ほむら「恋の花」 (286)
まどマギの百合物です
3回くらいに分けて投下する予定です
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早乙女「……以上でホームルームを終わります」
早乙女「先日の大嵐の影響で建物の倒壊などの被害が出ています」
早乙女「危険な場所には近づかないこと。いいですね?」
中沢「きりーつ。れーい」
早乙女「はい、さようならー」
まどか「ふぅ……」
まどか(……大嵐、かぁ)
さやか「まどかー。帰ろー」
まどか「……あ、さやかちゃん。うん、帰ろっか」
さやか「……?どうかしたの?何か考えてるみたいだけど」
まどか「考えてるっていうか…他の人にとってあれは大嵐だったんだなって」
さやか「あぁ、そういう……」
まどか「みんながワルプルギスの夜を倒してくれたから、この程度の被害で済んだんだよね」
まどか「さやかちゃん。ありがとう」
さやか「いいって、お礼なんて。あたしたちはただ力を貸しただけ」
さやか「何度もあいつを倒そうと頑張ってきた、あの子にさ」
まどか「……うん」
さやか「……そうだ。今日はほむらを誘ってどっか寄り道していこうよ」
まどか「どこかって言ってもあんまり選択肢はないんだけどね」
さやか「ま、まぁね。……んじゃ、誘いに行きますか」
ほむら「……」
ほむら(……今日は…学校。ワルプルギスの夜の影響で数日休校になったりしたけれど)
ほむら(今日からまた、学校。……繰り返してきた1ヶ月じゃない、本当の日常の……)
まどか「ほむらちゃーん」
ほむら「……あら、まどか。私に何か?」
まどか「うん。さやかちゃんと寄り道していこうと思ってるんだけど、ほむらちゃんも一緒にどうかなって」
ほむら「えぇ、いいわよ」
まどか「そっか、よかった」
さやか「今日からはもう、心配事は何もなくなったんだから」
さやか「楽しい学生生活を謳歌しようじゃない」
ほむら「……そう、ね」
さやか「よっし。そんじゃ…どこ行く?」
まどか「んー…ほむらちゃん、どこか行きたいところはない?」
ほむら「……2人に任せるわ」
さやか「そう?それならCDショップにでも行くかね」
まどか「最近色々あって全然行ってないもんね」
さやか「さ、行き先も決まったし、行こうか」
まどか「うん。ほむらちゃん、行こう?」
ほむら「え、えぇ……」
――――――
さやか「んー、遊んだ遊んだ。まさか寄ったゲーセンに杏子がいるとは……」
まどか「ねー」
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「……いえ、何でもないわ。今日はもう帰るのかしら?」
さやか「どうしようか。なんかまだ微妙な時間だし、もひとつくらいどっか寄ってく?」
まどか「わたしは大丈夫だけど……」
ほむら「……ごめんなさい。私はこれで失礼するわ」
さやか「え、そう?用事あるところを誘っちゃった?」
ほむら「そういうわけではないけど、夕飯の支度が……」
まどか「そっか。ほむらちゃん、1人暮らしだもんね」
ほむら「えぇ。そういうわけだから」
さやか「わかったよ。じゃ、またね」
まどか「ほむらちゃん、ばいばい」
ほむら「……また、明日」
さやか「……さて。どうする?ほむら、帰っちゃったし…あたしたちも帰る?」
まどか「……」
さやか「まどか?どうかした?」
まどか「……あ、ううん。何でも。そうだね、わたしたちも帰ろっか」
さやか「しかしそうか、ほむらの奴も1人暮らしか。次からそのこと考えないとなぁ……」
まどか(ほむらちゃん、楽しくなかったみたいだし…無理に付き合わせちゃったかな……)
まどか(次はほむらちゃんの好きなところに行ってあげよっと)
ほむら「……はぁ」
ほむら(咄嗟に夕飯の支度があるって言って別れてしまった……)
ほむら(別に嘘ではないし、まだ時間に十分余裕はあるから大丈夫だったんだけど……)
ほむら(多分、どこに連れて行かれても後ろをついて行くだけだと思うのよね……)
ほむら(まどかと一緒ならそれでもいいと思ってたのに…何だかそんな気分でもなくなってしまって……)
ほむら(今から引き返すのも何だし、今日はこのまま帰りましょう)
ほむら(それにしても何だかまだ実感が無いわ。私が…私たちがワルプルギスの夜を倒しただなんて)
ほむら(だけど…現実、なのよね。私、まどかを…まどかの平穏な日常を守れたのよね……)
ほむら(……これでもう、私の時間遡行はおしまい。この時間軸で、みんなと……)
ほむら(まどかと一緒に過ごせるのよね……)
ほむら(魔法少女である以上魔女と戦わないわけにはいかないけど、必要以上に気を張り詰める必要はないのよね)
ほむら(私もようやく今まで通りの日常に戻れ……)
ほむら「……私の日常って、何だったかしら……?」
ほむら「今までの日常は…まどかを守る為に戦うこと、だったけど……」
ほむら「それが終わった今、私は…何をしたらいいの……?」
ほむら「まどかと楽しく過ごしたいと…そんなことを色々考えたこともあったけど」
ほむら「実際、この状況になって…まどかを守る以外のことをしてもいいと言われても……」
ほむら「好きなこととか、趣味をしたらいいのかしら……。でも、私…趣味なんて……」
ほむら「……帰りましょう。帰って、適当に何か食べて…休んだ方がいいわね……」
ほむら(私は…これから何を……)
――数日後――
さやか「まーどか。今日はどこ寄ってく?」
まどか「……」
さやか「……あれ?まどか?」
まどか「あ…さやかちゃん。何?」
さやか「どこ寄ってくって話だったんだけど…どしたの、難しい顔して」
まどか「うん。ちょっと、ね」
さやか「悩み事?」
まどか「わたしのことじゃなくて、ほむらちゃんのことなんだけど……」
さやか「ほむらの?」
まどか「そうなの。ほむらちゃん、ここ最近なんだか様子がおかしくて……」
さやか「様子がおかしい…ねぇ。ま、とりあえず誘ってどっか気晴らしにでも行こうよ」
さやか「あたし、ほむらに声かけてくるね」
ほむら「……」
ほむら「……はぁ」
ほむら(あの日からもう数日経つというのに…私の悩みは何ひとつ解決しない……)
ほむら(趣味、やりたいこと、楽しそうなこと。何かを見つけたいとは思ってるのだけど)
ほむら(何だかやる気が出ないというか…何もする気が起きない……)
さやか「おーい、ほむらー」
ほむら「はぁ……」
さやか「ちょっと、ほむらってば」
ほむら「……?あぁ、さやか。どうしたの」
さやか「いや、どうしたのはこっちのセリフだって。どしたの?」
ほむら「どうしたって、どうもしてないわよ。ただ少しぼんやりしてただけ」
さやか「そう……?まぁ、それはそれとしてこれからどっか寄ってかない?」
ほむら「……ごめんなさい、私は遠慮するわ。そんな気分じゃなくて」
さやか「そっか。……まどかも残念がるだろうけど、仕方ないか」
ほむら「……えぇ。それじゃ、私は失礼するわね」
さやか「ぼんやりしてたみたいだし、帰りは気をつけなよ」
ほむら「わかってるわ、ありがとう。じゃあ、また明日」
さやか「明日は休日だけどね。また来週ー」
さやか「……」
まどか「……ね?変だったでしょ?」
さやか「ううん…確かに何か変だったね」
さやか「どう言ったらいいんだろう、いつもクールで普段からあんな感じだけど」
さやか「それでも、どっか変。まどかのこと言ったのに何も反応しないし、心ここにあらずって感じ」
まどか「そ、その判定方法はどうだろう……」
さやか「とにかく、何かあるのは間違いないよ。それが何なのかまではわからないけど」
まどか「そう…かもしれないね。だって……」
さやか「まどか……?」
まどか「……ごめん、何でもない。わたしたちにできることってないのかな」
さやか「んー…本人から何かを聞いたわけじゃないけど……」
さやか「マミさんや杏子に話せば力を貸してもらえるんじゃないかな」
まどか「……じゃあ、みんなに相談してみようよ」
さやか「そうしよっか。……それにしても、まどかはほむらのことが好きだねぇ」
さやか「さやかちゃん、何だか寂しいですよ」
まどか「な、何言ってるの。さやかちゃんだって大事な友達だよ」
さやか「そっか、ならよし。んじゃ、マミさんの家、行ってみよう」
まどか「うん。……あ、その前に一応電話するね」
――――――
マミ「いらっしゃい、2人とも」
まどか「すみません、急に相談なんて」
マミ「いいのよ、気にしなくても」
杏子「どうせ今日は暇だからってダラダラしてたもんな」
マミ「さ、佐倉さん、そういうことは言わないで」
さやか「まぁ、何にせよ杏子もいるなら好都合だよ」
杏子「電話受けたマミから話は聞いたよ。何か相談があるんだって?」
マミ「さて。それじゃ聞かせてもらえる?電話で言ってた相談事のことを」
さやか「まどか……」
まどか「うん、わたしが話すよ。……わたしたちのことじゃなくてほむらちゃんのことなんですけど」
マミ「暁美さんのこと?どういうことかしら」
まどか「えっと……」
まどか「……ということなんです」
マミ「そう……」
さやか「何か変だってのはわかるんですけど、それが何なのかわからなくて」
マミ「でもそれだけじゃ…他に何か気づいたこととかないかしら?」
さやか「気づいたこと、ですか。まどか、何かある?」
まどか「……もしかしたら勘違いかもしれないんですけど」
まどか「ほむらちゃん、確か学校が再開した次の日からぼんやりしてたと思うんです」
まどか「でも、最近その頻度が増えて…1日中ぼーっとしてるような気がして……」
まどか「話しかけても生返事が多いというか…何かやる気がなくなったみたいな……」
マミ「もしそれが本当だとしたらちょっと心配ね……」
まどか「はい……。最近は寄り道に誘ってもあまり乗り気じゃなくて……」
さやか「ほんと、どうしたんだろ……」
杏子「……ひとつ、思いついたんだけどよ」
さやか「え、なになに?」
杏子「あー、いや…合ってるかどうかはわかんねぇけど……」
杏子「あいつ…ほむらは今までずっとまどかを守ることだけを考えて時間を繰り返してきただろ?」
さやか「そうだけど、それがどうしたのさ?」
杏子「まどかを守る、ワルプルギスの夜を倒す。それだけがあいつの目的だった」
杏子「そんな大きな目的を成し遂げたせいで何もかもが燃え尽きたんじゃないか、と思ってさ」
マミ「燃え尽きたって……」
杏子「別におかしな話じゃないだろ。あれだけのことを成し遂げたんだ」
杏子「ほむらにとっては自分の全てになってたものがなくなってしまって」
杏子「その結果、燃え尽きてしまったとしても不思議じゃないと思うけどねぇ」
さやか「うーん、杏子の言いたいことはわかるんだけどさ」
さやか「何だろう、話だけ聞くと定年退職した仕事一辺倒のサラリーマンに聞こえるよ……」
まどか「だ、ダメだよさやかちゃん。そんなこと言っちゃ」
さやか「いやでも、趣味も好きなこともなくてぼけーっとしてるところなんか似て……」
さやか「……そうか。そうだよ」
まどか「さやかちゃん?」
さやか「もしそれが原因だとしたら、あたしたちがあいつに何か趣味を見つけてあげたらいいんじゃないかな」
さやか「生きがい…とまではいかないでも、熱中できる何かをさ」
マミ「……そうね。暁美さんはもう時を巻き戻す必要はなくなったんだもの」
マミ「楽しいと思えるものを見つけたっていいはずよ」
杏子「でもよ、趣味を見つけてやると言ったってなぁ……」
杏子「アイツの好きそうなもの知ってる奴、いるか?」
さやか「……まどか、知ってる?」
まどか「う、ううん。ごめん、知らないよ」
杏子「もちろんアタシも知らねぇぞ?」
マミ「私もね……。まず鹿目さんが知らなければきっと誰も知らないと思うんだけど」
まどか「えっ?」
マミ「だって私たちの中で1番暁美さんと仲良しなのは鹿目さんでしょう?」
まどか「え、そ、そう…なのかなぁ……?」
さやか「そりゃそうでしょ。むしろ違うと言われても信じられないよ」
まどか「確かにほむらちゃんとは仲良しだけど……」
まどか「趣味とか好きなもの、好きなことの話なんてしたことなくて……」
杏子「自分のことを進んで話すタイプじゃないからなぁ……」
さやか「あいつの好きそうなものとかはわからないけど……」
さやか「でも、何かひとつくらいあるはずだよ。気になってることとか、得意なこととか」
さやか「このままだと、残りの楽しいはずの中学生活をただぼんやりと過ごすことになっちゃいそうだし」
マミ「そんなのつまらないわよね」
さやか「だから、みんなで案を出してほむらの趣味を見つけてあげようよ」
まどか「……うん。わたしはいいと思うな」
マミ「力になれるかわからないけど、私も協力するわ」
杏子「ほむらには世話になったからな。このくらいは返させてもらうよ」
さやか「ありがとね、杏子」
まどか「マミさん、ありがとうございます」
さやか「そんじゃとりあえず、ほむらの好きそうなものをいくつか考えてみよっか」
さやか「んで、明日誘ってやってみよう。ちょうど休みだしさ」
まどか「うーん…ほむらちゃんの好きそうなもの……」
さやか「あぁ、まどかはそれやる前にほむらに電話して明日の予約取っといて」
まどか「え、わたしが?」
さやか「言いだしっぺはあたしだけどさ、あたしらが誘うよりまどかが誘った方がいいと思うし」
さやか「……あ、何だったらまどかが言いだしたことってことにする?」
まどか「そ、それは……」
さやか「とにかく、ほむらに電話しといてよ。あたしたちは先にやってるから」
まどか「わ、わかった」
――翌日――
ほむら「……で、一体何なの?休みの日に全員集まって」
さやか「いやー、ちょっとね」
ほむら「まどかに遊びに行こうと誘われたけど…全員いるとは聞いてなかったわ」
