【アイマスSS】真「ボクのプロデューサーがこんなにマッチョなわけがない」 (73)

注意事項

・モバマスキャラが少し出てきます

・長い

・一部キャラ崩壊

・マジで長い



※ ※ ※



P「最近真美がよそよそしいんです」


小鳥「真美ちゃんがですか?」


P「ええ。ついこの間まで『兄ちゃん兄ちゃん』て何があるたびに亜美と一緒に絡んできたのに、今じゃ亜美とじゃれていても遠くから見てるだけなんですよ。特に、昨日なんて……」


小鳥「いったい何があったんです。震えてますよ」


P「『プロデューサー』って呼ばれたんですよ……」プルプル


小鳥「oh」


P「真美に嫌われてしまった……あんなに明るくて無邪気で人懐っこい真美に……フフ、真美みたいな天使に嫌われる奴がいるとしたらよほど性格が悪いクソ野郎なんでしょうね。俺の写真を撮って額縁に飾りましょう。タイトルは【今世紀最悪のクズ】で」


小鳥「ネガティブスパイラルに陥ってますねぇ。念のため聞きますけど心当たりは?」


P「それが無いんです。いつもどおり接していたら、ある日を境に――たしか一週間ほど前ですかね?――目を合わせてくれなかったり、話すときもちょっとぶっきらぼうな感じに」


小鳥「プロデューサーさんと真美ちゃんのいつもどおりってことは、仲の良い年頃の女の子と親戚のお兄さんみたいな感じですよね?」


P「ええ、そうです。あ、そういえば」


小鳥「何か思い当たりましたか?」


P「実は――」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447322947

カメラマン『ハーイ、OK! 良いのが取れたよ真美ちゃん。お疲れ様!』


真美『……』


P『真美、どうした?』


真美『……アッ。メンゴメンゴ! カメラのおっちゃん、ありがとうNE-☆』







P『さっきはボーッとしていたようだがどうしたんだ? 疲れているんなら、スケジュールの調整も考えるが』


真美『もう、兄ちゃんってば大げさすぎ。チョ~ト考え事をしていただけだYO』


P『考え事? 嫌じゃなければ聞かせてほしい』


真美『おやおや~? 兄ちゃんってば真美に興味津々なのかな、かな? ちかたないから教えてあげよう! 上からナナジュウ――』


P『はいはい。真美に興味津々の俺はプロフィールはしっかり抑えているから』


真美『そんな! 兄ちゃんってば真美がどこから体を洗うかまでちってたんだNE!』


P『おまえはそれをプロフィールに含める気か。何なら公式HPに載せちゃろうか』


真美『えっ……それは、ちょとその』


P(ん? ひょっとして)

P『もしかして真美。写真撮影が恥ずかしかったのか?』


真美『な、ななな何言ってんのさ兄ちゃん! 真美がこのせくちーな体をこれまで何回さらしてきたと思ってんのさ!』


P『図星か?』ニヤニヤ


真美『う、うう……』


P『けどこの間までそんなこと無かったのにな。やっぱり真美ぐらいの歳の子は、心も体も急変化するんだな』


真美『その、ね。最初はそんなんじゃなかったんだけど、カメラがずっと向けられていると≪ああ、今撮られているのが雑誌に載っちゃって、色んな人に見られちゃうんだ≫って前から分かってたことを改めて考えてみたら、急に恥ずかしくなっちゃって……』


P『真美』


真美『何、兄ちゃん』


P『何かエロい』


真美『え、エロ!?』


P『さっきカメラマンの方と話したけど、少し見ないうちに大人っぽくなってびっくりしたってさ』


真美『ま、まあね。真美は日々エロく成長し続け、やがてはあずさお姉ちゃんを超えるナイスバティ☆になっちゃうYO!』


P『そうだな。真美は13歳だけど高校生並には成長したんだよな。今でも信じられん』


真美『え、ちょっ……兄ちゃんどこ見てるの!?』


P『ん? いや、全体的に成長したなって』


真美(べ、別にやらしい視線じゃなかったけど、つま先から頭のてっぺんまでこんな近くから見られたら、その……。どうしてだろう、さっきカメラの前で急に恥ずかしくなったときの何十倍も恥ずか――ッ)


真美『に――』カァッ


真美『兄ちゃんのエッチ変態スケベッ!!』タタタッ


P『ま、真美!? どうした置いてかないでくれ!』






P「――――ということがありまして」シクシク


小鳥「あっちゃあ」

小鳥(自分の体が子供から女へと変わっていく最中だと実感した時に、一番親しいプロデューサーさんを異性として意識しまったということね。一番おもしろ――じゃなくて間が悪い時に重なっちゃったか)


P「真美は背伸びしたがるところがあったから、普段からこっちも合わせてそういう会話をしていたのに、それが裏目になってしまうなんてええぇぇぇ」


小鳥「女の娘はデリケートなんです。こういう対応をしていれば大丈夫、なんていう決まりきったものなんかありゃしませんよ」


P「うう、反省します」


小鳥「とりあえずプロデューサーさんができることは、時間を置いて真美ちゃんが冷静になるのを待つぐらいでしょうか。かといって真美ちゃんと距離を置きすぎたら、かえって不機嫌になると思います」


P「え……? じゃあガンガン話しかけるんですか?」


小鳥「そんなわけありますか。様子が変わる前より、少しだけ距離を取る。ちゃんと真美ちゃんに『今は真美が近づいてほしくないと思っているみたいだから距離を取るけど、俺は真美のことをちゃんと大切に思っているからな』というのが真美ちゃんに伝わるのが重要です」


P「し、思春期だ……」


小鳥「思春期なんです」


P「なんだか話していたら、思春期の娘を持つ父親の気分になってきました……。娘が中学生に上がって反抗期になり、いつか時間が経てば昔のように『お父さん、お父さん』と呼んでくれるに違いないと耐え、そう思っていたら――」ブワッ


小鳥「プ、プロデューサーさん!?」


P「男 を 連 れ て く る よ う に な っ て し ま っ て」


小鳥「」


P「やだよー、お父さん――じゃなくて兄ちゃんはもっと真美と一緒に遊びたかったんだよー! 男を連れてくるなんて5年、いや10年は早い! ハッ!? そうか真美、オマエはそいつにダマされているんだ! 兄ちゃんが今助け――」


小鳥「ていっ」チョップ


P「げふっ」


小鳥「少しは落ち着きましたか?」


P「……見苦しいところを見せて申し訳ありません」


小鳥「まったく、(プロデューサーさんを大好きな)真美ちゃんがそんなことするはずありますか」


P「そうですね。真美はアレでプロ意識がしっかりした奴です。それに恋バナとかはひょっとすると俺よりも聞いていて、ある程度耐性もあるでしょう。男に口説かれてもちょっとやそっとじゃなびきませんよね」


小鳥「別にそういった意味で言ったわけじゃありませんけど、確かにそうでしょうね」


真(……二人とも、ボクがいるってことに気づかないで面白そうな話してるな。混ぜてもらおうかな?)


P「そういった意味で心配なのは真美よりも真でした」


真「!!?」

小鳥「ほう……っ。続けたまえ」


P「はっ! 先ほども述べましたが、真美は学校で同級生などと恋バナをしていること、さらに耳年増であることが普段の会話等から読み取れます。加えて年齢以上に大人びた容姿などから、男からアプローチを受ける経験も多いと推察されます」


小鳥「ふむ。以上の情報から恋愛や男に耐性があり、真美ちゃんが見知らぬ男とデキる可能性は低い……そう言いたいのだね?」


P「ゼロとは言いません。他人の恋愛を聞くうちに恋に恋する少女になる――これは十二分に有り得る話です。しかし、たとえアイドルであっても年頃の少女である以上、恋に落ちる可能性はどの娘にも常にあります。ゼロにできないものをゼロにしようとするため、真美の自由を必要以上に奪い、ひいては魅力的な個性が失われればアイドルとして本末転倒な結果になりかねません」


小鳥「現状、真美ちゃんに対して打てる手は打っており、これ以上は悪手と言いたいわけだな。では765のプリンスについて、貴官の見解を問おう」


P「はっ! 真は父によって男のように育てられ、さらに女子高に在籍しています。これまでの人生で女性にモテた経験こそ豊富ですが、男性への免疫は真美よりも弱いと思われます」


小鳥「しかし、ここのところ急激に男性ファンが増えているようだが」


P「当然です! 先日のことですが、真の後ろ姿を見たときに素で『アレ? うちにこの手の美少女いたっけ?』と思ったほどです!」


真(び、びびび美少女!?)アセアセ


P「だからこそ、だからこそ心配なのです! 美少年から美少女へと変化しつつあるのに恋愛への耐性がほぼ無い。これは松坂牛が無警戒にサバンナを歩いているに等しい状況です」


小鳥「先ほど貴官は真美ちゃんが恋に恋する少女になる危険性を示唆したが……」


P「大佐が今思いつかれた通り、誰よりも乙女なマコリンのそれは、真美のそれを遥かに超える可能性があります。そして女を見れば抱くことしか考えず女をとっかえひっかえするゲスならば、一目でマコリンの純情な乙女心を見抜き、甘い言葉を囁くかもしれません」


小鳥「男性への免疫が低く、美少女で、かつ恋に恋する少女……なるほど、その手の男は放っておくまい(薄い本が厚くなるピヨォ)」


P「小官は、小官は! それが不安でたまらなく……もしマコリンが前後不覚の状態でホテルに連れ込まれたらと思うと――う」


小鳥「……う?」ガサゴソ


真(まったくプロデューサーは! ボクがそんな簡単に男についていくはずないでしょうが! けど、その……相手がプロデューサーなら、ねえ?)


P「オロロロロロロロッ」


小鳥「はいビニール!」サッ


真(プロデューサー!!?)ガタッ

P「う…うぇっぷ……うう、すみません音無さん。真が、ホストっぽい奴やイレズミをしたガタイのいい男に連れ込まれるところを想像したら、胃の中が逆流してしまって」タプタプ


小鳥「まったく、真美ちゃんで泣いたと思ったら真ちゃんで吐くだなんて。いくらなんでも心配しすぎですよ」


P「だってぇ」


小鳥「だってじゃありません」


真(ま、まあボクが男についていくって想像するのには腹が立ちますけど? それだけ心配されるのは、まあ悪くないというより正直その……へへっ)


P「――決めました」


小鳥「とりあえず中身をトイレで流して、ビニールはビニールで包んでからポイしてください」


P「アッハイ」ササッ


小鳥(さっきプロデューサーが吐いた時に後ろから物音がしたような……この時間なら真ちゃんかな? 面白いから放っておきましょうっと)


P「うう、ご迷惑をおかけしました……」


小鳥「で、さっきは何を決めたんですか?」


P「そんなの決まっています。真が自分が男にモテるという現状に慣れるまでの間は、真に近寄る悪い虫を俺がかたっぱしからぶっ飛ばすんです!」フンスッ


真(プ、プロデューサーがボクを守ってくれる!? つまり王子様!?)


小鳥「ぶっ飛ばすってプロデューサーさん……社会人うんぬんは置いときまして、体力に自信あるんですか?」


P「」(ここでのプロデューサーは176センチ62キロのやせ気味にしています)


P「実はこの間、亜美を肩車しようとしたけど辛くって……」


小鳥「亜美ちゃんのアミマンの感触について400字以内でまとめて」


P「子ども相手に何言ってんだ音無ィ」


小鳥「ピヨォ……ッ(鬼畜メガネモードのプロデューサーさんも良いピヨォ!)」

小鳥「まあともかく。仮に真ちゃんをダマす男が線が細いホストタイプではなく、オラオラ系DQNだったらどうするんですか? ゴツくてガラが悪いのは真ちゃんの好みじゃありませんけど、オラオラ系はスポーツ好きも多そうじゃないですか。共通の話題から盛り上がって、甘い言葉をささやかれてそのまま――ってな具合に」


P「殴りかかる!」


小鳥「Pは殴りかかった。オラオラ系DQNに5のダメージ。オラオラ系DQNは仲間を呼んだ。オラオラ系DQN・B、C、Dが現れた。Pはおどろきとまどっている。オラオラ系DQN・Aの攻撃! Pに12のダメージ。オラオラ系DQN・Bの攻撃! Pに14のダメージ。Pは目の前が真っ暗になった――」


P「おお俺よ。死んでしまうとは情けない」


小鳥「……まあこんな感じになるでしょうね」


真(その前にボクが割って入って片づけますよ!)


