側近「魔王様のお悩み相談室」 (40)

魔王「側近ー」

側近「……」

魔王「側近側近側近側近!!」

側近「煩いですね、そんなに私が好きなのですか?まったくこんな甘えん坊に育って……」

魔王「違うよ!暇なんだよ!!魔王とか仕事無さ過ぎて暇なんだよ!!」




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側近「そりゃ貴女、抱えていた仕事全部片付けてしまったのですから暇でしょうね」

魔王「だからさー、家に帰っていい?」

側近「ダメです、定時までいてください」

魔王「定時ってなんだよ!!魔王って時間で給料出る訳じゃないだろ!?」

側近「ハァ、やれやれってやつですね。貴女そんなに働きたいんですか、恋人は仕事ですか、寂しい人ですね」

魔王「帰りたいんだよ?私の話聞いてた?」

側近「ではこうしましょう、私が適当にお仕事見つけてきますのでそれをこなしてください」

魔王「んー、まぁここで椅子に座ってボーっとしてるよりはマシだけどさ」

側近「それでは少々お待ちを……」ウフフフフフフフフフ

魔王「すっげぇなー、無表情でそんな奇妙な笑い声上げて……」


――――――
―――


魔王「……で、これ何?」

側近「よくぞ聞いてくれました。これぞ。魔王様のお悩み相談室ー☆」パフパフ

魔王「……」

側近「ここに悩みを抱えた迷える子羊達が貴女に助けを求めやってきます。そんな彼らを魔王様がバッサバッサと斬り捨てるコーナーです」

魔王「コーナーっつったなお前今!?」


側近「では早速第一の相談者でーす」

魔王「あ、もうコレ強制なんだ」


「魔王様……」


魔王「む、老人が来たな」

側近「魔王城から少し離れた町の長ですね。立派な我が国の国民です」


「最近、税収が大きいと町民たちから不満が上がってましてな……なんとかなりませぬか」

魔王「あ、悩み自体は割かし普通なんだな。っつーかここ数年で税率上げたっけ?」

側近「いえ、記憶に在りませんし、町で勝手に上げているという訳でもないですね」

魔王「なぬ?それじゃあ連中がただ我が儘言ってるだけか?だとしたら聞ける相談じゃないぞ」

側近「最近こういった我が儘が増えていますね。まったく、ウチの国はよそと比べたら遥かに国民に対して手厚くサポートしているというのに」


魔王「こういうのって町や都市が力持っちゃうのがそもそもの原因なんだけどなぁ。私の力不足ってのも一つの要因なんだろうけど」

側近「貴女はよくやっていますよ。根源は横暴に振る舞っている人々の方です」

魔王「そうだな、一度話し合ってみるとするか……」

側近「いっその事怪しい市長や町長を10人くらい見せしめとして吊し上げましょうか」

魔王「何で!?」


側近「調子に乗っている愚かな愚民どもに魔王様の偉大さを今一度見せつけるべきです。首から下を地面に埋めて一人ずつ木のノコギリで引いていきましょう」

魔王「公開処刑!?」

側近「そして明日の新聞の一面はこうです。"魔王、暴君と化す!!涙ながらに側近は語る"」

魔王「お前が内情をリークする事前提なのな!?」

側近「ああもう何ですかもう、嫌なんですか、だったらそっちで適当にやってくださいよ。子供たちを間引いて未来の無い町にでもしておいてくださいよ」

魔王「お前なんで極端から極端に走りたがるの?ねぇ?」


「フォォ……」プルプル


魔王「ほらもうただでさえ短いお爺ちゃんの寿命が今まさに尽きようとしてるだろ!」

側近「魔王様も中々言いますね」

魔王「ともかくそんなことはしない!お前も町に帰ってみんなを黙らせておけ!以上!!」

側近「ハァ、まったく先が思いやられますね。次行きましょうか」

魔王「誰が振った話題でこうなってると思ってんだ……」


「ぷるぷる、僕は悪いスライムじゃないよ」

側近「おや、畜生が来ましたね。あらゆる生物に刈られる自然界の最下層にいる存在がゾウリムシと大宇宙に匹敵するほどの差がある魔王様に何か用ですか?」

「酷い!?」

魔王「お前どうしてそう人を貶す言葉がつらつらと出てくるんだよ……で、要件は?聞くだけは聞くぞ」

「魔王様!僕達魔物に対する扱いの改善をしてほしいのです!」

側近「学校の勉強机の裏にねたくり付けられたハナクソ程度の生き物が何を言っているのですか、身の程を弁えてから考えて話をしてください」

魔王「お前さっきからうるさいな!?」


「僕達みたいな雇われの魔物は冒険者ギルドとの契約で冒険者と戦ってそれに応じたお金を貰っているのですが……」

魔王「ん!?え、ちょっとまって、え!?」

側近「おや、魔王様知らなかったのですか?都合よく冒険者の目の前に飛び出して金品やアイテムを落とす魔物たちは全員雇われですよ、彼らはそうやって冒険者ギルドと連携して生活をしているのです」

