真姫「突然なに?」
海未「真姫も本を読むのは好きですよね?」
真姫「まあ、それなりにね」
海未「じゃあ教えてください」
真姫「自分で好きなのを読めばいいじゃない」
海未「たまには新境地を開拓しようかと」
真姫「あなた普段何読んでるの?」
海未「割となんでも読みますよ。歴史本とか小説とか社会問題の本とかも」
真姫「じゃあ私に聞く必要もないじゃない」
海未「真姫がどんな本を読んでいるか知りたいのです」
真姫「そういうこと」
海未「そういうことです」
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真姫「私も海未と一緒で結構なんでも読むわね」
海未「たとえば?」
真姫「最近読んだのは海外文学ね」
海未「ほう」
真姫「まあなかなか示唆に富んでて面白かったわ」
海未「何というタイトルですか?帰りに買って読んでみようと思います」
真姫「別に買わなくても。貸してあげるわよ」
海未「いいんですか!?」
真姫「当り前じゃない。それじゃあ明日持ってくるわね」
海未「ありがとうございます」
次の日、部室
真姫「海未、はいこれ」
海未「すみません、わざわざ」
真姫「大したことないわ」
海未「本の貸し借りなんて初めてです」
真姫「そうなの?」
海未「ええ。私の周りにはあまり本を読む人がいなかったので」
真姫「穂乃果もことりも本を読みそうなタイプじゃないしね」
海未「ことりはともかく、穂乃果は本当に漫画ばかりで」
真姫「予想はできるわ」
海未「読書仲間がいるなんて、何だか夢のようです」
真姫「そんな大げさな」
真姫(けどまあ、悪い気はしないわね///)
海未「では家に帰ったら早速読ませてもらいますね」
夜、海未の部屋
海未「さて、お風呂も済ませましたし、ゆっくり読書でもしますか」
海未「さっそく真姫から借りた本を読みましょう」
読書中
海未「ふむ、なかなか重厚な文章で味わい深いですね」
海未「さすが真姫が読むだけのことはあります」
海未「おや、なにやら主人公が貴婦人と部屋で二人きりになりました」
海未「!ふ、二人が裸に!?そして抱き……!?こ、これは……!」
海未「は、破廉恥です!」パタン
翌日、部室
海未「真姫!なんてものを読んでるんですか!」
真姫「な、なにが!?」
海未「あなたから貸してもらった本、その、は、は……破廉恥です」
真姫「どういうこと?」
海未「あんな、だ、男女が、は、裸で……」
真姫「ベッドシーンのこと?」
海未「!?」
真姫「あれは必要な描写よ。男女のドロドロな肉体的営みに含蓄を潜ませた……」
海未「破廉恥です!!」
真姫「あ、あなた小説も読んでるんでしょ!?なら一つや二つそういうシーンも」
海未「ありません!私は健全な小説しか読まないので」
真姫(まさか小説って言っても児童文学とか?)
海未「とにかく、ああいうものを読むのは感心しません」
真姫「じゃあどういうのなら良いわけ?」
海未「そういうと思って、私の本を持ってきました」
真姫「……随分と用意がいいのね」
海未「読んでみますか?」
真姫「そうね」
真姫(海未のいう健全ってどこまでなのか気になるし)
海未「じゃあ読んだらぜひ感想を聞かせてください」
夜、真姫の部屋
真姫「まったく、海未も変なところで子どもよね」
真姫「さて、そんな海未ちゃんはどんな本を読んでいるのかしら」
読書中
真姫「これは探偵小説ね」
真姫「海未のことだから古典とか詩集とかでも読んでるのかと思ったけど」
真姫「こういうのも好きなのね」
真姫「あっ、早速第一の犠牲者が出たわ」
真姫「『その死体は、脳漿が飛び散り…』」
真姫「何よこれ。随分とグロテスクじゃない」
真姫「あっ、また犠牲者が」
真姫「『真っ二つに割れた胴体からは千切れた小腸が…』」
真姫「……なんか、気分が……」パタン
支援
また翌日、部室
真姫「ちょっと海未!」
海未「なんですか?」
真姫「何なのあの本!死体がたくさん出てきて残酷すぎじゃない!」
海未「ミステリーですし、遺体が出てくるのは当然かと」
真姫「死体の描写が細かすぎるのよ!あんな本を健全だなんてよく言えるわね」
海未「どうしたんですか?お医者様を目指しているのにあれくらいで取り乱すなんて変ですよ」
真姫「……なっ!」
海未「現実の遺体はもっと悲惨でしょうし」
真姫「た、たかだか小説のセックス描写で動揺している人に言われたくないわよ!」
海未「セッ……!?わあああああ!」
海未「破廉恥すぎます!破廉恥破廉恥ハレンチはれんち!あなたはハレンチ真姫です!」
真姫「なっ、なによ、グロテスク海未!」
「「うう~~~~」」
海未、真姫「ふんっ!」プイ
