高峯のあ「情熱の羅針盤」 (16)

・今頃ですが七夕SS
・短いです

ちょっと短冊の内容にビックリしたのでパチポチ書きました。
お付き合いいただければ幸いです。


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七夕。それは果てしなく高い天空へ願いを捧げる日。
しかし、願いを見失ったものにとっては残酷な習慣だと、俺は思う。

ちひろ「今年の七夕も派手にやりますよー!!みなさん、短冊書いたら私に渡してくださいね!」

モウタナバタカー、ナオハナンテカイタノ??
カレン!ミルンジャナイ!
リン、オサエテ
リョウカイ
ヤメロー!

ガヤガヤガヤガヤ

P「いやぁ~~~今年の七夕も大盛況ですね!」

ちひろ「お疲れ様ですPさん。今年はあんみつですよー!」

P「織姫ちひろさん可愛い!!ありがとうございます!うっまーい!」

ひろ「結構短冊集まってきましたし、そろそろ飾っちゃいましょうか」

P「そうですね!その前に…どれどれ担当アイドル様はどんな事書いてるのかな~」

―――――――――――――――――『願い…見つからなかったわ。いつか、見つけたい』高峯のあ

P「」

ちひろ「Pさん?固まっちゃってどうかしたんですか?」

P「ちひろさん、のあさんはどこにいるか分かりますか?」

ちひろ「のあさんならさっき屋上に向かってましたよ。七夕ですし、星を観に行かれたんではないでしょうか」

P「ありがとうございます!」

ちひろ「いってらっしゃ~い」


ちひろ「…さてさて、どうなるでしょう♪」







ドタドタドタ…バターン

P「のあさん…」

のあ「…騒がしいわね、貴方のせいで星の煌めきが霞んでしまったわ」

P「すいませんでした…!!」

のあ「貴方が謝る必要性がどこにあるというの?…気まぐれな夜風がそうさせてしまうのかしら」

P「短冊…見ました」

のあ「…そう」

P「のあさんが願い…目標が見つけられないのはプロデュースする俺の責任です」

P「だから…!」


のあ「…如何なる事象が起ころうと。私は私」

のあ「と言いたいところだけれど、天が紡ぐ悲恋の物語に…あてられてしまったみたいね」

のあ「吹けば消える一瞬の揺らめきよ。P、記憶しておくことはないわ」

P「…のあさん」

P「俺の力不足で…すいません」

のあ「だから貴方が謝る必要はないわ。…完璧な仕事をしなさい。私を導く存在は貴方だけ…」

そう言うと彼女はまだまだ喧騒の収まらない事務所へ戻って行った。俺は、その後ろ姿を見送る事しか出来なかった。
彼女の、願い…。ガムシャラに彼女のプロデュースをしていたつもりだったが、その結果はただ彼女を惑わせていただけだったのか…


翌日。七夕が終わりいつもの忙しない日常がまたやってくる。
巨大な無力感に打ちのめされたとしても、時のスピードは残酷なまでも待ってくれやしない。
事務所の扉はいつもよりも重かった。

P「今日も一日頑張りますか…」

P「おはようございまーす」

のあ「今日はいつもより少し遅いわね。良い夢が見れたのかしら?」

P「おわっ!!のあさん!いたんですか!?」

のあ「私はどこにでもいるし、どこにもいないのよ」

P「猫は猫でもシュレーディンガーの猫ですか…」

のあ「…………にゃん」


P「今日は夕方から夜まで仕事ですから。ゆっくりしてもらって大丈夫ですよ」

P「…俺、もっともっと頑張りますから」

のあ「ふふっ…期待しているわ。貴方の存在を…意志を見せなさい」

P「はい!」

P「よーし…やるぞー!!」

P「なんだこのデカい竹…昨日の七夕で使ったやつか?」

P「…このいい匂い…すげぇこれ弁当箱だ…ん?」ピラッ

――――――淀んでいる暇は無いわ

P「のあさん…」ジーン

P「やったるでええええええええええええ!!!」

昼飯に食った弁当はもちろん滅茶苦茶旨かった。あの公演以来料理をふるまってくれるのあさんマジdelicious




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


P「本日はありがとうございました!今後ともよろしくお願いします!」

「お疲れ様~」

P「丁度いい時間だな。のあさん迎えに行くか」

彼女が向かった現場に車を走らせている途中。ラジオから流れたのは懐かしく、それでいて迸る熱をぶつけてくるナンバー。
『情熱の羅針盤は君の胸にはありますか』
曲の問いに間髪入れず返す。あるに決まってんだろうがぁー!!!


