島村卯月「ウィンク」 (49)
オリジナル設定ちょいありです、苦手な方は注意
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――――見えた?
――――見えたよ、はっきりと。
凛「ねぇ未央」
未央「ん? なになに?」
凛「卯月の事なんだけど」
未央「しまむーの? 倦怠期の相談はちょっとお答えできないかな~」
凛「……真面目な話」
未央「むっ」
凛「最近、卯月ってニュージェネレーション撮影の時に見せたあの笑顔、あんまり見せてくれないよね」
未央「そう……だね、確かにそうかも」
凛「でもその代わりにウィンクしてるシーンが増えたと思うの」
未央「むむむ?」
凛「プロデューサーと何か話したのか、それとも他のアイドルと何かあったのか……」
未央「しぶりんってば嫉妬?」
凛「そんなんじゃ、ないけど……」
未央「まぁ、だったらさ。しまむーに直接聞いてみようよ」
凛「そっか。……うん、そうしよう」
――――アイドルに、先輩とか後輩とか関係ないって思うよ?
――――それなら。それならどうして、どうして辞めちゃうんですか!?
私の名前は島村卯月。17歳で4月24日が誕生日です。高校生でありながら、アイドル、やってます。
初めてアイドルというものに憧れを抱いたのは、最早いつだったか私の記憶にはありません。
ふとテレビをつけた時。ラジオをつけた時。雑誌を開いた時。日常のどこにでも彼女たちはいて、素敵な笑顔やクールなカッコ良さを見してくれます。
私たちのアイドル活動は、自分で言うのもなんですが、かなり恵まれたものであったと思います。
もちろん、高倍率のオーディションを受け合格を貰った娘たちや、プロデューサーさん自らが街に出て直接スカウトしてきた娘たちですから、偉い人風に言えば、売れると思ったから、何でしょうけど。
2ndライブやプロダクションの垣根を超えたライブ、私たちの活動をアニメ化まで様々なことをしてもらいました。
――――卯月ちゃんには色々な事を教えてもらいました。そんな私が、卯月ちゃんに返せる、たった一つの事ですから。
――――行かないで! ずっと二人で頑張ろうって! 約束したじゃないですか!
私は今現在、二つのユニットを組んでいます。
ニュージェネレーション。渋谷凛ちゃんと本田未央ちゃんとの三人ユニットです。
ailes。エール、と読みます。安部菜々ちゃんとの二人ユニットです。
ニュージェネレーションはプロダクションの中で相性が良いだろう、といった三人組で選ばれました。お仕事も結成当時から三人一緒がずっとでした。
ailesはプロデューサーさんがお前らが組んだら面白いかもな――という一言から作られたユニットです。私と同い年なのに、色々な事に詳しい菜々ちゃんと私のユニットです。
菜々「卯月ちゃん、十円玉を見つめてどうかしましたか?」
卯月「この十円玉、周りがギザギザしてるんです。誰かがいたずらでもしたんでしょうか」
菜々「あーこれはギザ十と言って、昭和30年頃に生産されたれっきとした十円玉なんですよ~」
卯月「そうなんですか~。菜々ちゃんは詳しいですね!」
菜々「……は、はい……フフ……」
P「お前らコントでもやってんのか。ほら、卯月は第三スタジオで収録だろ、はよいけはよいけ」
卯月「はい! 島村卯月、頑張りますっ」
P「おい、菜々どこへ行く」
菜々「うっ……」
P「いい加減答えを聞かせてくれ。嫌なら嫌って言ってくれればこの企画書はシュレッダーに行くだけの話だ」
菜々「私は……私、は……」
安部菜々ちゃんは私と同い年の女の子です。プロダクションに来るまでは、地下アイドルをやっていたと聞いています。
バイトをしながらアイドルデビューを夢見て長年努力してきたとプロデューサーさんが言っていました。
なんと菜々ちゃんは、ウサミン星というところから来たアイドルなのです。デビューシングルもとってもノリが良い曲で、ライブではとっても盛り上がります。
菜々「卯月ちゃん、ウサミン星、興味ありませんか?」
卯月「……ウサミン星」
菜々「秘密だったのですけど、卯月ちゃんになら教えてもいいかなって思いまして」
卯月「はいっ」
だから、菜々ちゃんが秘密を教えてくれる時は、きっとそういう時、なんだろうなと。思っていたのです。
ギザ十くらい知ってるだろ!
