結衣「ヒッキーがまたあくびしてる…」 (506)


初はまちSS
情報源が1期と他のSSくらい
アホすぎるアホさん など注意

時期は3年生の6月上旬頃です
アホさんかわいくてつい書き始めた完全にマスべ

ぼちぼち投下していきまうす


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438852453



昼休み



八幡「………」ウトウト



結衣(ヒッキー、やっぱり今日も眠そう…… 先週末くらいからずっとだよね)

結衣「ほんと、どうしたんだろ…」

三浦「なにが?」

結衣「えっ?」

三浦「えっ?」

結衣「……あたし今なんか喋ってた?」

三浦「ため息つきながらばりばり喋ってたけど」

結衣「うそ!? え、えっと、なんでもないから気にしないで!」

三浦「それ気になる言い方だから。まーいいけどさ」

結衣「ごめん…」

結衣「……」チラッ


八幡「………」コクン コクン


三浦「……」

三浦「なんだ、またヒキオのことか」

結衣「ぅええ!? ゆ、優美子なんで分かったの!?」

三浦「…まーほら、結衣とは付き合い長いし」

結衣「うう… そ、そっかぁ」

三浦(サルでも分かるし)



三浦「で? ヒキオがどうかしたの?」

結衣「うーん、それが分かんないんだよね…」

三浦「は?」

結衣「最近いつもと様子が違くて、ぜったい何かあったと思うんだけど」

三浦「様子〜?」



八幡「………」ウト ウト



三浦「……」

結衣「……ね?」

三浦「……どこが?」



結衣「えー? 全然違うじゃん」

三浦「ごめん結衣、あーしには全然わかんない」

結衣「うそっ?」



八幡「………」カックリコックリ



結衣「ほら、あんなに眠そうにしてるし」

三浦「いやそれは分かったけど。ヒキオは去年から昼休み大体いないか寝てるかじゃなかった?」

結衣「違うよ! ヒッキーは机に伏せて寝たふりしてただけだもん。あんな風に本当に眠そうなヒッキーじゃなかったよ」

三浦(知らねー…)

三浦「ま、結衣がそう思うならそうなんじゃないの」

結衣「うん……どうしたんだろ、ヒッキー」

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三浦「てか、たまたま夜更かししただけじゃん? あーいうネクラってキモいゲームずっとやってたりするっぽいし」

結衣「ちょっ、優美子! 言い方ヒドすぎ!」

三浦「あ、ごめん。つい」

結衣「もうっ… 何度も言ってるけどヒッキーはそんなんじゃないからね!」

三浦「あーあー、だからごめんってば」

結衣「確かに、ネクラだし、たまーにキモいことするけど」

三浦「合ってんじゃねーか」




結衣「今日だけじゃないんだよね。たぶん先週末…くらいかな、そのあたりから毎日眠そうで」

三浦「ふーん?」

結衣「はぁ… 気になるなぁ」

三浦「直接ヒキオに聞けばいいじゃん。部活もまだやってるっしょ?」

結衣「なんかね、そういう感じじゃないっぽくて」

三浦「…はぁ?」

結衣「実はね、一昨日の部活のときヒッキーに聞いてみたんだ。なんか眠そうだねって言ったら、『そんなことない』って」

結衣「そしたら、ゆきのん……したさんがね」

三浦「別に気ぃ遣わなくていいよ」

結衣「ご、ごめん」


結衣「ゆきのんとヒッキーでまたいつもみたいなやり取りがあった後、『お前が心配してるようなことじゃない』って」

結衣「ヒッキーがそう言って、でもやっぱりちょっと怪しいから、あたしがもっかいヒッキーに聞いてみたときにね」

結衣「ヒッキーがあたしの髪をこう、くしゃってして、少し脇見しながら『本当、そういう感じじゃねえから』」

結衣「って!」

三浦「あ、そう…」

結衣「しかもね、そのあと」


結衣「『心配してくれてありがとな』」(イケボ)


結衣「って!!」クワッ

三浦「ひっ!?」ヒキッ

結衣「ヒッキー、めったに『ありがとう』なんて言わないからさー…ちょっとびっくりしちゃったんだよね……えへ…えへへ……」

三浦「へ、へぇー」

三浦(え、なにこれノロケ?)



三浦(結局その後メチャクチャヒキオ観察日記聞いた)



キーンコーン



結衣「あっ、予鈴だ」

結衣「ありがと優美子! 話してちょっとスッキリしたかも!」

三浦「そりゃよかった」



八幡「………」スカー

戸塚「はちまん、5時間目移動教室だよ。はちまーん」

八幡「………」スカピー

戸塚「はちまん! 起きて、はっちまーーん!」ユッサユッサ

八幡「はうあっ!!」

戸塚「あ、よかった。やっと起きた」

八幡「お、おう、戸塚か… 夢の中で天使の呼び声がかかったからてっきり最期のお迎えと思ったぜ」

戸塚「あはは、はちまんは相変わらず面白いね。早くしないと5時間目遅れちゃうよ? 行こ?」

八幡「ああ、起こしてくれてサンキューな。3年でも戸塚が同じクラスで俺は全く幸せ者だ」

戸塚「大げさだなぁ」


結衣(ヒッキー、彩ちゃんとはいつも通りみたい)


三浦「結衣、ぼけっとしてるとあーし達先行くよ」

結衣「あっ! ま、待ってよ〜!」



カーン コーン



結衣「むにゃっ…」

先生「それじゃ、各自今日のところよく復習しとけよー。たぶんテスト出すからな」

結衣「へっ!?」

結衣(やばっ、途中から寝てて全然授業聞いてなかった!)

結衣(ノートどこまで取ってたっけ)チラッ

結衣(………)

結衣(ほとんど文字ふにゃふにゃで読めないし…てか、よだれめっちゃついてるし……)パタパタ

結衣(後で優美子かヒッキーに教えてもらお…)

また後で書きます

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しえん

期待

おつ

167 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします さっさとやめろよ糞>>1、埋めるぞ 2014/07/14(月) 17:56:30.14 ID:0YXcVXo40
が憎い木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い
木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い
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部室



ガララッ


結衣「やっはろー!」

雪乃「ごきげんよう、由比ヶ浜さん」

結衣「会いたかったよゆきのーん!」ダキッ

雪乃「だ、だから抱きつくのはやめなさいと言っているでしょう!」

結衣「ごーめーんー。でもクラスじゃゆきのんに会えないし、寂しいんだもん」

雪乃「もう…」

結衣「……3年生でも、別々になっちゃったね」

雪乃「もう2ヶ月以上経つじゃない。それにあなたと彼は再び同じクラスなのだし、皆がみんなバラバラになったわけではないわ」

結衣「あたしは3人とも同じクラスがよかったなぁ」ギュー

雪乃「仕方ないわ。3人とも同じクラスとなると、かなりの低確率になるから。それより離れなさいと…!」

結衣「いいじゃんもうちょっと! ゆきのん分がたまるまでだから!」

雪乃「そんな成分は存在しないと思うのだけれど…」

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雪乃「な、ならば私の問いに答えなさい。それで答えられなかったらすぐに離れること」

結衣「ええ!? ゆきのんの出す問題なんて無理に決まってるじゃん!」

雪乃「大丈夫。これまで習った範囲の、比較的簡単なものにするから」


雪乃「そうね、私たちに関連したものにするわ」

結衣「私たち?」

雪乃「由比ヶ浜さん、『千葉市立総武高校3年生の特定の3人が、次年度全員とも同じクラスになれる確率』を求めてちょうだい」

結衣「か、確率! 数学かぁ…えーっとえーっと…」

雪乃「制限時間は2秒」

結衣「ふぁあ!?」

雪乃「冗談よ。時間は気にせずゆっくり考えていいわ」

結衣「も、もう! びっくりさせないでよ〜」

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結衣「え、えーっと、まずクラスの数が…」

雪乃「……」

結衣「…で、2年生のときあたしとヒッキーが同じクラスだったから…」

雪乃「ちっちっちっちっちっちっ」

結衣「あれ? これは関係ないや。どうしよ、まずゆきのんがA組になったとして…」

雪乃「ちっちっちっちっちっちっちっ」

結衣「えっと…それから……」

雪乃「ちっちっちっちっちっちっちっちっ」

結衣「………」

雪乃「ちっち」

結衣「だぁーー!? ゆきのん、そのタイマーの音みたいなのやめて!!」

雪乃「あら? 時間は無制限だから気にしなくて良いのだけれど」

結衣「無制限でも気になるし! 気になって全然計算に集中できないよ!」




雪乃「この問題に計算なんて必要ないわ」

結衣「そりゃゆきのんレベルになったら計算なんて要らないくらい簡単なのかもだけど…あたしじゃ…」

雪乃「違うわ、由比ヶ浜さん。本当に計算なんて必要ないの。これがヒントかしらね」

結衣「えっ? どゆこと?」

雪乃「……」

雪乃「そろそろ、答えを聞いていいかしら?」

結衣「ちょっと、ちょっと待って! 計算しないのがヒントってどういうこと!?」

雪乃「そのままの意味よ。困ったわ、ヒントのヒントをあげてしまうともう答えを言っているようなものだし」

結衣「え、えぇ〜?」


八幡「まあ、つまりは問題文をよく読めってことだよ」


結衣「!?」ビクッ

雪乃「比企谷君…」


これもう一回VIPにスレ立てて誘導してやろうかしら



八幡「なんつーか、雪ノ下らしくない問題だな」

結衣「ヒッキー!!」

雪乃「部室に入るならまず挨拶からしてほしいのだけれど。心負荷が前後共に増大するわ」

八幡「悪うござんした… チッス」

結衣「やっはろー! ヒッキー!」

雪乃「ごきげんよう。それで、口ぶりから察するに貴方は答えが分かっているのかしら?」

八幡「まあ、そういうことだな」

結衣「ほんと!? すごいよヒッキー、いつも数学ゴミみたいな点数なのに」

八幡「ゴミ言うな。小町かお前は」


八幡「問題文をよく読め…まあ今回の場合はよく聞けだが、それがヒントだ。いわゆるひっかけ問題ってやつだよこれは」

結衣「そ、そうなの? ゆきのん」

雪乃「そうね。計算が不要というのは、まさにそういうことかしら」



八幡「由比ヶ浜、雪ノ下の言った問題文は覚えてるか?」

結衣「たぶん… えっと、私たち3人が進級したときに同じクラスになる確率を求めればいいんだよね?」

八幡「はいアウト」

結衣「なんでっ!?」

八幡「アレだな、俺の想像以上に由比ヶ浜は雪ノ下の術中にハマってたのが分かった」

結衣「ゆきのんの…? ど、どういうこと?」

雪乃「……」






結衣「ゆきのん……あたしを………騙してたの?」

雪乃「……………」






八幡「いやそこシリアス感演出するところじゃないから。いつから演劇部になったのお前ら」

結衣「うー! だってわかんないんだもーん!」

雪乃「私はそもそも何も喋っていないのだけれど…」

167 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします さっさとやめろよ糞>>1、埋めるぞ 2014/07/14(月) 17:56:30.14 ID:0YXcVXo40
が憎い木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い
木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い 木曾を汚した>>1が憎い木曾を汚した>>1が憎い
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八幡「話が進まんから俺が説明する。いいか由比ヶ浜、雪ノ下が問いかけたのはこうだ」

八幡「由比ヶ浜さん、『千葉市立総武高校3年生の特定の3人が、次年度全員とも同じクラスになれる確率』を求めてちょうだい」(裏声)

雪乃「はり倒していいかしら。あと今すぐ私へのペラプリン静注を所望するわ。吐きそう」

結衣「ヒッキー超キモい…」

八幡「しまった、余計に話が進まないどころかライフが一気に削り取られちまった…」


八幡「まあ、それはともかく由比ヶ浜。どうだ? 気が付いたか?」

結衣「うん? 気が付いたかって… だ、大丈夫だよヒッキー! さすがに気失うほどキモくはなかったし!」

八幡「」

雪乃「ぷっ」


八幡「なんなの? いつの間にか由比ヶ浜まで俺の精神壊滅を目論む側に回ったの?」

結衣「えっ? ……あ、問題のことか! ごめんヒッキー! ほんとごめん!」

八幡「お前はもう少し文脈から判断できるようになってねお願いだから」

結衣「はぁい…」

雪乃「……っ…!!………!!」プルプル

八幡(雪ノ下がツボってやがる…)



八幡「……」カキカキ


八幡「で、だ。由比ヶ浜の桃と相反する小さな脳みそでも理解しやすくするために、雪ノ下の問題を文章に書き出してやったわけだが」

結衣「言い方ひどくない!? てか桃ってなんだし!」

八幡「ほら、よく読んでみろ」


『千葉市立総武高校3年生の特定の3人が、次年度全員とも同じクラスになれる確率』


結衣「う〜〜ん?」

八幡「どうだ?」

結衣「………」

八幡「………」


結衣「ヒッキーって意外と字キレイだよね」

八幡「まあ文字については昔いろいろ学んだ…ってそうじゃねーから」

八幡「字体はどうでもいいから文章を読めよ。文節に区切るくらいの勢いでしっかり読めよ」

結衣「ぶん…せつ? ぶん…節…分? 豆まきは2月だよ? ヒッキー」

八幡「どうしちゃったの? 一色よりも遥かにあざといのかそれともリアルなアホなのか、お兄ちゃんかなり心配…」

雪乃「もしもし警察ですか。クラスメイトの異性に対し兄妹設定で卑猥な行為を強要しようとする変質者がいるのですが」

八幡「もういやこの2人」


謝罪しろ

初めましてかごめです!面白い小説書いています!
初めましてかごめです!面白い小説書いています! - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438420969/)

終わり?
とりあえず留年は(ガハマさん以外は)ないだろうから答えは0だ

なんかマズかったかな とりあえず継続
あ 全然まだ続きます



八幡「ここだよここ! 学年! よく見てみろ」

結衣「ふむふむ…?」

八幡「……」

結衣「……」


結衣「…! あ、あぁ〜〜〜〜!!」


結衣「さ、3年!! 3年って書いてあるよ、ヒッキー!」

八幡「……ま、そういうこった」

結衣「な、なんだぁ。確率なのに計算しないってそういうことかぁ」

八幡「ああ。枕詞に『答えは“簡単”です』って付けるひっかけ問題と同レベルだろ。由比ヶ浜に出すものとはいえ、雪ノ下らしくない問題って言ったのはそれ故だ」

八幡「高校3年の次年度… 卒業後に同じクラスになるなんてこと、あり得ないからな。答えはゼロだ」

結衣「あはは、なんで気づかなかったのかな…」

八幡「けど、そこがさすがは雪ノ下ってとこだろうな」

雪乃「……」



八幡「雪ノ下は由比ヶ浜に2つ罠を仕掛けていた」

結衣「わな?」

八幡「まあわざわざ2つに分けなくてもいいんだが」


八幡「1つ目は、事前に席替えの話題が出た際に『低い確率になる』と言っておいたこと」

八幡「結構な低確率になることは直感でも分かるが、重要なのは『計算』を意識するよう仕向けることだ。それにより解答者はあくまで確率の計算問題として処理するようになる。今回は事前の会話で布石を打ったというより後から利用したってだけだろうけどな」

結衣「ふ、ふーん」


八幡「で、2つ目。ここも事前の話題が絡むっつう意味では同じだが、登場人物を3人にしたことで奉仕部3人とリンクさせ、『クラス替え』イコール『2年から3年への進級』と解答者に問題文をすり替えさせたんだ」

八幡「雪ノ下が由比ヶ浜の注意を最も遠ざけたいのは『高校3年』の部分だからな。俺らの4月のクラス替えに結びつければ、頭の中のイメージは勝手に高2から高3のクラス替えに限定されちまうわけだ」

結衣「ふ、ふーん」


八幡「由比ヶ浜、理解できてる?」

結衣「う、うん、余裕! つまり、詐欺ってことだよね!」

八幡(あ、余裕で分かってないご様子でいらっしゃる)


八幡「ま、そんなわけで答えはゼロ。お前らしくない捻くれた問題だったな、雪ノ下」

雪乃「そうね。さすが比企谷君、見事な不正解だわ」

八幡「ああ………」


八幡「………は?」



八幡「聞き間違い…じゃないな。どこぞやの難聴系ラノベ主人公とは構造が違うぞ俺の耳は」

雪乃「ええ。もう一度不正解と言って欲しいのなら、言ってあげるのもやぶさかではないわよ? 不正谷君」

八幡「もう言ってんじゃねえか」

八幡「つーかなにその名前? 間違えたどころかイカサマしてるみたいで評判悪くなりそうだからやめて。元々良い評判もないけど」

雪乃「見事な不正解よ、不正谷君」ニッコリ

八幡「結局さらに言うのかよ! そしておそらく今週一番の良い笑顔!」



結衣「ゆきのん、なんで違うの? 理屈は難しくてよくわかんないけど、あたしもゼロでいいかなって思ったんだけど」

雪乃「ゼロという解答が少なくとも2つの可能性を考慮していないからよ」

結衣「ま、また2つのなんだ…」

雪乃「とりあえず、先に正解を示すわ」



雪乃「『現状では不明』」



結衣「んっ?」

八幡「なんだそりゃ」

結衣「えっ?」



結衣「ど、どゆこと? 今の答えなの?」

八幡「そのつもりなんだろ」

雪乃「言い方はいろいろとあるけれど、方向性としては『答えが分からない』というのが答えね」

結衣「…?」

雪乃「なので揚々と講釈を垂れてた比企谷君ご自慢の回答は無残にも蹴散らされる結果となったわけなの。プッ」

八幡(コイツ、俺の回答聞いてから答え変えやがっただろ……)


八幡「まあ、なんとなく予想つくけどな」

結衣「ヒッキーわかったの? すごい!」

八幡「少なくとも1つは、だが」

雪乃「あら、それなら説明してもらえるかしら」


八幡「あー、答えが分からんっつうことはつまり、確定していない未来に対して、現在ある条件を基に場合分けができないってことだ」

結衣「ごめんヒッキー、もうわかんない…」

雪乃「比企谷君、もう少し噛み砕いて説明してあげなさい。あ、だからと言って由比ヶ浜さんを物理的に噛み砕くのは駄目よ」

結衣「ゆきのん!?」

八幡「しねえし怖えよ」



八幡「言うなれば屁理屈だ。例えば…そうだな」

八幡「あー、俺と由比ヶ浜が一手だけじゃんけんして、勝ったほうが昼飯を奢られるとする」

結衣「おっ、それイイかも」

八幡「例えばの話な。で、由比ヶ浜がタダで昼飯を食える確率は?」

結衣「え、えーっと、じゃんけんなら勝ちか負けだから…1/2…だよね?」

八幡「そっからかよ…」

結衣「え!? 違った?」

雪乃「由比ヶ浜さん、一手だけということはあいこもあるのよ」

結衣「あ、そっか。じゃあ1/3?」

八幡「ああ。それで正解」

結衣「やった!」


八幡「と考えそうなもんだが、実は不正解だ」

結衣「ええぇー!? なんで!?」



八幡「問題をよく思い出せ。聞いているのは由比ヶ浜が『じゃんけんに勝つ』確率じゃない。『タダで昼飯を食える』確率だ」

結衣「え… 一緒じゃない? あたしが勝ったらヒッキーが奢ってくれるんでしょ?」

八幡「ところがどっこい、俺は約束を守らず奢りを拒否したのであった」

結衣「えー!? ヒッキー、約束破るなんてサイテーだよ!」

雪乃「人間のクズね」

八幡「……」

八幡「そうでなくとも、仮に突然俺が不登校になって生涯お前と会わなくなったら? 昼飯なんざ奢れないだろ」

結衣「えっ………」

雪乃「人間のクズね」

結衣「そ、そんなことさせないし! もしそうなったとしても、あたしがヒッキーを家から引っ張り出すもん!」

八幡「お、おう。そうか」


八幡「まあ、他にもあるだろ、じゃんけんのあと俺にヤンデレの彼女が出来て他の女と昼飯食うとぶっ殺される的な」
結衣「それはないかな」
雪乃「人間のクズね」

八幡「…………」



八幡「とにかく理由なんざ何でもいい。そういう前提に含まれない事象が挟まることで因果関係が崩壊しちまう。だから『まだ分からない』が答えになるって話だ」

結衣「うーん…?」

八幡「あー… 今回の場合だったら例えば、その3人とも卒業できずに留年したら同じクラスになる可能性があるだろ?」

結衣「あ、なるほど! 確かにそうだね!」


雪乃「初めからそういう風に説明すればよかったと思うのだけれど」

八幡「俺も今そう思った」

結衣「え? どゆこと?」


雪乃「さて、1つはそのようなマイナス方向の可能性で合っているわ。さすが比企谷君、全身から湧き出る負のオーラに即した例が最初に出たということね」

八幡「ほっとけ。つーか他の可能性が分からん。1つはマイナスって言うくらいならもう1つはプラスの可能性なんだろうけど」

結衣「あ、それならあたし思いついたかも」

八幡「あん?」



結衣「大学にもクラスがあるとこって結構あるよね?」

八幡「そりゃあると思うが、それがどうした?」

雪乃「やはり、どこかの誰谷さんと違って由比ヶ浜さんはとても良いところに着目しているわ」

八幡「まじかよ。誰なんだろうなーその、どこかの誰谷さんって。俺だな」

結衣「だからさ、もし、もしだけど……」

結衣「あたしとゆきのんと、それからヒッキー! 3人全員が同じ大学に受かったら、みんな同じクラスになれるかもしれない!」


結衣「ってことだよね?」



八幡「………いや、それはいくらなんでも無いだろ」

結衣「な、なんでだし! あたしがバカだから? ヒッキーやゆきのんと同じ大学には行けないって意味!?」

八幡「それもあるな」

結衣「うわあぁぁん、ゆきのーん!!」

雪乃「ノーコメントね」

結衣「否定してくれないっ!」



結衣「うっ、ぐすっ。ゆきのんまで…」

雪乃「……」

八幡「……」


ポンッ


結衣「えっ…」

雪乃「『まだ分からない』わ。由比ヶ浜さん」

結衣「ゆきのん…!」

雪乃「センター試験までは半年以上あるわ。それに受験の天王山と呼ばれる夏休みも始まってすらいない」

雪乃「巻き返しのチャンスはまだあるのだし、由比ヶ浜さんがやる気なら私も手伝うから」

結衣「ホントに!? ありがとう! 大好き、ゆきのん!」ダキッ

雪乃「だ、だから抱きつくのは…!」

八幡「さーて、来たばっかだけどゆららららゆるくなってきたし俺はそろそろ帰るわ」

結衣「えっ」



結衣(ヒッキーはどう思うのかな… あたしが3人で同じ大学に通いたいって言ったら)


八幡「じゃ、また明日な」


ガラッ


結衣「ヒッキー!!」


八幡「あ?」


結衣「え、えっと…」


結衣(無理だ、ってすぐ言われるかな。いくらゆきのんに教えてもらっても、あたしがバカだから、今から頑張ったところで追いつけやしないって… そう思うのかな)


八幡「…なんもないなら帰るぞ」


結衣「あ、えっと!……も、もしあたしが…ね?」


八幡「おう」


結衣「その……3人で…」


八幡「………」


結衣「………」


結衣「…ううんごめん、なんでも! また明日ね、ヒッキー!」


八幡「…ああ、またな」



ガララッ



八幡「あー」


結衣(ヒッキー! ほんとに戻ってきちゃった)

結衣(もしかして、さっきのこと…!?)



八幡「すまん雪ノ下、伝え忘れてた」


雪乃「なにかしら?」

結衣(ですよねー…)ガクッ



八幡「平塚先生から伝言。先生が今日用事あって早く学校出るから、17時までに鍵返しに来いとさ」


雪乃「そう。分かったわ」


八幡「そんだけだ。じゃあな」


結衣(あっ、せっかくヒッキー戻ってきたのに)

雪乃「ええ。また明日」

結衣(でもまたさっきみたいに言えないかもだし… なんでかよくわかんないけど、聞くのが怖い…のかな)



結衣(はぁ…)



雪乃「どうしたの比企谷君? 立ち止まったりして」

結衣「…えっ」


八幡「………」


雪乃「もしかして3歩歩いて歩き方を忘れてしまったのかしら。それなら教えてあげるわ。まず右手と右足を一緒に前に出すの」


八幡「勝手にヒトをトリ頭にするんじゃありません。しかもあからさまにちゃんと歩かせる気が無いときてる」



八幡「そうじゃなくてだな、伝言もう1個あったんだわ」


雪乃「また? 私に?」


八幡「いや… なんつーか、お前の最も親しい総武高の女子宛てになんだが」


雪乃「はあ」

結衣「……」

結衣(ゆきのんの、って……… えっ?)



八幡「まあなんだ、その」

八幡「『可能性はある』ってな」


結衣「!」


八幡「ついでに『だからそんな辛そうな顔すんな』って付け足しといてくれ。あ、これ平塚先生じゃなくて俺の友達からだから」


雪乃「あら、そう」


八幡「つーことでよろしく。じゃ、今度こそまたな」


雪乃「ええ」

結衣「…! ヒッキー!」


ガララッ ピシャッ


結衣「あ……」

雪乃「……」



雪乃「……と、『比企谷君の友達』が貴女に伝えたいそうだけど?」

結衣「…うん」

雪乃「つくづく素直になれないわね。彼も、貴女も」

結衣「……うん」

雪乃「ふふっ」

結衣「えへへへ」






結衣「ってかゆきのん、あたしのこと学校で一番仲いいって思ってくれてるってことだよね? 嬉しいよーゆきのんっ!!」ダッキィィ

雪乃「っ!? ち、違っ……いえ、違ってはいないけれど…! どうしてそういう所は頭が回るのかしら?」

結衣「なんでもいーよ! ゆきのんゆきのん〜!」スリスリ

雪乃「ひゃいっ! く、くすぐったいからよしなさい、由比ヶ浜さん!」

結衣「よいではないか、よいではないかー♪」




八幡(廊下まで聞こえてんぞおいごちそうさまでした)

寝るっす

乙です

乙です

シエンタ

あくびしてたのは…?



雪乃「ところで由比ヶ浜さん」

結衣「うん?」

雪乃「今日この後、時間はある?」

結衣「この後? んー、特に予定はないし暇…かな?」

雪乃「今日、貴女のお宅にお邪魔しても良いかしら?」

結衣「へっ、うち…!? 」

雪乃「ダメかしら」

結衣「い、いいけど、どうして急に?」

雪乃「そうね…」

結衣「……??」


雪乃「じゃあ、勉強会を開きたいのだけれど」

結衣「じゃあって何!? てか、もうやるの!?」

雪乃「ええ。思い立ったが吉日、と言うでしょう」

結衣「うっ、で、でもまださっき話したばかりのことだし…」

雪乃「善は急げ、と言うでしょう」

結衣「そ、そうだけど…」

結衣「あ、ほら! 急がば回れ! って言う」

雪乃「ダブると同級生から敬語で話されるそうなのだけれど。得も言われぬ感覚なのでしょうね」

結衣「うわあぁん! ちゃんとやるから見捨てないでゆきのーーん!!」




放課後



雪乃「由比ヶ浜さんの家は少々久しい気がするわ」

結衣「たしかに。もしかして3年生になってからは初めて?」

雪乃「そうかもしれないわね」



結衣「着いた! ゆきのん、いらっしゃ…」

結衣「あーー!」

雪乃「?」

結衣「ごめんゆきのん、やっぱちょっとだけ待って! いまあたしの部屋すごい散らかってて…」

雪乃「私は気にしないのだけれど」

結衣「い、いいいーからっ! ゆきのん、もうサブレは平気になったんだよね? サブレと遊んであげてて! すぐに終わらせるから!」


バタンッ!


雪乃「?」



雪乃「どうしたのかしら? 由比ヶ浜さんはそこまで散らかすタイプではないと思っていたのだけれど」



サブレ「ワンワン!」パタパタ


雪乃「あら、サブレ」


サブレ「クゥーン」ハッハッハッ


雪乃「……」


サブレ「?」ハッハッ


雪乃「……」ガサゴソ



雪乃「丁度良いところに」シュルルルル


サブレ「!?」ビクリンコ





結衣(あ、あぶなー! ヒッキーの写メプリントしたやつ出しっぱだったの、気づいてよかったぁー!)

結衣(しかも半分盗撮だし、いくらゆきのんでもバレたらさすがにドン引きするだろうし… いやーあぶなかった!)



結衣「ゆきのーん! お待たせ、入って入って!」


雪乃「おじゃまします」

結衣「ヘイらっしゃい!」

雪乃「まるでお寿司屋さんね」

結衣「へっへ。お客さん、何握りやす?」

雪乃「鉛筆かしら」

結衣「ひえぇ〜… ゆきのん真面目すぎ! 少しはノッてくれてもいいのに」

雪乃「上手い返しをしたつもりだったのだけれど…」


結衣「あれ、そういえばサブレどこだろ?」

雪乃「さて、早速だけど始めましょう」

結衣「あ、うん」

結衣「ところでゆきのん、サブ」

雪乃「生きているから安心なさい。それで由比ヶ浜さん、この問題なのだけれど、例年の傾向では試験必出と言える分野に含まれているのよ」

結衣「そ、そうなんだ… あれ、ゆきのん? 生きてるって?」

雪乃「苦手な科目こそ傾向を押さえて効率よく学習することがうんぬんかんぬん」

結衣「ねえ、サブレは? サブレはー!?」




サブレはスタッフが美味しくいただきました(大嘘)



2時間後


雪乃「次に極小値を求める場合なのだけれど、分かりにくければまずはグラフを見繕って…」

結衣「……、……」ウト ウト

雪乃「由比ヶ浜さん?」

結衣「へあっ!」

雪乃「大丈夫? とても眠そうにしているわ」

結衣「へっ!? そ、そんなことないよっ」

雪乃「どこまでやったか言える?」

結衣「もももちろん! えーっと」

結衣「……」

結衣「び、ビブンセキブン!」

雪乃「……」

結衣「…イイキブン…」

雪乃「……」

雪乃「今日はここまでにしましょうか」

結衣「ごめんね、ゆきのん…」



雪乃「いいのよ。初日から無理する必要はないわ。徐々に集中できる時間を伸ばしていきましょう」

結衣「う、うん」

雪乃「それじゃあ、そろそろお暇するわ。ごめんなさい急に押しかけて」

結衣「そんな! 勉強教えてくれてるんだしむしろ… てか、ちょっと待ってゆきのん!」

雪乃「?」

結衣「えっと、少しだけお話していかない?」

雪乃「お話? 何か要件があるのかしら」

結衣「ううん、そーゆーのじゃないんだけど…… 学校でもあんまりゆきのんと2人きりで喋ったりすることないし、たまにはどうかなーって」

雪乃「……」

結衣「あ、ううん! ゆきのん家遠いしもう帰るよね! ごめんね、わがまま言ったりして」

雪乃「いえ。私は全く構わないのだけれど」

結衣「…!!」




結衣「…ほんとに?」

雪乃「ええ」

結衣「ほんとに帰らなくて大丈夫? ゆきのん」

雪乃「まだ20時にもなってないのだし、小一時間程度なら問題ないわ。それより私が長く居座って迷惑じゃないかしら」

結衣「ぜんぜん! っていうか今日お父さんもお母さんも帰るの遅いから、逆にいてほしい的な!」

雪乃「そういうことなら、もう少しだけお邪魔させてもらうわ」

結衣「やった!!」

結衣「あたし飲み物とお菓子もってくるね! 待っててゆきのーん!」ガバッ


タタタッ


雪乃「ふふっ。さっきの眠気はどこへ飛んで行ったのかしら」


雪乃(由比ヶ浜さんは明るく元気なときこそ、由比ヶ浜さんって感じね)

雪乃(きっとあの人も、そんな彼女だから……)




結衣(ゆきのんはどれが好きかな〜? お煎餅よりはもっと洋風なのがいいよね? たぶん)ガサゴソ

結衣「〜〜♪」

またきます

乙です

ヒッキーあくびちゃんの原因は『現状では不明』と言いたいわけだな?

乙です

本当たまに現れる原作読んでない書き手、読んでないのにも関わらずキャラ掴んでると個人的には思える、読んでる俺より上手くてへこむ。
きっと読んでたSSも原作の雰囲気を残しつつしっかりしてる書き手さんのもので、読み手としての見る目もあるんだろう
とりあえず何が言いたいかというと、ビブン! セキブン! ニジカンスウ!
そして信者キモいとか言われたらごめん

荒らしはNG

ゆきのんのクラスってクラス替えあったけ?