P「いや、ちょっと仲間が駆けつけるの早くないですか?」


小鳥「一対一なら勝てるとでも?」


P「ぐぬぬ」


小鳥「まあ可愛い真ちゃんが心配なのは分かりますけど、真ちゃんならオラオラ系DQNがA~Dで来ても、ばくれつけんやまわしげりで片づけるでしょう。念のため、甘い言葉で近寄ってくる男に気をつけるように後で言えば――」


P「決めました」


小鳥「はあ。今度は何をですか?」


P「体を鍛えることをです!!」


小鳥「え?」


真(……ッ!?)


小鳥「本気ですか?」


P「以前、握手会でノコギリを持った男にアイドルが襲われて怪我をする事件がありましたよね。そのニュースを聞いて、もしうちのアイドルに何かあれば体を張って守ろうと決心していました。けど、体を張っても守れなきゃ意味がない。アイドルたちのために体を鍛えます! ……それに――」


小鳥「それに?」


P「それに筋肉つけたら真美も見直してくれるかも」


小鳥「あ~、はい。まあ亜美ちゃんは兄ちゃんが肩車が上手くなったって喜ぶかもしれませんね」


真(ボクが変な男にダマされることもないし、皆が危ない目に遭ったらむしろボクが守るけど……体を鍛えること自体は健康でいいことだし、それに――)

真『今からスタジオで収録ですねプロデューサー。でもこの時間帯は道路が混雑するから嫌気がさします……』


P『いつから車でスタジオまで行くと錯覚していた?』


真『なん……だと……?』


P『コイツの後ろに乗りな』キキィッ


真『え、なんで自転車が?』


P『最近健康のために自転車に乗るようにしていてな。なあに、たかだか5キロほどの距離、車を使う必要など無い。しっかり俺にしがみつけよ!』


真『は、はい///』ギュッ


P『……ッ!!?』


真『ど、どうしましたかプロデューサー?』


P『い、いやなんでもないぞ!』


P(言えるわけがないだろ! 真の体が思っていたより柔らかくてビックリしただなんて!)


真『えへへ~』ギュー


P『ま、真? ちょっとその……力入れすぎじゃないか?』


真『しがみつけって言ったのはプロデューサーですよ。それにしても、ふふ』


真『プロデューサーの背中って、こうしてみるとけっこう広いんですね』頬スリスリ


P『~~~~~ッッ!!!』


真『どうしましたプロデューサー? 遅刻しちゃいますよ』


P『そ、そうだったな! じゃあ、振り落されないようにそこそこ強くしがみつけよ!』


真『はい! しっかり強くしがみつきますね!』


P『よいしょっ』


真『わあ! 思ったよりスピード出ますね』


P『ふん。鍛えた成果が早くも出たようだな』


真『プロデューサー。ボクも自転車持ってますし、今度休日が重なった時にちょっと遠くまでサイクリングしませんか? 海や林に沿って自転車で走るのは、きっと体だけでなく心の健康にも良いですよ』


P『おおっ、それは良い案だ! 今度の休日が楽しみだな』


真(へへ、やーりぃ! プロデューサーとのデートを取り付けちゃった///)







真(――――な~んてことがあるかも!)

P「さしあたってワンパンマンのサイタマを見習って、毎日ランニング10キロと腕立て・腹筋・スクワットを100回ずつやります」


小鳥(サイタマを見習う→ハゲになる→PaPになる→パッションの真美ちゃんよろこ……ばないわよね)


小鳥「けどPさん、体を鍛える時間と体力あるんですか?」


P「……今日は何時ごろに仕事終わりますかね?」


小鳥「このまま何も無ければ18時に。けど絶対どこからか追加の仕事が来るんで運が良くて19時、普通なら20~21時。最高の場合は私と朝ピヨです」


P「……さて、休憩はそろそろ止めましょうか」


真(よし、今戻ったふりをしようっと)


真「菊地真、ただ今戻りましたー!」マッコマッコリーン


P「おう、お疲れさん真」


小鳥「お帰り真ちゃん」


小鳥(このタイミング。やっぱり真ちゃん事務所にいたんだ。面白いことになるといいけどな~)ピヨピヨ







オ疲レ様デシター


P(疲れた……結局仕事が終わったのは22時か)


P(今から帰りに牛乳やプロテインとか買って帰る頃には23時。トレーニングにはどれぐらい時間がかかるかな?)


P(学生の頃は4キロを16分ぐらいで走ったから、単純に換算すると10キロを40分。体力が学生のままと仮定しても45分はかかる。で、実際は営業で歩き回ってはいるけど走ったりしていないから、60分……いやもっとか?)


P(筋トレにしても一度に100回は絶対無理だ。それぞれ25回を4セットが現実的か。1セットにかかる時間をインターバル含めて5分だとして計20分。ランニングと筋トレの間に10分の休憩と、準備運動と整備運動を5分と10分。つまり60~70分+20分+10分+15分で――)


P「合計105~115分!? 終わる頃には深夜1時になる!」


P「そ、そんだけ激しく動いた後なら、シャワーじゃなくてじっくり風呂に入らきゃいかんし、しっかり栄養も取らんと……今日はプロテインとかと一緒に唐翌揚げ弁当を買うとして、風呂入って飯食って、明日の準備をパパッと済ませて布団を敷いた頃には……2時になってるよな、多分」


P「で、明日も当然仕事だから6時に起きなければいけない……絶対疲れ残っているよな。というか起きれるのか俺?」


P「やっぱり明日から……でも思い立った日にすらできなかったら三日坊主以下じゃないか。ここは根性出して――」


???「チヒッヒッヒッヒッヒッヒ!」


P「誰だ!?」クルッ


C・S「お困りのようですねお兄さん」

P(誰だこの人? ローブの下から少しだけ黄緑の服が見えるけど)


C・S「わたしはですね、貴方のようにアイドルのために頑張るプロデューサーを応援するのが生きがいの者なんです」


P(うさんくさい……)


C・S「さて。貴方は今、大切なアイドルたちのために睡眠時間を削ってでも頑張りたい――そう思いましたね」


P「な、なぜそれを……!?」


C・S「ふふ、それは貴方がプロデューサーさんで、わたしがアシスタントだからです。……などと言っても貴方は信じないでしょうから、まずは無料で一本これを差し上げます」ハイ


P「この缶は……?」シゲシゲ


C・S「アイドルのために頑張る者のためのアイテムです。そうですね……とりあえず走る前に飲んでみてください。そしてもっと欲しいと思ったのならば、今と同じ時間に、明日ここで会いましょう。」スウッ


チヒッヒッヒッヒッヒッヒ――


P「き、消えた!? 面妖な!」


P「いったい何だったんだあの人は……それにこの缶。見た感じエナジードリンクみたいだけど、どうしようか。やっぱり捨てた方が……」




『アイドルのために頑張る者のためのアイテムです』




P「……」




ガチャ、バタン

イチニサンシー、ゴーロクシチハチ

ニーニサンシ、ゴーロクシチハチ――

ゴキュッ、ゴキュッ。プハー……エ? カ、体ガ~~~ッッッ!!!







チュンチュン、チュン――


P「……」


P「あの怪しげなドリンクを飲んで力がみなぎり過ぎて、寝付くために予定の倍のトレーニングをしてしまった。それなのに就寝したのは予定通りの2時」


P「あんな馬鹿みたいに動いて、さらに睡眠時間が4時間なのに目がパッチし。筋肉痛? 何それ美味しいの?」


P「これならば……あのドリンクさえあれば、どんなに忙しくても体を鍛えることができるではないか!」





この日を境に、Pは週に一度あのローブを着た女に会いに行くこととなる。怪しげなドリンクと引き換えに、仕事が忙しすぎて使い道の無い残業代を失いながら……

――1週間後



P「♪~♪~」カタカタカタ


真美「……ねえ亜美。なんか兄ちゃん、最近体がゴツくなってない?」


亜美「んっふっふ~。真美隊員も気づきましたか。さっき兄ちゃんに後ろから体当たりしたんだけど、ちっともよろめかなったんだYO! 抱きついた時の感触も違ったから聞いてみたら、何故か筋トレ始めたんだって☆」


真美「筋トレ? あの兄ちゃんが?」


亜美「意っ外だよね。それとさ、筋肉って熱いじゃん。抱きついた時は温かくってびっくりちたYO!」


真美「ふーん……」


亜美「真美も抱きついちゃえバー」


真美「だ……っ!! ……ま、真美はそういうこと、もう兄ちゃんにしないって決めたもん」


亜美「ありゃりゃ~。兄ちゃんも嫌われちゃったもんだ」


真美「別に嫌ってなんかないよ。それに……」


亜美「それに?」


真美「……別に、兄ちゃんは兄ちゃんだから、前のままで良かったし」ボソ


真(うんうん、今のプロデューサーちょうどいい感じ! でも驚いたなあ。1週間でここまで変われるものだっけ? それに気のせいか身長も……)





【Pのデータ 176センチ→178センチ 62キロ→68キロ】

――さらに1週間後





P「おはようございまーす」


律子「おはようございますプロデューサー殿。あれ? ひょっとして新しいスーツですか?」


P「お、バレたか。前のスーツが小さくなってしまって新しく用意したんだ」


律子「そういえば少し窮屈そうでしたね。……しかし、ちょっと大きくないですか?」


P「なあに、すぐにちょうどよくなるさ」


律子「育ち盛りの高校生の学ランじゃないんですよ? 私はギリギリOKの範疇だと思いますけど、見る人によってはダボダボしてて見苦しいと思うかもしれませんからね」


P「そう怒るなよ律子。少しの間だけだからさ」ゴキュッゴキュッ


律子「何が少しですか。体格を変えようと思ったら一カ月以上かか……え?」


P「プハーッ! 朝のエネルギー充電完了!」


律子(す、スーツが縮んだ? いえ……むしろ体が大きくなったような。……まさか、ね)





【Pのデータ 178センチ→180センチ 68キロ→75キロ】

――さらに1週間後





P「……」ペラ、ペラペラペラ


小鳥「……」カタ、カタカタカタ


P「……ん。音無さん、ここの件なんですが――」


小鳥「はい――では、そのように」


P「……」カタ、カタカタカタ


小鳥「……」ゴソゴソ、ゴソゴソ


ピィーッ


P「……日付が、変わりましたね」


小鳥「けど終わる気配がありませんね」


P「仕方ありません。本来昼間するはずの仕事を、ほんの数時間前に始めたばかりなんですから」


小鳥「ま、まあ嬉しい悲鳴というやつじゃないですか! ゴールデンタイムの3時間スペシャルに、大物芸能人と一緒に響ちゃんが出演できるんですから!」


P「そうですね。当初予定していたアイドルが来られなくなったから、今朝になって急にうちの響に白羽の矢が立つのはたいへんありがたいことです。問題は――」


小鳥「撮影時期は話が来てから8日後。撮影期間は2週間で場所は北極。響ちゃんがパスポートを持っていたからよかったものを、スケジュールの調整やらなんやらで、気がつけば日が沈んでましたからね……」


P「音無さん。そろそろ事務所を出ないと終電を逃しますよ」


小鳥「家に帰る余裕なんて……」


P「多分今日のしわ寄せは明日だけでなく数日影響が来ます。ならちゃんとベットに入って寝て体力を回復させないと。……それとも俺と一緒に仮眠室で寝ますか?」


小鳥「ピヨッ!!!」ガタ

P「はは、冗談ですよ」


小鳥「ピヨォ……」シュン


P「明日の朝は時間ギリギリの出勤でいいんで、できるだけ寝てください。その分昼間頑張ってもらいますから」


小鳥「……わかりました。プロデューサーさんもキリのいいところで寝てくださいね」



オ先ニ失礼シマス。オ疲レ様デシター



P「さて……音無さんも帰ったことだし、ここはコイツに頼るとしますか」ゴキュッ、ゴキュッ


P「――――――――――キタ」ピシ


ペラペラ、カタカタカタカタッ、ゴソゴソ、カタカタカタカタッ――――――



※ ※ ※



P「ふう……終わった終わった。あのドリンク体力だけでなく集中力まで回復させるとは驚いた。二人がかりで徹夜しても終わるか怪しかった量が、まさかこんなに早く終わるだなんて」


P「今から2時間ほど仮眠がとれるけど……力が有り余って寝れる気がしねぇ~~~~~ッッッ!!」


P「軽くフルマラソンしよっと」ダタッ



※ ※ ※



小鳥(プロデューサーさんはああ言ってくれたけど、プロデューサーさんの優しさに甘えて言われた通りにするわけにはいきません。いつもより早めに出勤して少しでも片づけないと)


小鳥(それに! 頑張りすぎたまま机に突っ伏しているプロデューサーさんの寝顔を鑑賞して、さらに毛布を肩にかけるという特典もあるピヨォ!)


