勇者「勇者ロボ発進!」(140)

王「勇者よ、ついに勇者ロボが完成したぞ」

勇者「王様、勇者ロボって城の外にできたあの巨大な塔のことですか」

王「塔ではない! あれはロボットじゃ」

勇者「ロボットってなんですか」

王「実はワシもよく分からん」

勇者「はい」

王「分からんが、魔王軍を圧倒するほどの絶大な力を誇るらしい」

勇者「あの魔王軍を圧倒するほどの力を。あのロボットが」

王「勇者よ、あれを使って魔王を倒してきてくれ。頼んだぞ」

勇者「右も左も分かりませんが大丈夫ですか」

王「あれは莫大な経費をつぎ込んだ代物。大丈夫でなければまずいのだ」

勇者「はい」

王「まずはルイーダの酒場に行くがよい。詳しい話はそこにいる者にきけ」

勇者「分かりました。行ってきます」

*注意*
このssはエクスカイザーやガオガイガーといった、
いわゆる「勇者シリーズ」のパロ・クロスではありません

<ルイーダの酒場>

商人♀「お待ちしておりました勇者様。私は商人です」

勇者「はじめまして勇者です」

商人♀「さっそくですが勇者ロボの件を」

勇者「あれはなに?」

商人♀「はい、私と友人の賢者らが設計したロボットです。50m強あります。あれで魔王にも勝てます」

勇者「めーとる? って君が作ったのアレ」

商人♀「古代文献を読みあさってたら話がどんどん、もう、どんどん進んでしまいまして」

商人♀「私も最初は経済面の管轄だったのですが、ノリと勢いを買われてパイロットにまで抜擢されちゃいまして」

勇者「ぱいろっと?」

商人♀「はい。勇者様ふくめ計4名があれに乗ります」

勇者「乗る?」

商人♀「はい乗り込みます」

勇者「えヘっ?」

商人「勇者ロボとは簡単に言いますと、『対魔王軍用・搭乗型二足歩行巨大兵器』です」

勇者「君が何を言っているのか分からないよ」

商人「恐縮ながら私、言葉の端々に古代文献の専門用語が飛び出しますが、どうかお気になさらず」

勇者「分かったこれから気にしない」

商人「まずはこの設計図をご覧ください」

勇者「おおーこれが勇者ロボってこのデザインは」

商人「はい、勇者様自身をモチーフにしました。この髪形などそっくりでしょう」

勇者「やめてよ気持ち悪いよ恥ずかしいよ」

商人「もう完成したので無理です。それで、勇者様が乗り込む部分はこの胸の内部です」

勇者「これの中に入ってどうしようっていうの」

商人「動かすんです。大丈夫です、動きます。動かして魔王軍と戦うのです」

勇者「だってこれ、すごく大きいよ。たった4人ぽっちで本当に動かせるの」

商人「魔力を動力としているので大丈夫です。説明すると長くなるので割愛します」

勇者「魔力って便利なんだね」

商人「はい。まぁ矛盾や疑問点を感じたら、とりあえず魔力によって解決されていると解釈してください」

勇者「それであとの2人は?」

商人「1人は縛り上げてます」

勇者「なぜ」

商人「もう1人は先ほどまでそこで飲んでいたのですが一体どこに」

盗賊「手洗いだ。ヤクが切れたのでな」

商人「ヤクが切れたので手洗い場に居たそうです」

勇者「あわわ中毒の人」

盗賊「盗賊だ。これからよろしく頼む」

商人「大丈夫です。彼はれっきとした堅気の盗賊です。よね」

盗賊「さぁな」

勇者「なんだか顔が青白いですが大丈夫ですか」

盗賊「気遣い感謝する。常備薬を飲んだ直後はいつも反動でこうなるのだ」

商人「盗賊の能力に長けた彼は、おもに周囲の索敵、目標の補足などを務めます」

盗賊「ああ。私に任せるのだ」

勇者「あのうくれぐれも無理はしないでくださいね」

商人「さて最後のパイロットですが、とりあえず店から出ましょう。外にいます」

勇者「さっき縛り上げてるって言ってたけど」

商人「そうしないと逃げ出しますので。あっいましたあそこです」

賢者♂「誰かこいつをほどけえっ!!」

勇者「なにこれすごい縛り上げてる芋虫みたい」

商人「賢者さん、こちら勇者様です」

賢者♂「何ぃ」

勇者「どうも勇者です」

賢者♂「俺は賢者だ。なぁ頼む、今すぐこいつをほどいてくれ」

勇者「いいですとも」

商人「いえダメです。彼は勇者ロボにおいて、非常に替えのききにくい人材なのです」

賢者♂「ききにくいってことはつまりきくってことだろ! 替えろっ今すぐに!」

勇者「話が見えないんだけど」

賢者♂「俺はゼッタイあんな得体の知れねぇ化け物なんかにゃ乗らないからな!」

商人「↑なこと言って聞かないんですよこの芋虫賢者」   賢者♂「ああんっ!?」

商人「彼は勇者ロボにおいて、中核に等しい責務を担います」

賢者「やめろおおっ!」

勇者「どんな役目なの」

商人「はい。勇者ロボの主な原動力、および呪文行使時の『魔力供給』です」

賢者「ただでさえ物騒な代物なのに、そんな物騒な役回り誰がやるか!」

勇者「でもそれって誰かがやらないと勇者ロボは動かないんじゃないの」

商人「まさしくその通りです。中で魔力を供給するものがいなければ、あれはハリボテも同然なのです」

賢者「ハリボテで終わらせろ! 捨てちまえ売っちまえ、それが世のため人のため!」

勇者「ねぇ。この人嫌がってるみたいだから別の人呼んだら」

商人「それが勇者様。彼はこうみえて、世界屈指に及ぶまでの魔力を誇る大賢者なのですよ」

勇者「それはすごい」

賢者「くっ、以前ならば気分のよくなる口上だが今は別! どんなにおだてられようと命を懸けるようなマネはせん!」

商人「彼、なにかと調子に乗った言動ばかり繰り返してきましたからね。今回指名されたのは一番早かったですよ」

賢者「くそぉ嫉妬深い連中め、よくもこんな当てつけをふざけやがって!!」

勇者「なんだか面倒な話だなぁ」

盗賊♂「少しいいだろうか」

勇者「うわびっくりしたモンスターかと思った」

賢者「誰だお前は!」

盗賊「乗り組員が一人、盗賊だ。あれは魔王軍を打ち破る最終手段。ここで無為に終わらせる訳にはいかない」

賢者「あれに乗る気満々でいやがる、正気か!」

盗賊「例えばお前が――幼き日に故郷を魔王軍に襲われ、身寄りを失い、」

盗賊「覚えたくもない盗賊稼業を強いられて生きてきたとしたらどうだ。お前は同じ台詞を吐けるか?」

賢者「何ぃ」

盗賊「自分をそんな境遇に陥れた元凶を打ち破る、最後の希望を、最後の機会を目の前にして、同じ考えでいられるのか?」

賢者「お……お前そんな過去を……」

盗賊「だったらどうする」

賢者「ど、どうせ出まかせだろ!」

盗賊「出まかせだが」

賢者「ほらみろ!!」

商人「これで全員そろいましたね。さっそく試運転に取りかかりましょう」

勇者「ねえ賢者」

賢者「ナンダ!」

勇者「君はどうしてアレに乗りたがらないの」

賢者「どうしてってお前勇者! あんなでかいもん動かすとなりゃ、俺の魔力が枯れきってしまうわ!」

商人「まだ勇者ロボの魔力運用比率を話した覚えはありませんが」

盗賊「要するにただの臆病者だ。こんな腰抜けに頼らざるを得ない人材不足が嘆かわしい」

賢者「あん? メラゾーマ2発で落ちるコソ泥がなにかほざいたか?」

盗賊「やるなら相手になろう。遠慮なくこちらからいくぞ」

賢者「ば、ばかまずコレほどけ! 痛っ痛いっ、刃でつつくな痛い、参った!」

勇者「盗賊さんの勝ち。だから一緒に乗ってね」

盗賊「今後お前のわがままは通さん」

賢者「ばかな!」

商人「話がまとまったところで、勇者ロボの搭乗マニュアルを配布しますね」

賢者「狂ってる。世界がメダパニに包まれている。おっとやけに薄いマニュアルだな」

商人「あなたは存外シンプルな役回りですから。動力エンジンの活躍、心より期待してます」

勇者「ねぇ商人、このマニュアル結構枚数あるけど、全部覚えなきゃダメ?」

商人「ダメです。でも実際に動かしているうちに、自然に身に付くことばかりですよ」

勇者「じゃあさっそく動かしてみようよ。習うより慣れたい」

商人「素晴らしい意欲です勇者様。実はどのタイミングで言い出そうか悩んでいたところです」

盗賊「打倒魔王を掲げるのだ、そうこなくてはな」

勇者「もちろん乗らないにこしたことはないよ。でも魔王を倒すにはアレしかないんだったら、やるしかないよね」

商人「さすが勇者様。本意では無きにしも、使命のために必要十分な勇気は備えていらっしゃいます」

盗賊「勇者を名乗っているのだ、そうこなくてはな」

勇者「やっぱり乗るのはやめにしよう」

商人「さすが勇者様。一瞥しただけのマニュアルから、実はまだ細かな整備が完了していないことを見抜くとは」

盗賊「パーティーの命を預かるのだ、そうこなくてはな」

勇者「ねぇなんか適当に合わせてるでしょ」

商人「では整備が済んだようなので乗りこむとしましょう」

賢者「おいっ! こんなんでいいのかよ勇者!」

勇者「いいよ」

<城下町周辺フィールド>

盗賊「では縄を解く。いいか、もし逃げれば、お前は勇者との約束を破ることになる」

賢者「分かってる。よく分からんがな!」

盗賊「動くな。手元が狂ったら大量出血でお前は死ぬ」

賢者「手でっ! なんでわざわざ刃物使うんだよ手でいいから解くのは!」

勇者「賢者。君が乗り気でないのは分かるけど、魔王を倒すためにどうか力を貸してほしい」

賢者「このタイミングで言うな、別に逃げやしねーよ!」

商人「念のため言っておきますが、勇者ロボの近くで移動呪文などは下手に使わない方が無難です」

賢者「な、なんで?」

商人「すでに勇者ロボと我々4名のパーティーユニットはプログラムされてます。いわば一体の状態」

勇者「つまりどういうこと」

商人「もれなく勇者ロボも移動呪文で同行します。転移先の足場が悪ければ、ロボが転倒する恐れもあります」

盗賊「ほう、そうなるとまかり間違えば下敷きになって死ぬな。賢者が」

勇者「良かった。それじゃ賢者も下手に逃げたりできないんだね」

賢者「なんで俺だけ死ぬんだよ! って言いたいトコだがなんか本当に俺だけ死にそうな気がしてきた」

商人「では乗り込むとしましょう。ロボはあらかじめ補填している魔力により、すでに起動しています」

勇者「どうやって乗るの」

商人「まず勇者ロボの脚部のどこでもいいので、手で触れます」

盗賊「万が一ということもある。先にお前が乗れ」

賢者「万が一ってどういう意味だよお前先に乗れよ!」

盗賊「お前が乗れ」   賢者「お前が乗れよ!」

商人「私がコインで決めましょう。――はい、裏です。賢者さん先に乗ってください」

盗賊「何が『裏です』だ勝手に意味不明なルール作ってんじゃねェ!」

勇者「賢者おねがい」

賢者「にぃぃ! もういい分かった乗ってやるよ!」

商人「手で触れたら、魂を込めて叫ぶのです。『勇者ロボ・ドラクエンター!』と」

賢者「もうやけくそだ! 勇者ロボッ!! ドラクエンタアァーッ!!」 ドビューン ドビューン

勇者「すごい。ルーラの音して賢者消えた」

商人「登録されたパイロットが機体表面に4秒以上触れたら、自動的に内部の操縦席に転移する仕組みです」

盗賊「ほう便利だな。そしてもちろん叫ぶ必要もないんだろうな」   商人「はい」

<コックピット内>

勇者「すごい。なんかちっこいでっぱりとか、かっこいいニギリとか、たくさんあって楽しい」

商人『それはボタンです。レバーです。私もテンション上がってきます』 ヴィン

勇者「うわなにこれ。商人の顔が出てきた」

商人『この小型モニタを通して、各パイロットとの通信はいつでも可能です。これで各々の状況も把握できます』

盗賊『互いを監視できるというわけだ。素晴らしい』 ヴィン

勇者「盗賊さんまで。賢者は?」

商人『強制的に立ち上げますね』

盗賊『プライバシーも何もあったものではないな』

ヴィン

賢者『誰かいないのかああっ! 誰かああぁっ!!』

商人『プッ。いえ失礼。どうやら真っ先に搭乗したせいで、錯乱状態に陥っていたようですね』

賢者『そ、その声商人か! もういい、下ろしてくれ! 頼む、何でもするから!!』

盗賊『さっきマニュアルに書いてあったのだが、なんでも「録音」という機能があるそうだな』

商人『ええ、ばっちりです』

商人『――システムオールグリーン。いつでも発進できます』

勇者「賢者、だいぶ落ち着いた?」

賢者『ふはははは』

勇者「大丈夫そう」

商人『勇者様、ではさっそく動かしてみましょう。その正面のレバーをゆっくりと引いてください』

勇者「こう?」 ガキョン  ゴゴゴゴ  …… ズ ズ   ンン  「わっ動いた」

商人『いい感じです。今のが歩行操作です。マニュアルモードですと、そのレバーによって勇者ロボは歩きます』

盗賊『勇者、くれぐれも操作を誤るなよ。すぐそこに城下町がある』

勇者「えっ」

盗賊『城や街を踏み潰してしまえば魔王軍の襲来、いやそれ以上の災禍……全ては終わりだ』

勇者「えっ」

盗賊『このロボは世界中に恐慌を招き、人々は新たな脅威に逃げ惑い、そして魔王軍の蹂躙は助長されるだろう』

勇者「ええっ」

商人『盗賊さんの言うことは間違いではありませんが大丈夫です。できる限りフォローします。勇者様頑張ってください』

勇者「うんがんばる」

商人『では予備の魔力を温存するために、さっそく賢者からmp供給をしてもらいましょう』

賢者『お、俺のmpをどうしようってんだ!』

商人『言わずもがな勇者ロボの動力にします。ではこちらの操作で』

賢者『おい待てなんでそっちで操作できるんだ!』

盗賊『マニュアルを読まなかったのか? お前の座席のみ商人による制御が可能なのだ』

商人『ええ、私が魔物使いで彼が魔物といった関係ですね』

賢者『魔物はどっちだテメーの血の色見せてみろ!!』

勇者「賢者がんばって」

商人『ではいきますよ。大丈夫です、(たぶん)痛くはないですから』

賢者『ま待てまだ心の準備』

商人『そーれ』 ポチッ

ヴィーン

賢者『ぐわああああーッ!!』

勇者「えっ」

商人『ん? 間違ったかな?』

賢者『はぁ……はぁ……』

勇者「大丈夫なの」

賢者『マホトラの感触だった……極太のマホトラ……それも会心の一撃!』

商人『さて勇者ロボのmpもととのったことですし、さっそく周囲のフィールドを探索してみましょう』

盗賊『しかしこれだけ大きいとモンスターとの戦闘が大変だな』

勇者「どうして。楽勝じゃないの」

盗賊『いや、そこじゃなくてだな。周囲の索敵データによるとつまり』

スライムaが あらわれている!
スライムbが あらわれている!
ドラキーaが あらわれている!
スライムcが あらわれている!
おおがらすaが あらわれている! ▼

