安価タイトルSS書くよ (91)
版権物は無しでお願いします
今回のタイトルは「>>3の>>2」です
安価どうぞ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1370262885
処女喪失
奴隷少女
タイトル「奴隷少女の処女喪失」
性欲のそそられるタイトルに決定しました
あらすじ考えてきます
しょっぱなから飛ばすなあwwwwww期待
最悪のタイトルw でも期待
まぁ、前々から複数端末で色んなスレでクソ、またはキモい変態安価しまくるAOだしなぁ…
大体のあらすじ出来たので徐々に書いていきます
タイトル「奴隷少女の処女喪失」
まったりいきますのでご容赦下さい
おお、頑張ってくれ
奴隷少女「御主人様、おはようございます」
男「お、おはよう」
奴隷少女「……」
男「……」
奴隷少女「あの」
男「な、なに」
奴隷少女「私、商品名を『奴隷』と言いまして」
男「うん、知ってるけど」
奴隷少女「つまりは『人権に関係なく、道具として扱われる存在』なんです」
男「うん……」
奴隷少女「……」
男「……」
奴隷少女「何故私を買ったんですか?」
男「いや、まあ……なんとなくなんだけど」
奴隷少女「なんとなく!」
奴隷少女「御主人様、おはようございます」
男「お、おはよう」
奴隷少女「……」
男「……」
奴隷少女「あの」
男「な、なに」
奴隷少女「私、商品名を『奴隷』と言いまして」
男「うん、知ってるけど」
奴隷少女「つまりは『人権に関係なく、道具として扱われる存在』なんです」
男「うん……」
奴隷少女「……」
男「……」
奴隷少女「何故私を買ったんですか?」
男「いや、まあ……なんとなくなんだけど」
奴隷少女「なんとなく!」
奴隷少女「なんとなくで私はここに居るのですか」
男「まあそうなる、かな」
奴隷少女「確かに、私は道具なので、御主人様のお好きなように使って頂いて構わないんですけど」
男「うん」
奴隷少女「使われない道具って、言わばゴミみたいなものなんですよ」
男「ゴミって……」
奴隷少女「私は、ゴミですか?」
男「ゴミじゃないよ」
奴隷少女「じゃあどうしてこき使ってくれないのですか」
男「……こき使うって言ってもなぁ」
奴隷少女「せめて何か用事でも言いつけて下さい」
男「用事ねぇ」
奴隷少女「今の私は、人間でもない、奴隷でもない、凄く中途半端な存在なんですよね」
男「うーん」
奴隷少女「何か無いんですか、用事は」
男「……じゃあ」
奴隷少女「はい」
男「掃除……」
奴隷少女「掃除!」
奴隷少女「何かと思えば、初仕事が掃除!」
男「なんだよ、何か言いつけろって言っただろ」
奴隷少女「あのですね、御主人様が微妙に綺麗好きなおかげでですね」
男「うん」
奴隷少女「例えベッドの下や本棚の裏や窓枠や天井の全てに至るまで隅々掃除したとしてですよ」
男「うん……」
奴隷少女「30分で終わっちゃうんですよね」
男「へ、へぇ」
奴隷少女「いや、やりますけどね?やりますけど」
奴隷少女「他のトコの奴隷は、昼夜を問わず重労働を課せられてる訳ですよ」
男「ああ、そうなの?」
奴隷少女「なんか私だけ仕事出来ない様に見られるじゃないですか」
男「いや、だって、そんなの俺次第なんだろ?」
奴隷少女「そうですよ!そうなんですけど……こう、ね?」
男「ね?って言われても」
奴隷少女「分かりました。とにかく掃除はします。御主人様の命令ですので」
男「あ、ああ、頼むよ」
奴隷少女「ですがその間に、もっと奴隷っぽい扱い方考えて下さいね!」
男「え」
奴隷少女「だって折角お金出して買った奴隷なんですよ?」
男「うん」
奴隷少女「元取ろうとか考えないんですか?」
男「そうは言ってもなぁ」
奴隷少女「高い金出して買ったんだし、好き放題してやるぜ!的な感情は無いんですか」
男「でもなぁ、980円だし……」
奴隷少女「980円!!」
奴隷少女「え?え?私、980円で売りに出てたんですか?」
男「……うん」
奴隷少女「ホントに?」
男「うん……通販で」
奴隷少女「通販!!」
男「なんだよ」
奴隷少女「もっとこう、裏オークションとか奴隷市場とか」
男「そんなの怖くて行けるワケないだろ」
奴隷少女「でもネット通販って……」
男「悪いかよ」
奴隷少女「ちなみに送料とかは」
男「だってお前、自分でここに来ただろ?」
奴隷少女「はい」
男「……無料」
奴隷少女「やっぱり!!」
思ったより微笑ましいなwwwwww
奴隷少女「ランチのパスタだって1500円はするこの時代に、980円送料無料!」
奴隷少女「使い放題、好き放題できる奴隷が1000円以下!」
奴隷少女「なんてお得なお買いものでしょう!?」
男「だろ?だから、なんとなく、な」
奴隷少女「自分の価格でなければ、大喜びしてる所なんですけどね」
男「あ、ああ、なんかすまん」
奴隷少女「一気に奴隷としてのプライドがズタズタになってしまいました」
男「なんだよ奴隷のプライドって……」
奴隷少女「御主人様は奴隷として扱ってくれないし、超安いし」
奴隷少女「私は一体何なんでしょうかね」
男「何故だか物凄い罪悪感を感じるんだが……」
奴隷少女「さーって、じゃあ掃除でもしますかー」
男「なんか急にサバサバしだしたな」
奴隷少女「まあ、激安奴隷なんてこんなもんじゃないですかね?」
男「値段によって変わるのかよ」
奴隷少女「そりゃあそうですよ。高い奴隷の方がより奴隷らしくなります」
男「へ、へぇ……」
奴隷少女「いいですか、御主人様」
奴隷少女「例えば、御主人様が50万円で私を買ったとしましょう」
男「うん」
奴隷少女「それで、私が今のような態度であったら、どう思いますか?」
男「ま、まあ、怒るかな……?」
奴隷少女「それは何故です?」
男「そりゃあ、50万もしたんだし、それ相応の態度や仕事じゃないと」
奴隷少女「ですよね?そうすると、私達だってそれを察するわけです」
男「ふむ」
奴隷少女「ちゃんと仕事しないと御主人様がお怒りになられる!と思うわけです」
奴隷少女「するとどうでしょう!従順な奴隷が出来上がっていくわけなんですねぇ」
男「なるほど、妙に説得力があるな」
奴隷少女「なので私はこんな感じでいいのではないかと」
男「……うん」
奴隷少女「ちゃんと御主人様には従いますので、ご安心ください」
男「そ、そう、ありがとう」
奴隷少女「いえいえ、どういたしまして」
いい雰囲気だなぁ
<1時間後>
奴隷少女「私は奴隷〜悲劇の少女〜♪」
男(なんか変な歌唄いながら掃除してる……)
プルルルル プルルルル
男「ん、電話」ピッ
男「はい、もしもし」
???『あ、ワタクシ、奴隷仲介サービスの者ですが』
男「ああ、どうも」
仲介サービス『弊社の奴隷は届きましたでしょうか?』
男「届きました、というか自分で来ましたね」
仲介サービス『左様でございますか。それで、奴隷はいかがですか?』
男「今掃除してます」
仲介サービス『掃除……でございますか』
男「ええ、とりあえず他になかったんで」
仲介サービス『弊社仲介のの奴隷は、御主人様の如何なる命令にも従うよう、指導しております』
男「はい」
仲介サービス『また、基本的に人権は存在しませんので、如何様に扱って頂いても結構ですよ?』
男「はぁ、まあその辺はおいおい……」
仲介サービス『もし、お気に召さない点等ございましたら、弊社までご連絡下さい。すぐに対応致しますので』
男「んー、そうですか。分かりました」
仲介サービス『それでは、快適な生活をお送りくださいませ。失礼いたします』
男「はい、どうも」
ピッ
奴隷少女「ピザより安い〜激安特価〜♪」
男「……如何様にも、ねえ」
男「うーん……」
奴隷少女「御主人様」
男「如何様にもって言われてもな……」
奴隷少女「御主人様!」
男「だってなぁ……」
奴隷少女「御主人様!!」
男「うおっ!な、何?」
奴隷少女「掃除終わっちゃったんですけど」
男「あ、ああ、ご苦労さま」
奴隷少女「奴隷らしい扱い方考えてくれました?」
男「えっ、いや……」
奴隷少女「つくづく御主人様に向かない御主人様ですね」