まどか「ご、ごめんね」
ほむら「別に謝ることはないけど……」
杏子「ほむらも来たことだし、早く行こうぜ」
ほむら「どこに行くのよ。私、何も聞いてないけど」
マミ「今日は少し目的があるのよ」
ほむら「目的?」
マミ「えぇ。暁美さん、あなたに対してのね」
ほむら「私に……?」
さやか「今日はほむらに新しい趣味を見つけてもらおうと思ってさ」
さやか「それで呼び出したんだよ」
ほむら「新しい趣味?そんなの、別に……」
さやか「そう言うなら何かあるの?好きなこととか」
ほむら「そのくらいあるわよ。私の好きなことは……」
ほむら「……えぇと…だから、その」
ほむら「人間観察、とか……」
杏子「……そういうのを無趣味って言うんじゃないのか?」
ほむら「う……」
まどか「……あのね、わたしがみんなに相談したの」
ほむら「そうなの……?」
まどか「うん……。ほむらちゃん、最近ぼんやりしてることが多いよね」
まどか「あれって…ワルプルギスの夜を倒すって目的を果たしたせいで燃え尽きちゃったから……?」
まどか「それとも、今までが今までだったから…何をしたらいいかわからないの……?」
ほむら「……」
まどか「もしどっちでもなかったのなら謝るから…どうしちゃったのか、話してくれないかな」
ほむら「……別に隠していたわけじゃないのだけど」
ほむら「今言った燃え尽きたのと何をしたらいいかわからないってのは…多分、どっちもなのよ」
まどか「どっちも?」
ほむら「えぇ。ワルプルギスの夜を倒すなんて大きすぎる目的を果たしたせいで何もやる気が起きなくて」
ほむら「まどかを守る以外のことをしてもいいと言われても何をしたらいいかわからなくて」
ほむら「やる気が起きないから無理にやることもないと思って何もせず、ぼんやりと過ごして」
ほむら「……今の感覚を上手く言葉に出せないけど、こんな感じなのよ」
杏子「アタシが言えたことじゃないけど、ほむらはまともな中学生活を送ったことがないのか」
ほむら「えぇ。ずっと入院していて、そのあとは知ってる通り。ひたすらに同じ時間のやり直し」
ほむら「そのせいでどう過ごしたらいいのかとか、そういうことはさっぱりなのよ」
さやか「学校でのことなら心配ないよ。みんなと過ごしてれば、きっと楽しいものになるからさ」
マミ「そうね。きっと素敵な毎日になるはずよ」
ほむら「……ありがとう」
さやか「んじゃ、ほむらから話も聞けたわけだし…そろそろ行こうよ」
ほむら「ま、待って。結局どこに行くのか聞いてないわよ」
杏子「それはついてくればわかるさ。ほら、行くぞ」
ほむら「え、えっと…まどか……?」
まどか「言ったでしょ。今日はほむらちゃんの趣味探しって」
まどか「ほむらちゃんの好きそうなこと、もの…みんなで考えてみたんだ」
ほむら「そうだったの……。ありがとう、私の為に」
まどか「いいの。わたしはただ、ほむらちゃんの毎日が楽しいものになってほしいから……」
ほむら「まどか……」
マミ「それに、そういうのを抜きにしてもみんなで色んなところに行くのも楽しいものよ」
マミ「ほら、行きましょう。美樹さんと佐倉さんが待ってるわ」
まどか「ほむらちゃん、行こうよ」
ほむら「……そうね」
さやか「あ、来た来た。もー、行くよって言ったのに」
ほむら「勝手に先走るそっちが悪いんでしょう。……それで、どこに行くの」
さやか「それは秘密だって。時間あれば決めたところ以外にも色々行ってみようかなって」
ほむら「そう。よろしく頼むわね」
マミ「えぇ、任せて」
さやか「よーし、行くぞー」
――――――
ほむら「……と、連れられるままに来たのはいいのだけど」
さやか「うひょー。これカッコいいなぁ」
ほむら「さやか。ちょっと、さやか」
さやか「あ、これも…っと。何?」
ほむら「何?じゃないわよ。私の趣味探しをしてくれてるのはありがたいけど」
ほむら「どうしてその行き先がエアガンショップなのよ」
さやか「だってさ、ほら。ほむらって色んな銃使ってたじゃん。だからこういうの好きかなって」
ほむら「あのねぇ……。私は自分で武器を作り出せないから銃器に頼っていただけであって」
ほむら「特別銃が好きってわけじゃないの」
さやか「嫌いでもないんでしょ?」
ほむら「それは…そうだけど……」
さやか「だったらいいじゃん。これを機にエアガン買ってサバゲーでも始めてみたらいいんじゃない?」
ほむら「他人事だと思って適当なことを……」
さやか「いやいや、割とマジだって。知識のないものより多少なりあったものの方がとっつきやすいでしょ」
ほむら「だからって趣味としてはどうなのかしら。その…サバゲームというのは」
さやか「サバゲーね、サバゲー。少なくともあたしの周りでしてる人はいないねぇ」
ほむら「それでよく人に勧めたわね、あなた。まださっきの読書やゲームの方がマシじゃない」
さやか「まぁまぁ。ほむらが始めるならあたしも一緒にやろうかなーってさ」
さやか「……お、マグナムじゃん。これもカッコいいなぁ」
ほむら「マグナムは弾の種類よ。……それよりもまどかたちはどこに行ったのかしら」
さやか「杏子は興味ないって入り口で待ってたはず。まどかとマミさんは……」
まどか「ほむらちゃーん」
ほむら「まどか。どこに行ってたの?」
まどか「マミさんとあちこち見てたの。すごいね、色んな銃があって」
マミ「拳銃だけじゃなくて暁美さんが使っていたような機関銃もエアガンになってるのね」
マミ「マスケット銃は売ってないのかしら」
ほむら「探せばどこかにあるんじゃないの?」
さやか「それで、どれを買うの?」
ほむら「何で買うこと前提になってるの。買わないわよ」
さやか「えー。あのガトリングガンとか似合いそうだと思うけど」
ほむら「……私にター○ネーターをやれと?」
さやか「へいへい、わかりましたよー」
ほむら「それじゃ、そろそろ次に行きましょうか」
まどか「うん。……あれ?」
ほむら「どうしたの?」
まどか「これ、この銃ってほむらちゃん使ってなかった?」
ほむら「よく覚えてるわね……。確かに持ってたわ」
まどか「もしよければ、どんなのかちょっと教えてもらえないかな」
ほむら「そうね…その銃は確か……」
さやか「……何か長くなりそうだし、先に杏子のとこ戻ります?」
マミ「そうしましょうか……」
――――――
さやか「全く、何が特別好きじゃない、なのさ。長々とまどかに語っちゃってさ」
ほむら「ご、ごめんなさい。少し気分が乗ってしまって」
さやか「そうなの?じゃあ気分が乗ってるうちに引き返して購入して……」
ほむら「大丈夫。それはないから」
さやか「あ、そう……」
まどか「ほむらちゃん、ありがとう。色々教えてくれて」
ほむら「それはいいのだけど、銃の知識なんて物騒なものはまどかには似合わないわ」
まどか「わたしも特別好きってわけじゃないんだけどね」
マミ「じゃあ、どうしてあんなことを?」
まどか「えっと…ほむらちゃんが知ってることだから、かな。だからわたしも知りたいなって……」
杏子「……へぇー。そうかそうか」
まどか「な、何?杏子ちゃん」
杏子「いーや、別に何でも」
ほむら「それより、次はどこに行くの?」
まどか「あ、次は…ここだよ」
ほむら「ここは…楽器店……?」
まどか「うん。わたしの案なんだけど…何か楽器とかやってみたらどうかなと思って」
マミ「とりあえず、中に入ってみましょう」
さやか「へぇー、色々置いてあるんだね。ギターやら金管やら」
杏子「ウチの教会に置いてあったのは…ありゃ何だったんだ?ピアノの仲間だと思うが」
マミ「多分オルガンじゃないかしら。……じゃあ鹿目さん、私たちはその辺りを見てるわね」
まどか「あ、はい。……ほむらちゃん、音楽はどう…かな」
ほむら「……好きでも嫌いでも…聞く側としても演奏する側としても」
ほむら「まだよくわからないわ」
まどか「そっか……。何か気になる楽器とかってある?」
ほむら「やるやらないを無視していいのなら、あの蛇みたいな金管はとても気になるわ」
まどか「す、すごいね、あれ。スーザフォンだって。……うん、とても買える値段じゃないね」
ほむら「楽器ってそんなものよ。下は数千円から数万円で買えるけど、上を見たらキリがないの」
まどか「時々テレビでやったりするよね。何千万とか何億円もしちゃうバイオリンとか」
ほむら「あとは…あれも結構な値段がするはずよ」
まどか「あれって…ピアノ?」
ほむら「えぇ。グランドピアノは安くても100万くらいだったと思うけど」
まどか「うわー……。安いはずないとはわかってるけど、高いねぇ」
ほむら「ここに置いてあるのは展示品で、店員に言えば弾かせてもらえるみたいね」
ほむら「まどか、弾いてみる?」
まどか「い、いいよ。楽器なんて…音楽の授業で使うリコーダーくらいしかできないから」
まどか「ほむらちゃんは何か弾けたりするの?」
ほむら「……ピアノなら少し弾けるはずよ」
まどか「え、ほむらちゃんピアノ弾けるの?すごいなぁ」
ほむら「大したことじゃないわ。どうして弾けるのか…いつ、どこで、誰に習ったのかは覚えてないけど」
まどか「……ねぇ、せっかくだし何か弾いてみてよ。言えば使わせてもらえるんだよね」
ほむら「まどかからのお願いというのなら、断れないわね」
まどか「うん。楽しみだなぁ」
ほむら「そんなに上手くないわよ。……えっと、店員は……」
ほむら「……ふぅ。どうだったかしら」
まどか「とっても素敵だったよ。上手くないなんてことないと思うな」
ほむら「そう。まだ弾けたみたいでよかったわ」
まどか「ほむらちゃん、ピアノを趣味にしてみたらいいんじゃない?」
ほむら「……いえ、やめておくわ。そこまで打ち込めないと思うし」
ほむら「何よりそう簡単に買ったりできるものじゃないから」
まどか「じゃあ、他の…金管とかギターとかは……」
ほむら「……これと言って興味を惹かれるものはないかしらね」
まどか「そっか……」
杏子「おーい、そろそろ行くぞー」
ほむら「えぇ。……ほら、行きましょう」
まどか「う、うん」
――――――
さやか「……さて。これであたしたちが考えたものは一通り行ってみたんだけど」
マミ「何か気になるものはあったかしら?」
ほむら「強いて言えば楽器なんだろうけど、趣味にするまでは……」
マミ「そう……」
さやか「うーん、ダメだったかー……」
杏子「今日のところは解散にしようぜ。これ以上ここにいても何か思いつくでもないだろうし」
まどか「……うん、そうしよう」
さやか「また何かいい案思いついたらやってみるから、そのときはよろしくー」
ほむら「それは…構わないけど……」
さやか「んじゃ、今日はここまで。みんな、ありがとね」
ほむら「今日は色々とありがとう。それじゃ、また」
まどか「あ、わたしも一緒に帰るよ。またね、みんな」
ほむら「……今日はごめんなさい。せっかく色々と考えてくれたみたいなのに」
まどか「そんな、気にしないで」
ほむら「私…これからどうしたらいいのかしら。あの目的は私の生きる意味でもあったような気がして」
ほむら「道標であったものがなくなって…何もできなくなってしまったみたい……」
ほむら「……まるで仕事だけをしてきた無趣味の定年サラリーマンみたいね、私は」
まどか「ほむらちゃん……」
まどか「……ほむらちゃんはずっと、わたしを守ることを目的にしてきたんだよね」
ほむら「そうね。それがどうかしたの?」
まどか「わたしを守ってくれたのなら、次は…わ、わたしと楽しく過ごすのを目的したら、なんて……」
ほむら「まどか……?」
まどか「そ、その、深い意味はないの。ただ、何をするでもなく、毎日ほむらちゃんと一緒に……」
まどか「……って、だからそうじゃなくて…わたしはほむらちゃんに笑っていてほしくて……」
まどか「うぁぁ…さっきから恥ずかしいことばっかり言ってるよ、わたし……」
ほむら「……ありがとう。まどかの優しさと好意はちゃんと届いたから」
まどか「そ、そう?ならよかった…のかな……?」
まどか「でも、もし本当に何も見つからなかったときは…わたしが……」
まどか「……う、ううん。何でもないや。ごめんね」
ほむら「変なまどかね。……ねぇ、参考までに教えてもらいたいのだけど」
ほむら「まどかの趣味や好きなものって何かしら?」
まどか「え、えっとね…趣味は落書きかな。思いついたイラストとかをノートに書いちゃうの」
ほむら「落書き?……あぁ、あれのことね」
まどか「わ、笑わないでよ。あんまり上手くないって自分でわかってるんだから」
ほむら「いえ、落書きなんだから上手い下手は気にしなくてもいいと思うわ」
まどか「むぅ……。あとはそうだね、知ってると思うけど部活にも入ってるよ」
ほむら「確か手芸部だったかしら?」
まどか「うん。それと園芸部を掛け持ちしてるんだ。……あんまり顔出せてないけど」
ほむら「確かまどかの家には立派な家庭菜園があったわね」
まどか「あれはパパがやってるんだ。わたしも時々手伝ったりするけど」
まどか「わたしは端の方を少し借りて、お花を育てたりしてるの」
ほむら「そう、花を……」
まどか「ほむらちゃんはお花、嫌い?」
ほむら「そんなことないわ。むしろ嫌いな人の方が少ないんじゃない?」
まどか「……そうだ。ほむらちゃんも、お花を育ててみたらどうかな」
ほむら「え?でも、私は……」
まどか「今日ってまだ大丈夫だよね?一緒にお花の植え替え、してみない?」
ほむら「……いいの?」
まどか「もちろんだよ。手伝ってくれると嬉しいな」
ほむら「それなら…やってみようかしら」
まどか「そうと決まれば…ほら、早く行こうよ、ほむらちゃん」
ほむら「え、えぇ」
今回はここまで
次回投下は1日夜を予定しています
きたい
3回くらいと言ったものの3分割じゃ収まりが悪い気がする
次から本文
――――――