屋上
絵里「はい!じゃあちょっと休憩しましょう」
海未「…………」
真姫「…………」
にこ「……ねえ、あの二人どうしたの?」
ことり「やっぱり分かっちゃう?」
にこ「そりゃ、あんな険悪なオーラ出されちゃね」
ことり「なんか……方向性の違いって……」
にこ「はあ?」
ことり「あのね、実は――」
絵里「はあ、どうしたもんかしらね」
にこ「私らでビシッと言うしかないでしょ。練習に私情を持ち込むなって」
希「そうは言うてもなぁ。簡単にはいかへんと思うよ」
凛「今日の真姫ちゃん怖いよ~」ガクガク
穂乃果「海未ちゃんも~」ブルブル
花陽「け、喧嘩はダメだよ~」ガクブル
絵里「とにかく何とかしないと。このままじゃ活動全体に影響が出るわ」
希「しかもウチらの作詞作曲コンビやしね」
にこ「穂乃果!今こそリーダーの出番よ」
穂乃果「ええっ!?」
にこ「『ええっ!?』じゃない!一体何のためのリーダーよ」
穂乃果「う、うん、分かった。やってみるよ」
穂乃果「海未ちゃん!真姫ちゃん!」
海未、真姫「?」
穂乃果「喧嘩、やめーーー!」
海未「……別に喧嘩しているわけではありませんよ」
真姫「そうね」
穂乃果「でも、なんか二人とも気まずそうだよ」
真姫「そう?取り立てて話すこともないからよ」
海未「ええ、共通の話題もないことですし」
真姫「……」
海未「……」
穂乃果「……」
穂乃果「もう無理ーー!」
にこ「ちょっと、もうあきらめんの!?」
穂乃果「にこ部長がどうにかしてよー」ウルウル
にこ「り、リーダーはあんたでしょ!」
穂乃果「部長はにこちゃんだよー!」
凛「二人まで争ってどうするにゃ!」
絵里「あーもう!ほらほら、練習再開しましょう」
希「面倒なことになったなぁ」
―――――――――
――――――――
夜、海未の部屋
海未「ああ……どうしましょう……」
海未「私が変なことを言ったばっかりに真姫を怒らせて……」
海未「しかも一時の感情に流されて意地まで這っちゃって……」
海未「みんなにまで迷惑を……」
海未「うう…最低です……私は最低です……」
海未「『人間失格』でも再読しましょう……」
同時刻、真姫の部屋
真姫「はあ」
真姫「私ったら、またやっちゃった」
真姫「どうしてこう、すぐ喧嘩腰になっちゃうのかしら」
真姫「海未と仲直りしたいけど、あの様子じゃ簡単に許してもらえそうにないし」
真姫「友達付き合いってホント難しいわ」
真姫「メロスのようにはいかないものね」
次の日、部室
にこ「ねえ、真姫ちゃんと海未の二人、どうするつもり?」
絵里「そうねえ」
凛「案外、一晩経ってカラッと仲直りしてるかもしれないよ」
にこ「あの二人が凛みたいだといいんだけどね」
希「二人とも結構根深そうなタイプやからなあ」
ことり「でも今日の海未ちゃんはクラスで楽しそうにしてたよ」
花陽「真姫ちゃんも」
にこ「そりゃ、互いに顔を合わせなければ何てことないでしょ」
穂乃果「一体どうしたらいいんだろう……」
7人「……」
絵里「! そうだわ!新曲をつくってもらえばいいのよ!」
希「おっ、確かにそれはええかもね」
穂乃果「共同作業で友情を深める作戦だね」
ことり「何だか上手くいきそう!」
絵里「じゃあ海未と真姫が来たら早速話しましょう」
ガチャ
海未「おや、皆さんもうお揃いなんですね。もしかして待たせちゃいましたか」
穂乃果「ううん、そんなことないよ。それに、まだ真姫ちゃんが来てないし」
海未「あっ、そうですね……そうでした……すみません」
海未「……」
7人「……」
にこ(どうしてくれんのよ、この空気)ヒソヒソ
穂乃果(ええっ!私のせい!?)ヒソヒソ
絵里「ねえ海未、いまみんなで話し合ってたんだけど」
海未「はい」
絵里「そろそろ新曲をつくったらどうかなって」
海未「新曲ですか」
希「ラブライブ出場のためにも、新曲をガンガン出して人気と知名度を上げていかんと、って」
凛「満場一致だったにゃー」
絵里「あなたと真姫にはまた負担をかけてしまうけど、どうかしら?」
海未「私は、構いませんが……」
穂乃果「じゃあ決まりだね!よろしく、海未ちゃん!」
にこ「リーダー命令も出たんだから、真姫ちゃんと一緒に最高の曲を作りなさいよ」
花陽「が、がんばってください!」
ことり「わたしも衣装を一生懸命考えるからね!」
海未「ま、待ってください。まだ真姫の返事が聞けて――」
真姫「私も別に構わないわよ」
穂乃果「真姫ちゃん、いつの間に」
真姫「さっきからいたけど」
真姫「それより」
真姫「じゃ、曲ができたらいつものように音源渡すから」
海未「ええ、お願いします」
真姫、海未「……」
穂乃果(そ、それで会話終わり!?)
