側近「魔王様を倒す旅に出かけてまいります」魔王「…は?」(228)


魔王「いや、お前は何を言っているんだ?」


側近「だから魔王様を倒す旅に出かけてまいります」


魔王「……お前は何者だ?」


側近「ハッ!私は魔王様の側近でございます」


魔王「うむ、そうじゃ。お前はワシが一番信頼している部下だ」


側近「ありがとうございます」


魔王「それを踏まえてもう一度聞こう。お前は何をしに旅に出るんだ?」


側近「ハッ!私は魔王様を倒す旅に出かけてまいります!」


魔王「はい、ちょっと待とうか」


魔王「まずお前がワシを倒す理由を聞きたい」


側近「私は人間と魔族のハーフですよね?」


魔王「うむ」


側近「だから忌み嫌われて親に捨てられたのでしょう…そして、生まれてすぐに捨てられた私を魔王様が拾ってくださった」


魔王「たしか親父とケンカして家出した時に人間の村の近くで拾ったんだったな」


側近「はい。本当にありがとうございました」


魔王「礼を言うのはワシのほうじゃ。お前にはどれだけ迷惑をかけたか…」


側近「数え切れませんね」


魔王「普通は『迷惑じゃありません』的なことを言うんじゃないのか?」


側近「だって事実ですし」


魔王「ぐぬっ…は、話を戻せ!」


側近「わかりました。で、私も立派な成人になったので先日その村に行って父母を訪ねてみたんです。そしたら…父も母ももう亡くなってました…」


魔王「そうか…」


側近「その時に出会った村長さんから私が勇者の血を引いているって聞かされまして…」


魔王「…へ?勇者ってあの?」


側近「はい。今思えば誰に教わったわけでもないのに雷系の魔法を使えましたし、当然と言えば当然だったのかもしれません」


魔王「ワシのお仕置き用のあの忌まわしき魔法か!」


側近「大して効いてないじゃないですか」


魔王「意外と痛いんじゃぞあれ!?」


側近「また話がそれましたね。それで世界の平和の為に魔王を倒してくれって言われたので、有給休暇ついでに魔王様を倒そうかと…」


魔王「軽いなオイ!?」


側近「それでは行ってまいります」


魔王「待てぇぃいい!!ワシの食事は!?おやつは!?話し相手は!?城の掃除は!?」


側近「……魔王様、ファイトです!」グッ


魔王「イヤだ~~~~っ!!!お前が居ないと何も出来ない~~~~っ!!」ジタバタ


側近「……ハァッ!!」ピッ!


魔王「うおっ!?」ピタッ


側近「いつまでも駄々こねないでください」


魔王「いつ食らってもお前の拘束魔法は凄いもんじゃな。ピクリとも動けん」ググググ…


側近「前魔王であるお父様から、魔王様の教育の為に教わりましたので」


魔王「あのクソ親父…」


側近「まぁ、拘束出来たとしても数分ですし、私の魔力では魔王様を倒すことなど出来ませんが…」


魔王「そうじゃろ!ワシは凄いからのぅ!」ドヤァァ


側近「…そんな凄い魔王様なら、私が居なくても大丈夫ですよね?」


魔王「もちろんじゃ!………あっ」


側近「では、行ってまいります」ペコ


魔王「待って~~~~~っ!!」


側近「魔王様…お元気で」ピューーーーン!


魔王「そ…そんなぁ…」ガクッ


――始まりの町周辺――


スタッ


側近「ふぅ…これで魔王様も少しは大人になってくれると嬉しいんですが…」


側近「さて、これからは側近ではなく勇者と名乗らなければ…あと魔族とわからないように服装も変えないと…」ピッ!


勇者「まず旅の基本は情報収集からですね」


スライム「ピキー!!」バッ


勇者「ちょうど良いところにスライムさんがいました…」


勇者「ピキー!!」


スライム「ピキッ!?ピ、ピキピキー!」


勇者「ピキピキピ」


スライム「ピキピ…」シュン


勇者(なるほど……なら…)


勇者「ピキピキッ、ピーキピキ」カキカキカキ


スライム「ピ、ピキー!?」パアァ


勇者(さて…次は王様から魔王様討伐の命を受けなくては…)スタスタ


――始まりの町――



王城


王「前魔王が死んで、新しい魔王になってから50年…魔物は活発に動き出し、世界は破滅へと向かっている…勇者よ!世界の平和の為に魔王を倒してくるのだ!!」


勇者「善処します」


王「…何か軽いな」


勇者「そうですか?それより王様に一つお願いがあります」


王「何だ?」


――始まりの町周辺――



町人A「王様の命令で町の外に出たが…このままじゃモンスターに襲われちまうぞ!?」


王「勇者よ、本当に大丈夫なのか?」


勇者「はい」


町人B「モ、モンスターが大群で現われたぞ!!」


兵士「王様と町人達はさがってください!」バッ


勇者「貴方たちも武器をおろしてください」


兵士「な、何を言ってるんだ!?」


勇者「いいからあの魔物達を見てください」


兵士「……ん?何か横断幕を掲げてるな」


スライム「キピー!」



『僕達は人間と友達 絶対に襲わない』



兵士「…は?」


王「勇者よ…ど、ういうことなのだ?」


勇者「元々この辺りにいる魔物は温厚な者達ばかりなんです。魔物(モンスター)=凶悪だと決めつけて襲ってはいけません」


スライム「ピキピキー!」ピョン ピョン


町人A「く、くるな!」


町子供「可愛い~!」ヒョイ


町人B「お、おい!早く離しなさい!」


スライム「ピキー!」プニプニ


町子供「プニプニしてる~♪」


町人達「………」


勇者「この者達は微弱ながら魔法も使えます。上手く共存していけばとても良い関係を築くことが出来ると思います」


王「だ、だが…人の言葉を理解出来るのか?」


勇者「出来る者もいますが、大半は出来ません。でも心配要りません。スライム達には人間の言葉を、貴方たちにはスライムの言葉を覚えていただきます。『初心者でも分かるスライム語』前編と後編を渡しておきますね」ゴソゴソ


王「な、何故そなたはそんなものを…?」


勇者「勇者ですので」


町人達(勇者なら普通持ってるものなのか?)


勇者「ちなみにスライム達にはすでに本を渡しておきました。スライム以外の魔物達はスライムが通訳すれば問題ありませんし……それでも貴方たちは魔物を忌み嫌うんですか?」


王「………」


スライム「キピ…」ウルウル


王・町人達(か…可愛い)


王「よし!すぐに言葉を教える学校を作るぞ!」


町人「おおーーーーっ!!」


勇者(あとは周辺の魔物達にも伝えておけば心配ないでしょう…次の町に行きますか)


勇者「………」スタスタ


スライム「~~~♪」ピョン ピョン


勇者「…そこの貴方、何で私についてくるんですか?」


スライム「ピキー!」


勇者「仲間になりたいって言われましても……」


スライム「ピキピキ…」ウルウル


勇者「…はぁ、わかりましたよ。そのかわり、ちゃんと人間の言葉を話せるようにしてくださいね」


スライム「ピキー!」



スライムが仲間になった!

今日はここまで


ではまた

あと書き溜め派なので更新は遅めです

すみません、側近(勇者)も魔王も男です
一応魔王はダイ大の大魔王バーン、側近はドラクエVの主人公みたいなイメージで書いてます


では投下していきます


____________________


スタスタ


スラりん「あっ、勇者!次の村が見えてきたよ」


勇者「そうですね」


スラりん「魔法で飛べばすぐだったのに…」


勇者「旅は歩くのが醍醐味ですよ。それにスライムは私の頭の上に乗ってて歩いてないでしょ」


スラりん「だから僕はスラりんだってば!勇者がつけてくれたんでしょ!」


勇者「自分で名づけたんでしょ。さらりと嘘を言わないでください」


――古ぼけた村――


村人「はぁ…」トボトボ


勇者「…随分と静かな村ですね。みんな元気がありませんし、それに……ほとんどの家が破壊されています…」


スラりん「とりあえず酒場に行って情報を集めようよ」


勇者「…そうですね」


酒場



カランカラン


勇者「すいません。少し話を聞きたいのですが…」


マスター「あんた…その頭の上に乗ってるのは…?」


勇者「スライムですけど…何か?」


マスター「出てってくれ!モンスターと仲良くしてる奴なんか死んじまえ!!」


勇者「酷い言われようですね…」


スラりん「やいやい!このお方は勇者様なんだぞ!そんな失礼なこと言っていいのか!?」


マスター「ゆ、勇者様!?」


勇者「いつもは勇者って呼び捨てのクセに…」


スラりん「いいじゃん!一度こういうの言ってみたかったんだ!」


マスター「そ、そうか!モンスターを下僕にしたのか!」


スラりん「誰が下僕だ!!僕は勇者様がどうしてもって言ったから仲間になったんだぞ!!」ドヤッ


勇者「貴方の体は嘘で出来ているんですか?」


女騎士「…お前が勇者ってのは本当か?」


勇者「はい、そうです」


女騎士「ふむ、強そうには見えんが……まあいい、私は女騎士だ。よろしくな」


勇者「はい、よろしくお願いします」ペコ


女騎士「随分と礼儀正しい勇者だな…で、聞きたいことってのはこの村のことだろ?私が教えてやるよ」


勇者「本当ですか!?ありがとうございます!」


説明中♪


女騎士「――ってことなんだ」


スラりん「竜の騎士が村を襲って、金品ばかりか女子供も攫っていくなんて…酷すぎる!」


勇者「………」


女騎士「私はその竜の騎士を討伐する為にこの村に来たんだ」


マスター「私の娘も竜の騎士に攫われてしまったんです!勇者様お願いです!娘を連れ戻してください!」


勇者「…善処します」


スタスタ


勇者「………」


スラりん「ゆ、勇者…様?」


勇者「…何ですか?」


スラりん「い、いえ、何でもないです!」アセアセ


スラりん(何故かはわからないけど、勇者の機嫌が悪い…)


勇者「一つ聞きたいんですが…一番最近の竜騎士の目撃情報はいつですか?」


女騎士「(竜の騎士の名前を知ってるのか…)…昨日だ。空を飛んでるとこを見たって情報があった。幸いその時は何もしてこなかったそうだが…」


勇者「昨日…ですか」ピキッ


女騎士「…ここがその竜騎士の巣と言われている洞窟だ」


勇者「貴方たちはここで待ってってください…私一人で行きます」


女騎士「何馬鹿なこと言っているんだ!?竜騎士はあの魔王直属の部下だぞ!」


スライム「そうなの!?」


女騎士「お前…モンスターなのに知らんのか?」


スラりん「僕、そういうのにまったく興味ないんだ」


勇者「大丈夫…すぐに終わらせてきますから…」ピッ!


女騎士「ぐっ!?」ピタッ


スラりん「か、体が…!?」ピタッ


勇者「少しここで待っててください…」スタスタ


女騎士(くそっ…!何て強力な拘束魔法なんだ…!!)ググググ…


――竜騎士の巣――



勇者「………竜騎士さん、出てきてください」


竜騎士「また人間か……最近やけに頻繁に人間が来る……なっ!?お…お前!いや、あなた様は!?そ…側近様!?」


勇者「その通りです…で、何故私は今怒っているんでしょうか?」ゴゴゴゴゴゴ


竜騎士「ひ、ひぃいい!?」






スラりん「」ガクガク


女騎士「ま、魔法を使えない私でも感じるほどの凄まじい魔力が……い、一体中で何が起きているんだ!?」


勇者「ほら…早く答えてください」ゴゴゴゴゴゴゴ


竜騎士「ま、魔王様のお世話を頼まれたのにここに居るからです!!」ビクビク


勇者「正解です。では…何故、貴方は魔王様のお世話をしないでこんな辺境の地にいるんですか?」ゴゴゴゴゴゴ


竜騎士「ま、魔王様が我侭すぎてメンドくさくなり、側近様に見つからないように魔王城から離れたここで隠れてました!!ごめんなさい!!」ビクビク


勇者「はぁ……まぁ、そもそも貴方じゃあの我侭な魔王様の面倒なんて見れませんよね。許してあげますよ」フッ…


竜騎士「あ、ありがとうございます!」ブワッ


勇者「では、本題に入ります…魔王様はどんな様子でしたか?」


竜騎士「側近様が居なくなられてから一週間は何も食べず泣きながらずっと寝てました。その後も側近様の料理じゃないとイヤだ~~って駄々をこねる始末で…」


勇者「まったくあのお方は…300歳なのに本当にお子様なんだから…」


竜騎士「前魔王様が亡くなられてまだ50年しか経ってませんからね…」


勇者「もう50年です!それに…私は人間と魔族のハーフですから皆さんみたいに長くは生きられない…だからこそ魔王様には私が生きてるうちにもっと立派になってほしいのです」