小鳥(そして目が覚めたプロデューサーさんに『あったかいもの、どうぞ』とコーヒーを差し出して大人のお姉さんの魅力をアピールするんだピヨォ!)グフェフェ、ピヨピヨ


カチャ――


小鳥(さあプロデューサーさん。未来の奥さんが来まし――――なんぞこれぇ」


P「」


小鳥(あ…ありのまま今起こった事を話すぜ! 事務所に入ったと思ったらプロデューサーさんが逆立ちの姿勢で気を失っていた)


小鳥(な…何を言っているのかわからねーと思うが、私も何が起きたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……お酒を飲み過ぎてシンゴー! シンゴー! だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……)

小鳥「プ、プロデューサーさん……い、生きてますか?」


P「…………え、音無さん」パチッ


小鳥「よかったー。何か怪しげな事件に巻き込まれて死んでしまったんじゃないかと――って、何してるんですか」


P「え、何って」グイッ、グイッ、グイッ


P「筋トレの、途中で、寝落ち、しちゃったから」グイッ、グイッ、グイッ


P「最初、っから、やり直して、いる、ところです」グイッ、グイッ、グイッ


小鳥「筋トレ……それがですか? 私の記憶が確かならば、プロデューサーさんはサイタマと同じメニューをすると」


P「いや、それが、ぬるくって、今じゃ、フルマラソン、っと、逆立ちで、腕立て、鉄棒に、ぶら下がって、腹筋、ベンチ、100キロ、持って、ジャンピング、スクワットを、100回ずつ――という感じです」グイッ、グイッ、グイッ


小鳥「は、はぁ。それで、それを何故事務所で?」


P「ふぅ……いえ、仕事が片付いたんで仮眠取ろうと思ったんですけど、寝る前にトレーニングする習慣がついていたので、つい」


小鳥「はい!? 仕事が片付いたって……ああ、キリのいいところまで終わったという意味ですね」


P「いや、昨日の時点でしなければならない全てですよ」


小鳥「」


P「どうも10分ぐらい寝てたようですね……限界が来てつい寝てしまう10分って、下手な睡眠1時間よりも効果あると思いませんか?」


小鳥「アッハイ」


P「では汗臭くなってしまったんで、シャワー浴びてきます。それとしばらく窓開けっ放しでいいですか? シャワー終わったら消臭剤もかけますんで」


小鳥(アイドルの娘たち、プロデューサーさんの汗なら喜びそうだけどなぁ……)


P「おっと。鍛えた後は栄養補給栄養補給」ゴキュッ、ゴキュッ





【Pのデータ 180センチ→182センチ 75キロ→83キロ】

――さらに1週間後



春香「……さて、皆さんお忙しい中お集まりくださり、まことにありがとうございます」


美希「前置きはいいからさっさと始めるの」


春香「本日の議題は、プロデューサーさんについてです」


あずさ「本日の議題は、というより、本日の議題もというのが本当のところよねー」


春香「プロデューサーさんの何について話し合うかは、もはや口にするまでもないでしょう」


雪歩「お、男の人って大人になった後も成長するものなんですか……?」


春香「亜美。例の画像をプロジェクターに」


亜美「アイアイサー!」カチッ


美希「……うん。ついこの間までのハニーの姿なの」


春香「ちなみにこの画像は千早ちゃんの提供によってお送りします」


千早「は、春香! 何でそのことを言うのよ!」


のヮの「だって秘密にしてだなんて一言も言われなかったし。テヘ」


伊織「亜美。さっさと問題の画像を映して」


亜美「いおりんのご用命とあらば」カチッ


アイドルたちと事務員『…………』


貴音「め、面妖な……」


真美「少しずつおっきくなってきてるナーとは思ってはいたけど……」


雪歩「こう、並べて見比べてみると……」


伊織「首から下は完璧に別人じゃないの!」


真「待って伊織。アゴの筋肉も別人になってるから」


伊織「そんなことどうだっていいでしょっ!」


亜美「どうどういおりん」


真美「ステイ!」


伊織「あ、ん、た、た、ち、ねえ~~~ッッッ!!」


亜美・真美「うわー、逃げろー!」

律子「……結局スーツはこの一ヶ月で2回換えたそうよ」


美希「ねえ……これってやっぱり問題なの?」


千早「一年以上時間をかけてならともかく、人の体は――くっ――そう簡単には変わらないもの。それに――」


春香「プロデューサーさんが怪しげなドリンクを飲んでいるのを見たことがある人は挙手を願います」


アイドルたちと事務員 つつつつつつつつつつつつ


春香「この通り、この場にいないやよいを除いた全員が目撃……え? 響ちゃんは無いの?」


響「――――――――ん? 自分を呼んだか?」アミアミ


亜美「コラー! ひびきん何会議中に編み物してんのSA!」


響「ごめんな。自分もうじき北極に行くから、それまでにセーターを編み終えたくて。あとちょっとなんだ」


あずさ「響ちゃんは明日北海道に行って、そこから北極に行くのよね。……プロデューサーさんと一緒に、二週間も」


響「えへへー。そうなんだぞ! 最初はハム蔵のためにセーター縫おうと思ったら、律子にハム蔵は無理って言われたから代わりにプロデューサーのを縫うことにしたんだぞ! 最近プロデューサー服を探すのが大変だって言ってたから、よく伸びるセーターを大きめに作ればきっと長く来てくれるよね///」


貴音「ふふ、きっとあの方は喜んでくださいますよ。ハム蔵たちの世話はわたくしたちがするので安心して行ってらっしゃいな」


春香「その手が――」ガタッ


美希「――あったの!」ナノッ


伊織「いいから座りなさいあんたら」

小鳥「話を戻しましょう。プロデューサーさんは一ヶ月ほど前から怪しげなドリンクを飲みながら体を鍛えはじめ、育ち盛りの高校生もビックリの速度で成長してしまった」


雪歩「ドリンクを調べようにも、飲み終わった後はすぐに水でゆすぐから成分が調べられません……」


貴音「そのうえ“らべる”には何者が製造したかの情報が一切ありません」


伊織「飲んでないのを調べようにも、常に懐に入れて持ち歩いてるし、取り上げようとしたけど馬鹿力で無理だったし」


真「いったいどんな薬物なんだろ……ステロイドで筋肉が発達するのは分かるけど、身長が伸びる効果もあるだなんて正直怖いよ」


千早(……!? 私もそのドリンクを飲んでからバストアップ運動をすれば……ッッ!!)


真美「……そもそもさ。兄ちゃんはなんで体を鍛えようなんて思ったの? 別に以前のままでよかったのに」


真「それはその……健康のためじゃないのかな?」


真美「健康のために変な物に手を出したら意味ないじゃん!」


春香「ちょ、ちょっと落ち着きなよ真美」


真美「……ごめん。はるるん、まこちん」


真「ううん、いいよ」


真(この様子だと、ボクたちのためにプロデューサーが体を鍛え始めたって知ったらショック受けそうだな……こんなことになるのなら、あの時に必要ないって止めておけば)


小鳥「ゴホン……まあ体を鍛えるにあたって、プロデューサーさんも色々と思うところもあったみたいだけど、もしその方法が間違っているのならば止めないと」


律子「薬物を押収できないとなると、血液や尿から検査することになるのかしら……?」


亜美「もうさ、いっそのことうちの病院に検査入院させちゃえバ」


真美「それだよ亜美!」


小鳥「……プロデューサーさんは北極に二週間行った後は、4日間の休みが用意されています。北極撮影の影響による残業以外にも、ここのところプロデューサーさんは働いてばかりでした。それを心配する皆の声を聞いた社長が、休みのうちに検査入院を勧める――このシナリオはどうかしら?」


貴音「良き案ではないかと」


美希「休みの間は美希とイチャイチャしてもらいたかったけど、ハニーの体が一番だから仕方ないの」


千早(検査入院……? 病院服、首元が開いてよく見えるあの服装――撮らなければ!)


あずさ「でも社長は確か……」


律子「明日の夜まで、名古屋の方で講演会やパーティに参加されたりで不在よ」


春香「じゃあ社長が戻られてからお願いして、プロデューサーさんが帰国した時にとっ捕まえてそのまま入院させよう!」


アイドルたちと事務員『異議なし!!』


千早(プロデューサーの胸囲は既に30センチは増えている……だったら私だって――100センチオーバー! ふふ、うふふふふ)

※ ※ ※



P「やよい、撮影お疲れ様。監督に褒められたそうじゃないか」


やよい「お疲れ様ですプロデューサー! ハイ、ターッチ!」 ※145センチ37キロの美少女


P「うっうー!」 ※プロレスラーじみた野獣


パシッ


やよい「えへへ。最近のプロデューサーのお手て、おっきくって分厚いから、ハイタッチするのがもっと楽しくなりました!」


P「そっかー。やよいがそう言ってくれて俺も嬉しいぞ」


通行人A「通報……どうする?」


通行人B「親子かもしれないから(震え声)」


P「お腹すいてるだろやよい。もうお昼はとっくに過ぎてしまったし、どこかに寄ってたくさん食べよう」


やよい「え、でも……いいんですか?」


P「いいからいいから。そうだ、やよいは成長期だからお肉をたくさん食べないといけない。あそこはどうだ?」


やよい「ステーキとハンバーグ専門店、ですか?」


P「今の時間は客がいないから、きっとすぐに食べられるぞ」カラン、カラーン


イラッシャイマセ、二名様デショウカ、オ煙草ハ――席ニゴ案内シマス、ゴユックリドウゾ――


やよい(何にしようかな? ステーキはまだ一度も食べたこと無いから注文したいけど、変な食べ方してプロデューサーに恥ずかしい目に合わせちゃいけないし……うん、このハンバーグおいしそう!)


P「決まったか?」


やよい「はい! このチーズハンバーグセットをライスとオレンジジュースでお願いします」


P「デザートも頼んでいいから、食べたくなったら言ってくれよ」ピンポーン


店員「ご注文はお決まりでしょうか」


P「チーズハンバーグセットをライスとオレンジジュースで。それとTボーンステーキセットをライスとホットコーヒーでお願いします」


店員「かしこまりました」

※ ※ ※



やよい「それでですね。伊織ちゃんが――」


店員「お待たせしました。チーズハンバーグセットとTボーンステーキセットになります」


やよい「はわっ。チーズがトロトロに溶けててすっごく美味しそうです!」


P「ハンバーグの中にもチーズが入ってるから、ヤケドしないようにな」


やよい「はい! いただきます」


やよい(ん~~~~~っっっ! 肉の触感に肉汁とチーズが溶けあって最高です! 今度長介たちにも作ってあげ――)


サクッ サク…サク


ざわ……ざわ……


やよい(はわっ!? 私変な食べ方してるのかな! 皆こっちを見てる!)