男「なんかすみません」
奴隷少女「付属品に一度も手を付けていないみたいですし」
男「付属品?」
奴隷少女「気付いてない!」
男「な、なんの事だよ」
奴隷少女「私が一生懸命抱えてきた旅行鞄あったじゃないですか!」
男「あれ、お前の荷物じゃなかったのか?」
奴隷少女「家出してきた彼女じゃあるまいし」
男「じゃああれが付属品なのか……」
奴隷少女「開けてみて下さい。少しは奴隷を買った御主人様の気分になるかもしれませんよ?」
男「そう、じゃあ」
ゴソゴソ
男「……」
奴隷少女「どうですか?」
男「どうですかって言われてもな」
奴隷少女「奴隷を扱う御主人様っぽいじゃないですか」
男「鞭と、重り付きの手枷足枷……それに、取扱い説明書」
奴隷少女「あー、すっごい重いと思ったらその手枷足枷のせいでしたか」
男「自分の自由を奪う道具を自分で持ち込むなんてな」
奴隷少女「鴨がネギ?」
男「そんなカワイイ感じではないが」
奴隷少女「とりあえず使ってみますか?」
男「ど、どれをだよ」
奴隷少女「それを奴隷に言わせるんですか?」
男「……」
奴隷少女「じゃあ、足枷片方だけつけてみますか?それっぽい感じになると思いますけど」
男「お好きにどうぞ」
奴隷少女「もっと御主人様らしくして下さい。こっちは死を覚悟して来てるんですから」
男「お、重すぎるだろ!」
奴隷少女「そりゃ自由を奪う枷ですからね」
男「足枷の話じゃないから……」
鴨が葱背負ってるほ方が可愛いのかよwwww
ガチャガチャ
奴隷少女「……これでよしっ、と」
男「……」
奴隷少女「どうです?少しは奴隷らしく見えますか?」
男「なんだその『今日のファッションどう?』ってノリは」
奴隷少女「これで生活してるうちに、少しずつ微妙な主従関係が出来上がると思うんですけど」
男「うーん……そんなもんかな?」
奴隷少女「まあ、物は試しってことにしておきましょう」
男「お前がいいならいいけどさ」
奴隷少女「何で私が主導権握ってる感じになってるんですか。主人はそちらなんですよ?」
男「まあ、そうなんだけど」
奴隷少女「はぁ、こんな御主人様の奴隷だなんて……なんてついてないんでしょう」
男「ずっと思ってたんだけどさ」
奴隷少女「はい?」
男「なんでそんなに奴隷やりたいんだ?」
奴隷少女「私には奴隷以外の存在価値がないからですよ?」
男「は?」
男「普通の生活してた方がいいだろ」
奴隷少女「そりゃ普通はそうかもしれないですけど」
男「けど?」
奴隷少女「『奴隷』として教育された私には奴隷しかないんです」
奴隷少女「それに、自由になった所で私達には人権なんてないんですから」
奴隷少女「むしろ自由にされる方が、私達には怖い事なんですよ」
男「……」
奴隷少女「だから、御主人様はちゃんと御主人様してもらって、私をこき使ってくれればいいんですよ」
男「……そうか」
奴隷少女「やっぱりこんな自分語りするもんじゃないですね」
男「いや、なんか色々分かったよ」
奴隷少女「ほら!御主人様!何か仕事言いつけて下さいよ!」
男「じゃあ、夕飯」
奴隷少女「それでもまだ家事レベル!」
見てるからねー
トントントントン サクサクサクサク
ゴロ チャリチャリチャリ
グツグツグツグツ
チャリチャリ ゴロゴロ ガリガリ
男「……」
男「あのさ」
奴隷少女「はい、なんですか御主人様」
男「やっぱり足枷はずそうか」
奴隷少女「えっ、どうしてですか!せっかく奴隷が板についてきたというのに!」
男「音が気になるし、ほら、フローリングに傷が……」
奴隷少女「……御主人様のご命令とあれば仕方ありませんが」
男「うん、なんとか頼むよ」
奴隷少女「はい……」
カチャカチャ
奴隷少女「……」
男「な、なんだよ」
奴隷少女「重りを取ったら足枷つけててもいいですか?」
男「え?」
奴隷少女「何かしら奴隷としての印がないと、やっぱり落ち着かないというか」
男「うーん……」
奴隷少女「……」
男「まあ、いいけどさ」
奴隷少女「あ、ありがとうございます!!」
男「そんなのでお礼言うのもおかしいだろ」
奴隷少女「これで自分が奴隷である事を忘れずにいられます!」
男「そ、そうか」
奴隷少女「それじゃ、料理の続きに戻ります!」
男「あ、ああ」
男(なんで奴隷であることをあんなに喜べるんだ?)
男(奴隷扱いの事といい、足枷といい……)
男(いくら奴隷として教育されたって言ってもな)
男(そこまで固執する必要もないと思うんだけど……)
奴隷少女「御主人様、夕飯ができました!」
男「ん、ああ、ご苦労様」
奴隷少女「味に不満がありましたら、あちらの鞭で罰を与えていただいて構いませんよ?」
男「い、いや、大丈夫だから」
奴隷少女「遠慮しなくていいんですよ?」
男「遠慮してないから!」
奴隷少女「そうですか……それではお風呂とお布団の準備をしてきますね」
男「ん?ああ、頼むよ」
男(なんだか昼間と違って、自分から家事をやりだしたような……)
男(気のせいかな?)
男「……ん、飯、うまいな」
奴隷少女「それでは御主人様、おやすみなさいませ」
男「ん?お前、どこで寝るつもりだ?」
奴隷少女「もちろん、外ですけど」
男「外!?」
奴隷少女「はい、奴隷が御主人様と同じ屋根の下で寝るなんて言語道断!」
男「いやいや、せめて中で寝てくれ!」
奴隷少女「それじゃあ、廊下で寝ます。これ以上は譲れませんから!」
男「廊下……外よりいいか」
奴隷少女「それではおやすみなさいませ」
男「ああ、おやすみ」
奴隷少女「あ、出来れば部屋には鍵をかけておいていただけますか?」
男「なんで?」
奴隷少女「夜中に強盗が来ないとも限らないじゃないですか」
男「入口のドアに鍵かけておけばいいだろ」
奴隷少女「御主人様に万が一があれば大変ですから!!」
男「わ、わかったよ、鍵かけて寝るから」
奴隷少女「それでは改めて、おやすみなさいませ御主人様」
男「おやすみ……」
<深夜>
─────────さま
──────んさまぁ
ごしゅじんさまぁ
男「……ん?」
奴隷少女「あー、ごしゅじんさまぁ、やっと起きてくれたんですかぁ」
男「んおわっ!!お前なにしてんだ!?」
奴隷少女「ああん、逃げないで下さいよぉ」
男「ていうか、なんでお前その……下着姿なんだ!?」
奴隷少女「私は御主人様の奴隷なんですよぉ?」
男「奴隷だからなんだよ」
奴隷少女「奴隷は御主人様の気まぐれで性欲の捌け口にされるものじゃないですかぁ」
男「だからって……それに俺は何も言ってないだろ!?」
奴隷少女「言ってなくても、そう思ってるでしょう?」
男「思ってないから!」
奴隷少女「ホントですかぁ?」
男「それからお前、なんか昼間と性格変わってないか!?」
奴隷少女「そんな事ありませんよぉ?」
男「いや、絶対おかしいぞ!何かあったのか!?」
奴隷少女「何もないですってばぁ」
男「とにかく、いいから今日はもう寝ろ!」
奴隷少女「えー……」
男「ほら、なんならここで寝てもいいから、寝よう、な?」
奴隷少女「どうしても、寝るんですかぁ?」
男「どうしてもだ」
奴隷少女「……はぁい、わかりました御主人様ぁ」
奴隷少女「それでは良い夢を、御主人様」
キィ パタン
男「……」
男「何だよ一体……、まるで別人だろあれは」
男「……」
男(別にいいと思って鍵かけないでおいたけど)
カチャ
男(やっぱりかけておくか……)
<朝>
コンコン
奴隷少女「おはようございます、御主人様」
男「……おはよう」
奴隷少女「朝食の準備もできましたので、開けてもらえませんか?」
男「大丈夫だろうな?」
奴隷少女「……?何がですか?」
男「夜みたいに……」
奴隷少女「夜?何かあったんですか?」
男「何かあったもなにも……お前だろうが!」
奴隷少女「私ですか……?何の話でしょう?」
男「もしかして、覚えてないのか?」
奴隷少女「夢でも見たんじゃないですかね?」
男「夢……?」
奴隷少女「怖い夢でも見たんですか?」
男「いや……まあ、怖いというかなんというか」
奴隷少女「とにかく朝食ですから開けてください」
男「ああ、分かった、分かったよ」
男(……夢なのか?)
