせている。

女騎士「どうしたんだ?」

「ほ、報告します!」

歩兵は大きな声で叫んでから、今は夜だということに気付き、声を潜めてつづけた。

「それが、先ほどから北西の空に信号弾が上がったのを観測しました!」

女騎士「信号弾?何色だ?」

「緑です!」

女騎士「わが師団の通常使用の符牒だと、集合せよ、か」

運転手「おそらく友軍……友軍の信号弾ですぜ」

女騎士「なぜそうわかる?」

運転手「魔王軍の信号弾には緑はなかったはずです」

女騎士「さすがは古株の戦車乗りだな、わかった。偵察にいってみよう」

女騎士「歩兵から夜目の利くものを3人選出してくれ。装備は小銃に耐寒装備」

間もなくやってきた3人と共に女騎士は偵察へと繰り出した。

冬の道には恐ろしく雪が積もっていた。ザクリ、ザクリと音を立てアウトバーンを進む。

しばらく2kmほど進むと、やがて開けた場所に出た。一面に背の高い枯草が広がる。

「ここに友軍が……?」

女騎士「シッ、静かに」

小さく話し声が聞こえる。

『オー寒い寒い』

『しかし、見張りとはついてないぜ。俺たちこれから何と戦うんだ?』

『なんでも、レイシアの戦車隊らしいぜ、俺たちにかかればデカい的よ』

女騎士「魔王国語……!!」

女騎士はゆっくりと銃を降ろし、彼らに近づいた





『しっかし女がいればなあ……男ばっかでむさくるしくてたまらねえぜ』

『お、噂をすればそこに、かわいこちゃんがいるぜ。どうしたんだい?道に迷ったのか?』

「そうなの、兵隊さん。よければ案内してくださらない?」

『いいのかい?俺らはオオカミかもせれないぜ……きみのようなかわいい子を襲って食べちゃうんだ』

『まて、その子様子がおかしいぞ……なんで剣なん……』

その瞬間、二人の兵士は抜かれた剣によって切り裂かれた。断末魔を響かせることもなく二人は地面に倒れる。

女騎士「襲って食べられるのはどっちだろうな。おい、三人とも、こいつらの死体をくさむらへ運んでおけ」

女騎士は二人の死体から手帳を抜き取りながら随伴の兵士に命じた。

手帳を開くと、所属部隊の欄に戦車猟兵の名前が見える。

女騎士「戦車猟兵か……」


次なる敵は、すぐそこまで迫っている。

◆◆◆

運転手「それで、その信号弾は我々をおびき出すための作戦だった、と?」

女騎士「おそらくそれで間違いないだろう。鹵獲されたものが使われたんだ」

残念ながら敵の規模は、昨日の偵察だけではわからなかった。

女騎士の心の中にはある不安があった。

敵がこちらと同じ中隊規模なら圧倒できる。

しかし、敵がもし、こちらの侵攻部隊すべてを叩き潰せるだけの兵力を持っていたとしたら……

女騎士(戦いは、絶望的なものになる)

女騎士(後退するか?しかし、このままでは補給が持たない……燃料切れを起こして、レイシアにつくまでに車両ともども野垂れ死にだ)