竜騎士「側近様…」


勇者「………あっ、忘れてました。そういえば貴方がこの近くの村を襲ってるって情報があるんですが、嘘ですよね?」


竜騎士「…ええ、襲ってませんよ。私に何もメリットがありませんし…」


勇者「…いえ、訂正します。女性や村は襲ってませんが…子供は連れてきてますよね?」


竜騎士「」ギクッ


勇者「はぁ…貴方は重度のショタコンですからね…私も小さい頃は色々とウザかったですし…」


竜騎士「酷い!?あんなに可愛がってあげたのに!!」


勇者「体中を舐め回したクセによく言えますね。貞操は守れたからいいですけど…」


竜騎士「小さい頃の側近様は最高でした~…」ジュルリ


勇者「……話を戻します。それでどうせ親がいない子供や、親から虐待を受けた子供を攫ったのでしょ?」


竜騎士「さすがは側近様!よくわかってますね!世界中の愛に飢えた子供達を愛するのが私の夢なんです!!」


勇者「へーそうですかー」


竜騎士「反応薄っ!?」


勇者「その話は小さい頃に何度も聞きましたので。それよりこれから人間とスライムを連れてきますが、私が魔王様の側近ってことは秘密にしておいてください。魔王様の側近としてではなく、勇者として旅をしたいので」


竜騎士「わかりました」


スタスタ


女騎士「本当に竜騎士と和解したのか…?」


勇者「はい、和解も何も最初から竜騎士さんは村を襲ってなかったんです」


スラりん「じゃあ誰が村を襲ったの?」


勇者「恐らく…モンスターと人間が手を組んでいる盗賊組織でしょう」


女騎士「…何故そう思う?」


勇者「家の傷跡や足跡からモンスターはオークと飛行系のモンスター…やり方から頭の切れるガーゴイルあたりでしょう。そして一つの家だけがまったく被害を受けてなかったんです」


女騎士「(あんな傷跡や足跡だけでそこまでわかるのか!?それに…)ある村人が協力してる…ってことか」


勇者「はい…」


スラりん「やっぱり…」


女騎士「お前もわかってたのか?」


スラりん「当たり前でしょ?女騎士のいる所、オークありだもん!」ドヤッ


女騎士「何だその法則は?」



オ~イ!ソ…ユウシャサ~ン!



勇者(…バレないか心配ですね)


竜騎士「私が竜騎士だ。よろしくな女騎士とスライム」


女騎士「あ、ああ…」


スラりん「僕はスラりん!よろしく!」


竜騎士「で、この子達がその村の子供達だ。奥にまだ他の村や町で助けた子供達が十数人にいる」


勇者(多すぎです…)


子供A「竜騎士さ~ん、抱っこ~」クイクイ


子供B「じゃあ私は肩車ー!」


竜騎士「ヨイショっと。本当に可愛いなお前たちは~」デレー


勇者「顔が緩みすぎですよ」


女騎士(な、なんというか…私が抱いていた魔物のイメージとはかけ離れすぎてる…)


勇者「それで…酒場の娘さんはいますか?」


娘「わ、私です…」ササッ


竜騎士「…この子はあの親から暴力を振るわれててな、今までなるべくその話題に触れたくなかったから聞かなかったが…どうやらその親はこの子を売ろうとしていたみたいなんだ。そして家から逃げ出した時に私が拾って助けてあげたんだ」ナデナデ


女騎士「…ゲスだな」


スラりん「許せない!」


勇者「…お仕置きが必要みたいですね」


――近くの山――


勇者「じゃあ女騎士さんとスラりんは村の方をお願いします。竜騎士さんはくれぐれも手を出さないようにしてくださいね」


竜騎士「了解です!」ビシッ


勇者「………」ギロッ


竜騎士「わ、わかったぜよ!」ビクッ


スラりん「何故に、ぜよ!?」


女騎士「勇者は一人で大丈夫なのか?」


勇者「はい…すぐに終わらせてきますよ」ニコ


竜騎士(完璧にキレてる時の笑顔だーーーっ!!私の名を利用したから私が殺りたかったんだが…オーク達よ、運が悪かったな)


オーク達のアジト



ガーゴイル「さて、そろそろ時間だぞ」


オークA「ボス、あいつからの情報で本物の竜騎士がここら辺に現れたって聞きましたが…どうしやす?」


ガーゴイル「竜騎士は気に食わない奴だが、実力だけは本物だからな…今回の仕事が終わったら別の町で稼ぐぞ。次はどこに行きたい?」


オークB「お、俺はエルフの女をヤりたいッス!」


オークC「俺は砂漠のカジノに行きたいぜ!」


オークA「俺は人間の女がいいなぁ…女騎士とか」


オークB「うわぁ…趣味悪りぃな」


オークA「うっせぇ!」


ガーゴイル「欲望に忠実な奴らだな。じゃあ次はエルフが居る海を越えてすぐの町にするか…」


スタスタスタ


勇者「…残念ながら貴方達の行き先は決まってます」ピッ!


ガーゴイル「ガッ…!?」ピタッ


勇者「やはりガーゴイルさんでしたか…お久しぶりですね」


ガーゴイル(だ、誰だコイツ!?てか体がピクリとも動かない!!)


オークA「テメェ!!」バッ


オークB「死ねぇえええ!!」バッ


オーク「オラァア!!」バッ


勇者「本当は消してあげてもいいんですが…無駄な殺生はしたくないので少しだけ黙っててください」ピッ!


オーク達「」カチーン!


勇者「まぁ、少しと言いましたが私が解かない限り一生そのままですけどね」


ガーゴイル(あれだけの数のオークを一瞬で石化させやがった!?ば、化物じゃねぇか!!)


勇者「さて…村に戻りますか」


――古ぼけた村――



酒場



マスター(あいつら遅いな…)


カランカラン


マスター「あ、あんたら無事だったのか!?」


女騎士「なんだ…無事でいてほしくなかったのか?」


マスター「そ、そんなことねぇさ!それより娘は!?」


スラりん「入ってきていいよ」


スタスタ…


娘「………」


マスター「娘!!」


竜騎士「気安くこの子を名前で呼ぶな。殺すぞ」ギロッ


マスター「りゅ、竜の騎士!?」


女騎士「全部この子から聞いた。貴様がこの子を虐待してること、そしてモンスター達と手を組んで金品と女子供を攫っていることをな…」


マスター「お、お前!盗み聞きしてたのか!?」


娘「…うん」


マスター「こいつ…よくも実の親を売りやがったな…!!」


女騎士「売ってたのは貴様の方だろ。攫った女子供だけじゃなく、自分の子供まで売ろうとするなんて……クズの中のクズだな」


マスター「う、うるせぇ!!(あいつらはまだ来ないのか!?)」チラッ


竜騎士「無駄だ。いくら待ってもオーク達は来ないぞ」


マスター「な、何だと!?」


ズオオオオン!


竜騎士「はやっ!もう終わったのか」


勇者「さて、こちらは終わっているのでしょうか…」


ザッ


スラりん「うわっ!?勇者、その石像達は何?」


勇者「オークさん達です。無駄な殺生は嫌いなので石にして黙らせました」


オーク達「」カチーン


竜騎士(多分、一生あのままだな…死んだほうがマシだったろうに…)


勇者「それでそちらは?」


女騎士「ああ、こっちも終わったところだ」ズルズル


マスター「くっ…!お、俺は何もやってない!無実だ!!」


村人「なんだなんだ?酒場の店主が捕まってるぞ」


ザワザワ 


マスター「(まだ助かるかもしれない!)み、みんな!こいつらが竜の騎士と手を組んで村を襲ってた張本人だ!!」


村人「な、何だって!?」


勇者「…本当に醜い人ですね」ポイッ


ガーゴイル「ガ…グ……」ピクピク


マスター「ガ、ガーゴイル!?」


村人「こいつは村を襲ってた奴だ!!」


勇者「声だけ出せるようにしますか…」ピッ!


ガーゴイル「はぁはぁ…お、お前は一体…!?」


竜騎士「よお、ガーゴイル。散々私の名を借りて悪さをしてたみたいだな」


ガーゴイル「りゅ、竜騎士…様…」


女騎士「知り合いなのか?」


竜騎士「私の元部下だ。前魔王様が亡くなってすぐに私の下から離れて悪さをしてたらしいが、まさか私の名まで利用してたとは…」


ガーゴイル「……ふん。元々平和主義者、ましては雌であるお前の部下になんぞなりたくなかったんだ」


竜騎士「ほう…よほど死にたいらしいな」ピキッ


勇者「落ち着いてください竜騎士さん…さあ、殺される前に本当のことを言ってください。そうすれば命だけは助けますから…」


ガーゴイル「誰がお前なんかの言うことを…!!」


竜騎士「はぁ?お前、この人が誰だか気づいてないのか?この人はs―ピタッ


勇者「………」ギロッ


竜騎士(忘れてたーーーっ!!すいませんすいませんすいません!!言いませんから拘束魔法を解いてください!!)


勇者「はぁ…まったく」ピッ!


竜騎士(ふぅ…調教されるかと思った)


女騎士(洞窟でのあの魔力といい、今のやり取りといい…やはり勇者は只者ではない…)


勇者(しょうがないですね……)ス…


ガーゴイル「近づくんじゃねぇ!!」


勇者(ガーゴイルさん、思い出してください…私は魔王様の部下の側近ですよ。前に同じように拘束魔法を使って貴方を躾けてあげたでしょ)ボソッ


ガーゴイル「あっ………」


勇者「………」ニコ


ガーゴイル「」ガクガク


勇者「質問に素直に答えてくれますよね?」


ガーゴイル「ハ、ハイ!」


勇者「まず、貴方達と手を組んで村を襲ってたのは誰ですか?」


ガーゴイル「そこの酒場のマスターです!」


マスター「おい!」


村人達「何だって!?」


マスター「くっ…!」


ガーゴイル「取り分は俺らが金品、女子供はこいつが皆引き取って売ってました!」


勇者「なるほど…では、その者達がどこで売られたかわかりますか?」


ガーゴイル「ハイ!海を越えてすぐの町です!」


勇者「わかりました…ありがとうございました」


女騎士「…で、こいつらはどうするんだ?」


勇者「もちろんモンスターも人間も平等です」ピッ!


ガーゴイル・マスター「へ?」カチーン!


スラりん「せ、石像になっちゃった!?」


勇者「この石像達は私がある場所で管理しておきます」


女騎士「ある場所?」


勇者「はい。それでは竜騎士さんは攫われた人達を連れ戻してきてください」


竜騎士「了解で…ガッテン承知の助!」


スラりん「だから何なのそのキャラは!?」


勇者「私も少し席を外します……あっ、忘れるところでした!」バキッ! バキッ!


女騎士「…何をしてるんだ?」


勇者「お二人の体を少しだけ砕いてあげてるんです。痛覚だけは残してあるので…」ニコ


女騎士「そ、そうか…」ゾワッ


スラりん(悪魔だ…)ガクガク


竜騎士(石像になってる限り、痛みは永遠に続くのに…)ガクガク


勇者「それでは行ってまいります」ヒューーーーン!


女騎士「…移動系の魔法も使えるのか」


――魔王城――


スタッ


勇者「………はぁ、まだ数週間しか経ってないのに随分と汚くなりましたね」ズルズル


ダダダダダダッ
         ザッ!


魔王「側近!!やっぱりこの魔力は側近じゃったか!!」パアァァ


勇者「お久しぶりです、魔王様」ピッ!