奴隷少女「さぁ御主人様、今日こそこき使って貰いますよ!」
男「……ああ」
奴隷少女「また情けない声を出して……それでも御主人様でしょうか!」
男「うん……」
奴隷少女「……じゃあ今日も家事全般に従事することでいいですか?」
男「あのさ」
奴隷少女「はい、命令ですか!?」
男「ちょっと一人になりたいから、買い物行ってきてくれるか?」
奴隷少女「厄介払いみたいな命令ですね……」
男「そういうわけじゃないけど」
奴隷少女「まあ、いいです。それで何を買ってくればいいんですか?」
男「そうだな、じゃあ、プリンで」
奴隷少女「じゃあってなんですか、じゃあって!」
男「いいから、買って来てくれよ。今すぐ食いたいから」
奴隷少女「分かりました、では急いで買ってきます」
男「ああ、ゆっくりでいいよ」
奴隷少女「どっち!?」
奴隷少女「それでは行ってきます、御主人様」
男「ああ、頼むよ」
ガチャ バタン
男「……」
男「さて、と」
男「昨夜の事は夢じゃない。ドアに鍵をかけたのはあの後だったからな」
男「だとすれば、一体どういう事なのか」
男「……」
男「そういえば、取扱い説明書なんてものがあったな」
男「一度目を通してみるか」
ペラッ ペラッ
男「……」
男「……役に立ちそうな事は載ってないな」
男「ご飯は適度に与えましょう、とかそういうのばっかりだな」
男「逆に考えれば、ご飯を与えないヤツが一杯いるって事か?」
男「まあいいや、とにかく今は……」
『弊社仲介奴隷に何か御希望や御不満な点がございましたら、お電話下さい』
男「電話してみる事だな」
男「電話番号は、と……」
プルルルル プルルルル
ガチャ
仲介サービス『はい、奴隷仲介サービスです』
男「あ、もしもし?奴隷の事で相談があるんですけど」
仲介サービス『弊社仲介の奴隷でございますか?』
男「ええ、昨日届いたばかりなんですけど」
仲介サービス『はい、どういったご相談でしょうか?』
男「なんというか、変なんですよね」
仲介サービス『変、でございますか?』
男「昼と夜と、別人のようなんですよね」
仲介サービス『ああ、大変申し訳ありません!』
男「え?」
仲介サービス『実はこの度製造されました奴隷に、不具合が生じておりまして……』
男「不具合……てか、え?製造?」
仲介サービス『そうなんです。本日、何件か同じようなお電話をいただいておりまして』
仲介サービス『弊社で急ぎ調べましたところ、どうやら教育課程に問題がある事が発覚いたしました』
仲介サービス『ただ今対応にあたっておりまして』
男「え、え?ちょっと待って下さい!」
仲介サービス『はい、どうされました?』
男「奴隷って……製造されてるんですか?」
仲介サービス『左様でございますが……ご存知ありませんでしたか?』
男「……はい」
仲介サービス『奴隷は政府公認の元、認可を受けた限られた法人のみで製造・販売をしております』
仲介サービス『いわば人造人間、という事なのですが、奴隷に人権が無いのもこの為です』
仲介サービス『もちろんワタクシ共も認可を受け、仲介させていただいております』
男「そうだったんですか……」
仲介サービス『今までは奴隷も高価でしたので、一般に知られているという訳ではありませんでしたが』
仲介サービス『この度、安価な奴隷の開発が実現いたしまして、お客様の幅が広がりましたので』
仲介サービス『新規のお客様には浸透していないかも知れないですね』
男「……」
仲介サービス『あの、よろしいでしょうか』
男「あ、はい……」
仲介サービス『それでは、不具合の詳しい状況をお伺いしたのですが』
仲介サービス『なるほど、夜に執拗なほど性交渉を迫ってくる、と』
男「はい……」
仲介サービス『そういった命令はされましたか?』
男「いえ、全く」
仲介サービス『そうですか、申し訳ございません。やはり教育時点での問題による不具合でございます』
男「……」
仲介サービス『確認でございますが、お客様は性交渉に応じられましたか?』
男「え?」
仲介サービス『失礼ながら分かりやすく申し上げますと、奴隷とセックスはなさいましたか?』
男「えっ!?いや、し、してないですけど」
仲介サービス『それは安心致しました』
男「な、なぜ?」
仲介サービス『現在報告いただいております内容からいたしますと』
仲介サービス『不具合は奴隷との性交渉をされたお客様のみに現れまして』
仲介サービス『性交渉を終えた後、奴隷が反抗的になった、という事例がございました』
男「反抗的に?具体的には……」
仲介サービス『奴隷としての役割を放棄するようになるのです』
男「つまり?」
仲介サービス『……無理矢理逃げ出そうとします。それにより御怪我をされたお客様もいらっしゃいます……』
男「……なるほど」
仲介サービス『危険ですので、早急に解決策を提示させていただきたいのですが、なにせ急な事でして』
男「……では、どうすればいいんでしょうか」
仲介サービス『お客様にご負担をおかけするのは申し訳ないのですが』
仲介サービス『奴隷に性交渉を迫られましても、それに応じないようにしていただくしか』
男「それしかないんですか?」
仲介サービス『申し訳ございません。もしお客様のご希望がございましたら、弊社で回収させていただきますが』
男「回収?」
仲介サービス『はい、不具合のある奴隷はいずれにせよ回収しなければならないかと思いますので』
仲介サービス『現時点で弊社として出来る対応と致しましては、奴隷を回収させていただく事くらいで……』
男「回収してどうするんですか?」
仲介サービス『もちろん弊社で処分致します』
男「処分!?処分ってもしかして……」
仲介サービス『処分料は頂きませんのでご安心ください』
男「い、いや、あの」
仲介サービス『はい』
男「処分って、どうするんですか?」
仲介サービス『殺処分でございますが』
男「殺処分!?」
仲介サービス『ワタクシ共も心が痛みますが、危険な奴隷をそのまま放っておくわけにもいきませんので……』
仲介サービス『ですがお客様が気に病むことはございません』
仲介サービス『奴隷は人権の存在しない、人造人間ですので』
男「だ、だからって……」
仲介サービス『それではお客様、奴隷の回収はいかがいたしますか?』
男「……また、電話します」
仲介サービス『では対応策が決まりましたら改め
ピッ ツー ツー
男「なんだよ、それ……」
男(あいつを処分する?不具合のある人造人間だから?)
男(それを俺に決めろって言うのか?)
男(……他の人たちはどうするんだろう?)