女騎士「戦うしか、ないか」

女騎士は覚悟を決めたのであった。

◆◆◆
魔王軍戦車猟兵大隊長は、煙草をふかしながら部下の報告を聞いていた。

「それで、例の信号弾は上げたな?」

「はい、あげました。しかし敵が釣られた様子はいまだありません」

「そうか……まあいい。やつらの進軍速度が一定なら、今日明日でこの草原を通り抜けるはずだ」

「そこを奇襲……ですね」

「背の高い植物に隠れれば、対戦車砲も狙撃手も、自らに接近する歩兵さえも敵からは見えづらい……ベテランの君たちならわかりきったことか」

「あの、ひとつ気になることが」

「なんだね」

「見張りに出た兵士たちのうち、2人が行方不明です」

「そうか……妙だな」

すると、設営された陣に新たに兵士が飛び込んできた。

「行方不明だった兵士2人が、死体で発見されました!剣で切り裂かれていました!」

それを聞いた大隊長は唇をゆがませた。



「諸君、敵は近くまで来ているようだぞ!戦闘準備に入れ、狩りの時間だ

今日はここまでです。短くて申しわけありません

ご質問、挿絵のリクエストなど、いつでも受け付けております。ご閲覧ありがとうございました


魔王軍の対戦車猟兵見たいな

魔王国侵攻作戦はバルバロッサ作戦みたいなもんだな 負けフラグか

短期決戦挑んでかったれいはあんまないような

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira096431.jpg

魔王軍の対戦車猟兵です
明日(というか今日)の夜より再開します

遅れて申し訳ありません
一時間後に再開します

魔王国の大地の朝は遅い。それはひとえに高緯度であるからである。

朝八時、白騎士隊は夜明けとともに出立の準備に取り掛かる。レイシアの重戦車は普段暖機に20分もかかった。この寒冷な気候ではさらに10分延びてしまう。

準備が整うまでのその間、粗末な朝食を囲みながら女騎士と各車の車長、それに歩兵の指揮官も加えて打ち合わせが行われていた。

女騎士「おそらく奴らはこの広い平原を通るときに奇襲を仕掛けてくる」

「背の高い枯草に野砲を隠されたらたまりませんし、肉攻兵(手榴弾などを持ち生身で戦車に突撃する兵士のこと)の心配もありますね」

女騎士「そこで、だ。タンクデサントをしようと思う」

歩兵指揮官「タンクデサントですか!?」

タンクデサントとは戦車の上面に兵士が搭乗し移動することである。

これには載っている歩兵が狙い撃ちされやすく、砲撃の直撃ですぐに死傷してしまうという短所があり、
歩兵の運搬手段に比較的困っていないレイシア国ではあまり行われない戦法であった。

女騎士「確かにタンクデサントは危険だ……だがタンクデサントしている兵士が車上から射撃を行えば、肉攻兵による攻撃を未然に防ぐことができる」

歩兵指揮官「しかし、歩兵たちを危険にさらすことになります!」

女騎士「それはわかるが……地雷の危険もある。歩兵をトラックで運搬すればたちまち砲撃を浴びる。砲撃を受ければトラックは木端微塵だろう
……それに、歩かせれば行軍速度が遅くなってこれも狙われてしまう」

歩兵指揮官「……タンクデサントがもっとも生き残る確率が高いやり方なのですね……」

女騎士「そういうことだ」

こうして歩兵はタンクデサントにて移動することと決まった。


8時45分 白騎士隊、兵員運搬用トラック2台をその場に放棄し出発。

出発してから数分は森が続いた。冬でも緑が青々しい針葉樹の森だ。

しかし、その森もやがて通り過ぎ、戦車はただただ広大な、背の高い枯草が茂る雪原へと入っていった。

そこは、女騎士の見立てが正しいのであれば、数々の戦車乗りを食らってきた猛獣が潜む場所でもある。

道は不整地になり、進軍速度は少し落ちる。

女騎士は頭を出して始終あたりを見張っていたが、ふとタンクデサントをしている歩兵に目をやる。
彼らからは痛々しいくらいの緊張が感じられた。みな小銃や短機関銃を手に持ち、いつでもかまえて撃てるようにしている。
しかしその手は小刻みに震えていた。

そのとき、爆風と泥が前方数メートルで大きな柱となって巻き上がった。少し遅れて着弾音がする。
女騎士の顔はたちまち泥まみれになった。
彼女はそれを拭いながら叫ぶ。

女騎士「来た!1どこから撃ってきた!?」

予想はできていたことだったが、やはり敵の姿が確認できない。対戦車砲か、自走砲か、はたまた戦車か。

女騎士「砲塔を2時の方向へ!」

女騎士は砲塔を射撃された方向に対して斜めにさせた。
敵の姿が確認できない以上、停車してむやみに射撃するのは愚策だ。なのでできるだけ装甲を貫かれないように、
側面を傾斜させて跳弾させることを選んだ。

