タイトル通りな感じの、コープスパーティーSSですよ。
・BLOOD DRIVE(BD)のネタバレ盛りだくさんなので、BD未プレイの方はバック推奨です~。
・全10CHAPTERかなぁ。
・さやかは女神。
表紙的なイラスト置いておくです(エロくはないですが、一応ヌード注意)。
http://i.imgur.com/eQ2yRvX.jpg
それでは、のんびりとレッツゴーなのです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1435232974
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 01
『邪に染まりし魂の観るものは』
消えていく。
あいつの黒い力が。
圧倒的だったあの力が。
代わりに、白くなっていく。
黒かったあいつが。
……憎悪。
今の自分には憎悪しかない。
これまでは、あいつも苦しんでいたからまだよかった。
苦しみながらも罪を重ね続け、自分自身の魂をより深い地獄へと堕とし続けていたから愉快だった。
だから耐えられた。許容出来た。
気が向いた時に、適当な生者を適当に不幸にしてやる程度はお遊びでやってはいたが、まあ笑って見ていられた。
けれど、あいつはこれから幸せになるのか?
これまでの罪をすべて無かった事にして、成仏するのか?
私の『生』を奪うだけでは飽き足らず、思う存分暴れまわっていたお前が?
まだなんとかなったかもしれないのに、私の『生』を奪いやがって。
唯一残っていた『歯』は、取り出しやがったよなぁ?
生きている時も、死後も、お母さんに愛され続けやがって。
私の欲しかったものをあれもこれも手にして、好き勝手やっていたクセに! なんでいつもいつもお前だけが!
私だって生まれたかったのに! 生まれて色んな事をしたかったのに!!!
……結局は、お前だけが運命に祝福されているのか?
お前、だけが???
笑わせるな。
いい加減にしろ。そうはさせるものか。
お前が、支配者だったあそこから居なくなるのならば、今度は私がその座についてやろう。
なんとかと言うガキが次の支配者になりかけているようだが、なぁに、そいつは奴隷にしてやる。
もちろん、他の霊どももだ。
いや、それだけじゃあヌルい。もっともっと亡者を増やしてやろう。
そして、準備が整った暁にはお前を喰らってやる。
かつてお前が支配していた場所で、
お前が支配していた連中と合わせ、さらに増やした亡者どもと一緒に。この私が。
永遠に喰らい続けてやる。
ヒヒヒッ。
その為には、まずお前を成仏させないようにする必要がある……
のだけど、どういう訳かお前はまだ、自分の意思でこの世に留まっているらしいなぁ。
愚かな奴だ。
まあ、おそらく一番厄介だったであろう問題が勝手に解決したのだから、私としては願ったり叶ったりなんだけど。
クククッ、ともあれ、お前がそうなったからこそ、私は『生まれる』事が可能になった。
あの場所を利用出来るからな。
そこは『カンシャ』してやろう。クククククッ!
とはいえ、あそこはあまりにも場所の力が強すぎて、もしかしたら私は私ではなくなってしまうかもしれないが……
だからといって、引けるものか。
少なくとも、この『憎悪』だけは絶対に消させはしない。
これさえ残っていれば、私の望みはきっとすべてが叶うのだから。
……良いぞ。どういう訳か、力が湧いてくる。
何者かがこの私を後押ししているのか?
だとすれば、それはとうとうこちらに振り向いた運命か、世に溢れる邪悪なる悪霊どもか……
もしくは、強大にして巨大な何かの意思・存在か?
ククククッ、なんにせよ都合が良い。
本当に私の味方になっている存在が在るのなら、最後にそいつもこの私が喰らってやろう。
──しかし、この状態ではまだまだ大きな事は出来ない。
思う存分に力を振るうには、やはりまずは『生まれ』なければ。
その為には、なにか依り代になるものを……
……どうやら、利用出来そうな、愚かにして脆弱な生者が何人も居るようだ。
これならば、私が入っても壊れない肉体を持った者を探させる事すら苦労はしないだろう。
新たに奴隷にする奴を、何人も連れて来させるのも楽な話。
そうだ。そいつらは殺して奴隷にする前に、私の力をさらに増幅させるようにも動かしてみるか。
良いぞ。すべては思うように回り始めている。
私も『生まれ』、沢山の事をしてやる。
愛されてやる。
……フフフ、待ってろ。
お前が自分だけ生まれて、生きて、自分だけ幸せな成仏をするなんて絶対に許さない。
すぐに無限の呪いを味わわせてやろう。
お前がこれまで行ってきたものなど、幼稚なお遊びに感じるほどの呪いを!
