渋谷凛「信頼関係と目標」 (134)


●注意
・Pが完璧人間では無く、人間的にマイナスな部分アリ。
・キャラ設定やや改変


↓の続きですが、特に読まずとも大丈夫です。
渋谷凛「信頼関係の形成」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434363098/)

※Pが「渋谷凛」と「桐生つかさ」の担当で、桐生つかさが、少し年の離れた幼馴染という設定です。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1437301125


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【事務室】


ガチャ

つかさ「おいっす。ちひろさん」

「あっ、つかさちゃん。お疲れ様です」

つかさ「お疲れっす」

つかさ「今週の予定の確認だけど…」

「詳細確認なら、プロデューサーさんを呼びましょうか?」

つかさ「…アイツは?」

「今別室で、凛ちゃんと次の仕事の話をしてますよ」

つかさ「……そーか」

つかさ「じゃあ、ちひろさんでいーわ。ヨロシク」

「分かりました。あの…」

つかさ「?」

「……ひとつ、つかぬ事を伺っても良いですか?」

つかさ「ドーゾ?」

「プロデューサーさんと、つかさちゃんって…」

「幼馴染だったんですか?」


つかさ「あー……」

つかさ「本人が言ってたのか?」

「まあ、概ね。彼が上司と話しているのを、小耳に挟みました」

「履歴書を見たら、ただ同郷だと思ってたんですが…」

つかさ「あー…んんー…」

「殆どの人は知らないと思いますよ。大人ってそういう事情は口が堅いですし」

つかさ「……」

つかさ「小さい時、色々と世話焼いてくれたっつーか…」

「ほうほう…!」

つかさ「自分で言うのもハズいけど、アタシ…、小さい時は人見知りで…」

つかさ「多分、同学年とかの友達より、アイツと一緒に居た時間の方が長いんじゃねーかな」

つかさ「親が仲イイってのもあったけど………」

「幼馴染ですかー…、良いですねっ♪」

つかさ「そーか??」


「……」

「正直…」

「彼のこと、どう思ってます?」

つかさ「!?」ガタッ

つかさ「なっ、何でそう言う話になるんだよっ!」

「い、いえ! 別に他意は無いですよ! 気になっただけで…!」

つかさ「ハァ……」

つかさ「別に、何とも…」

「友情以上、恋愛未満ですか?」

つかさ「無いわ。恋とかナイナイ。ただの同郷。ちひろさんってお節介焼き?」

「す、すみません……控えます…」


つかさ「まあ……、ただ…」

「…?」

つかさ「久々に会ったんだし、色々と話をしたいって気はあるかもな」

つかさ「仕事とか忙しそうだけど、少し興味あるし」

つかさ「あと、アイツがアタシ以外の他人と話をしていると……、なんつーか…」

つかさ「…………気が散る?」

「『気になる』んじゃなくて、ですか??」

つかさ「……?」

「…そういうの、独占欲とも言うの、知ってますか?」

つかさ「は、はあ!? ドクセンヨク!?」

「(つかさちゃんって、サバサバしてると思いましたけど……)」

「(揺さぶったら面白いように反応してくれますね…)」


「あっ、あとですね…」

つかさ「ひとつって言わなかった?」

「いえ、これだけは言わせて下さい」

「つかさちゃん……、最近疲れてません?」

つかさ「!」

「顔に出てますよ。もう入社から一ヶ月以上経ちますけど、慣れてないのは分かります」

つかさ「……」

「これ、栄養ドリンクです。休養も必要ですよ」スッ

つかさ「……サンキュー、ちひろさん」

「何か悩みがあったら、担当のPさんに相談してみるとかどうですか?」

「幼馴染ならば、親身になってくれるでしょう?」

つかさ「……」

つかさ「そーだな。考えとくわ」


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【同時刻 別室】


P「で、次の仕事だが…」

凛「うん?」

P「雑誌のファッションモデルの撮影なんだ」

P「贔屓にさせて貰ってる提携先が、また是非とも凛を起用したいと言ってくれてな?」

P「嬉しい限りだ。差支えが無ければ、今日にでも返事を送りたいが…」

凛「……」

凛「ん」

凛「別にいいけど…」

P「……」

凛「……」

P「…嫌、なのか?」

凛「…?」

P「(凛が嫌そうにする時は、決まって一拍置いた後、少し俯きがちになる)」

P「(まあ、誰が見ても、あんまり乗り気じゃないのは分かるケド……)」


凛「うーん…」

凛「気が進まないってワケじゃないよ…」

凛「けど………」

P「けど?」

凛「最近、レッスンも減ってきてるし」

凛「ライブとかCDの話とか……あれ以来、あんまり無いよね」

P「ああ…、その事か」

凛「私、何かダメだった…?」

P「いや、そう言う事じゃない」

凛「じゃあ…、何で?」

P「今は、多方面で名を売って、地盤を固めて、経験を積んでも良いと思うんだ」

凛「でも…っ!」

凛「他の子は、ライブとかたくさんやってるし、私だけ……、少し違うのかなと思って…」


P「他は他だ。凛には凛のペースがある」

P「凛は、これからの展望を……」

凛「私っ……!」

P「…!」

凛「……っ」グッ

凛「……いや、いい。ゴメン」

P「……」

P「…ライブをしたいなら、すぐには出来ないけど、調整も考えるぞ?」

凛「いいって。とりあえずその仕事、受けるから」スッ


バタン

P「……」


P「(…ハァ……)」

P「(うーん………)」

P「(今のは、俺の言い方が悪かったか……あー…)」

P「(苦手意識は、以前より全然薄れてはいるんだが……)」

P「……」

P「(何て言えば良いんだ…。恥ずかしいワケでも無いし、憎いワケでも無い)」

P「(ただ、必要最低限に収めようとして、けど言葉足らずで…、誤解を生んでしまう…)」

P「(上手く考えを伝えるのが下手なのか…)」

P「(はぁー…)」

P「(情けな………)」

・・・・・
・・・


──
───
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─────


現役JK、社長、おまけに美人、そして……おまけにアイドル。

そんな完璧で最強に近いアタシのだけど……。

……そのプロデューサーは、かなりダメな男だ。



アイツに再会した時、想像を遥かに超えるダメ人間になってた。

安易な気持ちでプロデューサーの仕事を任せられてて、けど、まるでなっちゃいない。

自分勝手さに拍車が掛かり、現状に不満がある癖に自分は変わろうともせず、他人の愚痴を年下に漏らす。

クソ過ぎて笑えて……、そして泣きそうになった。

アタシが小さい頃に知ってるアイツとは、想像以上に違いすぎてた。

いや…、アタシが単に、虚像を膨らませすぎたのかも。

簡単に言えば、思い出補正ってヤツ?




少しヒいた。けど、見捨てることは出来なかった。

なんでだろうなー…


ダメになったアイツにアドバイスをして、優越感に浸りたかったから?
だとしたら、アタシも相当嫌なヤツだ。

昔、世話を焼いてくれたお礼?
庇護欲とか母性とか、アタシはそんなタマじゃない。

独占欲?
ちひろさん、そりゃナイな……多分。



不思議だわ。人間の思いとか関係って、言葉にしヅライ。

昔のアイツは、今みたいな根性無しでも、コミュ障でもあまり無かった。

些細なトラブルに挫ける姿だけは、見たくなかったからだ。






……何故ならアタシは、昔、アイツに一瞬、憧れていた事があったから。

ハズいわ、マジで。あんな奴でも、一応恩義とか感じちゃってんのか……?

─────
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──



・・・
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【後日 Pの自宅】


P「……」ペラッ

P「……」

P「『他者の教育や目標の発見にあたって、注目すべきはその人物の強み、ストレングスである』……」

P「『その点を関わりの中で見つけ、伸ばす所のは育成の基本であり、双方の自信の獲得にも繋がる』……」

P「『どんな人間にも必ず特徴はあり、それを早く見つけられるかは、人間観察と価値観の受容が………』……」

P「……」バサッ

P「フーン………??」


P「それってつまり……」

P「経営革新みたいな研究か?」

P「損益や組織、生産性分析で、他社に無い強みを早めに把握………いや、違うな」

P「なら、履歴書の自己PRみたいな物か??」

P「んー…、でも、そんなの企業先に合わせてコロコロ変えるし…」

P「なら、教師と生徒の問答みたいな………んー…???」

P「……」

P「強みの発見と、伸ばす事、か……」

P「不器用な俺なら、時間は掛かりそうだ。自分の評価だってあんまり知らねーしな…」

P「まあ、確かに…、他人を貶して否定するのは簡単だけど、褒めるのって難しいよな……」


ピンポーン

P「……」


ピンポーン

P「………」

P「………」ゴロッ


ピンポーン

P「………」

P「………」


ピンポピンポピンポピンポピンポーン!