魔王「再会と同時に拘束!?」ピタッ


勇者「ちょうどよかったです。この者達を独房に入れておいてください。では…」


魔王「待てぇい!!帰ってきたんじゃないのか!?」


勇者「はい。まだ旅は始まったばかりですし」


魔王「で、でも…少し話をするぐらいいいじゃないか…」ウルウル


勇者「……はぁ、わかりましたよ」


魔王「やったぁー!」パアァァ


勇者「魔王様、お食事はちゃんと食べてますか?」


魔王「食べておるが…ワシ料理出来んし、お前の料理じゃないと美味しくない。それにそろそろ食料が切れそうだし…」


勇者「自分で狩るか、買ってきて食べてください」


魔王「えー」


勇者「それと…どうしてこんなにお城が汚いんでしょうか?」


魔王「そ、それは…他の者達も有休で出てってしまったからで…」


勇者「はぁ…魔王様の人脈はさすがですね」


魔王「じゃろ!」ドヤッ


勇者「褒めてません。貶しているのです…次に帰ってくるまでに魔王様が掃除しておいてくださいね」


魔王「はーい…それより、お前が居なくなってから頻繁にワシの命を狙う魔物が増えてきたぞ。ちゃんと消してやってるが…」


勇者「まぁ、そうでしょうね。魔王様は私がいないと何も出来ない『ハリボテ魔王』なんて言われてますから…実際はハリボテ以下ですけど」


魔王「初耳じゃぞ!?それにさらりと悪口言わないで!」


勇者「実力ではどんなに頑張っても魔王様に勝てるわけ無いのに…本当に馬鹿な者達です」


魔王「ワシは生まれた時から最強じゃからな!ガハハハハ!」


勇者「……それに魔王様を倒すのは勇者である私の役目なのに…」


魔王「そうじゃそうじゃ!ガハハハハハハ……は?お…お前は本気でワシを倒すつもりなのか!?」


勇者「はい。もし戻ってきた時に鍛錬もしないで腑抜けてたら…私が魔王様を倒して魔王兼勇者となります」


魔王「」


勇者「魔王様、お城の掃除と魔法の鍛錬を怠らないでくださいね。あっ、健康の為にもたまには外にお出かけください。お小遣いはここに置いておきますが、お菓子やオモチャばかり買わないでくださいね。では、行ってまいります」ヒューーーーーン!


魔王「」


――古ぼけた村――


ヒューーーーーン


スラりん「あっ!帰ってきたよ!」


勇者「少し遅くなりました」スタッ


女騎士「…あいつらを一体どこに連れていったんだ?」


勇者「…最強の護衛兵が居る牢獄ですよ」


勇者(少し厳しくし過ぎたでしょうか?……いえ、あれぐらいしないといけません。自分で言うのもあれですが、私は少し魔王様に甘いですし、これからはもっと厳しくしていかないと…)


村長「勇者様、本当にありがとうございました。ぜひともお礼をしたいのですが…」


勇者「お礼と言われましても私は大したことしてないですし……では、竜騎士さんが攫われた人達を連れて戻ってきたら、一つだけ竜騎士さんのお願いを聞いてください」


村長「りゅ、竜の騎士のお願いですか!?」


勇者「はい。あの方は重度のショタコンですけどとても優しい方なんですよ。それにここで一緒に住めば気性の荒いモンスターもこの村に近づかなくなりますし」


村長「で、ですが…」


勇者「この子達もそれを望んでいるはずですし、ね?」ニコ


娘「うん!」


女騎士(…あんな優しい笑顔も出来るのか)


スラりん「…今、勇者に惚れたでしょ?」ニヤニヤ


女騎士「………」ガシッ


ブンッ
     ピキーーーーッ!!


勇者「…貴方達は何を遊んでるんですか?」


村長「…わかりました。竜騎士さんが戻って来られたら、ここに住んでいただくようお願いしてみます」


勇者「では、洞窟にいる子供達をここに連れてきますので、竜騎士さんが帰ってくるまで面倒をみてあげてください」


スタスタスタ


スラりん「子供達もちゃんとした家に住めるようになってよかったね」


勇者「そうですね」


女騎士「そうだな」


勇者「………」チラ


スラりん「………」チラ


女騎士「ん?何だ?」


勇者「いえ、女騎士さんは何故私達について来るのかと思いまして…」


女騎士「勇者に興味が湧いてな…私を仲間にしてくれ」


スラりん「ええー!?こんな男おんn―ガシッ


女騎士「どこに男女がいるんだ?」ギリギリギリ


スラりん「ピキーーーーッ!!つ、潰れちゃう~~~っ!!」


勇者「はぁ…仲間になっていいですから、スラりんを離してやってください」


女騎士「では、あらためて…女騎士だ。これからよろしくな、勇者様」


勇者「はい…よろしくお願いします」


勇者(困りましたね…一人旅の予定だったんですけど…)



女騎士が仲間になった!

今日はここまで


ではまた


――海上――


ザァァ


勇者「そろそろ陸が見えてきますよ」


スラりん「やっと船から降りられる!」


勇者「魔物が現れる海域を迂回しましたから長かったですね」


スラりん「勇者の移動系魔法ならすぐだったのに…」


勇者「それでは楽しくありません。旅は楽しむものですよ」


スラりん「あそこにまったく楽しんでない人がいるけど…」


女騎士「……うっ」


勇者「女騎士さん、まだ体調が優れないのですか?」


女騎士「あ…あぁ…私がここまで船が苦手だったとは…不覚…うっぷ」


勇者「私がもっと回復魔法を覚えていれば良かったのですが…私は攻撃魔法や拘束魔法が主体なので…」


女騎士「ゆ…勇者が悪いわけじゃない…貧弱な私が悪いんだ…」ヨロ…


勇者「もう少しで着きますので頑張ってください、女騎士さん」スリスリ


女騎士「す…すまん…」


スラりん「…今度こそ惚れた?」ニヤニヤ


女騎士「」イラッ


ポイッ
     ザバァンッ!


スラりん「ピキ~~~~!!」バシャ バシャ


勇者「スラりん、泳ぐならもう少し浅瀬にした方がいいですよ?」


スラりん「泳いでない!溺れてるの!早く助けて~!」バシャ バシャ


____________________


スタスタスタ


スラりん「し、死ぬとこだった…」グター


女騎士「まったく、だらしない奴だな」


スラりん「さっきまで船酔いで死にそうだった奴がそれを言う!?それに僕を海に落としたのは女騎士だよ!!」プンプン!


勇者「まぁまぁ、仲間なんだからもっと仲良くしましょうよ。それとスラりん、濡れたまま私の頭の上に乗らないでください」


女騎士「それにしても…おかしい、地図だとこの辺りに町があるはずなんだが…」キョロキョロ


勇者「…どうやら魔法で外から見えないように防壁膜を張ってるみたいですね。ちなみにこの魔法は主にエルフが得意としてます」


スラりん「勇者の魔法でどうにか出来ないの?」


勇者「う~ん…ちょっと難しいですね(膜を消してしまうのは簡単に出来るんですが…理由もなく消すのはさすがにマズイですし…)」


女騎士「…ん?あそこに誰かいるぞ」


勇者「本当ですね。では、あの人に聞いてみましょう」





スライム「ピキ…」フラフラ


僧侶「ちょっと待ってね。今治してあげるから」ポゥ…


スライム「ピキー!」パアァ


僧侶「ふふふ、もう怪我しちゃ駄目だよ」ナデナデ


勇者「へぇ、貴方は優しいんですね」


僧侶「!?ち、違うんです!これはその偶々というか…と、とにかくこの子を殺さないでください!」アセアセ


スラりん「大丈夫だよ。僕達は基本的に魔物を殺さないから」


僧侶「……へ?ス、スライムが喋ってる!?」


スラりん「その通り!僕は選ばれしスライム!勇者スラりんさ!」ドヤッ


僧侶「ゆ、勇者様!?」


女騎士「違う。そいつはただのスライムで勇者はこっちだ」


勇者「どうも、一応私が勇者です。それよりその子はもう逃がしてあげください。早くお母さんの所に帰りたいって言ってますし」


僧侶「あっ、ご、ごめんね!」パッ


スライム「ピキピキー!」ピョン ピョン


勇者「貴方に『傷を治してくれてありがとう』って言ってますよ」


僧侶「勇者様はスライムの言葉が分かるんですか!?」


勇者「はい。一応スライムだけでなく全ての魔物の言葉をマスターしてます」


女騎士「そのおかげで、魔物に襲われても戦わずに説得して逃がすから旅が楽なんだが…体が鈍ってしまってしょうがない」


勇者「剣の稽古は毎日してるじゃないですか。女騎士さんは本当にお強いですし」


女騎士「皮肉にしか聞こえんからやめろ。二週間で超えられた身にもなれ」


僧侶「す…全ての魔物さん達とお話できるなんて…う…羨ましい!!」キラキラ


勇者「とりあえず村で何か食べながらこの辺りの話を聞かせてくれませんか?ありますよね?魔法の膜で包まれた村が…」


僧侶「…はい」


――膜で包まれた町――


スタスタ


スラりん「思ったよりも簡単に入れたね」


僧侶「この腕輪をしてる人と手を繋いでいれば誰でも入れるんだよ」


勇者「エルフやサキュバスまで…色々な種族の魔族が居ますね」


僧侶「この町は元々リゾート地として有名で、森に住むエルフさん達がよく来てたんです。それでこの町に気に入った人達がここに住むようになったんです」


勇者「エルフが海水浴…何というか意外ですね」


僧侶「ここ近年はリゾート地としてよりも、人間と魔物が仲良く暮らす町として有名だったんですよ」


女騎士「…どうして過去系なんだ?」


僧侶「それは…最近、近くの海を住処としている魔物クラーケンとその部下達がこの近辺で暴れているからです。しかも彼らは魔物も人間も関係なく襲ってくるので、エルフさん達が作った防御膜でこの町を隠しているんです」


スラりん「それでもこの町では人間と魔物が仲良く暮らしているんじゃないの?」


勇者「…いえ、この町には人型の魔族は居ても、人語を喋れない魔物は見当たりません。この町にいた魔物達は追い出された…ってことですよね?」


僧侶「…はい、その通りです。前は魔物さん達も仲良く暮らしていたんですが…クラーケンの部下に同じ種族の魔物がいたので、この町に住む魔物さん達の風当たりが強くなってしまい、自分達で出ていったんです…」


勇者「人はすぐに誰かのせいにしたがりますからね…」


僧侶「……実はここからちょっと離れた場所に魔物さん達が住んでいる村があるんです。もちろんそこもエルフさん達の膜で隠してありますが…あっ、これは内緒にしてくださいね」


勇者「貴方はその村に頻繁に行ってるんですか?」


僧侶「はい。物資の輸送や情報交換…は表向きで、いつも遊びに行ってます」テヘヘ


勇者「…貴方は魔物が大好きなんですね」


僧侶「はい!魔物さん達は僕の友達ですから!」


スラりん「……勇者」


勇者「わかってますよ、スラりん。少し休憩したらクラーケン退治に行きましょう」


僧侶「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!すぐに町の人に言って何かお礼を…」


勇者「お礼はいりませんよ」


僧侶「えっ?」


スラりん「だって君は魔物と友達でしょ?つまり僕は君と友達ってことだ!友達が困ってたら助けるのは当たり前じゃん!」


女騎士「まぁ、そういうことだな」


僧侶「み、皆さん…」


女騎士「その前に腹ごしらえをして力を蓄えないと…」


スラりん「誰かさんは船で全部吐いちゃったからね~」


女騎士「…ちょうどいいところに青いゼリーがあるな」ガシッ


スラりん「ぎゃあ~~~!?食われる~~~っ!!」


僧侶「アハハハ!面白い人達ですね」


勇者「スラりんは人じゃありませんけどね」


僧侶「…あの、勇者様」


勇者「はい?」


僧侶「ぼ、僕も魔物さん達とお話したいんですが…」


勇者「わかりました。私のモンスター語の本をいくつかあげますよ」


僧侶「やったぁ~~~!!あっ…す、すいません!はしゃぎすぎました///」


勇者「謝ることじゃありませんよ。それにそれだけ喜んでくれるのなら私も嬉しいですし。…ちなみに私はこれでも物知りな方なので、本にも載ってないような話でも聞きますか?」


僧侶「いいんですか!?じゃあ早くお店に行きましょう!」タタタタタッ


勇者「…元気で可愛らしい子ですね。竜騎士さんがいたらメロメロでしたよ」クスッ


食堂


カラン カラン


僧侶「ここ、僕の行きつけなんです!すっごく美味しいんですよ!」


勇者「それは楽しみですね」


竜騎士「また会えたね!僧侶ちゃん!」ダキッ


僧侶「りゅ、竜騎士さん!?抱きつかないでよ~!」ジタバタ


竜騎士「イイではないか~イイではないか~」スリスリ


勇者「………」

スラりん「………」

女騎士「………」


竜騎士「イイではないか~…ん?あ、えっ!?どどどどうして、そっk―ピタッ


勇者「はぁ…とりあえず僧侶さんから離れてください」


竜騎士(拘束されたら離れられません!!)


