真美「JAXAでお仕事?」 (27)


P「ああ、そうだ」

真美「そのシラクサが何で真美にお仕事なの?」

P「ジャクサな。メロスじゃない。そろそろ夏休みだろう?生っすかの中で小中学生向けの宇宙関連のコーナーを作るらしくって、そのリポーターとして真美と、貴音にオファーが来たんだ」

貴音「ほぅ」

P「うおっ!?何時からそこに居た!」

貴音「宇宙、それは人類に残された最後のフロンティア」

真美「お姫ちん、何言ってるの?」

貴音「まこと、良き仕事ではありませんか」


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P「うん、貴音が乗り気で助かるよ。という訳で、明後日、相模原に行くからな」

真美「なんかあんの?」

P「相模原にJAXAの宇宙科学研究所があるんだ」

真美「ふーん」

P「あんまり乗り気じゃないな、真美」

真美「何かがっこーの社会科見学みたいでつまーんなーい」

P「それよりは面白いと思うぞ。何せ、宇宙が相手だからな!」


相模原
宇宙科学研究所

T田「どうも、広報のT田です」

P「765プロダクションのPと申します」

D「BBSのDと申します」

T田「良い番組が撮れると良いのですが」

P「お任せください」



P「えー、それじゃあ撮影に入るが、番組のコンセプトの説明とかをDさんから」

D「あくまで、小中高、一般の方向けに宇宙科学研究所の研究内容を分かりやすく伝えると言うのがコンセプトです、だから四条さん、双海さんも特に気張らず、自然体で動いてもらえれば大丈夫です。というわけでキュー」

真美「えっ、もう撮んの?!」

D「はい、キュー!」

貴音「皆さん、おはようございます。ここがどこだかお分かりになりますか?」

真美「ねーねーお姫ちん。ここどこ?」

貴音「ふふっ、それは見てのお楽しみ。それでは真美、右手を御覧なさい」

真美「うわーっ、何あれちょーおっきいよー!!!」

貴音「M-Ⅴ(ミューファイブ)ロケット。宇宙科学研究所で開発された、世界最大の固体ロケット」

真美「こたいロケット?」

貴音「まずはそこから説明が必要ですね。それでは、今日は力強い助っ人をご用意しております」

T田「どうもこんにちは、貴音ちゃん、真美ちゃん。宇宙科学研究所で広報をしています、T田といいます」

貴音「まずはT田先生と共に、真美にロケットの何たるかを学んでいただこうと思います」

真美「えー、勉強すんのやだー」

T田「きっと、真美ちゃんにも最後は楽しかった!って言ってもらえるようになると思いますよ」

真美「本当かなぁ」

貴音「さて、本題はまずこの巨大なM-Ⅴロケットですね」

T田「このM-Ⅴロケットは、小惑星探査機はやぶさを送り出したことで一躍有名になりました」

真美「あっ、真美も聞いたことある!あれでしょ、しょうわくせーの砂粒持って帰ってきた」

T田「その通り!」

貴音「はやぶさを始めとして、MUSES‐Aはるか、PLANET‐Bのぞみ、ASTRO-Fあかり、ASTRO‐EⅡすざく、SOLAR‐Bひのでを打ち上げていますね」

T田「貴音ちゃんもよく知ってるね。たくさんの衛星を打ち上げてきた実績あるロケットだけれど、今はその役目をイプシロンロケットに譲って引退したんだ」

真美「ねーねー、T田せんせー。それはいいけど、さっきお姫ちんが言ってた「こたいロケット」って何のこと?」

T田「それはね、このロケットの燃料が固体燃料だから固体ロケットって言うんだ」

真美「……え?」

T田「ロケットの燃料には、液体と固体の二種類が有るんだ。液体は、皆もよく使う灯油の主成分、ケロシンとか、あと液体水素と液体酸素などを混ぜて着火して、推進力を得るんだ」

貴音「固体ロケットは、ゴムを固めたようなものにアルミニウム等の粉と酸化剤と呼ばれるものが混ぜあわせられたものです」

真美「ふーん。でも、液体と固体ってなんか違うと良い事があるの?」

T田「液体ロケットは、燃料の管理がすごーく大変なんだ。特に日本のH‐ⅡAロケットで使われている液体酸素と液体水素は、燃費がすごく良い燃料なんだけれど、常温だとすぐに蒸発しちゃう。だから、常に燃料を継ぎ足しておかないと、燃料タンクの中が空っぽになっちゃう」