盗賊『どのタイミングで戦闘に突入しているのか分からんのだ』

勇者「なんてこと」

賢者『ははは見ろゴミがモンスターのようだ!』

商人『では記念すべき最初の戦いは、そこの一番近いところにいるスライムで』

盗賊『そいつはグループになってる。いやなってないか? 群れのまとまり方も分からん』

商人『では勇者様、お手元の剣のマークのボタンを押してください』

勇者「こりゃわかりやすい」ポチッ

ガキンガキン   シュピイーン

勇者「おおー。なんかすごそうな剣でてきた」

商人『伝説ソードです。攻撃力はおそらく現存する武器の中で史上最強です』

賢者『単にでけぇからだろ』

商人『盾のボタンで伝説シールドです。とりあえず近接戦闘はその二つを使い分ければ問題ないかと』

勇者「これでそこのスライムを攻撃するの」

商人『それで攻撃するなんてとんでもない! 周囲の地形が変わってしまいます!』

盗賊『おそろしいことだ、我らの故郷が失われてしまう』

賢者『おい勇者! ちょっとは頭使えよ!』

勇者「ごめんなさい。でもじゃあなんで出させたの」

商人『ちょっと武装機能をチェックしたかっただけす。特に問題ないようですね』

勇者「スライムは」

商人『歩行動作で十分でしょう』

勇者「そこのスライムに向かって歩けばいいの」

商人『そうです。勇者ロボの記念すべき最初の戦いです。いってみましょう』

盗賊『目標補足。ふみつけ命中精度安定。いつでもいけるぞ』

賢者『よっしゃいったれ』

勇者「わかった」

勇者ロボは あるいた!
スライムに   ∞   のダメージ!
スライムを たおした!

勇者たちは 2のけいけんちを てにいれた! ▼

商人『……』

盗賊『……』

賢者『……』

勇者「えっなんでみんな静かになるの」

勇者「ねえちょっと」

盗賊『……いや……まだあちこちモンスターはいるが、続けるか?』

勇者「もういいよ」

商人『勇者ロボの真骨頂の一つに、呪文の拡大機能があります』

勇者「なにそれ」

商人『賢者がコックピット内で唱えた呪文を、勇者ロボが効果を倍増させて放つのです』

盗賊『どのくらい倍増するのだ』

商人『試してみましょう。セーフティを解きました、賢者さん何か呪文を』

賢者『ああ。ちょうどパルプンテでもかましたい気分なんだ』

商人『あなたはその身に負えるのですか? この世界が滅びたときの責任を』

賢者『笑えねーよ! じゃあかるーくメラ!!』 テロリロリロ

勇者ロボは メラをとなえた!
ばくえんが ごうおんとともに さくれつした!
じごくのごうかが フィールドをおおいつくす!

まもののもりは しょうどとかした!! ▼

賢者『焦土』

勇者「ど。どうしょ」

商人『いま一瞬でイベントが三つほど消化されたような』

盗賊『……今のはメラではない……。マダンテだ……』

商人『さて! 試運転はこれで十分と思われます。今日はもうロボから降りるとしましょう』

賢者『また叫ばにゃならんのか』

商人『いいえ、お手元にあるリレミト(脱出呪文)ボタンを押すだけでokです』

勇者「これかな」 ポチッ ザッザッザッ

賢者『まったく乗るときもこんなお手軽仕様でいいだろうが』 ポチッ ザ・ザ・ザ

商人『降りる前にいろいろ設定しなくてもいいのが魔力のすごいところ』 ポチッ ザッザッザッ

盗賊『うむ、全てがよくできている』 ポチッ ザッザッザッ

<城下町周辺フィールド>

勇者「やっぱり外の空気はおいしい」

商人「もう日も暮れます。今日は城下町の宿で一晩過ごしましょう」

盗賊「予想以上の戦力だったな。この分では魔王軍制圧などたやすかろう」

商人「絶大な力は使いこなせてこそです。まずは戦闘などに慣れるところからでしょう」

盗賊「慣れる段階が違う気がするがな」

勇者「ところで賢者はどこ」

<宿屋>

盗賊「勇者ロボのてっぺんでルーラも唱えられずおろおろする賢者 の姿をふかく心にきざみこんだ」

賢者「脱出ボタンのとなりに変なボタン作るんじゃねええっ!!」

勇者「どういうボタンなの」

商人「頭へのリレミトボタンです。足から脱出するリレミトボタンがあるなら当然頭のもありますよ」

賢者「なんでだよ!」

盗賊「商人、世界地図を持ってきたぞ」

商人「どうも。はい、ただいま現在地と魔王城の位置を結ぶとこんな感じです。片道15分ってとこです」

勇者「たった15分ってまさか飛んだりするの」

商人「飛びます。本気を出せば音速で。神鳥? 飛空挺? いいえ、勇者ロボです」

盗賊「ではその気になれば一日で世界を救うことができるわけか」

賢者「マジか!? じゃあ明日にでも軽く魔王の丸腰をひねって、こんなことさっさと終わらせようぜ!」

商人「あなた本当に賢者ですか? 試運転の翌日にいきなり決戦に挑めるわけないでしょうこの単細胞」

賢者「違う俺は天才坊だ!」  

勇者「ふぁあーあ。眠くなっちゃった。今日はこの辺にして、続きは明日にしよう」

スレタイに惹かれた

おお、vipだと落ちて見れなかったから嬉しい

【翌日】<宿屋>

勇者「みんなおはよう」

賢者「昨晩逃げ出さずにいた俺を誰かほめてくれ!」

盗賊「今日は結局どうするのだ」

商人「手始めに『迷いの塔』の撃滅に向かいましょう」

勇者「いまなんか恐ろしい単語が聞こえたけど攻略の間違いだよね」

商人「確かに攻略とも呼べるでしょう。いま『迷いの塔』は魔王軍の拠点の一つとなっています」

盗賊「『迷いの塔』か……あそこは確かに内部が複雑に入り組んでいるせいで、討伐隊による制圧も失敗続きだ」

商人「ですので勇者ロボの本領を発揮するにはうってつけのサンドバッグおっと失礼ダンジョンなんです」

賢者「やっと楽しみができた。いままでの鬱憤を全てその塔にぶちまけてやる」

勇者「ちなみに迷いの塔のあとは?」

商人「まだ決めていませんがそうですね。悪しき魔物が巣くう場所を片っ端から粉砕していきましょうか」

盗賊「やりすぎるなよ? 魔王討伐後は人の手が入るような場所も多いのだからな」

賢者「ならば人生単位の鬱憤をすべてそのダンジョンたちにぶちまけてやる!」

勇者「ねえちょっと不安になってきたんだけどここ勇者陣営だよね」

<城下町周辺フィールド>

勇者「朝日に気高き影を伸ばすは みんなの希望 勇者ロボ」

商人「いいですねそのフレーズ、二番の歌詞に使いましょうか」

盗賊「あの勇者ロボ、一晩中あそこに置きっぱなしだったが、いささか無用心ではないのか?」

商人「魔物が攻撃してこないのは実証済みですし、ロボならパイロットが3人以上乗らなければ動かせません」

勇者「3人以上かぁ。置いてかないでね」

商人「まさか! 置いていくのは勇者様ではありませんよ」

賢者「おい?」

商人「ではさっそく勇者ロボに搭乗しましょう。すでに整備は完了、プログラムは起動済みです」

盗賊「よし賢者お前から乗れ」

賢者「これ誰から乗るとか関係あんのか? まぁいいけど」

賢者「行くぜ! 勇者ロボッ! ドラクエンタァーッ!!」ドビューン ドビューン

盗賊「……ふっ。ノリノリでハイになるところがまた」

商人「私も満足しました。それでは我々も乗り込みましょう普通に」

勇者「そろそろ教えてあげようよ」

<コックピット内>

商人『皆さんにマップを送ります。点滅しているのが勇者ロボです』

勇者「画面に地図がこれで勝てる」

商人『迷いの塔はここから西南西に位置します。勇者ロボの向きを変えますね』

賢者『俺は行ったことねーからルーラじゃ行けねーぞ』

商人『位置さえ分かれば大丈夫です。なぜなら勇者ロボは賢者エンジンの動力により音速飛行が可能だからです』

賢者『おまいま賢者エンジンて』

盗賊『それでどのように飛ぶのだ?』

商人『ただいま設定が終わりました。では勇者様、お手元に表示されたボタンを』

勇者「押すよ」 ポチッ テロリロリロ

ゴゥーン ゴゥーン …… ドビューン ドビューン

勇者「うわあすごい飛んでるすごい。高い」

商人『とある文献では「トベルーラ」と呼ばれるれっきとした呪文だそうです』

盗賊『素晴らしい、タカの目いらずではないか。おお! なんという景観だ。地上はかくも美しい』

賢者『なんか俺のmpがじわじわ削られてる件について』

商人『ただいま上空12km、成層圏を飛行中です』

勇者「きろめーとる。せいそうけん」

商人『要するにものすごく高いってことです。人が唱えるルーラの飛翔高度をかるく超えています』

盗賊『ふむ。雲のないところでは地上から丸見えだな。人々の目にはどんな風に移るのだろうな』

勇者「これ勇者ロボの存在知らないと絶対不安あおっているよね」

賢者『おいところで商人、俺のmpが半分切っているんだが』

商人『それはまずいですね。ゼロになると予備魔力が充てられ、それも尽きると墜落してしまいます』

盗賊『なんとかしろ賢者』

賢者『お前らがしろ! こっちは勝手にmp吸われてんだよ!!』

商人『では賢者さん、とっとと手元のドリンクボタンを押してください』

賢者『ドリンク? これか』 ポチッ ピッ

賢者『なんだこれ。なんかコップ出てきた。うわなんか流れてきたこぼれる! こぼした!』

商人『エルフの飲み薬(mp全回復)です。飲み放題ですよ。それで延々とmpをつないでいってください』

賢者『鬼かっ!!』

勇者「飲み放題いいなー」

商人『見えてきました。まもなく迷いの塔に到着します』

勇者「はやぁい」

賢者『うっぷドリンク吐きそう』

盗賊『ときに、勇者ロボの装甲はどのくらいなのだ』

商人『どのくらいと言われましても、オリハルコン合金でできた伝説アーマーを全身に装着している程度です』

盗賊『であれば、そのまま塔めがけて落下するのもアリではないのか』

商人『大アリです、というより恐らくそれで終わります』

賢者『えげつねえ。晴れときどき勇者ロボで潰されたモンスターは浮かばれねぇな』

商人『しかし今は時間に余裕があると思われます。今回は「操縦に慣れる」という目的を達成させましょう』

勇者「今日の目的は『迷いの塔』攻略じゃなかったの」

商人『はい攻略です。「操縦に慣れる」=「攻略」です』

盗賊『冒険者の難関たる迷いの塔も、勇者ロボにとっては初歩的な演習対象に過ぎないのか……』

商人『ただいま空域に到着しました。特に衝撃にそなえる必要は(賢者以外は)ないのであしからず』

勇者「はぁい」

賢者『おい何を( )でくくってんだよ』

<迷いの塔付近フィールド>

ヒュオオォォ …… ――ズズーン……

賢者『うぎゃああああああ!』   商人『着きました』

盗賊『今の着地ではぐれメタルを踏み潰したぞ。大量の経験値を獲得だ』

商人『レベルが上がったようですが、我々にはあまり関係ない話なので詳細は省きましょう』

賢者『おい、俺が何か新しい呪文覚えるかもしれねぇじゃねーか!』

盗賊『まだ覚えてない呪文あるのか? 使えんコマンドめ』   賢者『ああん!?』

勇者「迷いの塔ってかなり高いって聞いてるんだけど」

商人『高さは約75m、勇者ロボの大体1.5倍です。内部が複雑なので延床面積も相当なものです』

勇者「魔王軍の拠点ってことは、中にたくさん魔物がいるんだよね」

盗賊『そうだ。まず奴らは、冒険者や兵士が中で迷い込むのを待つ。そして疲労したところを一気に襲いかかるのだ』

賢者『はん、お前もやられた口か? ざまーねーぜ』

盗賊『こんな場所来たこともないわ、たわけ。たわけんじゃ』  賢者『ほあっ?』

商人『しかしどれだけ魔物が中で待ち伏せしようと、我々にはあまり関係のない話です。遠慮なく参りましょう』

勇者「勇者ロボに乗ってると『あまり関係のない話』だらけだねー」

支援!