スラりん「う~ん♪美味しい~!」ガツガツ


女騎士「確かに美味いな」モグモグ


僧侶「でしょ!」





勇者「で、何で貴方はまだここに居るんですか?攫われた人達は助けたんですか?」


竜騎士「それがですね…私がここに着いた時にはもう皆救出されてたんです」


勇者「…どういうことですか?」


竜騎士「攫われた女の一人が優秀な魔法使いでして、捕まったフリをして皆を救出してたんです」


勇者「なるほど…その人身売買をしてた組織はどうしましたか?」


竜騎士「それは心配いりません。その魔法使いから居場所を聞き、私がちゃんと壊滅させておきました。勇者様と違って少し手荒でしたけど」


勇者「そうですか、ありがとうございます。では…もう一つの質問に答えてください。どうして貴方はまだここに残ってるんですか?」


竜騎士「た、助けた人達はちゃんと私が無事に帰らせましたが…そ、その魔法使いが帰りたくないと駄々をこねてまして今説得をしてるんです!」アセアセ


勇者「……怒ってませんから本当のことを言ってください」ニコ


竜騎士(笑顔が怖いっ!!)ガクガク


店員「その人はあそこにいる僧侶ちゃん目当てですよ」


竜騎士「」ギクッ


勇者「やっぱりそうでしたか…貴方のショタコンには呆れますね」


竜騎士「反省してます…」シュン


勇者「それで…貴方が魔法使いさんですか?」


魔法使い「ピンポーン♪さすがは勇者様ですね」


勇者「どうしてお店の店員をやっているのですか?」


魔法使い「私はコスプレが趣味で、ウェイトレスの制服を一度着てみたかったのよ。どう?似合ってるかしら?」クルクル


勇者「え…ええ、似合ってると思います…」


竜騎士「私がここに居る理由は僧侶ちゃんが可愛すぎる為ですが、このコスプレマニアが駄々をこねて帰らないのは本当なんです」


魔法使い「だって~あの村すたれ過ぎて一人でコスプレしてても浮きまくるのよ!だからこれからコスプレの旅に出ようと思ってね」


勇者「女性の一人旅は危険ですし、せめて誰かを仲間にしてから旅をした方がいいですよ」


魔法使い「あー大丈夫大丈夫。私、勇者様の仲間になるし」


勇者「…はい?」


魔法使い「勇者様に出会った瞬間にこうビビッときちゃったの!じゃあこれからよろしくね!」


勇者「………はい?」



魔法使いが仲間になった!



魔法使い「向こうのテーブルの人達にも挨拶してくるわね~♪」ルンルン


勇者「こ…これはどうすればいいんでしょうか…?」ポカーン


竜騎士(あの側近様がボーゼンとしてる…側近様はああいうタイプが苦手なのか)


女騎士「……は?貴様が仲間に?」


魔法使い「そう、よろしくね♪」


スラりん「……恋敵(ライバル)出現か!?」


女騎士「…ちょっと用を足してくる」ガシッ


スラりん「ごめんごめん!冗談だから流さないで!!」


僧侶「旅って…魔王を倒しに行くんですよね?」


魔法使い「あー…それはついでかな♪」


女騎士「ついでが最終目的だ」


僧侶「………ぼ、僕も一緒に!!」



バリイィィィィンッ!!



勇者「!?」ガタッ


僧侶「えっ!?ま、膜が壊された!?」


女騎士「まさかクラーケン達が攻め込んできたのか!?」


魔法使い「一瞬感じたけど…壊した奴は相当な魔力を持ってるわ…」ゾワッ


スラりん「相当っていうか……尋常じゃないくらい大きい…!」ガクガク


勇者「あの魔力……まさか!?」ダッ


女騎士「勇者!?くっ、私達も追いかけるぞ!」ダッ


タタタタタタタッ


勇者(あのお方が近くにいればすぐに魔力でわかるはずですし…今感じる魔力は十分の一にもみたない…だからあのお方では無いはず……)


魔王(膜のせいで見失ってしまった…側近はどこに行ったんじゃろ?)キョロキョロ


勇者「」


魔王「あっ!!」パアァ


勇者「な…何で…こんな所に居るんですか!?魔王様!!」


魔王「会いたかったぞ!そっk―「ハアァッ!!」ピッ!


魔王「また拘束!?しかも全力で!!」ピタッ


ザッ


女騎士「大丈夫か勇者!?」


竜騎士「うおっ!?ま、魔王様!?」


魔王「よっ、久しぶりじゃな竜騎士」


スラりん「えっ!?ま、ままままま魔王!?どうしてこんなところに!?」


魔法使い「まさか…勇者様を殺しにきたんじゃ…!?」


勇者(私に会いに来たんですよ……)


勇者「まったく……貴方ってお方は…」ゴゴゴゴゴゴゴゴ


女騎士「これはあの洞窟の時の…!!」


僧侶「ゆ…勇者様…?」


魔法使い「す…凄い魔力…!!」


竜騎士(あー…調教モードに入っちゃった)


魔王「お…落ち着くんじゃ!とりあえずワシの話をだな…」


勇者「…聞きません!」バッ!


魔王「うおっ!?」ヒューーーーーーーーン!


スラりん「魔王が飛んでった!?」


魔法使い「あれは移動系魔法を応用して相手を飛ばす高度な魔法!勇者様はあんなことも出来るの!?」


勇者「ハッ!」ヒューーーーーーーン!


女騎士「ゆ、勇者!!」


僧侶「まさか…勇者様はここで戦うと危険だから一人で魔王と…!?」


竜騎士(あの人は魔王様に基本的に甘々だけど、お仕置きの時だけはマジになるからなぁ…)


――海上――


ヒューーーーーーン
        ザバァァン!


ゴポゴポゴポ…


勇者「……魔王様、もう拘束魔法は解いているのですから、海の中に隠れてないで出てきてください」ピチャ


魔王「あ…あの…すいません…」ザバァァ…


勇者「…私に会いに来てくれたことは正直に言うと嬉しかったです。私も魔王様に会いたかったですし…」


魔王「そ、側近…」ウルウル


勇者「でも…言いたいことが3つほどあります」ニコ


魔王「」ビクッ


勇者「まず一つ、今お城は空っぽな状態ですよね?」


魔王「ケ、ケルが居るから大丈夫なはずじゃ!」


勇者「確かに地獄の番犬ケルベロスが居れば大抵の魔物は近づくことすらしないでしょう……でも、エサはちゃんとあげてきたんですか?」


魔王「あっ」


勇者「はぁ…今頃独房に居る者達や周辺の動物、魔物を食べてるでしょうね」


魔王「すいません…」


勇者「次に二つ目です。そのローブ、魔力を抑える特殊なローブですよね?」


魔王「うむ、そうしないと側近にすぐに気づかれて帰らされてしまうからのぅ」


勇者「…それを買うお金はどうしたんですか?」


魔王「………お、お小遣いで買ったんじゃ!」


勇者「嘘をつかないでください。それはお小遣いだけで買える代物じゃありません……私が魔王様の為に貯めてた貯金を勝手に使いましたね?」


魔王「………はい」


勇者「はぁ…もしもの為に渡しておいた私が馬鹿でした。それに何て意味の無いことを…魔王様の魔力を全て抑えることなんて出来るはずないのに…」


魔王「…それでも今までお前は気づかなかったんじゃぞ。つまり、ワシよりもあやつらの方が大事なんじゃろ…」シュン


勇者「…そんなわけないじゃないですか。私はどんな時でも魔王様のことを考えてますよ」


魔王「側近…!」パアァ


勇者「でも…確かに女騎士さん達との旅が楽しくて気づきませんでしたね。自分で思ってる以上に彼女達に心を許しているのかもしれませんね…」


魔王「あやつら…!」ギリッ


勇者「嫉妬しないでください。私の大切な仲間なんですから」


魔王「ワシも大切な仲間じゃろ!?」


勇者「大切な主君です」


ザバァァン!


クラーケン「ここは我の縄張り!勝手に入る馬鹿はどこのどいつだ!!」


勇者「今はお説教中です。邪魔しないでください」ボォゥ!


クラーケン「ハッハッハ!我に火炎魔法は効かん!!……ん?熱ちちちちちちち!?も、燃えてるぅぅぅうう!?」ボオオオオオォォ!


部下達「!?」


魔王「低俗なクラーケンに黒炎はやり過ぎじゃないか?」


勇者「私は今、機嫌が悪いので…」


魔王「へ?」


勇者「最後に3つ目です…どうしてあの町の防御膜を壊したんですか?」


魔王「じゃ…邪魔じゃったから…」ビクビク


勇者「貴方は魔物達の頂点に君臨するお方なんですよ…もっとよく考えて行動しないと駄目じゃないですか…」バチバチバチ


魔王「そ、側近…ほら、海でその(雷系)魔法使うのはさすがにマズイじゃろ…?クラーケン達もいることだし…」


勇者「いえ、一石二鳥です」ニコ


ピカッ!

    バリバリバリバリバリ!!



クラーケン「ぎゃああああああ~~~~!?」ビリビリビリ


魔王「死ぬぅぅぅぅうううう!!」ビリビリビリ


勇者「魔王様はこの程度で死にません」


魔王「そ、そうじゃが結構痛いんじゃぞ!!」ビリビリビリ


勇者「痛くないとお仕置きになりませんので」ニコ


魔王「このドSがあぁぁああ!!」ビリビリビリ


10分後♪


クラーケン「」チーン

部下達「」チーン


魔王「ふぅ…久々だとキツイもんじゃな…」ボロ…


勇者「ちょうどケルベロスのエサ(クラーケン達)が手に入ったのでそれを持って帰ってください」


魔王「えー側近も一緒に帰ろうよー」


勇者「子供みたいに言わないで、もっと主君らしくしてください」


魔王「側近、我が城に帰るぞ」キリッ


勇者「やれば出来るじゃないですか。帰りませんけど」


魔王「えー」


勇者「世界中を旅したらちゃんと帰りますから我慢してください。あっ、この間の約束、ちゃんと覚えてますか?」


魔王「…はて?何か約束したかのぅ?」


勇者「魔王様……」バチバチ…


魔王「も、もちろん覚えておる!ちゃんと魔法の鍛錬もお城の掃除もする!」


勇者「そうです。破ったら魔王様を倒しますからね」


魔王「わかっておるわい…だが、側近も約束しろ!絶対に帰ってくるんじゃぞ!それとお土産も忘れるんじゃないぞ!!」ヒューーーーーン!


勇者「…当たり前じゃないですか、魔王様。ちゃんと帰りますし、お土産も買いますよ」クスッ


――膜に包まれていた町――


スタッ


勇者「ただいま戻りました」


女騎士「勇者様!大丈夫か!?怪我は無いか!?」


勇者「ええ、心配いりません」


女騎士「よ、よかった…」ホッ


スラりん「あれ~?最初の頃と態度が違くない?」ニヤニヤ


女騎士「う、うるさい!///」ブンッ!


ピキ~~~~~~!!


魔法使い(なるほど、そういう関係なのね……面白そう♪)


僧侶「ま、魔王はどうなったんですか?」


勇者「ちゃんと追い帰しましたよ。それとついでに近くにいたクラーケンとその部下達もやっつけておきました」


僧侶「ク、クラーケン達がついで!?」


勇者「私が出来ることはここまでです。また魔物と人間が仲良く暮らせる町になるかは貴方たち次第ですよ」


僧侶「……はい、きっと皆ならまた元のようになれると思います」


女騎士「…皆なら?」


僧侶「勇者様…僕も仲間にしてください!」


竜騎士「ええー!?僧侶ちゃん、私と一緒にお家に帰ろうよ~!」


勇者「貴方は少し黙っててください」ピッ!


僧侶「思ったんです…クラーケンを倒しても根本的な問題の解決にはならないって…だから僕は元凶である魔王を倒して、人間も魔物も仲良く暮らせる世界にするって決めたんです!!」


勇者(確かにこの世界が混乱しているのは魔王様のせいですけど…皆さん、根本的に勘違いをしてるんですよね)


勇者「……わかりました、竜騎士さんに襲われる危険性もありますし、約束してたお話もまだしてませんからね。仲間になってもいいですよ」


僧侶「あ、ありがとうございます!」


勇者「ただし条件があります」


僧侶「条件ですか?」


勇者「はい、貴方はまだまだ子供なんですから、私達に対して敬語は使わないでください」


僧侶「で、でも…」


勇者「じゃないと仲間にしませんよ?」


僧侶「…うん、わかった!これからよろしくね、勇者様、女騎士さん、魔法使いさん」


勇者「こちらこそよろしくお願いしますね」


女騎士「ああ、よろしくな」


魔法使い「仲良くしようね♪」



ボクモイルヨ~~!



僧侶「ふふふ、スラりんもよろしくね!」



僧侶が仲間になった!