もし弾けたとしても、タンクデサントしている兵には大きな衝撃が伝わるが、背に腹は代えられない。
今はただ、歩兵たちに弾が直撃しないことを祈るだけだ。


荒れた道を時速40キロで走る。敵の第二射は素早かった。

派手な音を響かせて車体の左から入射してきた砲弾は、車体右側の枯草の中に着弾した。
雪の下に眠っていた土が瞬間的に掘り起こされ、舞い上がる。

女騎士「頼む……当たらないでくれ!」

後方を振り向くと、タンクデサントしていた兵が一人足から血を流している。砲弾の破片が当たったのだ。
しかし今は耐えてもらうしかない。

白騎士01は先頭車両だった。当然猛烈に砲撃を浴びる。

時にははじき、時には停車してよけ、ひたすら走る。

まぬけにも頭を出している砲がいたが、狙って射撃している暇はない。
しかしこれで敵の主力の一部は対戦車砲だということが分かった。

女騎士「自走砲よりはマシか……!」

そう女騎士がつぶやいたその時、白騎士01は急にその動きを止めた。

女騎士はあまりの急停車にキューポラから前に落ちそうになる。

女騎士「どうした!」

運転手「なにか履帯に巻き込みました!」

先頭の白騎士01が停車すると、細い道だからすべての車両が停車する。このままでは白騎士隊全員がいい的になってしまう。

女騎士はあくまでも冷静だった。

女騎士「各車枯草に突っ込んで前進しろ!止まるな!」

普通の車なら考えられないことだ。しかし彼女たちが乗っているのは戦車である。これくらいの草原なら走行できる。

運転手「どうやらなにか巻き込んだみたいですぜ!」

魔王軍戦車猟兵たちが白騎士隊に仕掛けた罠、それはワイヤーだった。

それもただのワイヤーではない。魔王国内にしか生息しない、体長8mのオオマグモからしか採れない特殊な材料を使って錬金術でよりあげたワイヤーだ。
重戦車の突進さえも止めることができる、まさに秘密兵器だった。

女騎士「……? なぜ砲撃してこない?」

その時、魔王軍の対戦車砲による砲撃がぴたりとやんだ。女騎士はその静けさの持つ不気味さに背筋が凍る思いをする。

女騎士「!」

彼女はくさむらの中に人の気配を感じた。騎士がまだ騎士然としていた時代に身に着けた直感だった。

その瞬間、勢いよく草むらから飛び出した人影がこちらにむかって突撃してくる。

魔王軍のオークたちだ。

砲撃がやんだのは戦車猟兵の歩兵たちを撃たないようにするためだった。

彼らは収束手榴弾や銃剣を付けた小銃、レイシア国製の鹵獲した対戦車擲弾などを持っている。
そのひとりが手榴弾の柄を持ち振りかぶった、その瞬間

「撃てェ!!」

あわや戦車が撃破されるというところでタンクデサントしていた歩兵たちが車上から一斉射撃を行った。まさか歩兵がいるとは思ってもいなかったであろう
オークたちは、その弾の前に倒れていく。

女騎士「ありがとう、助かった!」

ワイヤーで足止めし歩兵により撃破する作戦が失敗に終わったと判断した魔王軍は、再び対戦車砲による砲撃を開始した。
そして、それと白騎士01が仕掛けの除去を終え、再び歩兵を載せて走り出すのは同時だった。

白騎士01は先行していた白騎士隊と合流し、この地獄の釜を駆け抜ける。

戦車がつぶれるのが先か、雪原を走りきるのが先か、まだ誰にもわからなかった。

とりあえずここまでです。ご閲覧ありがとうございました。

ハードやなあ…
敵方にもぼちぼち有能なのが出てきて面白い

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira096549.jpg

主力重戦車です。一時間後に再開します

危険な罠を抜け出し白騎士01は白騎士隊の車列に追いついた。
これで白騎士01は列の最後尾についたこととなる。

女騎士「相変わらず砲撃はひどいな……」

車上の歩兵の負傷者は3人に増えた。砲弾の破片で怪我したのが二人、途中で戦車から振り落とされたものが一人だった。
いずれも重症ではないことが幸いだ。聞こえてくるうめき声が痛々しい。

女騎士は歩兵をできるだけ前方にうつし、砲塔を真後ろに向けた。
どうやら対戦車砲の配置されている場所は抜け出たらしく、後ろからしか砲撃が来ない。こうなると戦いは対奇襲戦から対追撃戦へと変わる。
いくらかはマシになった。

