肇「最初で最後の出来事」 (21)
モバマスSS
空想がちな肇ちゃんとプロデューサーとの純愛話です
書き溜めた文を分けて投稿しますので、よろしくお願いします
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縁側で一人ぼんやりいる静かな夜
「起きてこないかな…?」
ぽつりと呟いても響かないなんて久しぶり。
縁側横の畳の部屋で寝ているプロデューサー
今は、大切な人。
──さんと実家で過ごす夜も何度目かな?
オフだからって──さんと一緒に実家へ来て、
当たり前のように上がって。
両親もおじいちゃんも──さんのこと、すっかり気に入ってた
たまに一人でお仕事へ行くこともあるけど、気付いたら──さんが見ている
真剣な表情で見守ってくれて安心するし、何より嬉しい。
終わって声掛けたら褒めてくれて。
たまに『ぼーっとしてた』『見とれてた』
なんて言って困る事もあったけど…。
──さんと会わないオフもあるけど、瑛梨華ちゃん悠貴ちゃんと買い物行ったりするし。
作務衣着て陶工する時はおじいちゃんがいて、釣りに行くのも一人じゃないし…
私が一人でいるのって本当に久しぶり………。
腕を枕にして寝転ぶけど、慣れない姿勢だからちょっと痛い
もう夜だし寝ればいいと思う
でも何だかもやもやとしてて………
このまま寝ちゃうのは惜しく思える…………
…すぅ………
暖かい………
毛布…? 枕…?
寝ちゃってたのかな?
ゆっくり目を開けて
毛布が掛かっていて、枕代わりの太もも
この温もりは、──さんだ…。
「いつから、居ましたか?」
「! 起きたのか
ほんの数分前だな。
目が覚めたら隣に肇いなくて、
目の前の縁側で横になってる肇がいたから急いで毛布をと…」
「やっぱり寝かけてたんだ。
ありがとうございます…♪」
優しくてきゅんとする…
「…一人で考え事?」
「そうですね。いつも誰かといるから、一人で思い更けてました」
「そっか…。肇はずっと誰かといるもんな」
髪に沿ってゆっくり頭を撫でてくれるのは嬉しいけど…
まだ慣れなくて恥ずかしい
「もう少しいるか…?」
「………。」コクリ
「………。」
一人で思い更けている時には無い暖かみ
私の気分を察してくれて、静かに寄り添ってくれる
この空気が、会話のない二人きりの時間が好き…。
さっきは気付かなかったけど、
実家の縁側で寝転ぶと、夜空はこんなに綺麗に見れるんだ
暗い夜空を眺めてると、星々に照らされてたあの日を思い出す…
大舞台に憧れ、そんなイメージを重ねるように歌い、踊り…。
いつかの夢では綺麗な空に華やかな衣装を纏い、夢でないような
いつか照らされた中でも一番輝きたい!そんな思いも抱き…。
撮影で桜に思い馳せていた時も
月光と夜桜の風情に負けないくらい美しく輝く…
強い決心を持つと自然と不安や緊張が無くなり
初めて立った大舞台
自分のイメージした姿に辿り着けたと思うと心が踊って…!
一方で新しいイメージや未知のときめきを感じて。
まだこの先にある、私にしか分からない色を と思い…。
再び夜空の下に舞い、あの星々に照らされた頃を思うと景色が違って見える
夜風に委ね、舞い躍る…不思議な感覚
色んなことを知ったからこそ見える、出来るんだと。
新たな大舞台
自分を磨いてばかりで気付かなかった大切さを、ファンの歓声で気付かされ
"肇"って大きな声援を聞いた時には、涙が出そうだった…
長い日々でも本当にあっという間
色々と充実して、アイドルを頑張って本当に良かった…。
だからかな?
──さんへの…
想いや気持ちがずっとあるのも…。
はぐれたくないから、でも手を繋いでと言う時には気持ちを隠して言い
両親にも──さんをちゃんと紹介したくて実家に招き
また来年も、再来年も…一緒に夜桜を見たい
初めて想いをぶつけ
おじいちゃんが──さんを認めてくれてすごく安堵して
ほんの少しの時間でも、二人きりになれたエレベーターの中
かわいい だなんて言われて、言葉に詰まったり
ペアカップ作ろうと気合い入れたら、形作り失敗しちゃって
ちょっと強引に誘って一緒に泥にまみれ
お仕事を忘れるくらい、温泉街を──さんと歩き回りはしゃいで…
このまま、本当の気持ちを仕舞っているのも良いかなって思ってた
けど、
もう迷いたくない。
私をずっと支えてくれた大切な…
ぎゅっ
「いててっ!」
「あっ…!ごめんなさい…」
──さんの太もも握りつねっちゃった…
「急にどしたんよ…
今のは痛いって……」
「思い更けてたら…その……」
「よっぽどの事なんか…。
別に思い詰めなくてもいいよ。
腫れたり皮剥けた訳じゃないし」
けろっとした顔で笑ってくれて。
やっぱり口に出さなきゃ…考えても進めない…!