勇者「では、必要な物を買ってから次の町に向かいましょう…そうだ、僧侶さん。いいお土産屋さんがあったら教えてください」


僧侶「うん!」


スタスタスタ


竜騎士(……お願いですから拘束魔法を解いてくださいよ)シクシク

今日はここまで


ではまた

訂正
>>110
×女騎士「勇者様!大丈夫か!?怪我は無いか!?」
○女騎士「勇者!大丈夫か!?怪我は無いか!?」


行間二行空けは単純に自分が書いてて見やすいからです
行間を空けることでレス数が増えますが、基本的に私は短編派なんであまり関係ありませんし

あと側近が魔王を殺すことはありえませんのでご安心を


では投下していきます


――砂漠――



僧侶「砂漠って夜になると暑くないんだね」


スラりん「むしろ寒い…」ブル


魔法使い「このぐらいで寒いって言ってちゃ一人前のコスプレイヤーになれないわよ」


スラりん「ならないよ!!」


魔法使い「それに寒いならあの二人みたいに体を動かせば?」


僧侶「あの二人はそれが目的じゃないと思うけど…」


キン! キン!


女騎士「ハアァ!」ブンッ


勇者「くっ…!(前より格段に速くなっている!)」バッ


ガキンッ!


勇者(剣が飛ばされた!?)


女騎士「これでお終いだ!」グイッ


ドサッ


女騎士「はぁ…はぁ…わ、私の勝ちだな」チャキッ


勇者「…はい、参りました。女騎士さんは本当にお強いですね(竜騎士さんと同等…いえ、技のスピードだけならそれ以上ですね…本当に凄い人です)」


女騎士「これで少しは私も…勇者の力になれるか?」ハァ ハァ


勇者「何を言ってるんですか。いつも頼りにしてますよ」


女騎士「そ、そうか…」


スラりん「……いつまでも密着してないで、そろそろ勇者の上から退いてあげたら?」ニヤニヤ


女騎士「す、すまん!///」バッ


魔法使い「まるで女騎士さんが興奮して勇者様を襲ってるみたいだったわね❤」ニヤニヤ


女騎士「貴様ら…!」チャキッ


勇者「まあまあ、落ち着いてください。今日はこの辺にして明日に備えて寝ましょう」


僧侶「あっ、女騎士さん!腕に切り傷が!」


女騎士「むっ、勇者の攻撃は全部避けたと思ったんだが…私もまだまだだな」


勇者「す、すいません!あまりにも女騎士さんが強かったので、私も無我夢中で…」


女騎士「勇者が気にすることではない。むしろそうでなくては鍛錬にならんからな」


僧侶「女騎士さん、魔法で治すから腕を出して」


女騎士「いや、必要ない。騎士にとって傷は勲章みたいなモノだからな」


勇者「駄目ですよ、ちゃんと治してもらわないと。貴方は騎士である前に女性なんですから」


女騎士「ゆ、勇者がそこまで言うなら…///」


魔法使い「初々しいね~」ニヤニヤ


スラりん「デレデレじゃん」ニヤニヤ


女騎士「だ、黙れ!!///」


――砂漠の街――


女騎士「ここが砂漠の街か…随分と賑やかだな」


スラりん「砂漠は過酷な環境だから人が少ないと思ったんだけど…人がいっぱいいるね」


勇者「なんでもこの街は広大な土地を利用してカジノを建てて大成功したそうですよ」


魔法使い「カジノ!?」


僧侶「でも、お客さん達はどうやってここまで来てるのかな?」


勇者「確かに…普通の人達が魔物も居るこの砂漠を歩いてくるとは思えませんし……少しだけ覗いてみますか」


魔法使い「ヨッシャ!コスプレ資金を稼ぐわよーー!!」オーッ!


スラりん「一人だけ目的が違うけど…」


勇者「…そっとしておきましょう(未だにあの人の扱い方がわかりません…)」


――砂漠の街――


女騎士「ここが砂漠の街か…随分と賑やかだな」


スラりん「砂漠は過酷な環境だから人が少ないと思ったんだけど…人がいっぱいいるね」


勇者「なんでもこの街は広大な土地を利用してカジノを建てて大成功したそうですよ」


魔法使い「カジノ!?」


僧侶「でも、お客さん達はどうやってここまで来てるのかな?」


勇者「確かに…普通の人達が魔物も居るこの砂漠を歩いてくるとは思えませんし……少しだけ覗いてみますか」


魔法使い「ヨッシャ!コスプレ資金を稼ぐわよーー!!」オーッ!


スラりん「一人だけ目的が違うけど…」


勇者「…そっとしておきましょう(未だにあの人の扱い方がわかりません…)」


カジノ


ワイワイ ガヤガヤ


勇者「やはり多くの人がいますね。しかも皆さん随分と軽装ですし……すいません、この方達はここにどうやっていらしているんですか?」


受付嬢「え?店内にあるワープゲートですけど…」


勇者「なるほど…ワープゲートは盲点でした。それなら安全な場所からすぐにここに来れますし、魔物に襲われる心配もありませんね」


女騎士「この街で何か困った事とか起きてないか?」


受付嬢「いえ、特に何もありません」


女騎士「そうか…色々と聞いてすまなかった」


受付嬢「では、ごゆっくりお楽しみくださいませ」ペコ


女騎士「…勇者、どうする?」


勇者「私達は必要無いみたいですし…次の街に向かいますか」


スラりん「でも…魔法使いはもう楽しんでるよ」チラ




魔法使い「さあ、スロットで稼ぎまくるわよ~!」チャリンチャリン




勇者(はぁ…魔王様が心配ですので先を急ぎたいのですが…)


僧侶「ゆ、勇者様!あの景品を見て!」



『勇者の剣』



女騎士「あれは…この世で唯一魔王を倒すことが出来ると言われている伝説の武器『勇者の剣』!?」


勇者「どうしてそれほど物がカジノの景品にあるんですか?」


受付嬢「あの剣を守っていた一族の長がここで大負けしてしまい、あの剣を売ったそうです」


スラりん「もっとしっかり守って!」


女騎士「勇者、あの剣は手に入れておくべきだな」


勇者「そうですね(魔王様の教育に使えそうですし…)」


僧侶「伝説の武器なのに意外と交換に必要なコイン額は少ないみたいだよ」


受付嬢「その理由は注意書きに書いてあります」



※勇者様のみ鞘から剣を取り出せます。
※置物として使えますが、世界平和の為に勇者様が現れた際はお譲りください。



僧侶「うん、これじゃ誰も欲しがらないよ」


スラりん「ねえ、この人が勇者だからあの剣をちょうだいよ」


受付嬢「規則ですので勇者様といえども無理です」


スラりん「でも、世界平和の為って書いてあるし…」


受付嬢「規則ですので。頑張ってコインを貯めて下さいませ」


女騎士「世界平和より規則の方が大事なのか?」


勇者「ここは素直に従うしかなさそうですね。手元のお金では…ギリギリ足りませんか。魔法使いさんは…」チラ



魔法使い「ガッデム!ちょっとこのスロット仕組まれてない!?さっきからまったく揃わないんだけど!」



勇者「…駄目そうですね。仕方ありません、私達が手分けして稼ぎましょう」


女騎士(賭け事か…トランプぐらいなら私も出来そうだな)


ディーラー「お客様、参加しませんか?」シュッ シュッ


女騎士「ポーカーか…いいだろう」


1ゲーム目


ディーラー「残念でしたね。コインはこちらのお客様にお渡しします」ジャラジャラ


女騎士(…た、たまたま運が悪くペアが一つも無かっただけだ!次こそは…!)


5ゲーム目


ディーラー「…な、何かすいません」ジャラジャラ


女騎士「ご…5回連続でペア無しだと…!?」


10ゲーム目


女騎士「………」


ディーラー(10回連続ブタって…ある意味凄すぎだろ)


女騎士「き…貴様ァ!さてはオークの手下だな!!」チャキッ


ディーラー「ひいぃ!?」


____________________


ボディーガード「ニドトクルナ!」


女騎士(………追い出されてしまった)


魔法使い「まったく…カジノで剣を抜くなんて常識がなってないわね」


女騎士「…そういう貴様は何故追い出されたんだ?」


魔法使い「コインが無くなっちゃったから、少しだけお客を誘惑してたらつまみ出されちゃった。てへ☆」


女騎士(私はこんな奴と同レベルなのか…)ズーン


魔法使い「さて、勇者様からお金を貰ってもう一度チャレンジよ!」


女騎士「しかし顔はもうバレたんだぞ。すんなり入れてくれるとは思えないが…」


魔法使い「変装すればバレないって」


女騎士「変装?」


魔法使い「まずはその重たそうな鎧を脱がしてと…」ヌガシヌガシ


女騎士「な、何をするんだ貴様!?」ブンッ


魔法使い「時よ止まれ!」ピッ!


女騎士「なっ!?こ、これは勇者の…!!」ピタッ


魔法使い「そう、教わっちゃった♪まぁ、ある程度の魔力を持ってる人には効かないし、勇者様みたいに長時間拘束することは出来ないけどね。女騎士ちゃんなら魔力全然無いし…15秒ってとこかしら。女騎士ちゃんを着せ替えるには…十分だわ」ニヤリ


女騎士「き、貴様ァ…!!」グググググ…


魔法使い「エッチな下着やシルクのビスチェもあるわよ~」ニヤニヤ


女騎士「そ、それだけはや…やめてくれ!」


魔法使い「では…お着替えタ~~~イム♪」



しばらくお待ちください❤



魔法使い「ふっふっふ…さすらいのコスプレイヤーである私に掛かれば、男女な女騎士さんも綺麗な女に大変身よ!……綺麗すぎてちょっと悔しいけど」


女騎士「せ、背中が開きすぎでは無いのか?///胸も強調し過ぎだし…///」E:黒のドレス


魔法使い「腕の切り傷をファンデだけじゃ隠しきれなかったから、綺麗な背中と豊満な胸に目がいくようにしたの。これで勇者様もメロメロよ!」


女騎士「メ、メロメロにする必要はない!///」


魔法使い「私はシンプルにウサギちゃんよ❤」E:バニーガール


女騎士「どの辺がシンプルなんだ…?」


魔法使い「さあ!カジノへGO!」スタスタ


女騎士(あ、歩きづらい靴だな…)カツ カツ


ボディーガード「………」


魔法使い「どうも~❤」


女騎士「ど、どうも…」


ボディーガード「オマエダメ。ニュウテンキンシ」ガシッ


魔法使い「なっ、私だけ!?お、女騎士ちゃん!見捨てないで~!」ガーン


女騎士(あれは無視するとして、とりあえず勇者達と合流しなくては…)カツ カツ


女騎士(勇者はどこだ?)キョロキョロ


アノオンナ、イロッポイナ


女騎士(くっ、周りの汚い視線がうざい…あっ、勇者がいた!)カツ カツ


女騎士「ゆ、勇者…」


勇者「あっ、女騎士さん」


スラりん「えっ!?この女の人が女騎士!?」


勇者「その格好…どうされたんですか?」


女騎士「一回追い出されてしまってな。変装してもう一回入ったんだが…や、やっぱり変か?」


勇者「……いえ、まったく変じゃありませんよ」


女騎士「そ、そうか…」


女騎士(別に期待してなかったが…いつもと比べたら綺麗になったんだから、もう少し何か言ってくれてもいいだろ…)シュン


スラりん(まったく勇者は女心がわかってないな…ここは僕が助け舟を出してあげなくっちゃ!)


ディーラー「お客様、また参加しますか?」


勇者「はい、もちろんです」


女騎士「…勇者は勝ってるのか?」


スラりん「ずっとここでルーレットをやってて、全部ストレートで勝利してるよ」


女騎士「一点賭けで全勝!?じゃあ大量のコインが…ん?意外と少ないがこれだけか?」


勇者「…ここですね」チャリン


カラカラカラカラ
      コト…


ディーラー「お、お見事です…(超能力者なのか!?)」


スラりん「また当たった!」


女騎士「確かに当たったが……何故コインを一枚しかベットしてないんだ?このゲームは一枚以上ベット出来るんだぞ?」


勇者「知ってますよ。でも、もし大量のコインをベットしてハズしたら大損害です。そんな危険なこと出来ません。こうやってコツコツ貯めるのが一番です」


女騎士「コツコツ過ぎる」


ディーラー「ではベットしてください」


勇者「次は……ここですね」チャリン


女騎士「ここにコイン全部だ」ジャラジャラジャラ


勇者「えっ!?こ、これでもしハズれでもしたら…」アセアセ


女騎士「絶対にハズれない。私は勇者を信じてる。それに勇者は私を頼りにしてくれているのだろ?だったら…私を信じてくれ」


勇者「……わかりました」


ディーラー(お店側としては最悪だ…)ガクガク


カラカラカラ…


女騎士(こい!)