もうこれオリキャラでいいやん
どんだけ設定無視するんだ

>>63
原作読んでないみたいなこと言ってるんだから設定知らないってわかれよ
始めの注意書き無視して読んだのはお前だろ、それともあれか? 俺みたいなのに指摘されて信者発狂wwwwwwwとでもしたかったの?
今のところ違ったところは、ゆきのんは国際教養科でクラス替えなしだけかな

>>63
粗探しする為に読むとかどんだけマゾなんだよ

読者様の仰る通りでございますよ

そういや母校にも理数科なるものがあったな…
いろいろ都合良い設定で進んでいくかもなので改めてご注意を
調査不足で申し訳ないです



結衣「はいどーぞ、ゆきのんっ」

雪乃「ありがとう」

結衣「クッキーがよかったんだけど無くて、代わりに鳩サブレにしちゃった。口に合わなかったらごめんね」

雪乃「いいえ。つかぬ事を聞くけれど、これは市販品かしら」

結衣「うん。お父さんがよく買ってくるやつだよ」

雪乃「そう。いただくわ」ポリ

結衣「どーぞどーぞ」

雪乃「ええ、素朴な味で美味しいわ」

結衣「よかったー! あとね、あたし初めて自分で紅茶いれてみたんだ! アールグレイ!」

雪乃「……」


雪乃「つかぬ事を聞くけれど、これは市販品かしら」

結衣「?」

結衣「まあティーバッグだしそうだけど… さっきからどうしたの? ゆきのん」

雪乃「いいえ。でも市販品といえど、お湯を注いだのは由比ヶ浜さんということになるのよね」




結衣「? そうだよ?」

雪乃「そう」

結衣「…はっ!」

結衣「も、もしかしてゆきのん! あたしがいれたからってすっごくマズい紅茶になってるなんて思ってない!?」

雪乃「思っていない」

結衣「そう? ならいいんだけど…」

雪乃「わけがないわ」

結衣「ゆきのーーん!?」


雪乃「由比ヶ浜さん、ティーバッグの使い方は知っているわよね?」

結衣「あ、当たり前だし!」

雪乃「なら、どうやって淹れたか教えて頂戴」

結衣「もー、いくらなんでもバカにしすぎだよ」


結衣「まず袋をやぶって中身をカップに入れるでしょ?」

雪乃「待ちなさい」

そもそも学部違うから2年→3年でも同じクラスにはなれないんじゃね



雪乃「出だしからいきなり間違っているのだけれど」

結衣「ええ!? だってカップ麺の粉末スープだって上からお湯かけて、ダマにならないようにするよ?」

雪乃「…貴女は今すぐ辞書で『抽出』という言葉を引くところから始めるべきだわ」



雪乃「茶葉は溶けないのよ。熱いお湯をかけて成分を抽出して、茶葉本体は袋の中に残ったままで良いの。つまりは茶漉しの代わりね」

結衣「な、なるほど〜」

雪乃「少し茶葉を踊らせて適度に抽出したら、濃くならないようにこうやって引き揚げて」

結衣「あ! このヒモってそのために付いてたんだ!」

雪乃「なんの為だと思っていたのかしら」

結衣「かわいいからかなーって…」

雪乃「そう…」



結衣「ゆきのんはミルクいれる?」

雪乃「結構よ。ストレートのほうが香り高いから」

結衣「そっか。そのままでもいいんだけど、あたしはミルクティーにしたほうが好きかな」

雪乃「好みはそれぞれだと思うわ」



結衣「あ、そういえばヒッキーのことなんだけど」

雪乃「由比ヶ浜さん、食事中に汚い言葉を使わないと教わらなかったの?」

結衣「ヒッキーは汚くないよ!?」

雪乃「食事が不味くなることに変わりないわ。それで、彼がどうかしたのかしら」

結衣「ひどいなーもう… 」

結衣「ヒッキーさ、この頃ちょっと変なんだよね」

雪乃「変、というと、変質者? 変態? 大丈夫なの由比ヶ浜さん? 今すぐ警察に連絡してから弁護士に相談しに行ったほうが」

結衣(うわぁ、ゆきのん的なヒッキーのイメージってどうしてこんな最低なんだろ…)



結衣「そんなんじゃなくて、ヒッキーが最近ずっと眠たそうって話」

雪乃「ああ、確か前に部室で彼に尋ねていたわね」

結衣「そうそう。あれからもやっぱり授業中とかお昼休みとか、あくびばっかしてずーっと眠そうにしてるんだよね」

雪乃「いつも通りの比企谷君じゃない。特に昼休みなんて教室にいないか、いても寝ているかなのでしょう」

結衣「優美子とおんなじこと言ってるー… 寝たふりじゃなくてほんとに眠そうなの!」

雪乃「よくもそんな違いが分かるものね」

結衣「そりゃわかるよ、いっつも見てるし」

雪乃「あら…… へえ?」

結衣「……あっ、違くて、ほら! 同じクラスだから! 毎日会ってるって意味だから!」

雪乃「はいはい」

結衣「あーゆきのん信じてない!!」

結衣「ほ、ほんとだよ? 消しゴムわざと落として拾うスキにヒッキーのほう見たりなんか全然してないし!」

雪乃(涙ぐましいわね…)




結衣「それでゆきのん、何か知らない?」

雪乃「そうね」

結衣「……」


結衣「え、もしかして知ってるの?」

雪乃「………いえ、知らないけれど」

結衣「なんだー」ガクッ

雪乃「彼のことだからライトノベルかゲームに熱中して夜更かししているのでしょう、きっと」

結衣「あれ、ゆきのんもそう思うんだ?」

雪乃「私も、ということは、由比ヶ浜さんも?」

結衣「ううん。それも優美子がおんなじこと言ってたなーって。案外ゆきのんと優美子って似てるのかも?」

雪乃「………」カチャッ ズーッ

結衣「ちょっ、そんな嫌な顔しないでよー!」

雪乃「紅茶に渋いところがあっただけよ」



雪乃「由比ヶ浜さんも、もう一杯いかがかしら?」

結衣「あ、うん」

雪乃「ミルクも入れるわね。はい、どうぞ」スッ

結衣「ありがと!」


結衣「そっか、ゆきのんも知らなかったかぁ。さすがのゆきのんでも知らないことあるんだね」

雪乃「当たり前じゃない。むしろ比企谷君に関して言えば、貴女の知らないことを私が知っているとは考えにくいわ」

結衣「んー…?」ズー


雪乃「由比ヶ浜さん、彼のことを好きなのでしょう?」

結衣「ぶぅぇえぇっ!!?」ブー



雪乃「……」ビッシャァァ…

結衣「へ、な、え、な? なな、な?」ポタポタ…


結衣(ななな、なん… え? うそ? ゆ、ゆきのん? え? なんで?)

雪乃「……」

結衣(そんな、た、確かにあたしは、ずっとヒッキーのこと… でも、でもでも、そんなこと誰にも、一言も話したことないよ!?)

結衣(なんでだろ…いつからだろ… やっぱり、ゆきのんはなんでも知って…)


雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん」

結衣「ひゃ、ひゃいっ!?」

雪乃「あの」

結衣「な、なななにかななにかな? 別にっ、ヒッキーのこと? す、すすすすきとか好きとかスキとか////」

雪乃「タオルを貸してほしいのだけれど」

結衣「あ…」

結衣「そ、そうだねごめん! すぐ取ってくるねっ!!」



雪乃「……」フキフキ

結衣「ごめんなさい…」

雪乃「いいのよ。私の話すタイミングが適切ではなかったのもあるから」

結衣「ほんと狙い澄ましたかのような……じゃなくて、それでもあたしが悪いよ。拭けたら制服すぐシミ抜きと洗濯するね」

雪乃「いいえ、構わないわ。そろそろ帰るつもりだったから」

結衣「いやいや、すぐ洗わないと残っちゃうよ! それに外寒くないけど風邪引いちゃうかもだし」

雪乃「でも替えの服を持ってきていないわ」

結衣「あたしの貸すし! あ、てゆーかそれならシャワー使ってってよ」

雪乃「ありがたい申し出だけれど、さすがに申し訳ないわ。時間も時間だし」

結衣「でも悪いのはあたしだから… えーっとえーっと… 」

結衣「あっ! じゃあいっそ泊まってくのは? どう?」

雪乃「えっ」



結衣「うちはぜんぜん大丈夫だよ。それに、別にお泊まり久々だけど初めてじゃないじゃん! ねっ? いいよね、ゆきのん?」

雪乃「以前は予めご両親の了解を得ていたもの。急にだと余計にご迷惑がかかってしまうわ」

結衣「そっか… ゆ、ゆきのんがイヤなら無理にってわけじゃないけど…」ギュッ

雪乃「!?」

雪乃「そのやり方はずるいと思うのだけれど……」


雪乃「…分かったわ。週末でもあるし、お言葉に甘えさせてもらうわ」

結衣「やったぁ!」

雪乃「ただ、姉さんに一言連絡させて頂戴」

結衣「うんっ」



結衣「あれ、でもゆきのんっていま陽乃さんと住んでたっけ?」

雪乃「いいえ一人暮らしだけど。あらぬ誤解を招かないように、よ」

結衣「へ? 誤解って?」

雪乃「なんでもないわ」

結衣「え! なんか気になる! なに? ゆきのん、何の誤解?」

雪乃「……」

雪乃「それより由比ヶ浜さん、早くお風呂に入りましょう。一緒に」

結衣「あ、うん…… うん!?」



雪乃「どうしたの?」

結衣「ゆきのん、今『一緒に』って?」

雪乃「ええ。貴女もほら、制服の胸元に紅茶が染みて透けているじゃない」

結衣「きゃああ!? ほ、ほんとだ! これもすぐ洗濯しなくっちゃ!」

雪乃「と言うわけでさっさと一緒に入りましょう」

結衣「いぃいやいや、だからって一緒に入らなくても…」

雪乃「由比ヶ浜さん、『効率』という言葉は知っているわね?」

雪乃「効率というのは作業効率や時間効率があるように動作そのものおよびそれにより費やされる時間に対しても存在し今回の場合具体的に云えば身体殊に手の届きにくい背部を洗う作業効率の上昇そして結果的に要する時間の短縮さらに電気又はガス代の節約に貢献可能という意味でくどくどくど」

結衣「え、ちょっ」


雪乃「それとも」

雪乃「私とでは嫌…ということかしら?」ウル


結衣「!!」ドキン!


結衣「そんな、イヤどころか、ゆきのんから誘ってくれるなんてすごい嬉しいけど… ってかひょっとしてそれさっきのお返し!?」

雪乃「まあ早い話がレリゴーということよ」グイッ

結衣「わああ!? 待って着替え! 着替え持ってくるからぁ!」

結衣(な、なんかゆきのんが積極的だ〜〜///)

またきます
この辺から頭おかしい(俺の)

乙です
期待します

期待

これは胸囲の格差社会な展開ですねわかります

スレまで立てて書きたいと思ったほど愛に溢れてるのに宣言もなく週一しか投下できませんとかあったのか、そりゃすまなかった
きっと俺ガイルSSの作者は休みが潰れまくってる忙しい人達ばかりなんだな。エタってるなんてことはなかったのか、よかったよかった

すみません、少し再開しまうす

あ 軌道修正して途中から全部書き直してるのでお風呂シーンなしで…
完結したら別エンド的な感じで落とします



お風呂で特になにもなかった後


結衣「ふー、さっぱりしたね」

雪乃「ええ。いいお湯でした」

結衣「ゆきのん、髪はドライヤーで乾かす派?」

雪乃「長さもあるからタオルドライにすることもあるけど、最終的にはドライヤーで乾かすことが多いわ」

結衣「じゃああたしゆきのんの髪乾かしたい! あ、トリートメント持ってくるね、洗い流さないやつ」


結衣「〜〜♪」ヌリコミ

結衣「ゆきのん、すっごい髪キレイだよね。もしや毎日美容室通ってたり?」

雪乃「まさか。これといって特別なことはしていないわ」

結衣「えー、あたしけっこう頑張ってるけどこんなサラサラになれる気がしないよ…」

雪乃「そうかしら。あら? このトリートメントの香りに覚えがあると思ったけれど、いつも由比ヶ浜さんからする香りはこれだったのね」

結衣「へっ? そ、そうかも?」

雪乃「甘くてとても由比ヶ浜さんらしい、良い香りね」

結衣「えへ、ありがと… なんか恥ずかしいけど! あ、そろそろ乾かすね!」



ゴーーー


結衣「ゆきのん、熱くない?」

雪乃「問題ないわ」

結衣「よかった。てか、同じトリートメント使ったら、ゆきのんもあたしと同じ匂いになっちゃうかもね!」

雪乃「ふふ、なきにしもあらずね」

結衣「ヒッキーに、目つぶって匂いだけでどっちでしょう! ってやったらどうなるかな?」

雪乃「………世にも恐ろしいことを平然と言わないで欲しいのだけれど」

結衣「あ、ご、ごめんっ!」

雪乃「背筋が凍ってお風呂の余熱が一気に冷めてしまうところだったわ」

結衣「そ、そうだよねー! 犬じゃないんだし、匂い嗅がれるなんて……」

結衣(嗅がれるなんて………)


結衣(ヒッキーもあたしの匂いとか分かるのかな)

結衣(ゆきのんも分かるんだもんね。わざと嗅いでるとかじゃなくても、自然と覚えられてたりして)

結衣(逆にヒッキーの匂いってどんなだろ? 男の子だから芳香剤の香りもないけど、かといって運動部の人の男!って感じのやつもないし)

結衣(今度ちょっと近くで嗅いでみようかな? …って、あたしなに考えてんだろ!?)


雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん? 同じところに当てすぎではないかしら?」

結衣「わああ! ご、ごめーん! せっかくの髪が傷んじゃうとこだった!」

雪乃「大丈夫よ。完全に乾くには時間がかかるし、そろそろ交代しましょう」



ゴーーー


雪乃「ブラシ付きにしてみたけれど、力加減はこのくらいで良いかしら?」

結衣「うんっ、気持ちいいよ。ゆきのん髪とくの上手だね!」

雪乃「それなら良かったわ」



ゴーーー


結衣「…あのさ、ゆきのん」

雪乃「なに?」

結衣「さっきの……あたしがヒッキーのこと、って話なんだけど」

雪乃「ええ」

結衣「えっと、い、いつから…?」

雪乃「そうね、1年前くらいかしら」

結衣「いちっ… そんなに!?」



雪乃「というのは流石に言いすぎかもしれないけれど、いつからか明確に覚えていないくらいには前からよ」

結衣「そんなに前からバレてたんだ…」

雪乃「むしろ隠しているつもりだったことに驚きだわ」

結衣「えー!? あたしそんなにわかりやすかった!?」

雪乃「貴女との関わりと並の感性を持っていれば誰でも、くらいにはね」

結衣「それじゃ、もしかしてヒッキーも実は気づいてたり…」

雪乃「由比ヶ浜さん、頭は熱くない?」

結衣「あ、うん。大丈夫!」


ゴーーー


雪乃「彼はある意味で並外れた感性を持ち合わせているから」

結衣「へっ?」

雪乃「比企谷君よ。というよりは、気づいたとしても『そうではない』と自分に言い聞かせているのでしょうね」

雪乃「つまり、結局は貴女の好意には気づいていない状態になるのではないかしら」

結衣「そ、そっか…」



ゴーーー


結衣「……」

雪乃「……」

結衣「ゆきのんってさ」

雪乃「はい」

結衣「なんだかんだで、けっこうヒッキーのこと詳しいよね」

雪乃「…それはまあ、遺憾ながら奉仕部としてはそれなりに長くの付き合いになるもの」

結衣「そうだよね……そうだけど」

結衣(あたしだって…)

雪乃「けど?」

結衣「ん… あたしも同じくらい奉仕部で一緒にいるし、クラスも同じだから、ヒッキーといる時間はゆきのんよりも多いかなって思うんだけど」

雪乃「…?」

結衣「なんとなく、ゆきのんのほうがヒッキーのこと、ちゃんと『知ってる』って気がするんだ」



雪乃「解せないわね。『ちゃんと知っている』というのはどういう意味で言っているの?」

結衣「えっと、身長とか、好きな食べ物とか、そういうプロフィール的なのじゃなくて… なんていうのかな」


結衣(あれだ…… ゆきのんとヒッキーの掛け合いを見てたりするとたまに感じる)

結衣(表面上は仲が悪く見えるはずなのに、なんとなく伝わってくる不思議な感覚)

結衣(相手のことをほんとに分かってて、どこか奥の方で通じあってるんじゃないかなっていう……そんな気持ち)


雪乃「もしや、以心伝心、とでも言いたいのかしら」

結衣「あたしもよくわかんないんだけど… それに近い感じかも」

雪乃「……ありえないわね。彼の行動は常に周囲を拒絶するものだし、問題の解決手段としても常軌を逸している場合が多い」

雪乃「私の理解を超えるものが殆どで、私としても、またおそらく客観的にも誉められるようなものではないでしょう」

雪乃「故に、彼と私が相入れることも、疎通しているということもないわ」



結衣「…ほんとにそうかな」

雪乃「…?」

結衣「たしかにヒッキーはクラスじゃ浮いてるし、ひねくれてるし」

結衣「奉仕部の依頼のときは自分を犠牲にするようなやり方ばっかりで、本当にそれが一番いい解決だったのかは分かんないし。だけど…そんなヒッキーに助けられた人はいっぱいいると思う」

結衣「あたしも、ゆきのんも含めてね」

雪乃「それは…」

結衣「それにヒッキーもだんだん変わってきてる。ただ一緒にいるからってだけじゃなくて、ヒッキーのほうからあたし達との距離を縮めてくれてるって感じることだってあるし」

結衣「ゆきのんもそう思ってるんでしょ?」

雪乃「……」



結衣「あたしが知った口聞いていいことじゃないかもだけど、ゆきのんとヒッキーはたぶん元々似てるところがあったんだと思う」

結衣「ゆきのんはヒッキーとよく喧嘩…というかヒッキーに対して冷たいし、知らない人が見たらすっごい仲悪く見えるんだろうけど、ほんとは違うよね?」

結衣「ゆきのんだって、心の中では…」


カチッ


雪乃「ちょ、ちょっと待ちなさい、由比ヶ浜さん」

雪乃「話の方向性が見えないわ。私と比企谷君が以心伝心か否か、という話だったのよね?」

結衣「あ、うん…ごめん。ゆきのんとヒッキーが通じあってるっていうのは、やっぱりあたしがそう感じてるってだけかもなんだけど」



結衣「うまく順番に話せないから、あたしが気になってること聞いちゃうね」

雪乃「そうしてもらえると助かるわ」

結衣「うん。前置きができなくて、すごいいきなりかもなんだけど…」

雪乃「ええ」



結衣「えっと…… ゆきのんは、ヒッキーのこと…好き?」


雪乃「……」


ガシャン!


結衣「わっ」

雪乃「!」

結衣「ゆ、ゆきのん?」

雪乃「ご、ごめんなさい。貴女の家のドライヤーなのに」

結衣「ううん大丈夫! あたしこそごめん、やっぱいきなり過ぎたよね…」

雪乃「ええ… どうしてそういう話になったのかしら」

もっと書き溜めてあるけどとりあえずこれだけ
書くの遅いもので…

今更だけど場面ごとの描写が長く、結果的に投稿数が多くなる傾向にあります
ゆるゆる見ていってくれると作者的にポイント高いです

とりあえず乙

乙です



結衣「その……やっぱりさっきの繰り返しになっちゃうんだけど」


結衣「ゆきのんはヒッキーとは合わないっていつも言ってるし、ぱっと見だと仲悪いように見えるんだよね」

結衣「でもゆきのんもずっとヒッキーと関わってきて、助けたり、助けられたりしあううちに、ヒッキーのこと心の奥ではちゃんと認められるようになったと思うんだ」

結衣「それでいてヒッキーのほうも変わろうとしてる気がして、お互いの距離もちょっとずつ縮まってきてて」



結衣「あたしの勝手な予想なんだけど… もしかして、もしかするとなんだけど……」

結衣「ゆきのんもヒッキーのこと、好きになってるんじゃないかー…なんて」

雪乃「……」


結衣「ま、まあそれならそれでいいのかなって! もしも2人ともヒッキーが好きだったら、みんなで仲良くやればいいんだもん!」

雪乃「由比ヶ浜さん…」

結衣「あ、あははは……」



結衣「ごめん、今のはちょっと…ウソ」

雪乃「……」

結衣「ほんとはね、怖いんだ。もしもあたしみたいに、ゆきのんもヒッキーのこと好きになってたらって思うと」


結衣「ゆきのんは超美人だし、家事も勉強も何でもできるし。それに比べたら、あたしの良いとこなんて全然ないし」

雪乃「そんなことはないわ」

結衣「ううん。あたしもいろいろ頑張ってるし、ヒッキーのこと知ろうとしてるけど… 」

結衣「やっぱりゆきのんのほうが、ヒッキーのこと『知ってる』感じするんだ。そんなゆきのんがライバルになっちゃったら、絶対勝てっこない、って……」


雪乃「…それで貴女は、私が比企谷君に好意を抱いているかどうか気にしている、ということ?」

結衣「うん…」

雪乃「なるほど。そういうことなら少し合点がいったわ」

期待してます!



雪乃「そうね、さっきはああいったけれど、たしかに私は彼のことを認めているのだと思うわ。良い部分も、悪い部分も含めて」

雪乃「普段のやりとりに大きな変化はないようで、彼が私たちに歩み寄ってきていることも、彼自身が変わろうとしていることも気付いているわ」

雪乃「そして、そのことを悪く思っていない……いえ、嬉しいとすら思っている自分がいるということにも」


雪乃「近頃の彼に魅力を感じないと言ったら嘘になるわ。少なからず好意を抱いていることも認めます」

結衣「!!」


結衣「じゃ、じゃあやっぱり、ゆきのんも……」

雪乃「でもその好意は、あなたのそれとは違うわ」

結衣「…えっ?」




雪乃「陳腐な言い回しをするけれど、LoveではなくLikeということよ」


雪乃「いいかしら由比ヶ浜さん。私が彼に抱いているのは、あくまで仲間、百歩譲って友人としての好意に過ぎないわ」

結衣「そうなの…?」

雪乃「そうなの。貴女が抱いているようなしゅきしゅき比企谷くんだいしゅきという好意、すなわち愛情とは似ても似つかない非なるものということよ」

結衣「ちょ、ゆ、ゆきのーん!!///」

雪乃「あら、違った?」

結衣「うっ…た、たしかにあたしのはラブのほうの好きだけど、そんなバカっぽい言い方しないでよー!」

雪乃「まあ、つまりはそういうこと」


雪乃「だから安心しなさい。私が由比ヶ浜さんの恋路を邪魔するようなことはないから」

結衣「そ、そっかぁ… よかった…えへへ」

雪乃「というか嫌よ。私が比企谷君ラブで言い寄っている図なんて、想像しただけで上履きに大量のゴキブリが詰められていた時と同じくらいの寒気がするわ」

結衣「いやあぁあ!? なにその恐怖体験!? こわっ!!」



カチッ

ゴーーー


雪乃「途中だったわね。乾かしてしまいましょう」

結衣「あ、うん! お願いします!」


雪乃「それで、邪魔者がいないと分かったところで、これからどうするの?」

結衣「邪魔者だなんて… えー、どうしよっかな」

雪乃「いろいろアプローチする方法はあると思うけれど、重要なのはタイミングではないかしら」

結衣「タイミング?」

雪乃「貴女と彼の場合、出会って間もないというわけでもないから、勢いのままにというのはもう難しいと考えられるわ」

結衣「んー、たしかに」

雪乃「ただ、自然と芽生える情熱的な恋のようには行かないけれど、勢いをつけるきっかけを作ることはできる。タイミングなんてものはその中に勝手に転がり込んでくるものよ」

結衣「ええっ? つまり…どゆこと? どうすればいいの?」

雪乃「手っ取り早く且つ手堅いのは、世の中の男女がよく用いている手法ね。それを応用するの」



雪乃「由比ヶ浜さん、来週の土曜日は空いているかしら?」

結衣「え? 明日じゃなくて…来週の? 今のところ特に予定とかはないけど」

雪乃「その日、貴女と比企谷がデートをします」

結衣「ふんふん」


結衣「……へ?」


雪乃「来週の土曜日、お昼から由比ヶ浜さんと比企谷が2人きりでデートをします」

結衣「ちょおっ、ゆ、ゆきのん!!」

雪乃「なにかしら?」

結衣「デデデートって…なんで急にそんな話になってるの!?」

雪乃「どうしてそんなに慌てているのかしら。2人で出かけるのはなにも初めてではないでしょう?」

結衣「そうだけど、その、いきなりすぎるし… デートとか言われると…」



雪乃「想いを伝えるには何かきっかけが必要。そしてそのきっかけは、当事者が2人で行動し、かつそれなりのイベントがある環境で生じやすいものだわ」

雪乃「よって休日に学校以外、言うなれば非日常の場所で2人きりでデートするというのは、気持ちを告白する手段としてはベターだという考えのもとの提案なのだけれど」

結衣「なるほど… っていうか、そこで告白するの前提なんだ!?」

雪乃「いかがかしら?」

結衣「うっ… えと、まだ心の準備が…」

雪乃「そう」


雪乃「私なりに真剣に考えた結果なのだけれど…」シュン


結衣「えっ」


雪乃「羞恥を忍び、言い慣れない言葉を用いてまで説いてしまった苦労が水の泡ということね……誠に残念…」シュン

結衣「ゆ、ゆきのーーん!? わかった、わかったから! あたし、土曜日にヒッキーとデートする!」

雪乃「…本当?」ウル

結衣「こ、告白は、できるかわかんないけど! がんばってみるっ!」

雪乃「由比ヶ浜さん…」



雪乃「それでチョロヶ浜さん、段取りなのだけれど、まず彼を勧誘するところからね。あ、髪はもう乾いたと思うわ」ケロッ

結衣(しまった! また演技だった!?)


変な展開にしちゃって終わりが中々見えずいまだゆっくり投下ですが…
また来ます

ゆきのんが八幡のこと呼び捨てでなんかガハラさんに見えてきた

おつ

乙です

乙です



結衣の部屋


雪乃「いいのかしら、私がベッドを使ってしまって」

結衣「いーのいーの、ゆきのんはお客さんなんだから!」

雪乃「そう? 立ったまま眠るのでも構わないのに」

結衣「なにそのワザ!? すごっ!!」

雪乃「小さい頃に習得したのよ。嘘だけれど」

結衣「ゆきのんの過去に一体なにが…って、なんだウソかぁー…」

雪乃「由比ヶ浜さん? 貴女はとても騙され易いわ。デートといえど、あの男に騙されて変なところに連れ込まれないようにしなさい」

結衣「ゆ、ゆきのん/// ヒッキーはそんなことしないよ! てかまだ行くと決まったわけじゃないし」

雪乃「それもそうね」



結衣「それじゃ、そろそろ寝よっか」

雪乃「もう一度聞くけれど、本当にいいの? 由比ヶ浜さんが布団で、私がベッドで寝てしまって」

結衣「ゆきのん気にしすぎ! いいんだって。あたしもたまにはお布団で寝てみたいし」

雪乃「そういうことなら、ありがたく頂戴するわ」

結衣「うん!それじゃ電気消すね。 おやすみ、ゆきのん」

雪乃「ええ。おやすみなさい」


パチッ



結衣(…えへ、久しぶりのお泊まりってテンションあがるなー)

結衣(明日はお休みだし、もうちょっとゆきのんとお喋りできるかな?)






雪乃「………」




チクタク



結衣「ゆきのん」

結衣「………」

結衣「ゆきのーん… まだ起きてる?」

結衣「………」


結衣(もう寝ちゃった?)

結衣(寝つきいいなぁ。もしかして疲れてたのかな)


結衣(…あたしも寝よっと)



グスッ



結衣(……えっ)


結衣(な、なに? なんの音? なんか、鼻をすするような音…)

結衣(空耳かな)



グスッ ズズッ



結衣(!?)

結衣「ゆ、ゆきのん…?」




雪乃「………」



結衣「ゆきのん…… 泣いてる…の?」



雪乃「………」






結衣「………」


ノソリ


結衣(壁のほう向いちゃってるけど…)

結衣「ゆきのん、起きてるんだよね?」ボソ


雪乃「………」


結衣「………」

結衣「なか…入っちゃうよ?」


雪乃「………」


結衣(偉い人が言ってた。沈黙は肯定だって)

結衣「お、おじゃましまぁーす」ノソノソ


雪乃「……」





結衣「ね…… ほんとは起きてるんでしょ?」

雪乃「……」


雪乃「どうしたの…由比ヶ浜さん」

結衣「…! ゆきのん!」

結衣「どうしたの、はこっちのセリフだよ…!」


雪乃「なんのことかしら」

結衣「だって… ゆきのん、今泣いてたよね…?」

雪乃「………」

雪乃「いいえ、泣いてなどいないわ」

結衣「うそだよ… だって声聞こえたもん。ゆきのんがすすり泣く声…」

雪乃「……聞き間違いよ」

結衣「そんなわけない! それならこっち向いてよ…ゆきのん」

雪乃「………」


クル



結衣「ほらやっぱり… 暗くてしっかり見えないけど、ゆきのん目赤っぽいし、こすった跡あるし」

雪乃「………」

結衣「どうしたの? あたし、もしかしてゆきのんに何か嫌なことしちゃった…?」

雪乃「………」

結衣「………」

結衣「そうなの? 黙ってたらわかんないよ…」


雪乃「…いいえ、由比ヶ浜さんが原因ではないわ」

結衣「ほ、ほんと? なら、どうして?」

雪乃「大したことではないから、気にしないで頂戴」

結衣「ゆきのん……」

結衣「あたし、ゆきのんに悩みがあるなら力になりたい。アドバイスなんてできないかもだけど、お話聞くだけでも違うと思うし…」

雪乃「由比ヶ浜さん」

結衣「な、なに?」

雪乃「ありがとう。心配してくれてとても嬉しいわ」

結衣「…!」



雪乃「でも大丈夫。本当に大したことではないの」

雪乃「それに、情けない話でもあるから……今は深く追及しないで欲しいというのが正直なところかしら」

結衣「ゆきのん… ほんとに、ほんとに大丈夫?」

雪乃「ええ。醜態を晒してしまったわね、ごめんなさい」

結衣「そんなことないよ… 辛い時は我慢しないで、泣いていいんだよ? ゆきのんだって女の子だもん」

結衣「あたしがゆきのんを助けてあげられることなんてほとんどないかもだけど… それでも、ゆきのんが素のままでいられるような、本音でなんでも話せるような相手になりたい!」

雪乃「由比ヶ浜さん…」

結衣「だから… あたしはいつだってゆきのんの味方だから…」

結衣「大丈夫って言うゆきのんを信じて今はもう聞かない。でも、いつか……ちゃんと話してね」

雪乃「ええ。話すわ、いつか時が来たとき…必ず」


結衣「約束だよ。ゆきのん」

雪乃「もちろん。約束するわ」



雪乃「由比ヶ浜さん」

結衣「うん?」

雪乃「ありがとう」

結衣「…ううん。言ったじゃん、あたしはゆきのんの味方だって」

雪乃「…そうね、頼りにしているわ」

結衣「えへへ、ゆきのんから頼りにされちゃった」


雪乃「………」



雪乃「やっぱり私も少しだけ、言わせてもらおうかしら」

結衣「…えっ?」


ギュムッ


結衣「むぶっ!?」

雪乃「…少しだけ我慢して頂戴」

結衣「むー! むー!?」

結衣(ゆ、ゆきのん!? 急に抱き…てか、ちょっと苦しいよー!)




雪乃「………」

結衣「むー! んむーー!!」モゴモゴ


雪乃「ごめんなさい。貴女には、すでに嘘を付いているわ」

雪乃「でも…本音なんて言えないのよ。言ってしまったら、貴女を……貴女と彼を……混乱させてしまうだろうから」



結衣(なに? なんかゆきのん喋ってるような… 全然聞こえないよー!)


雪乃「私は、彼が望む道を知ってしまった。私にそれを阻む権利など…ありはしないのだから」


雪乃「………」




雪乃「由比ヶ浜さん」


雪乃「どうか、私の分まで…」



雪乃「……」


スッ


結衣「ぷはあっ! はあ、はあ……」

結衣「ゆ、ゆきのーん!!」

雪乃「どうしたの? 息が荒いようだけれど」

結衣「えぇっ!? ゆきのんがいきなり頭ぎゅーってするからじゃん。苦しかったんだよ?」

雪乃「ごめんなさい、手が滑ったの」

結衣「そ、それはさすがに…ない…」

雪乃「………」フム


結衣「え、本当はなんだったの?」

雪乃「そうね、由比ヶ浜さんの髪がひょっとすると私よりサラサラなのではないかと思って確かめたくなったのよ」

結衣「へっ…? いやいや、ゆきのんに比べたら全然…… って、それだけ?」

雪乃「それだけよ。触って確認したり、味見してみたり」

結衣「ふーん………… んっ!? 味見!!?」



雪乃「てっきりオレンジの味でもするかと思っていたけれど、そんなことはなかったわ」

結衣「えーー!? ほんとにあたしの髪食べちゃったのー!?」

結衣「…なーんて」


結衣「また冗談なんでしょ。いくらあたしでもさすがにもう騙されないし!」

雪乃「……」

結衣「ね、ゆきのん? ね? 冗談なんだよね?」


雪乃「……」


結衣「えっ……… あ、あれ? ゆきのん?」



雪乃「ごめんなさい、私もう寝ないと…」

結衣「ゆきのんー!? う、うそだよね!? あれー!?」

こっからが激長
月末までには完結させて、投下ペース一気にあげたいと思ってます

乙です
期待

保守

乙です

月末とはなんだったのか
なんも言い訳できん

けど、一応完結した
ので、これから毎日投下します。
細かい部分修正しつつだけど大筋は絶対変えない



月ヶ浜



八幡「………」ドクショ


結衣(ヒッキー、今日はずっと眠そうじゃないや。やっぱり気のせいだったのかな)

結衣(そ、それよりデート! この前ゆきのんと約束したもんね、デートに誘わないと!)