まどか「じゃあ、植え替えを始めるよ」
ほむら「私はガーデニングについてはさっぱりだから、よろしく頼むわね」
まどか「任せてよ。……今日はこのお花の苗を植えます」
ほむら「これは何の花?」
まどか「ガーベラだよ。わたし、ガーベラが好きなんだ」
ほむら「名前だけは聞いたことがあるわ」
まどか「すごく綺麗なお花なんだよ」
ほむら「それで植え替えって話だけど、どうしたらいいの?」
まどか「えっとね、まず軽く穴を開けて……」
まどか「そこに苗を入れて、土を被せておしまい。簡単でしょ?」
ほむら「それなら私にもできそうね」
まどか「わたしはここから始めるから、ほむらちゃんはその隣をお願いするね」
ほむら「わかったわ」
まどか「よーし、それじゃやるよー」
ほむら「……こんな感じかしら」
まどか「うん。ほむらちゃん、上手いよ」
ほむら「そ、そう?ありがとう」
まどか「この分なら残りもすぐに終わっちゃいそうだね」
ほむら「そうね。もう少し頑張りましょうか」
まどか「ふぅ……。これでおしまいっと」
ほむら「まどか、お疲れさま」
まどか「ほむらちゃんも。ありがとう、手伝ってくれて」
ほむら「お礼なんていいのに。……今日植えたこの花はいつ咲くのかしら?」
まどか「もうすぐ咲くって苗を買ってきたから、1週間くらいだと思うよ」
ほむら「それでもそのくらいはかかってしまうのね」
まどか「……今日はどうだったかな。色んなところに行ってみて」
ほむら「色々と案を出してくれたのに申し訳ないけど……」
ほむら「趣味になりそうなものを見つけることは…できなかったわ」
まどか「そうなんだ……」
ほむら「……でも、最後の最後で…少し気になることを見つけられたわ」
まどか「え……?それって……」
ほむら「えぇ。まどかと一緒にガーデニングをして…少し心が動いたの」
ほむら「この気持ちが何なのか、今はまだよくわからないけどね」
まどか「これがきっかけでほむらちゃんが何かに興味を持ってくれたら嬉しいな」
ほむら「えぇ。……それにしても、私は一体何に興味を惹かれたのかしら」
まどか「ガーデニング中に何か感じたんだし、園芸部に入ってみない?」
ほむら「部活は…今から入れて下さいと言いに行くのも何だし、遠慮しておくわ」
ほむら「それに、まだ本当にガーデニングが気になったのかわからないし」
ほむら「もしそうだったとしたら、よろしくお願いするわね」
まどか「さて、と。植え替え作業はこれでおしまい。あとは咲くのを楽しみにしててね」
ほむら「手伝いとは言え、自分が植え替えをしたからか咲くのが待ち遠しいわ」
ほむら「そうだ、これを口実に毎日遊びに来ようかしら?」
まどか「……うえっ!?ま、毎日!?」
ほむら「そ、そんなに驚かなくてもいいのに。冗談よ」
まどか「じ、冗談なの?びっくりしたぁ……」
まどか「でもほむらちゃんが来たいのなら…毎日だって来てもいいんだよ?」
ほむら「いくら何でもそれは迷惑じゃ……」
まどか「め、迷惑なんてことないよ。むしろ来てくれた方がわたしも嬉しいし……」
ほむら「……何だか少し恥ずかしいわね。まどかからそんな風に好意を向けられるなんて」
ほむら「じゃあ…花が咲くまでの間、毎日様子を見に来ても……?」
まどか「う、うん。もちろんいいよ」
ほむら「なら、お言葉に甘えさせてもらうことにするわ」
まどか「明日からが楽しみになってきちゃった」
ほむら「私もよ。……それじゃ、今日のところはそろそろ帰るわね」
まどか「あ…そ、そう、だね」
ほむら「じゃあね、まどか。また明日」
バタン
まどか「……」
まどか「……っはぁー…ほむらちゃんってば、急にあんなこと言って……」
まどか「でも、嬉しいなぁ。明日から毎日来てくれるみたいだし」
まどか「……ほむらちゃん、今までずっとわたしのために戦ってきてくれたんだもん」
まどか「そのせいで何もなくなっちゃったんだとしたら、わたしが……」
まどか「わたしがほむらちゃんの力になってあげなくちゃ」
まどか「……よし。明日からはもっと楽しい日になるようにがんばろっと」
――数日後――
さやか「まーどーかー。ほーむーらー」
ほむら「これなんてどうかしら。素敵だと思うけど」
まどか「確かに綺麗だけど、これ育てるの大変だよ。似たようなのでいいならこっちの方が……」
さやか「2人とも、何話してるの?」
まどか「あ、さやかちゃん。今ね、育てるならどのお花がいいかほむらちゃんと話してたの」
さやか「ほむらと?」
ほむら「えぇ。それがどうかした?」
さやか「どうかしたって言うか…いつの間に好きなもの見つけたのかなって」
ほむら「……少し気になる程度よ」
さやか「そうだとしてもさ。全く、せっかくあたしたちが色々考えたってのに」
ほむら「他のみんなの案はともかく、あなたのサバゲームはどうかしらね」
さやか「だからサバゲーだって」
ほむら「どちらにせよ、あなたの案にはきっと乗らないと思うから。安心しなさい」
さやか「ぐぬぬ……」
まどか「でも、何かに興味を持った今のほむらちゃん、少し楽しそうに見えるよ」
さやか「そう?あたしにはいつも通りのぶっちょ…クールな顔にしか見えないけど」
ほむら「今、何を言いかけたの?」
さやか「な、何でもないよ。それより、そろそろ帰ろうよ」
さやか「あたしは今日もぶらぶらしてくつもりだけど、2人はどうする?」
まどか「あ、わたしはちょっと予定が入ってて」
ほむら「私も都合が悪いわね……」
さやか「む、そっか。なら仕方ない」
まどか「ごめんね、さやかちゃん」
さやか「いいって、気にしなくても」
ほむら「まどか、そろそろ……」
まどか「うん。じゃあ、わたしたちは先に帰るね」
さやか「2人とも、またね」
ほむら「さようなら、さやか」
さやか「……なーんだろ、あれ。2人して都合悪いって」
さやか「ここ数日あんな調子だけど、何がどうなって……」
さやか「……ははぁーん。さやかちゃん、気付いちゃいましたよ」
さやか「ありゃきっとデートだね。どっちが好きになったかはわからんけど」
さやか「そうなると何かに興味を持ったっていうより恋をしたってことになるのかねぇ」
さやか「そっか、デートかぁ……」
さやか「……えっ、マジで!?」
まどか「何だかさやかちゃんに悪い気がするなぁ。最近はほむらちゃんとばっかりだから……」
ほむら「気にしなくても大丈夫よ。このくらいで仲が悪くなるわけないだろうし」
まどか「それでも…今度何か埋め合わせしてあげないと」
ほむら「そうね。……それはそれとして、植えた花はまだ咲かないのかしら」
まどか「今朝見た感じだと…あと1日か2日ってところかな」
ほむら「じゃあ、今日はいつも通り水をあげて見守ることにしましょうか」
まどか「うん、そうしよう」
まどか「ただいまー」
ほむら「おじゃまします。今日も留守なのね……」
まどか「留守っていうか、パパは大体このくらいの時間に夕飯の買い物に行くから」
ほむら「あ、そうだったのね」
まどか「今日はどこまで成長したかな。楽しみ……」
まどか「……ほ、ほむらちゃん!早く来て!」
ほむら「どうしたの、まど……」
まどか「咲いてるの!全部咲いてる、満開だよ!」
ほむら「え……?う、嘘でしょ?」
まどか「ほんとだって!ほら、見て!」
ほむら「あ……」
まどか「どう?感想は」
ほむら「……綺麗。家庭菜園の端に作った小さい花壇でも…とても素敵ね」
まどか「きっとほむらちゃんと一緒に植えたから、こんなに綺麗に咲いたんだよ」
ほむら「もしそうだったとしたら…嬉しいわね」
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん。一緒に植え替えをしてくれて」
まどか「わたしね、こんな風にほむらちゃんと2人で何かひとつのことをしたかったんだ」
ほむら「私の方こそ、まどかと一緒で…とても楽しかった。嬉しかった」
ほむら「それに、まどかのおかげで何かに興味を持てたってことがわかったんだもの」
ほむら「まどか。誘ってくれて本当にありがとう」
まどか「……」
ほむら「まどか?」
まどか「……あっ、ごめんね。何でもないよ」
まどか(今、ほむらちゃん…笑ってたよね。自分じゃ気づいてないみたいだけど)
まどか(もし、わたしとこうしてるのが楽しくて笑ったんだとしたら…嬉しいな)
まどか(こんなに素敵に笑えるのに、今まではそんなことできなかったなんて……)
まどか(……これからは、ほむらちゃんの笑顔…もっと増えるよね)
ほむら「それにしても…本当に綺麗に咲いてくれたわね」
まどか「……ねぇ、ガーベラはわたしの好きなお花ってこの前話したでしょ?」
ほむら「えぇ。綺麗な花だからって」
まどか「そうなんだけど…わたし、ほむらちゃんにガーベラの花を贈りたくて……」
ほむら「どういうこと?」
まどか「あのね、ガーベラには『希望』と『前進』って花言葉があるの」
まどか「希望を掴んで、前に歩き出せたほむらちゃんへ贈るのにぴったりだと思って……」
ほむら「まさかこんなに素敵な贈り物を貰えるなんて…嬉しいわ」
まどか「えへへ、よかった」
ほむら「そう言えば隣のチューリップも見事に咲いてるわね。真っ赤で綺麗」
まどか「チューリップもわたしの好きなお花なんだ」
ほむら「ちなみにチューリップの花言葉って?」
まどか「あ、あー…えと、チューリップ全体としては『思いやり』なんだけど」
まどか「その…赤いチューリップは『愛の告白』って……」
ほむら「……ご、ごめんなさい」
まどか「謝ることないよ。べ、別におかしな意味じゃないし……」
ほむら「そうなんだろうけど…ガーベラがまどかの好きな花で、それを贈ってもらったから」
ほむら「チューリップの方もそうなんじゃないかって気がして……」
まどか「も、もしそうだとしてもそっちじゃなくて思いやりの方だよ、きっと」
ほむら「そっ、そうよね。愛の告白だなんて…いきなりすぎるわね」
まどか「そ、そうだよ。そんないきなり愛の告白なんてしないよ」
まどか(……あれ?今の会話、何かおかしくなかった?)
まどか(いきなり愛の告白なんてしないよ…って……)
まどか「いいい、今のは違うの!わ、わたしは別にほむらちゃんに告白するつもり、なんて……!」
ほむら「私の方こそ妙なことを…まるでいきなりじゃなければ言っていたみたいな……」
まどか「えっ!?そ、そうなの!?そうだったの!?」
ほむら「ち、違うわ!告白だなんて、私は……!」
ほむら「……と、とにかく1度落ち着きましょう」
まどか「……はぁー。何か大騒ぎしちゃったね」
ほむら「家に私たちだけだったからよかったものの……」
まどか「それは…そうかも。あぁもう、顔、あっつい……」
ほむら「変な話の流れにしてしまったのは…私よね、きっと。ごめんなさい」
まどか「気にしなくてもいいよ。それに、わたしだって……」
まどか「……思い返すとまた大変なことになりそうだし、やめよっか」
ほむら「綺麗に咲いた花も見れたことだし、私はそろそろ帰るわね」
まどか「うん。でも、綺麗に咲いたのはよかったけど…もうちょっと遅くてもよかった、かな」
ほむら「あら、どうして?」
まどか「……だって咲くのが遅ければ、それだけほむらちゃんがうちに来てくれて、一緒に……」
まどか「……って、何言ってるんだろ、わたし」
ほむら「別にこれでまどかと何かをするのが最後というわけじゃないんだから大丈夫よ」
ほむら「……それに、まどかが来てほしいと言うのなら、私は……」
まどか「えっ……」
ほむら「……何でもないわ。じゃあ、私は……」
まどか「あ、待って。ほむらちゃんに渡したいものがあるの」
ほむら「渡したいもの?」
まどか「うん。時間取らせちゃって悪いんだけど、少しだけ待っててくれないかな」
ほむら「それは構わないけど……」
まどか「ありがとう。すぐ用意するね」
ほむら「そんなに急がなくても…って、行っちゃったわ」
ほむら「……一体、何をくれるのかしら。楽しみね」
まどか「ほむらちゃん、お待たせ。はい、これ」
ほむら「これって…ガーベラ?」
まどか「そうだよ。咲いたのをいくつか植木鉢に植え直したんだ」
ほむら「でも、いいの?せっかく咲いたものを貰っても」
まどか「もちろんだよ。だってあれはほむらちゃんと2人で植えたんだから」
まどか「それになんて言うか…わたしの好きなものをほむらちゃんに貰ってほしくて……」
まどか「……い、今のは聞き流して」
ほむら「まどかがそう言うのなら…ありがたく頂くわ」
まどか「大事にしてあげてね」
ほむら「えぇ。……じゃ、私はこれで」
まどか「うん。またね」
ほむら「さようなら。また明日」
バタン
まどか「……ふへー」
まどか「わたし、何言ってるんだろう……。好きなものを貰ってほしいなんて……」
まどか「そりゃわたしの好きなものをあげて、喜んでくれたりしたら嬉しいけど……」
まどか「……って、だからそうじゃなくて…あぁもう、どうしちゃったんだろう、わたし」
まどか「何だかほむらちゃんが相手だと、突拍子もないこと言っちゃう……」
まどか「浮かれちゃうというか、舞い上がっちゃうというか…胸の奥がぐるぐるするような」
まどか「何だろう、この気持ち……」
まどか「ここ数日、ほむらちゃんとは毎日一緒に過ごしてたから…今まで以上に仲良くなれたと思うけど」
まどか「急に距離を詰めて、一気に仲良くなりすぎちゃったのかな」
まどか「それに心や頭がついていけなくて、混乱しちゃってる、とか……?」
まどか「……多分、そうなのかな。今もまだ気持ちがぐるぐるしてる気がするし」
まどか「でも、ほむらちゃんと仲良くなれてるのはいいことのはずだし……」
まどか「……深く考えても仕方ないよね。わたしの変な言動の原因に目星はついたわけだし」
まどか「あれこれ考えるのはここまでにしよっと」
まどか(……でも、何か引っかかるような?)