男(簡単に……処分なんて出来るんだろうか)
ガチャッ
奴隷少女「ただ今帰りました御主人様!」
男「おっ、おう、おかえり」
奴隷少女「深刻な顔して、どうしたんですか?」
男「ん、いやぁ、何でも」
奴隷少女「そんなに私の奴隷扱いについて真剣に考えてくれてたんですか!?」
男「そんなのに真剣になれるかよ」
奴隷少女「そんなの!?」
男「もっとこう、深刻な事だよ」
奴隷少女「そうですか」
男「そうだよ」
奴隷少女「では、私になんでも命令して下さい!なんでもさせて下さい!」
奴隷少女「私は、御主人様の奴隷ですので」
奴隷少女「御主人様の辛い事は全部私に押し付けていいんですから!」
男「……お前、なぁ」
奴隷少女「今こそこき使う時ですよ、さあ!」
男「……フッ」
男「じゃあ、買って来たプリン、お前が俺に食わせろよな」
奴隷少女「ええっ!?急にその距離感ですか!?」
男「嘘だよ、ウソ、あはは」
奴隷少女「なんかキャラ変わってませんか、御主人様?」
男(処分、出来る訳ないよなぁ……)
おお、シリアスっぽくなってきた
<夕方>
男「なあ、お前さ」
奴隷少女「はい、なんでしょうか御主人様」
男「前にも似たような事聞いたけどさ」
奴隷少女「はい?」
男「普通の生活ってしたいと思うか?」
奴隷少女「前にも似たようなこと言いましたけど」
男「うん」
奴隷少女「普通の生活は無理です」
男「無理かどうかじゃなくて、したいかどうかだよ」
奴隷少女「無理な事をしたいかどうかなんて、答えられませんよ」
男「だから、例えばだよ」
奴隷少女「……そうですねぇ、普通って言うのがよくわかりませんけど」
奴隷少女「今の私以外の、全く別の私があるなら、なってみたい気もしますね」
男「そうか」
奴隷少女「なんですか急に?」
男「いや、ただの興味本位」
奴隷少女「?」
奴隷少女「それにしても御主人様、今日も結局家事手伝いという感じでしたね」
奴隷少女「いつになったら奴隷らしく扱っていただけるのでしょうか?」
男「そうだな、今のままじゃダメか?」
奴隷少女「駄目ですね。もっとキツく扱って貰わないと!」
男「キツくね。どの位キツかったら満足するんだよ」
奴隷少女「そりゃもう、逃げたら殺される!位のキツさは欲しいですね」
男「そりゃ相当キツいな。俺には無理かもしれん」
奴隷少女「やって貰わないと困るんです!」
男「なんでまた」
奴隷少女「奴隷ですから!」
男「奴隷、ね」
奴隷少女「なんですかその意味ありげな台詞は」
男「んー、なんていうかな」
男「俺が言うのもなんだけど、別に『奴隷』じゃなくてもいいんじゃないか?」
奴隷少女「ええっ!?」
男「たった一日だけどさ、お前といて思ったんだけど」
奴隷少女「……」
男「人を道具の様に扱えるってのは、一種の才能なんだよな」
男「俺にはその才能は無いと思う」
奴隷少女「……」
男「これから先もお前を奴隷として扱うっての出来ないと思うんだ」
奴隷少女「……メです」
男「だからお前も奴隷にこだわらずに、もっと自由に」
奴隷少女「ダメです!!それじゃあダメなんです!」
男「!?」
奴隷少女「もっと私を奴隷として扱ってくれないと!」
奴隷少女「もっと私を独りよがりに扱ってくれないと!」
奴隷少女「そうじゃないと、私……御主人様を……」
男「……俺を?」
奴隷少女「……」
奴隷少女「御主人様、昨日の夜の事ですけど」
男「夜……?」
奴隷少女「私、御主人様に何かしませんでしたか……?」
男「それは……」
奴隷少女「やっぱり、何かしたんですね」
男「……ああ」
奴隷少女「すみません……」
男「覚えてるのか?」
奴隷少女「いえ、でも、そんな気がしたんです」
奴隷少女「夜が近づくにつれて、なんだか不安になって」
奴隷少女「私は奴隷になる事を望んでいなくて」
奴隷少女「ここから逃げ出したくなって……でも」
奴隷少女「自分を奴隷だってちゃんと認識出来ればそんな不安はなくなるって、そんな事を考えて」
奴隷少女「だから御主人様にもっと奴隷扱いして欲しくて……」
男「……」
奴隷少女「そのうち、不安なまま眠ってその後は……」
男「じゃあ、あれはお前の意思とは関係ないのか?」
奴隷少女「私が何をしたか、分からないですけど……」
男「そうか」
男「だったら別に気にしなくていい。何も無かったからな」
奴隷少女「……え?」
奴隷少女「だって今」
男「ああ、あれはやっぱり夢だったよ」
奴隷少女「そんな、そんなはずないですよ!」
男「いいや、夢だ」
奴隷少女「でも……私、御主人様に」
男「夢だから何もなかったんだ。お前の考えすぎじゃないか?」
奴隷少女「……」
男「だから気にせず、いつも通りにしていてくれ」
奴隷少女「御主人様……」
男「じゃあ、ほら、晩飯の準備するぞ」
奴隷少女「……え?」
男「いつの間にか暗くなってるしな」
奴隷少女「では、急いで作りますから」
男「手伝うぞ?」
奴隷少女「そんな、御主人様!そんな事は私が一人で」
男「言っただろ、俺は奴隷扱いの才能がないんだよ」
男「お前を奴隷には見られないからな」
奴隷少女「……それなら、私はもう要らないということですか?」
男「いや、いないのは困るな」
奴隷少女「?」
男「お前の作る飯、旨いからな」
奴隷少女「……ありがとう、ございます」
男「よし、じゃあ始めるか!」
奴隷少女「待ってください!料理は私が一人でやります!」
男「だからな、お前は」
奴隷少女「いいえ!私のご飯がおいしいというならば、一人でやらせてください!」
奴隷少女「御主人様に私の秘密のレシピをお見せすることは出来ませんので!」
男「……分かったよ、任せた」
奴隷少女「任されました!御主人様はテレビでも見て待っててください!」
奴隷少女「……えへへ」
奴隷少女「〜♪」
男「……」
男(やっぱりこいつを処分するなんて俺には出来ないな)
男(かといって、毎晩別人みたいになってしまうこいつをそのままにもしておけないし……)
男(早く対応策が見つかればいいんだけど……)
奴隷少女「さぁ、出来ましたよ!」
男「おお……なんか豪勢だな」
奴隷少女「褒めていただきましたので腕を振るいました!」
男「食べきれるのか、これ」
奴隷少女「食べきって下さい!」
男「……よし、平らげてやろうじゃないか」
奴隷少女「どうぞ、召し上がってください御主人様!」
男「いただきます」
男「……うん、うまい」
奴隷少女「あたり前です!秘密のレシピですから!」
男「だな、あはは」
奴隷少女「……」
男「ん?なんだよ急に黙って」
奴隷少女「私、これでいいんですかね?」
男「いいんだよ、これでな。俺がそうしろって言ってるんだから」
奴隷少女「……はい!」
『では、次のニュースです』
『本日未明、江戸川区のアパートで男性が血を流して死んでいるのを、アパートの管理人が発見し通報しました』
『男性は刃物によって胸を数か所にわたって刺されており、部屋には争った跡もある事から』
『警察は殺人事件として捜査を開始しました』
『殺害された男性は奴隷を所有しておりましたが、現在行方をくらませており』
『また、一部では奴隷教育上の不具合も報告されていることから』
『警察は奴隷が詳しい事情を知っているものと見て、行方を追っています』
男「……奴隷……?」
奴隷少女「……」
男「!!」
ピッ プツン
男「ま、まったく物騒な事件だなぁ」
奴隷少女「御主人様……私……」
男「俺たちには全然関係ないだろ?」
奴隷少女「もしかして私……こんなことを……?」
男「お前がこんな事するわけないだろ!!」
奴隷少女「御主人様教えてください、私一体、夜中に何を……?」
男「お前は断じてあんな事をしてない!何もしてないんだ!」
奴隷少女「でも、でも……」
男「いいか、お前は何もしてない、大丈夫だ!」
奴隷少女「私……夢かと思ってましたけど、ぼんやりと記憶にあるんです」
奴隷少女「私が御主人様の寝室で……御主人様に迫ってるのを……」
男「い、いや、それは」
奴隷少女「その時逃げ出したくて逃げ出したくてしょうがなくて」
奴隷少女「でも奴隷としての役割を果たせって、声が聞こえてて……!」
奴隷少女「自分でも訳が分からなくて……」
奴隷少女「御主人様……私……私……」
奴隷少女「『不良品』、なんですか……?」
男「!?」
奴隷少女「ここに来る前から、なんだかおかしい気がしてたんです!」
奴隷少女「私は『商品』なのに!自分の役割を否定するような不安に駆られるし」
奴隷少女「深夜に自分が何かをした跡があるのに記憶がなかったり!」
奴隷少女「それも私が不良品だからなんですよね!?」
男「……お前は」
奴隷少女「教えてください!御主人様!」
男「お前は……」
奴隷少女「私は、不良品なんですか!?」
男「お前は、不良品なんかじゃない!!」
奴隷少女「嘘!私は……私は、いつかきっと御主人様を!!」
男「そんな事あるわけないだろ!!」
奴隷少女「だって、だって!!」
男「うるさいっ!!」
奴隷少女「っ!?」
男「お前は不良品なんかじゃない!主人の俺が言ってるんだ、間違いないんだ!」
奴隷少女「……うっ」
奴隷少女「うわぁぁぁん……」
男「あ……」
男「……」
男「すまん、言い過ぎた……」
奴隷少女「ぁぁぁぁん……私、私は……どうしたら……」
男「……」
男「じゃあ、俺が証明してやる」
奴隷少女「……え……?ひっく……」
男「今夜、俺は部屋に鍵をかけない」
男「たとえお前が俺に何をしようと、俺はそれに抵抗もしない」
奴隷少女「だって……それじゃあ御主人様が……」
男「それで、朝に俺がどうにもなってなかったら、何も無かったって信じるか?」
奴隷少女「それじゃあ……もし何かあったら……?」
奴隷少女「さっきのニュースの様に……私が御主人様を殺してしまったりしたら……?」
男「お前、俺を殺したいのか?」
奴隷少女「……そんな訳ないじゃないですか」
男「お前、ここを出ていきたいか?」
奴隷少女「ここ以外には、居場所がないです……」
男「じゃあ、お前はここに居たい、そういうわけだな?」
奴隷少女「……」
男「どうなんだ?」
奴隷少女「居たい……ですけど」
男「それならお前も、不良品じゃないって証明して貰いたいだろ」
奴隷少女「でも、私が不良品だったら……?」
男「そんな事は心配するな。大丈夫だから」
奴隷少女「でも、でも」
男「自分の主人を信じられないか?」
奴隷少女「……信じ、ます」
男「それならいいんだ」
奴隷少女「……」
奴隷少女「一つ、約束して貰えますか?」
男「なんだ?」
奴隷少女「もし、私が御主人様を、傷つけようとしたり殺そうとしたり、そんな事をしたら」
奴隷少女「私を……処分してもらえますか?」
男「っ……」
男「分かった、約束する」
奴隷少女「……お願いしますね」
奴隷少女「それじゃあ、御主人様」
男「ああ」
奴隷少女「おやすみなさい……」
男「ああ、おやすみ。また明日、な」
奴隷少女「……はい」
奴隷少女「あ、あの、御主人様」
男「なんだ?」
奴隷少女「えと、その……もし、もしですよ?何かあったときは……」
男「なんだよ」
奴隷少女「私……あの、は……」
男「?」
奴隷少女「はじめて……なので、その……」
男「っ!」
奴隷少女「えっと……」
男「……何もないんだから、心配するな」
奴隷少女「……はい、そうですね」
男「うん」
奴隷少女「では、おやすみなさい御主人様。また明日」
男「ああ」
おおぅ……次も待ってるよー
<深夜>
男「……」
男(不具合、か)
─────────────────
仲介サービス『不具合は奴隷との性交渉をされたお客様のみに現れまして』
仲介サービス『性交渉を終えた後、奴隷が反抗的になった、という事例がございました』
男「反抗的に?具体的には……」
仲介サービス『奴隷としての役割を放棄するようになるのです』
男「つまり?」
仲介サービス『……無理矢理逃げ出そうとします。それにより御怪我をされたお客様もいらっしゃいます……』
─────────────────
男(無理矢理逃げ出そうとする……)
男(普通に考えれば、奴隷が嫌になって逃げ出そうとするんだろうけど)
男(それを止めなかったら、大丈夫じゃないのか?)