貴音「対して固体燃料は、消しゴムのように固くなっているので蒸発もせず、少々のことでは引火もしないので安全性も段違い、ということですね」

T田「その通り」

いいねこういうの

真美「へー。じゃあ、真美がここでマッチに火を付けて、ロケットにえいやっ!って投げつけても」

T田「原理上では、その程度ならびくともしませんよ」

真美「固体の方が、使いやすいってことなんだね」

貴音「ふふっ、その通りですよ。さて……真美、後ろを振り返ってみてください」

真美「あれ?こっちもなんかウルトラマンみたいな色してるけど、なんか形が違うね」

T田「こっちは、M‐Vの先輩に当たるM-3SⅡ型ロケット。真美ちゃん達が生まれるよりもちょっと前まで使われてたのかな」

真美「なんかM-Ⅴに比べると、ちっちゃいね」

T田「この頃は、まだ色々と制限があったので……このロケットでは、日本初の彗星探査機となった『すいせい』、その試験機である『さきがけ』などが打ち上げられました。小さいけれども、いろんな功績を残してるんです」

真美「へー、なんか凄いねぇ。そういえば、あの、横っちょについてる細いのは何?」

貴音「あれは補助ロケットブースターですね。ところで寺田先生、あのブースターの先端部の突起は何ですか?」

真美「うんうん。真美もそれ、ちょー気になってた」

T田「ああ、あれですか。凄いでしょ?格好いいでしょ?」

真美「……え?マジで?」

T田「なんてね、冗談ですよ。実はあの突起、スパイクノーズと呼ばれていて、ロケットの受ける空気抵抗を少し低減できるんです」

真美「あんなちっこいのでちゃんと仕事してるんだねぇ」

貴音「ところでT田先生。そのスパイクノーズ、なにやらこぼれ話があると聞きましたが」

T田「さすがは貴音ちゃん……実はですねぇ、あのスパイクノーズは本来、取り付ける予定はなかったんです」

真美「えー、何で?」

T田「実は、開発があらかた終わった頃、ロケットの性能が以外に低いことが判明しまして、あれを付けてようやく計画の性能に届いたという経緯があるんです」

貴音「もし、それが知れれば当時の状況から、次が危うい」

T田「そこで、役人にあれは何ですか?と聞かれた時に私の大先輩方は「どうですか?格好イイでしょう?」と答えたという」

真美「えー!それじゃあ嘘っぱちじゃん!」

T田「でも、当時はそうするしかなかったんですよねぇ」

貴音「さて、これが宇宙研のロケットの、ほんのごく一部。今度は、このロケットのご先祖様を見に行きましょうか」

真美「えっ?ご先祖様?」

T田「そうですね。このロケット、というよりも日本のロケットの祖、とも言いましょうか」

貴音「ふふふ、それではこちらへ」

真美「あっ、待ってよお姫ち~ん!!!」

T田「さて、そのロケットというのが、こちらです」

真美「えっ。なにこれ」

貴音「これがペンシルロケット。私も実物を見るのは初めてですね」

真美「こんなちっこいのじゃ、人工えーせーも何も打ち上げられないじゃん!」

T田「そこがこのロケットを開発された糸川英夫先生のすごいところでして」

真美「だれ?」

貴音「糸川英夫。この宇宙研の礎を築かれた方ですね」

T田「はい。先生が居なかったら、日本の宇宙開発は今頃ここまでなっていなかったかもしれません……ペンシルは、元々日本の状況が、大きなロケットを作れないという事を逆手に取って作られました」

真美「どゆこと?」

T田「小さいロケットしか作れないんじゃ、衛星を打ち上げられない!ではなくて、小さいロケットなら何本作っても安くで済むし、実験場だって狭くてもイイ。しかも横向きに飛ばせばレーダーがなくても飛ぶスピードが測れると」

