幼「つまり…どういう事だってばよ?」
男「だから、冒険だよ、冒険」
幼「へー、アンタが冒険ねぇ…」
幼「仕方ないなぁ」ガサガサ
男「…何やってんの?」
幼「えー、ゴホン」
幼「よくぞ来た!冒険者の男よ!」
男「は?」
幼「この、その辺りに落ちていそうで、そうでもない」
幼「木の枝っぽい、伝説のひのきの棒と」
幼「…」ガサガサチャリン
幼「この500円を持って、旅立つがいい!」
幼「そして、見事魔王を倒して来るのだ!」
幼「行け!勇者よ!」
男「…冒険者から勇者になっちゃったよ」
幼「このひのきの棒と500円を元手に」
幼「一儲けして、伝説の武器とか手に入れてさ」
幼「魔王とか、大魔王とか、倒してきなよ」プッ
幼「平凡な」
幼「男子高校生のアンタがさ」ププッ
男「そういう冒険じゃねぇよ!」
幼「じゃあ、あれか!」
幼「麦わら帽子をトレードマークに!」
幼「仲間たちとの大冒険!」
幼「海賊の王者に俺はなる!」ドン!
幼「的な?」ププッ
男「そんな国民的に有名な漫画の事言われても」
男「俺、別に海賊とかになりたいわけじゃないし…」
男「幼の言うとおり、平凡な男子高校生だしな」
男「あと、泳げないし」
幼「それじゃ、アレか!ハリウッドか!」
男「ハリウッド?」
幼「インディなんとかみたいな?」
幼「ムチとか持って、遺跡を探索みたいな?」
男「遺跡ねぇ」
幼「洞窟でおっきな丸い石から逃げたりとか?」
男「あぁー、あれ実際あったら怖いだろうなー」
幼「古代の秘宝を巡って」
幼「1000年王国の兵隊と大立ち回りとか?」ププッ
男「世界規模のエンターテインメント的な」
男「渋いおっさん冒険者になりたい訳じゃねぇよ!」
幼「じゃあアレかな?インド?」
男「インド?」
幼「婚約者が急に悪漢に誘拐されて」
幼「追いかけてる途中で」
幼「脈絡もなく踊りだしたり」
幼「主人公の出生にまつわる驚愕の事実が明らかになった瞬間!」
幼「急に歌いだす、主人公!」
男「なぜ歌う?」
幼「そしてバックダンサーが登場して…」
幼「踊りだしちゃったり」
幼「悪漢相手に大立ち回りしながら…」
幼「最終的にはやっぱりみんなで踊りだしちゃったり?」ププッ
男「いや、そんなエスニックテイスト満載な」
男「マサラムービーの事、言われてもな」
男「俺、歌えないし、踊れないからね?」
幼「じゃあアレだ!香港だ!」
男「香港?」
幼「昔のジャッキーみたいに」
幼「悪漢に追い詰められて、時計台から落ちてみたり」
幼「ビニール傘で二階建てバスにぶら下がってみたり」
男「あの頃のジャッキーは輝いてたよなー」
男「まぁ、今でも輝いてるけど」
幼「赤い鼻のじいさんの特訓によって」
幼「親の仇の、のどぶえを指でちぎったり?」
幼「ショッピングセンターのポールに飛びついて…」
幼「5階くらいの高さから一気に降下!みたいな?」ププッ
男「俺は別に香港のアクションスターになりてぇ訳でもねぇよ?」
男「てか、映画から離れろよ!」
幼「じゃあ、アレか!赤タイツか!」
男「赤タイツ?」
幼「熱き冒険者!とか言って、指をパチンって鳴らして」
幼「他のメンバーに『アタック!』とか『グッジョブ!』とか言って」
男「あぁ、あの指をパチンってするの、流行ったなー」
幼「プレシャスを守ったり、奪われて大変な事になったりするの?」
男「そんな日曜の朝、いい感じでお子様を楽しませるような」
男「冒険者になりたいんじゃねぇよ?」
幼「じゃあ、山とか登っちゃう?」
幼「チョモランマとか、キラウエア火山とか」
幼「富士山とか、立山とか、白山とか」