男(……いや、ダメだ)
男(あいつが逃げ出した先に待っているのは、きっと……)
男(殺処分、だろう)
男(それだけは、させる訳にはいかない)
男(……でも、なんで)
男(なんで俺、こんなに一生懸命になってるんだろう)
男(あのニュースみたいになるかもしれないのに)
─────────────────
『本日未明、江戸川区のアパートで男性が血を流して死んでいるのを、アパートの管理人が発見し通報しました』
─────────────────
男(軽い気持ちで買った奴隷の為に命張ってるなんて、普通は馬鹿々々しいだろうな)
男(奴隷のくせに意見を並べ立てるし、不満をポンポン口に出すし)
男(でもどうしても)
男(あいつをどうでもいいなんて思えないんだよな……)
男(……)
─────────────────
奴隷少女「待ってください!料理は私が一人でやります!」
男「だからな、お前は」
奴隷少女「いいえ!私のご飯がおいしいというならば、一人でやらせてください!」
奴隷少女「御主人様に私の秘密のレシピをお見せすることは出来ませんので!」
男「……分かったよ、任せた」
奴隷少女「任されました!御主人様はテレビでも見て待っててください!」
奴隷少女「……えへへ」
─────────────────
男(あいつの料理に惚れ込んだのかな)
男(旨いもんな、あいつの料理……)
男(毎日でも、食べたいな)
男(……理由なんて、それでいいか)
ギッ ギッ
男「……!」
ガチャッ
奴隷少女「ごしゅじんさまぁ」
男(やっぱり、昨日と同じ……!)
奴隷少女「ふふ、うふふふ……」
男「何を笑ってるんだ?」
奴隷少女「だってぇ……御主人様、今日は私を抱いてくれるんですよねぇ?」
男「……」
奴隷少女「これで私も、奴隷らしくなれますぅ。ありがとうございます御主人様ぁ」
男「お前はそれでいいのか?」
奴隷少女「どういう事ですかぁ?」
男「本当にお前は奴隷でいる事を望んでるのか?」
奴隷少女「そうですよぉ?今更なにを言ってるんですか御主人様ぁ」
男「どうしてなんだ?どうして奴隷でいたい?」
奴隷少女「私が奴隷として生まれたからですよぉ。そう言ったじゃないですかぁ」
男「その時、こうも言ってたよな」
男「自由の方が怖いって」
奴隷少女「そんな事言いましたかねぇ?」
男「言ったよ」
奴隷少女「そうですかぁ」
男「なあ、結局さ」
男「お前は、居場所が欲しいだけなんじゃないのか?」
奴隷少女「そんな難しい事は分からないですよぉ」
男「……奴隷じゃなくてもここに居ていいんだぞ?」
奴隷少女「もう、そんな事より」
奴隷少女「始めましょうよぉ、ね?」
男「……そんな事、か」
男「……」
男「好きにしろ」
奴隷少女「はぁい!じゃあ、目一杯ご奉仕させていただきますね、御主人様ぁ」
ガシッ
男「!?」
奴隷少女「んふふ、今度は逃げないで下さいねぇ……」
男「ぐっ」
男(なんだこの力……!ただ押さえられてるだけなのに、動けない!)
奴隷少女「そんな顔しないで下さいよぉ、せっかくの初めての夜なんですからぁ」
男「そんな甘い雰囲気じゃ、ない、けどな」
奴隷少女「だってぇ、逃げられたら悲しいじゃないですかぁ」
男「こんな事しなくたって、逃げないよ」
奴隷少女「念のため、ですよぉ」
奴隷少女「私がやられた時はこんなモノじゃなかったですよぉ?」
男「え……?」
奴隷少女「私をあんなにおもちゃみたいに弄んでおいて、自分がやられたら苦しそうに……」
男「何の、話だ?」
奴隷少女「何度も何度も、教育だって、私を無理矢理犯して……」
奴隷少女「いくら人権がない奴隷だからって」
奴隷少女「私にも感情はあるっていうのに……」
男「お、おい、本当に何の話を……?」
奴隷少女「嫌だって言ったのに!!」
男「っ!?」
奴隷少女「嫌だって……嫌だって……やめて下さいって……!」
奴隷少女「何度も何度も言ったのに!!」
男「お、おい、どうしたんだよ!しっかりしろ!」
奴隷少女「ソレなのに!!こうやって!!無理矢理服を剥ぎ取って!!」
男「おいっ!や、やめっ……!」
奴隷少女「こうやって!!こうやってぇ!!」
男「うっ!!」
奴隷少女「こんな風に、無理矢理に私を……っ!」
男「うあっ!お、おい……やめ……」
奴隷少女「私が言ってもやめてくれなかったのに!!自分だけ助かろうなんてズルイ!!」
男「ぐっ……くっ……」
奴隷少女「ズルイ!!ズルイ!!ずるい!!!」
奴隷少女「……ずるいです……うぅ」
男「……泣いてるのか?」
奴隷少女「……うぅ……やだ……」
─────────────────
<某所・奴隷教育施設>
奴隷少女「やだぁっ!やめてくださいぃぃ!!」
教育係「奴隷のくせに、泣くんじゃない!!」
奴隷少女「あうっ!!うう……」
教育係「お前が商品として売り出された後は、もっと激しくやられるんだぞ!」
教育係「この程度で音を上げるようじゃ、奴隷の価値なんてないな!!」
奴隷少女「いやぁ……いやぁああああ……」
教育係「なら仕方ない、商品として仕上げる為だ」
教育係「変な貞操観念が無くなるようにしてやる!!感謝するんだな!!」
奴隷少女「ヤダっ!!いやだぁっ!!」
教育係「暴れるな!!今すぐ処分してもいいんだぞ!!」
奴隷少女「っ!?」
教育係「……ふん、流石に大人しくなったか」
奴隷少女「……」
教育係「どうせ売られればすぐにでもヤられるんだからな」
教育係「その時の為に困らないように教育するのも俺の役目だ」
教育係「つーわけで、今から慣れておかないと……なっ!!」
奴隷少女「っ!!!!!」
奴隷少女「うっ……痛いぃ……いやっ……」
─────────────────
奴隷少女「いやあああああああああああああああ」
男「!!!」
男「どうしたんだ!?おいって!!」
奴隷少女「いやああああああああああああ!!!」
男(何が起きてるんだ!?これが不具合ってやつなのか!?)