キーンコーン



結衣「ね、ね! ヒッキー!」

八幡「げっ…」

結衣「げっ…てなんだし! 部活いくよね?」

八幡「あ、俺今日用事あんだわ。悪いけど雪ノ下に休むって伝えといてくれ」

結衣「え、そーなんだ… うん、わかった。バイバイ」

八幡「ああ」


結衣(帰っちゃった。ま、明日でもいいよね)



火ヶ浜



ガララッ


結衣「やっはろー!」

雪乃「あら、ごきげんよう」



ザーーー



結衣「今日は雨かー。傘持ってきたけど、やむまで帰りたくないなぁ」

雪乃「どうしても濡れてしまうものね。雨が止んだタイミングで依頼も来なそうだったら、早めに帰るのも一考かしら」

結衣「そだね。ところで、ヒッキーまだ来てないの? 部室のほうに歩いてったと思ったんだけど」

雪乃「いいえ、部室には来ていないわ」

結衣「そ、そっか。後でくるのかな」



ザーーー



雪乃「……止まなかったわね。そろそろ下校時間だし、帰りましょうか」

結衣「……うん」



水ヶ浜



結衣(今日こそヒッキーをデートに誘わなきゃ! ようし、がんばれ、あたし!)



キーンコーン



八幡「……」ガタッ


結衣「ヒッキー! 今日もすぐ帰っちゃうの?」

八幡「ん? あー、まあそうだな。少しだけ部室寄ってくけど」

結衣「そーなんだ。じゃああたしも一緒に」

グイッ

優美子「結衣ー、あんた今日日直でしょ。何サラッとさぼろうとしてんだし」

結衣「へ? …あ、やば! そうだった!」

八幡「ドンマイ。先行ってるわ」




タッタッタッ

ガララッ!


結衣「はっ、はっ…!」


雪乃「……比企谷君なら5分程前に帰ってしまったわ」

結衣「そ、そっかぁ…」ガクッ


雪乃「今日もまだ誘えてないのかしら?」

結衣「うん… クラスだとやっぱり言い出しにくいというか、ヒッキーが嫌がりそうだから」



結衣「この頃早く帰ってばっかだし、タイミング逃しちゃうんだもん」

雪乃「そういえば最近いつも用事があるみたいね」

結衣「うん… うん? あれ? てか、おかしいよね?」

雪乃「…なんのことかしら」

結衣「土曜日のことで頭いっぱいで忘れてたけど、ヒッキーこの前からずーっと用事用事って、早く帰ってるよ? やっぱり変だよ! 絶対なにかある!」

雪乃「そうね。彼なりに事情があるのでしょうね」

結衣「……? ゆきのん、なんか前よりヒッキーに甘くなってない?」

雪乃「さあ、そうかしら」

結衣「だっていつもだったらヒッキーが部活休むことにすごいいろいろ言ってたのに…それどころか、休む理由を聞こうともしてないよね」

雪乃「由比ヶ浜さん…この前話したことは覚えている?」

結衣「この前って、お泊まりの?」

雪乃「ええ」



雪乃「私はあの日『比企谷君のことを認めている』と言ったわね。その言葉を口にしてから特に、今までの自分を少し見つめ直してみたの」

結衣「…うん」

雪乃「結果、今までの私は比企谷君に対して、ほんの少々きつくあたっていたことに気がついたわ。彼の意見や行動を縛ってしまっていたことにも」


雪乃「だから、罪滅ぼしとは違うけれど、しばらく彼を自由にさせることにしたの」

結衣「自由に?」

雪乃「都合の良い言い方をすれば、彼の意思を尊重しているということよ」

結衣「ヒッキーの意思を…… そっかぁ」


結衣「じゃ、あたしも無理しないでデートはまた今度に…」

雪乃「貴女は早く誘いなさい」

結衣「ひ、ヒッキーの意思を尊重してるの!」

雪乃「伝えてすらいないのに彼の意思がどこに介在しているのかしら?」

結衣「あうっ。だ、だってー! 声かける以前にどうやって誘うか思いつかないんだもーん!」



雪乃「あきれた… 唆したのは私だけれど、そこまで何も考えていないとは予想外だったわ」

結衣「そんなぁ! ゆきのん他人事だと思ってー…」

雪乃「他人事……ね」ボソ

結衣「えっ?」

雪乃「いえ、なんでもないわ」


雪乃「まあそうね、提案者である以上、何も協力しないというのも無責任というものだし」

結衣「…ゆきのん!」

雪乃「まずは誘い方だけれど、そもそも由比ヶ浜さんはどこに行きたいの?」

結衣「行きたいとこかぁ。んーー…」

結衣「まずスイパラでしょ? あとカラオケと、あ! 駅前に出来たエステがすごい評判よくて高校生でも行きやすいらしいから行ってみたくてー」

雪乃「……そこに彼が一緒に行ってくれると思う?」

結衣「……思わないかも」




結衣「ヒッキーと2人で行けそうなところかぁ」

結衣「うーん……」

結衣「………」


結衣「なんかどこも『めんどいから行かない』って言いそう」

雪乃「そうね」


雪乃「そこで質問を変えるわ。由比ヶ浜さんはどこでどのような告白をしたいのかしら?」

結衣「ぅええ!? こ、告白…/// それも全然考えてなかったし、いきなり言われても…」

雪乃「あくまで理想よ。夜景の見える観覧車のてっぺんで や、物語のように白馬に乗って など、色々あるでしょう」

結衣「へぇ……」

雪乃「…なに?」

結衣「や、ゆきのんって意外と乙女ってゆーか…ロマンチックなのが好きなんだなって」

雪乃「た、例えばの話よ!」



結衣「てかそれって、どっちかといえば告白されるシチュじゃない?」

雪乃「…しまったわ。たしかにその通りね」

結衣「ゆきのんだったらする側でも似合いそうだけどね!」

雪乃「それは、褒められているのかしら」


雪乃「まあ、この際告白されるほうでも良いわ。貴女の希望は?」

結衣「うーん、やっぱり、コレ!ってのが思いつかないや。ゆきのんみたいなのもすごくいいけど」

結衣「そんなに特別なことしてくれなくてもいいかなぁ。2人きりで、できれば暗くて静かなところで、ちゃんと『好き』って言ってくれたら…すごい嬉しいかも」

雪乃「……なるほど」

結衣「…変かな?」

雪乃「いいえ。貴女の性格からして意外ではあるけれど、だからといって変ではないし、とても素敵な希望だと思うわ」

結衣「えへ、ありがと」



雪乃「希望が無いのなら、それはそれでいいわ。無理に進路変更する必要がなくなっただけね」

結衣「うん?」

雪乃「比企谷君はいわゆるデートスポットとなる場所はことごとく拒否すると予想される」

雪乃「なら、スタートは単に話があるとか言って喫茶店に呼び出し、ゴール地点である告白地点にあれよあれよと引きずり込む算段よ」

結衣「なるほどー! さすがゆきのん!」


結衣「それで引きずり込むって、どうやって?」

雪乃「そこは…ほら、由比ヶ浜さんがお願いするとか桃を使うとか、なんとかすればいいじゃない」

結衣「そこはあたし任せなんだ!?」

結衣(ゆきのんってめっちゃ頭いいのに、たまに雑ってゆーか…協力してくれてるのに言うのもあれだけど。ってかまた桃…?)



雪乃「でも由比ヶ浜さんの場合は特にゴール地点がないから、決まった場所への進路変更が必要なくなったという訳よ」

結衣「あ、そっか。でもそしたら、結局あたしがぶっつけ本番でなんとかしなきゃってことだよね?」

雪乃「ええ。協力すると言った割に無計画のようで悪いのだけれど、私はそれで良いと……実をいうと、むしろその方が良いと思っていたわ」

結衣「えっ、なんで?」

雪乃「それが貴女の魅力を最も引き出せるからよ」

結衣「魅力…?」


雪乃「由比ヶ浜さんのキャラクターとしてあるのは、『明るい』 『笑顔が可愛い』 『親しみやすい』だったり」

結衣「そ、そうかな… 照れるなぁ」

雪乃「そのほか『アホの子』 『桃』 『見た目ビッチ』などがあるのだけれど」

結衣「ちょおーー!!?」

雪乃「やはり人を惹きつけるのは前者ね。由比ヶ浜さんの明るさや元気さにはたくさんの人が元気づけられているし、フレンドリーな性格も馴染み易くてグッドよ」

結衣「えへ、えへへへ」

結衣(…はっ! サラッと発言を揉み消された!)



雪乃「そして、それらは素のままの由比ヶ浜さんにこそ現れるものだと思うわ」

結衣「素のあたし…」

雪乃「貴女は周囲に対する適応力がとても高い。関与する誰に対しても差し障りのない応対ができるし、そんな貴女を嫌う人はまずいないでしょう」

雪乃「周りに歩調を合わせることはコミュニケーション上のスキルでもあるし、もちろん悪いこととは言わないわ」

雪乃「けれど貴女には本来の魅力というものがあって、それを引き出せないのはとても勿体無く感じるの」

結衣「えっ?」

雪乃「つまりは、自分に正直になって、したいことをしなさいということよ」

結衣「…そんなんでいいの?」



雪乃「こと彼とのデートに限ってはそれで良いと考えているわ。最初は話や飲食に付き合うということにして、それから由比ヶ浜さんがしたいことや行きたい場所を次の行動方針にする」

雪乃「貴女が彼の隣で楽しそうにしていれば、彼だって嫌な気はしないし、流れに任せていろんな所へ一緒に行ってくれるのではないかしら」

結衣「そう…なのかな。そしたら、ヒッキーも楽しいって思ってくれるかな?」

雪乃「ええ。貴女の笑顔には人をそうさせるだけの魅力があるわ」

結衣「えへ……ゆきのんが言うと、なんかほんとにそんな気がしてきた!」




雪乃「これでもう大丈夫そう?」

結衣「うん! ありがとゆきのん、明日こそがんばって聞いてみるね」

雪乃「いえ、今日よ」

結衣「へっ? でも今日はもうヒッキー帰っちゃったって言ってたよね?」

雪乃「別に直接会って聞く必要は無いでしょう。連絡先は知っているのだし、電話なりメールなり、手段は多数あるはずだわ」

結衣「あ、そっか。なんか忘れてたや」

雪乃「まあ、彼の場合は不通という可能性も十分あるけれど」

結衣「んー… それならまた明日にするけど、とりあえず今日! 聞いてみるよ!」

雪乃「ええ。ご武運を」

また昼か夜か深夜きます

乙です

乙ですー



由比ヶ浜宅


結衣「んーっと… まずヒッキー用事? おわったのかな?」

結衣「ま、とりあえずメールしてみよ」スッ スッ


『やっはろー! ヒッキー今だいじょーぶ??(・ω・)ノ』



10分後


結衣「返ってこないや。まだ終わってないっぽい?」




1時間後


結衣「まだかなー。てか、何の用事なんだろ」

結衣母「結衣ー! 晩ごはんはー?」

結衣「あ、今行くー!」




2時間後


結衣「ヒッキー…実は既読スルーだったり。メールだからわかんないけど」



結衣「ぅえーい! こーなったら電話するし!」ピッ


prrrrrrrrrrr

prrrrrrrrrrr


結衣(……出ないかな?)


結衣(うーん、やっぱまだ用事中なのかも。てか、出たとして何から話せばいいんだろ?)

結衣(デート……ヒッキーとデート…)


結衣(……/////)


ピッ


結衣(……なんかはずかしくて切っちゃった)





結衣(もう、何してんのあたし! ちゃんと誘いかた考えよ)

結衣(そーだなー…)


『ねーヒッキー、土曜日あたしとデートしない?』

『は? え、なにお前、新手の嫌がらせ?』


結衣(…ナシナシ! 急にデートとか言われても困るよね、あたしもそうだったし)



『やっはろー! ヒッキー、土曜日ひま?』

『悪い超忙しい。家事とかゲームとか自宅警備とか』


結衣(……外出たくないだけじゃん! ヒッキーのばか!)


結衣(むぐぐ、もっと遠まわしに聞かなきゃかな)


prrrrrrrrrrr


結衣「ひぇっ… 電話?」

結衣「えっ!? ひ、ヒッキーからだ!」

結衣(どどどどーしよう!? まだどうやって誘うか全然まとまってないのに… でもここで出ないのもあれだし…)


ピッ


結衣「も、もしもしヒッキー? あの、さっきの電話なんだけど」

結衣(出ちゃったー! もーこうなったら勢いでなんとかする!)


結衣「……」

結衣「あ、あれ? もしもし? 聞こえてる?」



女の声『あの、誰ですか? あなた』



結衣「…へっ?」

結衣(知らない女の人の声…… かけ間違い? いやいやいや、ヒッキーのケータイからかかって来てたし)

結衣「あの、これヒッキ…比企谷くんのケータイですよね?」

女の声『そうですけどー、はっちんは今いないんでー』

結衣「えっ? はっちん?」

女の声『そ。あ、はっちんは八幡ね』

結衣「は、ははははちまん!? ……えっ? ええっ?」

結衣「その、ど、どういうことですか!?」

女の声『ん? 今、アタシんちでシャワー浴びてるとこ』

結衣「!!?」

結衣(ヒッキーが女の人の家で…シャワー…!?)

女の声『で? はっちんのケータイチェックしてたら、なんか電話かかってきたんで、出てみたんですけどー。何か用ですか?』

結衣「あ…う…えーと……」


結衣(なに、これ… これって、そーゆーこと?)

結衣(この女の人はヒッキーの電話であたしにかけてきてて、この人の家でヒッキーは今シャワー浴びてて…… )

結衣(それってつまり、ヒッキーはこの女の人と……)



女の声『もしもーし?』

結衣「え、えーと…」

結衣(やば、なんて言えばいいのか全然わかんない…)


女の声『もしかしてあれですかー、はっちんのデートのお誘いですかー?』

結衣「っ!? なんでそれを…」

女の声『えっ?』

結衣「あ、いや…」

女の声『………』

結衣「………」

結衣「その、ごめんなさい…… あたし…知らなくて」


女の声『あの、本当にデートのお誘いなんですか!?』


結衣「……はい?」



女の声『だって今、結衣さん言いかけましたよね? 肯定しかけましたよね? お兄ちゃんのデートのお誘いだって!』

結衣「それはー…… って、結衣さん? お兄ちゃん!?」

女の声『はい! あの、だからさっき結衣さんがお兄ちゃんにメールとか電話してきてたのって、デートのお誘いってことでいいんですよね!?』

結衣「………」

結衣(この人、さっきと声変わってるし、この声聞いたことあると思ったら…)


結衣「あ、あのー」

女の声『はい?』

結衣「もしかして、もしかしなくてもだけど……」

いったい誰谷誰町さんなんだ…………?

仲町さんやな

恥ずかしながら騙されたわ



比企谷宅


小町「あ、申し遅れました。愚兄に代わって妹の小町がお送りしております!」ビシッ

結衣『やっぱり小町ちゃん!? な、なんなの、さっきのやつ!』

小町「あははー、お兄ちゃんに彼女いるみたいな感じにしたら結衣さんがどんな反応するかなって……やっちゃいました!』

結衣『もう! もうったらもう! ほんとにびっくりしたんだからね?」

小町「すみません、まさかこんなので騙し通せるなんて思わなくって」

結衣『あう……』


小町「それで、それで! 本当なんですよね、デートのお誘いって!?」

結衣『え、いやー…そのー』

小町「それならそうと最初から言ってくださいよー! 全然OKですよ! いつですか? 今日ですか?」

結衣『いやいや! えと、あ、明後日の土曜日とか…ヒッキー空いてそう…かな?』

小町「結衣さん、休日のお兄ちゃんに何か予定があったらきっと空から犬が降ってきますよ」

結衣『なにそれ嬉し…くない! こわいよ!?』




小町「まあとにかくお兄ちゃんは大丈夫なんで、明後日の土曜日、12時に駅前のカフェで待ち合わせしましょう!」

結衣『えっ!? いいの? 勝手に決めちゃって』

小町「いいんですいいんです! どうせゲームしてるか本読んでるかなんですから、外に連れ出してあげてくださいっ」

結衣『んー… でもやっぱヒッキーにちゃんと確認しないとダメじゃないかな』

小町「そのへんも含めて任せてください。 妹パワーで押し切っちゃいますんで!」

結衣『そう? えへ、頼もしいなぁ。ありがと! この頃ヒッキー早く帰っちゃってて、なかなか誘えなくて』

小町「あー、なるほど。お兄ちゃん、最近バイトばっかでしたからねー」

結衣『へー…… えっ?』


小町「なのに夜更かしして深夜アニメとか見てるもんですから、朝起きないったらないんですよ!」

結衣『ちょっ、小町ちゃん?』



結衣『バイトって… ヒッキー、バイトしてるの?』

小町「はい、なんか、金が入り用になったーとか言って。つい最近ですけどね」

小町「妹的には脱専業主夫志望の第一歩かなってポイント高かったんですけど… あれ? てっきり結衣さんや雪乃さんは知ってるものかと」

結衣『ううん、初めて聞いたよ? なんか用事あるから部活休む、とは言ってたんだけど』

小町「…あのゴミいちゃん、お二人に無断でそんなことしてただなんて。すみません、お風呂あがったらみっちりお説教しておくんで」

結衣『あはは、いいよいいよ。ゆきのんにもあたしから伝えとくし、そしたらたっぷりお説教…というか、いろいろひどいこと言われちゃうと思うし」

小町「雪乃さんの言動は鋭いですからねー。わっかりました、とにかく土曜日のデートの件は任されましたので!」

結衣『うんっ。よろしくね、小町ちゃん』

小町「はーい! それでは結衣さん、おやすみなさい!」

結衣『ありがとね。おやすみ!』


ピッ



ガチャ


八幡「ふー。さてさて風呂上がりのマッカンをば」

小町「あ、お兄ちゃんおかえり。小町のあとだからってお湯飲んだりしてないよね?」

八幡「ん、大丈夫だ。悪い味じゃあなかった」

小町「え、飲んだの? ちょっとそれはキモいの範疇を超えて別の類の何かだよ…」

八幡「冗談に決まってんだろ。お、コイツだけ妙にキンキンに冷えてやがるぜ。君に決めた」プシュ

小町「あ、そうだお兄ちゃんさー、結衣さんと雪乃さんにバイトしてること言ってなかったでしょ?」

八幡「……」ゴクゴク

小町「ダメだよ無断で部活休むなんて、小町的にポイント低いよ?」

八幡「待て小町。それ…ソースは?」

小町「結衣さん」

八幡「……は?」



小町「お兄ちゃん、バイト帰りにケータイ見なかったの? 結衣さんからメール来てたでしょ」

八幡「そういや音楽聴いてたし一回も画面開かなかったな…… え? それで?」

小町「今さっき結衣さんから電話きてて、なんか急ぎかなと思って小町が代わりにお話したんだよ」

八幡「その中で俺がバイトしてるってバラしたわけか…」

小町「バラす? って、お兄ちゃんひょっとしてバイトしてるの隠してたの?」

八幡「いや、まあそれはいい。どうせ今日で最後だしな」

小町「あ、そうなんだ…… お兄ちゃん、慰めてあげようか…?」

八幡「なんでクビになった体で聞いてくんだよ。ただ短期だっただけだから」

小町「なーんだ。あ、それからお兄ちゃん土曜日に結衣さんとデートすることになってるから」

八幡「ああ」


八幡「…あ?」



八幡「小町さんや、今なんて?」

小町「あさって、どようび、ゆいさん、でえと。オーケー?」

八幡「……」

八幡「あれだ、今時の女子は2人でデートとかよくあるらしいしな。いいんじゃね? 車と男に気をつけるのよ?」

小町「いや、お兄ちゃんのことだから」

八幡「……」

八幡「あれだ、千葉の兄妹は2人でデートとかよくあるらしいしな。よし小町、どこに行きたいんだ? お兄ちゃんがどこでも」

小町「通報するよ?」

小町「そうじゃなくってー、デートに行くのは、お に い ちゃ ん と 結 衣 さ ん!」

八幡「まじかよ…」



小町「とにかくそういうこと! お兄ちゃんに拒否権はないよ。拒否したらこれまでの小町ポイント全部失効して赤の他人からリスタートだから」

八幡「それはつまり、兄妹という枠を超えて小町と結婚カッコカリすることも可能と…!」

小町「ほんとに通報するよお兄ちゃん…」


小町「それで、土曜の正午、駅のカフェで待ち合わせになってるから! ぜーったい行かなきゃダメだよ?」

八幡「いや、んなお前勝手に… 大体それ由比ヶ浜は」


小町「お兄ちゃん… 小町のお願い、きいてくれないの…?」ウル

八幡「そんなわけないだろ。よしいっちょ気合い入れてデートプランでも練るか」キリッ

小町「当日の服装とか髪型とかはまかせて、お兄ちゃん!」

八幡「しまったぜ」



八幡(前倒しだがしゃーなしだな…… いや、どちらかといえばむしろ丁度いいのか)

八幡(…連絡入れとくか)



結衣宅



ポスッ


結衣「ふいーー…」


結衣(直接は話せなかったけど、できたんだ。デートの約束……ヒッキーと)


結衣「へ、えへ… えへへへへ…」


結衣「ってぇ! なにひとりでニヤニヤしてんだし! あたしキモい!」


結衣(よく考えるともう明後日なんだよね。ゆきのんはああ言ってたけど、ほんとにいいのかな? ノープランで)

結衣(あたしの行きたいとこかぁ… あたしもヒッキーも楽しめるとこがいいな)


結衣「あ、そだ! ゆきのんに報告…」

結衣(…は明日でいっか。ゆきのん寝るの早そうだし、遅くに電話したら迷惑かも)




結衣(服、なに着てこっかなぁ。けっこう暖かくなってしたし、夏先取りでロングスカート? はまだ早いよね。クローゼット見てみよ)


ガラッ


結衣(無難にワンピかなぁ。ヒッキーにあんま私服で会ったことないし、着慣れてるやつのほうがハズさないよね)

結衣(んーでも、いつもよりちょっとオトナっぽいので攻めるのもアリかも。なんたって、デ、デートだし!)

結衣(思い切って買ったけど結局着れてないベアトップとか? それか逆にキャミとガウチョで明るめにー、とか?)

結衣(それとも〜〜…)


結衣「うぅーー! 決めらんないよ! ヒッキーのばか!」

結衣「いいや、今日はもう寝よーっと」


パチン


結衣(おやすみ、ヒッキー)



結衣「…でゅふっ」


結衣「……はっ!」

結衣(もー! 変な声出ちゃったし)



金ヶ浜



結衣「……」ボー


教師「そんなわけで関係代名詞にthatが使えないってことを考えると、使えるのはwhoseかwhomどっちだ? 誰か当てるぞー」

結衣「……」ボー

教師「一番ボーっとしてるやつに当てるからな…… はい、由比ヶ浜」

結衣「……」ボー

教師「…由比ヶ浜。おーい、由比ヶ浜!」

結衣「へあっ! は、はいっ?」

教師「使えるのはどっちだ?」

結衣「えっ、ヒールかパンプス…?」

教師「……what?」

結衣「わああ! 間違えました! ごめんなさいー!」


優美子(今日の結衣、なんかアホに拍車がかかってるし)


教師「由比ヶ浜、お前だけ特別に宿題。章末問題の4と5。週明けの授業中に解説してもらうからよろしく」

結衣「そ、そんなぁー!」



結衣(ダメダメだー、土曜のことばっか考えて今日の授業ぜんぜん頭に入んない!)

結衣(それもこれもヒッキーのせいだし… なんつって)チラ


八幡「……」zzZ


結衣(…完全に寝てるし)


結衣(この頃ずっとバイトしてるんだよね…… なんで急に? お金が必要になったみたいなこと言ってたんだっけ)

結衣(ってか、そっか分かった! ヒッキーが最近眠そうな日が多いのって、学校帰ってからバイトしてるからなんだ!)

結衣(ゆきのんも原因知らなかったし、あたし達に内緒でってことなのかな)

結衣(すごい気になるけど…クラスの人にも知られたくないことなのかも? なら聞くのは放課後のほうがいいよね)


八幡「……」zzZ




キーンコーン


八幡「……」ガタッ


結衣「あっ」

結衣(ヒッキー、今日もバイトなのかな)


結衣「待って待って!」

八幡「ん? ああ、由比ヶ浜か」

結衣「ヒッキー、あのね?」

八幡「おう」

結衣(……あ)

結衣(やっぱ、教室じゃ聞かないほうがいいかな。でもヒッキーこのまま帰っちゃうかも)

八幡「お前、最近呼んでおいて黙るパターン多くね? もしやそれリア充の間で流行ってんの?」

結衣「ち、違うし! そうじゃなくて…」

八幡「……」




八幡「そういや、悪かったな昨日」

結衣「えっ?」

八幡「俺に何回か連絡してたじゃん? 携帯見てなくて気づかなかったっつーか」

結衣「あ、ううん全然! 小町ちゃんが代わりに話聞いてくれたし」

八幡「みたいだな。小町から聞いた」

結衣「そなの? よかった! 小町ちゃん、ちゃんと伝えて……」

結衣(って! こ、これってデートの話じゃん!!)

八幡「……」

結衣「……」

結衣(どーしよ、なんて言えば…)


八幡「じゃあ俺帰るわ」

結衣「へっ? あ……うん」


結衣(すごいあっさり… 小町ちゃん、明日のことヒッキーに伝えてくれたんだよね?)



八幡「あー、由比ヶ浜」


結衣「うん?」


八幡「その…あれだ。また明日な」


結衣「…!」


結衣「うんっ! また明日ね、ヒッキー!」



結衣「また明日……」


結衣(よかった。ヒッキーもちゃんとオッケーしてくれたんだ…えへへ)


結衣(そうだ! 部室に行ってゆきのんに伝えなきゃ!)


タッ


結衣(朝連絡すればよかったなぁ、心配してるかも。でもいろいろ考えてたら時間過ぎてちゃってたし)

結衣(…なんかゆきのんが恋しくなってきた! 待っててゆきのん!)




奉仕部前


結衣(着いたっ)

結衣「ゆきのーん! やっ…」

ガッ

結衣「あれ?」


結衣「鍵かかってる」



結衣「電気ついてないし、ゆきのんまだ来てないっぽい?」


〜〜♪


結衣「おっ?」

結衣「メール…ゆきのんだ」


『今日、奉仕部は休業とします。連絡が遅くなってごめんなさい』


結衣「ありゃ」

結衣(ゆきのんが急に休むなんて珍しいなぁ。なんか用事できたのかな)

結衣(明日のことちょっと相談したかったのに)


結衣(…まいっか、かーえろ)



結衣(優美子達はもう帰っちゃったよねー。いいもん、ひとりで帰るし)

結衣(そだ、ゆきのんに返事してなかった)

結衣(『りょーかい! U・x・U』っと)


結衣(あっ、ゆきのん犬苦手だったんだ… ごめーん!)



結衣(夜になったらゆきのんと電話したいなぁ。次返事きたら何時に帰るか聞いてみよっと)


結衣「……あれっ?」



八幡「…おう」


結衣「……おう」




八幡「もう帰ったんじゃなかったのか」

結衣「えっ?」

八幡「いや… なんでもない。どうしたんだ?」

結衣「いやいや、それこっちのセリフだし! ヒッキーこそどしたん? 忘れ物?」

八幡「あーまあ…そんなとこだ。読みかけの本をな」

結衣「ふーん。あ、授業中に読んでたやつ?」

八幡「それそれ。机に入れたままなんだわ」

結衣「てか、読もうとして寝てたやつだよね」

八幡「…なんで俺そんなとこまで見られてんの? 監視役なの? Gメン的なの?」

結衣「た、たまたまだし! 全然ヒッキーのほうなんて見てないし! 見たくもないし!」

八幡「おいそれ地味に傷つくんだけど…」

放課後の教室でアヴァンチュール
いいゾ~これ



結衣「それより、ほら! 急がないと遅れちゃうよ?」

八幡「あ?」

結衣「んっ? バイトでしょ?」

八幡「……ああ、小町から聞いたんだっけか」

結衣「あ、うん。詳しくは聞いてないんだけど、最近始めたって」

結衣「それでこの頃ヒッキーいっつも早く帰ってるんだよね?」

八幡「まあ、な」

結衣「それならそうと言ってくれればよかったのに!」

結衣「てかダメじゃん、あたしはいいけど部長のゆきのんにも言ってないんでしょ?」

八幡「あー……」

結衣「…?」

八幡「まあ、あれだな、うん。そんな感じ」

結衣「えっ… ゆ、ゆきのんは知ってるの?」

八幡「いや、だからそんな感じだって」

結衣「そんな感じ? ってどんな感じだし!」

八幡「悪い、バイトあるし急いで取りに行くわ。廊下は走れないしな。廊下走るな歩けよ乙女ってやつだ」

結衣「はっ? え、ちょ、ヒッキー!?」




結衣(ヒッキーがバイトしてるの、あたしには言わないで、ゆきのんは知ってる…?)

結衣(でもゆきのんはそんなこと一言も… それに、早く帰るのも、ヒッキーが眠そうにしてるのも分からないって言ってたし)


結衣「気のせい…かも?」


〜〜♪


結衣「!」

結衣「ゆきのんだ」


『もしかすると、部室まで行ってしまったのではないかしら? ごめんなさい。朝に送ったものが送信エラーとなっていることに気がつかなかったの』


結衣(あはは、ゆきのんたまにドジっ子だもんなぁー。『全然いいよ!』っと)

結衣(あ、あとそれから… 『ゆきのん今日いつ帰ってる? 電話で夜ちょっとお話したいんだけど(=゚ω゚)ノ』)

ピッ

結衣「よし、これでおっけー!」



トコトコ


結衣(ららぽにアクセサリーとかコスメとか見に行こっかな? でも今更な感じもするし)

結衣(いよいよ明日…… うー、楽しみだけどなんか不安になってきた)

結衣(ヒッキー今日もバイトっぽいし、ほんとは休みたかったりして)

結衣(てかヒッキー、わざわざ本取りに戻るとか、どうせ授業中に読むんだし月曜でいいじゃん!)

結衣(そんな続き気になるのかな? おもしろいんなら今度見せて…)



結衣「あ、やば。英語の宿題!」


結衣(すっかり忘れてたー…… 教科書置いてきちゃったし)



結衣「…戻ろ」


クルッ


結衣(はぁー、てかなんであたしだけ宿題なわけ? そりゃ全然授業と関係ないこと考えてたけどさ)

結衣(そんなのみんな同じじゃん。先生も他の人あてればよかったのに。戸部とか、戸部とか戸部とか)


結衣(ってだめだめ! これからがんばって成績あげて、ちゃんと大学行くんだもん、しっかりしなきゃ!)

結衣(がんばったらあたしも……行けるのかな、ヒッキーやゆきのんと同じとこ)



結衣(あれ、これもしかして、タイミング的に戻ってきたヒッキーとまたはち合わせたりして)

結衣(そしたらさっきと真逆なパターンになっちゃうや。あは、なんか変な感じ!)



校門前



結衣「……」ドキドキ



結衣(…なんて、そんなことないか)

結衣(ちょっと意識しすぎかも、あたし)


〜〜♪


結衣「あっ」


『何時かというのは正確には分からないけれど、そこまで遅くはならないと思うわ。電話で話すなら21時頃はどうかしら?』


結衣(やった!)

結衣(えーと、『かしこまりー! また後でね ▽・x・▽』っと)



結衣(ふふん。今日会えなかったぶんいっぱい喋っちゃうもんね)

結衣(…ってぇ! また犬の顔文字で送っちゃった!?)ガビーン

結衣(わ、わざとじゃないし! かわいいからつい…でも気をつけないとそのうちゆきのんに嫌われちゃう)


結衣(あっ!)



八幡「……」



結衣(昇降口にいるの、ヒッキー…かな? うん、ヒッキーっぽい!)

結衣(やっぱタイミング合っちゃった。会ったときどんな顔するんだろ?)

結衣(でも変なの、急いでるって言ってたのに。なんか、あそこで誰か待ってるー…みたい……な…)




結衣「…………えっ」






雪乃「待たせたかしら」

八幡「いや、別に」

うわぁ・・・

おい

これは……

oh…



結衣(ゆきのん……!? 先に帰ったんじゃ…)

結衣(それに、どうみても待ち合わせ…だよね? どうしてヒッキーと?)




八幡「せいぜい5分くらいだな。まあ俺もミスったしお互い様だろ」

雪乃「確かに、馬鹿正直に正面から堂々戻ってきたのは頂けないわね。今日は眼だけでなく頭まで死んでいるのかしら」

八幡「それフォローしてやった奴に返すべき言葉だと思う?」

雪乃「それはさて置き、勘繰られてはいないのよね?」

八幡「さて置くなよ。まあ…大丈夫だろ。なんせアホだし、鈍感だし」




結衣(なんか話してるっぽいけど… てかほんとに2人で帰る感じのフインキだし)

結衣(…! やば、こっちくる!)


ササッ



八幡「っつーか、駅で待ち合わせでよかったろ」

雪乃「全くだわ。わざわざ学校から向かうなんてリスクしかないもの」

八幡「速報。雪ノ下氏、認知症の疑い」

雪乃「軽々しく疾患名を用いて人を揶揄するのは避けたほうが良いと思うのだけれど。比企谷リポーターさん?」

八幡「だって学校で待ち合わせるっつったのお前じゃん」

雪乃「…さて? 記憶にございません」

八幡「速報。雪ノ下氏…っいでで!」ギュ〜

雪乃「……」

八幡「抓って黙らせるとか… いつもの達者な論理展開はどうした? 暴力に頼るなんて下衆の極みだぜ」

雪乃「かつてカノン氏は言ったわ、『圧倒的な暴力は論理に勝る』と」

八幡「知らねぇよ誰だよ…」




結衣(…………)コソ



結衣(思わず隠れちゃった…)

結衣(なんかゆきのん楽しそう……てか、ゆきのんからのボディタッチなんて久々に見た気がする)


結衣(………)

結衣(た、たまたまかも! ほら、ゆきのんも忘れ物したとか?)