商人『勇者様、伝説ソードを出してください』

勇者「出すよ」ポチッ

ガキンガキン   シュピイーン

商人『では攻撃してみましょう。大上段でも横一文字でも結構です』

盗賊『出力安定。標的対象、迷いの塔。攻撃箇所補足』

賢者『くくくようやくこの瞬間がきたな』

勇者『やるよ。魔王を倒すためだもの。えいっ』

勇者ロボの こうげき!
迷いの塔に 375643470 のダメージをあたえた!
迷いの塔は ほうかいした!!
まもののむれを やっつけた!
勇者たちは xのけいけんちを てにいれた! ▼

賢者『みろ! やったぞ!!』

商人『どうやら塔の中にいた魔物たちもほぼ全滅したようですねえ、勇者様さすがです』

盗賊『塔を斬ったのは初めてか、勇者よ。……上出来だ』

勇者「ちょちょっと待って皆でやったんでしょ? さりげなく責任押しつけないでよ」

商人『では次は、もう少し歯ごたえのありそうなダンジョンを相手取りましょうか』

賢者『イイ(↑)ねえぇっ!』

盗賊『アテはあるのか? 世界で最大級の高さを誇る建物でさえあのザマだぞ』

勇者「歯ごたえのありそうなダンジョンって?」

商人『今お手元のマップに表示しますね』 ピピ

賢者『んんん? おい、この地点ってなんかあったっけ?』

盗賊『山があるな。凶悪な魔物たちがひしめく高山・デビルマウンテン』

賢者『そんなこた分かってんだよ! いや待てそれともお前コレそういうことなのかよ』

商人『そういうことです、勇者ロボの常識的に考えてください』

盗賊『文字通り山狩りとシャレこむわけだな』

賢者『シャレになってねえよ!!』  盗賊『なってるだろう』

勇者「本気でやるの」

商人『やります。一丁デビルマウンテンをギャフンと言わせちゃいましょう』

勇者「一応きくけど、まだ後戻りできるよね」

商人『はぁ多分もう無理です』

商人『では賢者エンジンさん』

賢者『なんだよ。あァ今なんつった!?』

商人『一応ルーラの方が早いから尋ねますが、dマウンテンに行ったことは?』

賢者『そんなもんあるわけn』

商人『では勇者様、トベルーラスイッチを』

勇者「押すよ」 ポチッ テロリロリロ

ゴゥーン ゴゥーン …… ドビューン ドビューン

盗賊『ふっ。このgがかかる感触がくせになるな』

商人『さすが盗賊さん分かりますか?』

賢者『おべっドリンクがぶえっ』

勇者「ところで勇者ロボが飛ぶときってどんな格好なの」

商人『まあ普通に両手を突き出してこう、舞空術と同じポーズです。表示しましょうか』

勇者「えっなにこれ。なんでこんなポーズ取らせるの。デザインが勇者なのに恥ずかしいよ」

商人『古代文献の資料によると、大抵のロボットがごく一般的に取るポーズだそうです』

勇者「ふうんじゃあ何か深い意味があるんだろうね。恥ずかしいけど我慢しよう」

<デビルマウンテン上空>

商人『はいもう到着しました。勇者ロボは縦横無尽です』

盗賊『つくづく恐ろしい兵器だ。この巨体で、世界中のどこだろうが気軽に遊びに行けるわけか』

商人『さすがに宇宙は無理ですが』

勇者「ウチュウってなに」

商人『賢者なら説明できるでしょう』

勇者「ねえ賢者ウチュウってなに」

賢者『はぁ? 雨の中じゃねえの?』

勇者「ふーんじゃあ勇者ロボは水に弱いんだね」

商人『いえヒャド系呪文を受け付けないどころか、水中戦だってこなせますが』

勇者「ええ賢者」

賢者『なんだよ何で俺に振るんだよ知らねーよ!』

盗賊『無知は免罪符にならん。今日からお前は賢者の名を捨てろ』

商人『もうエンジンでいいですね。さぁそろそろ魔力を充填する時間ですエンジンさん』

賢者『そのココロは「猿人」ってそろそろ大概にしとけよコラ!!』  勇者「おさるさん!」

 ゴゴゴゴ……  ズ  シー ン……

勇者「うわあ近くで見るとでっかい山だなあ」

盗賊『この山を具体的にどうするつもりだ?』

商人『とりあえず思いつく限りの攻撃行動を試してみましょうか』

賢者『呪文の出番ってわけか? いいぜ、このロボが何でも思い通りにできるってならまずは』

勇者「でもこのデビルマウンテンって、やっつけていい理由があるの」

商人『どういうことですか?』

勇者「さっきの塔をみてて思ったけど、これじゃあただの弱いものイジメなんじゃないのかな」

盗賊『うむよくいった勇者! まずはこれから起こす行動の正当な理由を聞こうか、商人よ』

商人『はい。まずこの山は、非常に濃度の高い瘴気に包まれております。
   従って人間は出入りできず生息するものは魔物だけ、それも成熟した上位種に限ります。
   また、かつて北方の大国を壊滅させた魔王軍の軍勢がこの山に入ったという報告もあり、
   ここから推察するにこの山は魔王軍の拠点となっている可能性が大いに考えられます。
   さらに付近の地形は人間が移り住むには過酷の環境ゆえ、地ならしも兼ねて暴れまくるのは――』

勇者「わかったもういいよ。眠くなっちゃいそう」

盗賊『ふむ……北の国は、魔王軍の卑劣な奇襲を受けて滅んでしまった。これは因果応報ということか』

賢者『なんかもうめんどくさい! 速やかにおっ始めようぜ!』

勇者「じゃあまずどうしよう」

商人『なんでもいいですよ。とりあえず適当に伝説ソードでいきましょうか』

勇者「わかった。えいっ」ポチッ

勇者ロボは みぎかたに背負った 伝説ソードを ひきぬいた! ▼

ガ 伝説ソードとは 世界中の オリハルコンを ひとつに凝縮させ
キン 特大サイズに しあげた 最強のつるぎだ! ▼

ガ あらゆる悪を きりさき なぎはらい まっぷたつにする
キン 勇者ロボのほこる さいこうせいのうの メインウェポンなのだ! ▼

シュピイーン!

商人『ここ! 剣を構えたポーズの全身一枚絵です』

勇者「何の話」

盗賊『むむ、周囲に敵性反応多数あり。どうやら様子を窺っている模様』

賢者『殲滅da☆ze!』

商人『勇者様、どうやら魔王軍で間違いないようです。山ごと拠点を叩き割りましょう』

勇者「わかった叩き割る」

盗賊『うーむ……よくみると周囲の敵は様子を窺うというより、単に困惑しているだけのようだな』

好きなssの一つの

王「本気で魔王倒す」勇者「えっ?」

を思い出すセンスだ…

勇者「じゃあいくよ」

商人『はい』 盗賊『よしいけっ!』 賢者『最初に一発かませ!』

勇者ロボのこうげき! ▼
dマウンテンに 31442182 のダメージを あたえた! ▼

勇者「おおーなかなか」

商人『しかし大局的に見れば微々たるダメージ。やはり山を相手にするのは難がありますね』

盗賊『周囲の敵性反応は大混乱の模様』

賢者『やれやれどんどんやれ!』

勇者ロボのこうげき! ▼
dマウンテンに 37564831 のダメージを あたえた! ▼
dマウンテンに 31528182 のダメージを あたえた! ▼
dマウンテンに 36155374 のダメージを あたえた! ▼

勇者「すごいよこれ。ザックザク斬れる。まるで山がプリンみたい」

賢者『見ていて気持ちいいでおじゃるな!』

盗賊『だが見た目ばかりが派手で、山そのものを落とすには時間がかかりそうだな』

商人『ではそろそろ呪文でも使いましょうか。ほらエンジンさんとっととガソリン貯めて』

賢者『なんかどんどん扱いがぞんざいになってきてるな!!』

商人『では勇者様、お好きな呪文を』

勇者「ええっとじゃあ何にしようかな」

賢者『そのメニュー選ぶノリ! 言っとくが呪文唱えるの俺だからな!』

盗賊『黙ってろサル』  賢者『この野郎ついに言いやがったな!』

勇者「じゃあイオナズンとかどうかな」

商人『爆発系上級呪文のイオナズンですね。いいんじゃないですか、やってみましょう』

盗賊『しかし大丈夫か? 勇者ロボのメラ=森が消し飛ぶマダンテだぞ』

商人『まぁ森と違ってこの山はかなり体積がありますし。ではセーフティを解きました、どうぞ』

賢者『イオナズンだな。ふっ、俺の実力を見せてやるぜ』

商人『万一のことが起きてしまったら、今の言葉に責任を負ってもらいましょう』

勇者『そうしよう』  盗賊『うむ了解した』

賢者『あっちょっと待てもう』テロリロリロ

勇者ロボは イオナズンを となえた! ▼
まばゆいひかりが デビルマウンテンをつつみこむ!!


                          ▼

>>37
鋭いですね

勇者「……」

賢者『……』 盗賊『……』 商人『目標の沈黙を確認』

商人『トラマナ機能安定、ただいま上空5キロを滞空中です』

賢者『おい。おーい。山が半分ふっとんでんぞ』

盗賊『恐ろしい。閃光と共に巨大な爆炎が弾ける様は、もはや神罰の領域だった』

勇者「ねえ商人。伝説ソードって要らないんじゃないの」

商人『要りますよ。ようは打撃か呪文かの違いだけです」

賢者『なわけねえよ! お前こりゃ7日ありゃ世界をなぎ払えるぞ!!』

盗賊『なぜもっと早く出さなかった』

商人『いえ私も古代の技術がこれほどのものとは思わなかったので』

勇者「なんか怖くなってきた」

商人『大丈夫です。勇者様のくじけぬこころがあれば、この力はいつでも正義の味方です』

盗賊『うむ。力に飲まれるな。自身を強く持て。それが勇者ロボにおける勇者の勇気だ』

勇者「そうだったんだ。てっきり強いものに立ち向かうのが勇者の勇気と思ってたよ」

賢者『普通そうだろ! もはやコレ相手にする側の方がよっぽど勇者だよ!!』

――――――――――――
<魔王城>

魔王「何事だ?」

側近「何事だ参謀!」→  参謀「何事だしもべ!」

→しもべ「は、はっ! 本日昼、西南西に位置する我らが拠点『迷いの塔』が、倒壊崩落したとの報告が!」

参謀「なんだと!? つまらぬ妄言ならただで済むと思うな!!」

しもべ「妄言ではありません! 妄言ではありません!」

参謀「大水晶で現場を映し出せ!」

しもべ「はっ!」 ヴーン

参謀「!?」  側近「お、おお……」  魔王「……」

参謀「ばかな……長年難攻不落だった我らの所産が……」

しもべ「原因は一切不明です! 考えられるのは……局地的に発生した地震、としか……」

参謀「そんな馬鹿な地震あるか! 人間どもの報復に決まっている!」

参謀「すぐに原因を追究しろ! 何か分かり次第ただちに知らせるのだ!」

しもべb「伝令! 恐れながら申し上げます! デビルマウンテンが大変なことに!!」

参謀「!?」

参謀「デビルマウンテンがどうしたというのだ!」

しもべ「dマウンテンが……その……だ、大噴火を起こした模様!!」

参謀「なんだと!?」

しもべ「被害は甚大、駐留軍との連絡も取れません!」

参謀「大水晶で現場を映し出せ! 塔より山の方が大事だ!」

しもべ「はっ!」 ヴーン

参謀「!?」 側近「うおわ」 魔王「……」

側近「なんということだ……原形がないではないか……」

参謀「な、なんだこれは! これがデビルマウンテンなのか!?」

しもべ「い、いえ! もはや山ではなく平野、デビルプレーンかと!」

参謀「抜かしている場合か! 当地にいた我が軍は全滅なのか!?」

しもべ「ほ、ほぼ……完膚なきまでに全滅ですよ!」

参謀「これだけの規模の噴火だぞ、なぜ予兆を察知できなかった! 」

しもべ「わ、わかりません! そ、そもそもdマウンテンは死火山だったはずでして……」

参謀「ど、どういうことだ。何が起こっているのだ……」

魔王「余の前でうろたえるでない、参謀よ」

参謀「は、はっ! 取り乱してしまい申し訳ありません!」

魔王「もうよい、下がれ。何か分かり次第報告せよ」

参謀「ははーっ! 行くぞしもべ!」  しもべ「はー」

魔王「……」

魔王「側近よ。これが人の業であれば、どう見る?」

側近「由々しき事態です。こんな力を隠し持っていたとは彼奴らめ、俄然侮れませぬ」

魔王「ふむ……。……」

側近「……」

魔王「正直あれを見せられては、勝てる気がせんな」

側近「はっ。」「えっ!?」

魔王「余の真の姿をもってしても厳しかろう」

魔王「側近よ。余にもあのような事ができるように、今からでも何か打つ手を考えるのだ」

魔王「お前だから正直に話した。軍の士気に関わるゆえ、ゆめゆめ口を割るでないぞ」

側近「は、ははっ!」(こ、これはなんたる想定外!)