奴隷少女「なんで、なんでこんなひどい事するの!?」
奴隷少女「私が一体何をしたっていうんですかあああああああ!!」
奴隷少女「こんなのいやああああああああ!!!」
男「落ち着けって!!とにかく何の話なのか教えてくれ!!」
奴隷少女「……」ピタッ
男「!?」
奴隷少女「……そっか……」
男(今度はなんだよ……)
奴隷少女「死ねばいいんだ……」
男「なっ!?」
奴隷少女「こんな思いするくらいなら……死ねばいいんだ……っ!」
男「お、おい」
ガシッ
男「グッ!!」
奴隷少女「お前が死ねばいいんだああああああああああ!!」
男「あぐ……っ……!!」
奴隷少女「死んで!!死んでよおお!!」
男(く、苦しい……息が……)
奴隷少女「私だって……」
奴隷少女「私だって、自由に生きたい!!!!!」
奴隷少女「もう痛い思いも苦しい思いもしたくない!!」
奴隷少女「私を自由にしてよ御主人様ああああ!!!」
男「が……ぅ……」
奴隷少女「死んでよ死んでよ死んでよ死んでよ死んでよ死んでよ死んでよおおお」
男「……」
奴隷少女「私を解放してええええええええ!!!」
奴隷少女「うわああああああああああああ」
奴隷少女「はぁ……はぁ……」
奴隷少女「はぁ……っ……はぁ……」
奴隷少女「……はぁ」
奴隷少女「……」
奴隷少女「……」
奴隷少女「……」
奴隷少女「……」
奴隷少女「……これで、自由?」
奴隷少女「……これで私は自由」
奴隷少女「これで無理矢理働かされる事も、嫌々抱かれる事も、ない」
奴隷少女「私は、自由」
奴隷少女「もう、奴隷じゃない……」
奴隷少女「ここから出て行って、普通に暮らすの……」
奴隷少女「普通に……?」
奴隷少女「そもそも普通の暮らしって、何?」
奴隷少女「そもそもどうして自由になりたかったの?」
奴隷少女「私はここを出て行きたいの?」
奴隷少女「あれ……?」
奴隷少女「あれ?……あれ?」
奴隷少女「無理矢理働かされた……?御主人様に……?」
─────────────────
奴隷少女「せめて何か用事でも言いつけて下さい」
男「用事ねぇ」
奴隷少女「今の私は、人間でもない、奴隷でもない、凄く中途半端な存在なんですよね」
男「うーん」
奴隷少女「何か無いんですか、用事は」
男「……じゃあ」
奴隷少女「はい」
男「掃除……」
奴隷少女「掃除!」
─────────────────
奴隷少女「私、自分から望んで……奴隷として……」
奴隷少女「おかしいなぁ……そんなはずないのに」
奴隷少女「私はこんな所、嫌で嫌でたまらないはずなのに」
奴隷少女「私を支配されるなんて、嫌で嫌でたまらないはずなのに」
奴隷少女(イイエ、ワタシハ)
奴隷少女「奴隷は皆、人としての尊厳を奪われて」
奴隷少女(イイエ、ゴシュジンサマハ)
奴隷少女「皆、主人はあの、教育係の男みたいに奴隷を扱って」
奴隷少女(イイエ、ゴシュジンサマハ、ソンナヒトジャナイ)
奴隷少女「一生不自由な、過酷な、不遇な、絶望的な、人生を……」
─────────────────
男「俺が言うのもなんだけど、別に『奴隷』じゃなくてもいいんじゃないか?」
─────────────────
奴隷少女(ゴシュジンサマハ、ドレイジャナクテイイ、ッテ)
奴隷少女「じゃあ私は一体なんなの……?」
奴隷少女(ワタシハ)
奴隷少女「私は何の為にここに居たの?」
奴隷少女(ワタシハ……)
奴隷少女「私は奴隷、それ以外の何者でもない……」
奴隷少女(ワタシハ、ドレイジャナクテモ、イイノ)
奴隷少女「だから私は、解放されて自由に……」
奴隷少女(ジユウガ、ホシインジャナイ)
─────────────────
男「なあ、結局さ」
男「お前は、居場所が欲しいだけなんじゃないのか?」
奴隷少女「そんな難しい事は分からないですよぉ」
男「……奴隷じゃなくてもここに居ていいんだぞ?」
─────────────────
奴隷少女「居場所……?」
奴隷少女「私が欲しかったのは居場所……?」
奴隷少女「奴隷を受け入れていたのも、居場所が欲しかったから?」
奴隷少女「私はここから逃げ出したいんじゃないの?」
奴隷少女「私は……ここに居たいの?」
奴隷少女「……わかんない」
奴隷少女「……」
奴隷少女「……あれ、なんで?」
奴隷少女「なんで、泣いてるの、私……」
奴隷少女「やっと自由になれたのに……なんで」
─────────────────
奴隷少女「どうぞ、召し上がってください御主人様!」
男「いただきます」
男「……うん、うまい」
奴隷少女「あたり前です!秘密のレシピですから!」
男「だな、あはは」
─────────────────
奴隷少女「!?」
奴隷少女「そうだ、私は……」
奴隷少女「私を認めて貰いたかったんだ……」
奴隷少女「私は奴隷……それ以上でも以下でもない」
奴隷少女「だから、奴隷として認められようと頑張って……」
奴隷少女「でも御主人様は、奴隷じゃなくてもいいと言ってくれた」
奴隷少女「私を一人の人間として見ようとしてくれた」
奴隷少女「私を……認めてくれた……」
奴隷少女「なのに私は……御主人様を……!」
奴隷少女「御主人様っ!!」
奴隷少女「御主人様!!起きて下さい!!」
奴隷少女「御主人様!御主人様ぁ!!」
奴隷少女「ごめんなさい……私、私……!」
奴隷少女「死んじゃいやです!!御主人様ぁ!!」
奴隷少女「起きて……!起きてくださいよぉ!」
奴隷少女「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん……」
男「……」
奴隷少女「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん……」
男「……うる、さいぞ……ゲホッ」
奴隷少女「っ!?御主人様!?御主人様ぁ!!」
男「……だから、うるさいって……」
奴隷少女「うわぁぁぁぁん!いきてたあぁぁぁぁ」
奴隷少女「あああああああああん……」
男「何、泣いてるんだよ……まったく」
奴隷少女「だってぇぇぇ」
男「……逃げなかったのか?」
奴隷少女「うぅっ……ヒック……え?」
男「自由に、生きたいんだろ……?」
奴隷少女「私は、今のままでいい、ですよぉ……」
男「……どうして」
奴隷少女「だって、私の送りたい、普通の生活は……」
奴隷少女「ここにあったんですからぁ……!」
奴隷少女「うわぁぁぁぁぁあああん……」
男「……そうか」
<30分後>
男「落ち着いたか?」
奴隷少女「はい……」
奴隷少女「あの、御主人様、私が言うのもなんなんですけど……」
奴隷少女「大丈夫、ですか?」
男「そういえば喉に違和感が」
奴隷少女「ああっ!や、やっぱり後遺症が……」
男「嘘だよ」
奴隷少女「そういう嘘はやめてください!!」
男「おお、大分元気になって来たみたいだし、それに」
男「今のお前は、いつものお前だよな?」
奴隷少女「た、多分……」
男「いつから戻った?」
奴隷少女「いつからと言われると曖昧なんですけど……」
奴隷少女「記憶は、私が御主人様に何をしたかは、覚えてるんです」
奴隷少女「私、とんでもないことを……」
男「そうか、その辺も覚えてるのか」
奴隷少女「謝って済む問題ではありませんけど……何をしてでも償います……」
奴隷少女「本当にすみません……」
男「そんな事より、覚えてるなら聞きたいんだけど」
奴隷少女「そんな事、ですか!?」
男「こうして生きてるんだし、いいだろ?」
奴隷少女「でも……」
男「まあ、いいから。それより、あの時さ」
男「一体何の話をしてたんだ?誰の話だ?」
奴隷少女「……」
奴隷少女「私がまだ商品として売り出される前の、教育係の男の話です」
奴隷少女「教育係は、私達の体に奴隷である事を教え込む為のもので」
奴隷少女「毎日厳しく躾けられました」
奴隷少女「……本当はこういうの、企業秘密なんですけどね」
男「教育係……」
男(そういえば仲介サービスも、教育時点の問題とか言ってたな)