ほむら「……」
ほむら「……ふふっ」
ほむら「まどかがくれた、まどかと私で植えた花……」
ほむら「綺麗……。この花のおかげで、何だか私の家が華やかになった気がするわ」
ほむら「ガーベラ…花言葉は『希望』と『前進』で……」
ほむら「まどかの好きな花……」
ほむら「まどかは自分の好きなものだから貰ってほしいなんて言ってたけど」
ほむら「何だか恥ずかしいわね……」
ほむら「……でも、私は一体何に対して心が動いたのかしら」
ほむら「あのときは確か…まどかと一緒に花の植え替えをしていただけだったはず……」
ほむら「そうなると、私が気になったのは…ガーデニングという行為か、花という物か」
ほむら「そのどちらかになるんだと思うけど……」
ほむら「そういうものに対しての気持ちとは…違うような気がするのよね」
ほむら「……きっと私は花に興味を持ったのね」
ほむら「まどかに貰った花を見ているだけで何となく浮いた気分になってくるもの」
ほむら「このガーベラは、大切に…大切にしよう……」
ほむら「……せっかくだし、花のことを調べてみようかしら。まどかとの共通の話題になりそうだし」
ほむら「……考え事はこのくらいにして、夕飯にしましょう」
ほむら(だけどあのときの私はガーデニング作業も、花の苗も見てなかったはず……)
ほむら(だとしたら…この気持ちは何なのかしら……)
――翌日――
まどか「ふぅ。やっと放課後かぁ……」
まどか(……今日からどうしようかな。もうお花は咲いちゃったし)
まどか(どこかに寄り道していこうかな……)
まどか「うーん、でもどこに行こう……」
さやか「まどかー。帰るよー」
まどか「あ、さやかちゃん。今日、どこか寄り道していかない?」
さやか「んー、あたしは別にいいけど……」
まどか「さやかちゃん?」
さやか「……えーと、それはほむらも一緒なの?」
まどか「え?もちろん誘うつもりだけど…どうかしたの?」
さやか「い、いやぁ、何でも……」
さやか(どうしようかなぁ、2人一緒のところにあたしがいてもなぁ)
さやか(昨日までみたいに2人でデートしてくればいいのに何でまた……)
さやか(……もしかして最近一緒じゃないからって埋め合わせ的な理由なのかな)
さやか(そんなん気にしなくたっていいのに。ここは適当に用事を作って……)
まどか「それじゃわたし、ほむらちゃん誘ってくるね」
さやか「……えっ?あ、ちょっ!?」
ほむら「うぅん……」
ほむら(花のことを調べると言っても名前とか種類とかよくわからなくて家じゃ調べようがなかったわ……)
ほむら(図書室から図鑑を借りて読んでみたものの、今度は想像以上の種類が載っててわけがわからない……)
ほむら(……図鑑じゃなくてガーデニング関係の本に載ってる花の方がよかったかしら)
まどか「ほむらちゃん、帰りに…あれ、何読んでるの?」
ほむら「あぁ、まどか。花の図鑑を図書室から借りて読んでるんだけど……」
ほむら「載ってる種類が多すぎてちょっと驚いてたのよ」
まどか「あー、図鑑はとにかくたくさん載ってるからねぇ……」
まどか「……でも、どうしてお花の図鑑を?」
ほむら「ほら、この前、植え替えのときに言ったでしょう?何かに心を動かされたって」
ほむら「あれからまどかと一緒に花が咲くのを待ってたからか、花に興味を持ったみたいなのよ」
ほむら「それで、もう少し花のことを知れば、まどかと色々話せたりしないかと思って……」
まどか「そうなんだ……。でも、わたしもそこまで深く知ってるわけじゃないよ」
まどか「知ってるのはガーデニング入門の本なんかに載ってそうなのくらいだから」
ほむら「じゃあ、この図鑑はあまり役には立たないかしらね」
まどか「そんなこともないんじゃないかな。眺めてるだけでもいいと思うし」
まどか「図鑑を見て、気になったお花ってある?」
ほむら「そうね……」
さやか「ちょっとちょっと。まどか、あたし待たせてるの忘れてない?」
まどか「……あ、そ、そうだった。ごめんね、さやかちゃん」
さやか「いや、別にいいんだけどさ。で、何の話してたの?」
ほむら「花の図鑑を見ていたのだけど、気になったものはないかって」
さやか「図鑑、ねぇ。ほんと、いつの間に花が好きになったんだか……」
ほむら「い、いいじゃない。別に」
まどか「それで、どれが気になったの?」
ほむら「えぇと、このクロユリと…ラベンダーの2つかしら」
まどか「真っ黒なユリって何だか不思議だね。普段見るユリは白いのが多いし」
さやか「ラベンダーってあれこれ使われること多いけど、花はちょっと地味じゃない?」
ほむら「そうかしら……?」
さやか「まぁ、ほむらが好きって言うのならいいんだけど」
まどか「クロユリの花言葉は…『呪い』に『復讐』って……」
さやか「ラベンダーは『私に答えて』と『不信』かぁ……」
まどか「……ほ、ほむらちゃん、まさかとは思うけど……」
ほむら「ま、まさかも何もないわよ。見た目で選んだら偶然そうなっただけで……」
さやか「いやぁ…ちょっとゾクっちゃいましたよ、あたし。好きな花の花言葉がこれじゃ……」
さやか「ラベンダーは他にも『期待』もあるんだ……。答えてほしいのに不信があって、期待して……」
さやか「……ほむら、大丈夫?病んでないよね?」
ほむら「何よ……。何でこんな花言葉つけるのよ……」
まどか「ほ、他に何かあったりしないの?」
ほむら「あとは…今の2つと迷っていたものだけど、このアネモネとか……」
さやか「何だか中途半端に目立つ花だねぇ……。もっと派手!って花選んだらいいじゃない、ラフレシアとか」
ほむら「はっ倒すわよ」
さやか「んで、花言葉は『はかない恋』…そっかー、なるほどなるほど」
まどか「……ほ、ほむらちゃん、まさかとは思うけど……」
ほむら「だ、だから違うわよ!花言葉に関しては全部偶然だから!」
ほむら「そ、それにはかない恋って…ま、まるで私がまどかに片想いしてるみたいじゃない」
さやか「いやいや、片想いしてるみたいっていうか、まさにその通りなんじゃ……」
ほむら「……え?」
さやか「だって昨日までデートしてたんだし、かと言って付き合ってるってわけでもなさそうだし」
まどか「さ、さやかちゃん?何言って……」
さやか「今日の寄り道、あたしはやっぱりやめとくよ。2人で好きなとこにデートにでも行ってきなさい」
ほむら「ででで、で、デー、ト!?な、何、何を言ってるの!?」
まどか「そ、そうだよ!わたしたちは別に……!」
さやか「大丈夫だって、誰にも言うつもりなんてないからさ。じゃ、楽しんできなさいよー」
ほむら「ちょ、待ちなさい!さや……!」
まどか「……行っちゃった」
ほむら「……え、えーと…ど、どうしようかしら」
まどか「ど、どうしよっか。どこか寄ってみる……?」
ほむら「わ、私はいいけど…さやかのせいで何となく行きづらい雰囲気になってしまったわね……」
まどか「もー…さやかちゃん、何でデートだなんて言ってたんだろう……」
ほむら「冗談だとわかってはいるけど……」
まどか「まぁでも、変に気にかけることもないと思うよ。さやかちゃんの冗談なんだし」
ほむら「そう……?」
まどか「そうだよ。……も、もしほむらちゃんが…で、デートがいいっていうのなら」
まどか「わ、わたしは…デートでも……」
ほむら「ちょ、まどかまで何言ってるの!?そ、そんな、デートだなんて……!」
まどか「ご、ごめんね……」
ほむら「私たちは恋人でも何でもない、同性の友達なんだから…デートというのは……」
ほむら「……変、だと思うわ」
まどか「そう…だよね。わたしたちは友達だもんね」
ほむら「え、えぇ。だから、デートじゃなくて普通の寄り道にしましょう」
まどか「うん。……あ、そうだ。ほむらちゃん、お花に興味持ったんだよね?」
ほむら「そうだと思うけど…でも、それがどうかしたの?」
まどか「わたし、お花の綺麗なところを知ってるんだ。そんなに遠い場所じゃないんだけど……」
まどか「ほむらちゃんさえよければ…これから行ってみない?」
ほむら「まどかからの誘いだし、行ってみようかしら」
まどか「……誘っておいてから言うのも何だけど、夕飯の支度とかって大丈夫?」
ほむら「心配しなくても大丈夫よ。……ほら、行きましょう?」
まどか「あ、うん!」
――――――
まどか「ふぅ……。やっと着いた……」
ほむら「ここが…まどかの言ってた……?」
まどか「う、うん。ごめんね、そんなに遠くないとか適当なこと言って」
まどか「学校からだと結構距離あったね……。もう夕暮れになっちゃってるよ……」
ほむら「……いえ、気にすることなんてないわ」
まどか「そ、そう?よかった。……それよりも、どうかな。この場所」
ほむら「とても…とても素敵よ。見渡す限りに花が咲いていて……」
ほむら「こんなに綺麗な場所があったなんて知らなかったわ……」
まどか「わたしも偶然見つけたんだけど、すごいよね。どこまでも満開のお花が続いてて」
ほむら「……えぇ。まどか、連れて来てくれてありがとう」
まどか「……あのね、この場所に一緒に来たのは…ほむらちゃんが初めてなんだ」
ほむら「え……?」
まどか「さやかちゃんはあんまりお花は好きじゃないみたいだし……」
まどか「マミさんや杏子ちゃんはこういう話をする機会がなくて……」
まどか「だからここで一緒にお花を眺めるのは、ほむらちゃんが最初なの」
ほむら「そ、そう…なの……」
まどか「あっちにベンチがあるから、ちょっと休むついでに眺めてよっか」
ほむら「わ、わかったわ」
まどか「……ほむらちゃん、大丈夫?狭くない?」
ほむら「大丈夫、よ。私、細いから……」
まどか「そんなことないと思うけどなぁ。もし狭かったら言ってね」
ほむら(な、何だか落ち着かないわ。2人がけのベンチでまどかが近いせいかしら……)
ほむら(それに一緒に来るのは私が初めてっていうのが…デートみたいなんて考えてしまう……)
ほむら(学校であんな冗談を聞いたせいで変なことを考えて…恨むわよ、美樹さやか……)
ほむら(とにかく、別にこれはデートなんかじゃなくて…友達のまどかと花を見に来ただけよ)
まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。わたしね、今…こうしてるのが嬉しいの」
ほむら「う、嬉しい……?」
まどか「うん。ほむらちゃんの好きなものを一緒に見ていられるから…かな。自分でもよくわからないんだけど」
まどか「でも…嬉しいとか楽しいとか、色々混ざった素敵な気持ちになるのは本当だよ」
ほむら「まどか……」
まどか「わたしとほむらちゃんが同じ気持ちかどうかはわからないけど……」
まどか「ほむらちゃんも、少しでもそんな気持ちになってくれたらいいなって…そう、思うんだ」
ほむら「……っ!」
まどか「……なんて、恥ずかしいこと言っちゃったね」
ほむら「べ…別に、そんなこと…ない、わ」
ほむら(な、何?この感覚……。胸の中が詰まるような……)
ほむら(ただ、まどかと一緒に花を見ているだけ…なのに……)
ほむら(好き…だと思われるものを知られて恥ずかしくなったわけでもない……)
ほむら(この苦しさのようなものは…何……?私は…どうしてしまったの……?)
まどか「……ほむらちゃん?どうかしたの?」
ほむら「え、ぁ…ごめんなさい。何でもないわ……」
まどか「それならいいんだけど、具合でも悪くなったのかと心配しちゃったよ」
ほむら「ちょっ、まど…ち、近いわよ……?」
まどか「……あれ、ほむらちゃん。顔赤いよ?」
ほむら「えっ……?」
まどか「もう、そんな顔真っ赤になるほど恥ずかしがらなくたっていいのにー」
ほむら「べ、別に恥ずかしいからじゃ……!」
まどか「恥ずかしいからじゃないなら、どうしたの?」
ほむら「そ、それは……」
ほむら「……ゆ、夕日のせいよ。夕日のせいでそう見えてるだけ」
まどか「え、でも……」
ほむら「お、お願いだからそういうことにしておいて」
まどか「何だかよくわからないけど…そういうことにしておくね」
ほむら「そうしてもらえると助かるわ……」
ほむら(あぁもう、顔が熱い……。何でこんなに赤くなってるの、私……)
ほむら(いつも通りに振る舞って、普段通りにまどかと接してればいいだけじゃない……)
まどか「……さて、と。そろそろ帰ろっか」
ほむら「も、もう帰るの?」
まどか「うん。何が理由かはわからないけど、ほむらちゃん、ちょっと様子が変だから」
まどか「早く帰って休んだ方がいいかなって」
ほむら「そ、そうね。時間も時間だし、帰った方がよさそうね」
まどか「……ね、ほむらちゃん」
ほむら「な、何?」
まどか「また、2人でお花…見に来ようね」
ほむら「……その、私でよければ…いつでも構わないけど」
まどか「ほんと?じゃあ、今度はまた別の場所を探しておくね」
ほむら「え、えぇ。楽しみにしておくわ」
まどか「わかった。期待しててね」
ほむら「……そ、それじゃ帰りましょう」
――――――
まどか「今日はありがとう。楽しかったよ」
ほむら「わざわざ家の前まで一緒じゃなくてもよかったのに」
まどか「いいの、わたしがそうしたいって思っただけだし」
まどか「あの場所からだとほむらちゃんの家の方が近いしね」
ほむら「なら、いいけど。……夕飯の支度なんかもあるから、私はこれで」
まどか「うん。……ほむらちゃん、また明日」
ほむら「また、ね。気をつけて帰りなさい」
ほむら「……ただいま」
ほむら(家に帰ってきて、ひとりになって…少しは落ち着いたみたいね……)
ほむら(今なら…冷静に考えることができるかしら。さっきの…私のことを)
ほむら(あのときの私は…どうしてあんな感覚に陥ってしまったのかしら……)
ほむら(胸が詰まるような、締められるような…言いようのない感覚……)
ほむら(また心臓病が再発したんじゃないかとも思ったけど、そんな感じじゃない……)
ほむら(恥ずかしいのもあるけど…それとは違う理由で真っ赤になって……)
ほむら(どうしてだかまどかの顔が何となく見づらくなって……)
ほむら(胸が締められて、苦しくて…それでいて嬉しいって気持ちも確かにあって……)
ほむら(ただ、まどかと一緒に…花を見ていただけのはずなのに、どうして……)
ほむら(どうして私はこんなにもドキドキしているの……?)
ほむら(自分のことのはずなのに…何もわからない……)
ほむら(……以前、まどかと花の植え替えをしてるときにもよくわからない何かを感じたのよね)
ほむら(あのときは花に興味を持ったということにして無理やり納得していたけど……)
ほむら(多分…あのとき感じた何かと今日感じた何かは同じ気持ちから来るものって気がする……)
ほむら(でも、それが一体何なのか…見当もつかない……)
ほむら「……今日の夕飯は久しぶりにカロ○ーメイトにしましょう」
ほむら(自分でも何なのかわからないこの感覚……)
ほむら(答えが出るまで徹底的に考えてみるわ……!)
まどか「うーん……」
まどか(今日のほむらちゃん、どことなく様子が変だったけど…どうしたんだろう)
まどか(丘の公園についてから、何か落ち着きがないというか、そわそわしてたっていうか……)
まどか(さやかちゃんがデートなんて言ったせいかもって思ったけど、あれは冗談で……)
まどか「……明日になればきっといつも通りになってる、よね。わたしが考えてもわからないと思うし」
まどか「それに、ほむらちゃんもそうだったけど…わたしもだいぶ普段通りじゃなかったよね……」
まどか「素敵な気持ちだとか、同じ気持ちなら嬉しいとか…また突拍子のないこと言っちゃって……」
まどか「……い、今になって恥ずかしくなって…何であのときのわたしは平然とあんなこと言えたんだろう」
まどか「何だか昨日以上に浮かれちゃってるなぁ、わたし……」
まどか「最近はほとんど毎日一緒だったせいか、普段通りに過ごせなくなっちゃったし……」
まどか「それに、普段通りって言うけど…こんな気持ちになる前ってどういう風に過ごしてたっけ……?」
まどか「……ううん、ダメだ。全然思い出せない」
まどか「だけど、ほむらちゃんと一気に仲良くなったせいか……」
まどか「何だかほむらちゃんのことばかり考えちゃうようになった気がする……」
まどか「わたしが浮かれちゃうのもそれが理由なのかなぁ……」
まどか「まぁでも、仲良くなりすぎて困ることがあるわけでもないし、悪いことでもないし」
まどか「何より、ほむらちゃんともっともっと仲良くなりたいな」
まどか「そうと決まれば…早く帰って次の予定、立てないと」
まどか(……だけど、やっぱり何か引っかかる気がするなぁ)
今回はここまで
読んで下さってる方、ありがとうございます
次回投下は2日夜を予定しています
乙でした
もどかし甘い
純度高いな
これはKENZENですか??