しかし、そううまくはいかなかった。

先頭で大きな爆発が起きたのだ。

女騎士からは大きな煙の柱が見えた。

女騎士「白騎士03、どうした!?」

返答はすぐにはやってこなかった。衝撃で車内がめちゃくちゃになっているのだ。
そうしている間も進軍は止まっている。当然白騎士01は砲弾を浴びた。

しかし、角度的に離れたところから撃たれていたためか、精度が悪い。
だが、それも今のうちだろう。じきに精度を上げてくる。そうなると直撃弾で貫かれてしまう……

『白騎士03から白騎士01へ。すまない。地雷を踏んずけた!』

先頭を走る白騎士03は魔王軍のそまつな(手作りだからしかたがないのだが)、
それでいて威力の十分ある対戦車地雷を踏んでしまったのだった。

普通の軽戦車なら舞い上がって横転してしまうかもしれない威力のものだ。もっとも、女騎士たちの乗る重戦車は57tあるため、
横転こそ免れた。

女騎士「被害は!?」

『乗員は無事だが、エンジンと履帯が!』

女騎士「わかった。白騎士03は戦車をその場で放棄、後続に乗せてもらえ!」

『了解!』

魔王軍戦車猟兵たちは、なんとしてもこの対戦車砲が集結させてある地帯で戦車を撃破したかった。

彼らは、レイシアの重戦車を地雷で完全に撃破できないことはわかっていた。
だから地雷で戦車の動きを封じ、足止めした後に、対戦車砲でとどめを刺すつもりだ。

からの白騎士03に砲弾が降り注ぐ。穴だららけになるこの戦車を盾にしながら、白騎士隊はついに危険なくさむらを抜け出した。

続きはよはよ!

女騎士は胸をなでおろした。これで一安心つける。

そう思いながら運転手に速度を落とすように言おうとした時だ。

タンクデサントしていた歩兵の一人が声を上げた。彼は人一倍目がいい青年だった。

「なにか追ってくる!」

女騎士「ええっ!」

彼女はいそいで双眼鏡をのぞく。

女騎士「あれは……戦車? いや、自走砲だ!」

草むらから飛び出してきたのは魔王軍の自走砲だった。

自走砲は自らの位置の特定が不可能に近いさっきのような場所では運用されない。
急速な配置転換が求められる時に使われる。
今のように開けた雪原で、かつ背後のくさむらのようなすぐに身を隠すことのできるところがある場所でこそ、
自走砲の真価は発揮されると魔王軍戦車猟兵は考えていた。

ちなみに、身をさらしっぱなしでの戦車との殴り合いでは、装甲の貧弱さから不利になってしまう。

女騎士「まずい!全車つっぱしれ!」

敵の自走砲は見えている限りでは5台だった。その5台が砲撃をしてくる。

初弾が白騎士05の近くに着弾し、タンクデサントの歩兵たちが吹っ飛ばされる。

女騎士「白騎士05!歩兵が落ちた!」

『今停車して拾います!』

女騎士「いや、こっちで拾う!先にいけ!」

白騎士01は白騎士05の歩兵を載せるために停車した。その瞬間だった。

白騎士01の車体に榴弾が直撃する。兵士たちは車上から吹き飛ばされた。

女騎士も破片が額にかすり、顔は土と血にまみれた。拭いながら女騎士は叫ぶ。

女騎士「大丈夫か!?」

「2人だめです!死んでいる……」

兵士の視線の先には体の半分が吹き飛ばされた仲間があった。もう一人は比較的損傷が軽い。
死んではなくとも、重軽傷者でないものは1人2人をのぞきいなくなってしまった。