凛(事務的やりとり極まりないにゃ)
ことり(ホノカチャーン)
にこ(この作戦ホントに大丈夫なの?)
絵里(うう、おうちに帰りたい)
花陽(夕食白米じゃなくていいからダレカタスケテェー)
希(カードが告げてる。新曲作づくりで仲直り作戦の結果は――あっ……)
―――――――
――――――
真姫「ふう、こんなものかしらね」
真姫「曲ができたのはいいけど」
真姫「どうやって海未に渡そうかしら」
真姫「あれから一週間、お互いろくに口をきいてないし」
真姫「なんだか気が重いわ」
凛「まーきちゃん♪」
真姫「り、凛!?なんで音楽室にいるの!?」
凛「真姫ちゃんの様子が気になったにゃー」
花陽「ごめんね、作曲の邪魔だったかな」
真姫(花陽まで)
真姫「いいえ、もう終わったから大丈夫よ」
凛「じゃあ今から海未ちゃんに渡しに行くんだね」
花陽「り、凛ちゃん」
真姫「ま、まだよ!まだ曲の録音がすんでないわ」
凛「早くするにゃ~」
真姫「急かさない!」
凛「もぉ!このまま海未ちゃんと喧嘩したままでいいの!?」
真姫「だから言ってるでしょ!喧嘩なんてしてないって!」
凛「じゃあなんで二人はぎこちないにゃ」
真姫「べ、別に、普段からあんな感じでしょ」
花陽「あんな感じじゃないよ。たとえ話さなくても、もっと和やかな雰囲気があったよ」
真姫「そ、それは」
凛「じれったいにゃ!早くいくよ」
真姫「だからまだ録音がーー」
真姫「はい、これ」
海未「お疲れ様でした」
真姫「後は作詞、お願いね」
海未「はい」
真姫「ね、ねえ海未」
海未「なんです?」
真姫(言うのよ真姫、たった一言でしょ)
真姫「その、あの」
海未「どうしたんですか?」
真姫(どうしたの!?早くしなさいよ私)
真姫「えーと、だから……」
海未「……すみません。部活に行かなければいけないので失礼しますね」
真姫「あっ」
真姫「行っちゃった」
真姫「……なにしてんのよ」
海未(うう、やっぱり私は最低です)
海未(せっかく真姫に謝るいい機会だったのに)
海未(いざ本人を目の前にすると言葉が出てきません)
海未「恥の多い生涯です」
弓道部員「なんか言った?」
海未「い、いえ、何も」
弓道部員「それより今日、全然的に当たってないよ」
海未「ちょっと、調子が悪いみたいです」
海未(きっと雑念があるからでしょうね)
夜、海未の部屋
海未「さて、作詞しますか」
海未「今度の曲はどんな感じでしょうか」
視聴中
海未「これはバラード系ですね」
海未「素晴らしい曲です。さすが真姫」
海未「……けど、なんだかとても、物悲しいです」
海未「あんまりアイドルの曲にふさわしくないような」
海未「はっ!いけません、せっかく真姫が頑張ってつくってくれたんですから」
海未「とはいえ、やはりこの曲は――」
海未「ここは、はっきりと言いましょう」
―――――――
――――――
海未「真姫、ちょっといいですか?」
真姫「なに?」
真姫(海未のほうから話かけてくれた!これはまたとないチャンスよ)
海未「新曲なんですが」
真姫「ま、まさかもう歌詞ができたの?」
真姫「じゃあこれから「あの曲は良くないと思います」
真姫「えっ?」
海未「いえ、決して曲自体が悪いわけではないんです」
海未「ただ、あのような暗い曲調はアイドルにふさわしくないと思うのです」
真姫「…………」
海未「できれば他のみんなの意見も聞いてみたいのですが」
真姫「……だ」
海未「あの、真姫?」
真姫「誰のせいだと思ってんのよー!」