結衣(あるある、偶然ってけっこう重なることあるよね! それかあくびみたいに移ったとか!)


結衣(………)



結衣(……ちょっとだけ、ちょっとだけ付いてってみよう)



八幡「まあ待ってる間に駅でエンカウントってのもあるしな、その方が言い訳しにくいぶん学校でよかったのか」

雪乃「当然その可能性を考慮してのことよ。貴方が駅前で人待ちだなんて妹さん以外あり得ないのだから、すぐバレてしまいそうだもの」

八幡「そういう辛辣な事実を突きつけるのやめてくれませんかねぇ…」





結衣(駅まで来たけど… どうするんだろ)




ガタッ ピンポーン

八幡「げっ、Suicaチャージしてなかった」

雪乃「恥ずかしい人… 待ってるから早くしなさい。あと2分で下り線が来てしまうわ」




結衣(家までは路線違うはずなのに… 2人でどっか行くんだ)


結衣(いやいや、ヒッキーもゆきのんもまっすぐ帰らないんだし! た、たまたま、たまたま!)




ガタン ゴトン


八幡「……」ドクショ

雪乃「すぐ乗り換えもあるというのに本を読むのね」

八幡「続き気になってな。読んでみたら意外と面白いんだわ、これ」

雪乃「…ふぅん」




結衣(………)

結衣(完全にストーカーになっちゃった…)





雪乃「忠告しておくと、この区間は揺れが多いから立ちながら読むのは危険よ」

八幡「大丈夫だ問題ない。つり革は俺が6人ぶら下がっても切れない設計らしい」

雪乃「いつぞやのトリビアの種ね」

八幡「人の心配するよか、運動音痴の雪ノ下さんこそ気をつけたほうがいいんじゃないっすかねぇ?」

雪乃「なっ、私は運動音痴ではないわ。ただ人より若干エネルギーの貯蔵量が少ないだけ」

雪乃「ほら、私の平衡感覚をもってすれば別につり革に頼らなくとも…」パッ

ガタンッ!!

雪乃「きゃっ!」ガシッ

八幡「うおっ!」



雪乃「……」ギュー

八幡「……」


八幡「…大丈夫か?」

雪乃「っ!」パッ

雪乃「え、ええ。その……助かったわ」




結衣(……あわ、あわわ)


あわがはまさん

ガチなのか杞憂で済むのか……、できれば後者であってほしいけどね。



雪乃「…こほん。ところで控えは持ってきたのよね?」

八幡「財布に入ってる。さっきチャージしたときにも見たから確実に」

雪乃「ならいいわ」




千葉駅


結衣(結局千葉駅で降りたけど… 2人ともこの辺に用あるんだ)

結衣(あ、あははー。ヒッキー何のバイトしてるんだろ。ゆきのんも、何の用事なんだろ)






店員「比企谷様ですね。ご用意できております。確認していただきますので奥の方へどうぞー!」

八幡「じゃあ、よろしく」

雪乃「何を言っているの? 貴方も見るのよ」

八幡「は? お前だけ確認すれば十分だろ」

雪乃「……貴方、本気でそれで良いと思ってるの?」ギロ

八幡「うっ…わ、わかったから睨むな。死ぬ」





結衣(あれは、ペットショップ?)

結衣(あっ… あそこ、前にヒッキーと2人で来たことあるお店だ)


結衣(そういえば… 珍しい猫もいっぱいでゆきのん喜びそうって……あたし言ったかも)



駅周辺



八幡「しかしまあ、この辺もだいぶ新しい店増えたな」

雪乃「そうね。人口が増えてきている影響もあるのでしょうけど」

八幡「……こうやって、人も街も移ろい行くんだろうな」

雪乃「たかだか高校生が何を語っているのかしら」

八幡「学生だろうが何だろうが、17年以上同じ所に住んでりゃベテランも同然だろ。そんくらい言える立場だっつの」

雪乃「その17年のうち、千葉駅界隈に存在したと言える時間は一体何%を占めるのでしょうね」

八幡「細けぇ奴だな… 地元愛があれば時間なんざ関係ねーから」

雪乃「……」コスコス

八幡「なに? お前ガムでも踏んだの?」

雪乃「いいえ。比企谷君なんかに愛される千葉がかわいそうで撫でてあげているの」

八幡「斬新すぎて何も言えねぇ……」




結衣(…………)トコトコ



八幡「しかし、もう夕方だってのに今日は暑い」

雪乃「予報で7月上旬並の気候と言っていたわ。梅雨時期で湿度も高いし、蒸し暑く感じるのも頷けるわね」

八幡「…お? 誂えたかのように屋台でアイス売ってるな。せっかくだし食う?」

雪乃「……」

雪乃「私は結構よ」

八幡「そうか。なら俺もいいわ」

雪乃「ただ、貴方がどうしても食べたいと言うなら仕方がないわ。私は金輪際必要ないのだけれど貴方がどうしてもと言うなら」

八幡「食いたいならそう言え!」



雪乃「〜〜♪」

八幡「お前、けっこう甘いもの好きな」

雪乃「ええ。ちなみに甘味を好む女性を前に自分のそれを献上しない男、並びに目が腐った男は大嫌いよ」

八幡「俺のを分けろって言うんですね、嫌でも分かります」

雪乃「べ、別に貴方と半分こなんかしたくないんだからね」

八幡「その台詞使うならせめて抑揚をつけろ。っつーか、え? 半分も奪う予定あんの?」






結衣(いいなぁ、おいしそう)

結衣(それにゆきのん、ヒッキーの食べてるアイス貰ってる…)



とある稲荷神社



雪乃「……」ゼェ ゼェ

八幡「いや、だから… 無理すんなって」

雪乃「だ、大丈夫と、言っている、でしょう…」

八幡「どうみても大丈夫じゃねえよ…」

雪乃「これしきの階段、私にかかれば、ノーダメージで…」ゼェ ゼェ

八幡「いや、普通の人は階段登るのにHPそこまで削らん」






結衣(なんか、神社まで来たし……)


結衣(………)

結衣(今日、お祭りやってたんだ…)



八幡「にしても、ここって常にこんな人多いのかよ… なに? パワースポット特集でもされたの? この神社」

雪乃「見て分からない? お祭りよ。そういえば家の近くに告知があったわ。今日、この辺りの神社でお祭りがあるとか」

八幡「うげぇ、知ってたら今日来なかったっての」

雪乃「今私のスマートフォンで調べてみたところ、金土日の三日間開催されているようね」

八幡「雪ノ下、今さら現代っ子アピールは寒いんじゃねぇかな」

雪乃「そんなつもりは毛頭ないのだけれど… っと、いけない。由比ヶ浜さんに返信し忘れていたわ」

八幡「あー… そういや俺も、由比ヶ浜に一応明日のこと確認しとくか」

雪乃「というか、用があるのは祭事ではないでしょう。ほら、あっちよ」

八幡「へーへー」






結衣(ヒッキーとゆきのん、登りきっちゃった)



結衣(………)


結衣(そっか、すごいなー。ヒッキー、神社でお仕事してるのかな)



結衣(巫女さんのお手伝いとかはよくあると思ってたけど、男子でも働けるんだぁ)

結衣(荷物整理とか、力仕事もありそうだもんねー)


結衣(ゆきのんも、たまたま用事がこの辺で、たまたまヒッキーと行く先が重なってたんだなぁ)

結衣(うーん、すごいや。すごい偶然。ゆきのんなら、こんな確率だって分かるのかな)


結衣(ゆきのん、すごいからなぁ… ほんとに計算できちゃったりして)

結衣(ヒッキーも…いつも大変だね。何してるかわかんないけど、今日もがんばってね)




結衣(……なんて)






結衣「………そんなわけ………ないじゃん……!」




移動時間とかにちょいちょい投下してるのでキリ悪いところで切れたりするかも

あとこのあと頭の悪いモブがオリキャラよろしく登場します
注意事項として追加で…

まぁ二人で誕生日のサプライズ狙ってたのが裏目に出ただけだろ

そうだよね……?

そーゆーのは言わないのが約束だろ

わかった、モブキャラ応援するよ!

このSSの時系列いつ頃なんだろって最初から見たら・・・

とりあえず乙でした




結衣「っ…………」



ヘタッ



結衣(わかってた…… 途中から…わかってた……!)


結衣(ヒッキーが今日はバイトじゃないんだってこと…… ゆきのんの用事が、ヒッキーと出かけることだったってこと……)



結衣「……うっ………あぅっ……」ポロ ポロ



結衣(気づきたくなかった… 気づかないフリ…してた……)





結衣(これが……… 2人の『デート』なんだってこと……!)






結衣「うぅっ……うぁああああああぁぁん……!!」



八幡「っ!」バッ


雪乃「な、なに?」

八幡「なんか今一瞬、由比ヶ浜の声がしたような……」

雪乃「…私には聞こえなかったわ」

八幡「そうか。いや、悪い。気のせいだ」

八幡(…まさかな)

雪乃「不審な挙動は慎みなさい。バチが当たるわよ」

八幡「あ? そんなんで逐一怒ってたら神様やってらんねぇっつの」

雪乃「そうじゃなくて、祭囃子の太鼓のバチがここから台との距離と角度および奏者の腕の振りから推定して貴方の顔面に直撃するという予言よ」

八幡「なにそれ怖い… しかも予言かよ」

雪乃「それで、比企谷君はどれにするの?」

八幡「あー、なんか違うのかこれ。ぶっちゃけ似たり寄ったりでどれでもいい気が…」

雪乃「……貴方のその残念な態度を見ていると、この間の発言はまやかしだったのかと疑いたくなるのだけれど」



結衣「…っ……ぐすっ…」



結衣(ばか…… ヒッキーも…ゆきのんも……ばかばかばか)


結衣(ゆきのん、ほんとは知ってたんだ… ヒッキーがバイトしてるってこと)

結衣(もしかしたらそのバイトも……全部ゆきのんのため…?)

結衣(そうだよね… 付き合ったら、遊びに行くお金とか記念日の贈り物とか、いろいろかかるだろうし)


結衣(それに、もしかするとヒッキーはゆきのんの相手に相応しくなろうとしてるのかも…… 社会勉強だもんね、働くのって)

結衣(働かない将来を考えてたヒッキーだけど、ゆきのんと付き合うってなって……考え方とかも変わったりしたのかな)




結衣(……なんでだろ…なんで教えてくれなかったんだろ)


結衣(………)


結衣(……もしかして…)


結衣(この前あたしが……『3人で同じ大学に行けたら』なんて………願ったから……?)




結衣(………)


結衣(そっか……そうだよ……)


結衣(ばかなのは…あたしだ)



結衣(3人で一緒っていうのがうまくいくのは… ただみんなが試験に受かればいいってことじゃない)

結衣(3人の関係が壊れないのは、3人が3人のままでいるから……)

結衣(そこに2人だけの特別な関係がもし入ったら、どうやっても後の1人はそれまで通りにはいられない)

結衣(一緒にはいられるかもしれないけど… どうやったって何かが大きく変わっちゃう)


結衣(ヒッキーもゆきのんも、優しいから… 特にゆきのんはあたしの気持ち…知ってたから……だから……)




結衣(でも……それはほんとに優しさ…なのかな)


結衣(秘密にしたら……あたしバカだし…全然気づかないまま過ごせるかもしれない)

結衣(けど、いつかはぜったい気づいちゃうんだよ…?)

結衣(優しさって言うなら……そのときのあたしの気持ちも……考えてよ)


結衣(………)




結衣(違う……!)



結衣(きっと、ヒッキーだってゆきのんだって…迷ってたんだ……)

結衣(2人が付き合ってるってこと……打ち明けてしまおうか、すごい悩んでたんだ…)


結衣(それなのにあたしが……あたしが…あんなこと言ったから……)

結衣(3人でいたいって気持ちに…2人が気づいてくれたから……)


結衣(それなのに…そんなこと思ってる…あたしなのに)


結衣(ヒッキーを好きだって…… ヒッキーと付き合いたいって……!)

結衣(……最低だ……あたし…すっごい自分勝手だ)



結衣(そんなあたしが……2人のこと責めるだなんて……)



結衣(…………)





結衣(だけど……気づいたけど……)


結衣(…あたしがダメなのは……わかったけど……)



〜〜♪

〜〜♪


結衣(……メール…)





『返事が遅れてごめんなさい。
21時頃と言ったけれど、実際に帰宅するのはもっと早いと思うから、帰る頃に教えるわ。
電話というのはきっと明日のことなのでしょう?
彼のことはともかく、貴女のことは本当に応援しているから。親友としてね。
では、また連絡します。』






結衣(ゆきのん………)






『チッス。
明日の件、悪いな。また小町の企みかなんかか知らんけど、無理しなくていいから。下手すれば俺みたいなぼっちとあらぬ噂が立つかもしれねぇし。
とりあえず、集合は12時に駅前のカフェだっけか。
もうバイト休憩終わるから返せないけど、なんか変更あったら連絡くれ。そんじゃな。』






結衣(ヒッキー………)



結衣(……………)




結衣(……………)








結衣「………ひどいよ…」











『ウソつき』





下見とかプレゼント選びとかベタな展開じゃないよな
期待してるよ

そりゃおまえアイスわけっことかしてんだから並みの関係じゃないだろうよ

まだ焦るな
モブなオリキャラが登場するまで静かに待つんだ




結衣「………………」ズズッ



結衣(もう……帰ろっかな…)



結衣(ずっとここに座ってても意味ないし… ヒッキーとゆきのんもそのうち戻ってきちゃうだろうし…)



結衣(はぁ………)




トントン



結衣「…?」



A「どーしたのー? こんなとこで寝てんの?」

B「うっわ、このコめっちゃカワイイじゃん!」


結衣「っ!?」



A「ねぇキミ、もしかして1人?」

B「俺らと遊ぼーよ! お祭り、何でも買ったげるよー?」


結衣「ひっ… いえ、あ、あの…」


結衣(ナンパ…!? しかも2人… 大学生かな… なんか怖い…!)



A「うわ、しかも……ロリ巨乳じゃん! めっちゃタイプなんですけどー(・・)!」

B「バカ、声でけぇよ。引かれんだろ」

A「わりーわりー! でもマジでやべぇよ、アガるわこのコ! お持ち帰りしてぇー!」


結衣「!!」ビクッ




結衣「えっと、だ、大丈夫です! そーゆーのは…」


A「大丈夫〜? いま、大丈夫って言ったべ?」


結衣「へっ? 」


A「大丈夫、っちゅーことは、オッケー! ってことしょ?」

B「ヒュー♪ さっすがイマドキの女子高生はノリいいねぇ〜」


結衣「っ!?」

結衣「ち、違くて! 大丈夫っていうのは、ほんと、大丈夫ですってことで…」


A「はーん? 何が違うの? 大丈夫っつったらノープロブレムしょ? つまりはオッケーしょ? ニホンゴむずかしーよね、キミ国語苦手なん?」


結衣「あぅ……」




結衣(うそでしょ… 大丈夫って言ったらフツー断ってるって思わない!?)

結衣(ちゃんと断らなきゃ。 でも『嫌です』なんてはっきりとは… てか、逆に喜びそうな気も…)


A「どうしたの? 黙っちゃってー。大丈夫! 怖くないよ! …あ、使っちった。ダ イ ジョ ウ ブ !」

B「もうさ、いいじゃん。楽しく遊ぼうってだけだぜ?」


結衣「だ、だからその…!」


A「ほーら、行くよん!」


ガシッ


結衣「わっ…!」



結衣「や、やめてくださいっ!!」ブンッ


バシッ!


結衣(痛っ! 今なんかに当たって…)



A「………………」



結衣「………あ」


ベタでもいいから結衣が笑顔のハッピーエンド頼むぜー



A「……ってぇーなぁー」


結衣「!!」

結衣「あ、の… す、すいません! 叩くつもりじゃ……」


A「っべーーわ。鼻キタわ、鼻。くっそいてぇ」

B「あーあ。暴力はダメだよ? 暴力は。学校で習わなかったかな?」


結衣「す、すいませんでしたっ!」

結衣「でもほんとに、わざとじゃなくて…」


A「あ"あ"!!!?」


結衣「きゃあっ!!」



A「暴力にかわりねぇだろーがよ。あ?」


結衣「あ……あ………」ガタガタ


B「おいやめろって、泣きそうじゃねーか」

A「っせぇな。もうキレたわ。コイツ持ち帰ってヤんねぇと無理だわ、収まんねぇわ」

B「あー… そうなっちゃいます?」


結衣「……!……!」パクパク

結衣(だ、だめだ……怖くて声…出ない……)ポロ ポロ


B「ほらー! 泣いちゃったじゃんよ!」

A「知るか。泣けるだけマシだろうよ、今のうちに泣かせとけや」


結衣(で、でも周りの…人……けっこう見てるし…… 誰か助けに……)


B「……まあとにかくさ、早いとこ『家に帰して』あげよーぜ」


結衣(……えっ?)


B「なー? 『足にケガした』んだもんなー? 俺たちが『家まで送って』ってあげるからなー?」ニヤ


結衣(ちょ、なにこの人いきなり…… あたし手は痛いけど足なんか…)


結衣(……!)ハッ


結衣(そ、そんなっ!? 周りの人……さっきまで見てた人も……素通りして……!?)



B「……」


B「わかる? 結局人間なんてそんなモンなんだわ」


結衣(えっ…)


B「去ってった奴ら、見たろ? アイツらは俺の嘘に騙されたと思う? ……いやいや、違うね」

結衣「…?」

結衣(ど、どーゆーこと…?)


B「アイツらは、俺の『嘘』っつー『理由』にすがって、逃げたにすぎないのよ」



B「どうみても、さっきのAがやってたのは恐喝。んなもん通りすがりの奴にだって分かる」

B「だが、周りの奴らは誰も止めなかった」

B「キミ、そいつらがどんな心境だと思う? 『絡まれてる女の子を助けたい!』だと思う?」


結衣(………)


B「違うね。ぶっちゃけた話、過ぎ去る奴らは『関わりたくない』、立ち止まった奴らは『見つけてしまった』って思ってるのがフツーなんだわ」


結衣(…!? うそ、そんなこと…)


A「オメェあれだわ、心理学専攻感出しまくるのうぜーから早くしろよ」

B「いやこれ心理学ほぼ関係ねぇし。まあ待てって」



B「そいつらはキミを助ける気なんてサラサラねぇ。助けることに憧れ、助けたいと思ったところで、『巻き込まれたくない』っつー保身ちゃんで上書きされちゃうモンなんよね」

B「だから俺はキミが足をケガしてる、俺らがキミを送ってあげる、なんて嘘をついたワケ。さて…どーなったでしょう?」


結衣(っ…… そんな嘘、騙されるわけない… でも実際、周りにいた人はみんないなくなっちゃったし…)


B「答えね。奴らはそれを聞いてこう考えた」

B「『なんだ、それなら連れて行こうとしているのも無理はない。だから自分は犯行現場なんて見ていない。放っておこう』ってね」


結衣(…!!)


B「つまり俺はまんまと嘘で奴らを騙したわけじゃあない。早い話、奴らが自ら望んで俺の嘘に騙された、っつーこと」

B「最初に言ったけどまあ、結局は俺の『嘘』を『理由』にして、関わりたくないこの場から『逃げた』ってこった」


結衣(相手の嘘を…理由に……)

結衣(そん…な……)



A「もーーいいーー? もーいいしょ? 早くこの女ぶちヤりてぇんだけどぉお?」


結衣「っ!!」ビクッ


B「お前さー、どんだけ根にもってるん? まあ一旦昂ぶったら収まんないってくらい知ってるけどさ」


B「とりあえずクルマ出すから。あっち連れてこーぜ、ここはそろそろ危なくなる」

A「はい待ってましたー。行くわー、ワタシすぐ行くわ」

A「オラ立てよ!!」

グイッ

結衣「あぅっ…!」


B「胸ぐら掴むとかないわー、もうちょいレディを丁重に扱えや」

A「うんそれ無理。つーかさ、まじで鼻っていてーんだわ? わかる? ベンケーよベンケー」

B「弁慶の泣きどころは鼻骨じゃねぇよ」



結衣(……さっきの言葉が頭から離れない)


結衣(今回のことだって… あたしが悪いんだって、せっかく気づいたはずなのに)


A「あー鼻血出そうだったわー。つーかこの桃見てても鼻血出そうだわーあひゃひゃひゃー!」

B「いいから早く連れてけよ」


結衣(なのに、最後になって…… 自分の辛い気持ちに…なんとか理由を付けたくて……)


グニッ

結衣「んがっ…!」


A「ほら、鼻。わかるしょ? これ殴られたら痛いしょ?」

B「おい…」

A「で? 僕チンになにか言うことは? まさかさっきので済ませたクチってか?」


結衣「…す、すいばぜん…でした…」


A「えーっ!? なにー!? きーこーえーなーーーい!」


結衣「すいば…せん……! すいばぜん……でした…!」



結衣(自分の痛みから逃げようとした……)

結衣(2人の嘘を……理由にして……!)



A「あのさー、すいません? それ謝ってるー?」


結衣「ぅえ……?」


A「すいません、ねぇ。すいませんすいません。って、何を吸わない系? タバコー? そりゃダメしょ、高校生が吸っちゃあ」

A「さっきもそーだったけど? きみニホンゴ下手だべ? アーユーニッポンジン? そんなんで ダ イ ジョ ウ ブ ?」


結衣(そ、そっか… すいませんって… 間違ってるんだ)

結衣(ヒッキーとかゆきのんみたいに普段からちゃんとした言葉遣いしてないから… こんなときまで……)


A「おじょーちゃんが吸ってイイのはー、これしょ?」カチャ

B「っ…おい馬鹿やめ…」


ボロン


結衣(…!!?)



B「くそ… んで家まで待てねーんかな」


結衣「あ……ぅ……」

結衣(こ、これっ…て…)クラッ



結衣(ごめん…ヒッキー。ごめん…ゆきのん)


結衣(何がごめんなのかも…もうよくわかんないけど…… あたしもう…ダメっぽい…)


結衣(今日……いろいろ失っちゃうかも)



A「んー? 見慣れてるんじゃないのかなーん? こんなイーカラダ、学校の男がほっとくわけないしょ?」



A「お前100パービッチしょ? 顔も体も全部ビッチだもんなー」


結衣(ビッチじゃないし…って、いつも言ってたけど…… ヒッキー、ほんとにあたし…経験なかったんだよ?)


A「あ、もしかしてアレ? サイズにビビっちゃったべ? やーよく言われんのよ、おっきい!って!」


結衣(でもそれも…なくなっちゃうや……)


結衣(イヤだなぁ……初めてはヒッキーに…貰ってほしかったなぁ……)


B「おい! 先に車のれよ、ここはあぶねーっつったろ」

A「はー? だいじょーぶしょ別に。ちっとだけ! ちっとだけだから!」

B「かー、これだからお前は…」




ドサッ


A「オラこっち向けよ」


結衣「……」


結衣(ごめんね2人とも…… ウソつき、なんて言って…)


A「はーい、お口あーんしましょうねぇー? 痛くないからねぇー?」クイッ


結衣「ぁがっ……」


結衣(………)



結衣(ばいばい………あたし………)











「待ちなさい」




B「……!」

A 「……んー?」



結衣(……えっ…?)



「白昼堂々、何をしているかと思えば…」



A「んだテメェ」

B「チッ…」


結衣(この…声は…)



「そういう生殖行為紛いの野蛮な行動を往来で成し得るなんて、一体何処のジャングルから迷い込んだ呆けザルなのかしら」



A「……あ?」


結衣(この…毒舌は………!)







雪乃「あら、ごきげんよう由比ヶ浜さん。鳩が豆鉄砲ごと飲み込んだような顔をしているけれど、ちゃんと吐き出す手段は持ち合わせているのよね?」







結衣「…………ゆきのん…っ!!」

頭よくないから頭良いやつのセリフも頭悪いやつのセリフも難しい

量的にはこのへんで折り返し
長くなってほんとすみません

期待するよ

ちなみに予想を裏切る展開とかおめーの席くらいねーから

わ、わざとわかりやすく書いてるんだからねっ(冷や汗)

キタ━(゚∀゚)━!

薄い本ではよく二人まとめてやられちゃうよね…(ここで見たいとは言ってない)

期待してます



結衣「ど、どうして… なんで…?」


雪乃「どうして、はこちらが聞きたいのだけれど」


A「え? なに? むっちゃめんこいコ第二弾?」

B「あーあ…知り合いいんのかよ」


雪乃「……今はそれを尋ねている場合ではなさそうだから、後で聞かせてもらうわ」



雪乃「さて、そこの髪型が残念なキャピタルAのようなお猿さん?」

A「はぁー? 誰が残念な髪型だコラ」

雪乃「あら、よかった。サルという自覚はあるようね」

A「……テメェ」



雪乃「まずはそのだらしなく垂れ下がっている汚物をしまって、汚らわしい手を離しなさい。清廉潔白な私の友人にゴミ溜めの臭いが付着してしまう前に」

A「……なんっつー口の悪い女。先にテメェのクチにぶち込んじゃおーかな?」

結衣「っ! だ、ダメ! それは絶対ダメー!!」


雪乃「別に、構わないわ」

結衣「ゆ、ゆきのん!?」

A「うほっ、それでコイツが解放されるならーってやつ? 」

A「アッツいねー! クールに見せかけて実はガッツ? いいよいいよ、そーゆーのもタイプよ?」


雪乃「ただ、私は口に入れたものはよく噛むよう教育されてきたのよね。よって反射的に噛みちぎってしまう可能性がなきにしもあらずなのだけれど」

結衣「ひぃっ!」

A「このアマ……」

B(恐ろしいこと言いやがんぜ)



A「……まーいいわ、ずっと出しとくのもさみぃしな」ハキハキ

B(やっとしまったか)


A「んで? どぉーしちゃうわけ? そこのマナイタのおじょーちゃんは、このモモのおじょーちゃんを助けたげるぅーみたいな?」

雪乃「……」ピキ

結衣「も、桃? まな板…?」

A「あ、ちなみに俺はだんぜんモモ派だからー! あっちゃー! ごめんねー、マナイタちゃんもかわいいけど、なんつーか食後でいーわ! マジごめん!」

雪乃「そう。よかったわ、彼女には悪いけれど、イチモツだけでなく存在そのものが汚物同然の人に近寄るのは華の女子高生からすれば絶対的に拒否したいもの」

A「……」

雪乃「あ、ごめんなさいヒトではなかったわね。もう面倒だから…そうね、汚物さんで良いかしら?」



A「テメェ、礼儀ってモン知らねーべ? まずセンパイには敬語使えや」

雪乃「…? あの、今の短いフレーズの中に不可解な点が数多くあるのだけれど」

A「あ?」


雪乃「まずはアナタが礼儀という単語を知っていることに驚いたわ。言動や振る舞いどれを取っても礼儀作法の片鱗すら感じさせないものだから、てっきり礼儀というものの存在を認知していないのかと」


雪乃「次にセンパイ。先輩というのはある辞書で引くと『同じ学校や勤務先に先に入った人』とあるわ」

雪乃「アナタと私は面識がなく、学歴を明かした覚えもない。アナタが私の制服を見て判断することは可能でも、私がアナタから学歴を聞かされていない以上先輩というものを何かの引き合いに出すのは順序立った手法とは言えないわ」

雪乃「また広義には『年齢や地位などが上の人』のような意味もあるけれど、見た目で年齢が上だからといって先程同様にアナタの個人情報を知る由もないし、地位はそもそも比較対象が存在しないことから却下」


雪乃「最後に敬語だけれど、敬語というのは私の中では立場的に上の者に対して用いるもの、あるいは面識のない者・不特定多数を対象としたやり取りを円満に進行するために必要なものとして理解しているの」

雪乃「前項と同じく前者に関しては情報が得られないし、後者についてはアナタとのやり取りがまともに進行できるという考えはとうの昔に棄てているから全く不要というものだわ」

雪乃「そんなことはわざわざ説明するまでもなく、いくらアナタの脳みそが消費期限を20年ほど前に過ぎているからといってさすがに理解できていると思っていたのだけれど……過大評価だったのかもしれないわね」


雪乃「嗚呼困ったわ、このままでは会話はおろか碌にコミュニケーションも出来ない可能性があるもの。これが世に言う『コミュ障』という類の人間なのかしら」


雪乃「あら、私としたことが。ごめんなさい人間と間違えてしまったわ、コミュ障汚物さん」


A「………」



結衣(ゆきのんやばすぎ…)

B(この女、すげぇないろんな意味で)


A「クソが……ベラベラほざきやがって。喋りゃあ国語ができるってモンじゃねえんだよ、あ? 俺は文学部だぞ」

雪乃「…? 本当に理解に苦しむ発言しかしてくれないのね。アナタはいつどこで誰と何の国語の点数を競っているつもりなのかしら」

雪乃「それと文学部だから何? 『俺は東大生だぞ』と言って地下鉄で暴力事件を引き起こした青年と同じ心境であるのなら、実におめでたい頭であるというのが趣がある寸評と言えそうなものだけれど」

A「………」


A「もーいいわ、飽きたわ、お前」


グイッ


結衣「やっ…!」


雪乃「…っ!」




A「おいマナイタ女。お前とっとと消えろ。じゃねーとコイツの首締めてぶっ殺す」

結衣「あ…が……!」

雪乃「…!!」


B「おい! いくらなんでも血ィのぼりすぎだ!」

A「っせぇ!!!」ガッ

B「っつ!」


雪乃「くっ…」

結衣「ぅ……ゆき…のん……あたし…は…いい…から……」

A「かー、泣けるねー? 自分をギセイにしてってやつですか! モモの女の子は心も大きいねぇー!」

雪乃「卑怯な真似を…」

A「一方そのころ、マナイタのキミは? 自分が代わりにーとかやんねーわけ? 身も心もちっさいってのは可哀想だねー?」

雪乃「……」



雪乃「その言葉、そのまま返していいかしら?」

A「だと?」

雪乃「そういった姑息な手段に走る小物臭、それと先ほどまで露出していたアナタの残念な汚物も鑑みるに… 身も心も矮小なのはアナタだと思うのだけれど」

A「は……?」


スルッ


結衣「っ…! げほっ…… はぁ…はぁ…」



A「な、なーに言ってくれちゃったんかなマナイタちゃん? 俺の砲身見なかったわけ? え? 小さい? どゆことー?」

雪乃「実に不愉快だったけれど見てしまった上で言っているの。なんならもう一度確かめたほうが良いかしら?」

A「はー? いやいや、まじ意味わかんね」

雪乃「まあ、自信が無いなら別に結構よ。こちらとしても催吐リスクの高い滑稽な形状の汚物のために視細胞や神経を無駄に機能させるのは避けたいもの」


A「……誰が自信ねーって? ざけんなまじで」



A「おーけーオーケー…… じゃあもっかい目に焼き付けてみろや」スル


雪乃「…!」




ボロンッ


A「……オラ、どうよ? これでも小さいって? なんならテメェんナカぶっ込んで確かめたっていーんだ…」


雪乃「ふっ!」ピュッ


グサッ


A「ぜ………」



A「アーーーーーーッ!!?」



雪乃「今よ、由比ヶ浜さん! こっちへ!」




B「……!」


結衣「あ、うん!」タッ!


A「っ!! 逃がすか…」


ピュッ!

グサッ


A「アーーーーーーッ!?!?!?」


雪乃「させないわ」


B(あ、あの女、髪留めを飛ばしてんのか!? 人間業じゃねぇ……!!)




