少女「お金持ってる?」
青年「えっ、あっ、ある。あります」
少女「いくらくらい?」
青年「今…たぶん3000円くらい」
少女「ふぅん…」
青年「卸せばもっとあるよ」
少女「どのくらい?」
青年「60万くらいかな…」
少女「…なるほど」
青年「いくら欲しいんですか」
少女「そういうわけではなくて」
青年「?」
少女「私のこと買ってくれない?」
青年「えっ」
青年「買うってどういう…?」
少女「…ハムスターって知ってる?」
青年「ハムスター?知ってるよ」
少女「あれって小さいからそんなにしないの、1000円もあれば買えるんだって」
青年「安いね」
少女「でもね、ハムスターは放し飼いできないから、カゴを用意しなきゃいけないし、餌も必要だから、結局1000円で育てるのは難しいの」
青年「そりゃあね」
少女「まぁ私、ハムスター飼ったことないけど、たぶんそんな感じ」
青年「なにが?」
少女「私のこと……」
少女「いくらだっけ…3000円…?それでいいから、家に連れて帰ってほしいの」
青年「どうしてそんなことを…?」
少女「……」
青年「なにかワケありなんだ?」
少女「……」
青年「話なら聞いてあげるから…でもここじゃ寒いね。どっかお店行こっか」
少女「……」
ファミレス
青年「君、家出したの?」
少女「……」
青年「あ、ごめん…その前になにか頼む?ドリンクバーあるよ」
少女「お水でいい…」
青年「食べ物は?」
少女「……」
少女「こお」
青年「それはちょっとやめた方がいいんじゃない」
少女「……」
青年「じゃあ、僕、ポテト頼むから。一緒に食べようか?」
少女「いいの?」
青年「いいよ」
少女「ありがと………ございます」
青年「で?家出したの?」
少女「…家を出ているのは間違いないけど」
青年「けど?」
少女「……」
青年「理由は?」
少女「それは言えないの」
青年「どうして?」
少女「それも言えないかも」
青年「えー…」
少女「それでも買ってくれたら嬉しいわ」
青年「ちょっと、厳しいかな」
少女「……」
青年「君、年はいくつなの。中学生くらいにしか見えないけど」
少女「…中学生なら買ってくれる?」
青年「そういうわけじゃないよ。でも小学生にも見えなくはないかな」
少女「……」ムッ
青年「あ…そう、中学生なんだ…」
少女「まぁ、そういうことにしておいて」
青年「なんだかテキトウだなぁ」
青年「でも、小学生だろうと中学生だろうと、連れて帰るのはまずいよ」
少女「どうして?」
青年「親が探すでしょ」
少女「探さない」
青年「いや探すって。警察に頼んだりしてさ…普通はそうするよ」
少女「……」
少女「じゃあ」
少女「もし、親の方から私を追い出したとしたら?」
青年「えっ」
少女「それでも、警察が私を探すと思う?」
青年「……」
青年「それなら探さないかもしれないけど。ありえるかな?」
少女「ありえるかありえないかじゃなくて」
少女「あなたが『普通は』って言ったから、例外を言ってみただけ」
青年「じゃあ親に追い出されたわけではないんだ?」
少女「案外本当のことかもしれないわよ」
青年「やっぱり内緒なんだ?」
少女「そんな感じ」
店員「お待たせしました、フライドポテトです」コトッ
青年「あ、どうも」
少女「食べていい?」
青年「……」スーッ
少女「…どうしてお皿をそっちに寄せるの?」
青年「食べちゃダメ」
少女「さっき、一緒に食べようか、って言ってたのに…」
青年「君が正直に答えてくれたら食べさせてあげるよ」
少女「なにを?」
青年「家出の理由」
少女「……」
少女「じゃあ、いらない」
青年「えっ?」
少女「我慢する」
青年「ほんとに?」
少女「すごくお腹空いてるけど、我慢する」
青年「そんなに言いたくないの?」
青年「……」パクパク
少女「……」ジーッ
青年「美味しいよ」
少女「うん、すごく美味しそうに見えるわ」