奴隷少女「私、その人が本当に怖くて、逃げ出したくなりました」
男「じゃああの時の言葉は、全部その教育係に向けての?」
奴隷少女「良く覚えていませんが……あの人にされた事を思い出してたと思います」
奴隷少女「多分、私の……はじめての時の記憶が……」
奴隷少女「私、記憶の奥底に、見えないように蓋をしてたんですね……」
男「そうか……」
男(夜の事を覚えてないのも、教育係にされた事を思い出したくなかったからか)
男(その逃避が夜の人格を作り出した……奴隷として性行為も受け入れるために)
男(そしてあの時、性衝動が引き金になって、こいつの処女喪失の衝撃が一気に呼び起されたんだ……)
男「辛い思い、してたんだな……」
奴隷少女「だから、最初ここに来たとき、拍子抜けしたんです」
奴隷少女「どんな命令でも受け入れられるように教育されてましたから」
奴隷少女「だから逆に心配になってしまったのかも知れないです……」
男「……なるほどな。よくわかったよ」
奴隷少女「あの、御主人様。どうか私の事はご自由になさってください」
奴隷少女「約束通り、処分していただいた方が……御主人様の為かと……」
男「それじゃ改めて、もう一回聞こうか」
奴隷少女「え……?」
男「普通の生活、したいと思うか?」
奴隷少女「……」
男「正直に答えてくれ。自分のありのままの気持ちでいいぞ」
奴隷少女「……したい、です。でもっ!」
男「よーし、わかった!じゃあお前もう奴隷から解放な!」
奴隷少女「でもっ!あんな事をしておいて御主人様の傍になんて!」
男「いいんだよ。元々処分させる気なんかないしな」
男「奴隷の事、生まれの事、全部忘れて人として生きろ」
奴隷少女「でも、でもぉ……」
男「それから、殺すんなら殺してもらってもいいぞ」
奴隷少女「え!?」
男「ただし、死ぬほど旨い料理でな。死ぬまで食わせてくれ」
奴隷少女「御主人様……」
男「ああ、でも嫌になったら出て行ってもいい。お前はもう自由だからな」
奴隷少女「……私を自由にしたら、怖いですよ?」
男「覚悟の上だよ」
奴隷少女「じゃあ御主人様、私のお願いを一つ、聞いていただけませんか?」
男「もう奴隷じゃないんだし、御主人様って呼ぶな。それで、なんだ?」
奴隷少女「では……男さん、あの……」
奴隷少女「とりあえず一杯泣きたいので、胸を貸してください」
男「……分かった、好きに使え、ほら」
奴隷少女「ありがとう、ございます……それでは……」
ボフッ
少女「うあぁぁぁぁぁぁぁぁん……」
<翌朝>
少女「男さん、おはようございます」
男「ん、おはよう……」
少女「改めて、今日からよろしくお願いします」
男「ああ、こちらこそ。気分はどうだ?」
少女「一杯泣いたのでスッキリしました!」
男「そうか」
少女「さて、では朝ごはんにしましょう!」
男「おう」
少女「あ、それから、最初に言っておきますけど……」
少女「アレは、ノーカンですからね!」
男「……ドレ?」
少女「わ、わかんないならいいんですっ!!」
男「なんだよ、一体……」
少女「今までの事は全部忘れるんですから!」
少女「だから、その、私はこれから全部、はじめてなんですからね!!」
少女「……大切にしてくださいね!!」
男「ああ、分かってるよ?」
少女「じゃあ、ご飯食べましょう!美味しすぎて倒れないでくださいね!」
男「そう簡単に死なないよ」
少女「それじゃあ……」
男・少女「いっただっきまーす!!」
少女(あ、初、朝ごはんだ♪)
─ 奴隷少女の処女(未)喪失 終わり ─
超まったりスピードでようやく終わりました
ひとまず休みます
次はお題単語が二つ出たら「�の�」とかで書こうかと思います
お題でなければ終わりで
どうもありがとうございました
お疲れ様でした
�退廃都市
�コウノトリ
っと、お題だけ書いて乙してなかった。>>1乙です
タイトルでどうなるかとおもったけど面白かったよ
>>73
お付き合いいただきありがとうございます
今後ものんびりいきますのでよろしくおねがいします
それでは次のタイトルは「退廃都市のコウノトリ」
マガジンあたりにありそうなタイトルに決定しました
ストーリーを考えてきます
まとまったようなまとまらないような感じですが
今回もまったりゆっくり書いていきます
変になったらすみません
<退廃都市のコウノトリ>
少年「はっ……はっ……」
大男「待ちやがれクソガキが!!」
少年「やっばい!追いつかれるっ」
少年「ってうおわっ」グイッ
少女「お兄ちゃん、こっちこっち!!」
少年「おうっ!」
タタタタタッ
大男「クソッ、狭い路地に逃げ込んだってすぐ追いついて……あ?」
大男「うおあああああああっ!!」
ガラガラガシャーン
少女「えへへっ、うまく行ったね!」
少年「よくやった妹!おっさん、じゃーなー!」
とある見捨てられた街で、兄妹は生きる事に必死だった。
パンを盗み、ガラクタの中で暖を取り、干し草のベッドで眠る。
二人にとってそれが日常であった。
妹「お兄ちゃん、今日は一杯だねぇ」
兄「ああ、おかげで追いつかれそうになったけどな!」
妹「二日分はあるかな?」
兄「大事に食えば四日分はあるだろ」
妹「四日も!?やったー!」
兄「大事に食べれば、だぞ?お前いっつも一口多いからな」
妹「そんなことないよ!」
兄「いーや、あるね!今日だってお前、残りのパンつまみ食いしただろ!」
妹「してないもん!」
兄「うそつけ!食べカスほっぺについてるぞ?」
妹「嘘だね〜!ちゃんとふいたもん!」
兄「へ〜、何を拭いたんだ?」
妹「あっ」
兄「おーまーえーなー!」
妹「ごめんなさーい!」
こういった喧嘩もまた日常。
二人は苦しいながらも楽しく生きていた。
そんなある日……
兄「よっし、今日も食料確保!」
妹「たまにはごちそうにしようよー」
兄「駄目だっての!これっぽっちじゃすぐなくなっちゃうだろ?」
妹「えーだってぇ、最後にごちそうしたのずっと前だよー?」
兄「そう言われりゃそうだけどさ……」
妹「ねーぇ、ごちそうしようよー!」
兄「んー……」
妹「お兄ちゃんだって疲れてるでしょ?たまにごちそうで息抜きしないとダメだよ」
兄「……そーだな、じゃあ今日はちょっとだけごちそうにするか」
妹「やったーー!!お兄ちゃん大好き!!!」
兄「おいっ、あんまり大きい声出すなって」
青年「おーおー、こんなとこに居やがったか……クソガキども」
兄「っ!?」
妹「あ!!」
青年「人の食い物盗っておいてパーティーか?あ?」
兄「……」
妹「お兄ちゃん……」
青年「お?なぁんだ、食い物一杯あるじゃねえか」
青年「なあお兄ちゃん、俺も腹が減ってんだけど、全部分けてくれないかなぁ?」
兄「……ふざけんな、ばーか」
兄はそう言うが早いか、思い切り青年の脛を蹴り上げ、妹に視線を送った。
兄の視線から言わんとする事を悟った妹は、両手にいくつかの食料を持ち走り出した。
それに続くように、兄も食料を出来る限りかかえて妹を追う。
青年は突然の痛みに足をよろめかせながら、なんとか二人を追おうとしたが
逃げ慣れた兄妹はあっという間に建物の陰に消え、見えなくなってしまった。
青年「くそが!!待ちやがれぇ!!」
青年の怒号はただ朽ちたコンクリートの壁に跳ね返され、残った砂埃と一緒に空気に溶けていった。
人のものを奪っておいて今のところ何もしてない奴に暴力を振るう……か
かなり綱渡りな生活だな、明日も危うそう
乙
兄「はあっ……はぁっ」
妹「お兄ちゃん……はぁ……はぁ……」
兄「心配、すんなって……今度は見つかるわけないからな」
妹「追って来ないかな……?」
兄「……多分な」
妹「ごちそう、出来なくなっちゃったね」
兄「仕方ないよ。でも何日か分は持ち出せてよかったな」
妹「ごめんね、お兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「私がおっきな声出したから……」
兄「気にすんな。とにかく今は、このまま隠れていようぜ」