雪乃「由比ヶ浜さん!」

結衣「ぅゆきのーーん!!」




ダキッ


結衣「うあぁぁぁぁああん、ゆきのん! ゆきのーん!!」

雪乃「よしよし。怖かったでしょう」

結衣「うんっ…ごわがっだぁああああ……もうダメだと思っだぁぁ……」

雪乃「ええ……でも、まだよ」


A「……」ユラッ

B「……」


雪乃「このまま走って逃げても、相手は男性。追いつかれて連れて行かれるのが関の山ね」

雪乃(なにより、私の体力が持たないのだけれど…)

結衣「そ、そんな……」



A「わーかってんじゃん? 利口リコー、実にオリコー。まさかただで帰れるなんて思ってねーやな?」


雪乃「そうね。そちらには車という足があるし、人気のある祭り会場まで逃げようにも階段を登らないといけない」

結衣「ど、どーするの、ゆきのん!」

雪乃「現状、私たち2人の力だけではどうすることもできないわ」

結衣「うそ…」


A「ピンポーン! テメェらはもう逃げられませーん」

A「勇気リンリン勇み足でしゃしゃり出てきたわりにゃー諦め早ぇのな? 物分かりがよすぎるっつーのも気の毒なもんだわ」

A「まー痛い目見る前にこっちこいや。クルマまでは無傷で連れてったげなくもない的な? クルマまでは、だけどな! はっはー!」




結衣「ゆ、ゆきのん…ごめん。元々はあたしのせいなんだし…やっぱりあたしが…」

雪乃「馬鹿なこと言わないで。大丈夫、心配は無用よ」

結衣「…へっ?」


A「ほらほらどーしたの? 早くこいやこっち」


雪乃「………」

結衣「ゆきのん…?」



雪乃「いくつか、アナタに教えてあげなくてはならないことがあるわね」


A「…ああ?」



雪乃「ひとつ。今しがたアナタが使った『勇み足』だけれど、典型的な誤用ね。ただでさえ耳障りな話し方なのだからせめて用語は適切に用いて貰えないかしら」

A「……んだと?」


雪乃「正直指摘することすら恥ずかしくて憚られるのだけれど、アナタが日本語云々とぬかしていたものだからつい」

雪乃「文学以前に言語学習からやり直すことを推奨するわ。あ……それともひょっとして渾身のボケだったの? それなら拾ってあげられなくてごめんなさい」


A「…………」




雪乃「次にひとつ。私たちは逃げることもできないけれど、アナタの要求に従うこともないわ」

A「あ? なんだそりゃ」

結衣「ゆきのん、どゆこと…?」


雪乃「どちらに進んでも地獄行きの分かれ道があって、後ろからは時間という名の壁が押し寄せている」

雪乃「その状況でどちらか一方の道の選択に精を出すほど、私は愚かではないわ。だってどちらもイヤだもの」

A「は? おめーそれ、今の状況を言ってるつもり? 馬鹿?」

A「イヤだからって変わんねーから。こっちに来るか、向こうに逃げて捕まるかのどっちかだっつったしょ」

雪乃「少しは考えたらどう? 簡単なことじゃない。どちらの道もダメなら、別の道を探ればいいのよ」

A「はー? 何言っちゃってんの? この状況で?」


結衣「べ、別の道って?」

A「いやいや… んなモンねーから?」


雪乃「果たして、そうかしら」



雪乃「私たちがこの場から逃げられないのなら、アナタ達が立ち去れば済む話でしょう?」



B「…!」

A「………ファッ?」


A「ひゃははははははは!! ひははははははっ!! ハァーー? やべーー! ハァーーー??」

A「バカだわ! お前ガチモンだわ! 神聖おバカちゃんだわ!!」

結衣「ゆ、ゆきのん、そんなの無理だよ…絶対ないよ…!」

A「っべー! まじっべェーー!! 天才ぶっときながらなんだそら? おめーらじゃなくて俺らが帰る? パンが無いならってか?」

雪乃「今は6月だというのに… 時期を弁えない五月蝿いハエね」


雪乃「営業職は知っているでしょう? 身近なものでは訪問型のセールスかしら」

雪乃「彼らの相手はその商品を必要としている場合も勿論あるけれど、訪問の時点では不要と判断する場合や全く興味が無いことも多くある」

雪乃「そんな相手の思考を売り手の思惑通りに変えてしまうことこそが彼らの使命であり、そのためには有効な手段がいくつかあるのよ」



雪乃「目標は、相手に『そうするほうが良い』あるいは『そうしなければならない』と思わせること。でも相手は自らの状況を自らで判断し、『そうしなくて良い』と思っている」

雪乃「この状況を覆すべく利用するのは、一体何だと思う?」

A「は? 知るかんなの。つーか何、また長ぇハナシ? そろそろ問答無用でいーかな?」


雪乃「そうね、生物学的に知能の低いハエに質問しても時間と労力の無駄だったわ」

A「………」

雪乃「答えはこう、『相手の曝されている環境が危険であると示す』ことよ。この意味が分かるかしら? ……あら、私としたことが再びハエに質問してしまったわ」


A「いや……ねーわ。マジねぇーわコイツ」




A「ベラベラくっちゃべってっけどな、営業? 話術でなんとかってー魂胆だわ?」

A「いやいやムリムリ、もーいいもん。クソムカつくけどどーでもいいわ。だってこの後テメェで遊びまくるし?」


ザッ


結衣「…っ!」ビクッ


A「やれるモンならまじどーぞよ? おめーに何できんの? 喋んなきゃただのジェーケーしょ? オラとっとと俺らを立ち去らせてみろよ?」


結衣「ゆきのん! やばいよ逃げようよ、近づいてくるよ…!」

雪乃「………」




A「さっきテメェが自分で言ったとーりよ? テメェらじゃどーにもできねぇ、なぜなら力じゃ勝てねーからだ」


A「あー、最初からこーすりゃよかったわ。っべーーわ、時間クソロスったわ。暴力に対しちゃどーしよーもねぇもんな? だから必死に喋ってたんよな? アア?」


結衣「ゆきのんっ!!」


雪乃「…驚いた、私の言葉を少しでも覚えていられる知能があったのね」

結衣「ちょっ、こんなときに何言ってんの!? ゆきのんってば!」


A「ハッ! ここにきてまだ減らず口叩けるっちゃあ、もはや尊敬モンだべ? その折れねぇ精神とよーく回るクチだけは認めてやんよ」



A「で、遺言はそれでオッケーな。もーノンストップだからヨロシク」ザッ ザッ


雪乃「でも残念ね。言語を扱うのも、物事を記憶するのも、何事も正確に行うことが肝要なのよ」



結衣「ゆきのん、来るっ!!」

雪乃「………」


雪乃「最後にひとつ。『私たち2人の力だけでは』と私が言ったのを、アナタは聞き流してしまった」


B(…!!)


A「はいはい、あーあー聞こえなーい。そーれーじゃーあー…」

B( ……まさか!)



A「何しよーが今更おせぇんだよ!!」ダッ!


ガサッ!


B「っ!!」

B「おい!! 横っ…!」



A「オラ、つかまえ…」

結衣「ひっ!!」



ガッ



A「っ……あっ…!!?」グラッ



ズデーーン!!



結衣「…………っ」


雪乃「……」


結衣「………う?」

時間稼ぎしてたのね
ってかなんとなく三浦かサキサキ辺りが偶然通りかかると思ってた




A「…っでぇええええええええ!!!!? ハナ…ハナぁあああああ!!!」

B(盛大にこけたなオイ…)




結衣「えっ……? あっ……!」

雪乃「…おみごと」





八幡「『土遁・心中斬首の術…の最初らへんの術』」






結衣「ヒッキー!!?」


雪乃「予想以上の良い働きだけれど、その技名は必要…?」


八幡「い、いいだろ別に! っつーか距離取るんだろ早くしろ! 俺が殺される」

しばし休憩
技名はGC時代の激忍でカカシ使ってた時に頻用したアレから

乙です




B「チッ…」ザッ


八幡「おっと動くな。っつーか動かないでくださいお願いします」


B「あん?」


八幡「これが見えないか?」スッ


B「……スマホがどうかしたか?」


八幡「いや、そうだけどほら、この中心とか。なんつーの、三角マーク?」


B「あんま目ぇよくねーかんな。見えねぇ」


八幡「そう…」


B「なんかすまん」


八幡「………」



八幡「…おほん。あー、これはムービーだ」

B「ムービー?」

八幡「無論、さっきまでの一部始終を収めた、な」

B「…!?」


八幡「最近の携帯は画質が良い。方式はともかく、画質だけなら一昔前のビデオカメラなんて目じゃない程に鮮明に記録できる」

八幡「おまけに夏至に近い今日だ、この時間帯ですら街灯のひとつもついちゃいない。顔から何まで明瞭に記録できる」


B「全然気配なかったんだけど… いつからだ」


八幡「気配を消すのは慣れてるもんで。具体的には…」


八幡「『ボロン!』からだな……あいにく」


B「………」


B「まさに顔からナニまで明瞭に記録したわけな」

八幡「…座布団一枚」



A「あーー死ぬ。血出るスンゼンだわこれ、つーか出てるわ中で」


八幡「!」


A「カンケーねーしょ? まとめて捕まえてぶっ壊せばいいわな」

B「いや、待て…」


八幡「察しのいい兄さんのほうはお気づきか? 最近の携帯のすごい所は、そのデータ通信の量と速度だ」

八幡「いま、このムービーはとある緑のアプリで既に送信待機中だ。送り先はウチの部活の顧問…… ここまで言えば分かるよな?」


B「一歩でも近づけば、ってとこか?」


八幡「まあそういうこった。あんたは話が分かって実に助かる」



結衣「ひ、ヒッキーすごっ……!」

雪乃「ぼっちスキルがこんな所で役に立ったわね」


八幡「お誉めに預か…ってねぇよ全然」



八幡「で、だ。これは今回の顛末、すなわちあんたらの犯罪行為の証拠たりうる代物だろう」

B「…いよいよやべぇか」

B(……いや)


結衣「や、やった! 大逆転だよ、ゆきのん!」

雪乃「………」


八幡「これを送信されたくなかったら、速やかにここから…」





A「だぁーーーーかぁーーーーらぁーーーー!!!?」





結衣「ひゃっ…!?」


八幡「っ……」




A「カーンケェーーネェーーて言った? 言ったべ? 言ったんだわ俺!!」


A「いいぜ? 送ってみろよオイ? そのショーコとやら! 今すぐ送ってみろよ?」


雪乃「…!」

結衣「えぇ!? な、何言ってんの、あの人」


八幡「気づきやがったか……」

結衣「えっ? えっ?」



A「確かに? ヤベェーよヤベェなぁ? それ送られちまったら俺らオワリだわ」


A「じゃーさ、それ送ってみ? その瞬間、お前らも死亡確定すんじゃねーのっつー話ね」


結衣「……あっ……」


A「ハッハ! 桃のじょーちゃんのほうも気づいたしょ? 未だてめぇらが勝ったわけじゃねーんだわ」

A「そのムービーとやらはすげぇ武器よ。だがしかーし送っちまえばそれまで、もうてめぇらを守る力なんざ微塵も持たねぇーんさ」



八幡「………」


雪乃「比企谷君、気をつけて… これは綱渡り。一瞬でも判断を誤れば命取りになる」

八幡「わーってる」



A「困ったなぁーオイ? こちとら爆弾のスイッチ握られて動けねぇ、だがそっちも使い捨ての爆弾しか持ってねぇ、一体いつ動くんすかねー? このセンキョー」


結衣「そ、それなら…このまま待ってればいつか助けが……」

雪乃「いえ、そう甘くはないわ」

結衣「えっ?」


A「ハーーッ! やっぱ切れんねーマナイタのじょーちゃん?」

A「たりめーしょ、時間が経てばこっちが不利なのは分かってんよ。それ分かっててじっと黙ってるってんならそりゃただの馬鹿だわさ」


A「だから今からそこの目が死んだシーマンみてーな男、おめーに要求する。そのケータイそのままよこせ。したら見逃してやる。ってな」


八幡「……」


雪乃「……ふっ」

八幡「おい笑うな空気読めよ」

雪乃「ご、ごめんなさい… だって………っ…!」プルプル

八幡「………」



結衣「う、ウソだ…… ダメだよヒッキー! 渡したらそいつ絶対…!」

八幡「分かってる! 静かにしてろ」

結衣「あぅ…」



八幡「そう来るよな… んで、俺らがそんな要求に応じるわけがないのも承知の上なんだろ?」


A「まーーね? ダメもとよ、ダメもと! それでダメならー………しゃーねーわ。どのみちアウトになるってんなら、しゃーねーわ」


A「しゃーねーから…」




A「もっとダメもとで突っ込むしかねーやな」




雪乃「……!!」


八幡「……ちっ」




雪乃(限界……!)

雪乃「比企谷君! 逃げて!」


八幡「ちっ」


A「ヒャッハァアアアーー!!!」ダッ!!



八幡(完全に追い詰められた時、玉砕覚悟で突撃ってのはよくあるパターンだ)

八幡(なるべくそうならないよう拮抗状態を保ちたかったが……こうなったが最後、現状でこれ以上は無理だろうな)


八幡「やむを得ねぇか……!」スッ


雪乃「比企谷君!! 何してるの、まさか戦うつもり!?」

結衣「ダメ!! 逃げてっ、ヒッキーー!!」


A「おほっ!? いぃーーねぇー!? ヤるってかぁああ!?」





八幡「…あほか」グッ


八幡「俺にそんな力は……ない!!」ブンッ!!



ガシャーン!!




A「みゃっ!!?」




雪乃「……!?」

結衣「えっ…!?」

B「……!」



八幡「ふっ、はっ!」バキッ メキッ



A「お、オイオイ? どーしたお前オイ…」


八幡「…あーー、しんどいなこれ。疲れた」



A「ハ、ハハッ……やっちまったな、やっちまったなぁお前!」


A「自分のケータイ自分でぶっ壊してるやつ初めて見たわ!! ヤベェェエ!!」


結衣「ひ、ヒッキー…?」

雪乃「………」




八幡「……6分半だ」


A「あ?」


八幡「知ってるか? 千葉県でとある場所に電話をかけ、そこからの人物が現場に現れるまでの平均所用時間は6分半なんだわ」

八幡「頑張っちゃいるが、この6分半ってのが結構長い。コンビニで弁当温めてもらったことはあるか?」

A「…は?」

八幡「あれ、たかだか1分待つだけで、店員と無言で対面する気まずい空間に永久に閉じ込められた気分になるだろ?」


A「……いや、なんねぇわ」


八幡「え、まじで…?」



結衣「そんなのヒッキーだけじゃ…」

雪乃「わかるわ」

結衣「えっ」



八幡「…ともかくだ、俺はその場所に連絡した後、茂みに身を潜めてムービーを撮っていた」


八幡「そして現在、その6分半は既に経過している。平均より遅いが、まあここは少しはずれの神社の麓だからな」


B「お前、まさか……!!」


八幡「分かるか? 要は今までのやりとりは全て時間稼ぎだ。その人物がやって来るまでのな」




〜♪




〜〜♪




〜〜〜♪




八幡「ナイスタイミングだ。聞こえてきただろ?」

A「……!!」

B「チッ…」



八幡「さて、どーしちゃいます?」


八幡「データが物理的に破壊された俺らには爆弾がない。けどそれは同時にあんた達が襲われる武器がなくなったことを意味する」


八幡「そして迫るは、法の下で奏でられる正義の旋律。そんな一刻を争う状況下で、俺らに構ってる暇があるだろうか? いや、ない」



八幡「分かるだろ。あんた達が今気にするべきは俺らじゃない。あんた達の相手は…………」





B「……ゲームオーバーだな」

A「……くそがぁああ!!」





八幡「国家権力だ」


キリいいのでここまで
また明日に


後の逆恨み怖い展開だなww
もう出ないのだろうがww

乙です


今更だけど初めてはヒッキーにってさらっと爆弾発言だな、惚れてるとはいえ

しかし下手したらこれ八幡も捕まらないか……?、目の腐り方的な意味で

AとBの関係性が完全DQN化した戸部と葉山みたいな感じだな
武闘派DQNとインテリDQNみたいな

なんか急につまんなくなったな

要所でいきなり不良が絡んでくる作品は須く駄作になる

DQNが絡むのは俺ガイルSSでよくみる

千葉って治安悪いんだな
怖い

時間稼ぎごときで話がでかくなりすぎなんだよ
6分半を強調したかったんだろうがそんなことしょうじきどーでもいい
まぁそこがこだわりならしかたないが

一気に終了させたいけど予定入ったので少しだけ



1時間後 某署前



八幡「疲れた……」

結衣「や、やっと解放されたぁー…」

雪乃「当事者だもの。聴取が詳細となるのは当然というものよ」


雪乃「何にしても、由比ヶ浜さんが無事で良かったわ」

結衣「うん…… 2人ともほんとにありがとね。それと、巻き込んじゃってごめん……」

八幡「いや、話聞く限りお前は悪くなかっただろ」

雪乃「そうよ。悪いのは向こうであって、貴女が気に病むことではないわ」

結衣「う、うん…」



結衣「でも、なんで分かったの? ゆきのんが来るまでは助けが来るなんて全然思ってなかったよ。2人とも神社に入ったばっかだったし」

雪乃「それは…」

八幡「あー……いや、よくわかんねぇんだけど」

八幡「なんか、一瞬ふっと由比ヶ浜の声が聞こえた気がしたんだよ」

結衣「声…?」

八幡「いやまじで、気がしたってレベル」

雪乃「腐った脳が生み出した幻聴と言い換えて差し支えないわ」

八幡「ばりばり差し支えるし、言い換える意味ねーだろ…」


八幡「けどまあその直後、お前から2人同時にあんなメール来たもんだから」

結衣「あ………」

雪乃「非常に嫌な予感と共に、貴女に気づかれていたのではと思い立ったのよ。もしかしたらここまで尾行してきているんじゃないかって」




雪乃「まさか、その嫌な予感というのがこんなことになっているとは予想外だったけれど」

結衣「………」


八幡「つーかお前ずっと携帯つないで俺に連絡くれてたけど、あれどうやったの? 背中にスマホ隠して指で発声してたとか?」

雪ノ下「そんな奇天烈な芸が出来る筈ないでしょう。ブラウスの胸ポケットに収めていたのよ。こうやってね」スッ

八幡「おお……」

雪ノ下「これなら手に取らなくとも、上手く話せば気づかれずに指示を出せるでしょう」


八幡「………」チラ

結衣「………」


八幡「………」フム

雪乃「………」


八幡「なるほど」



雪乃「…今、その腐った目からさらに腐敗した視線を感じて戦慄したのだけれど。一体何を考えていたのかしら」

八幡「本能が告げている。言うべきではないと」

雪乃「怒らないから。どうぞ」

八幡「いや、遠慮し」

雪乃「今の私はガンジーだから安心して。いいから早く言いなさい」


八幡「……いやなに、これは褒め言葉なんだが」


八幡「場合によっちゃあ、まな板もたまには役に立ぐぼぁっ」ドスッ!!



八幡「っ…… 知ってた… 絶対殴られるの知ってた」

雪乃「知ってて言ったとなると、比企谷君はやはりというかマゾヒストなのね。これからは魔曾谷君と呼んであげましょうか?」

雪乃「でもそうしたら尚更悦ぶんでしょうね。気色悪い男、反吐が出るほどに」

八幡「お前、自分で言わせといてそれはなくね? っつーかガンジーどこいったんだよ…」



雪乃「さて、だいぶ暗くなってきたことだし、今日はもう帰りましょう」

結衣「!」

八幡「そうだな」

結衣「あっ、あのさっ!」

雪乃「比企谷君、由比ヶ浜さんを送ってあげなさい」

結衣「!?」

雪乃「私は方向が違うからタクシーを呼んで帰るわ。貴方は途中まで一緒なのだし、安全に家まで帰れるよう護衛するべきよ。いえ、しなくてはならないわ」

八幡「…まあ、あんなことがあった後だしな」

結衣「ちょ…ちょっと」

雪乃「由比ヶ浜さん、比企谷君1人で頼りないのは分かるけれど、使い方次第では有用なのよ。いざという時は盾や飛び道具くらいにはなるから」

八幡「おい」



結衣「ヒッキーは武器じゃないし……ってそうじゃなくて!」

八幡「え? 武器じゃなくないの?」

結衣「あたし2人に話したいことが…!」

八幡「…あん?」

雪乃「……」


雪乃「由比ヶ浜さん」

結衣「な、なに?」

雪乃「話はまた今度聞くわ。今日は色々あったから、早く帰ったほうがいいと思うの」

結衣「えっ? でもっ」

雪乃「いいから」

結衣「……」

八幡「……?」

結衣「…わかった」

八幡「おいおい…」



雪乃「それじゃ、また来週に」

結衣「うん…」

八幡「お、おい雪ノ下?」

雪乃「なにかしら?」

八幡「なんかお前、変っつーか…いつもと違くね? そんな由比ヶ浜に冷たかったっけ」

雪乃「『変ないきもの』図鑑の表紙に掲載される変の筆頭生物のような存在の貴方に変と言われる日が来るとは思わなかったわ。私はいつも通りよ」

八幡「あ、確かにいつも通りだ。雪ノ下はいつも通り舌に毒を持つ有毒生物だな。うん」


雪乃「…比企谷君」ズイッ

八幡「近っ。な、なんだよ」


雪乃「……」



雪乃「さようなら」


八幡「あ? ああ…」


雪乃「それから」

雪乃「由比ヶ浜さんをよろしく、ね」


八幡「……おう……?」






八幡「……」


八幡「なんだったんだ? 雪ノ下のやつ」


結衣「ゆきのん、なんて言ったの?」

八幡「いや、普通に別れの挨拶と、あとお前のことよろしくって」

結衣「…そっか」


八幡「……」

結衣「……」


八幡「…帰るか」

結衣「……うん」



マモナクー サンバンセンニー


八幡「…冷えない?」

結衣「ん。だいじょーぶ」

八幡「そうか」




ガタンゴトン


八幡「この辺あんま来ないから、なんかあれだな。うん、あれだ」

結衣「…うん」




ソウブホンセンゴリヨウノオキャクサマハー…


八幡「………」

結衣「………」




八幡(やべぇなにこれ…気まずいってレベルじゃねーぞ)


216


八幡(沈黙多すぎだろ。雪ノ下ならともかく、由比ヶ浜とってとこが問題だ)

八幡(トーク力が試されてるってこと? 馬鹿野郎、俺の人生で最も会話時間が長い相手が誰か知ってるか? 俺だぞ。ぼっちナメんな)

結衣「……」

八幡(っつーかなんで由比ヶ浜こんなだんまりなんだよ… いやまあ相当ショックだったんだろうけど。それにさっきの雪ノ下の扱いもなんかアレだったし)

八幡(ここはむしろ、無理に話しようとする方が素人ってやつだ。そうに違いない。それなら俺の得意分野だ。自然な沈黙、はい完璧)


八幡「……」

八幡「……」チラ


結衣「……」


八幡(そんな暗い顔しないでガハマさん…)



結衣「…ヒッキー」

八幡「にゃっ、なんだ!?」

八幡(噛んだにゃ…)

結衣「あたし、次降りる」

八幡「あー、そうだったな。了解」

結衣「……」



プシュー


八幡「駅からタクシー使うか? てか今更だけど最初からタクシーでもよかったよな、安全優先なら」

結衣「ううん。そんな遠くないし歩いてく」

八幡「なら家の近くまで送ってくわ」

結衣「いいの…?」

八幡「まあな。護衛しろって雪ノ下にも言われたし」

結衣(……ゆきのんにね)

結衣「やっぱ、ここでいいよ」

八幡「は?」

結衣「…悪いもん」

八幡「いや気にすんなって。つーか、じゃなきゃなんで俺ここで降りたのってなる」

結衣「ヒッキーにもだけど… ゆきのんに」

八幡「……雪ノ下?」



八幡「何言ってんの? そもそもお前を送ってくって話はあいつが言い出したんだろ」

結衣「それは…そうなんだけど」

結衣(わかんないよ……… ゆきのん)

八幡「……」

八幡(これは、アレか)


八幡「あー、由比ヶ浜さ」

結衣「…うん?」

八幡「嫌なら素直にそう言ってくれたほうが、遠回しに避けられるよりマシなこともあるってもんだぞ」


結衣「……え?」



八幡「今日は大変な目に遭ったってのもあるけど、さっきからずっと落ち込んだ顔してたし」

結衣「……」

八幡「これまで俺に良く接してくれてたと思う。正直すげぇよ。自分で言うのもなんだが、こんな排他的な奴はそういない」

結衣「ひ、ヒッキー? なに言って…」

八幡「だからもう、十分だ」


八幡「お前の優しさがあって、俺は結構助けられた。だから十分だ。お前がこれ以上無理して近づく必要なんてない」

結衣「……っ!」


八幡「なに、安心しろ。今更ゆるふわビッチにどんな扱いを受けようが俺の心は擦り傷すらつかねーよ。だから遠慮なく断ってくれ」

結衣「ばか」

八幡「なーんて…」



結衣「ばか!!!!」



八幡「……え?」





結衣「ばか! ばかばかばかっ!! ヒッキーのばか!!」

八幡「ファッ」


結衣「なんで…なんでそんなこと言うの…!?」


結衣「あたしは……こんなに…… なのに……!!」

八幡「ちょ、おい由比ヶ浜…」


ポタ ポタ


八幡「!?」

結衣「…っ…うっ………」ポタ ポタ

八幡(う、うそだろおい…!?)



ヒソヒソ…



八幡(くっ… と、とにかく人気の少ないところに連れてかねーと!!)


八幡(もちろん他意はない)




近くの公園ベンチ



八幡「……」

結衣「……」グスッ

八幡「お、落ち着いたか?」

結衣「……」コク

八幡「そうか」


八幡(俺は落ちつかないっすけどねぇぇ!)


八幡(なにもう… いつも通りの卑屈感を出して非日常からの脱却を試みただけだってのに)

八幡(急に怒ったかと思えば泣き出すとか、軽くないトラウマになっちゃう)


結衣「…ヒッキー」

八幡「おっ、なんだ?」

結衣「手……」


八幡「……」


八幡「わ、悪い!」パッ

結衣(あ……)

八幡「これは、その、さっき咄嗟にな…? いや、まじですまん」

結衣「……ううん」



八幡「それと、さっきのも悪かった。自虐というか冗談というか、本気のつもりはなかった」

結衣「…ヒッキーが言うと冗談に聞こえないし」

八幡「…だよな。悪い」

結衣「もう二度と、さっきみたいなこと言っちゃだめだよ。もし言ったら本気で嫌いになるから」

八幡「あ、ああ」

八幡(おうっふ。由比ヶ浜の『嫌い』って地味にへこむな…)


結衣「なら許したげる」

八幡「ははー、由比ヶ浜様、ありがたき幸せ」

結衣「あは。なにそれヒッキー、似合うし」

八幡「似合うって何だよ」

八幡(よかった、なんとか取り戻したっぽいな。もういや…女の子って怖い)

迷うけどここで切ろう

てかコメント増えてきて嬉しいな
感想も非難もボケもじゃんじゃんくださひ

おつ!
結末が知りたいけどまだこのSSを見てたいっていう矛盾

脳梗塞かなにかになったのかと思って読んでみたら全然違った

乙です



八幡「さて、落ちついたところでそろそろ帰りますかね。よっこら」

結衣「あ…待って」グイ

八幡「うおっ!」

結衣「もうちょっと、ここでお話したい…かな」

八幡「そう…」

八幡(まじかよ、早く帰りたいんだけど… できれば由比ヶ浜が冷静になって今日のこと勘繰られる前に)


結衣「その、今日の2人のことなんだけど」

八幡(あ、手遅れだった)

結衣「……」

結衣「えっと……ごめんなさい!」

八幡「…は?」



八幡「なんで謝る? まだ巻き込んだーとか気にしてんのか? それなら由比ヶ浜のせいじゃねぇってさっきも言ったろ」

結衣「あ、ううん。それもだけど… そっちじゃなくって」

結衣「2人のこと、邪魔しちゃったから…」


八幡「邪魔?」


結衣「さっきゆきのんが言ってた通りだよ」

結衣「あたし、神社まで来たのは2人のこと… つけてきたからなんだ」

八幡「……」


八幡「気づかれちまってたのか」

結衣「…うん」

八幡(やっぱ俺がミスってエンカウントしたのがまずかったか… いや、それとも途中からか?)


八幡「それ、いつからだ?」

結衣「……」

結衣「はっきり気づいたのは、正直いつからか分かんないんだけど」



結衣「ヒッキーさ、忘れ物って言って学校戻ったよね」

八幡「…そうだな」


結衣「あの少し後にね、あたしも英語の宿題出されてたこと思い出して、教科書取りに戻ったの」

結衣「そしたら昇降口にヒッキーがいて… それからゆきのんが現れて」

結衣「ヒッキーはともかくゆきのんは用事があるって帰っちゃったはずだったのに、って」

八幡(俺と遭ったことが直接の原因じゃないにしても、学校からってことは最初からか)

結衣「いけないことだって分かってたけど、どうしても気になって… それからずっと2人のあと、つけて来ちゃって」



結衣「ほんとごめん。ダメだよねこんなストーカーみたいなこと… その上2人を巻き込んで……最低だ、あたし」


八幡「いや、そりゃ人のあとをつけるってのは感心できねぇよ。俺がやってみろ、理由の如何を問わず即現行犯逮捕まである」

八幡「だからって、そこまで卑屈にならんでも…」

結衣「違うの!!」

八幡「っ!」


結衣「あたしが最低なのは、あたしが謝りたいのは… それだけじゃなくて…」



結衣「この前、クラス替えの話した日があったの覚えてる?」

八幡「あ…? この前っつーと… 雪ノ下が問題出してたやつか」

結衣「うん。あの時あたしは、3人で同じ大学に行って、同じクラスになったら…なんて言ったんだよね」

結衣「直接口にはしなかったけど、あたしは本当にそうなれたらいいなって思ってた。このまま3人でいれたらいいなって」

八幡「……」

結衣「ヒッキーもゆきのんも、そんなあたしの気持ちに気付いてくれてたんだと思う」

八幡「え、まあ、多少…」

八幡(そんなこと考えてたのか… っつーか由比ヶ浜、あれけっこう本気で言ってたんだな)



結衣「でも… 3人がずっと一緒にいられるのは、3人の関係が変わらないからなんだよ」

結衣「そこに2人だけの特別な関係ができちゃったら、もう3人はそれまでの3人じゃいられない」


結衣「だから隠してたんでしょ? いつからか、あたしには全然わかんないけど…」

八幡「……?」


結衣「それでも、いつかは明かさなくちゃいけなくて」

結衣「あたしにいつ、どう話したらいいのか、たぶん2人ともすごい悩んでたんじゃないかなって」

八幡「……」


八幡(……何を?)



八幡(まさか由比ヶ浜、そんなに前から俺の計画を…? いやいや、っつーか本人に話すわけねぇだろ)

結衣「なのにあたしは、ヒッキーとゆきのんに『ウソつき』なんて言っちゃった」

結衣「2人が悪いことにして、自分のやってることを棚にあげて…… そんなの、あたしが辛くならないように逃げてるだけ」

結衣「自分勝手だよ…ほんとに最低……わかってる、ちゃんと気づいたし」



結衣「でも……でもね………やっぱり…わかんない…」


八幡「…あ?」


結衣「だってゆきのんは、あたしに協力してくれて、応援してくれて……明日のデートだって……」


八幡「ゆ、雪ノ下? デート?」




結衣「好きじゃないって、それがウソなのはいいよ…? ゆきのんがそーゆー性格ってことくらい知ってるし」

結衣「普段はすぐ思ったこと言うくせに、素直じゃないとこもあるのがゆきのんだもん。あたしはそーゆーの全部含めて、ゆきのんが好きだし」


結衣「でも……それでも…… こんな…っ……騙すようなこと……っ!」ポタ ポタ


八幡「ばっ」

八幡(あれれ〜!? またお泣きになりはじめちまったぜ!? え、なに? まじで話が見えないんだけど)


結衣「こんなことっ…されるくらいなら……ひぐっ」

結衣「すぐ打ち明けて……… 応援…なんて……」

八幡(あばばばばばば)



結衣「…えぅ……っぐ……」ポロポロ

八幡「おおお落ちつけ由比ヶ浜、泣くな! あれだよ、とにかく落ちつけ! 君なら大丈夫! もっと熱くなれよ!」

八幡(ってどっちだよ! 錯乱してサフランしすぎだろ俺…)

結衣「えぐっ……あぅ……うぅ…」

八幡「あー、ほら、雪ノ下にも何か深いワケがだな。今度俺からも聞いておくから! な? だから泣くのは…」

結衣「ぐすっ……ヒッキーもだし……」

八幡「……俺も?」

八幡(ちょっ、なに、俺何したの!?)

八幡(ヤバい、思い当たる節ねぇけどJKなんぞに訴えられたらそりゃもうSSSだっつの)

八幡(ちなみにSSSとは即連行・即カツ丼・即網走監獄である。あれ? 網走ってどこだっけ)


結衣「ゆきのんと付き合ってること…教えてくれなかったじゃん」


八幡(あ、思い出した北海道だ。いやー北の大地はツライっすわ。男はつら……)




八幡「………は?」







結衣「最初から言ってくれてれば…そりゃ戸惑うかもだけど」

八幡「………」



八幡「え、ちょい待って? ウェイト」

結衣「うん?」

八幡「いや、聞き間違いだったら死ぬほど死ねるんだけど」

結衣「…なに?」

八幡「今お前、俺と雪ノ下が…つ、付き合ってるなんてのたまったわけじゃないよな?」

結衣「……」

八幡(あ、やべ。『は? なにそれヒッキー妄想? キモい、マジない』とか返ってくるパティーンねこれ)

結衣「そだよ?」

八幡「ダウト」



八幡「い、いやいや。いやいやいやいや。いやいや?
いやいやいや…」

結衣「ヒッキーキョドりすぎ…」

八幡「いやキョドるわ、んなもん」

結衣「えっ? 付き合ってるんでしょ? ゆきのんと」

八幡「…由比ヶ浜さんや、それ、ソースは?」

結衣「だ、だって今日、あたしに隠れて… 2人でデートしてたじゃん…」

八幡「……」

八幡「…ほかには? 噂とか、目撃情報とか」

結衣「そーゆーのは…ないけど」

八幡「……」

八幡「あー……そういうこと…」


結衣「…? ど、どゆこと? ヒッキー?」

八幡「なるほどな… なら、今までのお前の発言もまあ解せなくはない」

結衣「えっ? ええっ?」



八幡「ひとつ、まず最初に明言しなきゃならん事実がある」

結衣「な、なに?」

八幡「よく聞け」


八幡「俺と雪ノ下は付き合ってなんかいない」


結衣「へっ?」



結衣「そ、そう…なの?」

八幡「当たり前だろ… お前の勘違いだ」

結衣「……」ポカン

八幡「おいこの話、絶対雪ノ下にすんなよ? バレたが最後、何されるか分かったもんじゃない。主に俺が」



八幡「ってことはあれか、お前が泣き出した理由って、ややもするとそれ絡みなわけ?」

結衣「う、うん」

八幡「はぁ…… なんだよ。それなら…」

八幡「………」


八幡(それなら……なんでだ?)