乙です
こんな感じのひさしぶりに読む気がする
今までKENZENなものしか書いたことがないので
仮にそういうの書いてと言われてもたぶん無理です
あとやっぱり3分割じゃ収まり悪かったのでもう1.2回増えます
次から本文
――翌日――
まどか(うぅ…やっちゃった。遅くまで考え事してたせいで、寝坊しちゃった……)
まどか(急いで学校まで来たのはいいけど、別に遅刻するほどじゃなかったんだよね……)
まどか(でも、寝坊したのは本当だし…ほむらちゃんにみっともないところ、見られちゃうなぁ……)
まどか(さやかちゃんたちは…もう来てるかな。待たせるのも悪いし、先に行ってもらったけど)
まどか(とにかく、教室に行ってみよう……)
まどか「えっと、さやかちゃんたちは……」
さやか「あ、まどか。ちょいちょい」
まどか「さやかちゃん、おはよう。今日はごめんね」
さやか「あぁ、別にいいって。……それよりも、あれ…見てくれる?」
まどか「え?」
ほむら「……」
まどか「あれって…ほむらちゃんだよね。ほむらちゃん、どうかしたの?」
さやか「いやさ、今日のほむら…なーんか様子が変なんだよ……」
さやか「なんて言うか…あたしが何か言っても適当な返事で、ぼけーっとしてて……」
さやか「まるでこの前までの燃え尽きほむらに戻ったみたいな感じなんだよ」
まどか「えっ…そうなの……?」
さやか「あくまでそんな感じってだけで、戻ったわけじゃないとは思うけど……」
さやか「で、教室来てからはずっと自分の席でぼんやりしてて、話しかけても返事もなくてさ」
さやか「まどか、ちょっと声かけてきてよ。ほむらが反応するとしたらまどかだけだろうし」
まどか「そ、そんなことないと思うけど…やってみるね」
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん、おはよう」
ほむら「……」
まどか「……?ほむらちゃん?」
ほむら「……あ、まどか。おはよう」
まどか「う、うん。何だかぼんやりしてるってさやかちゃんに聞いたけど、どうしたの?」
ほむら「……少し考え事をね。以前みたいに何もする気がないというわけじゃないから、大丈夫よ」
まどか「それならいいんだけど…もしよかったら、話してくれないかな……?」
ほむら「自分の気持ちの問題だから…自分で何とかするわ」
まどか「そっか……。何を考えてるかはわからないけど、無理はしないでね」
ほむら「わかってるわ。ありがとう」
まどか「……じ、じゃあ、わたしは行くね」
ほむら「えぇ。またあとで」
ほむら「……」
ほむら(……結局、あれからいくら考えても納得するような答えは見つからない)
ほむら(私自身の気持ちのことのはずなのに、何もわからないなんて……)
ほむら(特に不快感のあるものでもないからいいのだけど……)
ほむら(自分の気持ちが何なのかわからないのは…モヤモヤする)
ほむら(かと言ってまどかに話すのも何だか気が引けるのよね……)
ほむら(本当に…私はどうしてしまったのかしら……)
――放課後――
まどか「……ねぇ、さやかちゃん」
さやか「うん…ほむらが大丈夫だって言ってたんだし、それを信じて1日待ってみたけど」
さやか「ほむらのぼんやり、何か朝より悪化してない?」
さやか「授業も身が入ってないのか、呼ばれても気が付かないほどだし……」
まどか「それ以外はずっと空を見上げてぼーっとしてたね……」
さやか「ほんとに大丈夫かなぁ、あいつ。周りに気づかれないように溜め込むのが得意な奴だし」
さやか「いつの間にかお空きれいなんて精神状態になったりするのも困るし……」
まどか「え、お空……?」
さやか「ううん、何でもない。それよりも、どうする?」
まどか「どうするって言われても…ほむらちゃんはただの考え事だって言ってたけど……」
さやか「ただの考え事ならいいんだけど…まぁ、まどかがついていてあげれば心配ないよね」
まどか「え?」
さやか「いやだって2人でデートに行くような間柄でしょ?なら、まどかに任せておけば大丈夫かなって」
まどか「……ちょっ、な、何言ってるのさやかちゃん!?」
まどか「わ、わたしとほむらちゃんは、別に、そんなのじゃ……!」
さやか「あれ、違うの?」
まどか「違うよ!」
さやか「何だ、そうなのか。面白くないなぁ……」
まどか「面白いとか面白くないとか、そういう話じゃないよ……」
さやか「まぁ何にせよ、ほむらと1番仲良いのはまどかだからさ」
さやか「ほむらが何かに悩んでるのだったら、力になってあげなよ」
まどか「それはわかってるけど……」
ほむら「まどか……」
さやか「お、言ってるそばから。ほら、まどか」
まどか「う、うん。何かな、ほむらちゃん」
ほむら「今日は先に帰らせてもらうわ。それを伝えに……」
まどか「……そっか、わかった」
ほむら「じゃあ…私はこれで。また、明日」
まどか「ばいばい、ほむらちゃん……」
さやか「……結局、あたしたちには何も話してくれなかったね」
まどか「相談事されても、わたしたちじゃあんまり役に立てないと思うし……」
さやか「それ、あたしも含まれてる…よね。そりゃ大したことは言えないけど……」
さやか「そうじゃなければ…あたしたちには話しにくいことなのかも」
まどか「……今そのことを考えても仕方ないし、今日はわたしたちも帰ろう」
さやか「そうしますか。……あ、まだ支度してないから、ちょっとだけ待ってね」
ほむら「……」
ほむら(今日は1日中ずっと考え事をしていたような気がするわ)
ほむら(考え事ばかりしていたせいで、またぼんやりしていると思われたみたいね……)
ほむら(まぁ…ぼんやりしてないと言えば嘘になるのだけど……)
ほむら(考えても考えても答えは何も出なくて、そのうち考えることに疲れてきて……)
ほむら(次第に私の気持ちのことよりもまどかのことばかりが頭に浮かんできて……)
ほむら(確かにまどかは私にとって特別な友達だけど、友達のことをこんなにも考えてしまうものなのかしら……)
ほむら「……誰かに相談とかしてみた方がいいかもしれないわね。私1人じゃ……」
ドン
ほむら「……っと、ごめんなさい。大丈夫かしら?」
マミ「えぇ、こちらこそ…って、暁美さん?」
ほむら「マミ……」
マミ「……どうしたの?何だか浮かない顔をしているけど」
ほむら「そんなこと……」
マミ「少なくとも私にはそう見えるわ。何か悩み事?」
ほむら「……確かに考え事をしてるけど…これは私の気持ちの問題だから」
マミ「そうだとしても、誰かに話すだけでも楽になると思うわ」
マミ「私でよければ…話してもらえないかしら?」
ほむら「……」
ほむら(マミなら…この気持ちの正体を知ってるかもしれない。それに……)
ほむら(他の誰かと一緒でも感じるのかどうか…確認してみる価値はあるわよね……)
マミ「暁美さん……?」
ほむら「……今、考え事をしてると言ったけど…ずっとあることを考えていて」
ほむら「それについて…一緒に考えてほしいの」
マミ「えぇ、わかったわ。それじゃ、私の家に……」
ほむら「待って。悪いんだけど、別の場所でも構わないかしら?」
マミ「私はいいけど…どこなの?」
ほむら「案内するから、ついてきて」
――――――
ほむら「……着いたわ。ここよ」
マミ「ここは…公園かしら。素敵なところね、見渡す限りに花が咲いていて」
ほむら「……そうね。私も初めてここに来たとき、同じようなことを言ったわ」
マミ「そう……」
ほむら「向こうにベンチがあるから、そこで話しましょう」
マミ「よいしょっと。ベンチからの眺めもなかなかいいじゃない」
ほむら「……」
マミ「……それで、暁美さんの考え事というのは何かしら?」
マミ「私の家でもあなたの家でもなく、ここで話さないといけない内容なの?」
ほむら「それは……」
ほむら「……ごめんなさい。わからない」
マミ「わからないって……」
ほむら「……わからないの。私が何に対してどういう思いを持っているのか」
ほむら「私自身はどうしたいのか、どうするべきなのか。それさえもわからなくて……」
ほむら「こんな感覚になったのは…初めてだから……」
マミ「……最初から話してもらえる?ゆっくりで構わないから」
ほむら「……先日、私の趣味探しをしてくれたでしょう?」
マミ「えぇ。あちこち色々と行ったけど、結局見つからなかったのよね」
ほむら「全部回って、帰る途中で…まどかから花の植え替えに誘われて……」
ほむら「特に断る理由もなかったから、まどかの家の庭で一緒に植え替え作業をしたんだけど」
ほむら「そのときに…何かが心を動かしたの」
マミ「何か?」
ほむら「そう、何か。それから数日、植えた花が咲くのを楽しみにしていたから……」
ほむら「私はきっと花…植物を眺めたりするのが好きなのかもって…そう思ってたの……」
マミ「暁美さん、好きなものができたのね。この場所に来たのも花が好きだからかしら?」
ほむら「……多分、まどかもそう思って私をここへつれてきてくれたのが…昨日のこと」
ほむら「このベンチに2人で座って、花を眺めていたの」
ほむら「だけど、まどかと話をしているうちに…変な感覚を感じるようになって……」
マミ「変な感覚って?」
ほむら「胸が詰まるような、何かに締め付けられるような…そんな感覚なの……」
マミ「えっ……」
ほむら「まどかが近いのはいつものことのはずなのに、顔が真っ赤になって……」
ほむら「何故かまどかの顔が見づらくなって、変にドキドキして……」
ほむら「胸が締めつけられて、苦しくて…でも、嬉しいって気持ちも確かにあって……」
ほむら「ただまどかと…私の好きな花を眺めているだけなのに、どうしてこんな感覚になるのか」
ほむら「それがわからなくて……」
ほむら「家に帰って、落ち着いて考え直して…花の植え替えのときに感じた何かとここで感じた何か」
ほむら「その2つは同じ気持ちからのものだって気がするの……」
ほむら「ただ、それが何に対しての気持ちから来るものなのかは…わからない……」
ほむら「今日も1日中、考えて考えて…ずっと考えてみたものの答えは出なくて……」
ほむら「次第に考え疲れてきて、ぼんやりするようになって……」
ほむら「自分の気持ちのことを考えていたはずなのに、まどかのことばかりが頭に浮かんで……」
ほむら「どうしたらいいのか…わからなくなってしまったの……」
マミ「そう……」
ほむら「……もしかしたら、ただ花好きが行き過ぎてしまったのかと思ったけど…それも違う」
ほむら「今、あなたとこうして花を眺めていても…花に対しては綺麗に咲いている以上の気持ちはないもの」
ほむら「同時に、マミが一緒だといつも通りの私で…あの感覚らしいものは何も感じない」
ほむら「もう…私1人じゃ手に負えない。私の理解の範疇を…とうに超えてしまってる」
ほむら「同じ時の繰り返しでどこかおかしくなったのか、それとも色々と慣れないことをしたせいなのか……」
ほむら「……私には理解できないこの感覚、気持ち、感情…何が何なのか、まるで理解できてないけど」
ほむら「もしこの正体を知っていたら…教えてくれないかしら……?」
マミ(これって…十中八九、そういうことよね……?他に考えられるものなんてないし……)
マミ(でも、どうしよう…教えちゃっていいものかしら……?)