P「!!」ガバッ

P「な、何だ……、誰だ?」




P「……!」

つかさ『オイ、なに居留守使ってんの』

P「お前ッ……!」

P「な、何で…、俺のアパートの場所を知ってるんだよ?」


つかさ『前に、ちひろさんから聞いたぞ』

P「(!?)」

つかさ『オートロックのアパートなんて、良いトコ住んでんな。でも早く開けてくんない?』

P「ハ!? いや、待て!」

つかさ『?』

P「何だ!? 部屋には、入れないぞ!」

つかさ『…………』

つかさ『はーあ…??』

P「よ、用件なら別の場所で聞くから、ちょっとソコで待ってろ!!」ガタガタ


・・・・・
・・・



・・・
・・・・・
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【30分後 ラーメン屋】



P「(ラーメン屋……??)」

P「(店内はいやに小奇麗だな……)」

つかさ「お前さ…、普段から居留守使ってんの?」

P「……」

P「一人暮らししてる奴なんて皆、出前以外は、絶対に扉を開けん」

つかさ「それ、何か間違ってるぞ。ダセぇ…」

つかさ「アタシ、海老塩がいいな。お前決めたか?」

P「俺もそれ狙ってたけど…」

つかさ「アタシは、店に来る前から狙ってた」

P「??」

P「ま…、いいや。背油豚骨で」


つかさ「……」

つかさ「また、凛と喧嘩したんだって?」

P「喧嘩? ああ……、ちょっと揉めただけだって」

P「前ほど険悪になったりしてないし、今回は………大丈夫」

つかさ「内容は?」

P「いやなに、彼女のプロデュース方針だ」

つかさ「方針?」

P「ああ」


P「凛自身は…、積極的にライブとかバンバンやって、一気に知名度を上げたいと考えててな…」

P「彼女の中のアイドル像ってのは、やっぱり歌とか踊りが中心なんだ」

つかさ「まあ……、華があるしな。憧れるのも分かる」

P「間違って無い。アイドルってのは実際そういうもんだ」

P「別にライブ自体も全然悪くない。知名度は確実に上がるし、思わぬ抜擢もあるかもしれん」

P「けど、俺の考えは……」

P「今はまだ、地道な裏方とかやりながら、色々と関係各所に顔を売りつつ、多種の仕事に彼女自身を触れさせて……」

P「活動の選択肢の幅を広げて行きたいと考えてる。レッスンは当然、モデル、アマチュアリポーターとか」

つかさ「堅実な思考だな。でも、それも悪くないっしょ」

P「勿論、あくまで大前提はアイドルだ。地盤を固めることを優先したいと云うか……」


P「……要は、俺と凛の考えの違いは」

P「今したい事を見ているのか、将来的な先を見ているのか……、ってとこかな。多分」

P「キツく言えば、凛は、筋道が少し見えていないのかもな。焦ってるのか、そこは分からんが…」

P「でも…」

P「実際の所は、彼女自身の意志を尊重してやりたいんだ」

つかさ「ん?」


P「前に、凛はこう言ってた」

つかさ「何て?」

P「……」

P「この仕事を始めたのは、深い思い入れは無いし、軽い気持ち。興味本位」

P「目標も無いし、どうしていいのか最初は分からなかった」

P「ただ、俺と一緒に仕事が出来たのが、少し楽しかった…………、って」

P「……」

P「結構難しいんだよ、プロデュースって」

つかさ「簡単な仕事なんてこの世にねーよ。そりゃあ」

つかさ「お前が『プロデューサー』を悩んでるんじゃなくて『プロデュース』を悩んでるなら…」

つかさ「………少しは成長した証しだ。良かったんじゃね?」


P「実際その時、担当してるアイドルからそう言われて、内心嬉しかった」

P「だから、彼女に向いてそうな仕事や興味ありそうな仕事を取ってきてるワケだが…」

つかさ「…」

つかさ「少し、仕事の意識が食い違った、ってトコ?」

P「…」

P「凛自身が何かやりたい事を考え、活動に取り組もうとしている…」

P「なら、本来はそれを後押しするのが、俺の役目なんだろうが……」

つかさ「…………」

つかさ「……………」


P「俺だって、彼女の個性を活かせて、人気に結びつく仕事を見つけようとしてるんだ」

P「凛が少しでも早く、一人前になって、デカい規模のライブとか活動が出来るような…」

つかさ「……」

つかさ「それを、本人に言ってやったのか?」

P「い、いや…」

P「俺の……言葉不足、だった…」

つかさ「ハァー……」

つかさ「ほんっと、お前はコミュ障だな」

P「う、うるせー…。本当にコミュ障だったら、社会人になんて為れんぞ」


P「前に、お前言ってたろ? 人を褒めて、強みを活かすって…」

つかさ「言ったっけ? ああ……、言ったか」

P「それに踏まえて、内面を観察して、凛が考えてることも、少しずつ理解してるつもりだったんだが…」

つかさ「まあ、もう少し努力しろってコトじゃん。OK?」

P「ああ……、詰まる所、そんなカンジだ。また凛と話をしてみるわ」


つかさ「……」

つかさ「まあ、無いかな…。二人の考えに、アタシが口を挟む資格っつーの?」

つかさ「ただ、舵取りをしっかりしてやるのは大事だと思うわ。全部をアイツに合わせるんじゃなくてな」

P「……?」

P「何だ、珍しく何も言わねーのか…」

つかさ「まあ、ね……」

P「ふぅ……」

P「つかさみたいに、自分から積極的に仕事を取りに行ってくれてると、楽なんだがな…」

つかさ「楽とか言うな。蹴るぞ、マジで」

P「冗談だって」

つかさ「……」

つかさ「少し違うな、アタシは…」

P「?」

P「(………??)」


P「……」

P「でも、お前は本当に凄い奴だよ。俺なんて、殆どお付きみたいなモンだし…」

つかさ「ハハ、まだまだお前の手は借りねーよ……」

つかさ「お前、凛だけでも一杯一杯じゃね? もう少し頑張れ、マジで」

P「……その内、お前のプロデュースにも専念出来ると良いんだがなぁ…」

つかさ「………」

つかさ「…まあ、その内な」

つかさ「今はアタシ一人で、充分だから…………、凛をしっかり見てやれっつーの?」

P「ん? ああ……、分かったよ」


P「………で」

P「今日はいきなりどうしたんだ?」

つかさ「!」

P「何かあったか? 飯食いに誘ってくれただけじゃないだろ?」

つかさ「いや、まあ……」

つかさ「…………」

つかさ「……………」

P「?」

P「何だ?」

つかさ「……何でも」

つかさ「たまたま? 近く通りかかったからってカンジ?」

P「ハァ……まあイイけど…」

つかさ「……」



店員「お待たせしましたー」

店員「海老塩と、コチラが背油豚骨になります」

店員「御注文は以上でお揃いでしょうか?」

P「ハイ」

店員「ごゆっくりどうぞー」



つかさ「……」パキン

つかさ「じゃあ、さ…」

P「ん?」パキッ

つかさ「思ってる事、今、当ててみ?」

P「んー………、『早く大きなライブがしたい』、とかか?」

つかさ「違うっ! アタシだっ! ア・タ・シ・の!」バン!

つかさ「凛じゃねーって!」ドカッ!