知ってるよな?
菜々「新宿から一時間。……あはは、アイドルの一人住まいにしてはちょっと汚かったでしょうかね」
卯月「不思議と、落ち着くような……気がします。ここがウサミン星なんですね」
菜々「そうなんです」
それから夜まで私と菜々ちゃんは今後の事とか、プロデューサーさんの事とか、新曲の事とか、ずっと二人で頑張ろうってとか、たくさんおしゃべりしました。
途中でお菓子がなくなったので、二人で近くのコンビニに行ってしこたまお菓子とジュースを買ってきました。
菜々ちゃんと話しているとまるで、お姉さんと話してるような優しい温もりを感じます。
例えるなら、そうですね。凛ちゃんや未央ちゃんは腕を一緒に突き上げて、やるぞー! といった温かさで、菜々ちゃんは背中同士、相棒の様な温かさと言った感じでしょうか。
卯月「それで、菜々ちゃんがしたかった一番大事な話ってなんでしょうか」
菜々「……っ」
だって、相棒ですから。
菜々ちゃんの横に立っていられるよう、努力しましたから。
菜々「私に、ソロで活動しないかっていう企画がきているんです」
卯月「ソロ、で……」
菜々「卯月ちゃんもailesも私は大好きです。ずっとずっと、夢見ていたアイドルになれて、しかもこんなにかわいい娘とユニットまで出来るなんて」
菜々「卯月ちゃんは私とのユニットを解消してもニュージェネレーションがありますから、大丈夫なはずです。そもそも私たちのプロダクションの顔のようなアイドルですしね。私は……まぁ、地下アイドル時代がありますから。それを思い出せばまたソロでやるのも――――」
菜々ちゃんは地下アイドルとして現場を踏んでる数が違いましたから、私の憧れでもありました。
スタッフさんのちょっとしたミスへの配慮、その場のアドリブ、とにかく駆け出しアイドルの私では横に立ってはいられないようなアイドルでした。
ailesを結成して初めてのライブでも、菜々ちゃんのファンは明らかに私より多くいました。
私が勝てていたのは、練習量、だけでした。
とにかく菜々ちゃんの横に立てるアイドルだけを目指して、飛んできました。
ある日のイベント、握手会の事でした。
ライブではほぼ毎回最前列にいる菜々ちゃんのファンの方が、私の列に入ってきてくれたのです。
「菜々ちゃんは最高だけど、卯月ちゃんも悪くないよ。……応援してる」
認められたと、思いました。
横に立っても、良いのだと、思いました。
――――菜々ちゃん、って呼んでもいいですか?
――――それなら私も、卯月ちゃんと呼びますね。
プロデューサーさんから卯月とユニットを組まないかと言われた時は、なんの冗談かと思ったものです。
この私に、現役JKを当てるなんて酷い采配じゃないですかと。
卯月「こんばんは。ちょっと嫌なことがあったので、うさを晴らす為に質問です、ウサミン星ってどこにあるんでうさ? ペンネームK.Tさんから頂きました、ありがとうございます~」
菜々「えぇー、卯月ちゃん、それ選んじゃったんですかー!」
卯月「ええっと、その、私もウサミン星人になれるかなーって」
菜々「むむむ……ならばお答えしましょう」
卯月「おおっ」
菜々「……どこからか音楽が聞こえてきますね」
卯月「これは……メルヘンデビュー?」
菜々「そうです! ってことで今日はメルヘンデビュー!」
卯月「ウサミン星は~!?」
プロデューサーさんからソロ活動の話を聞いたのは、ailes結成からおよそ一年半が経った頃でした。
その頃ailesは、音楽番組の出演やラジオのパーソナリティーなど、一段山を超えてそこそこお仕事をいただけるような所にいました。
ソロ活動の立案はプロデューサーさんではなく、プロデューサーさんの上司の方だと聞きました。
もちろんプロデューサーさんは反対こそしてくれたようですが、最終的には本人たちが決めるべきだと私に話を持ってきてくれたのです。
菜々「ailesは……それに卯月ちゃんだって……」
P「何も今すぐ答えを聞かせろとはいっていない。嫌なら俺が何とかしてailesを続けられように取り計らうから、菜々はよく考えて答えを教えてくれ」
――――ailes。
