時雨「三人目の提督」 (34)

【執務日誌No.1  天候:晴れ 時雨記す】


新しい提督が着任。

秘書艦には僕を選んでくれた。

読書とお酒を嗜むのが趣味とは提督自身の談。

何だか気が合いそうでほっとしたよ。

提督の文才に目をつけた上層部の命で、ここに異動になったようだ。

この鎮守府では3人目の提督だね。

今回は長続きしてくれるといいけど。


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【執務日誌No.2  天候:晴れ 時雨記す】


提督に鎮守府内を案内して周った。

「孤島の鎮守府とは珍しい」

どうやら落ち着いた雰囲気が気にいってくれたみたいだね。

提督の主な業務は戦史の執筆だという。

ここは出撃も少ないから、毎日が静かさ。

そういえば、前の提督が書いていた戦史はどうなったのかな。

【執務日誌No.3  天候:晴れ 時雨記す】


夜、提督の部屋でお酒を御馳走になった。

りんごの芳淳な香りが特徴的だった。

カルヴァドスというらしい。

わざわざグラスをお湯で温めてくれて嬉しかったよ。

肌寒いこれからの時期にはいいかもしれないね。

不意に、夕立がブランデー派だったことを思い出す。

元気にしてるかな。

【執務日誌No.33  天候:曇り 時雨記す】


提督の部屋から言い争うような声を聞く。

軍の上層部と電話でもしてるのかな。

聞き耳を立てたわけではないけど、戦友とか真実とか聞こえた。

どうもここに来る提督達は軍との折り合いが悪いみたいだね。


【執務日誌No.34  天候:曇り 時雨記す】


今日は本土から新しい仲間が来た。

航空母艦の加賀さんというらしい。

礼儀正しいけど、どこか冷たさを感じる艦娘だ。

提督の警護のために軍に派遣されたみたいだね。

護衛なら秘書艦の僕がしてもいいと思うけど。

しばらくは提督について回るようだ。

【執務日誌No.35  天候:曇り 時雨記す】


提督に相談を受けた。

昨夜、部屋に来たかと質問される。

首を横に振ると、どこか物憂げな表情を浮かべていた。

聞けば、廊下で軋むような音が何度もしたそうだ。

この鎮守府ができてだいぶ年月が立っている。

妖精さんに、改装してもらうのもいいかもしれないね。

【執務日誌No.40  天候:曇り 時雨記す】


朝から提督の姿が見えなかった。

僕の心配をよそに、昼には食堂で親子丼をかきこんでいた。

気分転換に島を散歩していたそうだ。

嵐が近付いているのであまり出歩かないよう注意した。

加賀さんにも、目の届くところにいるよう小言を言われていた。

【執務日誌No.44 天候:雨 時雨記す】


窓に勢いよく雨粒が叩きつけられている。

この島も今夜には暴風圏に入るだろう。

なのに提督は「合羽と懐中電灯はないか」と聞いてくる。

鎮守府の外周点検に使うと言っていたけど、無いと伝えた。

最近の提督はどこか様子がおかしい。

特に、加賀さんを避けているような節が見受けられる。

この島は静かだから、気が滅入っているのかな。

またお酒に誘って欲しいな。

【執務日誌No.45  天候:雨 時雨記す】


外は真っ白な水煙で覆われて何も見えない。

豪雨のせいで、一切の音がかき消されている。

それなのに提督の姿が見当たらない。

なんだか嫌な予感がする。

加賀さんが探しに行こうとしていたので引きとめた。

僕は提督の部屋で手掛かりを探すことにした。

金庫が開放されてるから、何かを持ちだしたんだね。

机上には・・・戦史かな?