P「ガっ…!」

P「つ、つかさの思ってる事?」


P「……」

つかさ「……」ニヤニヤ

P「……」

P「…『少しお前のラーメン、寄越せ』か?」

つかさ「おっ、正解!」

つかさ「今日は色々と調査に来たんだわ」

P「取り分け用の器、貰おうか?」

つかさ「あー…、ん…、どうするかな…」

P「というか…」

P「俺もソレ、少し食べたかったんだ。ちょっと飲ませてくれ」スッ

つかさ「……は!?」

P「~~~っ」ズズズズ…

つかさ「(お…、ま…!)」

つかさ「……っ!」

P「っはー…! 海老塩だっけ? 珍しいけど美味いな」ドン

P「すっきりして淡白だけど、薄いってワケじゃない。風味も実に良い」

つかさ「……」

P「スミマセーン! 取り分け用の器くださ…」

つかさ「……イヤ、いい。アタシもチョクでお前の食べるわ」スッ

P「? そうか? ホラ…」

つかさ「……」ズズズ…

つかさ「(気にしろよ、そういうの…)」


つかさ「つーか、お前…」

P「んん?」ズルズル

つかさ「居留守使ってたってことは、まだ人間不信とか女性恐怖症とか、治ってねーのか?」

P「ああ? ああ…、アレか?」

P「あんなの、そんな大層なものじゃない」

P「言ったろ? ただ女性を『面倒臭い生き物』だと思ってただけ」

P「本当の人間不信とか女性恐怖症って言うのは、もっと酷いだろ。吃音とか身震いとか…」

P「そういう、本当に心に傷を負ってる人達から比べたら、俺なんて全然普通だよ」

P「女性との関わりを煩わしいと感じてた。別に徹底的に嫌ってるわけじゃ無いし、女性自身を否定する考えも……最近は薄れて来た」

つかさ「ふーん…」ズルズル

つかさ「じゃあ居留守は?」

P「それは……お前……」

P「部屋、汚いからっ……」

つかさ「女子かって。女々しいぞ、お前」

P「うるせー」

P「でも正直、独身は最高だと思う。本当に!」

P「俺の上司、知ってるか? あの人なんて…!」

つかさ「聞いてねーわ。聞きたくもねー。麺、伸びても知らないからな」ズズズ


・・・・・
・・・



・・・
・・・・・
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【一週間後 撮影スタジオ】


凛「ふー…」

凛「…」

P「お疲れ」

凛「あ。プロデューサー…」

P「えーっと……」

P「当初に比べたら、色々な表情が出来るようになってきたな」

凛「!」

凛「……それ、カメラマンにも、同じ事言われた」

P「そうなのか?」

P「笑顔を作れっていったら、嘲笑うような顔しか作れなかった頃が、ちょっと懐かしい」

凛「そ、そんな事思い出させないでよっ!」

P「…といっても、まだ半年も経ってないのか…」

P「努力してる様子が、ハッキリ形に現れてるな」

凛「な、何? いきなり…」

P「いや…、思った事を言っただけだ」

凛「ふーん」

凛「(まあ、悪い気はしないけど…)」


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【楽屋】


P「じゃあ、すぐ着替えて出るぞ」

凛「うん、そうする」

P「…」

凛「……」

P「…………」

P&凛「「あの……」」

凛「!!」

凛「な、なにっ?」

P「い、いや! 凛こそどうした?」

凛「…」

P「……」

P「今日は……、その、アレだ」

P「ありがとう」

凛「えっ?」

P「あまり乗り気じゃ無かったかもしれないけど、撮影はしっかりとやってくれて」

P「今度、ライブの件も検討して見る。少し待って欲しいんだ」

P「少し急げば、一ヶ月後くらいで、ライブハウスでも充分な規模のが…」

凛「!」

凛「……」


凛「私……」

凛「いいよ。ライブとか急がなくても。気にしないから」

P「!」

P「な、何で…。だってこの前は…!」

凛「少し焦ってたのかもしれない。周りに置いてかれてるかも……って」

P「……!」

P「(やっぱりか…)」


凛「活動も軌道に乗ってきて、ようやく本当にアイドルらしくなった……って、思ってた」

凛「まだ入社して半年なのにね…。ちょっと、思い上がり過ぎたかな?」

P「……それは違うぞ、凛」

P「自分の意志を表に出すのは、全然恥ずかしい事じゃない。思い上がりなんて以ての外だ」

P「お前には素質はあるんだ。ただ、急ぎ過ぎても意味は無いってだけだよ」

凛「……ありがと」

P「……気持ちは分かる。俺も早くお前を、色々な舞台に上がらせてやりたい」

P「凛の初ライブは、結構良かったと思ったし」

P「でも、焦るな。努力した分は、必ず返ってくるんだ」

凛「…うん」


凛「今日…、カメラマンとプロデューサーにも言われたし…」

凛「親からも、学校のみんなからも、『最近少し変わったね』『明るくなったね』って……結構言われるんだ」

P「!」

P「へえ…!」

凛「あの後、考えたよ」

凛「プロデューサーの言った通りだよ。時間はまだあるし、焦ってもダメだと思う」

凛「少しずつ変わって行けてるのが実感出来て……」

凛「嬉しい……かな」

P「……」

凛「だから、私の事は、プロデューサーに任せたいの」


凛「勿論、言わせてもらう事はちゃんと言わせて貰うけど…」

凛「でも、プロデューサーの方針は間違っていないし、私もそれでいい」

凛「だから…」

凛「……この間は、我儘言って……ごめん」

P「……」

P「別に我儘じゃないぞ。凛の意志とか目標が垣間見えて、俺は嬉しかった」

P「俺も、早くお前が満足する様なライブさせてやりたいよ」

凛「…うん」

P「……」

凛「……」

P「…………」

凛「えーっと…?」

P「つまりは…、今まで通りに行こうってことか?」

凛「そ、そうかもね…」

P「は、ははは…!」

凛「あ、あはは……」


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【30分後 車中】


P「凛は…」

凛「うん?」

P「目標とかあるのか?」

凛「ん……、目標かあ…」

P「例えば、月並みだけど、『トップアイドルになりたい』とか…」

凛「まあ、アイドルになったからには、トップを目指したいけど…」

凛「トップって言っても、色々あって、一概に『これ!』っていうのも難しいよね」

P「確かにな」

P「ただ、自分のやりたい事や自身の強みを生かすって事を念頭に置いて考えると…」

P「そういう目標は立てやすいんだ」

P「(……本で見た)」


P「凛の強みは…」

P「見た目はクールで性格も落ち着いている。あとは…」

P「やると決まれば、向上心や改革意識も強い。自分に向き合うのに真摯で…」

P「目力が強い。髪が長くて綺麗。物怖じしない」

凛「ね、ねえ……、ちょ、ちょっと、何っ…?」

P「ん?」

凛「そういう事を面と向かって言われると…、て、照れるから……」

P「んー…??」

P「小学校とかでやってる『お互いの良い部分を10個ずつ言い合ってみましょう!』みたいなカンジか?」

凛「お互い、気恥ずかしくなっちゃうよね」

P「……こういうのってさ」

P「ダメな部分は、幾らでも言えちゃうよな…」

凛「う、ウン……。そうかも」


凛「というか、後半…、それ強みなの??」

P「特徴も立派な強みだよ。どんなに小さな事でも、何か繋げて活かせる事があれば良い」

凛「………でも、今の項目が私の目標に繋がる気は…」

凛「全くしなかった」

P「す、スマン…」

P「(あ、案外難しいな……くそっ…)」


P「トップ……ねえ」

P「日本中に名前が知れ渡るとか…」

凛「大きな会場を埋め尽くすライブが出来るとか…?」

P「色々な人に憧れを持たれるとか…」

凛「この業界で、誰にも負けないと誇れる何かを持つ………とか」

凛「うーん……」

P「まあ、今すぐにとは言わないけど、何かあってくれた方が活動指針も立てやすい」

P「だから俺はその手助けをするよ。色んな活動に触れてみて、まずは視野を広げよう」

P「俺も凛をよく見て、凛の強みをもっと探してみるよ」

凛「うん。そうだね。時間はあるし」

凛「……やっぱり、プロデューサーが言ってた事って、あながち間違いじゃないのかもね」

P「だろ?」

凛「うん」


P「今まで通り、凛に向いてそうな、雑誌モデルとかCMとか、ビジュアルを活かした仕事を取ってくるし…」

P「勿論それ以外にも、地方で活躍出来る小さな仕事も取って来たいと思ってる」

P「今度から、目標を見つけるためなら……可能な限り、少し意外な物も取ってくるかな」

凛「例えば?」

P「バラエティとか…」

凛「うん。いいよ。まだ新人のうちに、色々と経験してみるのもアリだね」

P「積み重ねれば、知名度にも繋がるしな」

P「……」

P「凛がこれから大きくなって活躍して、名前が売れれば…」

P「俺が取ってこなくても、仕事が次々に舞い込んでくるかもな……、ははは」

凛「何、楽したいの?」

P「ら…、楽が出来ると言えば、そうかもしれんが…」

P「俺は用済みというか…、凛の巣立ちみたいなモンか?」

凛「……!」


凛「……」

凛「ねえ、逆に聞きたいんだけど…」

凛「いいかな?」

P「んん?」

凛「プロデューサーの『目標』って何?」

P「目標……俺の…」

P「……」

P「(そう言えば、以前、つかさに問われた事がある)」

P「(『何のために仕事をやっているんだ』と……)」

P「(けど、それはあくまでその時、凛のプロデューサーとして俺を自覚・奮起させる意味であって……)」

P「(プロデューサーとしての目標? いや、社会人として…?)」

忘れてた。これ最初に貼りたかった…


登場キャラ
・渋谷凛
http://i.imgur.com/vCIotYG.jpg
・桐生つかさ
http://i.imgur.com/nUwN20b.jpg


P「(………)」

P「(…………)」

凛「……?」

P「俺は……」

凛「うん」

P「今は、とりあえず凛を一人前にする事……かな」

凛「……」

凛「ふふっ、何それ??」

凛「責任重いなあ、私」

P「ははは……。わるい、俺も一生懸命頑張るよ」

凛「なら、これからはプロデューサーのために、沢山勉強しないとね…?」

P「ごめん! そういう意味じゃないって! 悪かった!」


凛「じゃあもし、私の目標がさ……一人前の…」

P「うん?」

凛「『一人前のトップアイドル』だったら?」

P「それは…」

凛「……最後まで私に、付き合ってくれる?」

凛「用済みとか、巣立ちとかそんな事置いておいて」

P「それは……、凛次第かな」

凛「!」

凛「な、なにソレ! 酷いっ!」

P「冗談冗談」

凛「もうっ…!」

凛「……」

凛「だからさ…」

凛「プロデューサーも、私の事、使っていいよ?」

P「??」

P「凛を、使う?」


凛「ん、ちょっと言い方が悪かったかも。語弊があると言うか…」

凛「『利用する』とか、そんな意味じゃ無くて…」

凛「ええと…」

凛「私は、プロデューサーを使って仕事を取って来て貰うし、これからも色々と私を見て欲しい」

凛「目標はまだ無いし、どうなるかは、プロデューサー次第でもあるけど…」

P「うん」

凛「プロデューサーも、私を使って、目標を見つけて欲しい」

凛「例えば…、育成のノウハウを培って、コミュニケーションの技術を磨いて…」

凛「コネを作って………、将来的に起業とか独立を目指す、とか…」


P「成程……。使うと言うより、相互作用か…」

凛「うん。私を一つの教科書? みたいにして欲しい……かな」

P「……」

凛「一緒に頑張ろうよ。これからも……ずっと」

P「……分かった」

P「俺は凛を一人前にするよ」

P「凛も、俺のために一人前になってくれ」

P「『渋谷凛』を導いたプロデューサーって、胸を張って言えるような位にな…」

凛「うん…!」

凛「ふふっ…、これからも頑張ろうね♪」

P「…ああ」


・・・・・
・・・



・・・
・・・・・
=======
(一週間後 アイスキャンディー専門店)