P「のあさん、お疲れ様でした」

のあ「…!」

のあ「どうやら霧が晴れたみたいね」

P「のあさんの檄のお蔭ですよ」

のあ「何のこと?」

P「いつも感謝してます…今日は少し寄り道していきましょうか」

のあ「貴方の好きにするといいわ」

P「では貴女の時間を少しいただきます…」


車を少し走らせ、水面にいくつもの夜景が映りこむ港に到着した。
いくつもの光が海面でゆらゆらと揺れている。二人並んで星にも似た光を眺める。

P「ここ、星空に似てるなって思うんですよね」

のあ「…貴方はいくつもの光のゆらめきに星の瞬きを見たのね」

P「そうなんです。あと、俺達のいる世界にも似てるなって」

P「アイドルをプロデュースする事って暗闇の海を航海する事と似てると思うんです」

のあ「暗闇の海…」

P「状況は刻々と変化して、次に何が起こるか分からないし、今していることが何に繋がるかも分からない」

P「そんな世界で勝ち抜いていく為には、しっかりとアイドルと一緒に力を合わせて舵取りをしていかなくちゃならない」


のあ「でも、そんな世界だから貴方の輝きが眩しかった」

のあ「貴方に出会えていなかったら、出航すら不可能。私は星に手を伸ばすだけ…」

P「…………俺、まわりが見えていなかったんですかね」

P「奇跡的な総選挙のランクインに安堵してすぐ」

P「全力で久しぶりのイベントの仕事を持ってこれましたがまだまだ貴女を輝かせたかった」

P「貴女の魅力はまだまだこんなもんじゃないって」

P「けど、何よりも大切な貴女を、ちゃんと見つめる事が出来なくなっていた」

P「また、俺は空回っていたみたいです」

P「俺の星は陰っていたみたいですね」

やっぱりのあ最高!としか言えない


のあ「私を導く貴方の星が陰っていては、頂きを目指す事は出来ないわ…」

のあ「私が惚れた貴方の才能は六等星の輝きではなかったはずよ」

のあ「でも、もうそれは杞憂…そうでしょう?」

彼女と向き合い、彼女の瞳に全てを貫くような銀弾の意志を見た。
そしてその弾丸は、俺の羅針盤の針をグルグルと回す。そして止まったその針は確かに一つの方向を力強く指していた。

P「のあさん。俺はもう揺らぎません。貴女に、確かな願いを胸に灯してもらうために」

P「俺の願いは貴女に更なる高みの景色を見せる事です。」




P「これからも一緒に、旅をしましょう。のあさん」

のあ「…羅針盤から迷いが消えたようね」


P「貴女にはかないませんね…」

のあ「あの時私が見た希望の星は増々輝きを増した…」

不意に彼女が俺の胸に飛び込んでくる。
完全に虚を突かれたが、何とか受け止めた。

P「のののののののあさんッ!何をしてらっしゃるんで…??」

のあ「私が撃つのは貴方の迷い…」

のあ「貴方の羅針盤を確かめさせて」ニッ


P「…良い笑顔です」

のあ「パクリは良くないわよ?」

P「ッちちちちがわいっ!!」

そして彼女は揺らめく光を背にして笑う。眼に入る全ての光よりもずっとずっと強い輝きを放ちながら。

のあ「私は夢を夢のまま終わらせないわ」

のあ「共に往きましょう。二人でしか、届かない光のもとへ」




のあ「情熱の羅針盤は未来をいつも指している」

おしまいです!
元ネタの曲はASIAN KUNG-FU GENERATIONの「羅針盤」でした。
のあさんがいつか願いを見つけてくれますように…

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