真姫「恋をするということ」 (37)

向こうで規制に引っ掛かったのでこちらで

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薄暗く、閉ざされた部屋のなかはこれから起こることを予測させるかのようにかすかないやらしさを孕んでいた。


「…海未」

「--分かってます、する、んですよね」


ぱさり、彼女はスカートを脱ぐ。

制服のシャツは裾が長く、彼女の下肢は隠されてしまっている。


灯りをつけない中でおもむろに海未は制服のボタンを外し始めた。

ひとつ、ふたつ、と開けられていくうちに真白い彼女の肌が露になっていく。


艶やかな海未の髪がさらりと揺れ、その対称的なコントラストと開けられたシャツから除く控えめなレースの彼女の下着に真姫は息を飲んだ。







--今から自分は、目の前の少女を抱くのだ







ゆっくりと明らかになっていく彼女の素肌、恥ずかしいのか下に向けられた海未の顔を上げさせると見たことも無いほどに赤く。


その瞳はこれからの行為を想像したのだろうか、期待しているのだろうか--

まるで初めてだとは思えない…それほどまでに淫らに揺れていた。



「…海未、って。意外にえっちな子だったのね」



ぽつりと落としたのは独り言のつもりだった。

目の前の海未はそれを聞いてしまったのか、制服を脱ぐ手を止めてこちらを睨んでくる。


…といってもその表情はやはり期待しているとしか言えないものであるのだが。



「そんな、わけっ…ないじゃないですか」

「そう言ってるけど…自分の顔、どんなのか分かってる?」



口答えをする彼女の唇を強引に塞いでやる。


何度味わっても、甘い。--自分好みの味。

歯列をなぞり、舌先同士でつつきあう。

これ以上は、と逃げるような海未の体を抱き寄せて、すべてを食らい尽くすために。



暗い部屋に満ちるのは二人ぶんの呼吸と、1つになった淫猥な水音。


このまま二人一緒に溶けてしまいたい、私と彼女を阻む体なんてなくなってしまえばいいのに。



「…っあ、ま、き…っ、やりすぎ、です…!」


上がった息を隠すことも出来ないで海未は怒る。

先ほどの行為で脱げかかっていた上着は全て取り払われてしまい、彼女を隠すのは下着のみであった。


数えきれないほどキスしているというのに、いつだって初めてみたいな表情をする。

そんな彼女を見ていると真姫は自分の内からふつふつと沸き上がる感情を自覚せずにはいられなかった。



この無垢な少女を自分の色に--めちゃくちゃに汚してしまいたい。

心も、体も、なにもかもすべてをさらけ出させたい--


それは、汚い独占欲としか言いようがなかった。


真姫はもう一度海未を抱く。
首もとに顔を埋めると、そこを軽く歯噛みした。


「海未」


愛しい彼女の名を呼ぶ。
つけた痕は痛々しく自己を主張している。


「…はい」


海未は目を伏せたままそれに答えた。
かすかに震えていることには、触れないままで。






「愛してるわ」




それは一種の免罪符だった。





*****



そんな事実、知りたくなんてなかった。
けど、知らないではいられなかった。


だから私はこれで終わりにすることにしたのだ。


力も、勇気もなにもかも私には足りなかったの。



だから、幸せにするために。


--掴んでいる手を離すことを決めた。



*****


この家の中には海未の両親がいる。

今この部屋に彼女の両親がやって来てしまったらどうなるのだろうか。


「……っ、……ん、ぁ、ぁっ…」

「う、み、うみ、海未……っ、」


薄暗く閉ざされた部屋の中で、彼女たちは情事に耽っていた。


下の階にいる住人たちに気付かれないように、声を二人、圧し殺して。

吐息とかすかな喘ぎと、二人の生む淫らな音だけが部屋の中で響きあっていた。


薄ら寒い外気とは対象に、うだるような暑さに浮かされた中。

締め切った部屋に二人こもり、体を重ねあう。


流れ落ちる汗を舐めとると、快楽でぐずぐずに溶けてしまっている瞳のまま、海未は恨めしげにこちらを見やる。


普段であれば、睨まれたところでなんとも思わないだろう。

思うにしてもこの恋人の可愛らしさを感じる位であろう。


しかし、淫らさに支配されたこの部屋の中ではそうもいかなかった。



彼女の潤んだ瞳、上気した頬、ちらちらと覗く赤い舌。

まき、と名前を呼ばれる。たったそれだけなのに。



--それすらも、情欲を掻き立てられてしょうがないのだ。




*****



好きだと、自覚してしまったのはいつだっただろう。


気がついたときにはもう自分は彼女に囚われてしまった。

あるいは初めから、真綿のように柔らかくて切ることなどできないような糸で繋がれていたのかもしれない。


仲間として側にいて、大切な友人という称号だけでは。それだけでは足りなくなってしまったのだ。



強欲だと、罵られたとしても構わない。


しかし気づいてしまってはもう退くことなど、真姫にできる訳がなかった。



*****


重ね合わせた二人の性器が熱かった。


そこはもうしとどに濡れ、念のために持ってきた潤滑油なんていらなかったじゃないの、と真姫に思わせるほどであった。


ただひたすらに快楽を求め、抱き合い、足を絡ませ、腰を動かす。



それだけ…単純な動きであるはずなのに、愛しい彼女と触れあっているからなのだろうか。


抑えきれない声は微かにこぼれ落ちていく。