ねえ、可愛い可愛いサ チ コ ち ゃ ん!!!
ヒャーーーーーーーーーーーーーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!
EX2 CHAPTER 01
『邪に染まりし魂の観るものは』 End
今回は以上です。
更新は週一ペース予定ですが、一回で二つのCHAPTERを投下する時もあるかも。
ではまた。
乙
本物のゆきちゃん達を登場させてあげてほしかった
レスありがとうございます~。
BDでも会いたかったですよね。
雪ちゃんとか結構すきです。
それでは再開します。
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 02
『ツミ』
あちこちで色々なものが私を責め立ててくる……
梓紗「わっ……わたしは、あく、ま、なんかじゃ、ないもん……
わ、わたし」
うわ言のように繰り返しながら天神小を徘徊する私の前に、一人の男の子が現れた。
梓紗「うわぁ……あなたは、だぁれ?
あは、あはは」
刻命「僕は刻命裕也。白檀高等学校の二年だ。
……命ある者は、できるだけ一まとまりになって行動したほうがいい……」
梓紗「きざ……み、くん……?」
刻命「ああ。
──そういう君は? 随分と憔悴しているようだが」
梓紗「わたし、は……たかい、あずさ……」
刻命「……高井梓紗?
もしかして君は、『古林蘭』という子の嫁──かい?」
梓紗「!!!」
その名前を聞いた時、俯き気味だった私の顔は弾けるように上を向いていた。
刻命「……やっぱりそうなんだね?」
梓紗「らん……
あなたは蘭を知っているの!?」
ガシッ!
刻命「ああ。
といっても、しばらく前に一度会っただけだが」
梓紗「あの子はっ、あの子はどこに居たの!?」
刻命「少し落ち着いてくれ。腕が痛い」
梓紗「あっ、ご、ごめんなさい……」
いつの間に刻命君の両腕を掴んでいたのだろう? 彼に言われ、私は手を離した。
刻命「場所は……そうだな、案内しようか。
その方が早い」
梓紗「え、ええ! お願いっ!」
私と彼は歩き出した。
─────────────────────
蘭、蘭、蘭……ごめんね、ごめんなさい……
あの時の──
敏久が去った後、私の言葉を受けて振り向いた、あの時の蘭の悲しい表情が……目が忘れられない。
気持ち悪い子のはずだった。大嫌いなはずだった。ただ単に、私を慕っているから利用していただけのはずだった。
でも。
本当にその程度の相手だったら、なにを言われようと、
どんな態度を取られようとここまで胸が傷付くはずがない。
今さら、私はその事に気付いた。
ううん、蘭だけじゃない。敏久や、死んでしまった賢太郎もそうだ。
私は、自分のつまらない心のせいで、自分の大切なものを沢山失ってしまったのだ。
少し前までは当たり前にあった、宝物を。
梓紗「蘭はどんな様子だった? 大丈夫だった? 怖がってはいなかった?」
会いたい、会いたいよ、蘭……
刻命「……酷い怪我をしていたね。
何者かに殴られたのか、鼻が折れていた」
梓紗「!!!」
それは……私がやったのだ。
梓紗「……無事……だった……?」
刻命「ああ。僕と話した後、彼女は『ここで休む』と言ってその場で別れたんだ。
とはいえ、さすがにまだ同じ場所に居る可能性は低いかもしれないね」
梓紗「それでも良いの!