「普通の魔物だったらこうやって言葉も話さないし大体が逃げたりするからねー」

魔王「知りたくなかったそんな事……」

側近「世界の摂理を知ってまた大人になりましたね。今日はお赤飯を炊きましょうか」


魔王「そ、それで……待遇を変えろって言いたいのか?だったら冒険者ギルドに直接……」

「あいつら僕らにお金を渡すのが惜しくてピンハネしやがったんです!!労働法もあったもんじゃない!!」

魔王「聞きたくなかった……スライムからそんな話聞きたくなかった……!!」

側近「このスライム中々骨がありますね、ウチに欲しいくらいです」

魔王「わ、わかった、そのことについてはギルドの方に伝えておくから……もう帰れ」

「約束ですよ!絶対ですよ!?でなきゃクーデター起こしますよ!!」


魔王「……」

側近「さ、次です次」

魔王「もうやめないか?」

側近「まだ二人目ですよ、国民の声を聞いてこその魔王です。ここでやめてしまってどうなさるのですか」

魔王「うん、もうね……うん……」

側近「では次の方、カモーン☆」


「魔王様」


魔王「お、まともっぽいな」

側近「シスターですね。私は無宗教なので出来るなら顔を合わせないように目を伏せて通り過ぎたい存在ですが」

魔王「お前神様嫌いなの?」


「それで魔王様、ご相談があるのですが……」

魔王「ああ、言ってみろ。聞くだけ聞いてやる」

側近「解決するとは言っていない」


「どうか、私が信仰する神をこの地に広める事を許可して欲しいのです」

魔王「む、一つを認めるのはちと厄介だな……次へ次へと申し出が来そうだ」

側近「だから宗教関連は厄介なんですよ、まったく」

魔王「まぁ私に拘りはないから宗教の自由化なら検討してもいいんじゃないか?別に不利益にはならんだろう」

側近「魔王という絶対的存在もありますので、まぁ宗教間での争いはほ他の国よりはマシになりそうですね」

魔王「そうだ、どんな神を信仰してるのか教えてくれないか?参考までにさ」

「邪神王 カムハサムモマレルという神です!」

魔王「」

側近「凄い名前ですね」


「この世に秩序など不要!!目指すは争い奪い合いそして殺し合う世界!!」

「力無き者は死に愚かな者は淘汰され!そして地の底より邪心様は復活なされる……ッ!!」


「 天 国 は 近 い 」


魔王「今すぐそいつを捕えろ!!コイツの所属している組織もぶっ潰せえええーーーーー!!」

側近「はい、早速手配いたします」


……


魔王「ハァ……ハァ……」

側近「邪教とは、凄く面白そうなものを引っ張ってきましたね彼女」

魔王「宗教の自由化は先延ばしだ……あんなものを世に広められたらたまったもんじゃない」 

側近「では次の方、お入りください」

魔王「まだやるの!?」

側近「当たり前です、さっさといつものように威厳たっぷりに威張り散らしてください」

魔王「別にいつも威張ってないからな?」



「魔王様……」


魔王「今度は何だ?ビシッとスーツ着て、立派な社会人みたいだな」

側近「テンプレートの様に型に押されたタイプの見た目ですね。所詮は社会の歯車ですか」

魔王「そこまで言う!?」

側近「おっと、思ってもみない事を口に出してしまいました」

魔王「絶対に思ってたから口に出したよな?」


「私、実は小学校で教師をしているのですが……」

魔王「ああ、なるほど。結構礼儀正しそうだからな」

側近「中身は欲に塗れたロリコン野郎かもしれませんよ」

魔王「お前はどうしてそう斜めに構えて物を見るかな?」

側近「……まさかショタ?そっちもアリか……」

魔王「もういいよ……で、相談って?」


「最近教員を蔑ろにする児童たちが増えているのです」

魔王「んー?それは自分たちの責任だろう?褒めるところで褒めて、そして叱るところで叱る。指導する立場にある者が凛とした誠実な態度で接していれば子供たちも分かってくれるだろうに」

側近「魔王様、最近の子供はそうはいかないのです」

側近「あくる時代、校内暴力が当たり前の環境で育った先生に敬意を洗わない子供たちがやがて親になり、そして先生に物を言わせぬ圧力をかける事があるとのことです」

側近「親からの無茶がまかり通ってしまうこのご時世、先生は何も言えないで子供たちは日に日に増長していき、言う事も聞いてくれず、少し強くいったら暴力だと喚き……!!」

側近「奴らは魔物です!!即刻排除すべきです!!親と子共々!!」

魔王「……お前子供嫌いなの?」


「あ、いえ、親御さん達からは引っ叩いてでもいう事を聞かせてくれとよく言われるのですが……」

側近「なんだつまらない、次の方どうぞー」

魔王「ちょっと待てよお前!?何で流そうとした!?」

側近「ここからバイオレンスな展開に持ち込むのは無理だと判断したので。そこの腑抜け教師は子供に手を上げる事を許可されているのにそれをしないなどと……ハッ!笑わせる!」