店員A「骨食ってるよ。Tボーンステーキの……」


店員B「プロレス……?」


P「うん、歯ごたえがあって美味しいなあ」サクッ


やよい「」


やよい(ス、ステーキって骨ごと食べないといけないんだ! 良かった注文しなくて。私には絶対無理だよ)





【Pのデータ 182センチ→185センチ 83キロ→95キロ】

――さらに1週間後






春香「プロデューサーさんと響ちゃん、北極でどうしてるかなぁ」


美希「心配なの春香?」


春香「当たり前だよ! だって――」


雪歩「……そうですよね。急変化したプロデューサーの体が、北極の過酷な環境に『沖縄っこでロリ巨乳な響ちゃんが北極でフカフカモフモフな服装というギャップ萌えシチュ!』……え?」


美希「さらに一面の銀世界を駆け回る八重歯ロングポニテなの!」


春香『ん? どうしたんだプロデューサー? そんなボーッと自分を見て。あ、もしかしてやらしいこと考えてたんだな変態プロデューサー!!』


美希『や、やらしいことなんかじゃないさ。ただ、真っ白な世界にいる響がとてもキレイで、つい――』


雪歩「何々? 何始めてるの?」


春香『き、キレイ……あ、当たり前さ! じじじ自分はなんてったってきゃきゃきゃんぺきだからな!』


美希『ハハ。響が完璧なのは知ってるから怒らないでくれよ』ナデナデ


春香『うー』ギュッ


美希『ひ、響!?』


雪歩「千早ちゃん、お茶どうぞ」コト


千早「ありがとう。ちょうど喉が渇いてたの」ペラ、ペラ


春香『は、走ってたら汗かいて、汗が冷えたから寒くなったから仕方なく! そう仕方なく体がおっきいプロデューサーにくっついただけなんだからな!』


美希『し、仕方なくってお前、その……む、胸が』


春香『こ、こんなところまで来てもプロデューサーはやっぱり変態なんだな! まったく、こんなんじゃ他の女の子を近寄らせられないぞ!』ギュギュウ


美希『ひ、響。離れてくれ……』


春香『いくらプロデューサーが変態でも、誰も女の子が近寄らないんじゃ可哀そうだからな! たとえ一人でも、完璧な自分なら満足できるよね///』


美希『響……』


千早「相変わらず仲良いのか悪いのか分かんない二人ね」ペラ


雪歩「あれ、どこまで行っちゃうんですか? ところでさっきから何を読んで……ッッッ!!」


千早「どうかしたの?」


雪歩「い、いえ。私は何も見てません本当です」


千早「?」ペラ

春香『プロデューサー……今、ここには自分たちだけ……だよね』


美希『ま、待ってくれ響。俺には、俺には心を決めた人が……』


春香『ここにはいないさ。ここにいるのは抱きしめ合っている自分たちだけ。だから……思い出、ちょうだい』


美希『す、すまない――みk『カット』


春香・美希「……」


美希「なんで良いところで止めたの? 馬鹿なの?」


春香「いやいや。致命的なミスをやろうとした美希に馬鹿扱いされる筋合いないから」


美希「ミス~? まあ確かにね、うん。たとえ最高のシチュエーションで、相手が美希ほどじゃないけど完璧美少女な響が相手といえども、ハニーが美希以外の女に心を許すはずがないの」


春香「はい指摘したのに連続して致命的なミス! オツムのプロセッサは何世代前なの? プロデューサーさんが心に決めて、けどプロデューサーとアイドルという立場から表に出せない相手はわた春香さんですよ」


美希「こやつめ、ハハハ」


春香「お?」


美希「なの?」


雪歩「よ、良かった。てっきりあのままキスシーンまで行くのかと」ドキドキ


千早「キスした後に、何で途中で止まらなかったってお互いに文句の言い合いになりそうで、それはそれで見物だったかも」クス

春香「あのね、美希。やっぱり仕事で忙しいプロデューサーさんは、一緒にいて癒されるわた春香さんと付き合って、結婚して、子ども三人と白くて大きい犬に囲まれた生活を送るべきかなーって」


美希「ハハッ、ワロス。マッチョな男の隣にはグラマーな女が並ぶのが絵になるの。春香が一緒にいたら妹か下手したら娘だと勘違いされるのがオチなの」


春香「美希なんてプロデューサーさんと倍近く歳が離れてるじゃない!」


美希「ふっふ~ん。女子大生だと何回も間違われたもんねーだ」


春香「この和製ホルスタインめ! 私だってDカップあるんだからね、Dカップ!」


美希「普通に可愛い春香らしく普通に大きいサイズでお似合いなの。心だけでなく体まで超ビッグになったハニーは美希と結婚するから、春香は普通に良い人と結婚すればいいんじゃないかな?」


春香「このっ、このっ。生意気な口を叩くのはこの口か。柔らかくてよく伸びるじゃないか」


美希「ひゃひひゅるの! ひょうなっはらひゃりゅかひも!」


春香「ひゃめ、ひゃめろ」


ドタバタ、ドタバタ――


千早「お茶がうまい……」ズズ、ペラ


貴音「……ただいま、戻りました」ガチャ


雪歩「おかえりなさい四条さん」


千早「おかえりなさい。どうしたんですか? 眉間にシワが寄ってますよ」


貴音「実は……」

春香「あ、お帰りなさい貴音さん」


美希「ちょうどいいところに戻ったの貴音!」


貴音「おや? そんなに息をきらして、何が事件でも?」


美希「これはすってんリボンのせいなの。それより貴音もマッチョなハニーにはグラマラスな女がお似合いだと思うよね!」


春香「な……っ!」


貴音「なるほど。一理……いえ、万理ありますね」


春香「そこはせめて百で止まりましょうよ! そ、そうだ! 千早ちゃんもプロデューサーさんの隣に並ぶのに、スタイルなんて関係無いと思うよね!?」


千早「え? まあプロデューサーの好みが重要でしょうけど……似合うかどうかなら、スタイルが良い人じゃないかしら」





『…………………………はい?』





千早「あら皆どうしたの? 突然固まったりして」


春香「……え、あ、ごめん。うん。これはアレだよアレ」


美希「そうそうアレなの。たまに急にくるから、ついびっくりしちゃうの、アレ」


雪歩「まままったくアレには困ったもんですねえ」


千早「アレ? アレって何のことなの?」


((こっちが聞きたいよ(です)!!))

貴音「コホン……まあ先ほども千早が言った通り、誰が横に並ぶかはあの方の好みが重要でしょう」


美希「そ、そうなの! スタイルなんて二の次なの!」


春香「アハ、アハハハハハ。私たち何を言い争ってたんだろうね」


千早「あら。女性がスタイルを気にしてつい熱くなることは、普通だと思うけど」





『アッハイ』





美希(いったい今日の千早さんはどうしたの!? 自分から地雷原でタップダンスを踊るようなマネをするだなんて!)


貴音(ひょっとすると自虐ねた、とやらを試みているのでは?)


美希(だとしたら誰か突っ込まないと……春香!)


春香(無理! 無理無理無理ぜ~~~ったい無理!)


美希(春香と千早さんは親友でしょ! それに突っ込みどころを見逃したら芸人失格なの!)


春香(親友だからこそ気軽にふれられない闇ってものがあるの! あと誰が芸人だ! それに突っ込みを入れるにしても、千早ちゃんが本当にボケてるのか確証がいるし……そうだ雪歩!)


雪歩(ふぇ!? 私ですか?)


春香(千早ちゃんの前で例の持ちネタやってみて! それで千早ちゃんの反応を見て判断するから)


雪歩(も、持ちネタ? 何のことですか?)


貴音(おそらくゴニョゴニョゴニョのことでは?)

雪歩(あ、あれを千早ちゃんの前で言うんですか!? そんなの絶対無理ですよ!)


春香(お願い雪歩! もし千早ちゃんが自虐ネタをやってるって分かったら、私が責任もって突っ込むから)


美希(千早さんがもし激オコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームになったら、ちゃんと皆で止めに入るから)


雪歩(本当に助けてよね! 穴掘って埋められる前に助けてくださいよ!)


貴音(………………………もちろんですとも)


雪歩(今の間! 今の間は何!?)


貴音(万感の思いを込めただけです。さあ、行くのです荻原雪歩!)


雪歩(荻原じゃなくて萩原ですぅ!)


千早(さっきから身振り手振りにアイコンタクトで何をしているのかしら?)ペラ


雪歩「あ、あのね千早ちゃん……」


千早「何かしら萩原さん?」


雪歩「私なんてひんそーで『ひんにゅー』でちんちくりんですぅ」


千早「」





美希(行った言った逝っちゃたのーーー!)


春香(ヤロウ……タブー中のタブーに触れやがった…………)


貴音(雪歩ッ! 貴方の命がけの行動ッ! わたくしは敬意を表するッ!)


雪歩(さようなら、みんな……死ぬのなら最後にさっきのはるみきの続きを見たかった――)


千早「萩原さんたら」クス


『!!?』

千早「そんなに自分を卑下しなくていいのよ。大丈夫、萩原さんは今のままでも十分に魅力的だし、それに胸だってこれからまだ成長するわ」


春香(これは何!? やっぱり突っ込みを待ってるの!? でも千早ちゃんの胸に成長の見込みはないもんねって言っていいの!?)


貴音(待つのです春香! 今の千早の穏やかな表情は、ぼけではなく本心で言っているのでは?)


美希(そんな……千早さんは過酷な現実に耐え切れずに、自分が将来巨乳になれるという幻想の中に逃げ込んだの?)


春香(ま、まさか。千早ちゃんがそこまで絶望したはずが……)


雪歩(そ、それがですね。さっきから千早ちゃん本を読んでいますよね?)


千早(あ、これもいいわね)ペラ


美希(うん。何かは気にしなかったけど、確かにずっと読んでるの)


雪歩(あれ……ランジェリーカタログです)


((め、面妖な……))


雪歩(そしてEカップ以上の人のための特集ページを熱心に読んでいました)


((面妖な!!!))


千早(早くプロデューサー戻ってこないかしら。ぜひ例のドリンクを分けてもらって、私もこのモデルのように――ふふ)


貴音(穏やかで満たされた表情こそしてはいますが……)


美希(ひょっとして千早さん、絶望のあまり危ないお薬に手を出したんじゃ)


春香(酷いよ千早ちゃん。そこまで思い込む前に私に相談してくれても良かったじゃない)


美希(仮にも春香はDカップだし、相談なんかできっこないの)


雪歩(プロデューサーさんのドーピング疑惑に続いて、千早ちゃんの白い粉疑惑だなんて……あ、でも)


貴音(何か気になることでも)


雪歩(白い粉に手を出したら、目の周りがくぼんでドス黒くなるんですよ。あと急に痩せはじめたりも)


春香(――うん。千早ちゃんの顔色は問題ないし、痩せているのは昔っからだね)


美希(つまりナチュラルにハイになって絶望的な現実から目をそらし、ありもしない希望にすがろうとしているでFA?)