もう移動しているとしても、そこから蘭の動いた痕跡が見付かるかもしれない……!」
なにか目印を残して、私が追いかけたりしやすいように……
……いや、無いか。
蘭『……っ。
トッシー! 待って! 私が間違ってた! お願いっ、許してぇ!!』
私を見捨て、もう『嫁』とすらどころか、名前さえ呼んでくれずに走り去って行った蘭。
醜い私は、完全に嫌われてしまったのだ。
でも、それでも……万が一少しでも手がかりがあるのならば、それにすがりたかった。
梓紗「……刻命君。
蘭は、私の事は──私の事はなにか言ってなかった……?」
刻命「……いや。『高井梓紗』という名前以外はなにも」
梓紗「そう……」
やっぱりもう、私の顔も見たくないのかな……
刻命「──確か、この先で別れたんだったかな」
刻命君と廊下の角を曲がると、そこには……
梓紗「!!!!!」
蘭が背を向けた状態で横になっていた。
梓紗「蘭っ! 蘭!!!」
私は蘭の名前を叫びながら、彼女に駆け寄る。
梓紗「蘭! ごめんね、ごめんっ!!
痛かったよね? 怖かったよね? 酷い事してごめんねっ!!!」
私は彼女の前まで行くと、膝をついて何度も何度も謝った。
梓紗「……蘭?」
しかし、蘭はそれにまったく反応しない。
そうか。
刻命君によると、蘭は『休む』と言っていたとの事。
梓紗「……もう、蘭ったら。いくら疲れていても、こんなところで寝たらダメじゃないの」
私は苦笑し、横たわる蘭の肩に手をやった。
ゴロン。
梓紗「──っ」
思いのほか軽く。
背を向けていた蘭の身体が、こちらへと向い──
いや、こちら向きに倒れた。
梓紗「ら……ん?」
蘭の身体にはまったく生気が無く、静かに目を瞑る顔の色は白い。
……生きている人間のものとは思えないほどに。
梓紗「な、なによ。冗談ばっかり。
あ、わかった。私に仕返ししてるつもりなんでしょう?
ふふっ、驚いちゃった。蘭って演技上手なのね? まんまと騙されたわ」
しかし、いくら語りかけようが蘭は応えない。
梓紗「ね、ねえもうやめて? わかったから。ごめん、私が全部悪かったの。だから、ねえ……
……………………起きてよ……」
蘭が……──でいる。
あの蘭が。いつもうるさいくらいに元気なこの子が。
蘭が……─んでいる。
いつも無邪気に私に抱きついてくるこの子が、私の言葉にまったく反応しない。
蘭が、死……
梓紗「嘘よッ!!!」
私は叫ぶと、蘭の肩に置いた手を彼女の頬に移動させ──
梓紗「っ!?」
──彼女の頬は、凍りついたように冷たかった。
梓紗「あ、あ、あ、あ……」
信じられない現実を認めまいと、声が、身体が、震える。
梓紗「嘘! 嘘!! ウソッ!!!」
ガシッ!
私は蘭の肩を掴み、上半身を持ち上げてゆするが、彼女のそれは糸の切れた人形のようにガクンガクンと揺れるだけ。
梓紗「あぁっ!
あァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ありえない。こんなの嘘よ。嘘よ。嘘よ!
……嘘?
そうよ。嘘なんだわ。
あ、そっか。
梓紗「あははっ、わかった。刻命君とグルになってるんでしょ?」
真実発見。
梓紗「もう、二人とも悪趣味にもほどがあるわよ?
ふふふふふふっ」
私は蘭に笑いかけると、後ろに居るはずの刻命君の方を振り向こうとして身体を捻りかける。
しかし、その前に。
ゾクッ!
唐突に襲ってきた背筋の寒気と、
『嫁ぇ!!!!!』
幻聴だろう。
聞こえたような気がした蘭の叫び声に、私は蘭の身体を抱いたまま床に身を投げて転がった。
梓紗「!?」
慌てて顔を上げた私が向けた視線の先には……
刻命「避けたか。今のを」
ナイフを片手に、不気味にほほえむ刻命君が居た。
先程、避けるよりも先に彼の方へと振り向いてたら、私はあのナイフで斬られていただろう。
梓紗「刻……命君?」
刻命「そこの蘭ちゃんに関して、言い忘れていた事があるんだ」
梓紗「……?」
刻命「実は僕は、蘭ちゃんが息を引き取るまで彼女の側に居たんだよ」
梓紗「なっ!?」
刻命「その時、彼女の遺言を聞いたのさ。
『私をこんな目に合わせた、高井梓紗を殺してくれ』ってね」
梓紗「えっ──?」
えっ?