女騎士「わかった……けがの程度の軽いもので皆を車上にあげてくれ!」

女騎士はそう指示を出すと、自走砲のほうを見やった。

自走砲はこちらを撃破したものだと思い、その姿をさらしたままでいた。

女騎士「……榴弾こめ」

砲手「戦うんですか!?」

女騎士「2人の弔いだ。それに仲間の為にも時間を稼がなければ……全員乗車後に一番左の奴に発砲。
それと同時に発進してくれ」

白騎士01の孤独な戦いが始まった。

まず、初弾を発射する。相手に見事命中した。

女騎士「これで1台!次、20m先で停車、左から2番目!」

まだ白騎士01が生きていることに気付いた自走砲たちは、再び砲撃を開始する。

停車した瞬間、女騎士の2m横を砲弾が通過した。
すさまじい迫力にめまいをおぼえるが、女騎士はぐっと目の前の自走砲を見据える。

女騎士「うてえ!」

砲弾はまたしても命中する。

女騎士「これで2台!」

ここまできたところでようやく、自走砲は頭を引っ込めた。

女騎士はこんどこそ胸をなでおろす。

女騎士「お客さんはお帰りのようだ……」



これで、ようやくこの長い戦闘がおわった。


敵の砲撃でぼこぼこになり、転輪にガタが来た白騎士01は、よれよれになりながらも白騎士隊へと合流し、再び走り出す。

女騎士はその途中、コーヒーを飲みながら、死んだ二人の兵士のことを考えていた。

いまさら自分の判断が正しかったのか自分に問うているのではない。

自分の判断はその時点で最良のものだったと思っているし、そんなことをいちいち考えていては身が持たなかった。

ただ、一人はチェスがうまく、よく何かを賭けては勝利し喜んでいたことを、
もう一人は楽天家で、よくジョークを発して場を和ませていたことを思い出していた。

そうして、死んでいった歩兵たちのことについては本当にそれくらいしか覚えていないことに、何とも言えない感情を抱いた。

それは、さびしさに少し似ていた。




白騎士隊 戦死2名 重軽傷9名 戦車1両損失 その他車両2両損失

孤独な行軍は、まだ続く。 


今日はここまでです。ご閲覧ありがとうございました。

乙でした!

作者さん シェイファハウンドとかパンプキンシザス見たことありますか

哀しいねえ
乙!