ほむら「……わからない、わよね。こんなわけのわからない感覚なんて」
ほむら「きっと…心を病んでしまったのかしらね……」
マミ(……教えてあげた方がいいみたいね。正体がわからずとても辛そうにしてるもの)
マミ(私だってあまり人にあれこれ言えるわけじゃないけど、今は暁美さんの疑問に答えてあげないと……)
ほむら「……ありがとう、マミ。話を聞いてもらっただけでもだいぶ楽になった気がするわ」
ほむら「それじゃ…私はこれで……」
マミ「……知ってるわ。暁美さんが感じたっていう、その何かのこと」
ほむら「え……?」
マミ「暁美さん自身で気付いた方がいい気はするけど…もう十分すぎるほど考えて、悩んだんだもの」
マミ「……教えてあげたって…いいわよね」
ほむら「……勿体ぶってないで教えて。私のこれは一体何なの?」
マミ「今も言ったけど、本来は自分で気付いた方がいいって…私はそう思うのよ」
マミ「それでも…今、私から聞きたいのかしら?」
ほむら「……今の私じゃ、どう考えても答えを見つけるどころか何の見当もつかない」
ほむら「教えて、マミ。私は…どうしてしまったというの?」
マミ「……暁美さんの感じたものは…心臓病でも、心を病んだわけでも…病気なんかじゃない」
マミ「どんな感情よりも深くて、熱くて、優しくて…私たち女の子が何よりも憧れる素敵なもの」
ほむら「何よりも憧れる……?」
マミ「えぇ。暁美さんが感じた、その感覚は……」
マミ「……恋って、いうのよ」
ほむら「恋……?」
マミ「そう、恋。暁美さんの話を聞く限り、まず間違いないと思うわ」
ほむら「恋って…あの、誰かのことを好きになる…恋愛の恋のこと……?」
マミ「その通りよ。特定の誰かのことが好きで好きでどうしようもなくなってしまう、その恋のこと」
ほむら「……」
マミ「暁美さんは今まで、恋する気持ちというものを知らなかったんでしょうね」
マミ「今まで1度も感じたことのない気持ちだったから、いくら考えても答えが出なかったんじゃないかしら」
ほむら「……待って」
マミ「暁美さん?」
ほむら「今のあなたの話だと…私のこの気持ちは恋をしてるからって……」
マミ「十中八九そうだと思うわよ?」
ほむら「……もしそれが本当だとしたら、私…私が恋をしているのは……」
ほむら「まどかって…ことになるじゃない……!」
マミ「だってそうでしょう?鹿目さんと一緒にいると胸が締め付けられて、ドキドキして」
マミ「真っ赤になって顔が見づらくなって、そうなってしまうのが鹿目さんが相手のときだけで」
マミ「ぼんやりしてるときに頭に浮かぶのは鹿目さんのことばかり。これが恋でなくて何だというの?」
ほむら「そ、それは……」
マミ「まだ恋をするってことに慣れないと思うけど、そんなに心配しなくても大丈夫よ」
ほむら「ち、ちが、そういうことじゃなくて……」
マミ「え?」
ほむら「……さすがの私でも知ってるわ。恋というものは男性と女性の間で起こるものだって」
マミ「そうとも限らないわ。同性の間でだって恋は起きるものよ?」
ほむら「そうだとしても…女の私が女のまどかに恋をするのは……」
ほむら「それは…きっと普通じゃないわよ……」
マミ「……」
ほむら「確かに、まどかのことは…誰よりも大切で、特別な相手だけど……」
ほむら「そのまどかに恋をするなんて…有り得ないわ」
ほむら「まどかだって、私のことは友達として見ているだろうし……」
ほむら「何より…普通じゃない、変なことを言ってまどかを傷つけたくは……」
マミ「……暁美さん、あなたはひとつ大事なことを見落としているわ」
ほむら「大事なこと……?」
マミ「女の子同士はおかしいとか、普通じゃないとか…そういうのは今はどうだっていい」
マミ「大事なのは暁美さんが今どう思っていて、鹿目さんとどうなりたいのかよ」
ほむら「まどかと…どうなりたいか……」
マミ「暁美さん。あなたはどうしたいの?」
ほむら「どうも何も…まどかを守れたのだから、私はこのまま過ごせれば……」
マミ「本当にそれでいいの?そんなちっぽけな幸せでいいの?」
マミ「あなたには、もっと大きな望みがあるはずよ。それを諦めてしまうの?」
ほむら「……私の望みに手を伸ばせば…私だけでなく、まどかだって傷つけてしまうから」
マミ「だとしても、本当の気持ちを相手に伝えちゃいけない理由にはならないわ」
マミ「それに…鹿目さんだって、きっとあなたの本当の気持ちが知りたいはずよ」
ほむら「……」
マミ「せっかく自分の本当の気持ちがわかったのよ?自分の気持ちに嘘をついちゃダメ」
マミ「自分に嘘をついたら、今度はそのことを悩むようになってしまうと思うもの」
マミ「悩みを抱えたまま過ごすより、好きな人と共に過ごす日々の方が素敵じゃないかしら?」
ほむら「……相談しているのは私の方なのに、随分と好き放題言ってくれるじゃない」
マミ「仕方ないじゃない、暁美さんがつまらない言い訳をするんだもの」
ほむら「そうだったかも…しれないわね……」
マミ「……聞かせて。暁美さんはどうしたいの?」
ほむら「私…私は、まどかと…恋がしたい」
ほむら「せっかく自分の気持ちに気づいたんだもの。まどかと、恋人に…なりたい……!」
マミ「やっと本当のこと、話してくれたわね」
ほむら「……まどかが私のことをどう思っているのか…不安に思わないわけじゃないけど」
ほむら「私の気持ちを伝えなければ、恋人になるも何もないって……」
マミ「鹿目さんが暁美さんに対してどういう感情を持っているかはわからないけど」
マミ「少なくとも、私や美樹さん、佐倉さん以上の好意を抱いてるはずよ」
ほむら「もしそうだったとしたら…嬉しいわね」
マミ「……さぁ、本題はここからよ。鹿目さんにどう想いを伝えるか」
マミ「私も上手くいくように力を貸すわ」
ほむら「……ありがとう。何から何まで」
マミ「お礼を言うのはまだ早いわ。今はこれからのことを考えましょう」
ほむら「……恋を知らなかったんだから当然だけど、どうしたらいいかなんてわからないわ」
マミ「そうよね……。定番と言えば、やっぱりどこかにデートをしてその最後に、とかはどう?」
ほむら「デートをするというのはいいんだけど、どこに行ったらいいのかしら」
マミ「そうねぇ。2人が友達以上の空気というか…いい雰囲気になれる場所なら、どこでもいいと思うわよ」
ほむら「そう言われて簡単に行き先が思いつくと思う?」
マミ「偉そうに言うことじゃないと思うけど……」
ほむら「……何か場所を見繕ってくれないかしら?」
マミ「私も実際にデートなんてしたことないから、雑誌とかの知識になるんだけど」
マミ「デートの定番と言うと…一緒に買い物をするとか、映画を見にいくとか……」
マミ「あとは家デートっていうものもあるわね。お互いの家に行くっていうものだけど」
ほむら「……悪くはないけど、今の私たちだとただ遊びに行くだけになりそうだから駄目ね」
ほむら「買い物や映画っていうのも、何だかいまいちピンと来なくて……」
ほむら「……困ったわね。どうしたものかしら」
マミ「何か丁度いいイベントとか催し物、やってないかしら……」
ほむら「マミが知らないのなら、私は余計に知らないわ……」
マミ「いい考えだと思ったんだけど……」
ほむら「……でも、いい考えかもしれないわ」
マミ「えっ?」
ほむら「この辺りで何かやってないか、家に帰ったら調べてみて」
ほむら「よさそうなものがあったら、そこに行くことにするわ」
マミ「そう……。決まってよかったわ」
ほむら「そうと決まれば…早速帰って調べないと」
ほむら「書店で情報誌を買っていくのもよさそうね……」
マミ「ふふっ。すっかりその気になってくれたみたいでよかったわ」
ほむら「……マミ、今日は本当にありがとう。話を聞いてくれて、背中を押してくれて」
ほむら「まぁ、押したというより突き飛ばされた感はあるけれど」
マミ「言ったでしょう?お礼は全て上手く行ってから受け取るわ」
ほむら「……じゃあ、私はこれで」
マミ「えぇ。暁美さん、また明日」
マミ「……上手く行くかしら。何だか私まで不安になってきちゃったわ」
マミ「でも…これ以上は私にできそうなことはないし、あとは暁美さんを信じましょう」
マミ(……花に恋の女神が宿っているなんて話、聞いたことないけど)
マミ(もし、いるのなら…暁美さんの恋が実りますように……)
マミ「……さて、私も帰って夕飯の支度をしないと」
――――――
ほむら「うぅん……」
ほむら(書店に寄って情報誌をいくつか読んでみたけど……)
ほむら(あまり使えそうな情報はなかったわね……)
ほむら(情報誌から得られたイベント情報といえば北海道の物産展くらいで)
ほむら(さすがに…意中の相手と行くのはどうかと思ってしまうわ……)
ほむら(……それに、パソコンで色々探してみてはいるけれど)
ほむら(あまりこれといったもの、やってないのよね……)
ほむら「……仕方ない。いい場所とか…そういうのを知ってそうな人に聞きましょう」
ほむら「えっと、携帯は…カバンの中だったわね……?」
ほむら「……これ、花の図鑑?ぼんやりしてて教科書と一緒にカバンに入れちゃったのかしら」
ほむら「図書室の本の貸し出しはあくまで学校内だけなのに…持って帰ってきちゃったわ……」
ほむら「……」
ほむら(私…色々と勘違いをしていたのよね。興味を引かれるもの、趣味になりそうなものを見つけたと思ったのに)
ほむら(本当のところは…好きな人ができて、その人に惹かれていたなんて……)
ほむら「……って、図鑑を読んでる場合じゃなかったわね。電話を……」
ほむら「……あら?この花、どこかで見たような…どこだったかしら」
ほむら「確かショッピングモールを行った先の…ここのページだったような……」
ほむら「……見つけたわ。明日から催し物もあるみたいだし、もし駄目でも大丈夫よね」
ほむら「決めた。ここに行ってみることにしましょう」
ほむら(あのとき、まどかは空っぽだった私に本当に素敵な贈り物をしてくれた)
ほむら(だから今度は…私がまどかに最高の贈り物をする番。同じような手法になってしまうけど)
ほむら(私の気持ち、私の全部…まどかに伝えなきゃ……!)
今回はここまで
読んで下さってる方、ありがとうございます
次回投下は3日夜を予定しています
乙
乙つ
乙でした
乙した!
乙。
ほむらは「巴さん」だね。
クーほむだと『巴マミ』もしくは、打ち解けた後なら『マミ』という印象がある
まぁ、書き手しだいだが
今日はちょっと時間取れなかったのでだいぶ少ないです
もう1回くらいかかると思います。ごめんなさい
次から本文
――数日後 放課後――
さやか「んー、終わったー。さて、今日はどこに……」
まどか「さやかちゃん、最近放課後は遊びっぱなしじゃない?」
さやか「うん?……あー、そうかも。ほら、あんなバケモン倒したんだからさ」
さやか「少しくらいハメ外してもいいかなって」
まどか「あれからもう結構経ってるんだけど……」
さやか「まぁまぁ、遊び歩くのも学生の日常でしょ」
まどか「それはそうかもしれないけど……」
さやか「……そーいや、ほむら…最近は一段と様子がおかしいけど、どうしたんだろ」
まどか「ずっとぼんやりしてて、声かけたらすっごいびっくりして」
さやか「それからしばらくはあわあわして、そわそわして落ち着きがなくなって」
さやか「で、またぼけーっと空を見上げてたんだよねぇ」
まどか「ほんと、どうしちゃったのかなぁ……」
さやか「……それで、そのほむらはどこ行った?」
まどか「図書室に借りた本返しに行くって言ってたけど……」
さやか「ならそんな時間かからないだろうし、戻ってくるまで待ってるかね」
ほむら「失礼しました……」
ほむら「……ふぅ」
ほむら(デート…の場所の目星をつけてもう数日。早くまどかを誘わないといけないのに)
ほむら(こんなのどう誘えばいいのかわからないし、それに……)
ほむら(1度、同性のデートは…変と言ってしまってる以上、デートとは言いにくい)
ほむら(でも…私の考えを実行するなら今しかないのよね。偶然見つけて、しかも咲いたとなれば……)
ほむら(……奇跡が咲いているのは今の間だけ。持ってあと1日2日)
ほむら(この機を逃せば…次のチャンスは秋になってしまう……)
ほむら(何かいい考えは……)
ドン
ほむら「……っ、ごめんなさい。ぼんやりしてて……?」
マミ「こちらこそ…って、また暁美さん?」
ほむら「何だか最近よくぶつかるわね……」
マミ「知らない誰かとぶつかってしまうよりいいんじゃない?」
ほむら「そう…なのかしら……?」
マミ「まぁ、それはいいとして。今日は一体何を悩んでいるの?」
ほむら「……まどかをどう誘ったらいいのかわからなくて」
マミ「普通に出かけないか…は駄目だったわね。暁美さんがしたいのはデートだから……」
ほむら「えぇ。……以前、同性のデートは変と言ってしまって、言い出しづらくて」
ほむら「他に何か言い回しとか…ないかしら……?」
マミ「そんなこと、鹿目さんも気にしてないわよ。だから、ストレートにデートだと誘えばいいじゃない」
ほむら「でも……」
マミ「でもも何も、誘わなければ何も始まらないでしょう?」
マミ「だったら正面からデートしてほしいと言うべきじゃないかしら」
ほむら「……そう、ね。回りくどい言い方をしてデートの誘いだと思われない方が…酷いわよね」
ほむら「教室に戻って…まどかを誘ってみるわ」
マミ「えぇ。頑張って、暁美さん」
ほむら「……じゃあ、行ってくるわね」
マミ(……大丈夫よね。きっと)
まどか「うーん……」
まどか(ほむらちゃん、遅いなぁ。本を返しに行っただけのはずなのに)
まどか(さやかちゃんは待ちくたびれて先に帰っちゃったし……)
まどか(でも、わたしまで先に帰っちゃうのも……)
まどか「……まぁ、こうして待ってるのも嫌じゃないんだけど」
ガラ
ほむら「あ、まどか……」
まどか「おかえりー。ずいぶん時間かかってたけど、何かあった?」
ほむら「いえ。教室に戻る途中でマミと会って、少し話をしていただけよ」
まどか「そっか。……あ、さやかちゃんが待ちくたびれて先に帰っちゃったんだけど」
ほむら「そう。……その方が…好都合、よ」
まどか「え?」
ほむら「……」
まどか「……あの、ほむらちゃん?」
ほむら「……ね、ねぇ、まどか。まどかはこのあとの予定は……?」
まどか「特に何もないけど……」
ほむら「それなら、私と一緒に出かけ…いえ、違う」
ほむら「……私とデートに…行かないかしら」
まどか「で、デートに……?」
ほむら「え、えぇ。この前、同性のデートは変だと言ってしまったけれど……」
ほむら「まどかと、デートがしたいの……」
まどか「そ、そうなんだ……」
ほむら「……それで」
まどか「え……?」
ほむら「私と、デート…してくれる……?」
まどか「う、うん。わたしは全然構わないよ」
ほむら「よかった……」
まどか「どこに…連れてってくれるの?」
ほむら「……それは秘密。楽しんでもらえるといいのだけど」
まどか「大丈夫だよ。ほむらちゃんと一緒なら、どこだって楽しいから」
ほむら「じゃあ…行きましょう」
まどか「案内、よろしくね」
まどか(何だろ、ほむらちゃんのことがやけに可愛く見える……)
まどか(元々すごく可愛くて素敵だけど、いつも以上というか)
まどか(……ほむらちゃんからデートに誘われたから、なのかな)
まどか(でも、デートと言っても…2人で遊びに行くだけのはずだよね)
まどか(ほむらちゃんがあんまりに素敵だから、本当のデートだと勘違いしちゃいそう……)
ほむら「まどか、どうかしたの……?」
まどか「あ、ううん。何でもないよ」
まどか(何にせよ、ほむらちゃんとのデート…楽しまなきゃもったいないよね)
――――――
ほむら「……着いたわよ、まどか」
まどか「ここって……」
ほむら「植物園…ではないわね。確かフラワーガーデンって……」
まどか「植物園とフラワーガーデンって何か違うのかなぁ」
ほむら「それは私にも……」
まどか「でも、何だか意外だな。ほむらちゃんがこんなところ、知ってるなんて」
ほむら「……まどかとのデートだから、かしら」
ほむら「私なりに色々と調べて、まどかと2人でここに来ようって思って……」
まどか「……そっか」
ほむら「何だか嬉しそうね」
まどか「だって、ほむらちゃんが行き先とか考えてデートに誘ってくれたんだもん」
まどか「嬉しくないわけ…ないじゃない」
ほむら「……そう」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「何でもないわ」
まどか「……ひょっとして、照れちゃってる?耳、赤いよ」
ほむら「わ、わかってるのならわざわざ言わなくてもいいじゃない」
まどか「うぇひひ、ごめんね。ほら、行こう?」
ほむら(今日のデートの最後…私は、まどかに……)
まどか「……へぇー、中はこんな風になってるんだ」
ほむら「まどか、ここには来たことないの?」
まどか「うん。この施設があるってことは知ってたけど、中に入ったのは今日が初めてだよ」
まどか「でも、建物の中でお花を見るってやっぱり植物園じゃないのかな」
ほむら「フラワーガーデンと植物園の違いについては私にもわからないわ……」
まどか「ほむらちゃんはここ、来たことある?」
ほむら「私も今日が初めてよ。……一応、下調べはしてあるけど」
まどか「じゃあ、帰るまでエスコート、お願いね」
ほむら「わかったわ」
まどか「そう言えば、ほむらちゃんはどうしてわたしとのデートにここを選んだの?」
ほむら「……まどかと2人で花を見たくなったの。あのときみたいに」
まどか「あのときって…わたしと一緒に丘の公園まで行ったときのことだよね」
ほむら「……えぇ。そう思ってまどかとのデートにここを選んだのよ」
ほむら「丁度今日から特別展示が始まるし、またとない機会だと思って」
まどか「特別展示って、何やってるの?」
ほむら「百合の展示会よ。それと、展示会とは別にもうひとつ見たいものがあるけど……」
ほむら「……今は秘密。見てからのお楽しみってことで」
まどか「えー。教えてくれてもいいのに」
ほむら「そう言わないで。ほら、まずは百合を見て行きましょう」
まどか「むぅ、仕方ない。あとでわかることなんだろうし、今は我慢するよ」
ほむら「ありがとう。……百合の展示はこっちね」
まどか「うわぁ……!」
ほむら「これは…想像以上に素敵ね……」
まどか「ほむらちゃん、ここにあるのってみんな百合なの?」
ほむら「そうね。色んな百合科の花が展示してあるみたいよ」
ほむら「少し季節を外れてるのもあるけど、調整して咲かせることができるらしいわ」
まどか「へぇー。……あれ、この辺葉っぱだけもさっとしてるけど、散っちゃったのかな」
ほむら「それも立派な百合の仲間よ。リュウノヒゲと言って、とても小さな花を咲かせるの」
ほむら「以外なところだとアスパラガスやネギも百合の仲間のはずよ」
まどか「そうなんだ……」
ほむら「……この辺りは普段あまり見ないような花が多いわね」
まどか「わたしも見たことないのばっかりだよ。……これとか、もう全然わかんない」
ほむら「それは確かホトトギスね」
まどか「ホトトギスって、鳥の?」
ほむら「えぇ。鳥のホトトギスと模様が似ているからそう呼ばれるらしいわ」
まどか「ほむらちゃん、詳しいね」
ほむら「何が展示してあるかはホームページに書いてあったから」
ほむら「花についての下調べもちゃんとしてあるわ」
まどか「こ、ここにあるの全部?」
ほむら「全部ではないけど…普段目にしないものはできる限り調べたわね」
まどか「でも、どうしてそこまで……?」
ほむら「まどかに楽しんでもらいたいし、それに……」
ほむら「まどかに少しくらい…いいところを見せたいから……」
まどか「な、何だか照れちゃうよ……」
ほむら「あら。ごめんなさい」
ほむら(……それに、まどかに少しでもいいところを見せておけば…なんて)
ほむら(多少なりとも、私の下心も含まれているから……)
まどか「あ、あれ。あれってほむらちゃんが好きだって言ってたやつだよね」
ほむら「あぁ、本当ね。花言葉で引かれたクロユリよ」
まどか「ご、ごめんね。偶然だったのに」
ほむら「もう気にしてないわ。それに、花言葉は調べる情報源が変わると意味も変わってくるの」
まどか「そうなの?」
ほむら「クロユリの花言葉、この間の図鑑では『呪い』と『復讐』だったけど……」
ほむら「別のもので調べてみたら『恋』という花言葉もあるみたいよ」
まどか「恋、かぁ。その方が綺麗でいいよね」
まどか「呪いとか復讐なんて、辛くなるだけだもん」
ほむら「……恋だって、辛くなるものよ」
まどか「えっ?」
ほむら「……何でもないわ。次は向こうに行ってみましょう」
まどか「う、うん」
まどか(ほむらちゃん、今…何て……?)
