魔王「ほう…貴様、本当にそう思っているのか?」
勇者「マジもマジ、大真面目に思ってるって」
魔王「命惜しさに我に迎合しているだけだろう。正直に言ったらどうだ」
勇者「いや本当に。じゃなきゃこんな旅途中で放り出してるって」
魔王「そうまで言うのなら語って見せよ。その思いを」
勇者「いいぜ!ちょい長くなるけど」
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勇者「モンスターってさ、同種だとどいつもこいつも同じに見えるけど、死ぬ前はめっちゃ個性出るのな」
勇者「死にたくないって逃げ出すのとか、魔王様お許し下さいとか、特攻してきたりとか」
勇者「感動したね!冗談抜きで世界が変わって見えたよ!」
勇者「それまで有象無象にしか思ってなかった奴らがさ、急に個々に感情のある生き物に見えてきたもん」
勇者「それからだな。こいつらが何考えてどう生きてきたか気にかけるようになったのは」
勇者「でさ、それ踏まえてみるとさ、死ぬ時の姿が一種の芸術に見えてくんだよ!」
勇者「群れを守るとか魔王様とか言ってたのが、急に放っぽり出して逃げようとする豹変劇とか」
勇者「仲間の仇とか言って襲ってきて、首と胴体おさらばしても咬み付こうとしてきた執念とか」
勇者「本当見てて楽しかったよ。あの場面一つ一つが作品になるんじゃないか?絵とか小説とか劇とかさ」
勇者「こういう極端なケースじゃなくても、退くか撃って出るか迷う中途半端な奴も味があるよな」
勇者「まあ一般受けはしなさそうだけど」
勇者「弱い内は緊張感のある戦いばっかで、こういう場面一杯あって楽しかったな」
勇者「何かこう、ああ、命のやり取りしてんだな、みたいな!自己陶酔かも知れないけどさ」
勇者「でもさ、お宅の四天王とか幹部クラス倒せるくらいになってくるとさ、差が開くんだよね」
勇者「どうにも消化試合っつうか、作業化してくるんだわ」
勇者「瞬殺は当たり前としてもさ、気付かれすらしないのは萎えたな」
勇者「殺されたのに気付いてないだけならまだいいんだけど、襲われたことにすら気付かないのはね、ちょっとない」
勇者「あ、四天王の皆さんはそんな中いいアクセントになってくれたのでご心配なく!」
勇者「あの人たちは本当に良かったよ。戦闘もメンタルも強くて」
勇者「そうだ。土の人に言っちゃったんだ。『お宅の部下が鈍すぎてつまらない』って」
勇者「怒ってたなあ…取り消せとか命に貴賎はないとか…」
勇者「下等な人間とか言いながら殲滅してる癖にとんでもないダブスタだなって聞き流してたけど」
勇者「でも感謝しないとな。あの言葉のお陰でそういう雑魚も見直すようになったし」
勇者「殺されても気付かない奴もさ、よく見るとそれはそれで味があったんだよな」
勇者「やっぱ接戦の末に死ぬ奴ってさ、凄い形相してるのが多いんだ」
勇者「復讐鬼は言うまでもなく、逃げる奴とか半端な奴も苦痛に顔歪めて泣いてたりさ」
勇者「逆に気付かない奴は綺麗な顔してんだよ」
勇者「これ本当に惨殺死体かよってくらいに。まあやったの俺だけど」
勇者「そういや非戦闘員ってどんな感じに死ぬのかな」
勇者「機会があったら試してみるか。楽しみだな」
勇者「そう言えば、勇者を部下にしようとした魔王がいたらしいな。世界の半分を餌にして」
勇者「お宅、その意志ある?あったらおれが貰った方でやってみるよ。で、どう?」
ほほう
魔王「分かった…」
勇者「ちょっ!会話噛み合ってないんだけど!分かったって何が?」
魔王「貴様と相容れないことが、分かったのだ」
勇者「決裂以前に交渉すらなし!?まあそれが普通か」
魔王「仮に勇者を配下にするとしても、貴様の如き狂人など願い下げだ」
勇者「狂人ね、自覚はあるよ」
魔王「この上狂人と交わす言葉などない」
勇者「初対面なのにヘイトマックスだな。しょうがないけど」
魔王「さあ 我が腕の中で息絶えるがよい!」
勇者「嫌だね!」
勇者は見事、魔王を討ち、世界に光を取り戻した
彼は英雄として凱旋し、持て囃された
そして…
「魔王討伐、御苦労であった!」
勇者「はあ、どうも…」
「今後も我が国に尽力願おう。無論只でとは言わん。報酬として欲しい物があれば何なりと申せ」
勇者「そうですね。では、一つ…」
「何だ?」
勇者「この場の皆様の、お命を」
能事畢れり
蚊、蛾、ハサミムシ、蜘蛛、羽虫
家に不法侵入してくる彼らはただただ鬱陶しい
彼らの死は美しくない
思いつきでスレを立てるなとあれほど
乙
なーつのせいかーしらー♪
面白かった乙
いいねぇ
疾走感がいいね
乙
いい感じに歪んでていい
「狂人ね、自覚はあるよ」
って言った瞬間のこいつの顔を思いっきり殴り抜いてやりたい
乙
面白い
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