書類が散らばっている。

クローゼットから外套が無くなっていた。

提督が何を考えているのか僕には分からないよ。

23時までに再開します

過去作あったらくださいな
一旦乙

期待して待ってる

乙です

執務日記のナンバーに着目するべきだろうか

待機

【執務日誌No.46  天候:雨 時雨記す】


夕方頃に訃報があった。

提督の遺体が崖の下で発見されたようだ。

遺体は傷だらけで所持品は特に発見できなかった。

軍の見解では港の様子を点検中の事故だという。

高波にさらわれ、何度も崖に打ちつけられた際の傷だそうだ。

この島は常に離岸流が発生しているんだけど。

潮流に逆らってまで崖に打ちつけられることがあるのかな。


僕が提督を止めていればこんなことには・・・

加賀さんは本土へ帰り、僕も異動を言い渡された。

ああ・・・いやな雨だね。

【執務日誌No.1  天候:晴れ 提督記す】


新しい鎮守府に着任した。

秘書艦には時雨を選んだ。

落ち着きがあり、気の利きそうな印象を受けた。

自己紹介で読書とお酒が趣味の旨を伝えた。

時雨とはうまくやっていけそうだ。

上層部は、俺にこの孤島で戦史を編纂しろという。

戦績より文才を見込まれたというわけで、少し情けない。

この鎮守府では俺が3人目にあたるそうだ。

前の2人は持病の悪化でお亡くなりになったとか。

【執務日誌No.2  天候:晴れ 提督記す】


時雨に鎮守府内を案内して貰った。

孤島の鎮守府とはまるでミステリの舞台じゃないか。

冗談はさておき、都会より静かでのんびりできそうだ。

ここは出撃も少なく、戦史の編纂にはもってこいの環境だ。

あとで、前任者が書いていた戦史でも探してみるか。

【執務日誌No.3  天候:晴れ 時雨記す】


夜、時雨を招いて酒をふるまった。

フルーティーな香りなら酒に疎くとも飲めるかもしれない。

カルヴァドスを選ぶ。

グラスを湯で温め、香りを際立たせるようにした。

時雨が気にいってくれたようでなによりだ。

この部屋にはいっぱい酒瓶が飾ってある。

前任者もいい趣味をしているじゃないか。

>>19は提督記す でした

【執務日誌No.33  天候:曇り 提督記す】


まったく、上層部の奴らときたら頭にくる。

渡された資料と前任者の戦史にはいくつか食い違いがあった。

惨敗したはずの海戦で勝利を挙げていたり。

不正献金事件の件を削除するよう指示があったり。

真実を書かずに何が戦史なものか。

これでは轟沈した、戦友の艦娘も浮かばれまい。

幸いにも、前任者は俺と同じく正しい歴史を残したかったようだ。


【執務日誌No.34  天候:曇り 提督記す】


今日は本土から新しい艦娘が来た。

航空母艦の加賀だ。

礼儀正しいが、どこか見下すような態度を感じる。

警護のためというが、おおかた俺の監視にでも来たのだろう。

上層部に喧嘩を売ったのはまずかったか。

しばらくは俺について回るようだ。

【執務日誌No.35  天候:曇り 提督記す】


昨夜、戦史の編纂中に部屋の前で物音を聞いた。

いや、あれは確かに足音だった。

入ってくるよう声をかけるも、返事はなかった。

時雨曰く、鎮守府が古いのでそのせいではないかとのことだ。

ただの考えすぎか。

【執務日誌No.40  天候:曇り 提督記す】


加賀の目を盗んで、島の探索に出る。

港のほうへ行くと、花束を持った夕立に声をかけられた。

聞けば、夕立は以前この鎮守府で秘書艦を務めていたそうだ。

前任者が亡くなって異動したとか。

奇遇にも今日がその命日というわけだ。

更に、港で浮かんでいる前任者の遺体を見つけたのも夕立だった。

軍からは執務中の病死だと報告を受けている。

これは一体どういうことなのか。

昼は食堂で時雨と加賀に何か言われたが、頭に入らなかった。

【執務日誌No.44 天候:雨 提督記す】


ひどい雨だ。

この島も今夜には暴風圏に入る。

だが俺は鎮守府を出ることにした。

昨夜、加賀から戦史を置いて本土に帰るよう指示を受けた。

軍は俺の書いた「真実」があまり気に入らないと見える。

俺はこの戦史を世間に公表することに決めた。

本土に戻って青葉に情報をリークしてもらう。

それが前任者への手向けであり、世の中の為だ。

時雨に合羽と懐中電灯を貰おうとしたが、断られた。

さすがに不審がられてしまったか。

仕方なく、外套を羽織り持てるだけの書類をポケットにねじこむ。

念の為に金庫の拳銃をベルトに差していく。

加賀の姿は見えない。

港の船に乗るなら今しかない。

思えば、時雨には心配をかけてしまった。

ほとぼりが冷めたら、バーに誘って一杯やろう。



読んでくれた皆様ありがとうございました。

眉村卓の工事中止命令のようにあっさりしながらもどこか不気味な感じのする話でした

なんなのこれ?
登場人物に意味ある?

果たして事故死か謀殺か


いい雰囲気だった

乙です

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