ボワァァァ……
悪魔「ふふふ……このゲーム機を起動させてしまうとは、愚かな人間もいたものだ」
女「うわっ」
悪魔「これよりお前にはあるゲームをしてもらうことになる」
悪魔「究極の苦痛を伴う、悪魔のゲームの始まりだ!」
女「あ、分かった!」
女「それって人生ってオチでしょ?」
悪魔「え?」
女「悪魔のゲーム、スタート!」
女「ええっ、主人公の能力や取り巻く環境は完全にランダムで設定されちゃうの!?」
女「自由度は無限だけど、ちょっとでも道を外れるとすぐ落ちぶれちゃう!」
女「一度落ちぶれちゃうと、はい上がれるチャンスなんてほとんどないじゃん!」
女「しかも、一度でもゲームオーバーになったら即終了!」
女「なんなのよ、このクソゲー!」
女「あ、ちょっと待って! これって人生じゃん! ――みたいな!」
悪魔「いや、全然ちがうんだが」
女「いいのよ、無理しないで」
女「あたしにはちゃんっと分かってるんだから!」
女「ほんっと、人生ってクソゲーよねえ」
女「せめてさあ、親ぐらいは自分で選びたいよね」
女「育児放棄されて、死んじゃった赤ちゃんのニュースとかホント可哀想」
女「もうああいうニュースを聞くたび……」
女「このクソ親がァァァァァ!!!」
悪魔「!?」ビクッ
女「――って叫びたくなっちゃう。つうか、叫んでる」
悪魔「そ、そうか」
悪魔「しかし、安心しろ」
悪魔「ああいった幼いうちに非業の死を遂げた魂は」
悪魔「天国に送られて、それ相応――いやそれ以上の救済が行われることになっている」
女「え、そうなの?」
女「悪ちゃんやるぅ~! 悪魔のくせにいいとこあるじゃない!」
悪魔「いや、私はなにもしていないんだが」
女「ちなみに育児放棄した親はどうなるの?」
悪魔「その者の事情にもよるが、あまりに身勝手な事情の場合は」
悪魔「死後、魂は我々悪魔に委ねられ、それこそ地獄の苦しみを受けることになる」
女「なるほどね~、よくできてる!」
女「わざわざ教えてくれてありがとう! 悪ちゃんって、まるで天使みたい!」
悪魔「いや、私は悪魔なんだが」
悪魔「さて、悪魔のゲームの話に戻るとしよう」
女「ああ、人生の話ね」
悪魔「いや、ちがうんだが」
女「大丈夫だって! あたし、オチが分かってても楽しめるタイプだから」
女「推理小説とかさ、犯人バラされても全然楽しめちゃうタイプだから」
悪魔「いるよな、そういう人」
女「人生っていったらやっぱあれよね」
女「じ~んせぇい、楽ありゃ苦ぅ~もあるさ~」
女「はいっ!」
悪魔「え?」
女「だから、はいっ!」
悪魔「え、え?」
女「悪ちゃん、にぶいなぁ。バトンタッチってことよ」
悪魔「あっ……そういうことか」
悪魔「涙の後には、に~じも出るぅ~」
女「あぁ~るいぃ~て、ゆぅ~くぅ~ん~だ」
悪魔「しぃ~っかぁ~りぃ~と~」
女&悪魔「自分のみぃ~ちを、踏ぅ~みし~め~てぇ~」
悪魔「じぃ~んせい、勇気がひぃ~つよぉ~だぁ~」
女「あ、ごめん、あたし一番しか知らない」
悪魔「え!?」
悪魔「あ……そう」
女「ごめんね、悪ちゃん」
女「でも、悪魔でも水戸黄門見るんだね」
悪魔「おじいちゃん子だったもので」
女「じゃあ、この紋所が目に入らぬか、とかやったでしょ?」
悪魔「いや、やったことない」
女「やったんでしょ?」
悪魔「やってないって」
女「そうよね、そんな幼稚なことするわけないか」
悪魔「幼稚という言い方はどうかと」
女「たしかに、印籠を見せつけるシーンはかっこいいよね!」
悪魔「だろう?」
女「あなたもよくやったでしょ?」
悪魔「もちろん!」
女「ほら、やってるじゃん」
悪魔「ぐはぁ!!!」
悪魔「おっと、お前のターンはここまでだ」
悪魔「いよいよ、悪魔のゲームの説明に移る」
女「人生なんでしょ?」
悪魔「だから人生ではないといっておろうがッ!」ギロッ
女「うっ、きいたわ!」
女「なかなかパンチのきいた怒鳴り声だったわ……」
女「じぃ~んせいは、ワンツーパンチ!」
女「汗かきベソかき歩こうよぉ~」
悪魔「あなたのつけた足あとにゃ……」
悪魔「キレイな花が咲くでしょう~♪」
女「腕を振って」
悪魔「足をあげて」
女&悪魔「ワンツー、ワンツー」
女&悪魔「休まないであ~る~けぇ~、それ!」
女&悪魔「ワンツー、ワンツー、ワンツー、ワンツー……」
悪魔「ふぅ、なんだか元気が出てきたな!」
女「でしょでしょ! いい歌でしょ!」
悪魔「人生つらいこといっぱいあるけど、歩かなきゃなって気になれる!」
女「あれ? 悪魔も“人生”なの?」
女「“悪生”とか、“魔生”とかじゃなくて」
悪魔「ああ、悪魔も“人生”でいいんだ」
女「人生ってホント、クソゲーよねえ」
悪魔「だなぁ」
女「好きなことだけして、生きていければいいのに」
悪魔「まったくだ」
悪魔「私も職業柄、時には人を陥れて魂を手に入れなきゃならないんだが」
悪魔「特に悪いこともしてない人間から奪わねばならん場合もあるからな」
女「へぇ~、たとえばどんな手口で?」
悪魔「たとえば、ここにある呪いのゲーム機が人間によって起動された場合」
女「つまりあたしね」
悪魔「私が地獄から飛び出て――」
悪魔「起動させた者に“悪魔のゲーム”を味わわせる仕組みになっている」
女「へぇ~、悪魔のゲームって?」
悪魔「悪魔のゲームとは、対象者を脱出不能の牢獄に閉じ込め」
悪魔「あらゆる肉体的、精神的苦痛を執拗に与えるというゲームだ」
悪魔「ゲーム終了後、心身ともに抜け殻になった対象者から」
悪魔「魂を抜き取るという仕組みになっている」
女「えええええええええええっ!?」
女「ウ、ウソ……」ガタガタ…
女「じゃああたし、すんごい痛みを与えられて抜け殻にされちゃうの……!?」ガタガタ…
女「あっちゃあ、やっちゃったなぁ……」ガタガタ…
悪魔「いや、お前と色々とやってたらそんな気もなくなった」
悪魔「さぁ、人生というクソゲーを力強く満喫するために、歌おうではないか!」
女「よっしゃあ! さっすが、悪ちゃん! 太っ腹!」
女「人生、いろいろぉ~」
悪魔「男もいろいろぉ~」
女「女だぁ~って、い~ろいろ」
女&悪魔「咲きみ~だ~れ~る~のぉ~♪」
~おわり~
悪魔に狙われても、とりあえずボケてみればワンチャンあるという教訓
乙
乙
なんか元気出た
昭和歌謡でした
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