海未「ひえ!?」
真姫「暗い気分な時に作ったら」
真姫「暗い曲になるに決まってるじゃない!」
海未「そうさせたのが私だと?」
真姫「ほかにいる?」
海未(やはり真姫は私のことを完全に嫌いになってしまったようですね)
海未(早く謝ればよかったものを。私はなんて馬鹿なんでしょう)
真姫「まったく、つれなくされたら落ち込むわよ」
真姫「――大事な仲間に」
海未「え?」
真姫「そういうことよ」
真姫「海未」
真姫「この間はごめんなさい」ペコッ
海未「なんで真姫が謝るんですか。謝るのは私のほうです」
海未「だから、すみませんでした」ペコッ
海未「真姫のことをハレンチ呼ばわりして」
真姫「いいえ、私も大人げなかったわ」
海未「もう、年下のくせに何言ってるんですか」
真姫「あら、μ'sに先輩後輩はないんでしょ?だったら精神年齢は私が一番上よ」
海未「相変わらずの自信ですね」
真姫「事実を言ったまでよ」
海未「ふふ」
真姫「ふふふ」
真姫「ねえ海未、このあと時間あるかしら」
海未「ええ、大丈夫ですよ」
真姫「じゃあ作曲、手伝ってくれない?」
凛「真姫ちゃんどこ行ったにゃー」
穂乃果「海未ちゃん、どこ行ったんだろ?」
穂乃果「あっ、凛ちゃん」
凛「穂乃果ちゃん、どうしたの?」
穂乃果「ねえ、海未ちゃん見なかった?」
凛「ううん、見てないよ」
穂乃果「そっか、ありがとー」
凛「ねえ穂乃果ちゃん」
穂乃果「ん?」
凛「真姫ちゃん見なかった?」
穂乃果「うーん、見てないなー。でも真姫ちゃんなら音楽室にいそうじゃない?」
凛「そっか、きっとそこだにゃー。ありがとにゃ」ダッ
穂乃果「多分海未ちゃんは部活にいったのかも」
穂乃果「よし、私も音楽室に行こう。待ってー凛ちゃーん」
穂乃果「はぁはぁ、もう、凛ちゃん、走るの、速すぎ」
穂乃果「やっと追いついた」
穂乃果「凛ちゃ――」
凛「しー」
穂乃果「え?」
凛「見て」
海未「大分明るい曲になってきましたね」
真姫「当たり前よ。私にかかればこんなのわけもないわ」
海未「あっ、今のところでいいフレーズを思いつきました」
真姫「ふふ、完成が楽しみね」
穂乃果「海未ちゃん、真姫ちゃん」
凛「仲直りしたみたいだにゃ」
穂乃果「うう、良かったぁー」ウルウル
凛「もう、穂乃果ちゃんは泣き虫だにゃー」ウルウル
絵里「はあ」
希「ため息は幸せが逃げてくよ」
希「大丈夫、あの二人なら心配いらんよ」
絵里「そうね、あの子たちならきっと自力で何とかしてくれる。そう信じてるわ」
希「それに、仲直りの日は近いから」
絵里「どうしてそう言い切れるの?」
希「だって、カードがそう告げてたんやもん」
―――――――
――――――
真姫「海未、はいこれ」
海未「これは、何の本ですか?」
真姫「私のおすすめの海外文学」
真姫「安心して、破廉恥なシーンはないから」
海未「真姫……わざわざありがとうございます」
真姫「その代わり、次は海未のおすすめ本を貸してよね」
真姫「私も、読書仲間は海未しかいないんだから」
海未「ええ、分かりました。飛びっきり面白い小説をお貸しします。ただし、グロテスクじゃないものを」
真姫「ふふ」
海未「ふふふ」
おしまい
乙
つまんねにこまき書けよカス
噂のにこまき警察?
うみまき最高でした乙です
グロテスク海未とハレンチ真姫、実によかった
うみまきすこ
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