P「(今度は、アイス屋か……)」

P「今日は何の用だ?」

つかさ「ん?」

つかさ「別に困る事か? 不満か?」

P「いや、俺は構わないけど…」

つかさ「…じゃあ問題ないっしょ。はやく注文決めねーと」

P「………?」


つかさ「この前の凛の話だけど…」

P「?」

つかさ「正直、お前のやり方のが正解だったと思う。アタシもな」

P「!」

P「ふっ…」

つかさ「…何笑ってんの?」

P「いや…、つかさが褒める事って滅多にないからな」

つかさ「お前、アタシを何だと思ってんの?」

P「けどな…、今回の問題は正解不正解じゃないぞ」

つかさ「?」

P「最終的に行きつく所は同じだったんだ。その経過に関して、少し筋道の食い違いがあったってだけで……」

P「別に、凛が間違っていたってワケじゃないんだ」

つかさ「ああ…。分かってんじゃん。だからしっかりコントロールしてやれって、アタシ言ったろ?」


つかさ「何事においても、ステップってモンがある」

つかさ「これは…、マネジャーとかの計画書の作り方だけど…」

つかさ「『短期目標と長期目標』っヤツ。分かる?」

P「それくらい知ってるわ。馬鹿にすんな」

つかさ「まあ簡単に言えばだな…。デカい目標を最初に作って、それを達成するために、段階を追って小さな目標を設定する」

つかさ「で、小さな目標をどんどんクリアしていけば、最終的にはデカい目標に近づけるってやり方。分かる?」

P「要するに、逆算だろ? 手順や筋道のを綿密に立てる事こそ、大成の近道だ」

つかさ「ざっくりしてんな…。けど、そんなカンジ。それ以上でも以下でもない」


つかさ「ソコで忘れちゃダメなのは、短期目標を一個終える毎に、見直しや反省をして、少しずつ軌道を修正する事」

つかさ「不足の点は、次の短期目標で補ったり、新しい短期目標を設定する」

つかさ「それだけじゃないな。何で不足したか、何が原因でダメだったのか、しっかりと自分の中で反芻するのも大事なんだわ」

つかさ「見落としや、やり残しがあったら、長期目標を達成したとはカンペキには言えないっしょ?」

P「ああ…」

つかさ「『コレはダメだった』『コレがダメだった理由は何だ?』『じゃあアレならどうだ?』『なら、アレを次のソレに採り入れよう』……」

つかさ「例え……、最終的な目標が定まっていなくても、段階を置いて、しっかりと研ぎ澄ませれば、自ずと道も見えるんじゃね?」

P「………」

つかさ「今後…、長期目標を凛が示したなら、短期目標をお前が示す」

つかさ「それで夢の実現まで舵取りをしてやるのが、プロデューサーって仕事っしょ」

P「……」

P「お前さ…」

つかさ「んー?」

P「マジでプロデューサーやれば?」

つかさ「そりゃお前だろ。アタシはアイドルだから」


P「けど…」

P「最終的な目標設定に関しては……、まだ時間がかかりそうだ」

P「まあ、焦る事は無い。時間はあるんだしな」

つかさ「……」

つかさ「まあ、それもそうだ。短期目標と長期目標ってのは、時間を掛けるスタイルだし」

P「お前は、何かあるのか?」

つかさ「あ?」

P「目標」

つかさ「アタシ?」

つかさ「アタシは当然、自分の会社を大きくしたり、自社ブランドとかも憧れるな…」

P「…」

P「(………?)」

P「それも良いが…、『アイドル』としては?」

つかさ「!」


P「少し、気掛かりなんだが…」

つかさ「……っ!」

P「つかさの活動って、俺から言わせて貰えば…」



店員「お待たせいたしました!」

店員「洋ナシのタルトのお客様?」

P「ああ、ソッチです」

店員「コチラが、サングリアバーになります」

店員「御注文は以上でしたか?」

P「はい」

店員「ごゆっくりどうぞっ」



P「…」

つかさ「………で?」

P「ん? ああ……」

P「…………いや、別に。取り敢えず食うか」

つかさ「………」

つかさ「そーだな」

・・・・・
・・・


・・・
・・・・・
======
【一ヶ月後 ライブ会場 楽屋】


P「お疲れさま」

凛「疲れたぁ……」

P「お疲れ」バサッ

凛「でも……、やっぱライブって楽しいね」ゴシゴシ

凛「自分の歌で会場が湧いたり、合いの手を入れて貰える瞬間が……、何て言うんだろう」

凛「すっごい、なんか、こう……!」

P「高揚する?」

凛「うん、そんな感じ」ゴシゴシ

P「分かる。俺も野球のブラスバンドの応援とか声援がすっごい好きだった」

凛「注目されるのって、嬉しいよね」


P「じゃあ、挨拶回りしてくるから、ゆっくりしててイイぞ」

凛「うん」

凛「あ…、そうだ」

P「ん?」

凛「あの時の約束、覚えてる?」

P「約束……………」

P「……………」

P「奢る約束か?」

凛「そ。どっか連れてってよ♪」ニコッ

P「んー……、俺は撤収にも関わるから、遅くなるぞ?」

凛「大丈夫、私も手伝うよ」

P「……分かった分かった。早く着替えろ」

凛「はーい」


=======
【2時間後 ラーメン屋】


P「……」

P「(こ、このラーメン屋って…)」

凛「へえ…、やっぱり女の人も結構多いんだ」

P「いいのか? 折角ライブも終わったんだし、もっと別の所で食っても良いんだぞ?」

凛「うん? いや、ここで充分だよ」

凛「疲れた後にラーメンを掻き込むの、一回やってみたかったんだ♪」

P「へ、へー……そうなんすか…」

凛「最近、友達の間……、というか、女性の間で人気なんだよね」

P「? ここ、女性人気なのか?」

凛「うん。テレビでも紹介してたし、つかさも雑誌の中で言ってたよ」

P「!」

P「つかさが?」

P「(そう言えば……以前、JKのトレンドとか何とか言ってたな…)」


~~~~~~
つかさ『アタシは、店に来る前から狙ってた』

つかさ『今日は色々と調査に来たんだわ』
~~~~~~


P「(アイツ……雑誌で何の特集組んでるんだよ…)」


P「(そう言えば……)」

P「(アイツが向こうの会社でやってる事、あんまり知らないな……)」

凛「プロデューサーは、何頼む?」

P「俺か? んー…」

P「……」

P「………」

P「普通の醤油でイイかな」

凛「へえ。じゃあ私は……人気の海老塩で」

P「まあ、俺も一回来たことあるしさ」

凛「あれ? そうだったの?」

凛「言ってくれれば良かったのに…」

P「いや、美味かったから別に良いぞ。つかさも凛と同じの頼んでたな」

凛「へーえ…」

凛「……」

凛「え?」

凛「そ、そうなの?」


P「? 意外か?」

凛「うん。一緒に居る事あるんだ」

凛「つかさって、プロデューサーにあまり頼らず、自分で何でもやってるから…」

凛「……気を悪くしないでね? 正直、上手くいってないのかと思った」

P「!」

P「(実際は、周囲からはそう思われてるのか? それもそれで問題だな…)」

P「心配すんな。仲が悪いとか、そんな事じゃないから」

凛「?」

凛「……でも、つかさってホントにカッコいいよね」

P「…………カッコいい??」


凛「私と同じくらいの年なのに、アイドルの片手間、自分の会社を運営して、しっかりと自立して…」

凛「もうすっかり大人の世界の住人って感じがするよ。発言とか思考も達観してそうだし」

凛「ちょっと、憧れるかな。目標というか…」

P「……」

凛「……でも、最近、元気ないと言うか……、ちょっと仕事の事で困ってたかな」

P「!!」

凛「うん?」


P「そ…、そう、なのか…!?」

凛「……知らないの? 一応は担当なのに?」

P「(ぐっ…)」

P「し、知らなかった…」

凛「あーあ。ダメだよ?」

凛「私ばっかり見てくれるのも嬉しいけど、つかさの事もちゃんと見張ってなきゃ」

凛「ある程度、私も自主的な活動とか経験したいし、別に常時付きっきりじゃ無くても大丈夫だよ?」

P「…?」


P「(な、何だ……? 随分と余裕を含んだ言い方だな…)」

P「(というか…、今の台詞と似た様な事を、つかさにも言われた気がするが……)」


~~~~~~
つかさ『ハハ、まだまだお前の手は借りねーよ……』

つかさ『お前、凛だけでも一杯一杯じゃね? もう少し頑張れ、マジで』

つかさ『今はアタシ一人で、充分だから…………、凛をしっかり見てやれっつーの?』

P『ん? ああ……、分かったよ』
~~~~~~


P「……」

P「(けど、アイツは凛みたいに、余裕なカンジの言い方では無かったな)」

P「(……?)」

P「っ!!」

P「(ひ、ひょっとして…、俺って居なくても、別に差し障り無いんじゃあ……)」


P「……凛」

凛「ん?」

P「俺って…、お前らに必要とされてるのか…?」

凛「!?」

凛「ちょ、ちょっと! ネガティブにならないでよっ!!」

凛「じ、自主的といっても…、プロデューサーが役立たずとか言って無いじゃん!!」

P「そ、そうだな……、悪い」

凛「………」

凛「……ねえ」

P「何だ?」

凛「一応言っておくけど…」

P「?」

凛「これからは一緒に頑張るって決めたよね?」

凛「だから、私の事も見てくれないと……、アレだから」

P「アレ?」

凛「その……、アレです」

凛「……困るから。お互い仕事に支障が出るでしょ?」

凛「少なくとも、私はプロデューサーを必要にしてる」

凛「頼りにしてるからね?」

P「………!」

P「ああ……、ありがとう」

P「改めて頼りにされてるって言われると、少し安心した」

凛「……」

凛「(……んー…)」

凛「(上手く言えない。恥ずかしいんじゃないけど、何だろう…)」


・・・・・
・・・


・・・
・・・・・
=======
【翌々日 夕方 事務所】


P「……」

P「(へえ…)」

P「(つかさが自分の会社でやってる事を、色々と調べてみたが…)」

P「(ハイティーンをターゲットにした雑誌のコラムやデータの掲載、トレンドチェック、人気ブランドと提携したモデル活動や商品宣伝…)」

P「(層を絞ってるから、人出が少なくてもそれなりに活動は捗ってる感じだな)」

P「(なにぶん、アイツ自身が現役女子高生だ。親近感や説得性のある雰囲気が凄く出ている)」

P「(ラーメン屋やアイス専門店の特集記事も載っている。足を運んでたのは、そういう事だったのか……)」

P「……」

P「(順調そうに思えるが…)」

P「………」

P「(何を悩んでいる…?)」

P「(……………)」

P「(クソっ……)」

P「(アイツとは付き合いが長いのに…、何で分からないんだ…)」


「Pさん、じゃあ施錠お願いしますね?」

P「! はい、お疲れさまでした」

「お先に失礼します」


バタン


P「………」

P「つかさ、か……」

P「楽だとは思っていないが、アイツは自分で仕事とか取ってくるから…」

P「……」

P「全然見てやれて無かったな……」

P「!」

P「まさか………あの時か…?」



ガチャ


P「あ」

つかさ「お」

つかさ「よっす。………なんだ、一人か?」

P「お前こそ、今日は特に予定は入って無かったろ」

つかさ「カタイな。別に良いだろ?」

P「……」

P「お前さ…」

つかさ「あん?」

P「……最近、調子どうだ?」

つかさ「何…、藪から棒に」

つかさ「好調そのもの。完璧だわ」

P「………」

P「本当か?」

つかさ「………」

つかさ「……何だよ」


P「まず、謝らせてくれ」

P「お前の事を全然見てやれなくてスマン…」

つかさ「!」

P「最近、仕事に付いてやれ無かったから、少し気になったんだよ」

つかさ「……なに、心配してくれてんの? ハズイな…」

つかさ「アタシの心配より、お前は自分の心配しろ」

つかさ「お前のケツ拭くなんて、アタシはゴメンだから」

P「……当初よりは、幾分か仕事もマシになってきたと思わないか?」

つかさ「ハァ? どこが…?」

P「な…ッ!」

P「!」

P「(落ち着け…! コイツの軽口は特に意味は無い…)」


P「……ふぅ」

P「これでも俺は、お前の担当プロデューサーだ」

P「お前が最近何を悩んでいるとか、教えてくれても良いんじゃないか?」

つかさ「……」

つかさ「掛かった経費明細は全部提出してるし、時間外活動の報告もしてるだろ」

つかさ「不満?」

P「少し、な」

つかさ「はー?」

P「……」

P「お前、今日鏡見たか?」

P「クマ出来てるぞ」

つかさ「!」


つかさ「(メイク忘れてた…、ヤッベ…!)」

つかさ「(前に、ちひろさんにも言われてたのに……)」

P「最近、あんまり寝てないんじゃないか?」

つかさ「余計なお世話だっつーの。デリカシー無いぞ」

P「し、心配してるんだよ。これでもな」

つかさ「………いいわ」

つかさ「帰る。じゃあな」

P「お、おい!」

つかさ「……」スタスタ

P「ちょ、ちょっと待て!」ドン!