スラりん「…ねぇ勇者、今の女騎士っていつもと比べたら綺麗になったと思わない?」


女騎士「はあ!?き、貴様!何を言っているんだ!?」


勇者「そうですよ、スラりん。女騎士さんはいつも綺麗じゃないですか」


女騎士「そうだぞ!私はいつも綺麗……ふぁあ!?///」アタフタ


スラりん「ちょっと女騎士!嬉しいのはわかるけど、その靴で舞い上がると危ないよ!」


女騎士「ま、舞い上がってなどいない!///」ヨロッ


カラカラカラ
        コト…―ガタッ―コトッ


ディーラー「あっ…(お客様がテーブルに当たってずれた)」


女騎士「」

勇者「」

スラりん「」


____________________


スラりん「あーあ、女騎士のせいで全部パーだよ」


女騎士「すまん……」ドヨーン


スラりん「(よ、予想以上に凹んでる…)ご、ごめん、ちょっと言い過ぎたよ!僕も稼ぐの手伝うから元気だして!」


勇者「スラりんの言うとおりです。また稼げばいいだけなんですからそんな落ち込まないでください」


女騎士「し、しかし…」


勇者「それに…コインは失いましたが、それよりももっと大切なモノを得られた気がしますし…」


女騎士「大切なモノ?」


勇者「…では宣言通り、スラりんに一肌脱いでもらいましょうか」


スラりん「僕、服着てないよ?」


勇者「そういう意味じゃありませんよ。ほら、あそこでスラりんに稼いでもらいます」


スラりん「あそこ?」



『スライムレース』



スラりん「……な、何回ぐらい勝てばいいのかな?」


勇者「そうですね。毎回1コイン賭けますから倍率を計算しても…」


スラりん「せめて1コイン以上賭けて!!」


スライムA「ピキー!(負けない!)」ピョン ピョン


スライムB「ピキピキー!(絶対に勝つ!)」ピョン ピョン


スラりん「うおおお~~~~!!」ピョンピョンピョンピョン!


スライム達「」






勇者「スラりん、頑張ってますね」


女騎士「さすがに私達と一緒に冒険してるだけあって、他のスライム達とは格が違うな」


勇者「お疲れ様です、スラりん。見事1位でしたね」


スラりん「あ…あとこれを何回やればいいの?」ハァ ハァ


勇者「最初は倍率が高かったですが、今のレースの活躍で低くなるので…最低でも10回以上は…」


スラりん「勇者って意外とドS!?」


勇者「否定はしません」


女騎士(いつも体を鍛えている私はきっとMだ…だから勇者と相性もいいはず……って何を考えているんだ私は!?///)ブンブン!


勇者「女騎士さん?」


スラりん「」ゼェ ゼェ


勇者「スラりんのおかげでたくさんコインを稼ぐことが出来ました。これならあの剣と交換出来ますね」


女騎士「ご苦労だった。いつもみたいに勇者の頭の上で存分に休め」ヒョイ


スラりん「よ…よろしく勇者…」グター


勇者「私の頭の上はスラりんの休憩場では無いんですけどね」クスッ


女騎士「そういえば僧侶はどこだ?」


勇者「魔力で探しますからちょっと待っててください……スロットの所にいますね。行きましょう」


女騎士「…なぁ、私は魔力が無いだろ?もし見失ったらどうやって見つけるんだ?」


勇者「何もしませんよ。私は女騎士さんを信頼してますし」


女騎士(仲間としては嬉しいが…女としてはさみしいな…)


勇者「…まぁ、絶対に見失ったりしませんけどね」


女騎士「そ、そうか…///」


スラりん「ほ…惚れ…た?」ゼェ ゼェ


女騎士「そこまで無理して言いたいのか?貴様は」


僧侶「ど、どうしよう…」アセアセ


勇者「こ、これは……」


僧侶「ゆ、勇者様!大変なんです!」


女騎士「確かに大変だろうな…」


僧侶「ス、スロットから出てくるコインが止まらないんです!」ジャラジャラジャラジャラジャラ


スラりん「ぼ…僕の努力は……?」


女騎士「…無駄だったな」


スラりん「」


____________________


魔法使い「あっ、皆おかえり~!で、どうだった?」


勇者「僧侶さん…とスラりんのおかげで無事に『勇者の剣』を得ることが出来ました」


スラりん「勇者…その気遣いが逆に傷つくよ…」シクシク


勇者「…すいません、スラりん」


僧侶「僕もごめん…」


女騎士「何はともあれかなりの資金が集まったんだ。結果オーライだろ」


勇者「では、次の町に向かいますか」


バサバサ


スラりん「ん?みんな、上を見て!」


勇者(あれは…カイザー!?)バッ


フェニックス「クァー!」バサッ


僧侶「わー!フェニックスなんて初めて見た!」キラキラ


女騎士「勇者の腕に留まったってことは…勇者の知り合いなのか?」


勇者「ええ、まぁ…」


勇者(魔王様のペットなんですが…魔王城の周辺から一度も離れたことが無いカイザーがここまで来るなんて…魔王様の身に何かあったのでしょうか?もしくは…)


フェニックス「クァクァー!」ウルウル


勇者「(やっぱりそっちですか…ペットまで限界になるとは…)…わかりました。そろそろ旅を終わりにしますよ」


フェニックス「クァー!」パアァ


勇者(そのかわり私が帰ることは魔王様に内緒にしてくださいね)ボソッ


フェニックス「クァー!」コクコク


女騎士「ゆ、勇者…そろそろ旅を終わりにするってどういう意味だ?」


勇者「もう少し色んな場所を旅したかったんですが…そろそろ時間切れみたいです」


魔法使い「時間切れ?」


勇者「はい。次の目的地は…魔王城です」

今日はここまで

次回の投下で終わらす予定です

ではまた


――魔王城――


女騎士「ついに辿り着いたな、魔王城に…」


僧侶「ここに魔王が…でも、何でこの城の周辺には一匹も魔物が居なかったのかな?」


スラりん「お城の中で待機してるのかも…」


魔法使い「それにしても…きったない城ね。最終決戦の場としては盛り上がりにかけるわ」


勇者「」


女騎士「ゆ、勇者…?大丈夫か?」


勇者「」


スラりん「おーい、勇者ー」


勇者「」


魔法使い「よくわからないけど放心してるわね…そうだ!女騎士ちゃんのキスで目覚めさせれば―「しない!」


女騎士「まったく…ほら、勇者!そんなんでは魔王を倒せんぞ!」ユサユサ


勇者「はっ!あ…あまりの廃れ具合におもわず気絶してしまいました…」


バアウ!


魔法使い「う、後ろから何か来るわよ!」バッ


女騎士「敵か!?」チャキッ


ケルベロス「バァウ!」ダダダダダダッ


僧侶「地獄の門番と言われてるケ、ケルベロスだ!」キラキラ


スラりん「目を輝かせるとこじゃないよ!?」


勇者「ケル!お座り!」


ケルベロス「バアウ!」チョコン


魔法使い「…え?」


ケルベロス「クゥ~ン…」スリスリ


勇者「すいませんでした。長い間お城を空けてしまって。後でおやつを買ってあげますね」ナデナデ


ケルベロス「バアウ!」パアァ


僧侶「ゆ、勇者様…?これは一体どうこと?」


勇者「それは…中に入ってからお話します」


魔王の間



女騎士「魔王もその手下も誰も居ない…」


勇者「あのお方はまだ寝ているんですか……魔王様!起きて出てきてください!」


スラりん「…ん?魔王…様?」


コノコエハ!?

ダダダダダダダダッ
          ザッ


魔王「そ、側近!!」パアァ


勇者「ハアァッ!」ピッ!


魔王「三度目の拘束!?いや、四度目じゃったか?」


勇者「皆さん、離れててください…」ゴゴゴゴゴゴゴ


女騎士「スラりん!早く勇者の頭から退くんだ!」


スラりん「ピ、ピキー!」ピョン!


魔王「そ、側近…ま、まずは久々の再会をじゃな…」


勇者「まずは…約束を破ったお仕置きです!」ボオォォ!


魔王「熱っ!?ちょっ、これガチのヤツじゃないか!!」


勇者「ハアァッ!」バチバチバチ!


魔王「ぎゃあぁぁあああ!!燃え痺れて死ぬぅぅううう!!」ビリビリビリ


勇者「まだまだです!」



ギャアァァ~~!!




スラりん「…何か魔王がかわいそう」


僧侶「…そうだね」



一時間後



勇者「はぁ…はぁ…さすがに私も魔力が切れました…」


魔王「」チーン


女騎士「や、やったな勇者…」


勇者「いえ、この程度では魔王様を倒すことなんて出来ませんよ」


魔法使い「えっ?」


魔王「さ…さすがのワシも…死を覚悟したぞ…」ムクッ


僧侶「そ、そんな!?あれだけの攻撃を食らってまだ生きてるなんて…」


女騎士「だが、無傷ではない…叩くなら今!魔王、覚悟!」チャキッ


勇者「待ってください女騎士さん。全てお話しますから…ほら、魔王様はご自分で回復しててください」


魔王「お前…よりドSになってないか?」


勇者「あっ、それとこれお土産です」


魔王「おおっ!って…こんないっぱいペナント貰っても嬉しくないぞ!?普通はお菓子とか名産品じゃろ!」


勇者「魔王様、今から大事な話があるので静かにしててください」


魔王「せっかくの再会なのに…」イジイジ


スラりん(何この状況…)


勇者「ではまず初めに…皆さん、今まですいませんでした。私は…魔王様の直属の部下である側近です」


僧侶「勇者様が魔王の側近!?」


魔法使い「だからそんなに強かったのね…」


女騎士「つまり……最初から私達は騙されていたということか…」


勇者「確かに正体を隠していましたが、騙してはいません。私は魔族と人間のハーフで、本物の勇者の血を継ぐ者です。それに…皆さんとの旅は本当に楽しかったですし…」


スラりん「でも魔王を倒す旅なのに…」


僧侶「そ、そうだよ!魔王を倒さないとこの世界は平和にならないんじゃ…」


勇者「皆さんはそこを根本的に勘違いしているんです。魔王様を倒しても世界は平和になりません。むしろ悪化してしまいますよ」


僧侶「…へ?」


勇者「まず世界が荒れ始めたのは50年前、前魔王様であるお父様が亡くなられたことが発端です」


魔法使い「前魔王は温厚で人間に危害を加えなかったけど、現魔王は世界を滅ぼそうとしてるって話じゃないの?」


勇者「まったくの逆です。前魔王様はそれはそれは立派なお方で、平和をこよなく愛してました」


女騎士「それのどこが逆なんだ?」


勇者「皆さんが知ってる通り、魔物や魔族は基本的に争いを好む種族が多いのです。そこで前魔王様はその者達を力で無理矢理黙らせていたのです。所謂、恐怖政治ってヤツです」


女騎士「なるほど…だが、恐怖政治はいつかは滅びるものだ。反乱する者達も多かったんじゃないのか?」


勇者「前魔王様の考えを否定してる者はかなり多かったですが…反乱はほとんどありませんでした」


スラりん「どうして?」


勇者「普段は温厚な前魔王様ですけど…一度キレると手が付けられないほど暴れるので、皆怖くて誰も反乱なんてしようと思わなかったんです。ちなみに魔王軍は名目上その者達を武力で押さえつける軍隊となっていたんですが…本当はキレた前魔王様を静める為に作られた軍隊なんです」


女騎士「そういえばあの竜騎士も魔王軍だったな…」


魔法使い「そんな絶対的抑止力である前魔王様が死んだことで、今までの鬱憤が噴火しちゃって魔物達が世界中で暴れるようになったと…そゆこと?」


勇者「はい、その通りです。そして前魔王様に代わって、ご子息である魔王様が魔物達の頂点に君臨したのですが……皆さん、こちらの魔王様を見てください」


魔王「ふっふっふ…ガハッハッハッハ!」


勇者「…威厳のいの字も見当たらないですよね?」


女騎士「確かに…」


魔王「痛烈じゃな!?」


勇者「魔王様も前魔王様であるお父様と同様…いえ、それ以上に争いを好まないのですが……見ての通り、だらしなさ過ぎて魔物達からもなめられているのです」


僧侶「じゃ、じゃあどうすればこの世界を元の平和な世界に戻すことが出来るの?」


勇者「一番簡単なのは魔王様がまた恐怖政治を行えばいいんですが…それだとまた同じ過ちを繰り返すだけですし、何より魔王様はそんなこと出来ません」


魔王「そろそろワシも泣くぞ?」グスン


勇者「…他の者達がどう言おうと私は今でも信じています。魔王様なら恐怖政治を敢行せずに、人間と魔物が仲良く手を取り合えるような世界にすることが出来る立派な君主になられると…」