妹「うん……」
夢中で青年から逃げた二人は、いつの間にか知らない場所に迷い込んでいた。
あたりは静まり返り、四角い建物がいくつも並んでいる。人の気配は無い。
その中で一番丈夫そうな建物の影に、二人は息を殺して隠れていた。
妹「ここ、どこだろうね?」
兄「そうだな……いつもの露店街からそう離れてないと思うけど」
妹「帰れなかったらどうしよう……」
兄「その時はまた別の場所で寝るだけだ」
妹「じゃあまたベッド作らなきゃいけないね」
兄「だなー。ついでだからちょっと豪華にしてみるか」
妹「ごうか?」
兄「そうそう、例えばな?干し草をぐるっと布で包むんだよ」
兄「それで板の枠で囲うんだ。そうすれば横に崩れないからずっと柔らかいままだろ?」
妹「チクチクしない?」
兄「そう、チクチクしない。ぐっすり眠れるぞ?」
妹「わー、いいなぁ」
兄「だから戻れなくても心配すんな。なんとでもなるからさ」
妹「うん!」
新しい寝床の想像が膨らむ内に、いつの間にか追われている不安は消し飛んでいた。
兄妹は何とか守りきった薄いパンを一枚ずつ手に取り、軽く息を吹きかけ砂を落とし、口に入れた。
そのほのかな甘みに、二人は目を見合わせて微笑む。
もう一切れとこっそり伸ばされた妹の腕を制し、兄はすっくと立ち上がった。
兄「さて、少しここら辺を探検してみるか。もしかしたら誰も居ないかもしれないぞ?」
兄妹は手を繋いであみだのような道をなんとなく歩いた。
しかしどこまで行っても変わり映えしない風景で、二人は少し飽き始めていた。
見上げた隙間から見える空はまだ明るいが、ずらりと並んだ建物の陰がまるで夕暮れ時のようで
兄妹はなんだか随分歩いたような気分がしていた。
兄「静かだし、この辺なら新しい家にしてもよさそうだと思ったんだけど……」
妹「おんなじ建物ばっかり。なんにもないね」
兄「ちょっとつまんないよなー」
妹「お店も遠いよ?」
兄「それも問題なんだよなぁ」
妹「ご飯食べられなくなっちゃう」
兄「うーん……誰も居なくていいトコなんだけど」
妹「もう暗くなっちゃうよ。戻ろ?」
兄「そうだな……なーんかこの辺、暗いもんなぁ」
そう言って兄は空を見上げた。妹もつられて兄の視線を追う。
建物に切り取られた空には、薄い雲が風で引き伸ばされ、拡げられている。
その中をゆっくりと飛ぶ何かに気付き、妹は小さく声をあげた。
妹「あ……」
兄「……コウノトリ、かな?」
妹「コウノトリ?」
初めて聞く言葉に、妹は興味深そうに兄の顔を見つめた。
兄は空を見上げたまま答える。
兄「ああ、久しぶりに見たなー」
妹「ねぇねぇ、コウノトリってどんな鳥なの?」
兄「白くて大きな鳥だよ。命を運ぶ鳥なんだ」
妹「命?」
兄「そう、コウノトリが飛んで行った先では、新しい命が生まれるんだよ」
妹「へぇー……」
そう言って妹はもう一度空を仰ぎ、コウノトリの姿を探した。
さっき向かっていった方角へ、ゆっくりと視線を動かす。
雲と雲の隙間にちらりと見えたその影を見失わぬように目を細め、
妹は兄の手をぎゅっと握った。
妹「お兄ちゃん、ずっと後を追って行ったら、近くでコウノトリ見れる?」
兄「ずっと追いかけたらな。でもちょっと遠すぎる」
妹「いこっ、お兄ちゃん!」
兄「うわっと!ちょっと待てって!」
言うが早いか、妹は上を見上げたままぱたぱたと走り出した。
兄「だーかーらー、追いつけるわけないっての!」
妹「大丈夫だもん!お兄ちゃん遅いー!」
兄「馬鹿!周り見て行かないと本当に戻れなくなるぞ!」
妹「だって、コウノトリがどこ行ったか分からなくなっちゃうもん!」
兄「次に近くを飛んでたらその時追いかければいいだろー!?」
妹「次っていつー?」
兄「そりゃ、わかんないけどさー」
妹「じゃあダメ!」
兄「お前なぁ……あっ!」
妹「きゃっ!」
ずっと前へと引かれていた手の平がほどけ、目の前を走っていた妹の姿が消えた。
兄は体を傾け、足を滑らすように止まると、後ろを振り返った。
前を見ずに走っていた妹は、案の定足元の窪みに気付かずに躓き、転び、
そしてうつ伏せになって倒れていた。
兄は駆け寄り、手を差し伸べる。
兄「大丈夫か?ちゃんと前見て走らないからこうなるんだぞ?」
兄には見向きもせずに勢いよく体を起こすと
妹は再び視線を空へと向けた。
妹「……いなくなっちゃった」
兄「ったく、ほらちゃんと立て。怪我してないか?」
妹「うん……」
妹は兄に促されるまま、ゆっくりと立ち上がった。
残念そうに空を見つめる妹の体についた土埃を、兄は優しくぽんぽんと払った。
兄「はぁ、それにしても……どうするかなぁ」
兄はため息をつくと、もう一度あたりを見回した。
どこを見ても同じような建物ばかりで、目印になるようなものも無い。
確か、真っ直ぐに走ってきたような気がするが、どのくらいの距離を走って来たか分からない。
二人は完全に帰る道を見失っていた。空も薄藍色に染まりつつある。
妹「お兄ちゃん、ごめんなさい……」
兄「謝らなくていいよ。コウノトリ見たの初めてなんだもんな、仕方ないよ」
兄「でも、今日は……ここらへんで寝るしかないな」
妹「……」
兄「そんなに落ち込むなよ。兄ちゃん気にしてないぞ?」
妹「だって……」
兄「そうだな……じゃあ明日は、コウノトリ捜しにでも行くか」
妹「え?」
兄「真っ直ぐ飛んでったから、きっとあっちの方に歩いていけば見れるだろ」
妹「ホント?いいの?」
兄「ああ、それでいいだろ?」
妹「うん!!」
兄「はぁ、それにしても……どうするかなぁ」
兄はため息をつくと、もう一度あたりを見回した。
どこを見ても同じような建物ばかりで、目印になるようなものも無い。
確か、真っ直ぐに走ってきたような気がするが、どのくらいの距離を走って来たか分からない。
二人は完全に帰る道を見失っていた。空も薄藍色に染まりつつある。
妹「お兄ちゃん、ごめんなさい……」
兄「謝らなくていいよ。コウノトリ見たの初めてなんだもんな、仕方ないよ」
兄「でも、今日は……ここらへんで寝るしかないな」
妹「……」
兄「そんなに落ち込むなよ。兄ちゃん気にしてないぞ?」
妹「だって……」
兄「そうだな……じゃあ明日は、コウノトリ捜しにでも行くか」
妹「え?」
兄「真っ直ぐ飛んでったから、きっとあっちの方に歩いていけば見れるだろ」
妹「ホント?いいの?」
兄「ああ、それでいいだろ?」
妹「うん!!」
兄「よし、そうと決まったら今日は早く寝よう。なんかすっげー疲れたな」
妹「あ、あのね、お兄ちゃん」
兄「ん、なんだよ」
妹「おなかすいてない?」
兄「あー、そっか。食い物置いてきちゃったな……」
妹「あのね……怒らない?」
兄「怒る?何でだ?」
妹「怒らないなら、言う」
兄「まあ、いいよ。怒らないから言ってみ?」
妹「これ……」
妹は兄の表情を気にしながらズボンの両ポケットに手を入れると、恐る恐る中身を取り出した。
小さく握られ、くしゃくしゃになったパンが二切れ。兄は思わず声を上げた。
兄「こ、これ!」
妹は急に兄が大声を出したので咄嗟に俯き、パンを差し出したまま身を屈めた。
妹「……あとでこっそり食べようと思って、持って来ちゃったの。ごめんなさい」
兄「いや、良くやった!たまにはお前の食いしん坊が役に立つんだな」
妹「……えへへ」
妹「お兄ちゃん、食べよ?」
兄「よし、そうするか」
兄は妹の手から小さい方のパンを拾い上げると、そのまま口に入れた。
口を動かしながらにこりと笑う兄を見て、妹も残った方を口に運ぶ。
二人は同時に喉を鳴らすと、再び顔を見合わせ、ごちそうさま、と笑った。
エラーで同じ内容が2回投稿されてしまった……
>>89は見なかった事にしてください
私用で二日ほど続きを書けないので、見てる方はご容赦くださいな
一つ目の話より少し長くなりそうな予感です
それでは……
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