真美「へー、なんか頭の柔らかい人だったんだねー」

T田「凄い人だったそうです。ところでこのペンシルロケット、たくさん作ったので、今でも本物を持っている方がいるそうです」

真美「本物って、火をつけたら飛んでくの?」

T田「火薬は入っていないかもしれませんが」

貴音「何とも時代を感じさせますね」

T田「こんな小さなペンシルロケットから、今はイプシロンという大きなロケットまで発展しました。何事も、小さなことからコツコツと、ということで」

真美「ロケットってどれもおんなじだって思ってたよーT田せんせー、ありがとー!」



貴音「さて、ロケットはこんなところでしょう。続いては探査機や人工衛星を見てみましょうか」

真美「あー!真美これ知ってるよ、はやぶさだ!……あれ?でもちょっと違う」

K口「それでは、ここからは私が説明しましょう」

貴音「今度ははやぶさでプロジェクトリーダーを務められました、K口先生にお越しいただきました」

真美「あ、なんか見たことある!」

K口「はははっ、そうですか?」

貴音「それでは、先生。何故かこのはやぶさ、見慣れぬ姿をしていますが」

K口「これはですね、今まさに宇宙を飛んでいる『はやぶさ2』の姿なんです」

真美「はやぶさ2?」

貴音「去年打ち上げられた、小惑星探査機ですね」

K口「その通りです。はやぶさ2は現在、1999JU3という小惑星を目指して飛行中。2018年ごろにその小惑星に到着。地球に帰ってくるのは2020年ごろですね」

真美「すっごーい!真美が、えーと、えーと……大学生かな?それともなんか、就職とかしてんのかな」

K口「どうでしょうねぇ。もしかすると、私達の後をついで宇宙探査をしてるかもしれませんよ?」

真美「どうかなぁ?」

K口「宇宙探査っていうのは、すごく気の長い話なんですね。小さな子供が、立派な研究者になるくらいの時間がかかって、ようやく結果が見えてくるんです」

貴音「何とも、壮大なことですね」

K口「だからこそ、今も私達研究者は宇宙を調べて、少しでもその謎を解き明かそうとしているんです。そうすることで、私達自身がどこから来たのかを知ることにもつながりますから」

真美「ねーねー先生しつもーん!」

K口「はい双海真美さん、どうぞ」

真美「はやぶさでしょうわくせーにいったのに、何でまたしょうわくせーに行くんですか?」

K口「おお、良い質問ですねぇ。四条貴音さんは分かりますか?」

貴音「お恥ずかしいことに、私も存じ上げません」

K口「それじゃあ、正解……の前に、イトカワという小惑星のことについてご紹介しましょう」

K口「これがイトカワの模型です」

真美「なんかピーナッツみたい」

貴音「らっこ、とも呼ばれていましたね」

K口「そう、私達も最初はラッコみたいだな、と思って『ラッコのお腹の辺り』とか言って場所を指し示したりしていたんですよ」

真美「へー、ラッコ。確かにラッコにも見えるねー」

貴音「こちらの方が頭で、こちらが、しっぽの方ですか」

K口「それはさておき、イトカワという小惑星は、S型と呼ばれる小惑星のグループに属しています。S型というのは、みなさんがよく知る石ころですね、あれと似たような組成をしています」

真美「でっかい石ころなの?」

K口「似たようなものかもしれませんね。さて、そしてはやぶさ2が行く1999JU3という小惑星は、C型と呼ばれる小惑星のグループです。ところでお二人、このC型のCは何のことだと思いますか?」

真美「うーん」

貴音「C……」

真美「あっ、わかった!ビタミンC」

K口「残念。レモンじゃ無いんですねぇ」

貴音「……カーボン、炭素のC、でしょうか」

K口「正解!C型小惑星は炭素質を多く含む小惑星なんです」

真美「炭素が多いと、何か違うの?」

K口「炭素質が多いと、太陽系が作られた当時の有機物や、含水鉱物……水を含む鉱物ですね。こういうもので作られています」

真美「はいはいはーい!でも、しょーわくせーって一杯あるんでしょ?なんでこのじぇーゆー3なの?」

K口「それも良い質問ですね。実は、これははやぶさ2がたどり着くことが出来る距離にあるから、なんです」

貴音「はやぶさ2がたどり着ける範囲で、前回の……イトカワと違う性質の小惑星を探したところ、ちょうどこの1999JU3だった、ということですね」

K口「そういうことなんです。ところで、双海さんは地球の海や湖がどうやって出来たかご存じですか?」

真美「雨が降ったからじゃないの?」

K口「雨が降るのは、地表の水分が蒸発して、それが雲になって、雨になってを繰り返しているからです。最初の水は、どこから来たのでしょうか」

真美「それは……どこから?」

K口「そう。こういうC型小惑星、そしてM型小惑星や彗星という天体に有る水が、地球の水のご先祖様かもしれない。だから、小惑星の水を調べることで、ひょっとすると地球の海の成り立ちがもっとしっかり分かるかもしれません」