貴音(それはそれで由々しき問題ですね)

千早「そういえば四条さん」


貴音「……ッ!! 何でしょうか千早」


千早「さっき事務所に戻った時、何か考え事をしているようだったけど大丈夫なんですか?」


貴音「そのことですが……実は先ほど響から、まこと面妖な知らせが届いたもので」


雪歩「響ちゃんからメールですか?」


貴音「はい。送られたのは今朝なのですが、ついさっき届いたようでして。内容は『お土産に熊肉を持って帰るから楽しみにしてるさー』です」


春香「熊……」


美希「……肉?」


貴音「なぜ北極から戻る時に熊肉をお土産にできるのか。気になって何度も送信しようと試みたのですが、何度送信しても送信に失敗したとの表示がでるばかりでして」


春香「確か出港場所は稚内で、帰港するところも稚内だからかな?」


美希「でもそれなら普通、北海道に戻って熊肉カレーを買ってからメールするの。響はまだ北極にいるはずなの」


雪歩「ひょっとしたら出港前に買ったとか」


春香「いくら響ちゃんでもそんなに慌てたことするかなぁ? それにそれだとメールの内容が一週間遅いことになるし」


貴音「出港前に買いはしたものの連絡することを忘れ、今朝になって思い出したという線はいかがでしょう?」


千早「少し変な点はあるけど……」


雪歩「それぐらいしか考えられませんしね」


春香「まさか北極にお土産屋さんがあって、そこで熊肉を買えるわけじゃあるまいし」


美希「違いないの」


アハハハハハハハ――

――さらに一週間後(帰国予定日前日)





伊織「撮影が順調にすんで今日戻ってくるそうじゃないの」


あずさ「私たちも空港に出迎えに行きたいけど……」


律子「竜宮小町の仕事があるので仕方ありません」


亜美「真美。しっかり兄ちゃんを病院送りにしてやるんだYO!」


真美「……うむ。任しておきたまえ」


伊織「新堂。もしもの場合は任せたわよ」


新堂「はい。お任せください」


小鳥「皆、気をつけて行ってきてね」



※ ※ ※



真「ふっふーん! プロデューサーと会うのは久しぶりだなあ」


雪歩「ふふ。プロデューサーは体がおっきくなったから、きっとすぐ見つかるよ」


貴音「響の長いポニーテールも目立ちますし……おや、さっそく」


響「ぎゅっと握った拳~ 1000パーのThunder! 解放ッ、全開ッ…321 ゼロッ!」♪~♪~


真美「ビッキー! じゃなくてひびきん!」


響「皆わざわざ来てくれたのか!? ありがとさー!」


ピチピチのセーターを着た巨漢「ふふ……」

春香「お帰り響ちゃん! ところでプロデューサーさんは?」


真「ひょっとして税関で捕まってるの?」


響「ん? 何言ってるんだ二人とも。プロデューサーならいるじゃないか」


春香「え、どこ?」


真「響、何か勘違いしてるんじゃ……」


ピチピチのセーターを着た巨漢「おいおい。二人とも冗談にしては酷いじゃないか」


春香・真「……え?」


美希「えっと。うん……何となく面影があるの」


真美「兄ちゃ――プロデューサー?」


ピチピチのセーターを着た巨漢、改めP(193センチ 116キロ)「二週間合わなかったぐらいで酷いじゃないか」エフッエフッ


『プロデューサー!!? 別人じゃないかまるでッッ』


響「何を驚いているのさ?」キョトン


幸子「だからカワイイボクが言った通りじゃないですか! 765のプロデューサーさんは毎日大きくなっているって!」


イモトアヤコ「765のPさんマジスゲー! 気がついたら篠原さん並のガタイになってるしっ!」


真「あ、イモトさんに幸子ちゃんこんにちは……って響! 共演者の二人が気づいて何で気づかないんだよ!」


響「え、でも……プロデューサーは元からこのぐらい大きくなかったか?」


雪歩「明らかに違うよ……」


貴音「面妖な!」

イモトアヤコ「そんなことよりPさん。さっさとアレを見せてあげましょうよ! 皆ビックリしますよ!」


幸子「ちょ、ちょっと待ってください! よりによって空港でアレを出すんですか!? まずいですよ! 泣き出す子だっていますよ!」


響「そういえば幸子は半泣きになってさー」


幸子「いくらカワイイボクでもそりゃあ泣きますよ! 空からパラシュートの方がまだマシでした!」


響「まあまあ。封を切らなければ臭いもしないから、見せるだけならきっといいさ」


P「んー。じゃあちょっとだけだぞ。ほら皆、北極からのお土産だ」ドサッ


やよい「はわっ! 後ろにあったケース全部プロデューサーのだったんですか? 中身はなんですか?」


春香「北極からの……お土産?」


貴音「何やら面妖な気配が……」


雪歩「熊肉……北極……あっ」


カチャ


響「じゃじゃーん! プロデューサーが素手で仕留めたホッキョクグマのお肉だぞ!」





アイドルたち『』





イモトアヤコ「いやー、撮影中に遠くから何かがすっごい勢いで走ってきて、それがホッキョクグマだと分かった時は今度こそ死んだと思いましたよ!」


響「皆が固まる中で、ホッキョクグマに立ちはだかったプロデューサーはカッコよかったさ!」


幸子「いや、感謝はしてるんですよ本当に。今こうして無事に日本に戻れたのは765のプロデューサーさんのおかげです。けど、その……ホッキョクグマが可哀そうになるぐらい一方的で……」


響「でも幸子もお肉食べたじゃないか」


幸子「調理されたらホッキョクグマだって分かんないから仕方ないじゃないですか! 最初からホッキョクグマだって知ってたら食べなかったのに!」


イモトアヤコ「スタッフの皆と食べても大量に残ったから、まあ北極の氷と一緒に袋に詰めて、ケースに入るだけ詰めて持って帰ってきたわけ! こっちはもう20キロぐらいもらって十分だから、後は765と346で分けてね!」バイバーイ


響「バイバーイ!」


P「お疲れ様でした」


『お、お疲れ様でした……』


幸子「お疲れ様でした……まったく、ボクも帰りたいのにうちのプロデューサーさんはまだ迎えに――」


ガタッ


CuP「……」ワナワナ

幸子「あ、遅いじゃないですかプロデューサーさん! まったく、こんなにカワイイボクを待たせるなんて相変わらずダメダメ『ビューティフル』……え?」


CuP「そんな……二週間前に、なぜ俺は気づけなかったんだ」


幸子「!? ……ふふーん! ようやくボクが本当にカワイイことに気づけたようですね! 気づくのに時間がかかったことは気になりますが、いいでしょうボクは寛大ですので。これからはちゃんとボクだけを――」


CuP「胸筋……腹筋……上腕二頭筋……大腿四頭筋……ありとあらゆる筋肉が理想的だ」


幸子「」


CuP「765Pさん。今日は時間はありますか? 長旅で疲れたでしょう。良い温泉を知っているんです。今夜はそこに二人っきり、男同士で楽しみ(♂)ましょう」


P「え、いや。今日は事後報告やら何やらでちょっとですね……」


CuP「それは残念! なら明日! 明日ぜひ、一緒に露天風呂でまずは一回戦! それから火照った体を中庭で冷やしながら二回戦! そして夜に布団で――」


幸子「ていっ!」


CuP「おっと」


幸子「あ、な、た、は! 本当に可哀想な人ですね! ノンケに手を出す悪いクセ、いい加減に治してください! 治すためにボクだけを見ていなさい!」ポカポカ


CuP「ノンケでも 構わず掘ろう ホトトギス」


幸子「信長に謝ってください!」


CuP「蘭丸を食ってたちょび髭に謝る筋合いはないな」


幸子「ああ言えばこう言うんですから! 皆さん大変見苦しいものを見せてしまいました。今日のところはこれで失礼します」


CuP「おいおい。俺のブツ(180mm砲)は見苦しくなんかないぜ」


幸子「つべこべ言わずに荷物を持ってさっさと事務所に送ってください!」


CuP「おや、ずいぶんと重たいな」


幸子「無理矢理持たされたホッキョクグマのお肉です……」


CuP「そいつは珍しい。男は度胸! 何でもためしてみるものさ。今夜は一緒に鍋にでもするか」


幸子「プ、プロデューサーさんが作ってくれるんですか?」


CuP「他に誰が作るっていうのさ」


幸子「ふふーん。仕方ないですね。カワイイボクは寛大だから一緒に食べてあげますよ」スタスタスタ

春香「……幸子ちゃん、苦労してそうだね」


美希「想い人がホモとか無理ゲーなの」


真「けどCuPさんの見た目で幸子ちゃんとそういう関係になったら、ロリコン扱いだよ……」


雪歩「同性愛者と幼児性愛者……最近の社会情勢だと前者の人権が認められつつあって、後者は迫害の対象だもんね真ちゃん」


真「そう考えればCuPさんは今のままの方が……なんでボクの手を握るの雪歩?」


雪歩「ふふ。なんとなく」


P「皆、わざわざ出迎えに来てくれてありがとうな。さあ事務所に戻るとしよう!」


真美「待って。兄ちゃ――プロデューサーはこのまま真美んところの病院に検査入院だよ。報告なら明日社長がお見舞いに来るときに聞くから」


P「入院? 俺の体はどこも問題なんかありゃしないさ。見ての通り健康そのものだ」


真美「健康な人間はそんなに急成長なんかしないYO! 言うこと聞かないってんなら――」


新堂「おまえたち」パチッ


男たち『ハッ!!』ダダッ





※ ※ ※



新堂「ご覧いただいているものが、水瀬財閥傘下の警備会社テロ対策部門における正式採用の完全武装装備です」


新堂「隊員20名は全国都道府県より選りすぐった精鋭」


新堂「身長178センチ以上、体重80キロ以上。400日間の特別訓練期間中、80キロを割った者は元の支社への帰還を強制されます」


新堂「特殊FRP(ガラス繊維強化プラスチック)製の機動ヘルメットは通常隊員のものと比較し、重量3分の1に対し強度は5倍強との実験報告を確認済みです」


新堂「強化アクリルの面は拳銃テストをクリアし、正面からの打撃・投てきに対し外傷を防ぎきります。頸部を被う受打ギブスは打撃の際の頭部の揺れを一切封じ、脳へのダメージを遮断」


新堂「前腕部防具。脚部防具。いずれも耐久テストをクリア済み。身体各所の急所にも同様の素材で防護を施しています」


新堂「最新型打撃弾発射筒――――6連装球形鉄鋼弾800グラム使用初速47メートル――――を標準装備」


新堂「その威力の程ワカリやすく言うなら――大リーガーの弾丸ライナーを至近距離で打ち込まれたことをイメージするのが――――」





伊織「もういいわ」





伊織「問題はそんな有り難い隊員が六名もいながら、たった一人を制圧できなかったという現実よ」


新堂「………………は」

伊織「あんた達が言いたいことぐらいわかっているつもりよ。自分たちは人間の凶悪犯を制圧する訓練は受けてきたが、素手でホッキョクグマを撲[ピーーー]る怪物を相手にすることは想定していない、と」


男たち「……」ボロッボロ


伊織「けどね、あんた達が私に言ったセリフは覚えているかしら? 『多少体格が良かろうとも、我々の手にかかれば無傷で鎮圧できます』だったかしら? 私はこれなら大丈夫だって期待したものよ。で、確かに無傷よ。今もそこでやよいと亜美を右肩と左肩に乗せてるくらいだし。けど鎮圧は――どう見てもできていないわよね?」


男たち『お、おっしゃる通りです……』ガタガタ


伊織「つまりあんた達は私の期待を裏切った。同情の余地はあるけど、けじめは必要なの。新堂――――こいつら全員もかもか室へ」


男たち『~~~~~~ッッッ!!』


新堂「お、お嬢様。それはさすがに――」


伊織「あんたももかもか室に行きたいの」


新堂「お嬢様の仰るとおりに!」


ヤ、ヤメテー! モカモカ、モカモカダケハ! 伊織オ嬢様ドウカゴ慈悲ヲー!!


真「……あのさ、伊織。もかもか室って何?」


伊織「聞きたい? あまりよそ様に知られたいものじゃないんだけど……そうね、ヒントを出すわ」


伊織「水瀬グループ胸毛ランキング一位から十位までが勢ぞろい」


真「いや……もうだいだい見当ついたからいいよ」

P「さてっと。気になってた書類のチェックも終わったし、社長への直接の報告はできなかったけど音無さんに申し送りできたし、皆とも久しぶりに話せたし。ちょっと検査入院してくるな」


真「しかもちゃんと話せば検査入院してくれるし……伊織、あの人たち必要もないのに人間離れしたプロデューサーと戦わされた挙げ句に、もかもかなの?」


伊織「まあ、うん……可哀想とは思うけど、大口叩いたからけじめは、ねえ?」


真美「よし、じゃあ行こうかプロデューサー」


P「え? 真美も来てくれるのか?」


真美「真美も一緒だと悪いの?」ジロ


P「そんなことないよ。そうだ、うっかり氷を踏み抜いてしまった話をしようか」


真美「そんな話より、例のドリンクの成分を調べたいんだけど……」


P「ごめんな。売ってくれる人との約束で無理なんだ」


真美「その売人、怪しくないの?」


P「んー? ちょっと笑い声が人間のモノじゃなかったり、鬼や悪魔じみたモノを感じるぐらいで良い人だよ、きっと」


真美(……兄ちゃん、変な薬物のせいで正常な判断までできなく――大丈夫、まだ間に合うはず! 絶対兄ちゃんを元に戻して見せるんだから!)