――――羽を持つ者は、何も天使だけとは限らない。
卯月「菜々ちゃんは、ソロがやりたいのですか?」
菜々「……私は、その……卯月ちゃ」
卯月「菜々ちゃんの、話です」
菜々「……」
卯月「……」
卯月ちゃんが夜遅くまで、レッスン場に残っていた事は知っていました。
歌姫、なんて言われるアイドルと共演した際には、楽屋に押しかけて歌の指導をうけたりしていたのも知っていました。
地方のあいさつ回りでは私の倍以上、休まないで握手に励んでいたのを知っていました。
出来る限りプロデューサーさんがうまく立ち回れるように、誰よりも積極的に協力していたのも知っていました。
私は、その場しのぎが、上手なだけでした。
卯月ちゃんのやる気に何度、スイッチを押されたでしょうか。
卯月ちゃんの純粋さに何度、助けられたでしょうか。
卯月ちゃんの笑顔に何度、救われたでしょうか。
私は、何か、返す事ができたでしょうか。
菜々「卯月ちゃん。私の好きなところ、教えてくれませんか」
卯月「好きなところ、ですか。そうですね……。小さくて可愛いところとか、すっごく勉強家なところとか、優しいところとか、でもここぞって時にはきちんと叱ってくれてフォローしてくれるところとか、お姉さんぽいところとか、時々見せる隙みたいなところとか……あとは、そうですね」
卯月「夢を諦めない、ところです」
菜々「ソロ、頑張るね」
卯月「……はいっ!」
菜々「バレちゃうんじゃないですかー?」
卯月「大丈夫ですよ、そこまで細かく私を見てる人なんていないです」
菜々「そうでしょうかねぇ」
卯月「いいですか? 私、これから出来る限りウィンクしますから。お互いソロになっても、見てるんだぞ~ってことですからね。そしたら菜々ちゃんはウィンク、返してくださいね」
菜々「やらなくても、わからないじゃないですか」
卯月「……えへへ」
菜々「……仕方がないですね」
そうして、二人は狭いワンルームで背中合わせのまま、眠りにつく。
未央「あっ、菜々さんだ」
凛「ソロなんて珍しいね」
未央「ウィンクした」
凛「したね」
凛「……なるほど」
未央「ちょちょちょ、しぶりん握り拳作ってどこ行くのー!?」
これでおしまいです、短いですけど勢いで書いたんで許して。
女の子二人の秘密のサインとか、良いですよね。
卯月菜々流行れと思った。
読んでいただきありがとうございました。
>>14
うちの弟知らなかったんやで……
おつつつ
ええやん
こういうのめっちゃすきやねん
ナナさんボコボコにされるん?
Cuアイドルは菜々さんの秘密に気付いてない子が多い設定っぽいけど
付き合いが浅いから気づいてないだけとも取れてしまうし
ガチで気づかないなら関心が薄いのが、頭が弱いのかって話になってしまいそう
墓穴掘りすぎなんだよなぁ、気づかない人も結構居る設定にするなら
もうちっと抑えて欲しいと思わないでもない
ギザ10を知らない……だと?
夏目漱石の1000円札は知ってるが、伊藤博文の1000円札出されて焦ったことはあるww
昔の事を知ってる人じゃないと墓穴だって気づけないからね
世代の隔たりが大きいのも考えもの
アイドルは前を向いて生きてるから一昔以上前を知らなくても仕方ないかなーって
早苗さんは自分が赤ん坊だった頃のバブリーな文化に浸ってるけどね
露骨に墓穴を掘りすぎてそれが逆効果なだけだろ
たまに墓穴を掘るくらいなら「まさか……」とは思うだろうが、菜々さんは墓穴を掘りすぎて「菜々さんは面白い人だな」となるレベルなんだよ
>>43早苗さん実はサバ読んでる説
>>45
おいおい。片桐早苗(38)とかどこの桃源郷から来たんだよ
島村卯月「夢の力」
島村卯月「輝きとか魔法とか」
前書いたやつおいとくの忘れてた、よかったら読んでいってくださいませ
菜々さんの設定に関しては作者の数だけ菜々さんがいる派なので、この世界の菜々さんはこんな感じなのね程度に見ていただければと思います
乙
すごくいいなこの雰囲気
うづりん厨のワイ、歓喜?
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