魔王「……こんなに私とお前で意識の差があるなんて思わなかったよ」

「あの……」

魔王「あ、悪い、続けてくれ」


「それで、私は魔王様に何かアドバイスを貰おうと思ったのです。確かに教師として凛としていれば子供たちは私を認めてくれると思うのですが……」

魔王「そうだな、そもそもお前に原因があるって考えるのが妥当だな」

側近「ではこうしましょう。先生、私が生徒役をやりますのでいつものように授業を行ってください」

魔王「それで私が何がいけないかを見るって事だな、よしやってみよう」

「は、はい!では……」


「みなさん、今日も楽しく授業を始めましょう!」

側近「片腹痛いわ!生きる術を教える授業であるというのになぜ楽しくやらなければいけないのですか!」

魔王「ストーーーーーーーーーップ!!生徒役のお前がイチャモンつけるなよ!?あと授業は楽しくていいんだからな!?それが講じて身になるんだからな!?」

「すみません……」プルプル

魔王「ああもう涙目になっちゃったよ!!」

側近「そんなメンタルで子供たちの御守りを出来るとでも?」ハッ

魔王「邪悪な笑みを浮かべるなよ!?」


「じゃ、じゃあ気を取り直して……だれか、この問題を解けるかなー?」

側近「はーい」

「はい!側近さん!」

側近「そんな程度の低い問題で私を出し抜けるとでも?貴方それでも教師ですか?免許持ってますよね?」

魔王「ストーーーーーーーーーーーーーップ!!」

側近「もう何ですか魔王様、私が生徒に成り切っているのです、邪魔しないでください」

魔王「それじゃあ見れない!!私が先生の悪い所何にも見えない!!お前の性格の悪さしか見えてこない!!」

「ごめんなさい……」プルプル

魔王「ああもうほらまた泣いた!!」

側近「心の弱さを直す方向で進めてください」


魔王「次変な事やったらお前追い出すぞ……」

側近「テコでも離れませんよ」

魔王「何で!?」

「あ、改めて……よーし!この問題分かる人ー!」

側近「はーい」

「はい側近さん!」

側近「先生トイレ」

魔王「」ズコッ

魔王「まぁよっぽど罵倒するよりはマシか……」


「ハッハッハ!先生はトイレじゃないぞ?」

側近「ああ、すみません。トイレに失礼でしたね。便器に吐き捨てられた痰カスが」ハッ

魔王「そういう意味だったああああああああああ!?」

「うあああああああああああああ!!教師なんかやめてやるううううううううううううう!!」ダダダダダダダダダ

魔王「ああ行っちゃった!?お前何であんな事言ったんだよ!?」

側近「テヘ☆」

魔王「テヘ☆じゃねーよ、無表情で言うな」


側近「そもそもここに相談に来ること自体が間違っているのです。自分で解決しなきゃならないことだってあるのです。彼にはいい経験となったでしょう」

魔王「悟った事を言うなサディストが」

側近「さーて次も居ますしとっととやりまっしょい」

魔王「頭痛い……帰りたい……」

側近「カムヒアー、相談者3ー☆」


「……」