>>175
シェイファーハウンドは名前だけ、パンプキンシザーズは漫画を少し読みました

一週間ほど放置してしまい申し訳ありません。しばらくののちに再開します。

一昼夜走り続けた白騎士隊はやがて本隊に追いつこうとしていた。

彼らの疲労はピークに達し、車体も応急処置を施しながらの強行軍である。

しかしながら、無線を通じて彼らの耳に入る情報、そこからぼんやりと予想される戦況は、
どれだけ誇張したとしても、「いい」とは言えないような類のものだった。

女騎士「負け戦だな」

女騎士はあるときそうつぶやいた。

それは前線に近い丘の上に差し掛かった時だった。砲火が地平線の向こうにうっすらと見える場所だ。

運転手「そうですかい……」

通信手「………」

通信手はなにも言わなかった。

彼は前線で飛び交う絶叫に似たやり取りを、その役目上一番よく聞いていた。
なので、彼には女騎士の意見がおおむね正しいということがよくわかったのだった。


酉が間違ってますね……何が間違っているのだろうか。このまま続けます。


女騎士が前線にたどり着いたとき、目にしたのは後退していく兵たちであった。

それも出撃していったときの三分の一ほどの兵士しかいない。

女騎士「壊滅、か」

おそらくこの先の前線でひどくやられたのだろう。生々しい貫通痕ののこる装甲車や戦車もわずかに混ざっていた。

つまるところ、この攻勢は失敗したのだ、ということを女騎士は感じ取った。


女騎士はその敗残兵たちの列に近づいて行った。すると、一台の立派な軍用車が、その進路を遮るように近づいてきた。
何者かがそこから降りてくる。

「とまれ!そこの戦車、止まれ!」

女騎士は戦車を止めさせ、キューポラから顔を出した。

「どこの戦車隊かと思ったら君のところだったか、『魔女』殿」

女騎士「師団長…… いえ、師団長『閣下』でしたか」

師団長は皮肉を返されたとわかると顔を盛大にしかめたが、すぐに気持ち悪い笑みを取り戻した。

師団長「まあいい、とにかく君の戦車隊はわが大隊へ編入する!」

女騎士「……は?」

師団長は残った兵たちをかきあつめて大隊をつくっていた。そこに無理やり加えようとしてきたのだ

女騎士は黙り込んだ。

師団長は同じことを繰り返した。

女騎士「で、どのような任務に配置なさるおつもりで?」

師団長「ああ、君には前線突出部を、われわれが後退を完了するまで維持してもらいたいのだ」

女騎士「失礼ながら、それは我々に死ねと言っているのですか?」

師団長「その通りだ。珍しく飲み込みがいいじゃないか。我々の為に名誉ある死を遂げてほしい」

そのとき、女騎士は小声で機銃手に指示を送っていた。

女騎士『機銃手、合図とともにあの薄らハゲの足もと手前を一掃射してくれ。それと同時に戦車隊を発進させろ』

師団長「どうしたのかね?君たちに選択の余地はない。なぜなら私は上官で……」

女騎士「いまだ!」

師団長のあしもとを弾丸が襲う。彼は驚いて雪が解けてぐずぐずになった路面へとひっくり返った。

女騎士「白騎士隊、白騎士01に続け!レイシアに帰還するぞ!」

戦車隊は鈍い走行音を響かせながら走り出した。

師団長がようやく起き上ったときには、戦車たちははるか遠くにあった。

彼はぐしゃぐしゃに濡れた体を震わせながら叫ぶのであった。

師団長「戦犯め!ひとでなしめ!魔女め!いつか火あぶりにしてやるからな!!」



もっとも、この攻勢での最大の戦犯はこの師団長であった。

彼は自らの利権を守るために命令にたびたび従わなかったのだ。自らの兵の士気の低下にも無関心で、
他人の命を犠牲にしていかに自分が昇進するかということばかり考えていた。

そういう男だった。

◆◆◆

白騎士隊はその後、戦車をスクラップにしつつも、レイシア本国国境付近まで無事たどり着いた。


女騎士2台の戦車はもう使い物にならなかった。そして女騎士もその道中の敵の攻撃で片足を負傷するが、それも帰り着くまでには大方直った。


歩兵がゲリラの攻撃で1人死に、1人は片腕を失った。死んだ兵士にはろくな墓を作ってやれなかった。


そして、ついにその日が来た。

女騎士はその放送を市販のラジオで聞いた。








『レイシアは本日、魔王国との和平条約を結び、
政府は戦時状態の終結を宣言しました……長らく続いた戦争はおわりました……』


戦争は、終わった。



女騎士は無言だった。女騎士のみならず、その場にいる誰もがその放送に耳を傾けていた。

多少レイシアに有利な条約なものの、ほぼ痛み分けの状態だ。

それでもレイシアはこの攻勢の失敗から情勢が一気に不利に傾くことを恐れたし、魔王国は周囲の国との戦線をこれ以上維持できなかった。

女騎士は、静かに地平線を見つめた。雪原が広がるだけであったが、女騎士の眼には別の何かが映っていた。


女騎士の眼に映ったのは、死んでいった戦友であり、英雄譚の中の人々であり、戦場を駆ける鉄の塊、戦車の姿であった。

女騎士は英雄譚をとりだし、すこし手で撫でてみた。

女騎士「英雄譚と呼ぶには、人が死にすぎた……」

女騎士はもう一度キューポラから身を乗り出すと、マイクを手に取った。

彼女は全車にむけて戦争が終わったことを連絡すると、声を張った。

女騎士「レイシアはもうすぐだ。これより帰還の為出発する!」

すると、いつものように全車から返事が返ってきた。

『白騎士02了解!』

『白騎士04、了解』

今は全部で3台になってしまったが、女騎士はいままで車長を務めた人々の声も聞こえたような気がした。

そして、彼女の、いつものように発する命令は雪原にしみわたっていったのだった。





女騎士「戦車前へ!」



これで終わりです。
女騎士もので戦車戦を描くという初めて(?)のこころみでしたが
>>1の知識不足も手伝ってマニアな方には相当適当なことを書いているように見えてしまったかもしれません。すいません

最後のほうは駆け足になってしまいましたが、お付き合いくださった方々は本当にありがとうございました


別に落ちない範囲でゆっくり書き続けてもいいのよ?

乙。

ありがとうございます!
https://youtu.be/NJkXCk71bFQ

正直ただのSSで自分で絵を描いてみたり動画を作るのはやりすぎだとは思うのですがこらえきれなかった
よければどうぞ

https://www.youtube.com/watch?v=NJkXCk71bFQ&feature=youtu.be

スマホからなので短縮URLを送ってしまいました
こちらが正しいものです。すいませんでした



SS、イラストに加えて動画までとは…
スレチだがラノベ作家の川上稔みたいなことやってるな!
動く女騎士可愛いなァ

いや面白かったわ

面白かった!
次回作に期待!

>>190
おお、多芸すなぁ……女騎士かわいい

ドイツ語がよく似合うSSだった
雪が止んだあとみたいな読後感がいい
戦後の話もちょっと見てみたいなあ
乙!

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