<参謀室>

ドタバタ ドタバタ

参謀「まずは残存部隊の編成からだ。各地の上級モンスターを召集する!」

しもべc「ほ、報告ー! 闇の洞窟、崩落しました!!」

参謀「闇の洞窟がやられた!? くっ、急ぎ西の神殿の信者共を」

しもべd「西のモンスター神殿が! モンスター神殿が壊滅!!」

参謀「そこも潰されたか!? こうなったら本部直下の精鋭たちを……」

しもべe「東の砦、大打撃……いえ陥落した模様!!」

参謀「次から次に何が起こっている! 重要拠点ばかり狙い撃ちされているぞ……」

参謀「将軍! 将軍と連絡急げ! 非常事態発令だ!!」

しもべf「報告ー! エビル将軍様の城塞が落城!!」

参謀「なにぃ将軍は!?」

しもべf「連絡取れません!」

参謀「ぐぬぬ策の立てようがない! ……策の立てようがない?」

参謀「あれだけ優勢を誇っていた我が魔王軍が……たった半日でお手上げ?」

しもべ「参謀様!」

参謀「今度はどこが潰されたのだ!?」

しもべ「い、いえ! そうではなく……敵の正体をつきとめました!」

参謀「なんだと! すぐに映し出せ!」

しもべ「はっ」 ヴーン

 デ デ ー ン

参謀「な」

参謀「なんだこの人間は」

しもべ「はっ、姿かたちからして、おそらく勇者かと」

参謀「勇者? これが? 何やら妙だぞ、白目を向いてるではないか。動きもぎこちないぞ」

参謀「本当にこんな小僧一人がアレをやったのか?」

しもべ「そのようです。あ、ほらご覧下さい、いまエビル将軍様の城にトドメをさすところです!」

参謀「将軍の城……? ちょっと待て、城ってあの小さいのがか?」

参謀「うん? あれ……待て大きさが。待て! でかい!?」

しもべ「はっ!」  参謀「はっ!?」

参謀「巨大……我が軍のどんな魔物より……」

しもべ「参謀様! ごらんください、勇者の奴が!」

参謀「!? な、なにをしているのだ」

しもべ「ど、どうも城を漁っているように見えますが……」

参謀「ぬ……ぬ!? いま奴が手につまみあげたのは!?」

しもべ「ま、間違いありません! エビル将軍です!」

参謀「将軍! ま、まさか、じかに手で握りつぶそうというのか!?」

しもべ「ひいいっ」

参謀「い、いや……そのまま……そのまま手に持って……」

参謀「飛んでいってしまった……」

しもべ「上空で将軍を潰す気です! 血の雨を降らせる気ですあqwせdrftgyふじこlp;」

参謀「落ち着け! 将軍は攫われたのだ!」

参謀「まさか奴ら……将軍の身柄を使って、何か企んでいるのか?」

参謀「降伏勧告? 公開処刑? くそ、いずれにしてもやりづらいぞ」

参謀「まだ……まだ何か手はあるはず……引き続き情報収集だ!」

続きまだー?

――――――――――――
<コックピット内>

勇者『うーん。今日は疲れちゃったな』

商人『お疲れ様でした。今日のところはこの辺で帰還しましょう』

盗賊『今日の戦果で、魔王軍にも勇者ロボの恐ろしさが十分伝わったことだろう』

賢者『ヘヘッ。あいつらの慌てた顔が目に浮かぶぜ』

勇者『ねえ商人、これ本格的に攻勢に出てるでしょう』

商人『そのようですね。データ収集に夢中で途中まで気がつきませんでした』

賢者『絶対ウソだろこのドshonin』

盗賊『残る拠点は魔王城を残すのみ。結構なことだ』

商人『明日おそらくその魔王城を攻撃することになります。うまくいけば旅は終了です』

賢者『意味がわからん』

勇者『この冒険もついに終わりかぁ。初めてこれに乗ったのが昨日のことのようって昨日だった』

商人『初日で試運転。二日目で順応。三日目に目的完遂。順番通りです』

賢者『過程はいい。日程がおかしい』

盗賊『ところで、今しがた捉えた魔王軍の捕虜はどうするつもりだ。この高度だ、凍えてるぞ』

商人『いっけない忘れてました』

賢者『わざとだな、俺には分かる。こいつ性根が修復不能なレベルで捻じ曲がってるからな』

商人『勇者ロボの魔力エネルギー充填開始ぽちっ』 ヴィーン

賢者『ぬわーッ!!』

盗賊『勇者よ、敵の将を捕らえてどうするつもりなのだ?』

商人『勇者様たっての指示だったので従いましたが、この後の算段は?』

勇者『うん。ちょっとこのまま力押しで魔王に勝っちゃうのは可哀想だなと思って』

盗賊『奴はエビル将軍。人間に対して残虐の限りを尽くした下郎だぞ』

勇者『そうだったの』

賢者『知らなかったんならその辺に捨てようぜ』

勇者『ところが捨てません。ちょっと話がしたいです』

商人『何か策があるのですね。とりあえず近場に下りますか?』

勇者『お願い』

盗賊『ふむ……』

<魔大陸>

――

商人『勇者ロボ着地完了』

勇者『あれ。ここ魔王の城がある大陸じゃないの』

商人『はい近くだったので。別に何ら問題ないかと』

賢者『奴らへの挑発にも拍車がかかってきたな』

盗賊『しかしこう暗くては不便だ。やはり攻め入るのは陽が昇ってからだな』

商人『それで勇者様。いま勇者ロボが手に握っている魔物と、話がしたいとのことでしたが』

勇者『ロボから降りなくてもできるの』

商人『できます。内部にある通信魔法陣を、ロボの手のひらへと集積します』

賢者『i can’t understand your words.』

商人『設定完了しました。すぐにでも会話が可能です』

盗賊『なんでもありだな』

商人『まさか。できることは人間とそう変わりませんよ、ちょっと巨大なだけで』

勇者「そっか。考えてみればちょっと巨大なだけだもんね」  賢者『そこが一番おかしいんだよ!!』

商人『ではつなげます』ピッ

エビル将軍「ヘブシッ! ……に、人間どもめぇ……」

勇者『あっ聞こえる』

将軍「!? な、なんだ!?」

盗賊『おお、この声がエビル将軍なのか?』

商人『はい。思った通り、さすがに将軍ともなると人語も交わせるようですね』

賢者『すげー! おいエビル将軍! エビル将軍!!』

将軍「なんだ? いや、な、なんなのだ!?」

賢者『おもしれえええええ!』

盗賊『エビル将軍。今まで好き放題やってきた側が、やられる側に立つのはどんな気分だ?』

将軍「な……何……お、おのれ人間どもめぇ!」

勇者『あずるい、先に話をさせてよ。ねえ将軍、エビル将軍』

賢者『なぁ、この状態で呪文かけたらどうなんだよ。ちょっとセーフティ解いてみろよ』

将軍「!? !? !?」

商人『いきなりで意味不明な状況になっています、静粛に』

勇者『というわけで将軍、話があります』

将軍「ククク、私に利用価値などないぞ。魔王軍は決して人間どもには退かぬ媚びぬ省みぬ」

勇者『あのそうではなくて、まあいいやとにかく明日魔王城をコレで攻撃します』

将軍「な、何だと!?」

勇者『コレは勇者ロボという強い兵器です。強い兵器なので魔王軍は多分負けます』

将軍「世迷言を。魔王様の真の御力は、この私でさえ計り知れぬものよ」

勇者『分かんないなら、魔王でもコレには勝てないかもしれないです』

将軍「おのれ魔王様を愚弄するか! あの方の前では、この兵器すら児戯に等しいに違いないわ!」

勇者『ええと、なので、明日までにこのことを皆知らせて、魔界に帰ってください』

賢者『ああ!?』  商人『ん』  盗賊『ほう』

将軍「な、なんだと? 降伏しろというのか!?」

勇者『はい多分。あと、人間に悪さする魔物たちも一緒に、連れて帰ってください』

将軍「聞けぬわ! 殺すがいい! 動けぬ魔物だ、簡単のものだ。我が城を落としたように」

勇者『いやあ。ええっとじゃあ商人、ちょっとやって欲しい呪文があるんだけど』

商人『はい何なりと』   賢者『呪文唱えるの俺なのに何とかなんねえかなぁこの図式!』

――――――――――――――

<参謀室>

参謀「……なるほど……つまりあの兵器は、中に人間が入って動かしているのだな」

しもべ「はっ。少なくとも、王都近辺に潜伏していた者たちの話では」

参謀「ぬかったな。手を打つなら、あの兵器が完成する前だった」

しもべ「申し訳ありません、情報はあったのですが、まさかあんなのが兵器だったとは……」

参謀「だが、まだやりようはある。それどころか、これは絶好機やもしれぬ」

しもべ「と仰いますと……?」

参謀「あれだけの制圧力を誇る兵器……欲しいとは思わないか?」

しもべ「お、おお! あれさえあれば怖いものなし! 世の覇権は完全に掌握できますな!」

参謀「クククその通りだ」

参謀(……そして魔王軍の覇権も、な。ククククk)

バタン!