結衣「ヒッキー、ほんと? ほんとにゆきのんとは付き合ってないの?」

八幡「あ? だからそう言ってんだろ」

結衣「そ、そーなんだ」

結衣(あたしの…勘違い……? じゃあゆきのんは本当にあたしのこと…)


結衣(でも……)



八幡(なんか腑に落ちん部分もあるけど、まあ今はいいか)

八幡「っつーわけで解決ね? よし帰ろう」

結衣「でも、さ」


結衣「じゃあ今日のは…なに?」

八幡「………」


結衣「あたしに内緒で、ウソまでついて、ゆきのんと2人きりで」

結衣「電車まで使ってお買い物に行って、アイス食べて… それに神社のお祭りにも行って」

八幡(ガチで尾行じゃねーか)

八幡「……そうくるよな、当然」




結衣「あたしから見ても、誰から見ても… デートだよね? こーゆーのって」

八幡「い、いやいや、それはだな」

結衣「それは、なに?」

八幡「……」

結衣「……やっぱそーなんじゃん」

八幡「違うんだってまじで。けど、今は言えないっつーか…」

結衣「あたしもヒッキーのこと疑いたくないよ。でもやっぱり、何もないなんてのは考えられないし」

結衣「ゆきのんと付き合ってないって言ってたけど、『まだ』付き合ってないだけとかで……結局はそーゆーことなんじゃないかって」

八幡「っ……」


結衣「ね、ヒッキー」

結衣「あたしに気つかってるんなら… あたしが3人でいたいなんて言って、それがヒッキーとゆきのんを苦しめるんなら」


結衣「あたし……もう奉仕部には行かない」


八幡「…!」



八幡「ま、待て待て早まるな!」

八幡「もう行かないってお前、それ本気で言ってる?」

結衣「…わかんない。でも、そうしたほうがいいのかな、くらいには思ってる」

八幡「おいおい…」

結衣「あたしだって、ヒッキーとゆきのんにこれまでみたいに部活で会えなくなるのはイヤだよ? でも、あたしのわがままで2人に辛い思いさせるのはもっとイヤだし」

結衣「それならいっそ……って思っちゃったりするし」


八幡「……お前は俺かよ」

結衣「えっ?」



八幡「…これは俺と雪ノ下が付き合っていると仮定してのことだが」

八幡「そんな風に犠牲になるようなマネして、お前の言うように俺や雪ノ下が楽になると思うか?」

結衣「それは…」


結衣「そうだよね… それもやっぱ全部あたしのわがままで、そうやってほんとに楽になるのはあたしだけで」

八幡「分かってるなら考えを改めろ」

八幡「いいか由比ヶ浜、自己犠牲なんざ自分しか得しない。誰の為にもなりゃしないもんだ。むしろ他人に損をさせるまである」

結衣「…それをヒッキーが言う?」

八幡「ばっか、俺だからこそ言えるんだ。ぼっちは他人に迷惑をかけないからな」

結衣(……わかってないよ、ヒッキー)



結衣「……」

結衣「じゃあさヒッキー、あたしはどうしたらいいのかな…?」

八幡「どうしたら?」

結衣「ヒッキーと、ゆきのんと、これからどんな顔して会えばいいのかわかんないし」

八幡「は? いや、別にどうしなくてもいいだろ」

結衣「…なんで?」

八幡「なんでって言われてもな… これまで通りじゃ駄目なのか?」

結衣「……」


結衣「…できるわけない」

八幡「あん?」



結衣「これまで通りになんて…できるわけないじゃん!!」

八幡「!?」

結衣「できない……あたしにはやっぱり…」

八幡「お、おい? なんでだよ、さっきから言ってるだろ、俺と雪ノ下は別に付き合ったりしてねぇって」

八幡「だから、これまでと何も変わってなんか…」

結衣「変わったよ!!!」

八幡「きゃっ」


結衣「変わったよ…… 今日の2人を見て…すごい不安になった」

結衣「あたしは、2人が付き合ってるんだって思った。ヒッキーは違うって言うけど…」

結衣「あたしだって信じたい! ヒッキーのこと… 昨日までの…ゆきのんのこと」

八幡(…昨日までの?)




結衣「わかんない……! 信じたいあたしと、ウソだって思うあたしがどっちもいて… それが心の中でせめぎ合っててもうめちゃくちゃだし」

結衣「ほんとに付き合ってるんじゃなくっても、きっとお互いに好きになってるんじゃないかって…」

八幡「あー、そこはほら、俺を信じてくれとしか…な?」

結衣「信じたいのっ! だけど、だけど…わかんないんだもん!!」

結衣「ヒッキーは何なのか教えてくれないし…… だから余計に不安になるし……!」

八幡「っ……」

結衣「でも……」

結衣「そんな風に、ヒッキーのこと信じられないあたしが……一番信じられなくて……っ…」


結衣「えぅ……もう……やだよぉ…」ポロポロ



八幡「ばっ……!」

結衣「うっ……ううっ…」

八幡「……」

八幡「悪い、由比ヶ浜… お前が3人の関係をそんなにも大事にしてるなんてな」

八幡「せいぜい楽しく過ごしたい、くらいにしか考えてなかった。全然甘かった」


八幡「けど仮に…仮にだな。俺と雪ノ下が付き合ったとして、3人で居られなくなるとは限らないんじゃねーの?」

結衣「……」

八幡「俺らはたぶん、お前が考えてるほどには変わらない。今まで通り奉仕部の活動だって続けるし、雪ノ下の毒舌だって…減るどころか、下手したら悪化する」

八幡「お前がいてくれればやかましさアップだ。楽しいと言い換えてもいい。まかり間違っても、お前が居ないほうがいいなんて思うなんざあり得ない」

八幡「そうすればどうだ、その仮定があったところで、今まで通り3人で居られることに変わりないだろ?」




結衣「………変わるもん」

八幡「えっ?」


結衣「それでも変わる!」

八幡「な、なんでだよ。俺らは気にしないぞ。いや、あくまで仮定の話だけど!」

結衣「たしかに、ヒッキー達はそうかもしんないよ?」


結衣「じゃあさ、あたしの気持ちは…!?」

八幡「……は?」

結衣「あたしの! あたしの気持ちは…考えてくれてるの!?」

八幡「お前のって……あれか、気まずいとか、居心地が悪いとか」

結衣「…ちがうし」

八幡「なら、俺らの邪魔になって申し訳ないとか? だからそういうのは」

結衣「全然ちがうし!!」

八幡「あ…? じゃあなんだよ!」



結衣「わかんない?」

八幡「…分かんない」


結衣「ほんとに、わかんない?」

八幡「だから分かんねぇって! なんなの? お前は俺に何を求めて…」


結衣「好きな人に…恋人ができちゃったときの女の子の気持ち…… ほんとにヒッキーにはわかんない…?」


八幡「………」




八幡(…………はい?)



八幡「す、すまん、ナンダッテ? よく聞こえなかったー」

結衣「……」ジト

八幡「うっ……八幡は女の子じゃないので…… 女心は分からないってのが世の常ですし?」

結衣「…ばか」

八幡「……」

結衣「わかんないなら…ちゃんと言う」


ギュッ


八幡「っ!?」


八幡「お、おい!? やめろって! ほら、俺今日けっこう動いて汗かい」

結衣「うっさい黙れし」

八幡「ウィッス」





結衣「あたし…ね。ヒッキーが……」





結衣「ヒッキーのことが…好き」






ーーー完ーーー



なわけもなく続きます
また夜に

乙!
スレタイからこうなるとは予想もつかなかったわ

おつ、夜が楽しみ


これはゆきのんも早合点したパターンかしらね……しゅ、修羅場るのか?

あ^〜ガハマにぎゅっとされたいんじゃ^〜

結衣や雪乃の悩みの深刻さに比べて八幡が無神経すぎる




八幡「……………」



結衣「………////」パッ


結衣(い、言っちゃった…… ふいんき…最悪だけど…)



八幡「は、はは…」

八幡「その可能性はね? さすがに想定外っつーかね?」

結衣「でも、これでやっとわかってくれたでしょ?」

八幡「あー……」

結衣「まだ微妙…?」スッ

八幡「い、いや! 分かったから! そうだよな、お前がそんな心境で……いつも通りなんてそりゃあ無理ってもんだ。うん」



八幡(で、どうすんだよこの状況……)

結衣「ヒッキー… ひとつだけお願い」

八幡「な、なんだ?」

結衣「今のこと、ゆきのんには内緒にして」

八幡「……」

結衣「あと、もうひとつだけ」

八幡「ふたつじゃねーか」

結衣「う、うん、ごめん」

結衣「えっと、いまの…返事はしないで。わかってる。わかってるから…」

八幡(……ああ、そうか。由比ヶ浜は結局、俺と雪ノ下のこと疑ったまんまなんだっけ)


結衣「その、ごめんね。勢いで告白っぽいことしちゃった。あは……恥ずかし」

八幡「…由比ヶ浜、俺からも一ついいか」

結衣「うん?」



八幡「今さらというか、フライングというか、その辺は若干ややこしい話になるんだけどな」

結衣「…? 今さらなのに、フライング?」

八幡「まあそれは聞けば分かる。それよりもまず、お前に謝んなきゃいけない気がする」

結衣「え? な、なに?」

八幡「由比ヶ浜に…その、隠していたことだ。悪かった」

結衣「あ……うん」

結衣(やっぱ……ゆきのんとのこと…)

八幡「思えばそれが全ての元凶なんだよ」



八幡「もちろんそんなつもりじゃなかった。でもそれが結果的にお前を傷つけ、混乱させ……ひいては危険にさらすことになった」

結衣「ちが…… それはあたしが!」

八幡「違わねぇよ。お前があとをつけたのだって、俺が由比ヶ浜に隠して雪ノ下と2人で行動したからだ」

結衣「……」

八幡「けど、そこにはどうしてもお前に隠さなきゃいけない理由があった」

結衣「理由…」

結衣(あたしに気をつかってたから、だよね)

結衣(あたしが3人でいたいって… 2人のこと知ったら、もう前みたいにはいられないって…)




八幡「で、このあたりで由比ヶ浜が勘違いしているであろうことを訂正する」

八幡「結局お前は、俺と雪ノ下が付き合ってるとか、お互い好きで出かけたとか思ってんだろ?」

結衣「……ちがうの?」

八幡「違うね。最初から言ってるように、俺と雪ノ下はそんな関係じゃあない」

結衣「…でも、なんで一緒だったのかは言えないんでしょ」

八幡「そこだ。それこそが、今回の肝だったんだ」

結衣「……え?」



八幡「お前の誤解を解くには、俺と雪ノ下の行動の意図を話すしかない」

八幡「でもその意図を話すことは、俺の計画を遂行するに支障のあることだった。っつーか、もはや話した瞬間に計画は破綻だった」

結衣「け、計画?」

八幡「ああ」

八幡「すぐに諦めて打ち明ければよかったんだ。でも俺はそこで躊躇い、お茶を濁し続けた。困惑する由比ヶ浜の気持ちを考えもせずに、だ」

結衣「……」

八幡「だから… 本当に、悪かった」



結衣「い、いいよそんな謝らなくて…」

結衣「けど、それならちゃんと教えてほしいかな。なんであたしに隠してるのか。てゆーか、計画って…?」

八幡「それなんだけど」


八幡「あー…… よし、由比ヶ浜」

結衣「うん?」

八幡「ちょっと後ろ向いててくれません?」

結衣「…なんで?」

八幡「いいから。空気読め」

結衣「ヒッキーに言われたくないし… へ、ヘンなことしちゃダメだよ?」

八幡「わーってる」


クルッ



結衣「……」

八幡「……」ガサ


結衣「ヒッキー、まだ?」

八幡「待て」

結衣「……?」

八幡「おすわり」

結衣「あたし犬あつかい!?」

八幡「誰もんなこと言ってねえだろ…… やかましい犬だな」

結衣「言った! 言ったし! いま犬って言っ」

ガサッ

結衣「へあっ」


結衣「な、なに? 前見えないんだけど」

八幡「だーれだ、なんてな」

結衣「はぁ…? ヒッキーしかいないじゃん! このっ」

八幡「『待て』って。抵抗すんなあぶねぇから」

結衣「むうー…!」



結衣「変なことしないって言ったのに! なんなのこれ? 袋?」

八幡「そうだな…ここで少しクイズといくか」

結衣「は、はぁー?」


八幡「歴史に絡んだ問題。今日が何の日か知ってるか?」

結衣「げ、歴史…… ムリ、絶対わかんないし」

八幡「だろうな」


八幡「いろいろあるけど、ユキペディアさんによると今日6月17日は西暦1885年、自由の女神像がフランスからアメリカに運ばれた日らしい」

結衣「えっ? あの手あげてる人だよね? あれってニューヨークにあるんじゃないの!?」

八幡「……ニューヨークはアメリカの州ですが」

結衣「…はい」



八幡「じゃ、次の問題」

結衣「うぇ…まだやるの? てか早く離してよこれ」

八幡「これでラストだから。明日は何の日か、知ってるか?」

結衣「ま、また歴史ぃー? だからわかんないってば」

八幡「……」

八幡「そんなはずはない」

結衣「えっ? すっごい有名なこと?」

八幡「いや、全然」

結衣「……そんなんなおさらあたしにわかるわけないじゃん」



八幡「けど、雪ノ下は知ってることだ」

結衣「ゆきのん? そりゃ、ゆきのんはほんとに何でも知ってるし」

八幡「んで、俺も知ってる」

結衣「えっ? そ、そうなんだ。ヒッキーも… すごいね」


八幡「何言ってんの? 俺らよりもずっと昔から、お前は知ってるはずなんだ」


八幡「つーかその日が……明日が何の日か、俺らに教えたのはお前なわけで」


結衣「……あたし……?」





八幡「由比ヶ浜、前に手出してみ」

結衣「え?……う、うん」スッ


八幡「じゃ、離すから。落とすなよ」


パッ


結衣「ふぇ!? ちょっ! っとと…!」ガシッ


結衣「………」

結衣「なにこのプレゼントっぽい袋…」


八幡「それが答えっつったら、もう分かんだろ」


結衣「へっ?」


結衣(明日…6月…18日……)

結衣(あっ……)



結衣「ヒッキー……もしかして………!」



八幡「まあ……そういうこと」





結衣「あ……… あ…………!」


結衣(そっ……か……)


八幡「まさかの前日になっちまったのは堪忍してくれ」


八幡「それ、渡す本人に言うのもなんだけど値段が桁違いだったもんで……」

八幡「急遽、短期でバイトして資金繰りしてたんだ。俺が言い出した手前、雪ノ下に頼るってわけにもいかねぇし」


結衣(だから…ヒッキーは………)



八幡「代わりに雪ノ下には注文の手筈だったり、デザインとかの俺が疎い部分で協力してもらった」

八幡「本来は週明け学校で渡す予定だったんだけどな。なぜか都合よくその…デートってのが明日になったもんだから、今日中に受け取って明日渡すって話になったんだよ」


結衣(だから…ゆきのんは………)




結衣(だから……だから……)

結衣(わかった…… 全部つながった………!)


結衣「………」


八幡「まあなんつーか……」

八幡「ん? 聞いてる? …由比ヶ浜?」


結衣「あ………う………」ポタ


八幡(あっ、これなんかデジャヴ)


結衣「ぅああああん……! ごめんなさい……ごめんなさぁい…」ポタポタ


八幡「はぃイイイイ!!」



八幡「またかよ! なに? なんでお前謝りながら泣いてんの!?」

結衣「だって、だってぇ! ゆきのんとヒッキーがぁ…」

八幡「はぁ…?」

結衣「2人とも…あたしの為にがんばって……ひぐっ…くれてたのに……! なのに…あたし………あたしっ…!!」

八幡「いやいや、だから知らないようにしてたのは俺らなんだって」

結衣「あぅぅぅ……えぐっ……うっ…」ポロポロ

八幡「と、とにかく泣くな、落ち着け! もっと熱くなれよ!…あっ違う」


この状況でももっと熱くなれよ!とか言っちゃうのかw



結衣「うー……」ズズッ

八幡「ま、とにかくな? 開けてみてくれ」

結衣「…うん」


ガサッ


結衣「わっ」


八幡「……」


結衣「か、かわいい!!」


八幡「……」ホッ


結衣「これ、洋服? ……じゃないや、なんだろ」

八幡「いや、服で合ってる」

結衣「うそ? それにしてはちっちゃいような。すっごい伸びるとか?」

八幡「サイヤ人の戦闘服かよ… 広げてみてみろ」



結衣「んっと…」

結衣「あっ、服! 服だっ! 犬の!」


結衣「すご……ほんとにかわいい…! どこで買ったの? こんなん見たことない」

八幡「ま、見たことないのは当然だな。こいつはオーダーメイドだ」

結衣「オーダーメイド!?」


結衣「…ってなんだっけ」

八幡「おい」ガクッ


八幡「注文して作ってもらったってこと。原案は俺と雪ノ下で考えたんだよ、柄から大きさから、なにまでな」

結衣「うそっ!?」



八幡「つっても、デザインはほぼ雪ノ下に任せっきりだったけどな」

結衣「あ、なんだ。だよねー」

八幡「うっせ」

結衣「でもほんとにかわいいよ! 首と袖先にカラーついてるのとか、ポイントポイントでお花の刺繍入ってるのとか、すごいオシャレだし」

八幡「俺も実物見て驚いた。さすがは雪ノ下だな。色増やしたり素材良くしたり、俺にできたのはそういう要望を追加するために働くくらいだ」

結衣「……うん」


八幡「千葉駅近くのペットショップ経由で注文できるってことでデザインは先に出して見積もってもらってたんだけどな」

八幡「こっそり採寸する機会がなかなかなかったんだ。そこも雪ノ下がうまくやってくれたらしい」

結衣「採寸?」

結衣(あっ… 先週ゆきのんが急にうちに来たのって、もしかしてそのため…!?)



八幡「由比ヶ浜、あんとき覚えてる?」

八幡「実はそのペットショップ、お前と俺とで行ったことあるんだわ」

結衣「あ……うん、覚えてるよ」



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結衣「あっ、ヒッキーみてみて! ダックス!」

八幡「なんだここ。ペットショップか? にしちゃやけに派手に飾ってんな」

結衣「はぁ〜やっぱかわいいのは犬だぁ〜。ナンバーワン。わんだけに!」

八幡「わんダフルなダジャレだな」ドヤ

結衣「うわ…ヒッキー…さむっ…」

八幡「お前が先に言い出したんだろうが!」


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結衣「いやーあれはヒッキーの顔がダメだったもん。なんかドヤ顔だったっていうか」

八幡「なんで回想で俺のやっちまった発言わざわざ引っ張り出してくんの? そこ要らないよね? その先だよね?」



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結衣「でもマルチーズもかわいいなぁ〜〜えへへ」

八幡(…ん? 『ドッグウェア・オーダーメイド 承ります』って、この店そんなこともやってんのか)

八幡「しかしなんだ、昨今の犬は犬のくせに服なんざ着てんのな」

結衣「くせにってなんだし! 服くらい着るよ。犬だってオシャレしていいじゃん」

八幡「かっ、服とは元来気温その他侵襲性のある外的要因から身を保護するためにあるんだよ」

八幡「犬は既に体毛で覆われてる。奴らは冬場でも服なんかなくて平気だろ? あれ0℃が人間でいう15℃くらいになるらしいぜ」

結衣「ふ、ふーん… って、だからオシャレなんだって! 中世? とか? 昔の人だって着物で綺麗にしてたじゃん」

八幡「そりゃ人間の話だ。犬がいつから服着るようになったんだよ」

結衣「知らないよ…でも散歩してても結構着せてる人いるんだもん。そーゆー時代なの!」

八幡「時代ねぇ。その割には流行に敏感な由比ヶ浜さんちの愛犬サラブレッドは裸じゃないですか?」

結衣「サ・ブ・レ! かっこいいけど間違えないでっ! そうだけど……」


結衣「ドッグウェアって結構高いし… サブレはダックスだから形合うの少なくて」

結衣「せっかく着せるんならかわいいのがいいけどなかなか無いし… あってもやっぱりそーゆーのは高いし…」

八幡「そんなもんなのか」

結衣「うー、サブレにかわいい服着せて散歩したげたいなぁ……」

八幡「………」

結衣「あ! あっちに猫コーナーもあるんだ。ゆきのんも来たら喜びそうかも!」

八幡(オーダーメイドねぇ… げ、諭吉からかよ)

結衣「…ヒッキー? どったの?」

八幡「ん。いや、別に」


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八幡「的なこと言ってたろ」

結衣「た、たしかに言ってた! あの日帰ってからもっかいネットで探してみたもん」

結衣(ヒッキー… けっこう前のことなのに、あたしの言ったこと覚えててくれたんだ)

八幡「…えっ?」

結衣「えっ?」


八幡「……買ったの?」

結衣「あ、でも結局お母さんと相談して、また今度ってなったから買ってないよ」

八幡「あー、なんだよ… もう持ってんのかと思って一瞬不安になっちゃったじゃねぇか」

結衣「あはは、ちがうちがう」


結衣「それにもしもう持ってたとしても、ヒッキーとゆきのんのオリジナル…なんでしょ? それって手作りみたいなものだし」

八幡「いやオリジナルだけども、全然手作りじゃないし。発注ですし」

結衣「いーのっ! いろいろ考えてくれたのが嬉しいの!」

八幡「ほほう。ハンドメイド最大の良さを再び理解してもらえるとは」

結衣(それに、言い出しっぺがヒッキーってとこがもっと嬉しい……かな)

結衣「…なんて」

八幡「あん?」

結衣「なーんでもっ。ばーか」

八幡「…え? なんで罵られたの? 俺」

結衣「〜〜♪」




八幡「まあ紆余曲折あったけど、喜んでくれたんなら何よりだわ」

結衣「うん。すごい嬉しい! ありがと、ヒッキー」

八幡「雪ノ下にもお礼言っとけよ」

結衣「うんっ!」



結衣「でもヒッキーさ」

八幡「ん?」

結衣「どうして、そこまでしてくれたの?」


結衣「2人とも前から準備して、サプライズでお祝いしようとしてくれて…」

結衣「それにヒッキーなんて将来ニート宣言してるのに、バイトまでしてそんな高いもの…あたしのために」

八幡「ニート宣言してねぇよ。専業主夫を候補に入れてるだけだっつの」



八幡「どうしてっつーと、そうだな…… 最後だからか」

結衣「へ?」

八幡「俺らはもう3年だ。留年やらなんやらしない限り次年度には卒業して、この総武高に残ることはない」

結衣「あ…」

八幡「そしたら来年には俺が誰のことを祝うなんてもんはないだろ。由比ヶ浜も、雪ノ下もな。すなわち、今回が最後ってことになる」

八幡「期間にしちゃそう長い付き合いでもないけど、お前らには世話になった。世話したことのほうが絶対多いけどな。だからまあ、最後くらいは…」

結衣「ちょ、ちょっと!」

結衣「最後ってそんな… 卒業したらもう会わないみたいなこと言わないでよ」


八幡「………」


結衣「…ヒッキー?」



八幡「………」

結衣「ね、ねえ? 卒業しても会えるよね? そりゃ進学するトコは別々かもだけど」

八幡「…すまん由比ヶ浜、前々から言わなきゃとは思っちゃいたんだが」



八幡「俺、卒業したらすぐに海外で暮らすことになったんだわ」


結衣「…………えっ?」



八幡「父親が外資系の企業勤めで、仕事のどうしてもの都合で永住することになったらしい。ならば一家揃って現地で暮らそうとの提案だった」

結衣「……」

八幡「俺も小町ももう高校生、最初は反対した。今さら生まれ育った千葉を捨てて海外に飛ぶなんて考えてもなかったし、将来的にも不安だらけだしな」

八幡「けど父親の意志は固かった。っつーか、小町への愛が重かった。小町だけは離れて暮らしたくないんだとか。ちなみに俺は別にどっちでもいいらしい」

結衣「ヒッキー…」



八幡「だが小町が渡航を免れないなら当然、俺も行かざるを得ない。兄としての義務も然り、父親に引けを取らない小町への愛も然り」

八幡「日本からは飛行機で乗り継ぎ15時間はかかる国らしい。そうそう戻って来れやしない。だからまあ、今回が最後だろうなと思ったんだ」


結衣「うそ……そんなことって…」

八幡「……」


結衣「いや……いやだよ。ウソだよね……? ウソって言ってよ…」

八幡「まあ嘘だけどね」

結衣「ヒッキー……お願いだからウソって……」



結衣「は? ……ウソ?」



誕生日の前日にレイプされかかったり、誕生日プレゼントもらって喜んだと思ったら、
今度は八幡が外国に移住すると聞かされて絶望し、その直後にそれは嘘だと言われるww
ガハマの人生ジェットコースターすぎやろww

これは平手打ちの一発でもくらわせていい

この八幡酷すぎだろwwwwww

>結衣「いや……いやだよ。ウソだよね……? ウソって言ってよ…」
>八幡「まあ嘘だけどね」
>結衣「ヒッキー……お願いだからウソって……」

やったねガハマちゃん!お願いが叶ったよ!

昔告白した女に糞みたいな対応されたことを
いまでも根に持ってる癖に、
こういうことやらかすとかただのクズやん

やべぇタイミングで寝落ちした

今に見てろ、これから八幡の株があが…あがり……あがらないなこれ



八幡「ああ」

結衣「えっ…と…… ウソってことは、ヒッキーは?」

八幡「海外なんて行くわけがないだろ」

結衣「……」

八幡「日本語ですらコミュニケーション取りにくいってのに外国語とか無理無理。なんなら3日で部屋から出なくなるレベル」

結衣「な、なんだぁー…」


八幡「一回は言ってみたいセリフってあるじゃん? 『ずっと言ってなかったんだけど、卒業したら○○』ってやつ」

八幡「ちなみにこれ第5位ね。第4位はぐふぉっ」ドスッ!

結衣「ヒッキーほんとサイテー! そーゆーリアルなウソつくのやめて」

八幡「いってぇ… 悪かったよ、けど全然リアルじゃねぇし。そもそも父親が外資系ってのがもうダウト」

結衣「知らないし!」

八幡「あ、でも小町への愛は本物だから」

結衣「…シスコン」



八幡「けど実際どうなんだろうな。卒業してうまいこと進学して、そうすりゃ毎日のように学校で会うことはなくなる」

結衣「ん… そだね」

八幡「お前は新しい交友関係が広がるんだろう。大学によっちゃ総武高の生徒数の何倍もの人数が一堂に会するわけだ」

八幡「海外こそないとは思うが国内だって選択肢は多い。北国やら南国に飛ぶ可能性だってある。いずれにせよ、これまでみたいにやっていけるわけじゃない」

結衣「うん…」


八幡「まあだから、何が起こるかわからないってこと。『卒業してもずっと一緒』なんてのはよくあるけど、そんなものは一時の感情が生み出す理想だ。まやかしだ」

八幡「最後だからっつーよりは、今のうちに、ってのが正しいのかもな。俺がお前とこうして話せる関係でいるうちに」

結衣「……」



結衣「やっぱ、卒業してバラバラになったらそうなっちゃうのかな」

結衣「あたしにもヒッキーにも新しい友達ができて、新しい生活が始まって… 今みたいにはもうできなくなっちゃうのかな」

八幡「そんなもんだろ。ただし俺には新しい友達なんて出来ない。ぼっちの達人はどこに行ってもぼっちだからな。一人でぼっちサークルを設立してもいい」

結衣「うわありそう。かわいそうを通りこして引く…」

八幡「真顔になるなよ現実味が増すだろ。少しは否定してくれませんかねぇ?」

結衣「あっ! でもそれいいかも」

八幡「肯定しやがった…… いいってなんだよ」

結衣「だってさ、ヒッキーがずっとぼっちで新しい友達できなかったら、ヒッキーの友達はあたしとゆきのんだけじゃん?」

八幡「ば、ばっかお前、戸塚と材…… 戸塚もいるし。むしろ戸塚しかいないし」

結衣「ヒッキー、さいちゃん好きすぎでしょ」




結衣「そしたらさ、ヒッキーはあたし達とずっと遊ぶしかないもんね?」

八幡「さ、さあ? それはどうだろうな。ぼっちの達人はそもそも遊び相手を必要としないもんだ」

結衣「ヒッキー…」


結衣「あたしは…卒業してもヒッキーと一緒にいたいよ」

八幡「…!」

結衣「今より会える回数が減るのはわかってる。遠くに行っちゃって離ればなれかもしれない」

結衣「けどそのまま、付き合いがなくなるなんて…… そんなのやだよ、さみしいよ」

八幡「……」



結衣「ヒッキーはさみしくないの? あたしと会わなくなっても」

八幡「それは……」




八幡「あー… 由比ヶ浜」

結衣「うん?」

八幡「ひとつ、提案があるんだけど」

結衣「え? なに?」

八幡「いや提案というか、もしもの話というか… 聞いてくれるか?」

結衣「だ、だからなにってば」

八幡「その……だな。例えば、例えばだ」

結衣「うん」

八幡「……」


八幡「言っとくけど、これは例えばの話だからね?」

結衣「あーもうわかったって! しつこい! 例えば、なに?」

八幡「例えば… 俺とお前が付き合ったとすれば、卒業したっきり会わないなんてことはまあ、ないんじゃないか?」


結衣「………」


結衣「ふぇっ?」



八幡「……」

結衣「えっ? えっ…?」

八幡「知らねぇけど、そういう簡単に切れない関係ってやつ? そんなんがあれば、卒業とか離ればなれとか、あんま関係ないんじゃねって」

八幡「ほらなんつーか、あるじゃん。あれ、エンキョリレンアイとか。歌とかで。いや、だから例えばだけど」

結衣「……」

八幡「……」

八幡(やっちまった…死にたい)


結衣「ヒッキー、それってつまり…」

八幡「か、勘違いしないでよね。あくまで例えばの話なんだからねっ」

結衣「……」

結衣「勘違い……なの?」

八幡「ぐっ……」



結衣「ね、ヒッキー?」

八幡「はい」

結衣「ほんとに…勘違い?」

八幡「えー、あー、そのですね…」


八幡「勘違い…」

結衣「……」


八幡「……じゃない」

結衣「!!」


結衣「じゃ、じゃあヒッキーは…!」

八幡「……ような気がしないでもない可能性がなきにしもあらずと言えるような言えないような的な」

結衣「えっ!? な、なにそれ!? どっちだし!」




結衣「いまのって、その… そーゆーこと? …だよね?」

八幡「さ、さあ? そーゆーこと? って言われましても。ハチマンワカンナイ」

結衣「ヒッキー…」

結衣「ちゃんと言ってくれないとわかんないよ。あたしがバカなの知ってるでしょ?」

八幡「まあな」

結衣「否定しろし…」


八幡「……あー」

八幡「なんかもう、黒歴史思い出すわ、後出しじゃんけん感半端ないわですげぇ言いにくいんだけど」

結衣「…うん」

八幡「ごほん。えっと、由比ヶ浜」

結衣「は、はいっ」


八幡「もしよければ……その…そのですね、ぼ、僕とお付き合いしていただければ…えー…幸甚といいますかですね…」


結衣「………」

結衣「……ぷっ…… なにそれ…」


八幡「!?」



結衣「ぷぷっ…! あはっ、あはははっ!」

八幡「え?……えっ?」

八幡(あ、あれれ〜!? ちゃんと言ったのに、おっかしいぞぉ〜?)