貴音「なるほど……ところで、炭素、といえば印象的にはダイヤモンドや鉛筆の芯などを思い浮かべますが」

真美「そうなの!?じゃあ真美達、ダイヤと親戚だったの?」

貴音「真美、それは少し違いますよ」

K口「でも、双海さんの言うことは意外に的を射ているんですね。私達の体を作る有機物、タンパク質などですが、これにはたくさんの炭素が含まれています。生命を形作る有機物は、どこから来たのでしょうか?」

真美「えー……?」

貴音「私達は、星から生まれたかもしれない、ということですね」

K口「そういうことです」

真美「へぇ……!」

K口「今回のはやぶさ2のお仕事は、地球と私達の成り立ちを調べるために、遠く離れた小惑星に行って、サンプルを回収して戻ってくるんです」

真美「す、すごい……めっちゃそーだいだ」

K口「はやぶさ2は、基本的に初代はやぶさと同じような形状、装備ですが、前回の失敗や反省点をより反映させて、強い探査機になっています。今度の長旅でも、しっかりと働いてくれるでしょう」

貴音「K口先生。お忙しい中、本当にありがとうございました。最後に何か」

K口「宇宙科学は、なんだか自分には関係のない話だと思われるかもしれません。小惑星に探査機が行くのも、夢物語みたいな話だと思っている方がいるかもしれません」

K口「でも、もうそういった技術はできていて、いずれ、近いうちに太陽系大航海時代がやってくる」

K口「その時、テレビの前の皆さんの誰かが、その最前線に居るかもしれませんね。楽しみにしています」


真美「皆に頑張って!って伝えてね!」

K口「ありがとうございます。プロジェクトの皆さんに伝えておきましょう」


貴音「はい、というわけで、宇宙科学研究所のお仕事が少しは分かっていただけたのではないでしょうか」

T田「まだまだ、これは宇宙科学研究所の、JAXAのやっている宇宙探査のほんの一部分です。真美ちゃん、今日はどうでしたか?」

真美「んー、宇宙って、すっごくむずかしーって感じだけど、なんかそれよりも、もっとすっごくおもしろそうだなって思った!」

貴音「そうですか。それは良かった。宇宙はまだまだ広くて、不思議がたくさんあります。少しずつ明らかになるその秘密を、これからも追いかけて行きたいですね」

真美「うんっ!テレビの前の皆も、宇宙がもっと知りたーい!って思ったんじゃない?」

貴音「知識を追い求めるのは良きことです。JAXAでは宇宙や航空機に関する研究を様々に行っています。気になった方は公式ホームページをご覧になってはいかがでしょうか」

真美「そんじゃ『四条貴音と双海真美の突撃!探Q新!』のコーナーでした!」

D「はいオッケー!」

真美「おつかれちゃーん!」

貴音「ふふっ。真美も最後は楽しそうで良かったです」

真美「宇宙って凄いんだねぇ」

P「おつかれさん。二人共バッチリだったな」

真美「ねえにーちゃん。今度は真美、ロケットの打ち上げ見に行きたい!」

P「おお。乗り気でいいねぇ。機会があれば取ってこれるとイイなぁ」

貴音「大方。プロデューサーが見たいだけでは」

P「しまった、バレたか……ま、二人共しっかり色々聞けたな。真美、夏休みのレポート、これで行けるぞ」

真美「そうじゃん!やったぁ!」

貴音「ふふっ。さて、プロデューサー、撮影も一段落して、変えるとなれば腹ごしらえが必要ですね。確か駅前にらぁめん屋があったかと」

P「ちょっ、貴音、まて、今日は」

貴音「ふふっ。まこと、楽しみです♪」

P「貴音ぇ!」

真美「身近な謎。それはお姫ちんのお腹の中のブラックホールだった……なんてね」



作中に出てきた人物はフィクションの人物であり、その発言は実際のJAXA公式のものではありません。
また、現在進行中の計画なので、ここに掲載された年数などは変更される可能性があります。


宇宙科学研究所、面白いのでぜひとも調べてみてはいかがでしょうか。


こういうSS好きだわ


ラーメンはらぁめんなのにフロンティアとか言っちゃうお姫ちん
まさか偽物……?

麦人さんが乗り移ったんだよきっと

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