エビル将軍「参謀はいるか!?」 ゼーハーゼーハー

参謀「うおお将軍!?」

参謀「将軍なぜここに」

将軍「そんなことはどうでもよい、すぐに魔王様に取り次げ!」

参謀「一体何事」

将軍「あの巨大兵器! あれが明日この城を滅ぼしに来る!」

参謀「何!?」  しもべ「げええっ!」

将軍「魔王様には即刻、真の力を引き出して頂かねば!」

参謀「ま、まぁ待て将軍。ちょうどよかった、まずは座るのだ」

将軍「何とする!」

参謀「もし良ければ、貴殿が捕らわれていた時の話を聞かせてもらいたい」

将軍「ふざけるな、ことは焦眉の急だぞ!」

参謀「そうでもない。うまくいけば、我々だけであれを奪取できるやもしれないのだ」

将軍「な、なんだと。何か策があるのか?」

参謀「ふっ。そもそも魔王軍がここまで世を席巻できたのも、不肖この参謀の暗躍あってこそ」

将軍「ぬう確かに。お前の知謀には、私も再三世話になっている」

参謀「魔王様の手を煩わせるまでもなし。ここは我々の力だけで、目にもの見せてやりましょうぞ……ククク」

<魔王城>

側近「魔王様! 魔王様に御注進!」

魔王「おお側近、待っておったぞ。しもべどもよ、席を外せ」

しもべども「キー」

魔王「……側近よ。その顔、良い知らせがあるとみた」

側近「はっ、然りに。ダメもとで我ら魔王軍の史書を調査したところ、奇跡的に見つかりました」

側近「彼奴らに対抗できうる手段――いにしえより伝わる、一世一代の超秘法が!」

魔王「おぉでかした。して、いかほどに時を要する」

側近「はっ、超秘法という割には存外術式は易く、半日もあれば行使に至れるかと」

魔王「なんと……何たる僥倖。我らの神はまだ我々を見放してはおらぬ」

側近「し、しかしこの力は余りにも強大です。歴代の魔王諸氏も、あえて看過されたほどに」

魔王「それは面白い。その力、この代で使い果たしてみよう」

側近「で、ですが! 万一、魔王様の御身命に関わるとなれば!!」

魔王「構わぬ」  側近「!?」

魔王「手も打たずして魔族の矜持を断たれるよりは、安き代償よ。――すぐに取りかかるがよい」

――――――――――――
<宿屋>

勇者「反省会を始めるね。今日はみんなお疲れ様」

勇者「長かった旅も多分明日で終わりです。頑張ろう」

勇者「反省会おわり。おやすみ」

商人「おやすみなさい」

賢者「勝手に終わるな! まず一つずつ突っ込ませろ!!」

勇者「あ待って。『まずひとつじゅつちゅっこm』。あやっぱり噛んじゃった」

商人「気に病むことはありません、賢者はそんなところに無駄な才能を費やしている生き物なのです」

賢者「果てしなくどうでもいい! まずあれだ、なんで盗賊の奴がいない!?」

勇者「さっき用事があるって言ってたよ」

商人「何やら城の方に向かっていくのを見ましたが」

賢者「はっなんで? 城のお宝でもくすねる気かあいつ」

勇者「お薬かも。中毒の人だから」

商人「まぁ別に賢者ほどには迷惑をかけてないので全く無問題です」  賢者「はぁん!?」

賢者「大体よ、あいつの言動なーんか不自然なんだよ」

勇者「そうかな」

賢者「堅苦しい物言いもそうだが、なーんか考え方が保守的っていうか俯瞰的っていうか」

商人「ふむ。それには全裸で城内一周するより屈辱的ですが同意します」

賢者「ああふざけろよ、じゃあ城内一周してこいよ! さぁ今すぐ脱げ! 脱いでみろよ!」

商人「私一応女性なのですが吊るすぞ」

勇者「ストーップ! 落ち着いて。どうどう」

勇者「とにかく盗賊は仲間だよ。勇者ロボのメンバーだよ。皆仲良くしなきゃ、世界は平和にならないよ」

商人「勇者様がおっしゃるなら」

賢者「ちっ。どうなっても知らねーぞ」

勇者「うーんねえ賢者。純粋に知りたいだけなんだけど、君は盗賊さんについて何が言いたいの?」

賢者「お前そりゃ、こんだけ異常に強いロボだぜ? 寝首かかれた後じゃ、遅いってことだよ」

盗賊「吹き矢」フッ
          プス  賢者「ああん」 バタッ

勇者「あ。おかえり盗賊さん」

商人「どちらにいらしてたのですか」

盗賊「ちょっと薬が切れたので調達に」

勇者「なんの薬」

盗賊「ふっ、なんの薬だろうな」

盗賊「それはともかく、先の話は始終聞かせてもらった。その上で頼む、ここは私を信じてくれ」

商人「私は勇者様に従う所存ですが」

勇者「信じるよ。これで反省会終わり。もう眠い」

盗賊「えっいいのか。あ、待て、その前に勇者に一つだけ尋ねたいことがある」

勇者「どうぞどうぞ」

盗賊「なぜエビル将軍を助けた? なぜ魔王軍にチャンスを与えた?」

盗賊「襲撃予告などしなければ、明日より確実に魔王軍を殲滅できたかもしれないのに」

盗賊「いやそれどころか、奴ら何か対策を講じてくるかも……」

勇者「別に大した理由はないよ。フェアじゃないな、って思っただけ」

勇者「今まで魔王軍がしてきたことも知ってるけど、ただの力押しじゃあそれと変わんないし」

勇者「ここはヒト様の器の大きさを見せてやりたいの。じゃ、おやすみ」  盗賊「……」

まあロボあれば勝つしな

age

wktk

【翌日】<宿屋>

勇者「おはよう。みんな昨日はよく眠れたの」

商人「おはようございます。いつもと変わらない朝です」

盗賊「決戦を前に少しは緊張するかと思ったが、勇者ロボの存在のおかげで安眠できた」

賢者「……うう……あれ……なんで俺床で寝てたんだ……身体痛い……」

勇者「今日はついに決戦です。でも、もしかしたら戦わずして勝つかもしれない」

盗賊「こちらの勧告が届いているかどうかも分からんがな」

商人「しかし、もし魔王軍が徹底抗戦にでたのなら」

賢者「全力で叩きのめすまでだ!」

商人「なに繋ぎ台詞にしてるんですか身の毛がよだつんでやめてください」

賢者「お前は前世で俺と何があったんだよ!!」

勇者「うーんストレッチ終わり。さぁ行こう」

盗賊「お前の方は大丈夫なのか。魔王にトドメをさせる覚悟はあるのか」

勇者「ありがとう。うん大丈夫。そのときはそのとき考えるから」

賢者「覚悟の余地すらねえじゃねえか!!」

――

<コックピット内>

商人「……出力安定。全ての動作環境に異常なし」

盗賊「魔力走査正常。機体視野良好。索敵環境異常なし」

賢者「俺、異常なし」

勇者「完璧! じゃ行こっか」

盗賊「これに乗るのも今日が最後だ。なにか勇者から一言ないか?」

勇者「ええなにそれ。急に思いつかない。商人にパス」

商人「盗賊さんにパスします」

盗賊「なぜ提案者が受けねばらなんのだ。賢者にパスだ」

賢者「来ると思ったぜ! んんっん、えーこのたび勇者ロボは」

商人「トベルーラセーフティ、解除!」

盗賊「天候・快晴! 上空に障害なし!」

商人「勇者様、いつでも発進okです。お手元のボタンを!」

勇者「勇者ロボ発進!」ポチッ  ゴゴゴゴゴゴ  賢者「 」  ゴウゥーーーンン……

   

――

<魔王城>

側近「魔王様。全ての準備が整いました」

魔王「召集した同胞たちは?」

側近「行方不明の者もいますが、大半はすでに魔界に帰還しました」

魔王「では、この城にいる我が軍は、もはや余とお前を残すのみということだな」

側近「はっ」

魔王「ごくろうだった。では参ろう。秘法の陣とやらがあるのは、地下であったか」

側近「……魔王様」

魔王「お前も余のためによく働いてくれた。急ぎ魔界へ戻れ」

側近「……はっ。魔王様なら、必ずや勇者の奴めを討ち果たすことができましょう」

魔王「失言か? 余を何者と心得る」

側近「大変失礼つかまつりました。では、どうか御武運を」

魔王「うむ……――」

――

<魔大陸・岩石地帯>

将軍「……生き残った魔物は、全て城に引き上げたらしい」

参謀「よしよし、それでいい。我らの動きを知る者は、限りなく少ない方が良い」

将軍「今回の作戦は極秘裏にという話だが、本当に我々二人だけで大丈夫なのか?」

参謀「大丈夫だ。言った筈だ、あの兵器はまだ未解明な部分も多いが――」

参謀「主因となるタネさえ割れてしまえば、恐るるに足らん」

参謀「我々だけで勇者ロボを奪取できれば、全ては望むままよ」

将軍「うむ、何とも魅力的な話だ。魔王様も大いに喜ばれよう」

参謀(ククク、頭の回らぬ奴め。これだけの力を目の前に、未だ忠臣を気取るとは)

参謀(あの兵器さえ手に入れば、お前も用済みだ。世を支配するのはこの参謀!)

参謀(新しい時代を創るのは魔王ではないっ!)

将軍「……むっ!」

将軍「来たぞ!!」

参謀「! よ、よし、手はず通り動くぞ! 急げ!!」

<コックピット内>

商人『魔大陸に到着しました』

勇者「えっもう」

商人『急行で所要時間10分強ってところですか。もう少し縮めそうですね』

賢者『そのうち生身ではルーラ要らずになってmp節約になる……わけなかったコレ俺のmpで飛んでるんだった』

盗賊『妙だな。やけに静かだ。敵の本拠地だというのに、敵性反応がまるでない……』

勇者『あ、もしかして本当に引き上げてくれたのかも』

商人『魔王城を破壊する前に、一応敵がいないかどうか確認しておきましょうか』

勇者『どうやって』

商人『魔法のボタンがあるのです。えい』ポチッ

*「「「誰かいないのかああっ! 誰かああぁっ!!」」」

勇者『なにこの大きい声っ』

賢者『ぷっ、なんだこれ。勇者ロボって随分マヌケな声出すんだなー!』

*「「「そ、その声商人か! もういい、下ろしてくれ! 頼む、何でもするから!!」」」

賢者『!?』   商人『おっと』ポチッ

<勇者ロボ足元>

将軍(な、なんだ? 地鳴りのような声……)

将軍(いや待て落ち着け、『誰かいないかー』ということはつまり)

将軍(やはり私の位置がバレていないのだ)

将軍(よしいいぞ、参謀の作戦はうまくいっている!)



~回想~



参謀「――マホトラだと!?」

将軍「いかにも。あの兵器に握られたまま、私は強烈なマホトラを受けた」

将軍「私の魔力は果て、完全に無力化された。おかげでルーラも使えず、走ってここに来る羽目になった」

参謀「ふむ……どうやら私の推察は間違っていなかったようだ」

将軍「なに?」

参謀「奴の情報をまとめ、その行動を追究しているうちに、ある一つの結論が導かれたのだ」

将軍「そ、それはっ?」

参謀「魔力依存だ。つまり維持から攻撃まで、全ての動力を魔力で補っているのだ」

将軍「なるほど、そういうことだったのか。ならばマホトーンで封じ込めてしまえば!」

参謀「いや、さすがにあの規模だ。生身で放つマホトーンやマホカンタなどは無力であろう」

将軍「ううむ、ではどうすれば」

参謀「うむ。全ての動力を魔力で、ということは、周囲索敵にも魔力が関与しているとみて間違いない」

参謀「それならば、奴らに気付かれずにまとわり付く方法がある」

将軍「そ、それはっ?」

参謀「呪文封じ。引いては魔力を一時的に無効化する呪文……マホトーンだ」

将軍「マホトーン? それは今しがた無力だと……」

参謀「待て、慌てるな。マホトーンをかけるのはあの兵器ではない。我々にだ」

将軍「! な、なるほど。しかし危険な賭けだ。そこまでしなければ奴に近づけないものなのか?」

将軍「あの巨体だ、奴の死角を狙えば……」

参謀「私も最初は同じことを思ったが、どうも奴の動きを研究すると」

参謀「奴は前後左右、周囲一帯すべてを把握、補足しているような動きがあるのだ」

参謀「例え……スライム一匹でさえも!」  将軍「むう手強い!」

将軍「マホトーンの件は分かった。魔力が使えなくなるのは痛いが、致し方ないとしよう」

将軍「しかし仮に勇者ロボに近づけたとしてどうするのだ? あの巨体にどう立ち向かう」

参謀「いや、我々の目的は兵器の破壊ではなく、奪取だ。できれば傷一つ付けずに奪いたい」

将軍「当てはあるのか?」

参謀「情報によれば、中にいる人間は、どうもあの兵器の脚部から乗り込んでいるらしい」

参謀「つまりあの足の部分に、中へ出入りする秘密があると見て間違いない」

将軍「ほう」

参謀「将軍には、あの足元をくまなく調査して欲しいのだ。そしてあわよくば」

将軍「内部に侵入し、あの兵器を操っている人間を皆殺しにする、と」

参謀「半殺しにとどめてもらいたい。兵器に関する全ての情報を聞き出すためにな」

将軍「さあな、それは保証できぬ。彼奴らから受けたあの屈辱! 理性が抑えられぬやもしれぬ」

参謀「ふっ、まあその辺りは任せよう。なに、兵器の解明などお手の物だ」

将軍「お前はどうするのだ?」

参謀「状況をみて、臨機応変に指示を出させてもらう。工作作戦には必要な役回りだからな」

将軍「なるほどわかった――」 ――――

――――――――――――――

<勇者ロボ足元>

 ズシーン    ズシーン



将軍(……とはいうものの)

将軍(外から見る限りでは、特に出入り口のようなものは見られないが……)

将軍(やはり近づいてみるしかないのか。次の歩行動作が終わった時だな)

将軍(くそっ、魔力が使えれば楽に飛び回れるのに……魔封じ状態のなんと不便なことよ)

将軍(お)

  ズシーン
 
将軍(止まった! チャンス到来!!)

将軍(そのまま動くなよ……動くなよ……よし右足に到着!)

将軍(どれどれ……こ、この材質はオリハルコン合金!? 全身にか!?)

将軍(ふーむ……表面で魔力が脈打っている……奴らめよくもこんなものを)

将軍(……右足から入れそうなところは無いようだな。左足にも向かうとしよう……)

将軍(――結局右足にも左足にも、入れそうな場所はなかったか)

将軍(とりあえず参謀に合図を送ろう)

将軍(とうっ!)

将軍(よし伝わったな。あとは向こうの指示を待つだけ……ん?)

 ズ ズ ズ ……

将軍(まずい動き出した! 急いで離れぐわっ)

将軍(し、しまった! 私としたことが足をくじいてしまった! 普段魔力で飛び回っていたがために!)

将軍(このままではまずい、急いで足を治)

しかし じゅもんは ふうじられている!

将軍(せない! うおうこれは! このままではまずい!!)

将軍(参謀! 参謀!? 参謀がいない!!)

将軍(どういうことだ! どこにいった!!)

 ズシーン  ズシーン

将軍「こここんなふざけた最期があってたまるか! おい参謀! 参謀ーっ!!」

 ズ ズ ズ ズ          将軍「うおおおおおおーっ!?」

参謀(む。将軍からの合図……やはり脚部に出入り口はなかったか)

参謀(ならば将軍はお払い箱だな。この私が本命の位置を攻め、奪取は完了だ!)

参謀(秘蔵のアイテム……『まふうじのつえ』を装備!)

参謀(更に『そらとぶくつ』を装備!)

参謀「とうっ!」

参謀は おおぞらに たかく まいあがった! ▼

参謀(将軍に命じた脚部検証は、念押しに過ぎぬ)

参謀(万一脚部から中へと侵入できるようだったら幸運、程度のな)

参謀(そもそも出入りが完了した扉に、カギをかけぬうつけがいるか?)

参謀(少し考えれば分かることをあの将軍めククク愚かな)

参謀(奴には伏せていた調査……その結果! もっとも魔力が集中している部分は……胸部!)

参謀(おそらく奴ら、あの中から兵器を操っているのだ)

参謀(あの胸部回りでもっとも装甲の薄い部分を狙い……この杖で突く!)

参謀(この強化された魔封じの杖があれば、魔力をまとっているものなら大抵の物は貫けるのだ!)

参謀(弱点は肩の後ろの二つの肩当ての真ん中にある宝石の下の装飾の右! ククク覚悟しろ!!)

<コックピット内>

盗賊『うーむ妙だ。いくら待っても敵性反応なし。故障か?』

商人『勇者ロボは故障しません』

勇者「じゃあやっぱりみんな魔界に帰っちゃったんだよ。めでたしめでたし」

賢者『不戦勝……この世でもっとも優雅な勝ち方なんだぜ!』

盗賊『下衆ザルが』   賢者『黙れ青白ネズミ』

勇者「下衆ザルの方が強そう」

商人『では魔王城に向かいましょう。勇者様、念のため慎重に歩行でお願いします』

勇者「分かった」

ズシーン  ズシーン  ズシーン

盗賊『奴らめ、どこかに潜んではないだろうな』ズシーン

賢者『もし不意打ち受けたらお前のせいな!』ズシーン

勇者「けんかはやめようよ」ズシーン

ズシーン  ズシーン  ズシーン

                    エビル将軍を たおした! ▼

盗賊『!? 待て!』

勇者「どうしたの?」 ズ シ ー ンン

盗賊『強力な魔力を察知した! なんだこの規模は!?』

商人『ただちにに警戒態勢に移行。勇者様、伝説ソードと伝説シールドを』

勇者「伝説シールドが初めて日の目を!」ポチッ
   
    参謀の こうげき!
    ミス! 勇者ロボに ダメージを あたえられない!▼
    参謀「な、何だと!?」
   
勇者ロボは 伝説ソードをぬきはなった!    ▼

    参謀「あっー!」
    参謀を たおした!  ▼

勇者ロボは 伝説シールドをとりだした!   ▼

勇者「おー。伝説シールドもかっこいいなぁ」

商人『でしょう。地味に十字のデザイン部分も意匠を凝らしているのですよ』

盗賊『膨大な魔力がこの魔王城より噴出している! なおも増大中だ!』

賢者『ああ! なんか新呪文おぼえた! なんでだぜ!?』

商人『む。皆さん、正面の魔王城をご覧下さい』

勇者「あっ」  盗賊『うお』  賢者『うお。くそ、ハモった!』


魔王城が ごうおんとともに くずれさっていく!  ▼


勇者「あれれれお城が」

賢者『やりぃ自滅乙!!』

盗賊『どういうことだ? 自決したのか?』

商人『もう少し様子をみましょう。あ、ほら』


なんと! くずれた魔王城から きょだいなまものがあらわれた!  ▼


  巨大化魔王「ごおおおおおおおおっ!!」


賢者『やべえええええっ!!』

勇者「おおー」  盗賊『おおおっ』  商人『ほー』

賢者『なんでお前らはそこで感心できるんだよ!!』

魔王「おおお……これが……これが古より伝わる秘法……『巨大化』!!」
 
魔王「ぬうう……余の……余の身体が……あふれていく……!!」

魔王「ぐおおおおおおおっ!」



賢者『ちょ……待て、まだアレでかくなるのか!?』

勇者「うへえ」

盗賊『魔王軍め……まだこんなものを隠していたとは』

商人『やはりデータにないモンスターですね。ということは恐らくあれが――』

勇者「魔王!」

賢者『あ! 止まった! でかくなるの止まったぞおい!』

盗賊『見れば分かることをいちいち喜ぶな犬者』

賢者『お前いまバカにしただろ! お前が素直に俺のことを「けんじゃ」って呼ぶはずがねえ!』

商人『計測完了。全長120.5mですか。勇者ロボの倍以上ありますねえ』

盗賊『どうするのだ、勇者よ』

勇者「世の中が平和にはなりそうにないよね。あれ放っておいたら。 戦うよ!」

魔王がんばれ

そのうちガンバスター追い抜くサイズのが出てきそうだな







昔の戦隊ものかよw

最近の戦隊ものも巨大化するよ!