青年「話してくれたら好きなだけ食べてもいいよ」
少女「じゃあいらない」
青年「……」
青年「なんでそんな意地張るの?」
少女「……」
青年「…一本だけ食べる?」
少女「…いいの?」
青年「なんか、すごく可哀想になってきたから」
少女「ありがとうございます」
青年「君お礼言う時だけえらい丁寧だよね」
少女「……」サクサク
青年「どう?」
少女「おいしい…」
青年「もう一本ほしい?」
少女「くれるの?」
青年「正直に話したらね」
少女「分かったわ」
青年「一本食べたら簡単に折れたね」
青年「まぁいいや、じゃあ聞くよ」
青年「好きな食べ物はなに?」
少女「……え?」
青年「これも答えてくれない?」
少女「……」
少女「お、オムライス」
青年「分かった、はいポテト食べていいよ」
少女「どうして?」サクサク
青年「んー?」
少女「どうしてそんな質問…」
青年「…だってもう、君の事情は話してくれそうにないから」
青年「大人しく連れて帰ってあげようかなって」
少女「…いいの?」
青年「大丈夫なんだよね?警察とか、来ないよね」
少女「たぶん、大丈夫」
青年「え、たぶんなの?」
少女「絶対大丈夫って言うと、逆に不安がられそうだから」
青年「確かに」
少女「だから、たぶんをつけておくわ」
青年「…それ食べたら、家に行こうか」
少女「うん。じゃあ、お金」サクサク
青年「?」
少女「3000円払って。そうしたら私、あなたのものになるから」
青年「ものって…」
少女「あなたの言うことなんでも聞くわ。私けっこういろいろできると思うから」
青年「けっこういろいろって…?」
少女「編み物とか、靴磨きとか」
青年「へぇ」
少女「ガラスのテーブルとか作れるし、あとバイクの修理とかも」
青年「…ほんとに?」
少女「うん」
青年「君さ、わりと勢いで喋ってる?」
少女「そんなことないけど…」サクサク
青年「……」
少女「ねぇ、これは何?ケチャップ?」
青年「違うよ、それはタバスコ」
少女「タバスコって…?」
青年「タバスコ知らないの?」
少女「うん…はじめて見たわ」
青年「もしかしてファミレスとかはじめて来た?」
少女「…ファミレスは、知ってたけど」
青年「知ってた…ってことは、やっぱり来るの初めてなんだ?」
少女「あんまりないから」
青年「ふーん…そっか…そうなんだ」
少女「タバスコって、おいしい?」
青年「…試しに舐めてみたら?」
少女「そうね…」ポタポタ
少女「……」
少女「ちょっとずつしか出ないわ」ポタポタ
青年「そりゃあね。タバスコだからね」
ポタポタポタポタポタポタ
青年「あーあ。そんなにかけちゃって…絶対後悔するよ」
少女「?」パクッ
少女「……」モグモグ
少女「あっ」
少女「酸っぱ、違う、辛い、あ、あ、辛い、辛い!」
青年「水飲んで水」
少女「……!」ゴクゴク
少女「辛…なんで、教えてくれないの!」
青年「言ったじゃんタバスコだって」
少女「タバスコがなんだか知らないって言ってるのに!」
青年「ごめんごめん」
店員「ありがとうございました」
青年「行こうか」
少女「……」
青年「行かないの?」
少女「本当に買ってくれるの?」
青年「うーん…」
青年「とりあえず一晩だけ泊めてあげる」
青年「明日になったから帰りなよ。ね」
少女「それはできないの」
青年「……」
青年「まぁ、さ…家出なんて、きっと今は、意地でも帰るものかって気分かもしれないけど」
青年「明日には気が変わって、家が恋しくなるかもしれないよ」
少女「じゃああなたは、明日には私の気が変わって、すぐに帰りたがると思っているのね」
青年「うん」
少女「そうなったらいいわね」
期待
面白そう
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おぉい
てす
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