幼「あと、天保山とか?」
男「別に山登りしたい訳じゃないよ」
男「てか、最後のだけ、ハードル低いな!」
幼「じゃあ、何なのよ。どこに冒険の旅に出るのよ?」
男「冒険はするけど、旅にはでねーよ」
幼「旅に出ずして、冒険とは如何に?」
幼「禅問答?」
男「違うよ」
幼「ご近所で冒険ってどんなのよ。全然意味わかんないよ」
男「…壁を乗り越えてみようかと思うんだ」
幼「壁?ベルリンの?」
男「ベルリンの壁はもうないだろ」
幼「壁ねぇ…どこの壁?」
幼「町内にそんなに高い壁って有ったっけ?」
男「…あるよ。すげー高い壁が」
幼「へぇ。私も見に行っても良い?」
男「ダメって言っても、ついてくるんだろ?」
幼「まあねー」
男「だよなー」
幼「で、いつ行くの?」
男「そうだな…」
男「こういうのは、思い立ったが吉日って事で」
男「今から壁乗り越えてみようかな?」
幼「え、この近くなの?本当に近所じゃん」
男「…」
幼「ん?どうしたの?」
幼「行くんでしょ?冒険に」
男「幼さん。昔からアナタの事が好きでした」
男「俺とお付き合いして下さい!」ペコッ
幼「…はぁぁぁぁ?」
男「…」
幼「…」
男「…」
幼「…」
男「返事は?」
幼「壁登る話しから、何で急に告白になっちゃったのよ?」
幼「意味がわかんないんだけど」
男「オレと幼は、昔からの付き合いで」
男「所謂、幼馴染って奴だ」
男「俺が幼に告白してしまう事で…」
男「今までの良い感じな関係が、全部壊れてしまうかもしれない」
男「それが怖くて、今まで何も言わなかったんだ」
男「自分と幼の間に、心の壁を作ってたんだ」
男「まったく、女々しい事だ」
男「でもな」
男「俺はその壁を越えたいんだよ」
男「自分で作っちゃった、高い高い壁だけど」
男「それをぶっ壊すくらいの勢いで」
男「乗り越えて…」
男「幼、お前と付き合いたい」
男「これが俺の冒険」
男「それとも挑戦…かな?」
男「…どうかな、幼」
男「俺の事を、異性として見てほしい」
男「そんで、良ければお付き合いして欲しい」ペコッ
幼「…」
幼「いやー…」
幼「身近にねぇ…」
幼「そんな壁があったとはねー」
幼「正直、驚いたよ」
幼「私はさ…」
幼「私はとっくに、男の事、異性として見てるよ」
幼「ずっと、真剣にお付き合いしたいって思ってたよ」
幼「だから嬉しいよ、男がそんな事言ってくれて」
幼「…私で良ければ、お付き合いして下さい」ペコッ
男「…ありがと、幼」
幼「…こちらこそ、ありがとう、男」
男「いやあ、冒険は大成功だなー」
幼「そうだねー、大冒険だったねー」
幼「もう一端の冒険者って名乗ってもいいんじゃない?」
男「ははっ、冒険者なー」
幼「そんな冒険者のお主に、これをやろう」
男「え?伝説のひのきの棒と500円?」
幼「…」
チュッ
幼「勇気を持って、壁を乗り超えた男に…」
幼「…私のファーストキスを、ね」
おわり
短いですけど、これで終わりです
誰か読んでくれていたら嬉しいです
次スレは
男「…幼馴染分が足りない…」幼馴染「は?」
って感じでスレ立てたいと思います
それではおやすみなさい。
なんというか…ワンパターンだよな
なぁに、炭水化物に飽きが来ないのと似たようなもんだ
面白かったよ
乙
安心して読める幼馴染スレは貴重だぞ
何故か鬱展開多いしなあ
あと乙
今回も面白かった!
この調子でどんどん書いてくれると嬉しいです(^^)
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