魔王「側近…」


勇者「でも…もう我慢の限界です」


魔王「へ?」


勇者「私にいい考えがありますので、魔王様と皆さんにも協力してもらいます。いいですか?」


スラりん「もちろんだよ!」


僧侶「僕達は仲間なんだから当然だよ、勇者様」


魔王「ワシはめんどくさいのはイヤじゃぞ」


勇者「魔王様は強制です。イヤと言っても無理矢理連れて行きます」


魔王「それ、協力と言わんのじゃないか?」


勇者「女騎士さんも協力してくれますか?」


女騎士「…ああ」


魔法使い「で、何をすればいいの?」


勇者「そうですね…女騎士さんと魔法使いさんはあるモノを作ってもらいます。スラりんと僧侶さんは魔王様と一緒に近くにある魔物が住む街『魔国』に行って、城の者達を連れ戻してきてください。ついでに買い物もお願いします」


魔王「えーダルいー」


勇者「…魔王様?」ニコ


魔王「うむ、了解じゃ」


僧侶「勇者様は?」


勇者「私は…誰かさんが約束を守らなかったので、このお城の掃除をします。皆さんが帰ってくる頃には終わらせます」


魔王「すいませんでした」


____________________



ケルベロス「バァウ!」ダダダダダダダッ


僧侶「わー!速ーい!」キラキラ


魔王「魔法で飛べばすぐに着くのに…」


僧侶「勇者様からケルの好きなおやつも買うように言われましたから」


魔王「おい、お前はワシの部下じゃないんだ。敬語は使わんでいい」


僧侶「…じゃあ魔王さんと僕は友達ってことでいい?」


魔王「友達か…考えてみれば部下はたくさんおるが友達はおらんのぅ。よし、お前は今日からワシの友達になれ!これは命令じゃぞ!」


僧侶「友達は命令されてなるものじゃないよ」クスッ


魔王「そういうもんなのか?じゃあどうすれば友達になれるんだ?」


僧侶「大丈夫、もう僕達は友達だよ。これからよろしくね、魔王さん」ニコ


魔王「うむ」


スラりん(…何でこんなに打ち解けるの早いの?)


魔王「お前もついでに友達にしてやろう」


スラりん「へ?」


魔王「イヤなのか?」


スラりん「い、いえ!ありがとうございます!」


――魔国――


ケルベロス「バゥ?」スタスタスタ


僧侶「魔王さん、どこ行けばいいか?だってさ」


魔王「お前もケルの言葉がわかるのか?」


僧侶「うん、勇者様に教えてもらったんだ。魔王さんは教えてもらわなかったの?」


魔王「勉強嫌いだから途中で諦めた」


スラりん「ああ…魔王のイメージがどんどん崩れていく…」


僧侶「僕は逆に良いイメージになったよ。魔王=悪者の親玉ってイメージだったから」


魔王「ワシ、何も悪さしてないんじゃがな」


ケルベロス「バアゥ!」


僧侶「ああ、ごめん!それで魔王さん、どこに行けばいいの?」


魔王「城の者達に戻るよう伝えろって言ってたが…先におやつを買おう!」


僧侶「ちょっと魔王さん!?」


スラりん「僕も魔王に賛成!」


ケルベロス「バアウ!」


僧侶「スラりんとケルも!?」


魔王「よし、行くぞ!」


僧侶「だ、駄目だよ!」


魔王「えーいいじゃないか」


僧侶「駄目!おやつだけじゃなくて、ちゃんと言われたモノも買わないと…」


魔王「僧侶!」パアァ


僧侶「魔王さん、オススメのおやつ教えてね」


魔王「モチロンじゃ!」グッ


僧侶「じゃあおやつ…じゃなくて、買い物を先にすましちゃおー!」


魔王・スラりん・ケル「おーーっ!(バァウーーっ!)」


____________________


勇者「ふぅ…」


魔法使い「おー!凄い綺麗になったね!」


勇者「まだまだですよ。魔法使いさん、そちらの方はどうですか?」


魔法使い「バッチシよ!伊達にレイヤーやってないからね」


勇者「本当に助かります。ありがとうございます」


魔法使い「でも……女騎士ちゃんの方は私じゃどうにも出来ないよ。ちゃんと二人きりで話をしないと…」


勇者「…はい、わかってます」



タダイマー!



勇者「おかえりなさい。ちゃんと買い物出来ましたか?」


魔王「モチロンじゃ!」エッヘン!


僧侶「はい、これ頼まれた食材。ケルにもちゃんとおやつを買って食べさせてあげたよ」


勇者「そうですか。魔王様、僧侶さん、スラりん、ありがとうございます。それで…お城の者達は?」


魔王・僧侶・スラりん「」ギクッ


魔王「み、皆旅行中で留守じゃったぞ!」アセアセ


勇者「…僧侶さん、本当ですか?」


僧侶「そ、それは……」


勇者「…魔王様も正直に言えば許してあげますよ」


魔王「おやつを買って食べたら眠くなって昼寝してました。すいません」ペコ


僧侶・スラりん「ごめんなさい」ペコ


勇者「はぁ……だから先に伝えてくださいって言ったのに…人選を間違えましたね」


魔王「それで側近…腹が減ったぞ」グゥ~


勇者「おやつ食べて昼寝して、また食べるんですか?」


魔王「ワシの嫌いな言葉は『我慢』じゃ」


勇者「じゃあもう少し我慢してください」


魔王「酷いっ!?」ガーン


勇者「掃除が全部終わったら夕飯にしますから、魔王様も手伝ってください」


魔王「よかろう…夕飯の為じゃ!頑張るぞ、僧侶!スラりん!」


僧侶・スラりん「おーっ!」


勇者(…人選は間違ってなかったみたいですね)クスッ


____________________


勇者「はい、出来ました。皆さん、どうぞ召し上がってください」


魔王「久々の側近の手料理…どれほどこれを待ち望んだか…」ウルウル


勇者「泣くほどですか?」


スラりん「僕達はほぼ毎日勇者の手料理を食べてたよ」


魔王「羨ましい…!」ギリッ


勇者「ほら、そんなくだらないこと仰ってないで食べてください。せっかくの料理が冷めてしまいますよ」


魔王「それはいかん!」ガツガツ


勇者「では私はお城の者達を呼び戻してきます」


魔法使い「さっきの今で魔力回復したの?」


勇者「いえ、まだ回復しきってないのでカイザーに連れてってもらいます。その為帰りは遅くなるので、先に寝ててください。魔王様、皆さんに客室の場所を教えておいてくださいね。では、行ってまいります。カイザー!」


フェニックス「クァー!」


バサバサッ バサバサッ


魔王「あやつも大変じゃのぅ」モグモグ


魔法使い「ほとんどあなたのせいでしょ。勇者様を大切に思ってるのならもっとしっかりしないと」


魔王「む…だが、主君に尽くすのは部下の役目じゃろ?」


魔法使い「甘いわ。尽くす側も権利ってもんがあるの。だから他の人達は皆あなたから離れていったんでしょ?」


魔王「ぐぬっ」


魔法使い「それでも…例えあなたの傍に居なくても、勇者様はずっとあなたに尽くす。絶対にあなたを裏切らない。あなたはそれを良いことにあの人に甘えてるだけだわ」


魔王「………」


魔法使い「あの勇者様があそこまであなたを慕っているのだから、あなただって本当は立派な人なんだと思う…だから、少しでいいから勇者様の為にも誇れる主君になってあげなよ」


魔王「…うむ、お前の言うとおりじゃな」


スラりん「魔法使いがマジメなことを言ってるとこ初めてみた…」


魔法使い「私だってたまにはマジメなこと言うわよ。それに…これは魔王にだけ言ってるわけじゃないわ。そこで黙ってる女騎士ちゃん、あなたにも言ってるのよ」


女騎士「……何のことだ?」


魔法使い「しらばっくれないで。みんな女騎士ちゃんの想いに気づいてるんだから」


スラりん「そうそう、むしろ気づいてない勇者の方が凄いよ」


女騎士「………」


魔法使い「明日でこの旅も終わる。つまり、もう『仲間』に甘えることも出来ないの」


魔王「ん?どういうことじゃ?」


僧侶「魔王さん、今は黙ってて」シー


魔王「そ、そうか…すまぬ」


スラりん(本当に威厳のいの字も無いんだね…)


魔法使い「これからも傍に居たいんでしょ?だったら勇者様が帰ってきたら自分の気持ちを伝えるのよ。わかった?」


女騎士「…ああ、わかった」


____________________


バサッ


勇者「ふぅ…」


女騎士「ご苦労だったな、勇者…」


勇者「あれ?女騎士さんはまだ起きてたんですか」


女騎士「少し勇者と話したいことがあってな…いいか?」


勇者「はい、私も女騎士さんとお話したいと思ってました…最初に私から話してもいいですか?」


女騎士「ああ…」


勇者「女騎士さん、今まで騙してて本当にすいませんでした」


女騎士「別に騙してたわけじゃないんだから、それはもういい」


勇者「…女騎士さんは私の正体に薄々気づいてたんですよね?」


女騎士「ああ…さすがに魔王の側近だとは思いもしなかったが、不自然なほど高い魔力や竜騎士との関係から『勇者は魔王の部下では?』と思っていた…」


勇者「だったら…何故私についてきたんですか?」


女騎士「勇者と一緒に旅をしてるうちにそんなことどうでもよくなったんだ……勇者の傍に居たかったんだ」


勇者「………」


女騎士「私は…勇者のことが…s―「ありがとうございます」


勇者「私も女騎士さんやスラりん達と一緒に旅が出来て本当に良かったです。ですが…明日でそれも終わりですね」


女騎士「だから私は…!」


勇者「女騎士さん、本当にありがとうございました。たまにはお城に遊びに来てくださいね。魔王様と一緒に待ってますから」


女騎士「ゆ、ゆうs―「話はこれぐらいにして明日に備えてもう寝ましょう。おやすみなさい、女騎士さん」


女騎士「あ……」


勇者(これでいいんです。これで……)スタスタスタ


____________________


勇者「ではお城の方は戻ってきた方々に任せて、私達は最後の旅に行きますよ」


女騎士「…ああ」


魔王(…何か失敗したみたいじゃな)ヒソヒソ


魔法使い(…そうね)ヒソヒソ


僧侶「勇者様、結局詳しい内容は聞いてないけど、どうやって世界を平和にするの?そんな簡単に出来るの?」


勇者「そんな簡単には出来ません。でも実は…今までの旅が下地となっているんです」


スラりん「え?そうなの?」


勇者「はい。では皆さん、少しの間だけ飛びますが我慢してくださいね」


ヒューーーーーーーーン!


____________________


スタッ


勇者「到着しました」


僧侶「ここは…僕の暮らしてた町だ!」


勇者「ではまず、町長さんのとこに行きましょう」


スタスタ


エルフ「お、おい…あれって…」

サキュバス「ま、魔王様!?」

町人「それにクラーケンを退治してくれた勇者様達も一緒だぞ!」


魔王「騒がしいのぅ…」


勇者「まぁ魔王様がこんなところに居れば騒がしくもなりますよ」


僧侶「あっ、居ました。お久しぶりです!町長さん!」


町長「あ、ああ…久しぶりだな、僧侶。それに勇者様」


勇者「いきなりですがまず謝らせてください。あの時は防御膜を壊してしまいすいませんでした」ペコ


町長「えっと…どうして勇者様が謝っておられるのですか?」


勇者「私の監督不行き届きでもあるので…ほら、魔王様も謝ってください」


魔王「な、何故ワシが謝らんといけんのじゃ…?」


勇者「それ…本気で言っているんですか?」バチッ…


魔王「じょ、冗談じゃぞ?ちゃんと謝るから落ち着け!稲妻が漏れとるぞ!」


勇者「おっと、すいませんでした。魔王様を怒ろうとするとつい条件反射で出てしまうんです」フッ


魔王「条件反射ってなんじゃ?」


勇者「説明してもご理解できないと思うので気にしないでください」


魔王「最近ちょっと冷たすぎないか?」


魔王「お前がこの町の町長か?」


町長「は、はい!」ビクビク


魔王「この間は勝手に膜を壊してすまなかった」ペコ


町長「…えっ!?い、今はもう膜は必要ないのでそんなに謝らなくても大丈夫ですよ!」アセアセ


勇者「魔王様、許してくれたみたいですよ。これからは軽率な行動は控えてくださいね」


魔王「うむ、それが君主のあり方じゃな」


勇者「……貴方は本当に魔王様ですか?」


魔王「何を言っておるんだ?当たり前じゃろ」


勇者「ま、魔王様が本当に君主らしいことを仰るなんて…今日は天変地異が起きるのでしょうか?」


魔王「ワシ直々に起こしてやろうか?」


町長「あ、あの…」


勇者「ああ、忘れてました。町長さん、少しお話があるんですが、いいですか?」


町長「は、はい」


勇者「では、ここじゃあれなので僧侶さん行き着けのお店に行きますか」


魔王「そこの飯はうまいのか?」


僧侶「もちろん!魔王さんも絶対に気に入るよ!」


魔王「よし、すぐに向かうぞ!」


____________________


魔王「ふぅ…美味じゃったな」


勇者「ここのお店の味は真似したくても出来ないんですよ。まさにプロの味です」


魔王「じゃあそろそろ行くかのぅ」


勇者「そうですね。町長さんとも話が出来ましたし」


魔王「店長、また来るぞ」


店長「あ、ありがとうございます!またのご来店お待ちしております!」


スタスタ


魔王「それでここの町長と何を話してたんだ?」


勇者「町の入り口にあるモノを立ててもらうようお願いしたんです」


女騎士「…勇者、立て終わったぞ」


勇者「…ありがとうございます、女騎士さん」


僧侶(ねぇ…二人はあのままなのかな?)ヒソヒソ


スラりん(わからない…でもこれは二人の問題だから迂闊に口は挟めないよ)ヒソヒソ


魔王「おお!これは我が魔王軍の旗!それにこっちは…」


勇者「昨日女騎士さんと魔法使いさんに作ってもらった勇者の旗です。この辺の魔物達は私が説得もしくは調教しましたので、これで気性の荒い魔物達も悪さをしないはずです」


魔王「なるほど…つまり魔王であるワシと、旅で知名度を上げたお前という後ろ盾があることを他の者達に示してるというわけか。このまま他の町や村にも行くんじゃろ?早く向かうぞ、側近」