つかさ「……」

つかさ「………」

P「えっと…」

つかさ「扉塞いで何? スゲー邪魔だぞ」

つかさ「お前の壁ドンとか、1ミリもトキメかねーな…」

P「ね、狙ってやったんじゃねーよ…!」

P「あれだ、その……」


~~~~~~
P『つかさみたいに、自分から積極的に仕事を取りに行ってくれてると、楽なんだがな…』

つかさ『楽とか言うな。蹴るぞ、マジで』

P『冗談だって』

つかさ『……』

つかさ『少し違うな、アタシは…』

P『?』
~~~~~~

P「………」

~~~~~~
凛『少なくとも、私はプロデューサーを必要にしてる』

凛『頼りにしてるからね?』
~~~~~~

P「……………」


P「お前は、俺を頼ってくれないのか?」

つかさ「は?」

P「……」

P「俺が少しはマシになったと思ったから、お前はこの業界に入ってくれた」

P「いきなりお前が、上司に名指しで俺を担当にせがんだ時は、肝を冷やしたけど…」

つかさ「……」

P「一ヶ月前………、お前が俺のアパートに乗り込んで来た時だ」

P「何か…、相談でもあったんじゃないのか?」

P「けど、俺はその時、また凛とトラブってて…」

P「……」


~~~~~~
P『………で』

P『今日はいきなりどうしたんだ?』

P『何かあったか? 飯食いに誘ってくれただけじゃないだろ?』

つかさ『いや、まあ……』

つかさ『…………』

P『?』

P『何だ?』

つかさ『……何でも』
~~~~~~

~~~~~~
P『今日は何の用だ?』

つかさ『ん?』

つかさ『別に困る事か? 不満か?』

P『いや、俺は構わないけど…』

つかさ『…じゃあ問題ないっしょ。はやく注文決めねーと』
~~~~~~