魔王「……あからさまなトレンチコートに」

側近「薄気味悪い笑み。これは不審者ですね」


「ウバァー!!」バサァ!!


魔王「キャーーーーーーーーーーー!!やっぱり露出狂だあああああああああ!!」


「ウキャキャキャキャ!!」

側近「……」

魔王「そ、側近?」





側近「ぷっ、なにそれ」

魔王「」

「」


「あの……帰ります」パサッ

魔王「うん……」

側近「あ、そこを右に曲がった所に小部屋がありますのでそこで服を着て行ってください、ではさようなら」

魔王「……つーか今お前が案内した場所、兵士の詰所だろ」

側近「それが何か?生かして返すか」

魔王「oh...もう……」


魔王「……なんつーかさ」

側近「はい?」

魔王「ウチの国ヤバくね?」

側近「何をいまさら」

側近「では結構楽しめたのでこの辺でお開きにしましょうか」

魔王「楽しかったのお前だけだろ?」


勇者「あれ?魔王も側近もこんなところで何してるの?」

魔王「な!?ゆ、ゆゆゆゆ勇者!!」

側近「また潜り込んできたか……」

勇者「なんか楽しそうな感じがしたからさ。それより今変な人とすれ違ったけど大丈夫だった?」

魔王「だ、だだだ大丈夫だ!私があんな奴に後れを取る訳がない!!」

勇者「?そっか、それならいいけど……魔王、どうしてさっきから僕の股間を見てるの?」

魔王「ば、馬鹿者!!私がそんなもの興味がある訳ないだろ!!さらばだ!!」シュバッ!!

勇者「え?あ、ちょっと!!……どうしたの彼女?」

側近「さぁ、貴方のモノは刺激が強すぎたんじゃないですか?」

勇者「??」


――――――
―――



魔王「つ……疲れた」

側近「はいお疲れ様です。ココアでもどうぞ」

魔王「ん、ありがと……っつーか誰のせいだと思ってんだ誰の」

側近「私ですが何か?」

魔王「テメェ」


側近「今回私が呼んだあの方々はまぁ極端な例ですよ」

魔王「お前の仕込みだったのかよ……通りで 疲れる訳だ」

側近「ま、彼らも彼らなりに国に、ひいては魔王様に望むことがあった訳です」

側近「必ずしもすべての願いを叶えられるワケではありません、貴女には大多数を救う事の出来る力があります、けれど何も無理をすることはないのです」

側近「出来る限りの、目に映る範囲でいいですから、魔王様が成そうとした事を成してください。それが私の伝えたかったことです」

魔王「お前……」





魔王「綺麗に締めようとするなよ大戦犯め」ゴシュッ

側近「誤魔化しきれませんでしたか……」イタイ



側近「魔王様のお悩み相談室」 おわり

終わった
もう片方と違ってすんなり書けたわ

もしお付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました

過去作
http://blog.livedoor.jp/innocentmuseum/

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