勇者「……魔王様、本当にご立派になられましたね」ウルッ


魔王「な、泣くんじゃない!これぐらい当たり前だと言っておるだろ!」


勇者「そ、そうですよね。魔王様は以前から立派なお方……ではないでしたけど」


魔王「おい」


勇者「でも今はとても立派です。私も魔王様の側近として誇らしいです」


魔王「そうじゃろ!」ドヤッ


魔法使い(やれば出来るじゃない)


勇者「では皆さん、次の町に向かいましょう!」


____________________


スタッ


魔王「ふぅ…随分とまわったのぅ」


僧侶「勇者様、皆元気にしててよかったね」


勇者「そうですね」


魔法使い「もう一回砂漠のカジノに行きたかったなぁ~」


魔王「ワシは雪山村のアイスをもう10個ほど食べたかったなぁ~」


勇者「実は魔王様、お土産をペナントだけにしたのはこれが理由でもあるんですよ」


魔王「どういうことじゃ?」


勇者「例えば雪山村のアイスクリームは、極寒の地で食べてこそあの美味しさなんです。そうやって現地に行かないと味わえない『味』を魔王様にも味わって欲しかったのです」


魔王「なるほど…で、この村は何が魅力なんだ?」


勇者「この村は自然豊かでのどかな村でしたが………だ、大分変わりましたね」


スラりん「う、うん…」


女騎士「そ、そうだな…」


魔法使い「私の…故郷が……子供で溢れかえってる!?」


勇者「こんなことするのは…あの人しか居ませんよね」ハァ…


子供A「あー!勇者様達だー!」


子供B「魔法使いのコスプレをしてるお姉ちゃんも一緒だー!」


魔法使い「だからこれはコスプレじゃないって言ってるでしょ!この衣装以外がコスプレなの!それよりあなた達の親代わりのとこに連れてって」


子供達「はーい!」


竜騎士「ようこそおいでくださいました、魔王様、側近様」


魔王「うむ、元気じゃったか?」


竜騎士「はい、それはそれはとても元気に暮らしています」


勇者「そうでしょうね…こんな大きな学校を建てるなんて…」


竜騎士「村長が一つだけお願いごとを聞いてくれると言ったので、私の夢の一つであった学校を建てたんです!」ドヤッ


女騎士「前より子供が増えてる気がするんだが…」


竜騎士「……フッ、察してくれ」


スラりん「誘拐か…」


竜騎士「違う!私は子供が嫌がることなどしないと言っただろ!世界中の身寄りの無い子供達を連れてきたんだ!」


勇者「まぁ子供達は幸せそうですし、悪いことではないからいいですけど……子供達に変なことしてませんよね?」


竜騎士「そ、そんなことするはず無いですよ!」アセアセ


子供C「竜騎士お姉ちゃ~ん、今日もペロペロしてよ~」


竜騎士「ちょっ!?やったあげるから今はそんなこと言うんじゃない!」


子供D「あっ、ズルい!今日は僕の番だよ!」


子供E「私もペロペロして欲しい~!」


スラりん「うわぁ…」


魔王「これは完全にアウトじゃな…」


竜騎士「だ、大丈夫です!まだ本番はしてませんから!」


勇者「そういう問題じゃありません。これからはそういうことは控えるようにしてください」


竜騎士「はい……週五にします」シュン


スラりん「いや、全然控えてないじゃん」


魔法使い「そもそも控えないでやめさせようよ」


子供「みんなバイバーイ!」フリフリ


勇者「旗は必要なさそうですが、一応立ておきました。竜騎士さん、子供達とこの村をしっかり守ってくださいね」


魔王「こっちのことは心配するんじゃないぞ。それとたまには子供達を連れて遊びに来い。ケルに乗せてやるぞ?」


竜騎士「…魔王様、雰囲気が変わりましたね」


魔王「じゃろ?」ドヤッ


竜騎士「必ず遊びに行くと約束します、魔王様。それに子供達を立派に育てて、いつか魔王様の下につかせるのも私の夢の一つですから」


魔王「うむ、期待して待っとるぞ」


勇者「では、次のスラりんの故郷が最後です。行きましょう…その前に、竜騎士さん」


竜騎士「はい?」


勇者「そろそろ僧侶さんを解放してあげてください」


僧侶「竜騎士さん、離して~!」ジタバタ


竜騎士「はーい…」シュン


勇者(本当に誘拐してないか怪しいですね…)


竜騎士「僧侶ちゃん!また遊びに来てね!今度はペロペロしてあげるからね!」


僧侶「遠慮します!」


――魔王城――


スタッ


魔王「やっと終わったぞ…もう夜になってしまったな」


スラりん「最後の王様の顔は傑作だったね。ポカーンってなってたよ」


僧侶「そりゃ悪いイメージのある魔王さんが勇者様と一緒に現れて『これからも魔物と人間が仲良く暮らす町を作るんじゃぞ』なんて言うんだもん」


勇者「魔王様が立派すぎて途中から涙が止まりませんでしたよ。あぁ…思い出したらまた涙が……」ウルッ


魔王「お、おい!お前、そんなに涙もろかったか?」


魔法使い「…その涙は本当に嬉し涙なのかしら?」


勇者「……やはり貴方は最後まで読めない人ですね」


スラりん「最後…」


勇者「はい。皆さん、今まで本当にありがとうございました。すぐには平和になりませんがこれからは私達がどうにかしていきます。なので……これでお別れです」


僧侶「勇者様…」ウルウル


勇者「僧侶さん、今生のお別れでは無いんですからそんな顔しないでくださいよ。では私が皆さんの故郷へ連れて行きますね」


魔王「…お前はずっと移動魔法を使っていたんじゃ。ほとんど魔力が無いんじゃろ?ワシが連れて行く。お前らは外で待っておれ」


スラりん「で、でも…!」


魔法使い「ほら皆、行きましょう」スタスタスタ


女騎士「ああ…」スタスタスタ


勇者「魔王様、やっぱり私が…」


魔王「本当にこのままでいいのか?お前はどうしたいんだ?」


勇者「…何のことですか?」


魔王「女騎士のことに決まっておる。あやつはお前を好いて、お前はあやつを好いているんじゃろ?それなのに…このまま黙って行かせるのか?」


勇者「今日の魔王様は本当に別人ですね………はい。確かに私は彼女に惹かれています。また、彼女の好意もわかってます」


魔王「なら何故…」


勇者「私が魔族と人間のハーフだからです。私は魔王様よりも早く死んでしまいますし、彼女と一緒に年をとることも出来ません。それに私は死ぬまで魔王様に尽くすと誓った身、元より結婚するつもりもありませんし…何より彼女はまだ若い、ハーフである私よりももっと彼女に相応しい人が現れるはずです」


魔王「側近…ワシを言い訳に使うな、殺すぞ?」ギロッ


勇者「ま、魔王様…?」


魔王「ワシはお前の主君じゃ。お前がワシを慕うように、ワシもお前に幸せになってほしいのじゃ。今日のワシを見てたじゃろ?ワシは意外としっかりしておる。少しぐらいなら他のヤツの為に尽くすのも許してやるぞ」


勇者「でも…」


魔王「ええい!手の掛かる部下じゃな!」


勇者「…魔王様には言われたくないです」


魔王「う、うるさい!とにかく主君の命令じゃ!お前はもっと我侭を言え!自分のしたいことを我慢するな!お前は『我慢』の嫌いなワシの部下なんじゃろ?」


勇者「魔王様…」


魔王「側近、もう一度聞く。お前はどうしたいんだ?」


勇者「私は………やっぱり魔王様のお傍に居たいです」


魔王「貴様…!」


勇者「でも…私の傍には女騎士さんが居てほしいです…」


魔王「…で、お前さんはどうしたいんだ?女騎士」


女騎士「………」


勇者「女騎士さん…」


女騎士「私の答えは決まってる……勇者、本当にこんな私でいいのか?」


勇者「はい…女騎士さんじゃないと駄目なんです」


女騎士「私は普通の人間だ…勇者よりも先に老い、先に死ぬ…それでもいいのか?」


勇者「はい…どんな姿になろうと愛しますし、死んでも貴方だけを愛し続けます」


女騎士「…私はこれからもずっと勇者の傍に居ていいのか?」


勇者「はい…女騎士さん、これからも私の傍に居てください。仲間としてではなく、私の最愛の人として…」


女騎士「…はい」






魔王「うむ、ハッピーエンドじゃな」


魔法使い「やるじゃない、魔王ちゃん」


魔王「ちゃん付けはやめんか。それより今日はもう疲れたからお前達ももう一泊していけ」


僧侶「魔王さんが良ければ僕はもうしばらくここに居たいんだけど…」


スラりん「僕も!」


魔王「うむ、いいじゃろ。ワシらは友達じゃからな」ニカッ


魔法使い「私は…メイドとしてなら働いてあげてもいいわよ?」


魔王「いや、間に合っておる」


魔法使い「ひどいくない!?私の貢献度メッチャ高いのよ!?」


魔王「冗談じゃよ。お前には借りがあるからのぅ。好きにせい」


魔法使い「ふ~ん…ホントに少し大人になったのね」


魔王「言っとくがワシ、300歳じゃぞ?」


____________________


魔王「…は?いや、お前は何を言っているんだ?」


勇者「ですから女騎士さんと一緒に新婚旅行に出かけてまいります」


魔王「はい、ちょっと待とうか」


女騎士「ちょっと早いと私も言ったんだが、勇者がどうしてもと言うのでな…///」


勇者「そんな長くならないと思いますが…帰ってくる頃には二人ではないかもしれませんね」


女騎士「///」


魔王「それ絶対長いよね!?一年以上は掛かるよね!?」


勇者「それでは行ってまいります」


魔王「待てぇぃいい!!ワシの食事は!?おやつは!?話し相手は!?城の掃除は!?てかこれ前と同じ流れじゃないか!?」


勇者「今回は僧侶さんやスラりん、魔法使いさんが居るじゃないですか。他の者達も前より魔王様を慕っておられますし」


魔王「で、でもやっぱりワシは他でもないお前に、傍に居てほしいんじゃよ…今までずっと旅で居なくてさびしかったんじゃから…」シクシク


女騎士「…勇者、やはりもう少し日にちをおいていいじゃないか?」


魔王「女騎士…!」パアァ


勇者「私は今この時間を大切にしたいんです。それに魔王様は言ったじゃありませんか。自分のしたいことを我慢するなと」


魔王「た、確かに言ったが…」


勇者「今私は女騎士さんと二人きりになりたいんです」


女騎士「ゆ、勇者…///」


勇者「と言うことで……魔王様、ファイトです!」グッ


魔王「イヤじゃ~~~~~~!!」ジタバタ


勇者「ハァッ!」ピッ!


魔王「ああ…またこれか…」ピタッ


勇者「では魔王様、行ってまいります。お元気で!」ヒューーーーーーーーン!


魔王「そ…そんなぁ…」ガクッ



Fin

これで完結です


もう少し書きたかったんですがキリがいいので終わらせました
見てくださった方々、ありがとうございました


ではまた何処かで

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