見つかってしまったとしてもそれでもいいかもしれない、と錯覚させてしまえるほど。



それほどに暗く締め切ったこの空間だけでは--


お互いが存在してさえいればあとはなにもいらなかったのだ。



「っ、ぁ!!ぁ、あ、っ、!!!」


「っ…ん、っ、っ!!!!」



足りない酸素を求めるように唇を重ね合う。


何度重ねても甘い彼女の唇にすがり付いて、舌を絡ませて、欠けた体を埋め合う。


一時たりとも、離れることを許さないように、強く、強く。




この時間が永遠に続いてしまえばいいのに。

そんなことがあり得るはずがないと、真姫は分かりきっていた。



しかし、それを望まざるをえないほど--海未と離れていくことが耐えられなかった。




*****


μ'sは解散すると、あの日私たちは決意した。



廃校を阻止して、ラブライブを優勝して、海外まで行って--一年前の私たちなら考えられないほどに、あの時は輝いていた。


1つ1つ時が流れて、新しく一年生が入学して、アイドル研究部となった私たちは、私たちの形でアイドルを続けていた。



楽しいことがあった、辛いことがあった、嬉しいことがあった、悲しいことがあった。



それも前の私じゃ予想すらできないってくらい、たくさんのことがあって。


流れていくきらめいた時間のなか。







「真姫」

「--……海未」



いつの間にか、恋までしていた。









私、結構何でも知ってるつもりでいたけれども知らないことも結構多かったみたい。



仲間といることの楽しさとか、一生懸命なにかをすることの輝きとか、友達って存在のありがたさとか。





--恋、っていうのが。こんなにも辛くて、苦しくて。でもそれ以上に幸せだなんて。


私、知らなかった。





海未のことを好きになって、お付き合いというものをして。


友達同士では感じない愛しさを、仲間としてでは思わない感情に気づいて。



もしかして、私、--海未を好きになるために生まれてきたのかも、なんて思うほど。



そんな日々が好きだった。


時間が永遠に続いてしまえばいいのに、本当にそうよね。




無理だなんて、私が一番分かっているわよ。




*****



情事の終わった部屋の中はまだ熱かった。

二人して畳の上になにも身に付けないままで倒れ込む。

熱い体が少しずつであるが冷やされている。

反面、真姫の頭のなかはすでに冷めきってしまっていた。


どちらもなにも言わないで、ひたすらに流れる無言を真姫は瞳を閉じて噛み締める。




明日になったら、私たちは友人に戻るのだ。






「--海未、」



無音を破ったのは真姫だった。


右手を伸ばして、彼女の細い手首を掴む。



これを言ってしまっては、別れを認めたような気がして嫌だった。



けれど、言わないまま別れるのは--もっと、嫌だった。







「卒業、おめでとう」


「--ありがとう、ございます」





3月1日、今日、この日。

彼女は三年間通った音ノ木を、真姫を置いて、卒業していく。


色々なことがあった、たくさんのことを成し遂げた。

その思い出を胸に彼女は新たな場所へと旅立っていく。







「………そして、婚約、おめでとう」

「……っ」




ありがとう、と帰ってくることはなかった。

背中を向けている彼女から聞こえるのは、言葉ではなく嗚咽のみであった。



高校を卒業したら、本家の男子との婚約を交わす。



これは彼女が生まれてきたときにはもう決まっていた、らしい。

時代錯誤もいいところだと思うけれど、何も言うことはできなかった。





それを覆すことのできる力は私にはなくて、それから逃げるほどの勇気もなくて--


出来たのは、最後にやっと体を重ねることくらい。



「おめでとう、おめでとう、おめでとう……っ」



自分が泣いていることに気づいた。



熱いものが、頬を伝って止まらない。止まるはずがない。

言葉も出ないくらいに流れ落ちてきて、まるで自分が消えてしまいそうなほどに。






「しあわせに、なりなさいよ……っ、絶対、幸せになんないと、そうじゃないと、わたし、っ」




そうじゃないと、きっと、後悔したってしきれない。






掴んだ海未の手首からとくとくと心音が伝わってくる。


それを離した瞬間に、私達は1つにはなれないと強く実感させられてしまう。




このままで時を止めてしまいたい。
それが出来たらどんなによかっただろう。



暗い部屋に二人ぶんの嗚咽が零れる。


締めたふすまの隙間から入り込む光は弱々しく、だれも未来を照らしてはくれない。



希望なんてひとつも見えそうになかった。






「……好き、だったわ」



「ええ。……わたしも、です」





きっと、この先一生掛かってもこれ以上の恋なんて出来ないだろう。

それは痛む胸が嫌というほどに証明していた。




だから今はただこのままでいさせてほしい。

人生で最後の恋を終わらせるためにも。




おわり

うみまきに締め切った部屋の中でセックスさせたい願望のみで書きました
向こうにこっちでやってるよーっていいたいけどむりっぽいかなー

正直宣伝はやめた方がいい

>>32
宣伝っていうか書いてる途中で規制食らったからさ…
でもやんないほうがよさげだよね

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