P「負担を掛けまいと、身を引いてくれたのか?」

つかさ「……」

つかさ「………ちげーって」

P「……ッ!!」


P「じゃあ…、何だよ!!」

つかさ「っ!」ビクッ

P「最近は、俺もプロデューサーとして自覚を持って仕事してる!」

P「以前よりは、少しは様になってきたと思ってる!」

P「何で、お前は、そうやっていつも……!」

P「!!」

P「(しまった…)」

つかさ「……」

P「(…つい…、感情的になって、デカい声を…!)」


P「…」

P「悪い。大きな声を出して驚かせたな」

P「ちょっと、自分が情けなくなった」

P「……」

つかさ「……」

つかさ「そうだよ」

P「!」

つかさ「お前が情けなくて不安だからだよ。それ以外に何かあっか?」

P「……!」

P「……」

P「いや、尤もだ」

P「悪かったな。余計な事聞いて」


P「ただ、一つ言わせてくれ。前に、アイス屋で言えなかった事だ」

つかさ「?」

P「……お前は…」

P「アイドル、楽しんでるのか?」

つかさ「……」

P「俺はまだ、お前の悩み事を聞けるような力量じゃないかもしれない」

P「お前が自分の会社の事で、色々やってるのは知ってる」

P「社長の肩書を利用してアイドルの仕事を取ってくるし、アイドルの肩書も、自分の仕事に利用してるのも知ってる」

P「……」

P「凛はアイドルを目的にしてる。けど、そういう点で逆に、つかさはアイドルを手段にしてるんだ」

つかさ「…っ!」

P「別に…、どちらが正解か不正解かなんて言うつもりはないが…」

つかさ「………」

P「せめて、こういう芸能業界でアイドルとして歩んでいるなら」

P「楽しみや遣り甲斐を持って活動して欲しい」


P「言いたい事は、これだけだ」

P「…大きな声出して悪かった」

つかさ「…気にしてねーよ」

P「…いつか、お前に見合う様な立ち位置目指して、俺も頑張るよ」

P「ただ…」

P「悩みがあったら、一人で抱え込まないでくれ」

P「凛も心配してたぞ」

つかさ「!」

P「……邪魔して悪かった」スッ

つかさ「……」



ガチャ


バタン


P「……」


P「(よく…、つかさからコミュ障だ何だ言われるが…)」

P「(確かに、正直あまりコミュニケーションが上手くいかないのは、自覚している)」

P「(言葉足らずで凛とすれ違うし、今なんて、すぐ大声を出して、怖がらせてた)」

P「(けど……、社会人なら、他人と折り合いをつけて付き合わなければならない)」

P「(そして『折り合い』とは『諦める』という事では無い………、つかさが以前言っていた言葉だ)」

P「(『諦める』とは、つまり彼女の担当から降りる事…)」

P「……」

P「(違う。それが一番ダメなのは、互いに分かっている筈だ)」

P「(つかさとどう上手く付き合えるか…、どうすれば彼女の色を殺さず、強みを生かせるか……)」

P「(折り合いをつける……。俺が為すべき事は、今の所は一つだ)」


・・・・・
・・・


・・・
・・・・・
======
【夜 つかさの部屋】


つかさ「……」

つかさ「あんな奴に、全部思ってる事言われるなんて……」

つかさ「アタシもダセーな…」

つかさ「凛にも、心配掛けてたのか…。今度なんか奢ろう」

つかさ「……」

つかさ「(アイドルを目的ではなく、手段として見ている)」

つかさ「…」

つかさ「(当たってんな。アタシも、薄々気づいてたっての…)」

つかさ「(けど、この方針を変えなかったのは…)」

つかさ「(アタシは社長だし、それで……)」

つかさ「(アイツがアタシの、桐生つかさのプロデューサーだからだ)」

つかさ「……」


つかさ「(アイツに謝らなきゃいけない事が、二つある)」

つかさ「(一つは、別にアイツが情けなくてダメだから、相談したくないってワケじゃねー)」

つかさ「(幼馴染だし、そんなの今更気にしねーっつーの…)」

つかさ「(二つめは………)」

つかさ「(……)」

つかさ「(今まで、アイツを『利用』してたって事だ)」

つかさ「(……)」


つかさ「(アイツに相談する機会があったのに、相談しなかったのは…)」

つかさ「(真面目にアイドルやってる渋谷凛と、不器用ながらも必死にプロデュースしてるアイツに…)」

つかさ「(申し訳ないと思ったから。引け目があった。アイドルを手段としか見てないアタシだから)」

つかさ「……」

つかさ「(……あぁ、くっそ…)」

つかさ「(包み隠さず意見や意志を言うのが、アタシのポリシーだったのに…)」


・・・・・
・・・


・・・
・・・・・
=======
【5日後 レッスンルーム】


凛「ふーっ…」バサバサ

つかさ「…」

凛「あ」

つかさ「お疲れ。ん」スッ

凛「あ。ありがとう…」

つかさ「炭酸飲めるか?」

凛「うん。むしろ好きだよ」

つかさ「そーか」カコン


つかさ「凛ってさ…」

凛「??」ゴクゴク

つかさ「今、アイドル楽しんでる?」

凛「…」ゴクン

凛「ぅぷっ…」

つかさ「……」

凛「楽しいよ? 最近は色々な方面の仕事回ってくるし…」

凛「少しずつ、自分が変わっていってるのが分かる」

つかさ「ふうん…」

凛「つかさは…、最近なにしてるの?」


つかさ「何だと思う?」

凛「えー…」

凛「自分の会社と掛け合って、何かしてるの? アイドルの格好で宣伝とか?」

つかさ「それもいいな。まあ、自分の会社の運営ばっかりやってるのは正解」

つかさ「最近、上手くイってないんだわ。マジつれぇ」

凛「!」

つかさ「技術投資とか資本提携の奴らがさ、あーだこーだ注文うるさくってな?」

つかさ「アイドルなんて余計な事やって、運用効率が落ちるだのなんだの…」

つかさ「だからアイドルっぽい仕事で、自分の会社の活動にもプラスに転じる事考えているんだけど…」

つかさ「思いつかねーの。何かない?」

凛「うーん………」

凛「プロデューサーに相談してみれば??」

つかさ「………」


凛「結構、見栄張ってる?」

つかさ「張ってナンボの見栄っしょ。社長だし」

凛「疲れない?」

つかさ「泣き事は言えないのが、社長の辛いところなんだわ」

凛「……」

凛「やっぱり、つかさってカッコイイね」

つかさ「…いいや」

つかさ「見栄張ってるだけで、全然カッコ良くないだろ?」

凛「?」


つかさ「……アタシが小さい頃」

凛「うん?」

つかさ「男勝りで負けん気で女の子らしさが欠けていたアタシは、同性の友達も出来ず、孤立しがちだった」

凛「!」

凛「へえ……、意外」

つかさ「んな時に、色々と世話を焼いてくれた奴がいてな」

凛「うん」

つかさ「親同士が仲が良いのもあって、よくツルんでた」

つかさ「同世代と遊ぶより、アイツと一緒にいた時間の方が遥かに多かったな。あの頃は」

凛「幼馴染ってやつ?」

つかさ「一緒にいると気が楽で、自然と笑うことが多くなった」

つかさ「本当に世話焼きで、色々な友達を紹介してくれた」

つかさ「アタシも余裕も出来て、少しずつ周囲にも馴染んでいった」

凛「……」


つかさ「成績優秀、野球部のエースで、おまけにツラも微妙に良い」

つかさ「周りからチヤホヤされてたアイツが、割と羨ましかった」

つかさ「アタシも何か、周りから憧れる様な、何か、秀でた物を持ちたかった」

つかさ「思えば、その時から、社長とかカリスマとか……、少し意識してたのかも」

つかさ「…」

つかさ「結局、一人じゃ何もできねーのかもな」

つかさ「見栄張って意地張って…、全然カッコ悪いっしょ」

凛「……」

凛「ううん。カッコいいと思う」

つかさ「?」


凛「今のつかさがあるのは、その幼馴染の人のお陰かもしれないけど…」

凛「男勝りで負けん気。小さい時の自分と、何も変わらないスタイルを貫いてるって感じがする」

凛「一生懸命にやりたい事やって……、気遅れも物怖じもしない」

凛「……凄くカッコいいよ」

凛「私なんて、他人とのコミュニケーションが苦手だったから、変な事ばっかりしちゃったし」

凛「他人の顔色窺ったりさ。だから、つかさみたいな我が道往くタイプに、少し憧れるかな?」

凛「そういう意味では……つかさって…」

凛「私の目標でもあるんだ」

つかさ「……へーえ」


凛「私は、アイドルしか出来ないけど…」

凛「つかさは、アイドルと自分の会社の両立目指して、頑張ってる」

凛「他の人じゃ、真似できない事をしてるんだから…」

凛「胸張って良いと思う」

凛「私も見習って、それで…、負けない様に頑張るよ」

つかさ「うん、サンキュー」

つかさ「そう言われると、少し自信出て来たな」

凛「そ? 良かった」

つかさ「今度、何か奢ってやるよ」

つかさ「アタシがこの前雑誌で紹介したアイスキャンディー専門店か、ラーメン屋か…」

凛「じゃあ、アイスの店に行きたいな」

つかさ「よっし。予定空けとけよ」

凛「うん。ラーメン屋は……、前にプロデューサーと行ったしね」

つかさ「そうか、なら………」

つかさ「………」

つかさ「あ? そうなん?」

凛「う、うん…」

つかさ「へえ………」



======
【1時間後 事務室前】


つかさ「(……)」

つかさ「(取り敢えず、『利用』してた事、謝って…)」

つかさ「(素直に相談乗って貰うか…)」


ガチャ


つかさ「!」

「あっ! つかさちゃん! 良かった…!」

つかさ「ちひろさん? どうしたんだ?」


「今から探しに行こうと思ってたんですよ? お仕事、これからあるでしょう?」

つかさ「え…、ん??」

つかさ「いや……無いけど。今日はレッスンで終わり……」

「Pさんに言われたんです、これからつかさちゃんを送ってくれって」

つかさ「……???」

つかさ「何の仕事?」

「写真の撮影だそうですよ。兎に角、準備して下さい」

つかさ「お、おう…」

つかさ「(……何考えてるんだ、アイツ…)」

・・・・・
・・・


・・・
・・・・・
======
【一時間後 撮影スタジオ】



P「!」

P「来たな……。うん、イイ感じだ」

つかさ「……」

つかさ「なあ…、オイ…」

P「何だ?」

つかさ「コレ…、このドレス……、マジ??」

P「似合ってるぞ?」

つかさ「いや、そうじゃなくて…」

P「普段と違って、可愛く仕上がってるな」

つかさ「……!」


P「何だ、ビビってるのか?」

つかさ「ビビッてねえし…、でも、自撮りじゃダメなん?」

つかさ「(人もすげー多い…。何の撮影だよ)」

P「ダメ」

つかさ「……」

つかさ「このドレス…、レンタルでも、結構高いやつって聞いたけど…」

P「気にするなよ。そんな事」

つかさ「……」


P「技術投資と資本提携だったか?」

つかさ「!!」

つかさ「……何で、知ってんだ?」

P「お前の会社のコト、色々聞いたり調べたんだ」

つかさ「……余計な事…」

P「今回は、そのクライエントに話を回しといた」

P「Popteenって言う雑誌の表紙の起用と、あと2枚ほど、流行の服でイメージ写真も撮って貰う」

P「大きな案件を上手くこなしてる所…、クライエントに見せてやれよ」

つかさ「…!」

つかさ「滅茶苦茶有名なトコじゃねーか…」

P「上司に紹介して貰ってな」

P「荷が重いか?」

つかさ「はあ? ……舐めんなって」

P「さっきまで恥ずかしがってた癖にか?」

つかさ「う、うっさい! ハズくねーって!」


P「お前が今までやってた活動より、少しアイドル寄りの仕事だ」

つかさ「……」

つかさ「後で、話あっから」

P「うん?」

つかさ「……二度は言わない」

P「はいはい」

つかさ「……なあ」

P「ん?」

つかさ「なんか、プロデューサーっぽい励ましの言葉でもねーの?」

P「んー…、お前は何でも卒なくこなすと思ったが…」

つかさ「は、はあ!? いきなり連れて来られて、心のジュンビってモンが…!」

P「はは…、じゃあ…」

P「社長らしく、バッチリ決めて来いよ」

つかさ「…」

つかさ「おう。見てろよ、ソコで」

P「ああ。見ててやる。今度はしっかりな」



『じゃあ、スタンバイお願いします』


つかさ「ああ、OK」

つかさ「……」スタスタ

つかさ「(………)」

つかさ「(何だよ、一言もアタシに前置き無しに撮影なんて……、んなのアリ?)」

つかさ「(……いや…)」

つかさ「(前置きがあったら、アタシは素直に応じたか、わかんねーもんな…)」

つかさ「(くっそ…、こんな強引な…)」

つかさ「(アイツ……、味なマネしやがって……)」


『じゃあ、桐生さん。裾摘んで、笑って下さい』

つかさ「……」

つかさ「……そんな御淑やかなイメージじゃ無いっしょ、アタシって」

『はい?』

つかさ「こうさ…」グイッ

つかさ「脚とか思いッきり出して…」

『ん……!』

つかさ「ドカっと構えてさ…」

つかさ「……どーさ?」

つかさ「不敵な感じで、コッチのが良くね?」

『…よし、イイね!』

『そのまま、5、6枚撮りますね』

つかさ「(……)」

つかさ「(どうだ…、アタシだって、これくらい簡単に出来るんだ…!)」

つかさ「(見てるかオイ……、プロ…)」チラッ





P「済みません、今日は急な飛び込みでご迷惑をおかけして…」

「いえいえ、寧ろ助かりましたよ。本来の表紙の子がブッキングで来れないと、4日前に知らされまして…」

「で、丁度イイ感じの子を探してたら、そこに貴方から電話を頂きましてね?」

「実に映えそうな見た目にビビっと来ましたよ!」

P「運が良かったです…。助かりました、本当に。今後も是非よろしくお願いします」

「いいえ! とんでもない! 凄く良い子じゃないですか。コチラこそ是非とも…」






つかさ「(み、見てねーじゃねーか!! オイっ!!)」

つかさ「(なに名刺交換してやがんだっ…! くっそ~~~ッ!!!)」

『き、桐生さん。笑って笑って…』


・・・・・
・・・


・・・
・・・・・
======
【撮影終了後 楽屋】


つかさ「オイ…、見て無かったろ」

つかさ「何がしっかり見てやる、だ…?」

P「み、見てたよ。お前がいきなり、大見栄切るカンジで肩幅に脚を広げた辺りは」

つかさ「最初の一瞬だろ! ソレ!!」

P「し、仕方ないだろ! その後、編集長に話しかけられたんだし…」

つかさ「……というか」

つかさ「代役かよ」

P「大抜擢だろ」

つかさ「まあ、そうだけど…」

P「みんな良い意味で驚いてたぞ。色んな人が褒めてたし。これでまた声が掛かるかもな」

つかさ「(……)」

つかさ「(まあ、いっか)」


P「良かったよ。実にお前らしいカットだった」

つかさ「当然っしょ。アタシはカリスマJK社長だって」

P「ああ、その意気だ」

つかさ「……でも…」

つかさ「…結構、楽しかったわ」

P「!」

P「その言葉が聞けて良かったよ。勝手にお前を振り回して、少し不安だったんだ」

P「…急に連れて来て悪かったな」

つかさ「…謝るならやるなよ」

つかさ「別に、イイけどさ」 


つかさ「…」

つかさ「なあ…」

P「?」

つかさ「あの時、悪かったよ。何も言わなくて」

P「……」

つかさ「引け目感じてたっつーの? 実際の所…」

つかさ「真面目な凛とお前の間に、アイドルを手段にしてるアタシが割って入って良いのか……ってな」

つかさ「……それに…」

つかさ「アタシ、お前のこと『利用』してたわけだし」

P「利用?」

つかさ「幼馴染って肩書だよ」

P「……?」


つかさ「ろくに相談もせず好き勝手やって、しかもそれが関係の無い会社の活動と来たもんだ」

つかさ「そんな自分勝手な活動を許すプロデューサー……、お前くらいしか居なかったからさ…」

P「ああ…、だからお前は……俺を選んだのか」

つかさ「まあ、な。でも、それだけじゃねーぞ」

P「何だ?」

つかさ「そりゃあ、アレだよ……アレ…」

P「アレ?」

つかさ「……色々だ」

P「はあ?」

つかさ「い、色々だよッ!」バン!