結衣「だ、だって、ヒッキー! あははっ!」

八幡「……」

八幡「まじかよ……嘘だろ、結局また黒歴史かよ…」

結衣「はあ、はあ…… へっ?」

八幡「ハメられた。ものの見事にハメられた」

八幡「恋情に対して疑心暗鬼な俺を揺るがすため…あまつさえ告白紛いの発言すらあったってのに……」

結衣「あっ! ち、ちがうちがう! 笑ったのはそうじゃなくて、ヒッキーがすごいキョドるから…!」

八幡「……」

結衣「ほ、ほんとだよ? 騙したとか、罰ゲームで告白とか、そんなんじゃないよ?」

八幡「どうだか…」



八幡「封印し対策をし続けてきたかつての黒歴史とトラウマを覆し告白した結果がこれか…… 負った傷は果てしなく深い」

結衣「ご、ごめんって! 思わず笑っちゃったけど、ちゃんと言ってくれて嬉しかったよ?」

八幡「もう俺は何も信じない。これより鎖国体制に入る」

結衣「もー、違うって言ってんじゃん!」

八幡「………」

結衣「ヒッキー?」

八幡「………」

結衣「ヒッキーってば!」

八幡「鎖国中です。お引き取り下さい」

結衣「むー… ほんと捻くれてるんだから」


結衣「ヒッキー、こっち向いて?」

八幡「鎖国中です。お引き取り下さ」

結衣「……」グニーッ

八幡「いっててててて!?」



八幡「痛ってぇよ! 脇腹つねるとか暴力んむっ」

結衣「んっ…」





八幡(………)


八幡(一瞬、何が起きたのか分からなかった。いや、今でも何が起きてるのか分からない)

八幡(感じられるのは見えない程に近くにある由比ヶ浜の顔と、目元をくすぐる由比ヶ浜の長い睫毛と……)




結衣「……ぷはっ」


八幡「……………」



結衣「……えへ、しちゃった///」

八幡「お、おま…」



八幡「いきなりこんなこと……やっぱビッチかよ」

結衣「ビッチ言うなっ! だってヒッキー、こうでもしないと信じてくれないでしょ?」

八幡「いやいや…つーか驚きすぎて、逆に信じられねーっつの」

結衣「ふーん?」


結衣「……じゃあ、もっかい?」

八幡「なっ、なんでそうなる!?」

結衣「イヤなの?」

八幡「っ……」


結衣「ね、ヒッキー」

八幡「な、なんだよ」

結衣「あたし、ヒッキーが好き」

八幡「……おう」

結衣「ヒッキーはどうなの?」

八幡「………」

結衣「ヒッキーはあたしのこと…好き?」




結衣「こんなんしちゃってから聞くのもあれだけど…… ちょっと怖くって」

八幡「…は?」

結衣「ヒッキーがゆきのんとデートしてたんじゃないのはわかったけど、それでヒッキーの気持ちが決まるわけじゃないし」

結衣「それにあたしから告白しちゃってるし、誕生日だし、今日もいろいろあったし…」

結衣「ヒッキー優しいから、もしかして気つかってるのかもって……ちょっと思ったり」

八幡「……」

八幡「気なんか遣ってねぇよ」

結衣「ほんと!?」

八幡「ああ。ぼっちってのは自分に優しくあってこそぼっちなんだ。他人に対して器用ではあっても、優しくする必要はない」

結衣「えー… なにそれ、イヤなやつじゃん」

八幡「実際そうなんだから仕方ないだろ。なんとでも言え」



八幡「だからまあ、そういうこった」

結衣「そっか。よかった」

八幡「ん。わかってもらえたんなら」

結衣「でも…」

八幡「あん?」

結衣「やっぱ、はっきり言ってほしい…かな。ヒッキーがあたしのこと、どう思ってるかって」

八幡「うぇっ…」

結衣「あっ、ご、ごめん。わがままばっかりだよね! やっぱ大丈夫! 気持ちはわかったし!」

結衣「ヒッキーがそーゆーの得意じゃないの知ってるし、だから大丈夫! ごめんね、あははー…」

八幡「……」



八幡「…あのさ、お前こそ気遣いすぎじゃね」

結衣「へっ?」

八幡「人の顔色うかがう癖が抜けてねぇってこと」

八幡「協調性なり、親しき中にもある礼儀なりは別段悪いことじゃない。ソーシャルじゃ必須のスキルだ」


八幡「だども自分の希望を通したいときは、はっきり素直に伝えたほうが有効なんじゃねって話。俺が言うのもなんだけど」

結衣「だ、だけど…」


結衣「……」

八幡「……」



八幡「あー… わかったよ」

八幡「由比ヶ浜、こっち寄れ」

結衣「へっ?」

八幡「もう一回だ」

結衣「え? な、ちょっとヒッ」


グイッ


結衣「んむ………っ!」






八幡「はぁ……」

結衣「……ひ、ヒッキー…?////」



八幡「まあその…… 好きじゃなきゃこんなことしねーだろ…言わせんな恥ずかしい」

結衣「っ!!」



結衣「………うんっ!」





八幡「はぁー……死ぬほど勇気いんのな、これ」

結衣「えへへ。そうだよ? あたしすごい頑張ったでしょ?」

八幡「あ?」

結衣「だってぜんぶあたしが先だったし。告白も…キスも」

八幡「まあ、確かに」


結衣「でもこれであたしとヒッキーは…カップルってことでいいんだよね」

八幡「わざわざ確認すんなよ…… 噂で聞いたところによると世間ではどうやらそう呼ぶらしいな」

結衣「なにそれ。あ、もしかしてヒッキー、照れてるんでしょ?」

八幡「ばっかお前、全然照れてねーし」


八幡「……と言いたいとこだけど、正直めちゃくちゃ恥ずかしい」

結衣「……あたしも」



八幡「……」

結衣「……」


八幡「んで、どうする?」

結衣「ど、どうするって?」

八幡「……いや」

結衣「……」



八幡「……帰るか」


結衣「……うん」



由比ヶ浜宅前



結衣「ありがと、ヒッキー。送ってくれて」

八幡「おう」

結衣「……」

結衣「えと…あ、あがってく?」

八幡「はっ?」

結衣「いいよ、親いるけど…ヒッキーなら」

八幡「……」


八幡「いや、今日は遠慮しとく」

八幡(これ以上はいろいろと整理が追いつかない…… 一歩間違えれば由比ヶ浜の生理もっておい何考えてんだ俺のばかん)

結衣「そ、そっか。だよね、もう遅いし」




結衣「それじゃ、気をつけてねヒッキー」

八幡「ん」

八幡「……あ」

結衣「? どしたの?」

八幡「ちょい待ち、もういっこ忘れてたわ」ガサゴソ

結衣「……?」


八幡「はいよ。これとこれ。お前に渡すことにしてたんだ」

結衣「あ、ありがと…… えっと…?」

八幡「お守り」

結衣「へっ? お守り?」

八幡「あの神社で買ったんだよ。学業成就のお守り。菅原道真じゃねぇけど、あそこにも学問のなんちゃらが祀られてるとかいないとか」

結衣「そーなんだ… 2個ももらっていいの?」

八幡「ああ。なんたって由比ヶ浜だからな」

結衣「ど、どーゆー意味だし!」




八幡「俺も1個でいいと思ったんだけど、雪ノ下がな」

結衣「ゆきのーん!? ひどっ!」

八幡「まあ、部屋で開けてみてくれ」

結衣「え? 今開けちゃだめなの?」

八幡「『私の選んだお守りは特別製で、腐った目で捉えると眼球が爆発する仕組みになっているから貴方は見ないほうが身のためよ』だそうなんで」

結衣「ひぃっ!? 特別製……? ば、爆発って、これほんとにお守り!?」

八幡「俺も見てないからな。真相は知らん」


八幡「ともかく、それ渡し忘れてたってだけなんで」

結衣「あ… うん」



八幡「んじゃ帰るわ」

結衣「うん! あの、今日はほんとに…ありがと」

八幡「ん」



結衣「…ヒッキー!」


八幡「…あん?」


結衣「あたし…勉強がんばる!」


八幡「……」


結衣「絶対がんばって、ヒッキーやゆきのんに追いついてみせる!」


八幡「そりゃ大層なことで」


結衣「だから、そしたら……」

結衣「みんなで、同じ大学に行けるかな…?」


八幡「……」



八幡「まあ……可能性はある、んじゃねーの」


結衣「……!」


結衣「うんっ! ヒッキー…… また明日っ!」



八幡「あ? ……ああ、また明日な」



八幡(明日のことすっかり忘れてた…)





結衣の部屋



パタン


結衣「ふぅ…」


結衣「……」

結衣(なんか、信じられないくらいいろいろあったけど)

結衣(カップル…なんだよね……ヒッキーと…… キスしちゃったんだよね……)


結衣「ふふ……ふへ………うえへへへへ……」


結衣「はっ!」ムグッ

結衣(やば……にやけちゃう! 実は夢じゃんこれ……!? や、夢オチなんてぜったいやだけど!)


結衣「うーーー… ベッドダーイブ!!」


ボスンッ

グルンッ

ガンッ!


結衣「いたぁーーっ!?」

結衣(い、勢いあまって壁に…!)


結衣「あーもー! いたい! 全部ヒッキーのせい! ばーかばーか!!」


結衣「あ……でも痛いってことは、夢じゃないんだ」



結衣「えへへ……えへへへへへ」ニヤァ


結衣「……はっ!」



結衣(また明日……って言ったもんね)

結衣(明日のデート、ほんとにデートになっちゃった)

結衣(ゆきのん、まさかこれもお見通しで……ってそんなわけないか)


結衣「あ、そだ。お守り!」


結衣(ヒッキーからの…)カサ

結衣(ほんとだ、学業成就)

結衣(絶対絶対、がんばるもん。やればできる子だし、あたし! きっと! ……たぶん)


結衣(もう一個はゆきのんからのだよね)

結衣(もーゆきのん、いくらあたしがバカだからって学業成就のお守り2個もくれなくてもいいのに!)カサ


結衣「あれ? なんか、かわいい色のお守り…」


結衣「……恋愛…成就……」


結衣「………」

結衣「あは……あははは……」



結衣「ほんとに…特別製だよ…… もう叶っちゃったよ………ゆきのん」



結衣(……明日、お昼の前に、ゆきのんに会いに行かなくちゃ!)


このあとちょっとあーってなるのと
オチつけるためのエピローグやっておわり
どっちも依然としてだらだら進行です

また夕方か夜か、もしくは明日に

乙です!

何ラブコメしてんだよ、タイトル詐欺じゃねーか羨ましいんだよクソが

数分前に襲われたとは思えないほど能天気だな…
女ってそんなもん?

警察から保護者に連絡行ってない所を見ると
注意だけで終わった臭いな

雪乃「怖がらせてとは依頼したけどあれはやり過ぎよ。警察を説得するのに苦労したわ」

A・B「「すいません姐さん!」」

雪乃「はあ・・・とりあえず今回のことは書類上にも残らないようにしてあるから」

A・B「「ウス」」

犯人が強姦の手段としての暴行・脅迫に着手しているから、本来なら強姦未遂罪が問題なく成立する案件
にもかかわらず、事件化していないということは、ガハマが外聞を気にして告訴の意思がないことを明示したと思われ
通報を受けてかけつけたのに告訴はしないとか、警察も余程やましい事情がガハマの側にあるのだろうと訝しんでいること請け合い

つうっ事は報復フラグが立っちまったという事かな?
BはともかくAはかなりやばそうなDQNだからガハマさんハイエースされてWピース
すること請け合いやなこれは

そもそも舞台装置のモブにこれ以上描写あるわけねぇ

法律が違うんじゃね
そしてエピローグをエロピークと読み間違えてマジスレタイ詐欺じゃねーかとか一人で思った

おちゅ

     |   /|    /|  ./|       ,イ ./ l /l        ト,.|
     |_≦三三≧x'| / :|       / ! ./ ,∠二l        |. ||      ■    ■■    ■
     |.,≧厂   `>〒寸k j        / }/,z≦三≧  |.   | リ ■ ■■■■■ ■■ ■■■■  ■ ■ ■ ■
     /ヘ {    /{   〉マム    / ,≦シ、  }仄  .j.   ./  ■     ■        ■   ■  ■ ■
.       V八   {l \/ : :}八    /  ,イ /: :}  ノ :|  /|  /   ■      ■        ■   ■   ■
       V \ V: : : : : :リ  \ ./   .トイ: :/    ノ/ .}/    ■      ■        ■   ■   ■
       ' ,    ̄ ̄ ̄        └‐┴'   {  ∧     ■   ■■■■■   ■   ■
        V   \ヽ\ヽ\     ヽ  \ヽ\  |     \.    ■  ■  ■   ■      ■
        \  , イ▽`  ‐-  __       人      \  ■■  ■■   ■     ■■
:∧           ∨              ∨    /          ハ
::::∧         ヘ,           /   , イハ         |
::::::∧.         ミ≧ 、      ,∠, イ: : : : :

バタバタしすぎてだめだったすみませんす
寝落ちするかもだけどfin.までいきます



翌日 駅前のカフェ



雪乃「……」キョロ


結衣「あ、ゆきのんこっちこっちー!」ブンブン

雪乃「!」


結衣「やっはろー!」

雪乃「おはよう、由比ヶ浜さん」

結衣「ごめんね? 急に呼んじゃって」

雪乃「それは構わないのだけれど… 店内で大声で呼ぶのは恥ずかしいからやめてもらえる?」

結衣「あっ… ご、ごめん、気をつけるね」


店員「何になさいますか?」

結衣「あ、キャラメルマキアートで!」

雪乃「私はエスプレッソを」

店員「かしこまりました」



雪乃「それで、話があるって言ってたわね」

結衣「あ、うん」

結衣「電話でもよかったんだけど… やっぱりゆきのんには直接会って言いたくって」

雪乃「そう。まあ大方予想はついているのだけれど」

結衣「へっ? そなの?」

雪乃「ええ。昨日もきっと連絡が来ると思って待っていたもの」

結衣「あっ、だから昨日ワンコールで出たんだ。 ゆきのんがあたしからの電話待っててくれるとか、なんか嬉しいかも」

雪乃「別に心待ちにしていたわけではないわ。今日という日の前だから、そんな気がしていただけ」

結衣「そ、そっか。あははー」



結衣「それで、えっと… 話のほうなんだけど」

雪乃「話というのはすなわち、今日の午後の相談でしょう?」

結衣「へっ?」

雪乃「貴女のことだからやっぱり直前で不安になって、話を持ちかけてくると思ってたのよ」

結衣「あ、うーん…」

雪乃「…? 違った?」

結衣「んと、相談もしたいんだけど、ほかにもあるってゆーか」

雪乃「あら、そうなの」

結衣「うん。お礼と……ちょっと報告とか」

雪乃「…ふぅん?」


店員「お待たせしました」コト

結衣「あっ、どーもです」

雪乃「……」ペコリ



雪乃「それで?」

結衣「あ、えっと」


結衣「その…… 改めて、昨日はありがと。あたしのこと助けにきてくれて」

結衣「ゆきのんが来てくれなかったらあたしきっと、いっぱいいろんなもの失ってた」

雪乃「そうね。正直かなり危険な状況だったから」

結衣「うん… それこそあと一歩遅ければもうダメだったって思うし」

雪乃「取り返しのつかないことに至らなくて幸いだったわ。間に合った、とまでは言えないけれど」

結衣「十分だよ! それに助けにきてくれたのがゆきのんじゃなかったら、あんな状況乗りきれなかったもん」



結衣「あの時のゆきのん、ほんとにかっこよかったなぁー。思い出すだけで鳥肌たちそう」

雪乃「それは大袈裟じゃないかしら…」

結衣「ほんとだもん。ヒッキー風に言うならあれだね、あたしが女なら惚れてたレベル!」

雪乃「それを言うなら『男なら』じゃない? というか貴女はすでに女なのだけれど」

結衣「んー、そうだけどさ。やっぱかっこいい人に惚れるのは…女の子の特権、みたいな?」

雪乃「そんなものかしら」

結衣「えっ、そうじゃない?」


雪乃「…なら、それは比企谷君に言ってあげなさい」

結衣「ええっ!? い、いやーそれはちょっと……」

雪乃「いつもなら癪だけれど、今回ばかりは少しだけ賞賛の言葉を贈っても良いと思うわ。彼に守られたところがあるのは間違いないのだから」

結衣「う、うん… わかってる」



雪乃「それに、それくらい言えなくちゃ今日が思いやられるわよ」

結衣「うん?」

雪乃「心の準備はもうできているのよね?」

結衣「あっ……」

雪乃「…?」


結衣「えっとね、そのことなんだけど」

雪乃「由比ヶ浜さん? まさかとは思うけれど、今回はパス、なんてことを…」

結衣「ち、ちがうちがう! そうじゃなくて!」

雪乃「なら今の『やば、言われて思い出した』みたいな顔はなんなのかしら?」

結衣「だからそれは、えーっと…!」



結衣「…ゆきのんっ! あのね、話っていうのはそのことで、どうしても直接伝えたくって…!」

雪乃「なに?」

結衣「でも、でもちょっとだけ待って、一瞬だけ! 深呼吸させて!」

雪乃「はぁ。別に構わないけれど…」


結衣「すーーー」

雪乃「……」

結衣「……」ピタッ

雪乃「……」

結衣「すーーー」

雪乃「……」

結衣「……」ピタッ

雪乃「……」


結衣「く、くるひぃ…」モゴ

雪乃「息を吐きなさい」



結衣「ぷはっ、はぁ…… 死ぬかと思った…」

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん? 大丈夫なの?」

結衣「うん、だいじょぶ。ちょっと緊張しちゃって」

雪乃「そうじゃなくて、頭のほう」

結衣「痛い子あつかいだっ!?」

雪乃「実際、今のはかなり痛い子だったと思うのだけれど…」

結衣「た、たしかに。うー… だってほんとに緊張したんだもん」

雪乃「そこまで話しにくいことなの?」

結衣「うーん…話しにくいってゆーか…」

結衣「もー、タメたらなんか余計言うの緊張してきちゃったよー!」

雪乃「ゆっくりでいいわ。ほら、飲み物でも飲んで落ち着いて」

結衣「ん… そうする」



結衣「ぷはぁ〜〜! うまーー!」

雪乃「目を瞑って聞くと、まるで仕事終わりのビールを飲んでいるようね…」

結衣「やー、やっぱ好きだなーこれ。ゆきのんも一口飲む? キャラメルマキアート」

雪乃「遠慮しておくわ。あんまり甘すぎるのはちょっと」

結衣「えー、そこまでじゃないと思うけどなぁ。ってかゆきのん、ブラックで飲めるのすごいよね。あたし一生無理かも」

雪乃「由比ヶ浜さんも精神的に大人になったら飲めるようになると思うわ」

結衣「そうかな…… あれ? ゆきのんさらっと今ひどいこと言わなかった?」

雪乃「それなら試しに飲んでみる? アイスだからホットよりもコーヒーの苦味を感じにくいはずよ」

結衣「えっ? う、うーん… あたしも今はいいかな」

雪乃「そう、残念」



結衣「ふー…」コト

雪乃「そろそろ落ち着いた?」

結衣「ん。もう大丈夫」


結衣「えっと、ね」

結衣「話したいのは…ヒッキーのこと」

雪乃「……」

結衣「昨日ね、ヒッキーに帰り送ってもらって、その時にいろいろ話したんだ」

結衣「昨日のことと、昨日までのこと、これからのこと」

結衣「正直あたしすごい混乱してて、いっぱい泣いてわけわかんなくなっちゃったりもして、全部は覚えてないんだけどね。えへへ…」



雪乃「泣いたりって…… 由比ヶ浜さんあなた何されたの? 大丈夫? やっぱり下衆谷君に護衛を任せたのは早計だったのかしら」

結衣「ち、ちがくて! ヒッキーは悪くないってゆーか」

結衣「結局はぜんぶ、あたしの勘違いだったし」

雪乃「勘違い?」

結衣「うん。ゆきのんも言ってたように、昨日あたしが2人に気づいて、神社まであとつけてたやつなんだけど」

雪乃「やっぱりつけていたのね」

結衣「あうっ……ごめんなさい」

雪乃「いいえ、あまり気に病まないで。過ぎたことはもういいわ」

結衣「うん… ありがと、ゆきのん」

雪乃「……それに別に他意があったわけではないし」

結衣「へっ?」

雪乃「っ! いえ、なんでもないわ」

結衣「…?」




雪乃「それよりほら、由比ヶ浜さん。勘違いって?」

結衣「えっ? あ、うん」


結衣「えと、ゆきのんとヒッキーがあたしに隠れて放課後一緒に歩いてたじゃん?」

雪乃「まあ、そうね」

結衣「それに気づいて、あたし思っちゃったんだ」

結衣「2人がいつのまにか付き合ってて、デートしてるんだー… って」

雪乃「……」


結衣「あ、やばっ。これゆきのんに言うなってヒッキー言ってたかも」


雪乃「……そう」



結衣「……あれ?」

雪乃「なに?」

結衣「なんかゆきのんあんまり驚かないんだなって」

雪乃「……」

結衣「驚くってゆーか、なんだろ? もっとすごい勢いで拒否るかなーって思ってたから。たぶんヒッキーもそれで口止めしてたし」

雪乃「別に… 昨日のような状況なら、第三者的視点からしてそのように解釈されるのも不思議ではないというだけの話よ」

結衣「そ、そっか」


雪乃「それで、その勘違い… もとい今世紀最大と称しても過言ではないほどに忌まわしい誤解は解けたのかしら?」

結衣「やっぱすごい拒否ってるじゃん…」



結衣「でも、ちゃんと解けたよ。ヒッキーがぜんぶ教えてくれたから」

雪乃「比企谷君が…… そう」

雪乃「ということは、もうタネ明かしは終わっているみたいね」

結衣「うん。なんかね、ここ最近ちょっと引っかかってたこととか、全部つながった気がした」

雪乃「引っかかっていたこと?」

結衣「ヒッキーがいつも眠そうにしてたり、すぐに帰ったりしてたのだったり」

結衣「あとね、ゆきのんが急にあたしんちに遊びにきたのも……なんとなくだけど」

雪乃「…なるほど」

雪乃「貴女にわずかでも勘繰られるなんて、私の行動もいささか軽薄だったわ」

結衣「ちょっ、ゆきのんひどい!」



雪乃「なんにせよ、残念ながらサプライズ自体は失敗してしまったということね」

結衣「えっ、そんなことない!」

結衣「あんな素敵なプレゼントくれるなんて全然思ってなくてびっくりしたし、2人ともあたしのために準備してくれてて、ほんとに嬉しかった」

結衣「今朝さっそくサブレに着せてみたけどサイズもぴったりだし、すっごいかわいくなったよ。ちょっと待って……ほら、写メ!」

雪乃「あら、さすが私。見立てた通りの映え具合だわ」


雪乃「でも本来ならばプレゼントは今日渡す予定だったのよ」

結衣「んー、そりゃあ誕生日は今日だけどさ。あたしはそのへん全然気にしてないし」

雪乃「……由比ヶ浜さん? お気づきだとは思うけれど、今日という日は一応、私がお膳立てしているのよ」

結衣「うん? 分かってるよ? ゆきのんが後押ししてくれなかったらヒッキー誘うのなんてできなかったし」

雪乃「付け加えると、私は一方から貴女の味方をしていたわけではなく、比企谷君とも内通しているのよ」

結衣「へっ? うん… まあそーゆーこと、だよね」

雪乃「……」



雪乃「なら、今日という日をきちんとお祝いすべく、それに見合った環境を調えていたとは思わない?」

結衣「えっ?……あっ!」

結衣「や、やっぱりデートを今日にしたのって…」

雪乃「ええ。気づかれないよう由比ヶ浜さんをその場所へ誘導して、サプライズで簡単なパーティをしようと計画していたの」

結衣「ゆきのん……っ!」

雪乃「もっとも今となってはそれも破綻してしまったのだけれど」

結衣「う……なんかごめん」

雪乃「いいのよ。むしろ先に知れてよかったわ。比企谷君から何の連絡もないものだから、危うく必要のなくなった準備に時間を費やすところだったし」

結衣「あれ、そなの? なんでヒッキー教えてないんだろ」

雪乃「まあ当然といえば当然ね。彼の携帯は彼自身が壊してしまったから」

結衣「あ……そっか」



結衣「そう聞くとちょっと残念かなぁ。今でも十分嬉しいけど、ゆきのんとヒッキーからそこでお祝いされてみたかったってゆーか」

雪乃「ちなみに、私はそこへ登場する予定など初めからないわ」

結衣「うそぉ!?」

雪乃「何を驚いているの? 当たり前じゃない」

結衣「な、なんで? ゆきのんはイヤだったってこと? あたしのことお祝いするのなんて…」

雪乃「馬鹿言わないで… それならそもそも彼の提案に同意したりしないわよ」

雪乃「決まってるでしょう。その場所で貴女を彼と二人きりにするためよ」

結衣「……えっ」



雪乃「言ったはずよ。想いを伝えるには何かきっかけが必要、と」

結衣「う、うん」

雪乃「由比ヶ浜さんは明るく元気なのが取り柄だけれど、肝心なところで勢いが足りないわ。それは分かるかしら?」

結衣「そう…かも」

雪乃「終盤にサプライズを持ってくる、と同時に彼への好感度がさらに上昇する。なおかつ場所も良く、二人きり」

雪乃「そのシチュエーションならば、由比ヶ浜さんも告白に踏み切りやすいでしょう? そういう魂胆だったのよ」

結衣「ゆきのん、あたしのこと…そこまで考えてくれてたんだ…」

雪乃「別に。そうでもしないといつまで経っても貴女は…… って、何を泣きそうな顔してるのよ」

結衣「んーん。うれしくって。えへへ…」



雪乃「それより、兎にも角にも私からのサポートが奏功しなかった以上、あとは貴女次第ということになるわ」

結衣(あ……)

結衣(そだ、ヒッキーとのこと早く言わないと…)

雪乃「実を言うと、こんなこともあろうかと私なりに調べて行き先の候補をいくつかリストアップしておいたの」ペラッ

結衣「えっ」

雪乃「中でも告白をするのに向いたお店やスポットはコメントをつけているから。あくまでネットの情報だけれど、極力バイアスを排除すべく多種の視点から調べたからこの情報とかけ離れていることはないと思うわ」ペラペラッ

雪乃「もちろん以前に話した通り優先すべきは由比ヶ浜さんのしたいことよ。もし必要があれば参考にと思って」

結衣「わ、わー。ありがとー…」

結衣(すごい枚数の資料…… 何時間かかったんだろこれ作るの)

結衣(なんかもっと言い出しづらくなったけど……でも、言わなくちゃ!)



結衣「あ、あのっ」


雪乃「由比ヶ浜さん」ガシッ

結衣「ひぇっ!?」

雪乃「…不安よね。告白というのは少なからず人生に影響を与える行為だもの」

雪乃「私のほうからした経験はないけれど、今まで巣の近くに落ちた餌に群がるアリ程の数の男をフってきたから分かるわ」

結衣「そ、そなんだ……」

結衣(ゆきのんモテすぎ…)



雪乃「それに彼は鈍感ではないけれど、とても捻くれている」

雪乃「人の好意を直球で受け止められないし、自らの好意すらもねじ曲げてきたんでしょうね。ある意味普通の男よりも難しい相手と言えるわ」

結衣「……」

雪乃「でも、きっと大丈夫よ」

結衣「…えっ?」

雪乃「貴女は学校中の誰よりも彼に優しく、誰よりも彼に近づこうとしていった。当然、彼自身もそのことに気づいてる」

雪乃「目を合わせるより先に人を疑うような人間の彼でも、貴女の善意が偽物じゃないことは理解しているわ。もはや疑いたくても疑えないくらいにはね」

結衣「えへへ… そーかな」

雪乃「そうよ。1年以上同じ場所で、この奉仕部で過ごしてきたんだもの」

結衣「でもそれは、ゆきのんも…だよ?」

雪乃「……」



雪乃「たしかに、そこには私もいたわ」

結衣「……うん?」

雪乃「それでも彼はきっと、貴女を選ぶ」

結衣「……」


結衣(……選ぶ?)


結衣「…どうして?」

雪乃「だって、彼は…」

結衣「…うん」

雪乃「……」

雪乃「いえ。女の勘、かしら」

結衣「……えっ?」

雪乃「よく当たるから。私の勘って」

結衣「……」

結衣「そっか」




雪乃「……」

結衣「あのさ、ゆきのん」

雪乃「なに?」


ギュ


結衣「ゆきのんの手、あったかいね」

雪乃「…いきなりどうしたの?」

結衣「んーん、なんとなく。ただ…」

結衣「やっぱりゆきのんは、ヒッキーのことなんでも知ってるんだなぁって」

雪乃「え…?」

結衣「あたしは全然わかんなかった」

結衣「ヒッキーのことずっと見て、知ろうとしてきて… なのに、最後までヒッキーの気持ちに気づかなくて」

雪乃「……」



雪乃「…由比ヶ浜さん、私は賢くてもあまり察しはよくないの」

結衣「……」

雪乃「ちゃんと、何があったか教えてくれる?」

結衣「…うん」


結衣「んと…… あ、あのね…」

雪乃「ええ」



結衣「あたし…ヒッキーに…………したよ。告白…」



結衣「そ、それで……」

雪乃「……」


結衣「ヒッキーと…… つ、付き合うことになりましたっ!」


雪乃「っ……」



雪乃「そう。やるじゃない」

結衣「えへへ……」


雪乃「さすがは由比ヶ浜さん、手が早いのね」

結衣「へへ…… へ?」

雪乃「『突っつき合う』ことになったというのは、つまり、そういうことでしょう?」


結衣「……」

結衣「……ぅえっ!!?///」ボンッ


雪乃「構わないけれど、私その辺の話は少し不得手だから…」

結衣「ちがっ、聞き間違いだし! や、ちがくもないかもだけど……ってそうじゃなくてぇー!! 」

電波なくなるのでまたのちほど

おつノシ

乙です!

おつ

この日、地上から電波がなくなった

電波なくなるってすごい環境だな…
田舎にでも行くのか?

飛行機乗るって意味だった
そして乗り損ねたつらい
なんつー無駄な出費や…

次の便まで2時間くらいあるし最後まで行けるかな
手荷物検査通過したら再開しまうす



雪乃「なんて、そんな聞き間違いするわけないじゃない。メリケンジョークよ」

結衣「うぅーやめてよもぉー… なんかそのジョーク強そうだし…」

雪乃「由比ヶ浜さん」

結衣「うん?」


雪乃「おめでとう」


結衣「…!」


雪乃「よく…頑張ったわね」

結衣「……うん」


ポン


結衣「ひゃっ……?」

雪乃「そんな由比ヶ浜さんには『たいへんよくできました』の花まるを捺してあげます」ナデナデ



結衣「えへ… ゆきのんに撫でられるの気持ちいい」

雪乃「そう。それはよかったわ」スッ

結衣「あっ……」

結衣「ゆ、ゆきのん、もっと……」

雪乃「……」

結衣「…だめ?」

雪乃「全く…猫じゃないんだから。仕方ないわね」ナデナデ

結衣「んふふー♪ てゆか、どうせなら犬って言ってよ」

雪乃「良いけど、犬としての扱いなら全力で重力方向に腕の力を傾けることになるわね」

結衣「やっぱ犬はナシ!! っていうか虐待だっ!?」



雪乃「でも少し驚いたわ。てっきり話っていうのは今日の相談だとばかり思っていたから」

結衣「ごめん、あんまタメるつもりじゃなかったんだけど… 何から話せばいいか分かんなくなっちゃって」

結衣「けどゆきのんには直接、一番に教えたかったの! これはほんと!」

雪乃「そうなの? …ありがとう、で良いのかしら」

結衣「いやいやいや、お礼言うのはあたしのほうだよ。もうぜんぶ、ゆきのんのおかげみたいな感じだし」

雪乃「…そんなことないわ」

結衣「そんなことあるもん。いっぱい助けてくれたし、それに」ガサ

雪乃「…?」


結衣「これ、ゆきのんがくれたお守り!」


雪乃「……」


雪乃「……えっ?」



結衣「ほんと、すごいよゆきのん」

雪乃「……恋愛成就の……お守り…」

結衣「うんっ! まあ、あたしがもらったのは告ったあとなんだけど」

結衣「それでも、もしかすると… あたしの気持ちをちゃんと伝えられたのは、ゆきのんのお守りの効果もあるのかも…って」

雪乃「……」

結衣「ヒッキーから聞いたけど、なんか特別製?なんだってね。もうほんと思い出の品だよ。一生大事にする!」


雪乃「……そう」


結衣「あっ、もちろんプレゼントのほうも大事にするし……って…… ゆきのん?」


雪乃「……そろそろ、待ち合わせの時刻に近づいてきたわね」

結衣「へっ? あ、ほんとだ。もう30分前だ」

雪乃「比企谷君は遅刻性だけれど、恋人との初デートなら、15分前に待ち合わせ場所に現れる程度にはジェントルマンだと評価しているわ」

結衣「はうっ…///」




結衣「あ、改めて恋人とか、デートとか言われると恥ずかし……」

雪乃「本当のことじゃない」

結衣「そーだけど……! ね、ゆきのん、あたし服ヘンじゃない!? 髪もいつもと違うけど大丈夫!?」

雪乃「いえ、特に変ではな」

結衣「メイクは!? 盛りすぎマスクマンとか思われたりしないかなっ!? あと、あと…!」

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん!」

結衣「はっ!」

雪乃「慌てすぎよ…」

結衣「ごめん…」

雪乃「大丈夫。安心して。いつも通りとっても素敵よ」

結衣「あ、ありがと」



結衣「でも、いつも通りかぁ。いろいろ試して気合い入れてみたんだけどなー」

雪乃「…勘違いしているみたいだけれど、そんな上っ面のことを言ったんじゃないわ」

結衣「へっ?」

雪乃「外見を美しくすることは悪ではない。ただし、見た目が本人を形づくる要素のひとつにすぎないことを失念したら駄目なのよ」

雪乃「比企谷君が好きになったのは一体どんな由比ヶ浜さんなのかしら? それを考えてみることね。そうすれば、自ずと答えは見つかるでしょ」

結衣「ヒッキーが好きな…あたし?」

雪乃「……」

雪乃「だから、いつも通り。今のまま。それで良いの」

結衣「今の……まま」

雪乃「だって、それこそが彼を惚れさせた貴女なのでしょう?」

結衣「……!」




雪乃「それじゃ、鉢合わせてしまう前に私は退散するわね。伝票は任せて頂戴」サッ

結衣「あっ」

雪乃「もちろん貸しにする気なんて毛頭無いから安心なさい。むしろ二重のお祝いにしては安すぎるくらいだわ」

結衣「ゆきのん…」

雪乃「また来週。ごきげんよう、由比ヶ浜さん」

結衣「……」



結衣「ゆきのんっ!」


雪乃「…なに? 忘れ物?」


結衣「ううん。あの…… ありがとっ!」


雪乃「……」

雪乃「幸せに…なれるわね?」



結衣「……うんっ!!」



雪乃「ふふ。大変よくできました」




ウィーン





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー



『本気……か?』

『癪だけれど、こんなことを冗談で言えるほど私は落ちぶれていないつもりよ』

『癪なのかよ。まあ、そう…だな。だよな』

『……』

『……』

『それで…? 貴方からの返事はいつ貰えるのかしら』

『……悪いけど今いろいろと追いついてない。少し待ってくれ』

『…別に、今すぐにとは言わないわ。貴方もこういうことを言われたのは初めてなのでしょう? 心臓がハリネズミ並みの速度で鼓動して、今にも口から吐き出されそうなのでしょう?』