ほむら「この辺りは私たちが百合と聞いて思い浮かべるものが多いわね」
まどか「そうみたいだね。見たことあるのも結構あるよ」
ほむら「……そうね、まどかにはこのオトメユリなんか似合うんじゃないかしら」
ほむら「淡い桃色でぴったりだと思うけど」
まどか「そ、そうかな。ほむらちゃんには、えっと…テッポウユリなんてどうかな」
ほむら「私には勿体ないわ。似合うのはクロユリくらいなものよ」
まどか「……もしかして、まだちょっと根に持ってたりする?」
ほむら「ふふっ。どうかしらね」
まどか「……これで展示されてるのは大体見終わったかな」
ほむら「えぇ。まどか、もう見ておきたいものはない?」
まどか「うん、大丈夫だよ」
ほむら「……それじゃ、次に行きましょうか」
まどか「百合の展示会ともうひとつ何かあるんだったよね」
ほむら「……私にとってはそっちがメインになるのかしら」
まどか「ほむらちゃんにとってのメインかぁ。何だろう」
ほむら(本当に言ってしまっても、伝えてもいいの?私の、この気持ちを……)
ほむら(……いえ、ここまで来て後になんて引けない。私の全てを、まどかに……!)
まどか「ほむらちゃん……?」
ほむら「……目的の花はこっちじゃなくて、向こうになるわ」
ほむら「そこで、まどかに…私の全てを……」
まどか「ほむらちゃんの、全て……?」
ほむら「……さぁ、行きましょう」
まどか「う、うん」
今回はここまで
読んで下さってる方、ありがとうございます
次回投下は4日夜を余栄しています
乙です
乙でした
乙っす。「百合の展示会よ。」で思わず吹いてしまったww しっとりした話しだから逆にね。期待してます
今回で完結です。たぶん
次から本文
まどか(ほむらちゃん、どうしたんだろう。何だか様子が……)
まどか(必要以上というか、変に緊張してるみたいだけど……)
まどか(それにほむらちゃんの全てって…どういうことなのかな……)
まどか(魔法少女に関わること…じゃないよね。それはもう教えてもらったし)
まどか(じゃあ、ほむらちゃんは一体何を……)
ほむら「……まどか、見えてきたわ。あの花よ」
まどか「え……?あれって……」
ほむら「……この花が、もうひとつの目的。私のメイン」
まどか「ほむらちゃん、これって……」
ほむら「さすがに知ってるわよね」
まどか「……うん。彼岸花だよね、これ」
ほむら「えぇ。本来、彼岸花は秋に咲く花らしいんだけど」
ほむら「これは季節外れのこの時期に咲いた…狂い咲きの彼岸花なの」
まどか「そうなんだ……」
ほむら「……」
まどか「ね、ねぇ、ほむらちゃん。ほむらちゃんはこれがメインだって言ってたけど」
まどか「それってどういうことなのかな……?」
ほむら「……まどかの好きな花はガーベラとチューリップだったわね」
まどか「そうだけど……」
ほむら「……私は、この花が…彼岸花が好きなの」
まどか「えっ……」
ほむら「この前、図鑑でひと目見たとき…私の好みの花で、好きになったのよ」
ほむら「……変わってるかしら。彼岸花が好きっていうのは」
まどか「そんなことないと思うけど……」
ほむら「……秋の彼岸頃に一気に花をつけて、1週間程で枯れてしまう」
ほむら「その儚さとは裏腹に、燃え盛る焔のように鮮やかな真っ赤な花」
ほむら「そんなところに惹かれたのよ……」
まどか「確かに…すごく綺麗な花だけど、でも……」
ほむら「……そうね。あまり縁起のいい花ではないわね」
ほむら「彼岸の頃に咲いて、死人花、幽霊花、地獄花…なんて名前もあるくらいだもの」
まどか「……でも、わたしはすごく綺麗だと思うよ」
まどか「ほむらちゃんの名前みたいで、とっても素敵……」
ほむら「まどか……」
まどか「……って、ご、ごめんね。縁起がよくないって言ってるのに、ほむらちゃんみたいだなんて」
ほむら「気にしないで。……嬉しかったから」
まどか「でも、彼岸花がほむらちゃんの好きなお花ってのはわかったけど」
まどか「それがメインって、どういう……?」
ほむら「……私の好きな花を、まどかと一緒に見たい、というのが理由のひとつ」
まどか「理由の…ひとつ……」
ほむら「えぇ。もうひとつの理由は……」
ほむら「……まどかに、この花…彼岸花を贈りたかったの」
まどか「これを……?」
ほむら「縁起がよくない花だってことはわかってる。でも……」
ほむら「あのとき、まどかが私にしてくれたように…この花をまどかに贈りたいの」
ほむら「私の好きなものを、私の好きな人に……」
まどか「……ま、待って。今……」
ほむら「……残念だけど、この彼岸花は売り物でも何でもないから…贈ることはできない」
ほむら「でも、花言葉だけは…まどか、あなたに贈りたい……」
まどか「え、えっと…彼岸花の花言葉って……?」
ほむら「……『独立』、『再会』、『情熱』、そして」
ほむら「……『想うはあなた1人』よ」
まどか「……ほむら、ちゃん。それって、もしかして……」
ほむら「まどかの思ってる通りよ。私は…まどか、あなたのことが好き」
ほむら「……友達以上の存在として、あなたを…想ってるの……」
まどか「そう…なんだ……」
ほむら「……私もまどかも女同士だというのはわかってる。わかってるけど」
ほむら「それでも、私の本当を、好意を……」
ほむら「あなたに…伝えたかったの……」
まどか「その…いつから、なの……?」
ほむら「……少なくとも、この時間軸に来てからだと思う」
ほむら「この前、まどかの家で一緒に花の植え替えをしたときに」
ほむら「何かに心が動いたって言った…あれが最初の自覚だったの」
まどか「ガーデニングやお花に対しての興味じゃなかったの……?」
ほむら「えぇ……。私の心はガーデニングや花に対してではなくて」
ほむら「まどかに対して…動いてしまったの……」
まどか「わたしに……」
ほむら「そのあと、まどかと丘の公園に行ったときに…気持ちはさらに大きくなって……」
ほむら「胸が締め付けられたり、まどかの顔が見れなくなったり…もの凄くドキドキしたり……」
ほむら「感じたことのない、わけのわからない感覚に陥ってしまったの……」
まどか「あのとき少し様子が変だったのは、そういうことだったんだ……」
ほむら「今まで恋なんてしたことなかったから、その気持ちが何なのか…全くわからなかった……」
ほむら「でも、マミに相談して…やっとわかったの。私の気持ちは…恋なんだって」
ほむら「私は…まどかに恋をしているんだって……」
まどか「……」
ほむら「……ごめんなさい。こんな突拍子もないことを……」
ほむら「気持ち悪いことを…言ってしまって……」
ほむら「いくら私がまどかに恋をしていたとしても…私もまどかも女同士……」
ほむら「こんなもの…伝えられても、迷惑よね……」
ほむら「……受け取れるわけ…ないわよね」
まどか(ほむらちゃんが…わたしのことを……)
まどか(わたしは…わたしの気持ちは、ほむらちゃんをどう思ってるんだろう……)
まどか(ほむらちゃんと一緒だと浮かれちゃう、舞い上がっちゃうような気持ち……)
まどか(ほむらちゃんと色んなことを一緒にして、仲良くなれた、もっと仲良くなりたいって気持ち……)
まどか(時々感じた、自分の気持ちに対して何かが引っ掛かるような感覚……)
まどか(何より、今ほむらちゃんに告白されて…気持ち悪いとかどうしようなんて気持ちは全くなくて)
まどか(むしろすごく嬉しく思ってて…この告白を受ける前提で考えちゃってる……)
まどか(……そっか、そういうこと、なんだ。わたしも、ほむらちゃんを……)
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん」
ほむら「え……?」
まどか「ほむらちゃんの…わたしが大好きだって気持ち、伝えてくれてありがとう」
ほむら「……お礼を言われることじゃないわ。私の勝手な想いだから」
まどか「わたしもね、ほむらちゃんと一緒で…恋なんてしたことがなくて……」
ほむら「それなら…私のこの好意も……」
まどか「でもね、ほむらちゃんに告白されて…わたし、すっごく嬉しいって感じてるんだ」
まどか「気持ち悪いとか、ごめんなさいなんて気持ちは…いくら考えても浮かんでこないくらいに」
まどか「……わたしもね、ほむらちゃんみたいに…時々、自分の気持ちがわからなくなることがあったの」
ほむら「まどかも……?」
まどか「わからないっていうか…ほむらちゃんに対してちょっと妙な言動したこと、あったよね」
ほむら「……そうね。時々、そんなことがあったりしたわ」
まどか「ほむらちゃんといると、ちょっと浮かれたような気持ちになって…何でそうなっちゃうのかわからなくて」
まどか「どうしてだろうって考えて、結局いつもほむらちゃんと仲良くなれたからって答えで納得してた」
ほむら「その答えを出す度に…ちょっと違うような、気持ちが何かに引っ掛かるような感覚になるの」
まどか「この感覚、ずっと何なのかわからなかったんだけど…今、この瞬間になってようやく気が付いたんだ」
まどか「……わたしもほむらちゃんのこと、好きになっちゃってたんだって」
ほむら「……本当、なの?」
まどか「きっと、間違いないと思う。これがわたしの初めての恋だから…絶対、100%そうだって言い切れないけど」
まどか「ほむらちゃんのことを恋の相手って意味で好きになってたのに、その気持ちを友達へのものって勘違いしてたから」
まどか「何かに引っ掛かるような…切ない気持ちになってたんだと思う……」
ほむら「私が言うのもおかしな話だけど…勘違いということはないの……?」
まどか「そんなこと…あるわけないよ。だって、友達のほむらちゃんにって勘違いしてたわたしの気持ちは」
まどか「恋の好きだって自覚した今、何かに引っ掛かることなく…心に収まってるから」
ほむら「そう、なの……」
まどか「……それにね、もしこの気持ちが勘違いだったり、同性だから…なんて思いがほんの少しでもあったのなら」
まどか「告白されてこんなに嬉しいって思わないし、最初の時点でごめんなさいってしてるはずだよ」
ほむら「……」
まどか「さっきも言ったけど…わたし、恋をするのは初めてだからこれが絶対、100%そうだと言い切れない……」
まどか「でも、何が正しいとか間違ってるとかはどうでもよくて、今のわたしの気持ちは」
まどか「ほむらちゃんのことが好きで、大好きで、どうしようもないくらいほむらちゃんのことでいっぱいで」
まどか「もっとほむらちゃんを好きになって、もっとほむらちゃんに好きになってもらいたい」
まどか「そう、思ってるんだ」
ほむら「じゃあ、まどかは……」
まどか「……ほむらちゃん。わたしは…ほむらちゃんのことが、好き」
まどか「色々と情けないことも言ったりしたけど、わたしと……」
まどか「わたしと、恋人としてお付き合いしてください……!」
ほむら「……断るわけ、ないじゃない。だって、まどかと……」
ほむら「恋人に…なれるんだから……!」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「至らないところの多い私だけど、これから…よろしく、お願いします……」
まどか「……」
ほむら「……ふふっ」
まどか「あははっ、何だかおかしいね。わたしたちらしくなくて」
ほむら「えぇ、全くね。こんなに畏まる必要なんてないのに」
まどか「きっとわたしたち、告白を難しく考えすぎてたのかもしれないね」
ほむら「……私たち、これで…恋人として付き合うことになったのよね」
まどか「うん……。告白を受けて付き合うって、こんな感じなんだね」
まどか「大変な思いをして気持ちを伝えた割には何だかあまり実感わかないよ」
まどか「わたしたちが恋愛初心者で恋人初心者だからそう感じるのかな」
ほむら「……そう言われると、私もまどかもこれが最初の恋で最初の恋人になるのね」
まどか「うん。ほむらちゃんが最初の相手で…わたし、嬉しい」
ほむら「勿論、私もよ。ただ残念なのは、恋人としてまどかを引っ張ってあげられないことかしら」
まどか「そんなこと、気にしなくてもいいの。わたしたち、恋人になったばかりなんだし」
ほむら「ごめんなさい。でも、まどかの前だとどうしてもかっこつけたくて……」
まどか「かっこつけたほむらちゃんも嫌いじゃないけど、やっぱりいつもの素のほむらちゃんが1番だよ」
まどか「それにさ、2人とも初めてなら一緒に進んでいけるってことでしょ?」
まどか「どっちかが前や後ろになるよりも、その方がずっと素敵じゃないかな」
ほむら「……そうね。肩肘張ったって仕方ないわね」
まどか「そうだよ。初めてなら初めてなりに、色々やってみようよ」
まどか「わたしとほむらちゃんの2人で、さ」
ほむら「……えぇ」
まどか「……今思えば、この彼岸花が咲いてくれなかったら」
まどか「ほむらちゃんはわたしをデートに誘うことも、告白することもなかったんだよね」
ほむら「もしかしたら秋のシーズンになったら再挑戦したかもしれないけど」
ほむら「少なくとも今日明日に告白したりはしなかったでしょうね」
まどか「……ありがとう。ほむらちゃんのために花を咲かせてくれて」
まどか「わたしたちのために、奇跡を咲かせてくれて……」
ほむら「それを言うなら、まどかが私を植え替えに誘ってくれなければ」
ほむら「私はまどかを好きだという気持ちに気が付かなかったのかもしれないのよね」
まどか「じゃあ…わたしたちの気持ちを繋いでくれたのはお花なのかな」
ほむら「そうね。私たちの仲を取り持ってくれたのは…きっと色んな花じゃないかしら」
ほむら「周りで咲いてる花たちも、私とまどかのことを祝福してくれてる気がするわ」
まどか「もし本当にそうだったら…すごく素敵だね」
ほむら「……自分で言っておいて恥ずかしくなってしまったわ」
まどか「……ねぇ、彼岸花って元々秋に咲く花なんだよね」
ほむら「えぇ、そうだけど」
まどか「じゃあさ、秋になったら…一緒に綺麗に咲いた彼岸花、見に行こうよ」