P「でも、まあ……」

P「そんな耳触りの良くない言葉で括るなよ。『利用』だなんて…」

つかさ「……ん、悪い」

P「あ、いや、違うって。別に怒ってないぞ?」

つかさ「……」

つかさ「は?」

P「どんどん利用してくれて構わんぞ。それでお前の納得のいく活動が出来るのなら、俺はそれでいい」

つかさ「……?」

つかさ「何言ってんのお前? 狂った?」

P「狂ってねーよ!」


P「…」

P「お前の強みは……」

P「自分の意志をハッキリと持って、それにひたすら邁進すること」

P「時に、それは周りのフォローを必要とせず、寧ろ邪魔になるかもしれない」

P「なら、見守り役に徹しようと思ったわけだ。俺はな」

つかさ「……!」

P「でも、ただ見ているワケにはいかない。何故なら、俺はお前の担当だからな」

P「けど…、多分俺の能力的に、コミュニケーションは不得手で、足を引っ張るだろうな」

P「……なら、要らん事は語らず、行動で示せば良い。勿論、入念な下調べは行うが…」


つかさ「……それが…」

つかさ「今回の撮影って言いてーの?」

P「お前の活動のプラスになると思ったんだ」

P「まだアイドル活動をあまり実践していないお前に現場に慣れて貰って…」

P「かつ、お前の会社の課題も改善する事が出来る。要するに、アイドルとしての活動を、お前の会社の提携先に提示すれば良かったんだろう?」

P「有名雑誌の表紙だ。及第点は貰えると思うが…」

P「………迷惑だったか?」

つかさ「……いや。助かった」


P「お前は、前に俺に言ったよな?」

P「……『大手のお偉い方に頭を下げるのは、自分のポリシーに反する』」

P「『だから、自分を貫いて、自分を認めてくれる奴と仕事をしようと決めた』」

つかさ「……それ、お前が絶不調だった時に言ってた言葉か?」

つかさ「よっく覚えてんな…、ソレ」

P「ああ」

P「なら、代わりに俺が、頭を下げてやるよ」

つかさ「!」

P「お前はお前で、好きな事をやれば良い。放任とか放置とか思われても癪だが、それがお前に合うスタイルだと俺は考える」

P「後始末や下請けとか、そういうのは日蔭者の俺達の仕事だ」

P「お前らアイドルは、舞台に立って輝けばいい」

P「……ただ…」

つかさ「?」

P「…何か困ってたら、相談くらい……してくれよ」

P「俺達……、幼馴染だろ?」

つかさ「……」

つかさ「………」


つかさ「ハっ…」

P「!!」

つかさ「……いや、昔を思い出して、少し笑った」

P「昔だって…?」

つかさ「そーだよ。アタシ達がガキの頃」

P「!」

P「懐かしいな。お前があまり周囲に溶け込んで無かった頃か」

つかさ「ああ。それでお前に遊んで貰って、世話焼いて貰って……」

つかさ「どんどんアタシも友達が増えて……馴染んで行った」

つかさ「……」

つかさ「その……アレだ」

P「……だから、アレって何だよ…?」

つかさ「今日の仕事の件もあるけど…」

つかさ「……………感謝してる」

つかさ「…ありがと」

P「……」

P「はあん? 聞こえなかったな?」ニヤリ

つかさ「っ!!」

つかさ「……ッ!」ガタッ

P「!?」

P「お、おい馬鹿ッ!! そのアクセサリーも借り物だ! メリケンサックじゃ無いんだぞッ!?」

つかさ「チっ……!」


つかさ「ハァ…………」ドサッ

P「な…、なんだよ。深い溜息付きやがって…」

つかさ「いーや…」

つかさ「お前なんかに気を遣われてたのか…」

P「は、ハア?」

つかさ「決めた。お前が折角、無い頭絞って考えてくれたんだ…」

つかさ「いーわ。それでいい」

つかさ「けど…」

P「けど?」

つかさ「……アイドルってのも、悪くねーな」

P「!」

P「そうか…!」

つかさ「なあ、これからもっと、色々と仕事取って来てくれよ? 勿論、アタシに合うヤツな」

つかさ「アタシに、アイドルって何なのか…、お前が教えてくれ」

P「ああ、任せろ。それが俺の仕事だからな」


つかさ「……」

つかさ「ホラ、行くぞ」

P「……?」

P「えっと…、何処に?」

つかさ「挨拶回りだろ。アタシが居た方が印象も良いっしょ?」

P「いや、まあそうだけど………、でも言っただろ?」

P「そう言う役回りは、俺に任せ……」

つかさ「だ・か・ら!」

P「!」

つかさ「アタシもそれでOKだって言ったよな」

P「ああ。自分で『それでいい』って1分前に言ったろ」

つかさ「優秀な歯車、優柔な人材を使わねー手は無いだろ?」

P「…???」


つかさ「アタシの事だよ。つまりは…」

つかさ「お前の事も利用するし、好きな事は勝手にやらせて貰う。でもそれは、アタシ独りよがりの活動ってことじゃない」

つかさ「お前のためになるような事もやってやる」

つかさ「………当然、前提で自分のプラス材料も加味するケドな」

つかさ「これが本当の『相互作用』ってモンだろ?」

P「…!」

つかさ「だから今日みたいに、お前も勝手にやって構わないからさ」

つかさ「現役JKで美人で社長……、そしてアイドル」

つかさ「はは…、お前、どんだけアタシを最強にしたいワケ?」

P「……」

P「ふん…」

P「アイドル事業部なんだ。アイドル活動するのは当然だろ?」

つかさ「そーだな。アタシも、今日やっと自覚したよ」

つかさ「ホラ、さっさと挨拶に行くぞ!」グイッ

P「ッッッ!?」ググッ

P「ガッ……ぐぅ…ッ!?」

P「ね……、くたい、を…、ひっぱるな……っっ…!」

つかさ「ダセーネクタイだな。今度アタシが立派なの選んでやるって」グイッ

つかさ「今日、正真正銘アタシのプロデューサーになったんだ。お前はさ」

つかさ「せめて見てくれだけでも、アタシに見合う男になって貰わなきゃな。まずは」

P「~~~~~っ!!」

つかさ「………♪」



・・・・・
・・・


【以下、オマケという名の蛇足】




・・・
・・・・・
======
【一ヶ月後 事務室】


「つかさちゃん、昨日のライブ、お疲れさまでした!」

つかさ「……ん、ああ……どうも。千川さん」

「?」

「なんか、浮かない表情ですね?」

つかさ「いや、実際…」

つかさ「あんなフリフリの衣装来て踊るなんて思って無かったからさ…」

「ふふっ…♪」

「すごく可愛かったですよ♪ もっと自信を持って下さい」

「Pさんも、昨日は絶賛してましたよ」

つかさ「!」

つかさ「ま、マジか…。まあ、悪い気はしねーけど…」

つかさ「でも、は、ハズいっしょ……流石に…」


凛「そう?」

つかさ「ん?」

凛「あんなカンジじゃない? アイドルって」

つかさ「そーかな…、なんかアイツの悪ノリに付き合わされた気がするんだよな…」

「イイじゃないですか♪ 貴方とPさんの仲ですから…」

つかさ「ハァ……」

凛「ねえ、つかさ?」

つかさ「何?」

凛「デビューライブ記念に、どっか行かない?」

つかさ「ん……!」


つかさ「嬉しいよ。でも、今日はもう予定入ってるんだわ」

凛「そっか…。じゃあ、今度でも良いよ」

つかさ「OK。覚えとくから」

「予定…?」



ガチャ


P「………」

「あっ、Pさん。お疲れ様です」

凛「お疲れ様」

つかさ「……」

P「………」プルプル

「…?」

凛「ど、どうしたの…? 顔真っ青だけど…」


P「……オイ、つかさ…」

つかさ「んー?」

P「お前…、俺の名前で…」

P「く、クソ高い店のコース、予約しやがったな……!」

つかさ「おー。まさか電話履歴で調べたのか?」

P「お、奢るとは言ったが、げ、限度と節度と常識ってモンが……!」

つかさ「まあいいじゃん。記念だ記念」

P「お、お前っ……!!」

つかさ「Pだって、衣装案アタシに見せねーで企画通しやがって…」

凛「ッ!?」

P「ぐっ…!」

つかさ「お互い様っしょ」

P「似合ってただろッ!」

つかさ「まあいいだろ。ホラ、さっさと行くか。時間だしな」

「あらっ! これから二人で食事ですか?」

つかさ「そう言う事。ウンと高い店で食わせて貰うから」

つかさ「今日は予約だったんだわ。凛、また今度な」ヒラヒラ

凛「……」

つかさ「おら、行くぞP」グイッ

P「くっそ…………」ズルズル

「お疲れ様でーす♪」

P「お疲れ様です………」ズルズル


バタン


「いやぁ、仲が良いですね♪」

凛「……」

「…?」

凛「……」

「凛ちゃん?」


凛「あの二人……、あんなに仲良かったっけ…?」

「つかさちゃんの会社とウチが業務提携してから、彼女も普通に自分の会社の事を取り組めるようになって…」

「Pさんと色々と協力してやってるそうですよ?」

凛「それは知ってる」

凛「……」

凛「Pさん」

「Pさん?」

凛「名前呼び」

「! ああ…、確かに」

凛「以前は『アイツ』だの『お前』だの呼んでたけど…、今日初めて気付いたよ」

「まあ、私はずっと『Pさん』と名前で呼んでましたが……」

「確かに、つかさちゃんがそう呼んでいる所は初めて聞きましたね」

「でも…、それが自然なのかもしれないですね」

凛「!?」ガタッ

凛「自然ッ!? 自然って…!?」ズイッ

「え! ちょ、ちょっと…、り、凛ちゃん??」オロオロ

凛「……」ジリジリ

「(ち、近いっ…! 怖い……!)」

凛「………自然って?」

「え、ええっとぉ…!」

「(つ、つかさちゃん…! 大人って口が堅いけど、ズルい生き物なんですっ…!)」

凛「……」

「あ、あの二人…、実は……」


・・・・・
・・・


・・・
・・・・・
======
【2日後 Pのアパート】



つかさ「業務提携。もっと早くに気付けば良かったわ」

つかさ「これでアタシも気兼ねなく、自分のアイドル活動の中に、会社の事情も織り交ぜて企画できるし」

つかさ「会社間で良好な関係図れて、win-winってヤツだな」

つかさ「…な?」ペラッ

P「……バキを読みながら言う台詞か?」

つかさ「んだよ。バキは哲学だぞ」

つかさ「つーか、前は部屋に入れてくれなかった癖に……」

P「整理したんだよ。漫画で散らかってたからな」