真(――――こうして一泊二日の検査入院を行ったものの、出てきた結果は血液中の脂肪が少なすぎる(スポーツ選手によく見られる症状らしい)ぐらいで、あとは何一つ問題が無い健康な体だったらしい)


真(皆ドリンクを飲み続けるプロデューサーに思うものはあるけど、検査結果に異常がないことから強くは言えなかった)


真(それと別に気になったことは、真美たちのお父さんにプロデューサーが相談をしたらしい――内容は守秘義務で教えてくれないけど)


真(かくしてプロデューサーは4日間の休みを終え、今日からまた事務所に顔を出すことになった。それと何故か千早の機嫌が良い)


真(そして思うことがあるボクは、ある人を訪ねに346へ行くことにした――――)

※ ※ ※



あずさ「あらあら、ここはいったいどこかしら。ついさっきまで律子さんたちと一緒にいたはずなのに……」


あずさ「収録開始の時間まであと20分……と、取りあえずタクシーを捕まえてから律子さんに連絡を――」


ダンッッ!!


あずさ「~~~っ!?」


シュウ~~~ッッッ


P「良かった。見つけましたよあずささん」


あずさ「まあ! 隕石だと思ったらプロデューサーさんだったんですね」


P「律子から電話を受けた時、ちょうど窓の下をあずささんらしき人がいたから、ひょっとしたらと思ってですね」エフッエフッ


通行人「人間じゃねェ………………」


P「それでですね。ここからスタジオまで車で行くにしても混雑していて、どうしても30分はかかってしまうんですよ」


あずさ「そ、そんな……すみません、私のせいで皆にご迷惑を……」


P「ああ、いえいえ大丈夫。話はここからです。あずささんには申し訳ないと思いますが、ちょっと失礼します」ヒョイ


あずさ「え……あ、あらあら。プロデューサーさん、そんな外でこんな大胆なこと――」


P「飛ばしますんで、しっかりつかまってください。それに舌を噛まないように口も閉じていてください」


あずさ「わ、私お姫様だっこされるのは初めてなんですよ。こうなったらちゃんと責任……え、口?」


P「ラスト10分ッッ」バッ


あずさ「キャッ!!」

偶然その場にいた通行人、木村政義(35)はこう語る。


「最初はね、ビルの上から看板か何かが落ちてきたと思ったんですよ」


「誰か下敷きになってないかと目を凝らすと、粉塵の中にでっかい彫刻――――ギリシャ彫刻――――が目に入ったんです」


「ええ、ヘラクレスでもアキレウスでもなく、生身の人間だったわけです。粉塵は男が降ってきたせいで生まれたコンクリのクレーターだったんですよっっ」


「で、その巨漢の前には女の人が座り込んでいてですね。まあ当たり前でしょう。離れた場所から見てる俺だって腰が抜けそうだったんだから」


「巨漢が女の人に手を伸ばした時は、警察! じゃなくて米軍! と思ったぐらいです」ハハ


「ただ良かったことに巨漢と女性は知り合いだったようで、抱きかかえられた女の人は照れてる以上に幸せそうな顔をしてましたよ」


「これで巨漢がタキシードを着て場所が教会だったら文句なしだったんでしょうけど。ええ、場所はコンクリのクレーターの上です」


「で、巨漢が走り出したんです。はい。もちろん女性は抱えたままです。クレーターのひび割れはさらに広がりました」


「人間は人を抱えたまま、あんなに速く走れるもんだなぁと呆気にとられましたよ。渋滞でゆっくり走る車を次々抜き去って行ってですね」


「まあここで話が終わってくれたら良かったんですけど――――あの化け物がここで終わるわけなかったんだよっっ」





「ここから先は俺が語るよ」


当時河で釣りを楽しんでいた高校生、佐藤歩(16)


「視界の端の方でえらく体がでかい男が女の人を抱きかかえているのが見えてね。その女の人がエロい体した美人で見せつけやがって~っと思ってたら」





P「橋まで1㎞――やむを得まい」





「やむを得ないって何がだよって思わずガン見してね。きっと俺も女の人と同じ顔してたんだろうなって」





あずさ「な、何がですか?」


P「距離――――10メートル。歩数にして700~800踏みッ」


P「問題はない!! 15メートルまでなら!!」バババババッ





「渡ってたんだよ、河を。少しずつ沈んではいちゃけど、女の人は濡れちゃいなかったよ」


「信じねェだろうなァ……人に言っても……アンタだってそうだろ?」

律子「あずささん!」


あずさ「……ごめんなさい律子さん」ポーッ


律子「大丈夫。まだ収録開始まで10分あるから、急いで支度を……あずささん? 顔が赤いけど大丈夫ですか?」


あずさ「……え、はい。大丈夫……ですよ。むしろ、幸せなぐらいで――」


律子「はい?」


あずさ「し、失礼しますね。急いで準備しますから」


律子「…………プロデューサー殿。あずささんを連れてきてもらい、本当にありがとうございます」


P「なあに。偶然近くにいたんだから助けるのは当然のことだよ」エフッエフッ


律子「ところで一つお聞きしたいんですが……ここまでどうやって来たんですか?」


P「道路が混んでいたからな。あずささんを抱きかかえて走ったんだよ」


律子「…………………………何分ぐらいですか?」


P「10分ぐらいかな?」


律子「お姫様だっこを?」


P「え……まあ、はい」


律子「…………………………今日は助けてもらったので文句を言える筋合いではありませんが、アイドルの娘たちにそういったことは控えてくださいね」


P「うん、ごめんな律子」


律子「謝らないでください。謝るのはこっちの方なんですから。ただこれからは急いでいても……ゴホン。アイドル以外にしか、しちゃいけませんからね///」


P「ん……? まあ律子がそう言うのなら」


P「さあ真美。今日の握手会もがんばっていこうな!」


真美「わかってるからさ……そんな近くで大声出さないでよ、恥ずかしい」


P「あ、ごめんな真美……」


真美「落ち込むのも止めて」スタスタ


P(う~ん、頑張って体鍛えたけど、真美の態度は変わんないな。むしろ検査入院とかで心配だけかけてしまったかもな……)


真美(うー、兄ちゃんの前だとつい、つっけんどんな言い方になってしまうYO。別に兄ちゃんが悪いわけじゃないのに……別に体だって問題なくて真美が勝手に騒いだだけだし……昔みたいに兄ちゃんと話したいなあ。あの時の真美、どんな風に兄ちゃんと話してたっけ?)



※ ※ ※



スタッフ「はい次の方どう……~~~~~ッッ!!」


真美「ん? 姉ちゃんどうちたの?」


男「ハアッ……ハアッ……真美タン――」ギラッ


スタッフ「あ……だ、誰か――」


ファンA「ナ、ナイフだアアァ!」


ファンB「ヒイイィ!!」


真美(え……? 何が起きてるの?)


男「真美タン……どうして……どうして何百回も手紙を送ったのに、婚姻届を書いてくれないんだい? いっつもいっつもいっっっつも、俺のことが好きって言ってくれたじゃないか?」


真美「な、何それ……真美知らないよ」


男「俺と真美タンの邪魔をするのは誰か教えてくれるよね? さあ、そいつのこと●して二人で婚姻届を書こうよ、さあっ!!!」


真美「やだ……こっち来ないで……」


男「言えって言ってんだろっっっっっ」


真美「ひっ」


男「何でかばうんだよ! 俺と真美タンがラブラブなの邪魔する奴なんだぞ! 俺よりそいつの方が大切だって言うんなら真美タンでも許さないぞおォ!!」


真美「し、知らない知らない来ないで――」





P「俺だよ」ヌッ




真美「に、兄ちゃん!!」


男「お前か? お前が真美タンと俺が結婚するのを邪魔したのか!? アアッ!?」


P「ファンレターは危ない物が入っていないか事前にチェックする。当然の事だ。君がファンとして亜美を応援する手紙を書くだけならちゃんと真美に届けるが……あんな怪しいもの、渡すわけがないだろう」


男「だ・ま・れえぇぇ!! オマエなんか! オマエなんかこうしてやるぅ!!」ダダッ


グサッ


真美「に、にいちゃああああああああぁんッッッ!!」


男「へ、へへ。俺と真美タンの邪魔をするから――――え?」


P「そんなチンケなナイフじゃ俺の腹筋は通らねェ」


男(そ…………そこまで鍛えているのかッッッ)


P「選手交代だ」


男「え…………?」


P「おまえにふさわしい相手だ」


パチンッ





水瀬財閥傘下の警備会社テロ対策部門の人A「もかもか……うう……もか……やめてくれぇぇぇ……俺が……俺が悪かったぁぁぁ……ううう……」

新堂「リハビリにはちょうどいい相手でしょう……もし鎮圧できなければ、もう一度ですよ」ボソッ


水瀬財閥傘下の警備会社テロ対策部門の人A「も――――もかもかなんぞに負けるかぁぁぁぁっ!」ダダッ


男「ヒイイイイィィィ!!」


真美「……」ペタッ


P「大丈夫か真美! すなまい、駆けつけるのが遅れてしまった」


真美「兄ちゃん……お腹は……?」


P「ん、平気へっちゃら。皮膚が少し切れたぐらいだ」


真美「…………良かった~~~~~~~ッ!!」


P「アハ、アハハハハハハッ」エフッエフッ


真美「な、何がおかしいのさ兄ちゃん!」


P「ごめんごめん。真美に兄ちゃんって呼ばれるのが久しぶりで嬉しくってつい」


真美「あ――――」カアーッ


P「さて。握手会は今日は多分中止だろうけど、念のため真美は控え室で待ってくれるか? ちょっと主催者と話を……」


ギュッ


P「真美?」


真美「その……も、もうちょっと一緒にいてくれてもいいじゃん☆ 真美、目の前でナイフを見せられて本当っに怖かったんだからNE!」


P「そうだな……うん、本当にそうだな。ごめんごめん」エフッエフッ


真美「もう兄ちゃん乙女心がちっともわかってないYO! あと最近笑った顔が怖いってバ!!」


P「え、そうなのか!?」


真美「顔まで筋肉って感じでさ。まあ真美はもう慣れたから、真美にはたくさん笑ってくれていいからNE!」



※ ※ ※



真「お久しぶりです菜々さん」


菜々「もう真ちゃんってば! JK同士なんだから、菜々ちゃんと呼んでくださいよ。キャハっ!」


真「そういうわけにもいきませんよ、菜々さん。いえ――」





「郭海皇の妹、菜々老師!」




菜々(百飛んで十七歳)「……まさか日本で――それも真ちゃんのような若者がそのことを知っているとは、驚きましたよ」


真「ボクがアイドル活動を始めたことに興味を持った空手の先生の先生が、教えてくれたんです。郭海皇に勝るとも劣らぬ、中国武術そのものであると」


菜々「あの歳でまだ生きていて、子どもまでもうけた兄と比べられたくはないんですけど……それで、今日はナナに会いに来たのは765のプロデューサーについてですかね?」


真「……っ!? お察し、でしたか……」


菜々「先日仕事で一緒になった時に会いましてね。見かけ倒しとは真逆の肉づき。瞬発力とスタミナを兼ねた理想的……いえ、むしろ奇跡に近い筋肉。彼がその気になれば、ホッキョクグマだって簡単に屠るでしょう」


真「本当にやってしまいました」


菜々「おいしかったです。コホン……ですがあまりにも急造の肉体。外部から強い衝撃を与えられたら耐えられず、生命を維持するために切り捨てられることでしょう」


真「や、やはり……ッッッ!!」


菜々「その場で大量に嘔吐してやせ細り、背が高くて細マッチョなことを除けば普通の人になるでしょうね。そもそも今の肉体は無理があります。西洋の医学では理解できないでしょうが、アレは寿命を削っています。今のところ問題は生じていないでしょうが、そうなる前に手を打つべきでしょう」


真「外部からの強い衝撃と仰られましたが、どの程度の威力が必要かの目星はつきますか?」


菜々「そうですね……ナナの最高の消力(シャオリー)をミゾオチにカウンターで決めてどうにか――といったところでしょうか。もっとも、ナナには命がけでそこまでする筋合いはありませんけどね」


真「……今日はお話を伺いに来ただけでなく、もう一つお願いがあってきました」


菜々「言っておきますが……真ちゃんの全体重を拳に乗せたカウンター――――そんな絵空事を現実にでもしないと、765のプロデューサーを元に戻せませんよ」


真「覚悟の上ですっっっ!!!」


菜々「……いいでしょう。一時的ですが真ちゃんをナナの弟子として受け入れましょう! ミミミン! ミミミン! ウーサミン!」


真「ありがとございます菜々老師! きゃっぴぴぴぴぴぴ~ん! マッコマッコリーン!」





菜々「老師呼びは止めろや」


真「アッハイ」

こうして史上最悪の『うわキツ』師弟が誕生し、見る者がいれば目をおおわんばかりの修行が行われ――――なんでや、10代のまこりんはマッコマッコリーン言ってていいやんけ!