れっつもーふぃん!!

おおこっちに来てたのか今更気付いた

魔王「……おお……巨大化が収まったか……」

魔王「何という高みよ。これが秘法の為せる景色か……ふん!」

魔王は しゅとうを はなった!
すさまじい ごうおんが なりひびく!
はげしい しょうげきが だいちを きりさいた!  ▼

だいちに ふかい きずあとが あたえられた!!  ▼

魔王「……なるほど。先代たちが憚ったのも頷ける。もう以前の姿に戻れぬのは元より」

魔王「これほどの力を有していては、魔族の住まいもろとも世界を滅ぼしかねんからな」

魔王「一世一代の秘法……負うものも安からぬというわけか」

魔王「だが構わぬ」

魔王「これで我ら魔族の威信が守れるのならば!」

魔王「敵は眼前の勇者ただ一人! 人間どもめ、最期の刻を謳歌せよ!!」

魔王「おおおオオオォッ!!」



盗賊『始まるぞ!』

勇者「正々堂々と試合開始っ!」

魔王は しゅとうを はなった!  ▼

賢者『おい! いきなりさっきの来た!』

勇者「大丈夫盾で防ぐから。大丈夫だよね」

商人『分かりませんが自信はあります』

勇者ロボは たてを かまえた!   ▼
しゅとうの しょうげきはは うけとめられた!  ▼
勇者ロボは ダメージを うけない!  ▼

盗賊『お美事!』

商人『なんといっても史上最強の盾。守れないものは賢者の冷めた言動くらいです』

賢者『意味が分からん!』

魔王は こごえるふぶきを はいた! ▼

商人『ほら魔王もそうだと言わんばかりの凍える吹雪』

賢者『何もかもが驚くほど関係ねえよ!』

しかし 勇者ロボには きかなかった! ▼

勇者「ヒャド系呪文は受け付けないんだよね」

盗賊『よし、一気に反撃に出るぞっ』

商人『勇者様、この距離を維持するなら呪文しか届きませんが』

勇者「まずは守りを固めたいんだけど」

賢者『スカラか? スカラはね……いいよ……すごく』

盗賊『しかしオリハルコン合金だぞ? これ以上守備力は上がるのか?』

商人『さすが盗賊さんいえ真の賢者さん。すでに守りは最大値なのでスカラは無効です』

賢者『スカラだけに効果はスカってk』  盗賊『消滅しろ』

勇者「じゃあ攻撃力を上げることは」

賢者『バイキルトか? バイキルトは好きじゃない俺が活躍できないから』

商人『有効ですよバイキルト。セーフティ解きます』

賢者『はいはい結局世の中そうなってるんだろ分かってんだ俺は』

盗賊『お前が口を開くのは呪文を唱えるときだけでいい』

賢者『てめぇ何様だ!』   盗賊『王様だ少なくとも貴様に対しては』

魔王は しゃくねつを はいた! ▼

しかし 勇者ロボには きかなかった! ▼

勇者「ほら早くして」   賢者『畜生どいつもこいつも!』

勇者ロボは バイキルトを となえた! ▼
勇者ロボの こうげきりょくが 2ばいになった! ▼

商人『勇者様、お次は?』

勇者「少し場所を変えようかな。もっと動きやすそうな地点へ移動」ズシーン ズシーン

盗賊『この間合いなら魔王城もろとも大呪文で粉砕できるぞ』

勇者「うーん。でも、あの中に生き残った魔物がたくさんいたりしたら、ちょっと後味悪いし」

賢者『甘っちょろ過ぎるぜ勇者! 今が魔王軍を叩き潰す絶好チャンスじゃんかよ!』

商人『リーダーは勇者様であって、貴方のようなエンジンではありません。エンジンは喋りません』

賢者『そこまで俺をエンジン呼ばわりする奴なんてお前が初めて!』

盗賊『だまれサル』  賢者『サルも!』



魔王(ぬう……この距離では何も通じぬようだ……)

魔王(にも関わらず見と来るか。何か攻撃できぬ理由でもあるのか?)

魔王(しかし先ほど見えた光は強化呪文! 戦意はありとみえる)

魔王(ならば! 余自ら仕掛ける!) ズズズ……

魔王は もうぜんと かけだし きょりを つめた! ▼

盗賊『接近してきたぞ! 速い!』

賢者『で、でけぇ! 全高はこっちの倍以上あるんじゃないか!?』

商人『既出情報ですよ人の話を聞かない超愚者さん。ではどうされますか勇者様』

勇者「あれ勢いついてるから飛んでかわそう」

勇者ロボは そらたかく まいあがった! ▼


魔王「ぬっ!?」

魔王の こうげき! ▼
しかし 勇者ロボには あたらなかった! ▼

魔王「愚かな。格好の的よ!」

魔王は しゅとうを はなった! ▼
しゅとうのしょうげきはは 勇者ロボに めいちゅうした! ▼

賢者『うわああああっ!』

勇者「みんな大丈夫だよね」  盗賊『何ともない』  商人『平気です』

賢者『うわああああって言ってるのに!!』

魔王「ふん! ぬん!」

魔王は しゅとうをはなった!
魔王は しゅとうをはなった!
魔王は しゅとうをはなった!

勇者ロボに かくじつな ダメージ!

賢者『うわあああああああ 何とかしろ(冷静』

商人『ちょっとまずい感じですね』

盗賊『このまま空中にいては不利だ!』

勇者「ちゃんと飛んだ理由はあるよ。ね、商人」

商人『分かりました』

勇者ロボは 魔王にめがけて らっかした! ▼

魔王「ようやく墜ちたか……いや! 狙いは余か!?」

勇者ロボは 伝説ソードを 上段に かまえた! ▼

勇者「いけえっ」

勇者ロボの こうげき! ▼

かいしんの いちげき!! ▼

魔王「うおあああアアアっ!!」

魔王に ダメージを あたえた! ▼

賢者『やったッ! 勝ったッ! 仕止めたッ』

商人『まだなので黙っててください永遠に』

盗賊『バイキルトをかけた伝説ソードで会心の一撃! 致命傷だろう』

勇者「とりあえず剣を抜こう」



勇者ロボは 伝説ソードをひきぬき きょりをとった!

くろい ちしぶきが ふきあがり だいちをそめていく!

魔王「ぐ……おお……」

魔王「が……ま……」

魔王「まだ終わらぬわ!!」

魔王は バギクロスを となえた! ▼

あたりに きょだいな れっぷうが まきおこった! ▼

勇者「うわあっ」  賢者『←もっと緊張感ある声で言えよ!』

勇者ロボは バギクロスの うずに とじこめられた! ▼

賢者『\や べ え/』

盗賊『くっ、逃げ場がなくなったぞ!』

商人『心配ゴム用。勇者ロボにバギ系呪文など、チャラへっちゃらなのです』

勇者「待って、魔王の姿が竜巻でみえない」

賢者『おい! オレの考えだとたぶん不意打ちくる!』

商人『盗賊さん』

盗賊『大丈夫、確かに奴は動いてはいるが、ちゃんと位置は補足したままだ!』

勇者「ちょっとあれ。嵐に混じって何かうわあっ」


勇者ロボは ダメージを うけた! ▼


盗賊『何事だ!? 奴とはまだ距離を保ったままだぞ!』

商人『先ほど見た手刀の衝撃波のようです。バギクロスの合間を縫って飛んできてます』

賢者『あの野郎図体でかいくせにコスい事しやがる!』

勇者「でもこれつまり魔王も必死ってことだよね」

勇者ロボは ダメージを うけた! ▼
勇者ロボは ダメージを うけた! ▼
勇者ロボは 伝説シールドを かまえた! ▼

賢者『おいおいまずいんじゃねえの!?』

商人『うーん後手後手。衝撃波の軌道が読めませんねーうまいことバギクロスに紛れて』

盗賊『!? おい、魔王の反応が消えたぞ!?』

勇者「待って。風に乗ってなんか黒いのが混じってる」

賢者『なんか黒いのが混じってる、って何故かいやらしく聞こえる不思議!』

商人『手刀の衝撃波が止みましたね』

盗賊『す、すまない! 先ほど反応が消えたといったがそうではなかった!』

盗賊『勇者ロボとポイント表示が重なっていた! 奴はおそらく地中か――』

賢者『上から来るぞ! 気をつけろ!!』

勇者「黒いのの正体は魔王の血だったんだっ」

 ズ ズ ズ ズ ズ ズ  ズ

魔王「魔王が策を弄するなど末代の恥だが、敗北のそれには及ばぬ! この魔王容赦せん!!」

魔王は そらから おそいかかった! ▼

賢者『うおああああでかいの降ってきた!』

盗賊『このままでは直撃するぞ!』

商人『しかしこの嵐と衝撃波で体勢が崩れてます。今からかわすのは不可能です』

勇者「大呪文で迎撃しよう。商人、賢者のセーフティを解いて」

商人『それは構いませんが、大呪文だと恐らく発動まで間に合いません』

盗賊『何か中級の呪文で間に合わせろ!』

賢者『えっ俺!? 何だ、何唱えればいい!?』

勇者「おまかせ」  商人『急いで』  盗賊『早く!!』

賢者『うわあああ中級呪文でいんだろ!?』

賢者『ベギラマ――ッ!!!!』

勇者ロボは ベギラマを となえた! ▼

魔王「ぬうっ!? は、速い!!」

魔王「ぐおおおおおおっ!!」

魔王は ほのおに めがくらんだ! ▼

魔王の こうげきは はずれた!! ▼

ズズズ ズシィイイ  イ   イン ……

魔王「ぐううっ」



盗賊『嵐が止んだ! この機を逃すな!』

賢者『値千金のチャンス到来!』

商人『今です勇者様っ』

勇者「えーいっ」



勇者ロボは 伝説ソードを 大上段にかまえた!

勇者ロボの こうげき! ▼

かいしんの いちげき! ▼


魔王「ぐわああああああああああっ!!!!」



魔王は たおれた! ▼

盗賊『……終わったのか?』

商人『やりましたか』

賢者『やったか』

勇者『やった』



賢者『勝ったぜえええええ! ヒョオオーッ!!』

盗賊『これで世界は救われた。勇者よ、感謝する』

賢者『これで心置きなくトイレに行ける!』  盗賊『帰れ』

商人『……旅立ちから約三日間。長い旅路でしたね』

勇者「うん」

商人『勇者様、どうかしましたか?』

勇者「いや。なんでもな――」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

賢者『ウェイ!?』

すさまじい じなりが たいりくを ゆるがす! ▼

勇者「な。なんなの」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

盗賊『魔王を倒した影響か?』 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

賢者『これ描写音じゃなくて実際の音だよな!』 ゴゴゴゴゴゴ

商人『何かやばい感じです。いったん空へ飛びましょう』 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

商人『勇者様?』 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「あ。うん」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 勇者「魔王」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



――【上空10km】

賢者『へへ、ここまでくればもう安心だぜ』

盗賊『魔大陸の終焉か……では、我々も城へ帰ろう』

商人「……。…………いえ。待って下さい」  勇者「うん、あれはっ」

魔王城から きょだいな なにかが ふくらみでていく! ▼

盗賊『何だアレは!? ……敵性反応だと!?』

賢者『おいおい、冗談だろォ?』

商人『これは……先の魔王よりもサイズが大きいようです』

勇者「うわわ大きい」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

*「私の時代が……」

*「開闢を迎える……!!」

魔王城から きょだいな まものが あらわれた! ▼

*「創世の刻だ!!」

側近 あらため 大魔王が あらわれた! ▼



賢者『な……なんだよこれっ』

賢者『お……終わったはずだろっ……もう……こんなことは……!!』

盗賊『絶句だ』  商人『規格外ですね』  勇者「大きいから大魔王だっ」

大魔王「……秘法には、まだ『先』があったッ!」

大魔王「魔王様……いや魔王に行使した術は、秘法のほんの一部に過ぎなかった!」

大魔王「私が一晩で完成に至らしめた術式! これこそが古より伝わる本物の秘法だったのだ!」

大魔王「巨大化規模はもとより、本来の姿に戻ることも意のままよ!」

大魔王「魔王には勇者を消耗させるという大役を果たしてもらった……結構なことだ!」

大魔王「これであの弱った勇者を屠れば、もはや私に楯突く存在もなくなる!」

大魔王「ハハハッ! 無敵だっ! これで世界は私のものになったも同然だっ!!」



商人『計測完了。全高約600m。加えて有翼種ですね、翼開長は1km強ですか』

賢者『ここは一旦退くべき!』

盗賊『言ったはずだ、お前のわがままは一厘も通さん」

賢者『ちがーう俺はトイレに行きたいだけなんだよ!!』

商人『どうしますか勇者様』

勇者「やるよ」

勇者「最終決戦だっ」

ここまで。次回更新で最終回
おやすみ

乙乙

もう見てる人いないだろうけど 最後の更新までもうちょっと待ってね

私待つわ

あげとこう


大魔王「ふん。あれが勇者。あの豆粒風情が、ここ数日脅威だった勇者だと」

大魔王「笑止! あれを潰すなど、赤子を殺すより楽な作業よ!」

大魔王「そおらこれで終わりだ!」

大魔王は メラミを となえた! ▼



賢者『おいおいおいヤバイの飛んできたっ!』

盗賊『あ、あれがメラミだと? 勇者ロボと同サイズではないか!』

商人『地表から離脱しましょう』

勇者「飛ぶよ」

勇者ロボは そらたかく とびあがった! ▼

このよのものとは おもえぬ ほのおのあらしが

魔大陸を おおいつくす! 


