魔王「もうだめぽ」 (42)


魔王「無理じゃん。もうこれ絶対無理じゃん」

側近「行けます。まだ行けますって」

魔王「無理だろだってこれもー!何よあの勇者!」

魔王「勇者の後ろにいる敵兵ほとんど元俺らの兵士じゃん!魔物じゃん!」

側近「まさかモンスターテイマーとは思いませんでしたね」

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魔王「誰だよもー勇者とか所詮人間だから低レベルのモンスターでも数で押せばその内死ぬとか言った奴!!」

魔王「全然倒れてないじゃん!!どんどん倒してレベル上がっていってんじゃん!!」

魔王「その上なによ?

倒したモンスターが?可哀想だから?

拾った薬草与えたら?懐かれて?

仲間になりました?」

魔王「意味分かんねぇよ!!何ポだよ!!」

側近「最初期に裏切ったスライムなんかもうスライムっていうか水で出来た竜みたいな見た目してますもんね」アレハヤベーワ


魔王「つーかマジで誰だよあんな作戦提案した奴」

側近「えーっと……あぁ、ワニ魔人さんですね」

魔王「ちょっと制裁食らわしてくるわ。どこいんのソイツ」

側近「今はもう勇者の右腕ですけど」

魔王「はぁぁぁぁぁぁ!!?」

期待


魔王「え、なんで?」

側近「ワニ魔人さんですねー、元々部隊隊長さんだったんですが、何でも上司に捨て駒にされた所を勇者に助けてもらったそうで」

側近「『後ろから撃たれる上司より背中預けれる人間の方が遥かにマシだ』って裏切ったそうです」

魔王「」


魔王「誰だそんなアホな真似した奴はぁぁぁぁ!!!」

側近「えーっとですね……四天王の一人、吸血鬼さんですね」

魔王「アイツかー。根暗だなーって思ってはいたけどまさか自分の部下捨て駒にするまで性根が腐ってたとは……。
とりあえずここに呼べ、今すぐに。アイツ今どこいんの」

側近「あ、今はもう勇者のトコのマスコットですね」

魔王「ごめんチョット意味わかんない」



魔王「え、マスコット?なんで?アイツ性格は暗かったけど結構身長高くてルックスも良かったよね?

側近「なんでも勇者にやられそうになって、今わの際になんとか最後の力を振り絞って小動物化した所、勇者に捕獲されて
なぁなぁで捕まってたら情が移ってしまったようで」

魔王「捕まってるのに情が移ったの!?」

側近「そこはほら、モンスターテイマーですから」

魔王「そうだった!!」


魔王「まじかよー……え、それじゃあさ、逆にウチの軍って今どんくらいなん?兵力的に」

側近「二人です」

魔王「は?」

側近「魔王様と私の二人だけです」

魔王「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?


魔王「え、マジで?」

側近「マジです」

魔王「勇者に対抗できるのが俺ら二人とか、そういう話ではなく?」

側近「現在我々の領内において、です」

魔王「そのレベルで!?」


魔王「無理じゃん……やっぱ無理じゃん……」

側近「いけますって。魔王様ならいけるって私信じてますから」

魔王「いや無理だってお前……アレみてみ?開場直前のコミケみたいになってんぞ」

側近「大丈夫ですよ、魔王様なら行けますって」

魔王「いやー無理だろこれは」


魔王「もうだめぽ」

側近「諦めたらそこで試合終了ですよ?」

魔王「今そういうのいいから」

側近「すみません」


魔王「もう無理でしょこれは」

側近「白旗でも振りましょうか」

魔王「なんか材料あったかな……あ、シーツ使うか。棒は……柱折ったらいいかな」

側近「本気にしないでください冗談ですから」


魔王「割と本気でサー、どうすんのよ実際問題」

側近「爆笑問題みたいですね」

魔王「黙ろう、魔王様そろそろプッツンしそうだから、そういうのは少し黙ろう」

側近「すみません」


側近「割と真面目な案としては、まぁ正面突破ですね」

魔王「俺ら二人だけでいけるか?」

側近「ターン制ですから最初は良くても数の暴力でぶっ殺されますね」

魔王「ダメじゃん」


側近「あとはこの城に可能な限りの罠を仕掛けるとか」

魔王「例えば?」

側近「宝箱にミミック仕込むとか」

魔王「悪くはないが、ミミックはどこにいるんだ?」

側近「Amazonのお急ぎ便ならギリ間に合うんじゃないですか?」

魔王「魔王今気づいた、お前も結構切羽詰ってんだな」

側近「正直キてます」

魔王「マジでごめん」


側近「で、もう一つ案があるのですが」

魔王「ほうほう」

側近「逃げる」

魔王「さすがの魔王もこれには苦笑い」


側近「いえ、割と真面目に逃げません?」

魔王「え、なにその熱い手のひら返し。さっきまでなんかイケイケドンドンだったじゃん」

側近「死なば諸共かなーって」

魔王「やだこの子以外に脳筋」


側近「で、どうします?私側近ではありますけど軍師ではないので、こんなモノしか思いつきませんよ?」

魔王「死ぬのはイヤだしなぁ……かといって敵前逃亡する魔王ってのもどーよ?」

側近「どうせ魔王さまが逃げたって困る人はいないですし」

魔王「っかしーなー、何故だか涙が出くるわ、っかしーな」


側近「兵もなし、民もなし、罠もなし。玉砕するか隠遁するか、二つに一つじゃないですか?」

魔王「…………」

保守
いったいどうなる…!?