菜々「はい! ここでミミミン! ミミミン! ウーサミン!」キメッ


真「ミミミン! ミミミン! ウーサミン!」キメッ





菜々「これから気力を充実させるための心がまえのトレーニングを始めます」


真「え……心がまえ……?」


菜々「いいですか、いきますよ。大きな声でナナに続くんです」





菜々「ナナって……天才だあああ~~!!」 





菜々「はい!」


真「え……ボクって……天才だあ~~」


菜々「声が小さぁ~~い!!」


真「ボクって天才だああぁああ!!」


菜々「よ~~~~し。その心がけを忘れたらいけませんよ!! ただしあんまり天才だと気が重くなったりするから、バランスをとるためにもう一つ心がまえをやりましょう」





菜々「ナナって……痛いいいいい~~!!」





菜々「はい!」


真「ボクって痛いいいいい~~!!」





菜々「一秒間に10回の呼吸ができるようになりましょう!!」


真(く………くっくるピーィ)


菜々「次は10分間息を吸い続けて、10分間吐き続けるんです!!」

――こうして見るだけで精神を削られる修行は続いていった。真が過酷な修行を途中で投げ出さずに続けられたのは、大切なプロデューサーの命のため――そして!


真(長身細マッチョになったプロデューサーとのサイクリングデートのためなら、このぐらい!!)


そして煩悩のおかげだったとか。日本の女性はマッチョへの見方が厳しいと思います、はい。





――某月某日、東京ドーム地下6階


P「真に呼び出されてきたが……東京ドームの地下にこんな場所があったとは。あれ、貴方は――」


菜々「キャハっ! いつもお世話になっています765のプロデューサー。ナナは今日は立会人としてここに来ました」


P「立会人……? ここで何が行われるんですか?」


菜々「それは――――」


真「ボクとプロデューサーの戦いです」


P「いたのか真。いや、それよりもどういうわけだ?」

真(――――菜々さん)





菜々『おそらく765のプロデューサーさんが服用している怪しげなドリンクは、ナナが良く知る物です』


菜々『減っていく残高に目まいと吐き気を覚え、食費が制限され栄養が偏り――――それでもなお止められない中毒性を持ち、服用者に滅びの快感を与える猛毒』


菜々『たとえ肉体の危機を訴えたところで、ドリンクの中毒性には耐え切れません。いえ、耐え切ったら耐え切ったで、凶悪な禁断症状でショック死の可能性すらあります』


菜々『それにも関わらず薬物検査では一切検知できない、まさに鬼や悪魔の産物』


菜々『言葉による説得は不可能――――ならば、真ちゃんのワガママを押し通すのみです』


菜々『体に染み込んだものも含めて全部吐き出させちゃいなさい!!』





真「強さとは――――自己(おのれ)の意を貫き通す力。我儘(わがまま)を押し通す力」


真「ボクのワガママを今ここで、押し通させてもらいます」スッ


P「真……なぜ俺に構える?」


真「プロデューサー!!!」


P「~~~~~っっ!!」


真「ボクはマッチョな男が嫌いだから、今からプロデューサーを叩きのめして細くしちゃいます!!!」


真(マトモにやれば勝率は無きに等しい。けどプロデューサーがボクを相手に全力を出せるとは思えないし、今の言葉で少なからず動揺するかも――――え!?」


P「」


P「」


P「」


真「プ、プロデューサー……?」





P「 オ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ッ 」



真「プロデューサー!!?」


P「オ、オエェー! ま、真に嫌われ……ウップ」


真「どんだけショック受け……あっ」





P『う…うぇっぷ……うう、すみません音無さん。真が、ホストっぽい奴やイレズミをしたガタイのいい男に連れ込まれるところを想像したら、胃の中が逆流してしまって』





真(そうだった……プロデューサーってばボクが他の男のモノになることを想像しただけで吐くんだった……だったら想像じゃなくて直接ボクに嫌われれば――)


真「な、菜々さん! プロデューサーに与える衝撃ってもしかしてこれで十分ですか!?」


菜々「え!? いやまさかそんな――――」


P「 お え え え え え え え ぇ 」


真「……手足、細くなってきましたね」


菜々「……十分、みたいですね」


真「ボク……短期間とはいえ、死にもの狂いで修行したんですけど……意味無かったんですけど……」


菜々「長く生きているとそういうことはよくありますから……たとえば戦う必要が無いのにホッキョクグマを素手で倒す巨漢と戦ってボロボロになった挙げ句、もかもか室に連行される人とか……」


真「世の中って割と辛んですね……」


P「」ピクピク

真(こうしてプロデューサーは体の中に染み込んでいた薬物まで吐き出し、中毒や禁断症状も出ることなく健康な体となった)


真(入院したプロデューサーには事情を話した上で、嫌いと言ったのは本心ではないと説明することができて誤解が解けたし)


真(急激な体の変化のせいで顔色は悪かったけど、ボクに嫌われたわけではないと知ったプロデューサーの顔に赤味がさしたように思えた)


真(大事をとって三日入院することとなり、今日からまた事務所に顔を出すことになる)


真「ふふ……それにしてもプロデューサー。ボクに嫌われたと思うだけであんなにショックを受けるだなんて。今日はちょっと積極的に甘えちゃおうかなーと」


ソンデネー、真美ッタラネー オ前達ライシナ


真「この声はプロデューサーと亜美だ! よーし、最初っから飛ばしていくぞ!」


ガチャ


真「プロデューサー! 退院おめでとうござ――」マッコマッコ……





P(213センチ)「おはよう真。今日もがんばっていこう!」


真「」

亜美「んっふっふ~。兄ちゃんの背の高さに驚いたようだYO!」


P(213センチ)「いやー、ちょうど入院していた時期に亜美のお父さんに紹介をお願いしていたDr.鎬が来てくれてな。良い機会だから骨延長手術をやりましょうってさ」


真「」


亜美「鎬兄ちゃんビックリしてたよNE! 成長期でも1日1㎜の成長速度なのにって!」


P「実は俺、三次成長期入ってるからさ」エフッエフッ


真「」


亜美「早く他の皆の反応も見たいし……そうだ! もうこっちから迎えに行こうYO!」


P「今の時間なら春香がそろそろ来るだろうな」


真「」


亜美「はるるんならいっつもアッチの方から来てるね! 兄ちゃん肩車またヨロシク!」


P「外に出てからな。ここだと天井に頭ぶつけるぞ」


亜美「いっけね。そうだったそうだった☆」


エフッエフッ アハハハハハッ


真「」


真「……お、王子様はやっぱり背が高くないとね(震え声)」





~おしまい~







※もうちょっとだけオマケ(本編)があるんじゃぞ

――時は少し遡る





千早「これが……プロデューサーが愛飲しているドリンク、その名も『スタドリ』」


千早「プロデューサーはこれを飲みながらトレーニングを行うことで、短期間のうちに爆発的な成長を遂げることができた」


千早「つまり――――私がこれを飲んでバストアップ運動をすれば、一ヶ月もすれば春香並、二ヶ月ならあずささんを超えることができる……ッッ!!」


千早「長かった……耐えがたきを耐え、忍び難しを忍ぶ……あの屈辱の日々」





貴音『あずさ。耳よりの情報があるのですが』


あずさ『あらあら。いったい何かしら』


貴音『先日、まこと可愛いらしい下着を取り扱っている店を目にしたのです』


あずさ『!? 貴音ちゃん、それって――』


貴音『左様です。わたくしたちのサイズでも合う物も、けっこうな量がありました』


あずさ『ぜひその場所を教えて――いえ、連れて行ってもらえないかしら』


貴音『もちろんですとも。わたくしたちにとって、可愛らしい下着を手に入れることは重要なのですから』


あずさ『せめてもう一つカップが小さければ、ねえ』


貴音『つい目を奪われて手に取った下着が自分に合うサイズではない――まこと悲しきことです』





千早(何のつもりの当て擦り…挑発のつもりかッ!)

雪歩『……』


真『ね、ねえ雪歩。さっきからジッと見てどうしたの?』


雪歩『真ちゃん……今のブラ合ってる?』


真『え!? あ、そういえば最近少し……』


雪歩『多分真ちゃん、AAからAカップになったんじゃないかな。ちょっと向こうで測ってみようよ』


真『そ、そうだね! アイドルとしてスリーサイズはしっかりと把握しなきゃいけないもんね!』





千早(大きくなったところで!)





P『今日は346プロの娘と一緒に撮影することになっている。千早と同い年だから仲良くなれると思うぞ』


千早『346プロの人とは何度か共演しましたが、皆いい人でした。同い年なら、なおさら会うのが楽しみ――』


ガチャッ


雫(バスト105センチ)『おはようございますーす。初めまして及川雫ですーっ。今日はよろしくお願いしますね。ふぁいとー!もー!』ボインボイン


千早『』


P『千早?』


雫『あれ? どうかしましたか千早ちゃん?』


千早『』


P『みゃ、脈が止まってる……』

千早「ふふ……ふふふふ……思い出しただけで目頭が熱くなってきた。でもこれも今日で終わり。親友である春香の手の平にちょっと余るおっぱいに嫉妬して自己嫌悪に陥ることも、同士であった真の裏切りに実は一方的なシンパシーにすぎなかったと絶望することも、日に日に成長する高槻さんの胸と3センチ縮んでもEカップな我那覇さんの胸に欲情すること……は続くだろうけど、とにかく劣等感からは解放される」


千早「それにプロデューサーが心底申し訳なさそうに水着の仕事を持ってくることもなくなる。むしろ喜んで持ってきて――ふふ、プロデューサーはそんなに私の水着姿が見たいんですか? もう、プロデューサーがどうしてもというから仕方なく着ているんですからね。まったく、男の人ってば私の胸をそんなにジロジロと見て――――でも、プロデューサーは特別に許してあげます――――うふふふふふふふふ」


千早「手始めに目指すのはバスト80センチ台」


千早「今、私は世界線を超えるッッッ!!」ゴキュゴキュ


千早「跳べよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」イチニーサンシー





――10368分後(7,2日後)



千早「……」ペタペタ


やよい「千早さんどうしたんですか? 胸が痛いんですか?」


千早「た、高槻さんいたのね……!? これはなんでもないから、気にしないでね。ね?」


やよい「は、はいわかりました」ビク


亜美「む、見ましたか真美隊員」


真美「怯えているやよいっち。ついに千早お姉ちゃんがその欲望を抑えることができずに毒牙を――」


千早「――――貴方たち、最近大きくなったわよね。確認してあげましょうか?」ワキワキ


亜美「ら、らめてええええええええぇ!!」


真美「助けていおりーーーん! やよいっちだけじゃなく真美たちまでアハアハウフーンな世界に引きずり込まれちゃうのーーー!」


伊織「こっち来んな!」シッシッ

――さらに10368分後



菜々「ミミミン! ミミミン! ウーサミン!」キメッ


真「ミミミン! ミミミン! ウーサミン!」キメッ


千早(揺れている……かすかに、だけど確実に)


千早「……」ピョンピョン


千早「……くっ」





――さらに10368分後



千早「プロデューサー……」


P(まだ193センチ)「どうした千早?」


千早「その……私を見て何か気づくことはありませんか?」


P「え? ……あー、その。別に髪を切ったわけじゃないよな。そういえば最近何か思いつめているような顔をしているが、何かあったのか?」


千早「いえ……その、もっとフィジカル的な意味で気づくことは?」


P「そうだな……千早はちょっとやせているから、もっと食べた方がいいぞ」


千早「やせている……つまり、女として丸みが足りないというわけですね、ふふ」


P「ち、千早!? 俺はそういうつもりで言ったわけじゃ――」


千早「うふふふふ。大丈夫です。ちゃんと、ちゃんと大きくなるはずですから。そしたら水着姿で喜んでいいですから。まったく、男の人ってば私の胸ばかり見てアハハハハハ」


P「オー ジーザス」

――さらに10368分後





千早「おかしいわね、おかしいわよ。一ヶ月経つのになんでブラはちょうどいいままなのかしら。あ、ひょっとして実感が無いだけで本当はとっくに成長しているのかしら。そうね、最近成長していなかったからその辺の感覚がマヒしていたのよきっと。ちゃんとこういうのは数字で把握しないとね。一人でメジャーで測るのは大変だけど、春香に頼んだらきっと驚いて転倒しちゃうから一人でやりましょうそうしましょう。春香じゃなくても72だったのがいきなり80台になったら驚くものね仕方ない」マキマキ