『なにそれグロ注意なの? つーか、貴方も、って… お前もそうなのか』

『っ…! い、いいから早く答えなさい。以前自分のことを紳士と評していたけれど、女性を待たせるような輩は紳士失格よ?』

『後でいいのか今なのか、どっちかにしろよ…』




『…いや、その通りだな。今答えられなきゃ男じゃねえよ』

『……!』

『えっと…』

『……』


『結論から言う…………… 悪い、お前とは付き合えない』


『……えっ?』

『……』

『今、なんて…』

『……聞こえなかったか?』

『っ…… いいえ……』

『……』

『……どうして……?』

『……』




『どうして、か』

『私に非の打ち所なんて……いえ、貴方に対しては少しばかりあるかもしれないけれど……』

『少しばかり? アホかお前は。俺の繊細なハートがどんだけお前にみだれひっかきされたと思ってんだ』

『……ごめんなさい』

『……は?』

『……そうよね、あれだけ非人道的な発言をしてきたもの。私だって気づいていたわ。いくらなんでも貴方に対する罵倒が度を超していることに』

『お、おい』

『……嫌われて当然…よね』

『ちょっ、そんなしおらしくすんなよ、お前らしく…』

『仕方ないわよね… どれだけ私が美人で優しくて天才で器量が良くて素直でかわいくて良い香りがして美人で面倒の良い完璧美人だとしても』

『お前らしすぎるわ。ねえ、なんで美人って2回言った? 大事なことなの? …あれ待てよく聞いたら3回言ってね?』



『……ねえ、何が不満なの?』

『……』

『今まで貴方を傷つけたことは謝るわ… そのぶん、これから貴方に尽くすつもりよ?』

『別に……不満とかじゃねぇよ。罵倒されたのだってそんなの全部が全部本気じゃないことくらい知ってる。つーか本気だったらガチで自殺するわ』

『それに、素直ってのを除けばさっきお前が言った内容も間違っちゃいない。お前はほとんど誰から見ても完璧な奴だ』

『ならどうして…? 断る理由が無いじゃない』

『……』

『私に言い寄る男は無数にいたけれど、私からなんて本当に…初めてなのよ?』

『っ…… それでも…』



『こんなにかわいい子が告白してるのに…… 好みじゃないというのかしら?』

『…んなこと言ってねーよ』

『それともなに? 黒髪ロングはお気に召さない?』

『いやだからそうじゃな』

『もしかして…… む、胸なの…? 私に胸が無いから……』

『……!?』


『そ、そう……やっぱりそうなのね。薄々感じていたけれど、こればかりは現状どうしようもないし』

『お前っ…』

『で、でも将来的に可能性は大きくあるわ! ほら、私には姉と同じ血液が流れているのよ?』

『……だから……!』


『それに万が一駄目でも… それを補って余りあるくらい……なんでも…その…好きなだけご奉仕して……』


『だからちげぇっつってんだろ!!!』


『!?』




『な、な……?』

『……』

『…あ……うっ…』ジワ

『……っ!? わ、悪い! 怒鳴るつもりじゃなかった』

『……ぐすっ…』

『頼む、泣くのは勘弁してくれ……』

『…………』

『いや…まじで、お前泣かせたとかたぶん俺何かに殺されるっつーか』

『……死にたく…なかったら……私と……』

『なっ……』

『……』

『……』

『ごめんなさい……… 今のは…どうかしてたわ…』

『ああ……少し落ち着け。な?』

『……ええ……』





『怒鳴っちまったのはまじで悪かった… けど、本当にお前にダメなとこがあるとかそういう理由じゃないんだ』

『……えっ?』

『……』

『なら、どうして…?』



『……俺にはもう、他に好きな奴がいるから』


『……っ!』


『断ったのはまあ、その一点だ。他に一切の理由はない』

『………そう』




『そいつは総武高の生徒で、俺の高校生活を彩る数少ない女子のひとりだ』

『それって…』

『いつでも前向きで、明るくて。ぶっちゃけ言うと俺とは対照的すぎて関わりたくないタイプの女子だった』

『……』

『見た目もチャラチャラしてるしリア充ビッチ臭がするし、空気を読みすぎる八方美人で… 繰り返すがぶっちゃけ関わりたくないタイプだった』

『……』


『ちなみにだけど胸もデカい。繰り返すがぶっちゃけ関わりたくないタイ』

『嘘ね』

『…ま、まあそれは良い。おい露骨に110番押すな、机に携帯置け。間違えました置いてください!』




『なんだか若干今ので信頼性が落ちた気もするが… あえて今言おう。そいつの外見なんざほとんど関与してねぇ。パーセンテージにすりゃ消費税くらいだ』

『スウェーデンのね』

『日本のだよ! ……ん? それは言い過ぎ…じゃないな、日本の。それも3%時代。いやマジ』

『…どうだか』

『おほん! ま、まあ疑惑も晴れたところでさっきの話だけど、最初は俺もそいつに惚れるなんて思ってなかった』

『果たして疑惑は晴れたのかしら』

『……はい。んで、ぼっちの達人である俺は他人、とりわけ女子からの接触は警戒に警戒を重ね、コンタクトがあれば裏の裏のそのまた裏まで熟読する能力を有していた』

『……』



『奉仕部に入れられてからもそれは変わらない。部活動という名のもと、幾ばくかの依頼をそれなりに解決してきた』

『その中でいくら人間と関わろうとも、俺は常に魔法瓶よろしく人の熱にあてられない壁を作っていた』

『……はずだったんだ』

『……』


『気づいたのはいつか、正直分からん。始まったのがいつかなんてもっと分からん』

『けど俺は悟っちまった。青春など欺瞞と謳っていた俺の中に無意識のうちに芽生えた自分の感情が、認めざるを得ないまでに膨らんでいたことを』

『ぶっちゃけ今でも答えが出ねぇ。分かってるのは、具体的になぜなのかなんて、整数問題みたいに理路整然とした道筋で解答を導き出すのはいくら考えても無理ってことくらいだ』



『考えるのを放棄したわけじゃない。なんでそうなったか俺だって理由が知りたい。でも分かんねぇもんは分かんねぇんだよ』

『なんだかんだかわいいところとか、スタイルが良いとか、外見が全くないって言えば嘘だろう。けどな、それだけで人を好きになるなら俺はこれまで3ケタの女性に恋をしていることになる』

『だが実際はそうじゃない。つまり、逆説的に上っ面なんて人を好きになる真理じゃないってことだ』

『…!』


『じゃあ、なぜか。誰にでも優しく、空気が読めて、明るく元気だから? ……そうかもしれない』

『けどそれは、八方美人で、自己主張が無くて、うるさいだけのバカとも言い換えることだってできる。故に性格や立ち振る舞いだって、核心になるとは言えない』

『……』

『なら一体この感情はなんなんだ? 何に触れて湧いて出てきやがった? …俺のスカスカな脳みそじゃ、いつまで経っても適当な答えなんざ見つけらんなかったよ』

『…そう』



『……でもそんな鉄骨丸出しハリボテ建築のように密度の低い俺の脳が、どうにか地面に尻をつけたくて、じゃあって感じで出した妥協案がある』

『えっ…?』


『それは…』

『それは……?』


『そいつが、そいつだからだ』

『……』


『……はぁ?』



『いくら考えても具体的な理由が見つけられない。だったらそれは、元から理由を見出すことができないものであるという結論に至る必要条件と捉えることだってできる』

『一体何を言っているのかしら……』

『おい、数学苦手なのに頑張って理論立てて説明しようとしてんだぞ。うしろに “この馬鹿” とか補填できそうな顔すんのやめろ』

『……』

『それにエジソンのフィラメント研究知ってんだろ? 実験素材がすぐに焼き切れることを実験失敗と言わない。そういうタフな精神が肝要なんだっつの』

『それを当てはめるとこの世で電球が完成することがないという結論に至るのだけれど……この馬鹿』

『細かいこと気にすんなよ…… しかも補填しやがったし』



『つまりはアレね。好きだから好き、とかいうわけの分からない文言と同類の思考をしているわけね、貴方は』

『ばっかお前一緒にすんな。そんなん俗世間のチャラ男とかビッチの常套句だから。理由が分からないんじゃなくてガチで理由ない奴らが口にする言い訳だから。そうじゃなくて…』

『そいつである、故にそいつが好き。ってことだ』

『……』


『何が違うのか皆目分からないのだけれど…… デカルト風にで言い直せば戯言がまかり通るとでも思ったの?』

『…やっぱダメか』




『まあいい。とにかく、俺はわりと本気でそう思ってる』

『……?』

『“好きだから好き” なんてのは結果論であって、そこに理由はない。でも “そいつだから好き” ってのはどうだ』


『そいつの何に、どこに惚れたのかは分からない。かわいいからか、童顔だからか。優しいからか、偽善者だからか。懐っこいからか、孤独が怖いからか』

『見方によって正にも負にもなりうる数々の要因がそいつには山ほどあって、自分はそれのうち一体どれに惹かれているのか。やっぱりそれは不明なままかもしれない』


『…でも考えてもみろ。特定できなくたって、確実に、そいつの持つ何かをもって自分はそいつが好きなんだ。その事実だけは揺るがない』

『……それはそうだけれど』

『すなわちそいつが好きなのは、今のそいつに何かがあるからだ。ともすれば、そいつの何かが変わってしまえば、自分はそいつが好きでなくなるかもしれない』

『言い換えると、今のそいつであるからこそ、確実にそいつが好きなんだってことだろ』



『つまりはそういうこと。まあ、ちょっくら無理やりな解釈かもだけどよ』

『ちょっくら、どころの騒ぎかしら』

『いいんだよ自分で納得できりゃ』


『それと…ほら、なんだ』

『……?』

『お前のこと、断ったのが、何の理由もない曖昧な感情だなんて……ありえねぇだろ。そんな風にお前に思われたくないんだよ俺は』

『……!』

『お前の気持ちは本当に嬉しかったんだ。それだけは分かってほしい』

『……そう……』


『はっ、ぼっちを誇っているくせに他人からどう思われるか気にしてるなんてな。笑いたきゃ笑え』

『……』



『…………ない』

『……あん?』

『笑うわけ…ないでしょ』

『……』


『だって……』



『比企谷君が、比企谷君だから。そんなところも含めて……今の比企谷君が好きなのだから』



『……サンキュな。雪ノ下』



『でも、お前の気持ちには応えられない』

『……ええ』


『俺は……』





『由比ヶ浜が、由比ヶ浜だから。今の由比ヶ浜が……好きだから』







ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



スタ スタ


雪乃「……」


ガサ…


『学業成就』


雪乃(……そういえば、きちんと確認せずに渡してしまったかもしれないわね)



雪乃「もし、ならなかったら………許さないんだから」













結衣(ヒッキーいつくるのかな。はぁー、なんか緊張してきた)


結衣(てか、ゆきのんコーヒー置いてってるし!)

結衣(……ちょっとだけ飲んでみよっかな?)


ズッ


結衣(うへ、ホットコーヒーなのにあったかいような…冷たいような……てか、やっぱにがぁ……)


結衣(………)



結衣(……なんだろ)


結衣(よくわかんないけど……あったかくて、冷たくて、すごく苦くて)






結衣(ゆきのんの手も………こんな感じだったような?)






結衣(手なのに…… 変なの)




ほんとに小説とかならこんな感じでするっと終わったらかっこいい気もする

しかーし楽しいオチをつけずには終われない
ので続いてエピローグです



午後1時半



結衣「……」

八幡「……」


八幡「あ、あのですね。そろそろ機嫌を直してみてはどうですか?と…八幡は八幡はおそるおそる尋ねてみたり」

結衣「……」ギロッ

八幡「ひぃっ」

結衣「…なにそれ? 初デートの待ち合わせで彼女をカフェに1時間以上待たせた男の態度?」

八幡「………」

結衣「ねぇ知ってる? 駅前カフェの休日のお昼どき繁盛期の2人席で、飲み終えたカップもってひとりでじっと座ってる私服ジョシコーセーの気持ちってどんなか知ってる? ねぇ知ってる?」

八幡「お前は豆しばかよ」

結衣「は?」

八幡「ふぇぇ… だからそのですね。やむにやまれぬ事情で夜が遅くなってしまったというか…と、八幡は八幡は小首を」

結衣「かしげんなしマジキモいし死ねし」

八幡「やめてぇ! 八幡のライフはもうゼロよぉぉ」



八幡「…いや、ほんと悪かったって」

結衣「……」ぶっすー

八幡(どうすりゃいいの……)



ガタン ゴトン


結衣「……」

八幡(気まずいってレベルじゃねーぞ。昨日以上に)

八幡「な、なぁ。これどこ向かってんの? 船橋?」

結衣「…表参道」

八幡「あ? なら最初から京葉線にすりゃよかっ」

結衣「ヒッキーが遅いから予定狂ったんじゃん」

八幡「アッ…スイマセン」

結衣「……」

結衣(って言っても元々予定なんてないけど…)

結衣(てゆかヒッキー、ケータイなくて連絡取れなかったんだよね。なんか一回怒ったら後戻りできなくなっちゃった……)

八幡「……」

結衣・八幡(どうしよう……)



八幡(くそっ…何か甘いもんでも買ってやったら機嫌なおるか? ハニトー? クレープ? 全然行ったことねぇからいい店知らん)

結衣(コーヒーの味微妙に残ってるなぁ。甘いもの食べたい…)

八幡(っつーか表参道ってなんでまた… 本当は雪ノ下んとこ向かってるとかじゃないよな? まじで? 処刑台とか用意されてる気がするんだけど)

結衣(で、でもこれ以上は…! 1日に2回甘いものはヤバいかな太るかな……)


八幡「ふあ……」

結衣(ヒッキーなんか眠そう。 遅刻したくせに…)

八幡(はぁ、眠い。いっそ諦めて本当のこと言うか? いやだがしかしバット……)


結衣(お? メールだ。誰だろ)


結衣(小町ちゃん? 文章ながっ!)



結衣(……えっ?)



from: ☆こまちちゃん☆(義妹かも・)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ユイさん、やっはろー!です!

ゴミい…じゃなかった、おにいちゃんとのデート、どーですか!?
もしかしたらおにいちゃん遅刻したんじゃないかなーって小町はワクワクしてるところです。
あ、まちがえました。ドキドキしてるところです!

なんか、昨日は眠れなかったみたいなんですよねー。
よくわかんないんですけど、お布団入ってずっともぞもぞしてるし。
くちびる抑えてニヤニヤしてたり、なんかセリフの練習?とかしてました。ちょーキモかったです。
たぶんアレですね、名前呼びの練習とかですね! これはユイさんに告っちゃう流れですよ!
で朝は徹夜明けの顔してて、日アサの戦隊モノそっちのけで5分おきくらいに時計チラチラ見て、これまたキモかったです! 待ち合わせ時間が待ちきれなかったんでしょーねー

結局10時くらいに床で倒れてたんですけど、スケルトンの練習かと思って放置して小町は出かけちゃいました。
今思うとあれもしかして、寝落ちだったのかもしれないですねー…
そんなわけで寝坊してるかもなので、もし遅れてたらごめんなさい!
好きなだけ叩いていいですからね。おにいちゃんもよろこぶと思います!

それでは、いろいろ報告楽しみに待ってますっ!
ではっ!


S.P.

ちなみに小町的には甥っ子と姪っ子が3人ずつ欲しいので、そっちもよろしくお願いしますねっ♪

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結衣(あ、あは…… ヒッキーってば…)


八幡(いやいや無理無理。昨日のこと思い出したりデートでの(エロい)妄想したりして眠れませんでしたーとか。別の意味で俺が死ぬ)

結衣(昨日のこと思い出して……しかも、今日のデートそんなに楽しみにしてたんだ)

八幡(はぁ…もういいか。眠いし、降りた駅で考えよう)

結衣(てゆか、甥っ子姪っ子って……もー!小町ちゃん気が早いし!///)


八幡(……ねむ…)

結衣(も、もーしょーがないなぁ。そろそろ許してあげるよっと)

結衣「ね、ねぇ」

八幡「ふあ……」




結衣「……」

八幡「ふぁあ………」

結衣「ヒッキーがまたあくびしてる…」

八幡「へっ? あ……」


八幡「ち、違うっ! これは、口を大きく開けることで普段使わない筋肉をだな!」

結衣「……ヒッキー?」

八幡「すみません嘘です」

結衣「ふーん…? どのクチがウソついてるわけ? 」

八幡「返す言葉もございません」



八幡「なぁ、頼むから機嫌直して…」

結衣「……そんな悪いクチは、こうしちゃうんだからっ」


ズイッ


八幡「は…? ちょ、待っ」







結衣「〜〜♪」ギュー


八幡(電車内とかやめてよぅ………バカッポゥじゃねーかよぅ……)




八幡(周囲の視線が痛すぎる…… まあ、土曜昼下がりなだけまだマシか。比較的人少ないし)

八幡(てか、どうした? いきなりゴキゲンになったな)

結衣「うへへ……」ギュー

八幡(なんか美味そうな広告でも見つけたか? げふんげふん、腕に当たってますよガハマさん)

八幡(なにがってそりゃ……… あ? 目の前に新作ハニトーの広告あんじゃん)


結衣(えへへへ……ヒッキー、ヒッキー♪)


八幡(…なーるほど。助かったわ。っつーかハニトーの広告見ただけで機嫌直るとかもうね)


結衣(ヒッキー、あたしね…ヒッキーのこと)



八幡「ったくお前、どんだけ好きなわけ?」


結衣「ん……せかいいち、だいすき!」


八幡「ワォ…」




結衣「………っ!?/// な、なに言わせてんの…!////」

八幡「なんつーか… そこまで言えるのすげーな」

結衣「うーっ!///」

八幡(んな甘いモンよく食えるよなぁ。甘いのはコーヒーだけで十分だっつの)

結衣「……」


結衣「ね……ヒッキーは…?」

八幡「あん?」

結衣「だ、だからっ! その、ヒッキーは? どんくらい…好き……?」

八幡「お、俺?」

結衣「うん……」

八幡「どんくらいって……そうだな……」


結衣「……////」ドキドキ






八幡「まあ、ふつうにMAXコーヒーのほうが好きだな」





結衣「…………………」








八幡(このあとめちゃくちゃポコパンされた)












結衣「ヒッキーがまたあくびしてる…」

fin.




以上です。


最初は30レスくらい予定だったものが気付けば10倍以上に。増えるのはいつものことだけど自分史上最大だこれ

シナリオ変更したり細かい修正したりで1ヶ月以上かかっちゃいましたが完走できてよかったです。
半分くらい駄文なのはもう諦めてます。
少しでも面白いなとかつまらないなとかって思ってもらえれば幸甚です。

現行で読んでくれてた方々、おつかれさまでした。
本当ありがとうございます。


ではようやく飛行機飛ぶのでまたのちほど(おまけ的な)
バイトは遅刻です。


千葉県某空港、外人に絡まれながら

乙でした。
面白かった!
最後は2人とも小町のスペシャルなメールに救われたね。

次回作に期待


懲りずにすれ違っちゃうあたりがさすが八幡というべきか

普通のラブコメならこのENDになるよね

乙乙
飛行機降りたらまた投下してもいいんだよ?

乙です。
よいラブコメでした!

>>80

の続きからおまけ
投下し始めの頃はこっちを本編のつもりで書いてふぅってなってました



お風呂



雪乃「……」ゴシゴシ

結衣「………あっ…」

雪乃「……」ゴーシゴシゴシ

結衣「……やっ……ん……///」

雪乃「……」ゴーシゴーシ

結衣「ひぁっ…///……ひゅきっ…ゆっ…ゆきのん!…///」

雪乃「なにかしら」

結衣「その…も…もっと強く…して…?」


雪乃「そう? 痛くないかしら」

結衣「ううん痛くない。てか、今のだと優しすぎてくすぐったいってゆーか…///」

雪乃「ごめんなさい、加減がよく分からなくて…」

結衣「ぜんぜん! あ、終わったら交代してあたしがゆきのんの背中洗ってあげるから!」

雪乃「ええ。それじゃあ、もう少し強めに擦るわね」

結衣「うん!」



雪乃「と思ったけど単純に私の力不足だっただけね嗚呼非力って辛い」ゴーシゴーシゴーシ

結衣「あっ///ゃぁああ////」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

雪乃「なんてはしたない嬌声なのかしら。やはりあなたは噂通りのビッチね。いい加減認めたらどうなのこの雌豚が」

みたいな世界は書けません(参考資料)



チャポン


結衣「……」プクー

雪乃「ごめんなさい」

結衣「……ゆきのんのバカ」

雪乃「私としたことが、少しはしゃぎすぎたわ」

結衣「……」

雪乃「……」


雪乃「あの、由比ヶ浜さん。反省しているわ。本当に悪かったと思」

結衣「せいっ」ピュッ!

ピシャッ

雪乃「っ!」


結衣「えっへへ、手のひら水鉄砲〜♪」

雪乃「……」



結衣「そりゃ、そりゃ!」ピュッ ピュッ

パシャッ
ピシャッ

雪乃「くっ…!」

結衣「もう怒ってなーいもん。ゆきのんも反撃していいよ」

雪乃「ふっ。言われなくてもそのつもりよ」

結衣「あ、水鉄砲だけね!」

雪乃「!?」


雪乃「…? こう、かしら?」グニ

ダラァ…

結衣「あちゃー」

雪乃「くっ、なかなか…うまく飛ばないものね」グニ グニ

結衣「あ、手前から抜けちゃうのが失敗してるっぽいから、一回お湯すくってキープしてみるといいよ」

雪乃「まず組み方がこれで合っているのかしら」



結衣「んーとね、左手の人差し指の付け根でフタする感じで…あれ? こっちだっけ?」サワサワ

雪乃「……」

結衣「反対向きだと分かんないや。ちょっとゆきのん、腕の下通るね」

雪乃「ええ」


結衣「えっとこれがこうでー、ここの穴からお湯すくってー」

雪乃「貴女の頭で少し見えにくいわね」

結衣「あ、ごめんそうだよね… でもこれで準備オッケーだよ! あとは手前から奥に、ギュッて押し出す感じで撃つだけ!」

雪乃「なるほど。心得たわ」

結衣「ゆきのん、いけそう?」

雪乃「由比ヶ浜さん」

雪乃「私に不可能は無いのよ」

結衣(ヤダ、ゆきのんかっこいい…)


雪乃「いきます」



雪乃「はっ!!」グニッ

ダラァ…



結衣「ぷっ」

雪乃「……」

結衣「ど、ドンマイだよゆきのん! 練習すれば…っ…できるように……っ……!」


雪乃「……」グニッ

ダラァ…

雪乃「……」グニッ

ダラァ…

雪乃「……………」



結衣「……っ……っ…!……!」プルプル


雪乃「……」ゴゴゴゴゴ

結衣「!!」ハッ


結衣「そ、そろそろあが」

雪乃「……」グニッグニッ

結衣「きゃあああ!?////// ゆ、ゆきのんどこ触ってるのっ!!/////」

雪乃「嗚呼」グニッグニッ

雪乃「何故、かくもももは桃でモモなのかしらね」グニッグニッグニッグニッ

結衣「はぁぅ////…も、もも? そこ全然太ももじゃないよ/// そこは……」

雪乃「おかしいわ、微塵も鉄砲が撃てないのだけれど。こんなにも絞り込んでいるというのに。牧場ではプロ級だったはずよ私は」グニッグニッグニッグニッグニッ

結衣「ゆ、ゆきのーん!?/// もう許してぇ〜!/// 」




お風呂あがって夕飯食べて遊んでからのベッド浜


雪乃「夕食までご馳走になって、本当ご両親には頭が上がらないわ」

結衣「ううん… あんまり友達が家までお泊まりしにくるなんてことないし、お父さんもお母さんも喜んでたよ」

雪乃「そうだと良いわね」

結衣「そうだよ。それにゆきのんは美人だし、家事のお手伝いもできるし、あたしには勉強もお喋りも付き合ってくれるし… えへへ、いいことづくめだね」

雪乃「ふふ。身に余る評価で恐縮だわ」

結衣「そんなことない! ゆきのんはホントにすごいもん。クールで優しいし、何でも出来るし、だけど意外と負けず嫌いだったりしてかわいいとこもあるし」

雪乃「そ、そんなに色々言われると流石に照れるのだけれど」

結衣「それに、なんていうのかな。あたしにとっては…」

雪乃「…?」



結衣「なんか、素敵な王子様みたいな……」ボソッ



結衣(て、待って待って! こんな恥ずかしいこと言えないっ…/////)


雪乃「……それ、私はなんてコメントしたら良いのかしら」

結衣「へっ?」

雪乃「今…その……王子様って…」

結衣「……え、えぇええ!?」



結衣「あ、あ、あたし、声に出してた……?」

雪乃「そのようね」

結衣「……////」ぷしゅー

雪乃「由比ヶ浜さん…」

結衣「……あたしもう、お嫁に行けないかも」

雪乃「ええ? そ、そんなことないわ。貴女はとても魅力的だもの」

結衣「……ありがと…///」


結衣「でもお風呂で、あんなことされちゃったし…」

雪乃「そ、それは…!」

結衣「ゆきのんとかゆきのんとかゆきのんに? あんなこともこんなこともされちゃったし?」

雪乃「……今度こそ反省しています」

結衣「……」


結衣(あは、落ち込むゆきのんかわいいなぁ)

結衣(もう少しだけいじわるしちゃっても、いいよね?)



結衣「今だって、何考えてるのか、同じベッドで寝ようとしてるし」

雪乃「!?」

雪乃「これは貴女の要望…というか命令でしょう!? こうしないとお風呂の件は許してくれないって…」

結衣「へー、そーゆーこと言うんだ」

結衣「ほんとは嫌だけど、命令だから仕方なく一緒に寝るんだ」

雪乃「そ、そんなことは言ってないのだけれど! 嫌というわけじゃ…」

結衣「ふーん」

雪乃「私はその……」

結衣「だったらさ、ゆきのん」


結衣「ゆきのんが責任取って、王子様になってよ」


雪乃「……!?」



結衣「責任。ちゃんと責任を持って、あたしをお嫁に貰って」

結衣「あたしだけの王子様になって、あたしを幸せなお姫様にして」

雪乃「」


雪乃「お、お嫁って……王子様って、貴女ね……」


結衣「じゃないと、一生許してあげないもん」プイッ

雪乃「…!!」


雪乃(……困ったわ……)


結衣(……後ろで困った顔してるだろうなー、ゆきのん)



雪乃(たしかにお風呂ではやりすぎて[× ヤりすぎて]しまったけれど、こんなことになるとは思ってもみなかったわ)


雪乃(どうしたものかしら。どうしたら、由比ヶ浜さんは許してくれるのかしら)

雪乃(時間が解決してくれる? いえ、それでは駄目。忘却の摂理と記憶の遠近法に頼っているようでは由比ヶ浜さんへの誠意がないし、きっと私自身の為にもならない)


雪乃(かといって、それなら彼女を受け入れるの? 彼女の気持ちにとりあえず応えて、この場を収める?)

雪乃(……いいえ、それじゃさっきと同じ。結局、時間に依存して流れ行くのを待つだけになる)

雪乃(一体どうしたら…)



結衣(あれ…ゆきのん、黙っちゃった…?)



雪乃(………違う。そうじゃないでしょう、雪ノ下雪乃!)

雪乃(どうして最終的に彼女から遠ざかる手段ばかり計算しようと思うの? どうして自分の思考を正当化しようとしているの? そうじゃないでしょう!)


雪乃(由比ヶ浜さんは本気かもしれないのよ。それなのに、急すぎる展開を言い訳に私は自分の我が儘を貫こうと躍起になっている… 己の気持ち良さのために、彼女の真っ直ぐな心を踏み躙ろうとしている)

雪乃(そうじゃ…ないでしょう!)



結衣(………うーん…)ソワソワ



雪乃(向き合いなさい、雪乃。彼女の想いと)

雪乃(向き合いなさい、雪乃。自身の葛藤と)


雪乃(そして彼女の言葉の意味をよく考えるの)


雪乃(彼女の求める責任とは何か。彼女の夢見る、王子様とは何か)

雪乃(考えて、考えて。可能な限り早く、それでいて真摯に)


結衣(……?)


雪乃(再現が完璧じゃなくてもいい。所詮は私の推測の範疇なのだから。彼女の真剣な想いに対する、私の渾身の、本気の虚像をぶつけるの)

雪乃(私自身が変わるのは、その後でいくらでもできるのだから)


結衣(ひょっとして寝ちゃったのかな)



結衣(……ちょっといじわるが過ぎたかな。もしかしたらふて寝だったり)


結衣(大体お願いが無理あったよね。私だけの王子様になって、だなんて。女の子同士なのに)

結衣(でもゆきのんホントにかっこいいとこあるし、後ろから抱きしめられて耳元でセリフ囁かれたりしたら……)


結衣(…………/////)




結衣(ってぇ! 何想像してるんだろ!? あたしただのアホみたいじゃん!)




結衣(ゆきのんに限ってそれはないしね、明日起きたら冗談だって言って、でもちゃんと謝らなきゃ)

結衣(そしたらお互いさまだって… すっきり仲直り……できるよね)

結衣(…………)ウト


結衣(………おやすみ……ゆきの…ん)




グイッ!

ダキッ!



結衣「!!」ビクッ


結衣(…えっ…な、なに!? 後ろから…)


雪乃「結衣」



結衣「……へ?」

雪乃「結衣、聞いてくれ」

結衣「ゆ、ゆきのん!? 急にどうしたの…ってゆーか、今、名前…!?」


雪乃「君の想いは伝わったよ。こぼれることなく、僕の胸に。だから安心して聞いてほしい」


結衣「」


雪乃「君は言ったね」

雪乃「僕に責任を取ってほしい、君だけの王子様であってほしいと」


雪乃「正直に伝えよう、今の僕にはその責任を果たせるだけの力がない。立場も、能力も、あらゆるものが君に対する責任を全うするに欠くと言えるだろう」



雪乃「だから僕は迷った。本当に僕で良いのか」

雪乃「君の選択が君を貶めるものになってしまうことが怖い……そんな都合のいい言い訳を盾に据えて、逃げようとすらしていた」

雪乃「そして一歩下がって、そんな情けない自分を俯瞰して見ることで、自分の中にある醜さと惨めさに気がついてしまった」


結衣「」


雪乃「対して君は、ただ無垢に純真だった」


雪乃「自らの想いを、相手にぶつける」

雪乃「至って単純なその行いが、僕にはとても清廉で、眩しくて、伸ばしても手の届かないような… それはちょうど昼下がりに樹の下で仰向けになり、木漏れ日を掴もうとする感覚にも似ていた」



雪乃「迷い続ける僕に向けられた、迷いのない君の気持ち」

雪乃「そんな君の真摯な想いに触れて、心の中でなにか外れていた螺子が噛み合うかのように動くものを感じたんだ」

雪乃「今の僕では駄目かもしれない。君に対する責任を果たすには、足りないものだらけかもしれない」


雪乃「だが、それがなんだ」


雪乃「そんなものが、今の僕に向けられた、今の君の想いを無碍にする理由にはならない」

雪乃「僕の行うべきは、最初からたったひとつだった」



結衣(これ…ほんとに……ゆきのんなの…?)



結衣(変だよ、いつものゆきのんなら…こんなこと絶対にしない…)

結衣(で、でも…こんな後ろから抱きしめられて…よくわからないけど、なんかスゴい言葉を本気で言われて……)

結衣(あたしも恥ずかしいけど、ゆきのんはもっと勇気いることしてて…)



以下耳元



雪乃「結衣」

結衣「ふあっ…… は、はいっ!」





雪乃「愛してるよ」

結衣「」



雪乃「君が僕のお姫様だ。この先ずっと、永遠に、僕の隣に居てくれないだろうか…?」


結衣「」




雪乃「………」

結衣「……////」






結衣「……はぃ/////」





雪乃「やったぜ。」







結衣「ヒッキーがまたあくびしてる…」

Fin.(ゆりゆらららゆるゆりエンド)


今度こそおわり


そういえば本編書いてる途中で原作買って読んでみました。うまいなーって思いました。まる。
あと飛行機で3巻読み始めてやっべって思いました。まる。

乙です
感動した

おしゃかしゃ幡






おつ
次回作に期待

DQNから一気に読む気無くした

まったく同感

渋だったら星20くらいの作品

批判コメ残すくらいなら読むなよカス

読む気なくした奴が完結した後にレスをする
これほど滑稽なギャグは無い

途中でレスしたらやる気無くすとか邪魔すんなとか雑談スレで書き手が大暴れしてたから終わるまで我慢してたらダブスタで叩かれたでござるの巻

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年08月09日 (日) 11:55:53   ID: cMhRJXz_

続き、待ってます

2 :  SS好きの774さん   2015年08月18日 (火) 08:21:48   ID: nbS1_z1-

続きも読みたいです

3 :  SS好きの774さん   2015年08月20日 (木) 12:20:21   ID: nFA_6D9W

これ、結末どうなるんだ?

4 :  SS好きの774さん   2015年09月23日 (水) 20:03:09   ID: 0j523bvf

A・Bとの絡みいるかなぁ…
そこ以外は面白かった

5 :  SS好きの774さん   2015年09月23日 (水) 22:44:00   ID: m-eYmUlw

殿堂入りだな

6 :  SS好きの774さん   2015年09月26日 (土) 10:52:20   ID: 0164DdBH

すばらしい。

また、読みたいので、他の作品も頑張ってください

7 :  SS好きの774さん   2016年02月06日 (土) 08:08:58   ID: J0pT8QHx

A・Bはまあいいけど助けが間に合うんならボロンまでする必要なかったんじゃねとは思う
まあ全体的に見て普通に面白かったけどな

どっちもゴミクズだがAの暴走っぷりにちょっとBに同情を覚えてしまったw

8 :  SS好きの774さん   2016年06月28日 (火) 18:45:14   ID: 8Mn0vpVa

なっげぇぇぇ

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