というかもうこいつ魔王じゃなくね?

側近がいるからギリセーフじゃね


魔王「俺さぁ……」

側近「はい?」

魔王「俺さ、元々魔王になりたくてなったんじゃないんだよね」


魔王「ほら、俺らが生まれた頃って、まだ魔界も人間界に進出してなくて、魔界戦国時代みたいな感じだったじゃん?」

側近「そうですね。あの頃はまだ魔界が人間界に干渉することも、その逆もなかったと聞きます」

魔王「そんな時にさ、俺の親父は、まぁ結構腕っぷしも強くて、面倒見もよくて、周りからヨイショされて、ガキだった俺とかーちゃん残して戦場に行ったわけ」


魔王「つっても、精々素人相手にそこそこ有利に戦える、ぐらいの腕だったらしいのよ」

魔王「そんな、せいぜい喧嘩ぐらいしかした事ない奴がイキナリ戦場に行って、場数踏んでる兵士相手に戦えると、戦って勝てると思う?」

側近「……難しいでしょうね」

魔王「難しい、じゃなくて無理。運否天賦とか関係なく、無理」


側近「ですが、魔王様のお父上は……」

魔王「あぁ、先代魔王その人だ」

魔王「つまりどういう訳か、親父はあんな修羅場をくぐり抜けたって訳だ」

魔王「そして、どうやってくぐり抜けたか、って事になるんだが……」


魔王「聞いちまえば、簡単な話だった」

魔王「腕っ節では敵わない。求心力も、兵の数も練度も金も武器も領土も何もかも足りない、敵わない状況で親父がやったのは」

魔王「ただ、ひたすら待ったんだ」


魔王「兵士の数が足りない。なら集まるまで待つ」

魔王「金がない。なら足りるまで待つ」

魔王「敵が強い。なら弱るまで待つ」

魔王「連度が低い。なら高まるまで待つ」

魔王「そうして親父は自分の持ち札が最高に高まった状態で、相手の持ち札が最弱に弱まったところで」

側近「行動した、と」

魔王「イグザクトリー」


側近「しかし……この状況でその戦法は」

魔王「成功率はまず無いし、出来るかどうかも分からんし、そもそもやる意味がない、か?」

側近「……はい」

魔王「然り。全くもって無意味だ」

もう変なプライドなんて捨てて隠遁でいいんじゃないかなww


魔王「無意味だが……これは必要な事だ」

側近「……?意味がわかりかねます」

魔王「ま、ようするに、だ」


魔王「色々回りくどく言ったけど、あー、まぁ、なんだ」

魔王「俺の敵討ちは頼んだぜ、ってこと」

側近「は?魔王様、それは」

魔王「お前生きる、俺死ぬ、だから仇討ちよろぴこー」


―――魔王はキメラの翼を側近に使った!


側近「魔王様、何を……!?」

魔王「タイミング見誤んなよ。じゃあの」


―――側近は遥か彼方に吹き飛ばされた!

<◯><◯>


魔王「……うし」

魔王「後顧の憂いも無くなった、これで本当に失うものは何もなし」

魔王「後は座して待つのみ、か……」

魔王「……やっぱ親のひいたレールの上走るのはダメだな、二世なんて碌なことならん」

魔王「……大人しくかーちゃんの畑継いでときゃ良かったぜ」





勇者「お前が魔王か!」

魔王「よく来たな勇者。随分俺の仲間と仲良くなったそうじゃないか」

勇者「全員お前やお前たちのやり方にはついて行けなくなったんだとさ!さぁ、さっさと構えろ!この戦争を、俺が終わらせる!」

魔王「さよか。けど気をつけろよ勇者」

魔王「所詮、お前はただの人間だ。あまり荷を背負いすぎると、いつか必ず後悔するぞ」

勇者「戯言に聞く耳はもたん!いくぞ!!」

魔王「忠告はしたぜ、勇者。……かかってこい、このイナゴ野郎が」

魔王いいやつじゃん



―――勇者軍と魔王は、それから三日間に渡り戦い続けました。
魔王はその恐るべき力で、かつての同胞を意に返さず殺し続けました。
勇者はその度に慟哭し、天より与えられし剣を振るい、地より与えられし鎧を鮮血に染め、
海より与えられし盾で仲間をこれ以上失うものかと掲げました。
そして遂に、三日目の日が沈む頃、勇者とその仲間たちによって、魔王は大地に伏しました。
ようやく、『人々』に平和が訪れたのです。


その時魔王は勇者に対し、こう言い残しました。


魔王「精々俺の言葉を覚えておけ、勇者。
俺を倒してもいつか第二の魔王がまた現れる。ゆめゆめその事を忘れるな……!!」


―――それから四十年余。
未だ、『人々』は平和でした。




けれど、確かに。その芽は時間をかけて少しづつ少しづつ樹木へと成長しているのでした。



 とりあえず終わり。
もしかしたら続きを書くかかも



側近がどうなったか気になるね

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