「はぁ……ふーっ…」
「………?」
私の小さな深呼吸に反応して、──さんも一呼吸
「あの、一つ気付いたことがあるんです。
大切なことを。
話してもいいですか?」
「ああ。そのことで思い更けてたなら…
聞かせてほしいな。」
真剣な眼差し、でも少し微笑んで
私の話を聞いてくれるときは、いつもこの表情
今夜は、今までで一番素敵な表情をしてる
「ふふっ………。
『ひとつのものに集中すると、どうしても視野が狭くなります。
この視界の広さが、アイドルには必要なんですね、──さん』
都会の夜風に身を委ねたあの日…
私が言った言葉です。
覚えていますか?」
「んー……言ってた気がする…」
「ほ、ほら…!
二人で乗ったエレベーターでの事です!」
「…ああ確かに、
そんな感じの言ってたな…」
「………」ぷく
「ごめん…。」
「…ふふっ。
あの日の私も、ふくれた顔してましたね」
お互いくすりと笑っちゃった
「ええと、話を戻しますね…」
「よし、改めてな」
さっきと変わらず真剣な眼差しで見てくれて、
やっぱり──さんに委ねて良かったって思う…。
「それを知ったのは"あなたの"言葉からでした。
じゃあ、アイドル以外はどうなのでしょう?
陶芸においても、
釣りを嗜む時も、
通ずるものがありました。
備前焼だけでなく、色んな陶器を実際に見て触って…。
色んなところに行けたからこそ出会えた陶器も沢山あって
作り手の感覚や気持ちが直に伝わり、陶芸家として心に来るものがありました…!
初めて、"あなたと"釣りに行ったことも…
一人かおじいちゃんとしか行ったことなかったから、何だか新鮮で嬉しくて。
昔の自分では夢物語だった事が、気付けば手の届くところにある…
アイドルを通じて『ひとつのもの』を少しずつ、視野を広げることが出来ました。
でも。
そのアイドルも
『ひとつのもの』
かなって思うようにもなりました。
そう思うようになったきっかけ…」
両手で──さんの手を包むように…
ぎゅっ
と…
「"あなたを"…!
──さんを好きになったから…!」
少し驚いた顔だったけど、目を瞑り迷わず
唇を交わして
────
「ん…………はぁ…。」
大胆…すぎたかな?
押し倒しちゃった
──さんが床に手を付いて肘から顔と、ゆっくり倒れてる感覚はあった
…私を守ってくれるように。
目を開けると動揺し硬直してる──さん
こんなに息荒くするんだ…
ダッダッタッ
「何か落ちたんか?」
「!?」
あっ、実家だからおじいちゃんいるの忘れてた
「──さっ…!んっ」
咄嗟に──さんが私を抱きしめ唇を奪って隣の畳部屋に転がって…
ボフッ
布団に戻ったけど急な出来事で…!?
とっ、とにかく落ち着かないと…!
スタスタ
「………起きとるんか?」
「スゥ………」
「………。」ドキドキ
「………んんー…
玄関か…?」
スタスタ…
おじいちゃんが去っても、──さんに背を向けたまま
さっきのことで振り向けない。
寝ちゃった のかな………?
「…お互い様か。」
「! …ごめんなさい。」
反射的に言っちゃった…
「謝る必要ないよ…
肇からするなんて思いもしなかったから、その…な。」
「──さんも急なことで気構えられなかったし、お互い様ですよね…」
「それもあるけど…
さっき、肇が息ぴったり転がってくれて助かった
毛布と一緒にしがみ付いてくれて、畳の方に体重かけてな」
「床に当たったら響いちゃうと咄嗟にしただけですし。
畳へ体重かけた後は──さんに委ねてましたから…」
あんなことは初めてだったし、委ねた後は頭真っ白
「肇は…キスしたの怒ってる…?」
「そんなことありません。
でも…情に浸れなかったのが残念です」
「思い付きで動いたからな…
舌噛んだりしたら困るしああするしか」
「…ありがとうございます。」
「あ、あぁ……」
もう振り向いても大丈夫
──さんと改めて話してたら緊張しなくなったし
ゴロン
「ねぇ…。
さっきの続きですけど…」
「ああ、そうだったな
…続きを聞かせてほしい。」
「その続きは、まだ夢なんです。」
「夢?」
「はい…。
今までは、交互に手を引いて進んできた道なんです
でも、これからはお互いに手を取り合って進んでいきたい。
"あなたと"夢を見たい、叶えたいから…
これからも、一緒にいてもらえませんか?」
私がどんな笑顔に見えたのかは"あなたに"しか分からないけど、
一番の笑顔が出来たかな。
「肇がそうしたいなら…添い遂げるよ」
「ありがとう…ふふっ………」
面と向かって言えて、言われ
委ねるようにゆっくり目を瞑り
心は温かくなり、体は徐々に熱くなってきて
体が何か暖かいものに包まれる感覚
これは、
最初で最後の出来事
だから忘れないでいよう…
『私の夢は、あなたと夢をかなえること!
きっと、そうなんだって』
想いを重ねることが出来た今、
"あなたを"私の夢へ誘いましょう…………
以上です
長々とお付き合いありがとうございました
これからも、藤原肇をよろしくお願いいたします
乙乙
超乙です
乙 いい雰囲気だった
乙です
凄く良かった
最近肇ちゃんの良SS連発で嬉しい
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