                               ▼

商人『――標高8km安定』

盗賊『大陸の半分が……あまりの高熱にえぐられ……陥没している……!』

賢者『あばばばあんなメラミがあるか! 世界の終わりが来たんだ今日!!』

勇者「商人、あれに勝てる見込みは」

商人『模擬データで算出すると、絶望的にまで低いようです』

盗賊『もはやここまでか』

賢者『ま、待て……待てよ……ノゥバディウィンズ……バットアイ……』

勇者「でもさ。勝てる可能性が低いってことはつまり」

勇者「ゼロじゃない」

賢者『しょ、正気か!? あんなの一撃でダメージ500万くらい喰らっちまうぞ!!』

盗賊『……本気であれとやりあう覚悟なら、鬼になるしかないな』

商人『そうですね。あの大魔王を負かしましょう。蹴落としましょう。躓いたところを踏み潰しましょう』

商人『ドブに落ちたところを棒で沈めましょう。開いたキズ口に塩をすり込んでやりましょう』

商人『勝ち残るとはそういうことです』

勇者「わかった」   賢者『あーんもうよく分からん!!』

大魔王「空に逃れたか? 愚かな。どうやら知らぬようだな」

大魔王「大魔王からは逃げられない……!!」


大魔王は つばさをひろげた! ▼
大魔王は そらたかく とびあがった! ▼


盗賊『飛んだ! こちらに向かってくるぞ!!』

賢者『大魔王いい加減にしろ!』

商人『悔しいながら結構なスピード。通常の飛行モードでは振り切れません』

盗賊『ルーラで離脱することは?』

商人『それならば可能です。いったん引き返しますか』

賢者『→はい! →はい!!』

勇者「→いいえ。逃げてる間に、他のお城や町が襲われちゃうかも」

盗賊『迎え撃つ気か! しかしどうやって……!』

勇者『賢者、君の出番だよ』

賢者『→はいいいえっ!?』

商人『なるほど。地表から離れた今、気兼ねなく大呪文が使えるというわけですね』

勇者「そうそう。これで大陸に残っている魔物を気にせず戦えるよね」

賢者『バッおまっ、まだンなことを!』

盗賊『この局面に至ってまで、なお敵に情けをかけるか』

勇者「だって大魔王が出たところで、この勇者ロボと、普通の魔物のサイズは変わらないでしょ」

盗賊『ふっ……はは。その通りだ』

賢者『おいおい待て待て正気か!? だってよ……大魔王なんだぜ?』

商人『はい、リミッター解いたんでとっとと腹くくってください』

勇者「逃げちゃダメだよ。逃げちゃダメだよ。逃げちゃダメだよ」

賢者『どうしてこうなった!』

商人『準備が整いました』

商人『勇者様はメイン操縦と特殊指示。盗賊さんは引き続き索敵・標的補足など』

商人『エンジンは呪文とエンジン』   賢者『おめばhすhそじgふじおkp』

商人『私は残りの全ての担当をバックアップします』

盗賊『了解だ!』   勇者「よし、行こうっ」

【上空】

大魔王「おお……素晴らしい! 映える大地、沈みゆく陽、鮮やかに照り返す海!」

大魔王「今日をもってこの景色は私のものとなったのだ!」

大魔王「この大空さえも! もはやたかが虫ケラ一匹、些事の極みよ!」

大魔王「……だが! それでも! 着けねばならぬケジメがある!!」


大魔王は 勇者ロボのまえに たちはだかった! ▼


勇者「!」

大魔王「……勇者よ。貴様には一片の存在価値も無い」

大魔王「降伏すら許さん……死ね!」

大魔王は メラゾーマを となえた! ▼

勇者「賢者早く」

賢者『分かっとるがな!』

勇者ロボは マホカンタを となえた! ▼
勇者ロボのまえに かがやく ひかりのカベが あらわれた! ▼
さらに 勇者ロボは たてを かまえた! ▼

きょだいな ほのおのやまが 勇者ロボに ふりそそぐ! ▼

賢者『うわああああっついいいいいいっ!』

勇者「熱くないよ」  賢者『賢者君あついって言ってないじゃないか!』

盗賊『し、しかしこの高熱……さすがの勇者ロボももたないかもな』

商人『勇者ロボの表面温度は200万まで保証しますよ』

商人『に加えて、魔法反射機能も発動しましたから怖いことはありません』

賢者『機能じゃねえ俺だ!』

ひかりのカベが 呪文を はねかえした! ▼

大魔王「何っ」

きょだいな ほのおのかたまりが 大魔王に はねかえる! ▼
大魔王に ダメージを あたえた! ▼

大魔王「クッ。くだらん真似を……」


賢者『覚えておくんだな。これがマホカンタだ……!!』

勇者「お調子者なんだから」

盗賊『よし一気に攻勢に出ろ!』

賢者『これが俺のプライドをずたずたにした分!』

 勇者ロボは バギクロスを となえた! ▼

 だいちをふきとばす きょだいなたつまきが 大魔王におそいかかる!! ▼

賢者『これがいま猛烈にトイレに行きたい気分を紛らわせてる分!!』

 勇者ロボは ベギラゴンを となえた! ▼

 だいちを なぎはらう じごくのかえんが 大魔王をのみこむ!! ▼

賢者『そしてこれが……これが俺の全ての怒りの分だっ! 大魔王、貴様は俺の……!!』

 勇者ロボは イオナズンを となえた! ▼

 まばゆいひかりが 大魔王をつつみこむ!! ▼


 たいきをつんざく だいばくはつ!! ▼


賢者『ハァ……ハァ……や、やったか?』

商人『↑やっていません。よね盗賊さん』

盗賊『反応消滅せず! 大魔王は健在だっ!』

勇者「長丁場になりそうだね。気を引き締めなきゃ」


大魔王「……フン。多少は効いたぞ。柱のカドに頭をぶつけたといったところか」

大魔王「なるほど山ひとつ破壊する威力だ。呪文は得手のようだな」

大魔王「しかしあの小さな体躯に、これほどの魔力を秘めていたとは……」

大魔王「そうだな……少しは考えを改めてやってもよいか……」



商人『……おや? 様子がヘンですね』

勇者「急に動きが止まったね」

盗賊『なんだ? 奴はなぜ攻撃してこないのだ?』

賢者『…………一時撤退しよう』

盗賊『貴様が寝言を言うことは許さん、寝たとしてもな』

商人『ネタとしてはいいではありませんか。一応は聞いてみましょう賢者様々の考えを』

賢者『……もう限界なんだ……頼む! トイレに行かせてくれ!!』

賢者『も れ そ う な ん だ よ ! ! 』

勇者「考えなんてどころじゃなかった」

賢者『お前ら分からんだろうがな! こちとら今日ロボに乗り込んでからな!』

賢者『一度も下ろされずもう嫌っっっつーほどエルフの飲み薬飲まされてんだよ!』

賢者『それでトイレに行きたくなることのどこが悪い!? 俺は悪くねぇっ!』

賢者『わ、悪いのは商人だ! 俺は悪くないぞ! なあ勇者、そうだろ!?』

盗賊『ここにいると馬鹿な発言に苛々させられる』

勇者「困ったな。いま一番大事なところなのにな」

商人『あの』

商人『断っておきますが』

商人『もし座席をそんなもので汚したら』

商人『直ちにそこのコックピット爆破します』

賢者『!?』

商人『勇者様、申し訳ありません。ここだけは譲れないんです』

商人『私の努力の結晶にそんな雪辱不能な蹂躙を受けるくらいなら、世界が滅びた方がましです』

賢者『なんてものを天秤にかけやがるんだっ!』

勇者「ええなにこれ困ったな」

盗賊『おい、そんなくだらんやりとりの間にも、大魔王がいつ攻撃してくるか!』

賢者『くだらんだと!? こっちは緊急事態なんだよ!!』

商人『余りに下種な想定過ぎて対策の余地がありませんでした』

勇者「でも最後の敵を前に逃げ出すわけにはいかないよ」

商人『コックピットが汚された時点で勇者ロボは終わりです』

盗賊『おいせめてあと10分我慢しろ!』

賢者『だ……ダメだ……』

賢者『も……限界……』    ポチッ



大魔王「よし……決めたぞ。勇者よ、聞こえているか?」

大魔王「惰弱ながらその魔力に免じて、貴様が唯一生き残る機会を与えてやろう!」

大魔王「貴様が――私に永遠の服従を誓うのであれば、我が配下に加えてやってもよい!」

大魔王「5秒だけ待ってやろう。それまでに確答がなければ今すぐ――」

ザッザッザ  賢者「」

大魔王「む?」

大魔王「ほう……貴様がそれを動かしていた本体か」

賢者「」 バッ バッ

大魔王「生身で私の前に現れるとは、すでに腹は決まっ……ん?」

大魔王「何をする気だ?」

賢者「   」  ――――





賢者『ふう……すっきりしたぜ! すまん、待たせたな!』

勇者「頭へのリレミトボタンがここにきて役に立ったね」

盗賊『……ああ……』

商人『…………………………………………』

賢者『な、なんだよ、ちゃんと海に向けたって! ロボにはかかってねーから!』

商人『…………………………………………勇者様』

商人『最後の戦いです! 気を引き締めていきましょう!』

勇者「なかったコトにっ」

大魔王「……私は、いま何をされたのだ?」

大魔王「おそらく魔族史上最大の侮辱を受けたように……見えたが」

大魔王「勇者」

大魔王「  」

大魔王「ゆ 勇  ユウウウゥゥゥwryyyyyyyyyyyyy」



勇者「ほら怒らせちゃった。ちぇっ賢者が悪いのに」

賢者『いやあまあ』

盗賊『お前はもはや歩く死罪だ』

商人『皆さん何のことを話しているのか存じませんが大魔王が本気です』

勇者「装備を整えよう」

勇者ロボは 伝説ソードを 引きぬいた! ▼

勇者ロボは 伝説シールドを かまえた! ▼

盗賊『策はあるのか?』

勇者「呪文が決定打にならない以上、直接こいつで斬ったり突いたりしてみるっ」

大魔王「この……この便所バエめがッ!」

賢者『あやっぱり俺のせいだ!』

盗賊『速いぞ!』

大魔王のこうげき! ▼

勇者「うわ避けて」

商人『体格差がありすぎます、これは無理です』


勇者ロボに 大ダメージ! ▼
勇者ロボは さらなる 上空へ ふきとばされた! ▼


勇者「わあああ」  賢者『ぬわああああああっ!!』

盗賊『い、いかん! 体勢を持ち直せ!』

商人『予測より損傷大。が、まだいけます』

勇者「もちろん反撃するよ。スピードを上げてまとわりつくんだ」

賢者『スピード上げると俺のmpすごい速さで減っちゃうううう!』

盗賊『飲め! あるだけ飲め!』


大魔王「勇者ァッ!!」

大魔王は イオナズンを となえた! ▼

天から降り注ぐものが 世界を滅ぼす! ▼


大魔王「おのれ勇者ァッ! どこへ消えたァッ!!」

大魔王「傷つけられたプライドは、10倍にして返してやるッ!!」


勇者ロボは ばくはつのなかから あらわれた! ▼



勇者「いまだっ」

大魔王「なっ!? 後ろ――」

勇者「伝説ソード・ファイナルアタック!」

勇者ロボの こうげき! ▼
大魔王に 50のダメージ! ▼

勇者「あれ」

大魔王「効かんなアァ~ッ!!」

大魔王「落ちろカトンボ!」

大魔王のこうげき! ▼


盗賊『勇者ロボのスピードを甘くみるなよっ!』

勇者ロボは ひらりと みをかわした! ▼


勇者「ねえ、伝説ソードってどんなものでも一刀両断にって」

商人『それはあくまで、これまで現存していたデータによる謳い文句です』

商人『この相手は体積・質量が常軌を逸しています……が、見てください』ピッ

賢者『出てきたのは拡大映像!』

盗賊『おお、これは……さきほど剣で斬りつけたところか!』

商人『呪文での攻撃と違い、斬撃は確実な傷を与えています』

商人『つまり、決定打足りうるのです』

盗賊『なるほど。しかしどうやって会心の一撃を……』

勇者「待って。呪文は効くんでしょ。だったらいっそ――」

賢者『ん?』

大魔王「ええいウロチョロしおって!」

大魔王「!?」

勇者ロボは イオナズンを となえた! ▼

まばゆいひかりが 大魔王をつつみこむ! ▼


大魔王「馬鹿め、大魔王に同じ呪文は二度と通用せんっ! これはもはや常識!」


大魔王は ダメージを 受けない! ▼

ちょくご 勇者ロボが ばくはつのなかから あらわれた! ▼

商人『呪文が効かなかったのは想定外ながら、似たような手に引っかかるとは』

大魔王「後ろっ!? 呪文は布石か!!」

盗賊『本命はこっちだ! おい外すなよ』

賢者『逆に外せねえよ! えいくそ、本当にやるからな!』

勇者「いっちゃえっ」

勇者ロボは
        マダンテを
                 となえた! ▼


ぼうそうしたまりょくが 
                ばくはつをおこす!! ▼




 大魔王「うおわあああああああ!」