千早「うふふふふ。大丈夫よ真。80センチ台になったからって、真のことをバカになんかしないから。胸が小さい苦しみは誰よりも知っているもの。萩原さんのようにひんそーでひんにゅーだなんて卑下しないから。まったくCカップがひんにゅーだなんて正気の沙汰とは思えな――――」


72センチ


千早「……や、やっぱり一人でやるのは難しいものね。も、もう一回やってみましょう。きっと82センチぐらいに――」


72センチ


千早「」


千早「…………くっ」


千早「クックックックック……」


千早「フハハハハハハハッ」


千早「アッハッハッハッハッハッハッ!!」





千早「――――許さない」



※ ※ ※



ちひろ「チヒッヒッヒッヒッヒッヒ! 笑いが止まらないとはこのことですね」


ちひろ「まったく。ホモとハゲと変態から金を巻き上げようにも、担当アイドルたちのガードが厳しいったらありゃしない」


ちひろ「常にアイドルが一人以上そばにいるとか、いったいどんなVIPですか」


ちひろ「しかし765Pはそうはいきませんし、765Pの紹介で千早ちゃんまで顧客にできたのは大きかったです」


ちひろ「今から止めようにも765Pさんは完全に中毒症状。そろそろスタドリを値上げしちゃいましょうかね」チヒッヒッヒッヒ


ちひろ「かの経済学者ラムゼイは、個別の財に対する税率は、その財に対する需要の価格弾力性に反比例するように決定しなければならないとした――――換言すれば、米のような生活必需品や、タバコのように中毒性の高い物は多少値上がりしても、売れ行きに大きな変化は無い。中毒性が高いスタドリならば、売れる数は変わらずただ一方的に利益のみが増える……ッッッ!!」


ちひろ「金こそが力! 力こそが正義! いい時代(資本主義)になったものだ!」


ちひろ「チヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ――――」


カツーン、カツーン――――


ちひろ「……おかしいですね。プロデューサーもアイドルの皆も、既に帰ったはずなのに。警備員はあんなに音が鳴るクツを履いていないでしょうし……」


ちひろ「少し嫌な予感がします。か、鍵を――」


ギギィーーッ


ちひろ(遅かったか)


千早「――――こんばんは、千川さん」


ちひろ「なんだ、誰かと思ったら千早ちゃんじゃないですか。スタドリが欲しい時は事前に連絡して、決して346プロに直接来ないようにと言っておきましたよね? まあ今夜はいいとしましょう。ちょうどスタドリの在庫も――」


千早「 千 川 さ ん 」


ちひろ「~~~~~っっっ」ゾクッ

ちひろ(頭痛がする、は…吐き気もだ…くっ…ぐう……な…なんてことだ…このCHIHIROが……気分が悪いだと? このCHIHIROが人間の小娘に恐怖して…立つことが…立つことができないだと!?)


千早「今日は千川さんにお聞きしたい点があって、失礼とは思いますがアポなしでうかがわせてもらいました」ニコッ


――笑うという行為は本来攻撃的なものであり 獣が牙をむく行為が原点である


ちひろ「そ、そんなに改まる必要はないのよ。わ、わたしと千早ちゃんの仲じゃない」


ちひろ(何を、何を聞かれる!? スタドリの原材料? 中毒性について? マージン率? いや、それよりも召喚の準備を――)


千早「なぜ、大きくならないんですか?」


ちひろ「…………はい?」


千早「ですから、なぜ私は大きくならないんですか?」


ちひろ「~~~~~っっっ!!!」


ちひろ(アイドル業界には触れてはならないタブーがある! 菜々さんの実年齢! 日高舞の夫! そして如月千早の胸! これらに下手に触れたらたとえ鬼や悪魔であっても……ッッ!!)


ちひろ(とりあえず『ごめんなさい千早ちゃん。千早ちゃんが何を言っているのか、わたしには心当たりがないの。一度落ち着いて、最初から説明してくれるかしら? ちょっと待っててね、今飲み物を用意するから』と言っていったんこの場を離れる!!)


ちひろ「ご、ごめんなさい千早ちゃん。千早ちゃんが――」


千早「 ご め ん な さ い ? 」ドドドドド


ちひろ「」


千早「なぜ謝るんですか? やはり私を騙したんですね? 貴方に私の気持ちがわかりますか? 今までは目にするだけで忌まわしかったサイズのブラのカタログを、鼻歌交じりに読んでいた私の姿。傍から見てどれだけ滑稽だったでしょうねぇ」

ちひろ(アカン……言いくるめに失敗した……だ、大丈夫。しょせん相手は人間の小娘。恐れる必要などありはしない……!)


ちひろ「古の契約により出でよ我が僕! 星熊童子! シャクス!」


ちひろ(チヒッヒッヒッヒッヒッヒ! 鬼の四天王の一角と、地獄の大侯爵に勝てる人間などこの世に存在しな――――ん?)


ヒラヒラヒラ


ちひろ「紙……いったい何が」


『その娘のバックにさあ、鬼神の息子とほぼ同等の力がある奴がいるじゃん。そんな危険な奴と戦うリスクを負う契約は結んでないんでサヨナラ By鬼と悪魔』


ちひろ「」


ちひろ(後でケツの毛までむしり取ってやる……っ!!)


パラ、パラパラ――


ちひろ「はっ! 千早ちゃんその資料は――!!」


千早「何やらボーッとしてたので、机にあった資料を勝手に読ませてもらいました。……ふーん、中毒性が高く原材料も倫理的に問題があるものばかり。挙げ句の果てにこの利益率。でもこの資料には私の欲しい答えはないですね」


千早「答えてください。なぜプロデューサーの背と筋肉は成長して、私の胸は……くっ……成長しないんですか?」


ちひろ(言えというのかこの残酷な事実をわたしに……というか千早ちゃん胸のためにスタドリ購入したとか聞いてないんですけど!)


千早「言わないのなら、この資料を外部に公表しますよ」


ちひろ「待って、言うから! ……その、ね。スタドリは主な効能は体力と気力の回復だけど、成長期の人間なら成長を促す行為を行えばそれを増幅する効果もあるの。765Pは体を大きくしようとして、スタドリがそれに応えたわけね」


千早「プロデューサーが成長期?」


ちひろ「一部の男性には三次成長期があるの。代表例は24歳で185センチだった神父さんが、10年後には193センチになった件ね。そして、その――」


千早「私は……私は16歳ですよ……胸が大きくなる時期ですよ……」


ちひろ「千早ちゃんは――――もう、胸が成長する見込みが」


ザワッ


ちひろ「ヒイイッッ!!」


千早「」

ちひろ「お、お願いだから落ち着いて千早ちゃん! 知らなかったの! 千早ちゃんが胸を大きくするつもりでスタドリを買ってただなんて知らなかったの!」


千早「何を……何を言っているのですか、千川さん。私は……胸なんか大きくするつもりはありませんでしたよ、ええ。スタドリは歌の練習時間を増やすため、それ以外の目的なんかあるはずないじゃないですかアハハハハハハハハハ」


ちひろ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ――」


千早「だから、胸が大きくならなかったことについては怒りません」


ちひろ「――――ほ、本当にですか……?」


千早「はい」ニッコリ


ちひろ(チヒッヒッヒッヒッヒッヒ! しょせんは人間の小娘、この程度の泣き落としでかる~く)


千早「ではこの資料を346の常務さんのところに持っていきますんで」スタスタ


ちひろ「なっ……!? 話が違いますよ千早ちゃん!」


千早「外部に公表しないとは言いました。常務さんは内部の人間ですよね? 安心してください、ちひろさん。346プロには仲の良いアイドルがいるんです。彼女たちの迷惑にならないように考えて動きますから」


ちひろ「千早ちゃんやっぱり胸が大きくならなかったこと怒っているでしょ!?」


千早「あん?」


ちひろ「」





――――こうして765と346という、芸能界に巨大な影響力を持つ両事務所を震撼させた薬物問題は秘密裡に収束した。


ちょうどそのころ765Pは真の手によって体内の薬物を全て吐き出し、中毒や禁断症状に苦しむこともなかった。


邪神ちひろはこれまでの功績などから罪が減免された。ただし、スタドリの販売も検査を入れた物のみ認められるようになった。スタドリは倫理的な問題が解消され中毒性も無くなり、異常であった利益率も改善され100モバコインという良心的な価格となる。


我々は決して忘れてはならない。100モバコインという良心的な価格でスタドリが購入できるのは、ひいては3000円払えば十連ガチャ無料という流れを生み出した背後に、そのひんそーでひんにゅーな体にも関わらず戦い抜いた歌姫の姿があったことを――――





~おしまい~

ボツネタ

>>46のシーンから


真(そうだった……プロデューサーってばボクが他の男のモノになることを想像しただけで吐くんだった……だったら想像じゃなくて直接ボクに嫌われれば――)


真(けどプロデューサーがそこまでショックを受けるだなんて……プ、プロデューサーには悪いけどこれはプロデューサーのためだし、それに……へへっ。ボクってプロデューサーにそこまで大切に想われてたんだ。吐き終わったらちゃんと謝って優しくしてあげよっと)


P「がふっ、がふっ、がふっ……」


真「風船がしぼんだようにやせちゃいました……菜々さん、もうこれで――」


菜々「――待ってください真ちゃん」


真「え、まだですか?」


菜々「感じませんか? まるで大津波がくる前の海辺に立っているような不気味さを」


P「……」ユラリ





P「100%…………!!」ズズ…ズ





P「初めて“敵”に会えた…いい試合をしよう」ピシ





真・菜々「」


真「そっちかよおおおぉ――!!」ガビーン


菜々「最近の若い子が完全に置き去りだからナウいJKであるナナが解説しますね、キャハっ! ハンター×ハンターで有名な冨樫先生が90年代前半に連載していた幽遊白書の暗黒武術会編のボスである戸愚呂(弟)もジャック・ハンマーと同じで、最強形態になる前に嘔吐するんです! 今読んでも十分面白いからハンターの連載再開を待つ不毛な行為は止めて幽白を読みましょう!」


真「説明しとる場合かーッ」シュトロハーイム


この後、尋常でない妖力を察知して集まった346の面々(中西部長のシルバーチャリオッツ、ニンジャスレイヤー武内、エスパーユッコの日輪“天堕”など)と安部菜々さんひゃくじゅうななさいが協力してプロデューサーをフルボッコにしましたとさ。めでたくなしめでたくなし。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

というか読んでる人いるんですかね? まさか三時間近く投稿してレスが一つも無いとは……

次は、アイラブビアー戦隊(早苗さん、楓さん、川島さん、ユッキ、菜々さん)が飲んで河岸を変えようとしたら、残業がえりの武内Pを見つけて絡みまくる話を書こうと思います。


過去の蒼歴史

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これはひどい

乙です
面白い


真可愛い

笑わせていただいた

乙ッ!!!
毒物呑んで100%戸愚呂(弟)ぽい体を維持できてる765Pも、ある意味凄いな…


どうでもいいがポルナレフ部長の苗字は今西だぜよ

ちっひが負けるとこ初めて見たわww
おつー

ネタ盛り込みすぎクソワロタ

乙です。
面白かった。

百飛んで十七歳って飛んでないやん、普通に百十七歳で良いような

百(万)とんで十七歳の可能性が

戸愚呂(弟)は殴られまくって一度しぼんでから100%になったけど嘔吐はしてないだろ……部長の名前といい、にわか知識多いなこの作者

面白かったです
信じられん本当に元人間か?っていう場面でえづくみたいなところ?

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