つかさ「お前が漫画好きだってのは、昔から知ってる」

つかさ「隠す事か?」

P「……まあ、それもそうだけどさ…」


つかさ「よっと…」

つかさ「……」ガサガサ

P「おい。あんまり漁るなよ」

つかさ「小せえな。細かい事気にすると禿げんぞ」

P「…でも」

つかさ「ん?」

P「昔も、俺の実家で…、こうやって漫画とか読んでたりしたよな」

つかさ「ハッ……」

つかさ「懐かしいって。ソレも」ガサガサ

つかさ「漫画の趣味は変わってないみたいだけどな」

P「そりゃそうだ。小さい頃に読んでた漫画が、軒並み現役連載中なんだし」

つかさ「おっ…、HUNTER×HUNTERもあるじゃん」

P「……」

P「それは……、現役とは言い難いけどな……」

つかさ「いや、この漫画の中でさ…」

P「?」

つかさ「こんな台詞があるの、お前知ってる?」

つかさ「『その人を知りたければ、その人が何に対して怒りを感じるかを知れ』」


P「いや、覚えてない」

つかさ「ああ? 何だよ…」

つかさ「これ、結構現実でも通じるぞ。チェックしとけ」

P「……じゃあ」

P「以前…、凛がライブが出来なくて怒ったのは?」

つかさ「焦りもあるけど、向上の意識も当然あったんだろ」

つかさ「つまりは、自分の状況を常に変えたい願望がある。それは、自分の事をしっかり把握している証拠だ」

つかさ「マトモな家庭で育ったが、凛自身は案外、チャレンジ精神旺盛だったり、欲求不安なのかもな」

つかさ「ただ、少し不器用で奥手ってだけで…」

P「ふむふむ…」

つかさ「お前が事務室で、アタシを怒鳴ったのは…」

P「つかさの考えが読めなかった自分と、何故か頼られない自分に憤りを感じてた」

P「……相手の事も自分の事も見えない、変なプライドだけは一著前に高い人間……か?」

つかさ「まあ、悪く言えばな。良く言えば……」

P「……」

つかさ「自分で考えろ」

P「な、何だと…!」


つかさ「逆に、アタシは……」

P「つかさは……、そうだな」

P「お前はいきなり感情を露わにするタイプじゃない」

P「でも行動的な一面がある。加えて、賢いが……」

つかさ「…」

P「今回みたいに、自分の問題は抱え込もうとする。つまり…」

P「本当は、お前も不器用なのか? 器用っぽいのにな」

つかさ「……ハッ…」

つかさ「意地と見栄張ってるだけだってーの。凛にも言ったわ、アタシの事」

P「包み隠さず物事を伝えるのが、お前のポリシーじゃなかったのか?」

つかさ「!」

つかさ「それは…ッ!」

つかさ「時と場合によるだろーがッ……」

P「ふぅん…?」

P「まあ、それもそうだな」

つかさ「(………)」

つかさ「(コイツ、たまに痛いトコ突くよな……)」


P「……まあ」

P「そういう機微を読みあってこそ、本当の信頼関係って構築されるんだろうな」

つかさ「読むだけじゃだめだ。読まれるためには、しっかりと自分をアピールしてかねーと」

つかさ「じゃねーと、意志ってのが伝わら無いだろ?」

P「ああ」

P「……お前も、無事にアイドルとして軌道に乗り始めたんだ」

P「これからは一蓮托生でやって行こう」

P「別にアイドルが手段でも目的でも、構わない」

つかさ「……」

つかさ「アタシの目標は…」

P「?」

つかさ「当然、自分の会社を大きくして名前を売って、自社ブランドでも何でも立ちあげてやる。雑誌刊行もイイかもな」

つかさ「けど、今はそれ以上に…」

つかさ「アイドルってモンを楽しみたいと思ってるよ」

つかさ「……アイドルを精一杯楽しむ事。それがアタシの目標だ」

P「ああ」

P「それを傍らで手助けしてやるよ。お前が笑顔でいられる様に」

P「ガキの頃みたいに……な」

つかさ「プッ!」

P「!」

つかさ「く、クセーっ…! あははははっ!!」バタバタ

P「お…、お前なぁ…!」


つかさ「っと…」カタッ

P「(くそ……、家に入れるんじゃなかった…!)」

つかさ「どれどれ、他には…?」

つかさ「ONE PIECE、BLEACH、NARUTO、はじめの一歩、……何だ、少年漫画ばっかだな」

P「最高だろ?」

つかさ「大抵は、薬にも毒にもなんねーよ」

つかさ「もっと、こう……ッ!?」ピタッ


カタッ

つかさ「……」

つかさ「………」

つかさ「……………」

P「ん? どうした?」

つかさ「……」

つかさ「『イエスタデイをうたって』?? 『食う寝るふたり住むふたり』????」

P「!」

P「ああ、それか?」


つかさ「なに、コレ……。少年漫画には見えねーケド…………」

P「それ、この前、凛から借りたんだ」

つかさ「……凛から?」

P「学校で、そういうノスタルジックな恋愛漫画が流行ってるんだと」

つかさ「……(はあ!?)」

つかさ「……(流行るワケねーだろ!! こんなモノ!!)」

つかさ「……(今時のJKは、もっと非現実でクソ仰々しくてご都合な甘ったるい妄想にトキメキ憧れる、頭お花畑な連中なんだぞ!?)

P「今時の女子高生の好みが知れて、話題作りに良いかもしれんと、俺も快く借りてみたんだが…」

つかさ「……」

つかさ「(まさか………)」


つかさ「…………な、内容は?」

つかさ「(知ってるけど…)」

P「マイナーな漫画でな」

P「前者は、恋愛や仕事や夢とか、日常的な問題を手探りする人間ドラマみたいなもんだ。 登場人物の価値観の相違が面白いな。特に友情と愛情の両立とかは難しいとかなんとか…」

P「後者は、長い間付き合ってるカップルの同棲についての葛藤と息苦しさと、すれ違いだ。こっちも、男女でそれぞれ同じシーンでも、心理描写が区別されてるのが特徴的で…」

つかさ「へ、へええ……」


P「女子高生なんて、壁ドンとか腕ゴールテープとか、そんな謎の事ばかりにトキメくものだと思ってたけど…」

P「凛の嗜好がズレてるのか? いや、実際の恋愛なんてこんなもんか?」

つかさ「!!」

P「過去の女の事を引きずりつつも、新しく出会った少女にドコか心惹かれて…」

P「でも、やっぱり所詮は漫画かな…。そんなキレイな話が…」

つかさ「…おい」

P「あ?」

つかさ「これ、お前全部読んだの? いや、読んでねーだろ」

P「ああ。まだ両方2、3話程度しか読んでない」

つかさ「……そっか。そりゃ良かった」

P「良かった? 何で?」

つかさ「なあ、アタシに貸してくれない? コレ」

P「又貸しか? それはちょっと…」

つかさ「いいや、今日借りてくわ。アタシが事情言っておくから」

P「はあ?」

つかさ「(……)」

・・・・・
・・・


・・・
・・・・・
=======
【一週間後 事務室】


凛「ねえ、プロデューサー?」

P「何だ?」

凛「この間貸した漫画、どうだった?」

P「ん、ああ……あのちょっとドロドロしたヤツか?」

P「(…あれ?)」

P「(つかさの奴……、凛に又貸しの事伝えてないのか?)」

凛「ああいう恋愛って、ちょっと憧れない?」

P「(あまり読んでないから、何とも言えん……)」

P「まあ…、漫画だし多少の誇張はあれど、イイかも、な…?」

凛「そっか。それは良かった」

P「…?」

凛「あとさ、今日…、仕事終わった後なんだけど」

凛「時間ある?」


======
【アイスキャンディー専門店】


P「……」

P「(こ、この店は……)」

凛「前に、つかさが連れて行ってくれるって、約束してくれたんだけどね?」

凛「忘れてるかもしれないし、でも、私から言うのもアレだから…」

P「そんなに来たかったのか?」

凛「う、うん。まあね」

P「あのさ…」

P「奢ってやりたいのは山々だが…」

P「俺の財布…、今ピンチなんだ」

凛「知ってるよ。この前の予約した高い店でしょ?」

凛「いくら払ったの?」

P「一人分で15000円……」

凛「ほ、本当に…? 一食だよね?」

P「スマン。俺は今日から一週間、何も贅沢は出来ないんだ」


凛「んー…」

凛「じゃあさ」

凛「担当のアイドルに奢って貰うってのも、ちょっと嫌でしょ?」

P「!」

P「い、いや…! 奢って貰えるなら別にありがたk」

凛「アタシの分、食べる?」

P「……?」

凛「2人で1つのメニュー、つつこうよ」

凛「ここのアイス屋って、主食系の物も置いてあるみたいだし」

P「んー……それは…」

P「(余所様から見られると、少し恥ずかしいと言うか…、意地汚いと言うか……いや、でも…)」


P「俺は構わんが、凛は良いのか?」

凛「気にしないって。困った時はお互い様でしょ?」

P「り、凛…っ!」

凛「あと…」

凛「前にやってたでしょ? アレ。お弁当の残り」

P「ああ、お前がたまに学校で残したのを俺に寄越すヤツか?」

凛「うん。作る時、余裕あるしさ…。プロデューサーが良いなら…」

凛「1つ、余分に作ってあげようか? 余り物で構わないなら…」

P「!!」ガタッ

P「是非頼むッ! い、いや…、よろしくお願いします!!」バン

凛「お、大きな声出さないでよ! 恥ずかしい…」

凛「まあ…、分かったよ。じゃあ明日から置いておくから…」

凛「これからも一緒にヨロシクね。プロデューサー?」

P「俺は…、お前の担当で良かった…! 凛、俺も頑張るからなッ!」

凛「そーだね。色々と頑張ってこう」

凛「色々……ね」

凛「……」

凛「(私の目標だから…。頑張ろう…)」


以上です。長々と失礼しました。
即興で書いたから色々汚いし謎な部分が多いです。
HTML依頼出しときます。

ごちそうさまでした

過去の女の事を引きずりつつも、新しく出会った少女にドコか心惹かれて…ねえww


正妻戦争勃発か…

乙乙

投下乙でした
待望の続編来てたー!!
これでつかさも同じステージに立った事だし
続編では更なる恋の鞘当てに期待


みんな等身大の人間なのが好きだ

>過去の女の事を引きずりつつも、新しく出会った少女
ケンカ売りすぎでワロタ

今回も本当に面白かった
続編楽しみにします

つかさ、えぇオンナやん

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