賢者『ぐわあああああああ!』

 大魔王「あああああああああっ!」

賢者『ああああああああっ!』

盗賊『お前は黙れ!』

賢者『く、苦し! 苦しいんだよ! どうなってんだ!』

商人『mpが枯れたからhpを吸い取ってるだけです』

賢者『なんだそれ初耳聞いてねえぞ!』

商人『細かいことはいいので、とっととエルフの飲み薬飲んでください』

勇者「大魔王は」

盗賊『魔大陸にたたき落とされたようだ! まだ息がある!』

勇者「やるなら今しかないっ」


賢者『やばい知らせだ! 今のでエルフの飲み薬が切れちまった!』

商人『何ですって。調達も楽じゃないのにどうしてくれるんですか』

賢者『飲めだのどうしてくれるだの、一体全体どうしろってんだよっ!』

勇者「これが最後のチャンスってことなんだね」

賢者『畜生もうヤケクソだ! ここまで来たら勝つしかねえ!』

盗賊『くっ……世の中で一番有害なバカは、補給なしで戦争に勝てると考えているバカだ!』

賢者『この状況で戦わないバカ者がいたぞ! 貴様だ!!』

盗賊『こいつ馬鹿だ!』

商人『静粛に!』

勇者「ねえ見て、大魔王がっ」



大魔王「がふっ……こ、これしきのことで……」

大魔王「た、立たねば……!」

大魔王「立ち上がらねば……!!」

大魔王は おもむろに おきあがろうとしている! ▼


大魔王(くっ……マダンテか……だが呪文では私は倒せぬ……)

大魔王(いかな手傷を受けようと、呪文の魔力では大魔王の致命にはならぬ!)

大魔王(それより勇者は……あそこか! 来る!!)

大魔王(ぐっ……い、いかん、空へ飛ばなければ……!)



盗賊『まずい! まだ距離があるのにヤツに気付かれた!』

商人『危機に瀕していることは自覚しているはず。空へ逃げる気です』

賢者『ど、どうする!? 一度止まって、もいっちょ呪文をかますか!?』

商人『それでは間に合いません』

盗賊『どのみち間に合わないぞっ! 勇者、どうするのだ!?』

勇者「……」

勇者「このまま」

勇者「このまま全速力で突っ込む」

勇者「この勢いのまま大魔王の首を狙って、それで終わりにするっ!」

商人『了解』  盗賊『……了解!』  賢者『エーイ了解イィ!』

大魔王は ベホマをとなえた! ▼
大魔王の キズが かいふくした! ▼

大魔王「やはりこれだけの巨体では全快には至らぬが……十分!」

大魔王「もはやマダンテには対処できる! ここを凌げば私の勝利だ!」


盗賊『だ、大魔王が回復した!? いかん、本当に間に合わんぞ!』

商人『この好機を逃すと絶望的です。どっかのエンジンが補給を絶ったせいで』

賢者『もう一発マダンテぶっぱなしてやろうか!?』

勇者「もう。あと」

勇者「少しなのに――」



大魔王「ハハハハ一手も二手も遅いぞ! そのような直線的な攻撃、当たるわけが」

ガッ

大魔王「!?」

 魔王「……ハァ……ハァ……」

大魔王「き、貴様!?」


大魔王「魔王!? 何のつもりだ!」

魔王「……ハァ……ハァ……」

魔王「無礼にあまる側近よ……頭の高さ、口の慎み、そして誇りをも忘れるとは……」

大魔王「貴様の役目は終わったはずだ! この亡者め、足を放せ!」

大魔王「こ、このままでは、貴様は散り際に勇者の肩を持つという、最大級の不名誉を被るぞ!」

魔王「魔族は! 勇者に敗れた! 此度の戦いの決着はもはやついたのだ!」

魔王「なにゆえか!? ――この余こそ、魔族を統べる唯一の王であるがためよ!!」

大魔王「貴様アアアァ!!」



盗賊『あ、あれは魔王!? 息絶えていなかったのか!』

商人『なぜ魔王が大魔王を……』

賢者『ウヒョー超ラッキー! スマートに漁夫の利といこうぜ!』

勇者「魔王」

勇者「魔王!」

魔王(急げ勇者……! むくろが動いたのだ……もうけものと思え!!)


大魔王「うぐおおおおおっ! は、放せ、放せえええっ!!」

魔王(勇者よ……)

魔王(貴様はそれほどの火力を有しながら、我々に時間を与えた)

魔王(おかげで大陸に住まう非力な雌、幼い魔物らは皆、無事に魔界へ避難することができた)

魔王(そして――余との戦いでも、我が居城を呪文で吹き飛ばすようなことはしなかった)

魔王(例え驕りゆえの情けだとしても……魔族の長としては、謝意を示さぬわけにもいくまい!)

大魔王「く、くそっ、こうなったら呪文を……」

魔王「フン!」 ゴシュ

大魔王「ぐおおああああっ! き、貴様ああああああっ!!」

魔王(さあ今だ勇者!)


盗賊『勇者!』  賢者『勇者様っ』  賢者『勇者、最後n』

勇者「いやああああっ!!」


勇者ロボの こうげき! ▼

会心 の 一 撃 ! ! ▼


大魔王「ぐわあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
 アアああああ首アアアあああああああああああアア爪爪アアあああああああ
 アアああああ首アア首あああアアアアアああああ指爪ああああ此あああああ
 アアアあああ首アア首あああああああああ手手手指爪爪腰ああ辺ああ脚ああ
 アアアアアアアアア首あああああああああ手手指指爪爪腰ああ股ああ部ああ
 アアアアアアアアアア背背背ああああああ手手指爪爪あ腰ああああああああああッ!!」


大魔王を たおした! ▼


賢者『首をズッパシいったぜ!!』

盗賊『……いかに巨体でも、首がちぎれて生きていられる生物はいない』

商人『周囲の瘴気も急速に薄まっています。断言して良いでしょう』

勇者「うん」

勇者「終わったんだ。今度こそ、本当に」

勇者「勇者ロボが世界を救ったんだっ」

賢者『いよっしゃああああああああああっ!!』

盗賊『ようやく……ようやく終わったのだな……』

商人『ええ。ああ、疲れた』


魔王「うっぐ……」 ボロ…

勇者「魔王っ」

賢者『な、なんでぇあいつ半死半生じゃねーか』

商人『今回彼の助力がなければ、勝利は厳しかったでしょう』

盗賊『魔王……なぜあやつは我々に助太刀するような真似を……』

勇者「魔王! 助けてくれてありが」



魔王「それ以上の侮辱は許さぬ!」

勇者「!」

魔王「此度の助力は、部下の不遜に余自らけじめをつけただけのこと!」

魔王「魔族は必ず、人間どもに巻き返しを図る! 努々覚悟しておくがよい!」

盗賊『な、何だと! 勇者よ、やはりこやつ今この場で』

勇者「必要ないよ」   盗賊『!?』

勇者「もう、魔王は」

魔王「……ふっ……」 ボロ…ボロ…


魔王「……不思議なものだ……」ボロボロ…

魔王「側近に出し抜かれても……宿敵を前に醜態を晒しても……」ボロボロ…

魔王「何の未練もない……余は王たる身命を賭し、遂げたのだ……!」ボロボロボロ

魔王「……勇者よっ!」 ボロボロボロボロ

魔王「さらばだ……!」



魔王は 灰となって 魔大陸にちらばった―― ▼



勇者「魔王……」

盗賊『……奴の部下は下郎ばかりだったが、奴だけは敵ながら立派な武人だったな」

商人『魔王軍が手強かったはずです。やはり軍の指導者はあれほどの器を持っていないと』

盗賊『う、む』

賢者『じゃあそろそろ帰ろうぜー! 俺もうハラペコザウルスだよ!!』

勇者「うん。そうだね」

勇者「胸を張って帰ろうっ」


――――――――――――――――――――

<玉座の間>

勇者「王様、ただいま戻りました」

王様「うむ。勇者よ、よくぞ魔王を討ち果たしてくれた」

王様「此度の活躍、見事であったぞ。そなたこそ真の勇者じゃ!」

勇者「お言葉ですが王様、魔王を倒せたのは仲間の力あってこそなのです」

王様「ほう、仲間とは」

勇者「ここにいる賢者と」

賢者「うおらエッヘン!」

勇者「盗賊と」

王様「うぉっほん!」

勇者「姫君のおかげです」

姫「あ。はい」

賢者「……」

賢者「あっはいっ!?」


賢者「どどどどういうことだなんだってばばばばば」

王様「うつくし草とエルフの飲み薬を調合すると、若返りの作用があるのじゃ」

姫「我が国ではエルフの飲み薬を大量に調達できるので、その研究も進んでいるのです」

勇者「へえそうだったの」

王様「勇者はいつから気付いていたのだ?」

勇者「最終日の途中。なんか王様っぽい台詞ばかり言うなあと思って。決め手は白髪」

王様「白髪!? 盗賊の髪は銀髪じゃ!!」

姫「私の正体に関しては?」

勇者「いま玉座の間に来たとき。顔同じだし」

姫「まぁそうですね」

賢者「おまっ、全っ然印象違うじゃねえか!!」

勇者「そうかな。顔同じだし」

姫「勇者様。ふふ」

賢者「こ、これがあんな陰湿・根暗・無機質の暴言地味女なのか……」

王様「今の言葉でお前の活躍は全消しじゃな」  賢者「プヨッ!?」


勇者「それで、どうして一緒についてきたの」

王様「それは、おぬしを監視するためじゃ」

勇者「えっ」

姫「強すぎる力は、たやすく心の色を変えてしまいます」

姫「万一勇者様が、勇者ロボの力に溺れ、目的を誤るようなことがあれば――」

王様「このワシの目前じゃ。直ちに搭乗権を剥奪し、処罰を下す予定だったのじゃ」

勇者「そうだったの」

賢者「ちょい待ち! そんなリスク被ってまで、なんでこの勇者に一任したんだ!?」

賢者「そういえばまだ、この勇者がなぜパイロットに選ばれたのか理由を聞いてないぞ!」

賢者「あらゆる呪文を華麗に駆使する大賢者な俺様はともかくな!」

姫「近衛兵。この方を丁重に牢獄にお連れしなさい」

兵「はっ」

賢者「あ、ちょっと……待ておい! おーいっ!?」 アー



勇者「それでどういうわけで自分がお呼ばれすることになったの」


姫「勇者様を選んだ理由――それは私が、あなたと旅がしたかったためです」

王様「このおてんばめ、言っても聞かなくてな。監視目的というのはロボの制御もそうじゃが」

王様「娘に何かあったら心配で心配で、結局ワシもついていくことにしたのじゃ」

勇者「あ。娘ってことは、商人は『盗賊さん』と『とう(ぞく)さん』を掛けてたの」

姫「それはありませんが、私に関しては勇者様を見定めるショウニン(証人)という意味合いはありました」

勇者「それは無理があるでしょうにん」   姫「ごゆうしゃ(容赦)を」

王様「まぁそんなこんなで、ワシはやったこともない盗賊職を一から身に付けるハメになったのじゃ」

勇者「えっ。だって最初に盗賊能力に長けてるって」

姫「もちろん嘘です。なのであらゆる手段を講じ、素人同然の父に強引に身体能力強化を図りました」

王様「おかげでただでさえ若返りの副作用があるのに、ワシは余計やつれ果ててしまった」

勇者「なにもそこまで。あじゃあこれも嘘だったのかな」

勇者「そもそも勇者ロボを作ったっていう前提」

姫「あれは本当に自力で作りました」

王様「娘は天才なのじゃ」

勇者「ええすごい」   姫「ふふ。ありがとうございます」   王「むう!」


姫「ところで話は変わりますが、その勇者ロボは破棄します」

勇者「えっ」

王様「あれほどの力を有していては、いつ争いの種になるとも知れんからのう」

姫「魔王は倒れました。次にこの力が必要になる時は、幾千の年月を経たあとでしょう」

王様「それまでの平和な世の中に、世の均衡を乱す兵器など無用の産物というわけじゃ」

勇者「うん。そうだね」

勇者「実はそれ、こっちから言い出そうと思ってたし」

姫「さすが勇者様」

王様「よし、では明日にでもすぐに解体作業を始めるとしよう」

王様「得られた資源は、魔王軍の占領下だった地域の復興・開拓の予算に――」

勇者「でもその前に待って」

王様「?」

勇者「最後にやりたいことがあるんだ」

姫「それは?」

勇者「うん――最後に勇者ロボで、もう一度この世界を飛び回ってみたいっ」


――

<コックピット内>

勇者「みんな乗ったかな」

王様「うむっ、ばっちりじゃぞ」

姫「いつでもいけます、勇者様」

賢者「へへ、やっぱ俺がいないと締まらねえだろっ!」

王様「城に戻らば、数多の不敬罪を覚悟するがよい」

賢者「参りました!」

姫「ああ、見てください勇者様」

姫「あんなにきれいな夕陽が――」

勇者「そだね。まずは水平線まで行ってみよっか」

勇者「それじゃ」

勇者「勇者ロボ発進!」



end

長々とお付き合い頂き、ありがとうございました
ありがとうございましたーっ!

乙!

超乙

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