まどか「ほむらちゃんの名前みたいに真っ赤に燃え上がる彼岸花を……」
ほむら「随分と先の予定になるわね。でも…今からとても楽しみよ」
まどか「えへへ、わたしもだよ」
ほむら「……さて、そろそろ帰りましょうか」
まどか「え?……あ、もうこんな時間になってたんだね」
ほむら「……まどかと一緒にいたからか、時間なんてあっという間に過ぎてしまったわ」
ほむら「好きな人と過ごす時間は早く感じる、なんて…よく言ったものね」
まどか「……う、は、恥ずかしいこと言っちゃダメだよぅ」
ほむら「あら、ごめんなさい。でも仕方ないじゃない、本当にそう思ってるんだから」
まどか「も、もう、ほむらちゃんってば……」
まどか「……あ、あのね、そういうのは…わたしと2人きりのときにだけ言ってほしいな」
まどか「確かに恥ずかしいけど、でも…嬉しいって思ってるんだからね……」
ほむら「……わかったわ。まどかと2人きりのときだけ、ね」
まどか「それじゃ、今日はこれで帰ろっか。あんまり遅くなるのもよくないし」
ほむら「まどかのご両親に心配をかけるわけにもいかないものね」
ほむら「……ねぇ、まどか。ひとつお願いがあるのだけど、いいかしら」
まどか「お願い?」
ほむら「えぇ。その…帰りは私と手を繋いでほしいのだけど……」
まどか「それは…もちろんいいけど、どうしたの?」
ほむら「私たちって、ここに来るまでは…友達だったでしょう?」
ほむら「友達としてここに来て、告白して、恋人になって」
ほむら「それなのに、普通に帰ったら…何も変わり映えしない気がするの」
ほむら「だから、手を繋いで帰れば恋人らしいかなって…思ったんだけど……」
まどか「……えへへ、ほむらちゃんって思ったより可愛いこと考えるんだね」
まどか「いいよ。帰り道は手を繋いでいこう」
ほむら「あ、ありがとう、まどか」
まどか「……じゃあ、帰ろう。ほむらちゃん」
――――――
まどか「ほむらちゃん、わざわざ家まで送ってくれてありがとう」
ほむら「気にしないで。今日、まどかを誘ったのは私の方だし」
ほむら「それに…少しでもまどかと一緒にいたかったから……」
まどか「ほ、ほむらちゃん……」
ほむら「……だけど、もう家に着いてしまったから…今日はここでお別れなのよね」
まどか「な、何だか離しづらいね。繋いだ手」
ほむら「……まどか、今日はありがとう」
まどか「ありがとうって?」
ほむら「そうね…色々と。私と一緒に寄り道してくれてありがとう」
ほむら「私の告白、私の想い…受け入れてくれて、ありがとう」
まどか「お礼なんて言わなくていいの。わたしだって、嬉しかったんだから」
まどか「恋とか付き合うって…まだよくわかってなかったりするけど……」
まどか「これから2人で一緒に見つけていこうね。わたしたちの、恋を」
まどか「……な、なんて、恥ずかしいなぁ。変なこと言っちゃって」
ほむら「……えぇ。まどかと一緒なら、きっと素敵なものが見つかると思うわ」
まどか「も、もう……。それじゃ、ほむらちゃん。今日はこれで……」
ほむら「まどか」
まどか「なぁに?」
ほむら「私も…まだ、恋愛の好きとか、付き合ったら何をどうするとか……」
ほむら「そういうことは…何も知らないわ」
ほむら「きっと深く考えずにこの気持ちを言葉や行動で表せばいいのだろうけど」
ほむら「今の私には…まどかの目を見て愛してるとは言えなくて……」
まどか「それは…ほむらちゃんだけじゃなくて、わたしだって」
ほむら「……でもね、今は無理だとしてもきっと大丈夫」
ほむら「毎日まどかと一緒に過ごして、お互いを知って、好きを深めていけば」
ほむら「秋のデートの頃には愛してるの言葉と、それに続くこともできるようになってるはずだから」
まどか「……えへへ、そうだよね。わたしとほむらちゃんなんだももん」
まどか「何も心配する必要なんて、ないよね」
ほむら「えぇ。……じゃ、私はこれで。また、明日」
まどか「うん。またね、ほむらちゃん」
まどか「……わたし、わたしたち、本当に……」
まどか「ゆ、夢なんかじゃないよね?現実なんだよね?」
まどか「……あ、明日からどうしよう。さやかちゃん、絶対からかってくるだろうし」
まどか「嬉しくて幸せなことのはずなのに、困っちゃうよぉ」
詢子「……何やってんだ?まどか」
まどか「うぇひっ!?」
詢子「おおう、驚きすぎだ。ただいま、まどか」
まどか「お、おかえり。……って、何でママがこんなに早く帰ってきてるの!?」
詢子「今日はたまたま早く上がれたんだよ。それでまっすぐ家に帰ってみたら」
詢子「玄関先でふやけた顔してくねくねしてる娘を見つけてしまったわけで」
まどか「あ…あう……」
詢子「正直、不審者みたいだったけど…何かいいことでもあったんだろ?」
まどか「……うん。すごく、すっごく素敵なことがあったんだ」
詢子「そっか。どんなことがあったのかわからんけど、よかったじゃないか」
まどか「ママ……」
詢子「んじゃ、あとでその話をゆっくり聞かせてもらおうかねぇ」
まどか「えっ…そ、それはちょっと遠慮したいかなって……」
詢子「まぁまぁ、遠慮するなって。まどかがあんなになるくらいの素敵なこと、ねぇ」
詢子「どんな話が飛び出してくるか…これは今夜が楽しみだよ」
まどか「うひいぃぃ……」
――――――
まどか『……というわけで、ママにバレちゃったよ。話しちゃったとも言うけど』
まどか『ごめんね、わたしが浮かれすぎてたばっかりに……』
ほむら「あまり気にすることはないと思うわ。私は誰にも話しちゃ駄目なんて言ってないもの」
ほむら「それに、黙っていたとしてもあなたのお母様にはすぐ気付かれてしまうんじゃないかしら」
まどか『うちのママ、そういうことにはやたら鋭いからねぇ……』
ほむら「まぁ、話を聞く限りまどかの行動を見たらよほどの鈍感でなければ何かあったと感づくでしょうね」
まどか『あー。ほむらちゃんまでそんなこと言うー』
ほむら「ふふっ。ごめんなさい」
まどか『……明日からはわたしたち、恋人としての登校になるんだよね』
ほむら「えぇ。何だか楽しみね」
まどか『わたしも。不安なこととか、心配がないわけじゃないけど』
まどか『それ以上に、明日からの毎日がすっごく楽しみなんだ』
ほむら「……こんなにも明日が待ち遠しく感じる日が来るなんて、思いもしなかったわ」
ほむら「今までの私は…そんなこと、とても思えなかったもの……」
まどか『大丈夫だよ。これからはずっと、明日が待ち遠しい毎日になるはずだから』
ほむら「……そう、ね。ありがとう、まどか」
まどか『……ふぁ』
ほむら「眠そうね。そろそろ休んだ方がいいんじゃない?」
まどか『ん…そうなんだけど、もっとほむらちゃんと話していたくて……』
ほむら「明日になれば会って話せるんだから。今日はもう寝ましょう」
まどか『……明日の夜も電話していい?』
ほむら「勿論よ。いつかけてきても構わないから」
まどか『そうなると、今月の電話代がちょっと怖いなぁ』
ほむら「電話のし過ぎには注意しないといけないわね」
まどか『じゃあ、今日はこれでおしまいにしよっか』
ほむら「それじゃあ、おやすみなさい。また明日」
まどか『……』
ほむら「……もう。おしまいって言ったのにどうして切らないの」
まどか『えへ、何でだろうね。何となく切れなくて』
ほむら「そう言ってもらえるのは嬉しいけど…ほら、切るわよ」
まどか『うん、おやすみ。また明日、ね』
ほむら「ふぅ……。電話を切るのも一苦労ね。でも……」
ほむら「……ふふ、まどか」
ほむら「何だか恋人みたい……。好きな人と電話でこんなことを話すなんて」
ほむら「……ううん、恋人なのよね。私と、まどかは……」
ほむら「あぁもう、口に出すと駄目だわ。恥ずかしい……」
ほむら「でも、本当に…なれたのよね。恋人に」
ほむら「まどか……」
ほむら(明日から、私とまどかの新しい毎日が始まるのね……)
ほむら(まるで世界を書き換えてしまったかのような、素敵な毎日が……)
ほむら(これから先、躓いたりまどかとぶつかってしまうこともあるはず)
ほむら(だけど、あまり心配や不安に思うことはない。だって……)
ほむら(まどかのことがこんなにも好きなんだもの……)
ほむら「……さて。明日に備えてそろそろ休みましょう」
ほむら(明日からの毎日を楽しく過ごして…秋になったら約束通り、デートをしましょう)
ほむら(おやすみなさい。大好きよ、まどか……)
――――――
まどか「……ほむらちゃん、目的地まであとどのくらい?」
ほむら「この階段上ったら到着よ」
まどか「わかった。でも、家から結構遠いんだね」
ほむら「私たちの行動範囲内で見られるのはここだけだったから、仕方ないわ」
ほむら「ただ、それに見合うだけの素敵な場所よ」
まどか「……そんなこと言うと気になっちゃうな」
ほむら「大丈夫よ。……ほら、着いたわ」
まどか「あ…っ……」
ほむら「……どうかしら。一面の彼岸花の花畑は」
まどか「すごく…すごく綺麗……。どこまでも真っ赤な花が咲いていて……」
まどか「まるで燃え上がる焔の海みたい……」
ほむら「そう……。気に入ってもらえたみたいでよかったわ」
まどか「もっといい言葉があるはずなんだけど…とにかく綺麗だってことしか出てこないよ……」
ほむら「……えぇ。本当に綺麗ね」
まどか「わたしね、この日をずっと楽しみにしてたんだよ」
ほむら「そうなの?」
まどか「うん。だって…ほむらちゃんと一緒に、ほむらちゃんの好きな花を見られるんだもん」
まどか「それに…今までのデートにダメ出しするつもりは全然ないんだけど」
まどか「今日のデートはとびきり本格的だから……」
ほむら「確かに今日のデートは特別なものかもしれないわね」
まどか「……あの約束、覚えてる?」
ほむら「勿論よ。私たちが付き合った、あの日の約束」
まどか「あの日からもう数ヶ月経ってるなんて、嘘みたいだよ」
ほむら「1日1日があっという間に過ぎて、気が付けばもう秋だものね」
まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。今のわたしたちって…あのときできなかったこと」
まどか「できるように…なってるかな……?」
ほむら「それは…聞くまでもないんじゃないかしら」
まどか「……えへへ、そうだね」
ほむら「……まどか。私の目を見て」
まどか「うん……」
ほむら「あの日、まどかと付き合って、毎日を過ごして…今、ようやくこの言葉を伝えられるわ」
ほむら「私…私は、まどか、あなたのことを…愛してる」
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん」
まどか「わたしもほむらちゃんのこと、大好きで…愛してるよ」
ほむら「……ふふっ」
まどか「……あははっ」
ほむら「これで私たち、やっと本当の意味で恋人として付き合えるのかしら」
まどか「それはわからないけど、ここが一区切りって気はするかな」
まどか「……わたしの気持ちが100%ほむらちゃんのこと、好きって言い切れるようになったから」
ほむら「私も…まどかへの気持ちはもう好きのひとつしかないわ」
まどか「何だか改めて言うとちょっと恥ずかしいね」
ほむら「これであの日言えなかった言葉は言えたけど…もうひとつ、忘れてないわよね」
まどか「……もちろん、だよ。忘れるわけ…ないじゃない」
ほむら「愛してるの言葉と、それに続くこと……。私はまどかと…してみたいと思ってるけど」
ほむら「まどかは…どう思ってる……?」
まどか「……わたしも、ほむらちゃんと一緒。ほむらちゃんとしたいって…思ってるよ」
まどか「愛してるの言葉に続く、何よりも素敵なことを……」
ほむら「まどか……」
まどか「……でもまさか、彼岸花に囲まれてすることになるなんてね」
ほむら「そうね。まどかは嫌だった……?」
まどか「ううん、逆。こんなに綺麗に咲いた彼岸花に囲まれてできるんだもん」
まどか「確かにちょっと縁起のよくないお花だとは思うけど……」
まどか「でも、わたしたちにとってはこれ以上ない幸福の花だって思うんだ」
ほむら「……ありがとう。凄く…嬉しいわ」
まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。わたし、最初の1回目は…ほむらちゃんからしてもらいたいな」
ほむら「心配しなくても、最初からそのつもりよ」
まどか「ありがとう……。じゃあ、ほむらちゃん……」
ほむら「……まどか。私たち、これからもずっと…好きでいましょう」
まどか「うん……。わたしたちのはじめて…やさしくしてね」
ほむら「えぇ。私たちの…はじめて、だもの」
ほむら「まどか…目、閉じて……」
Fin
これで完結です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
乙でした!
乙です
乙
恋の花が実を結んだか……
乙です!
読んで下さった方、感想頂けた方、本当にありがとうございました
今回のこれは前回の予告にあった、ほむら「まどかと私」(仮)の改題です
冒頭に書いとくべきだったかも
・次回予告
まどか「デレデレさせたい」
まどか「あの子がほしい」(仮)
タイトル未定 秋のイベント詰め込んだもの(予定)
以前の予告に書いておいたものも書きたいけど詰まってるでござる…
またどこかで見かけたらよろしくお願いします
予告だけ書き直し
・次回予告
まどか「デレデレさせたい」 短編
まどか「あの子がほしい」(仮) 短編
タイトル未定 秋のイベント詰め込んだもの(予定) たぶん短編
最近の短編は短編じゃなくなってる気がする
乙でした!
長くても全然構わん
もうちょいセリフ削って心情を表した描写入れてほしい
セリフばっかだと見辛い
おつおつ
秋イベントかー、楽しみだ
おつ
あの子がほしい読みたい
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