蘭が、私を?
殺……?
刻命「だから僕は君を探していた。
そして、君と出会ってからいつ殺ろうかずっと隙を伺っていたんだ」
梓紗「そ……んな……」
思わず視線を下げるけれど、私の腕の中には変わらず冷たい蘭が居るだけ。
刻命「余程恨んでいたんだろうね。
まるで般若のような恐ろしい形相と声で僕に懇願していたよ。
何度も、何度も。
何 度 も」
……ドンッ。
力が抜けた私の腕から蘭の身体が離れ、床へと落ちた。
刻命「蘭ちゃんの死因は、その暴行の傷だ。
つまり、その子は君に殺されたという事だね」
梓紗「!!!
ち、違……!」
違う、違うっ!──私は叫んだ。
いや、叫びたかった。
でも、舌が上手く回らない。
刻命「……なにを言ってるんだァ? さっき言っただろう?
『私 を こ ん な 目 に 合 わ せ た 、 高 井 梓 紗 を 殺 し て く れ』と頼まれたってなァ!」
突然、刻命君の様子が変わった。
口調も表情も、ニヤニヤと狂気に満ちたものへと。
梓紗「き……ざみ、君?」
刻命「だったら蘭ちゃんがお前を憎んでいたのも納得だよなぁオイ!
俺に、お前を殺せと言ったのも頷けるだろう? 誰よりもお前自身がな!!!」
梓紗「っ!」
蘭は、私から受けた暴力のせいで死んだ。
蘭は、私を憎みながら死んだ。
蘭は、私を殺してくれと刻命君に頼んで死んだ。
梓紗「あ、あ、あ……!」
私は頭を抱えてうずくまる。
ガチガチガチ。
歯が噛み合わない。身体の震えが止まらない。
寒い、寒い、寒い、寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い。
刻命「なんとか言えよ人殺し女ァ!!!!!」
梓紗「ヒイィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!」
ダッ!
私は立ち上がると、刻命君と蘭を残して走りだした。
刻命「フゥアハハハハハ! 待て! 待てオイコラァハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
後ろから刻命君が追いかけてくる気配を感じる。
梓紗「嫌、いやっ、イヤァァァ!!!」
……股間が生暖かい。
気が付くと、私は失禁していた。
梓紗「あ、あ、あ、あ……!」
震えは止まらない。
失禁が続いているせいもあるのか、足もガクガクと震えていて、もつれる。
梓紗「うぁぁぁぁぁぁっ! あーーーーーーッ!!
あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
それでも私は足を止めなかった。止められなかった。
足を止めてしまうと、現実に追いつかれてしまうから。
私は『現実』から逃げているのだから。
逃げなきゃ! 逃げなきゃ!
……あれ? これって夢よね?
そうよ、夢よ。悪夢。酷い悪夢。『ゲンジツ』ってなによ。
敏久は居なクて、賢太郎も蘭も死んだとかw ある意味笑っちゃう悪夢よね。
『真実』に気付いたら、もう逃げる必要なんてない。
薄暗い階段の踊り場で、私は大きく息を吐いてしゃがみ込んだ。
下半身の濡れた衣服が気持ち悪い……と思うと同時に、強烈な恥ずかしさが押し寄せてきた。
冷静さを失っていたさっきまでは感じていなかった、ほんのりとしたニオイもそれを助長する。
梓紗「や、やだっ! この歳でおもらしなんて……!」
この姿を蘭に目撃された想像をし、頬が熱くなる。
こんな格好、誰にも見せられない。
梓紗(は、早くどこかで着替えないと……)
立ち上がると、おしっこで濡れたローファーがグチョリと音を立てた。
それはとても不快だけれど、構っていられない。
梓紗(その辺の教室? ううん、誰か居たらどうするのっ!
でも普段使ってない教室なら……
ほ、保健室の方が良いのかしら?? トイレ??? ってそもそも着替えが……)
焦って一歩踏み出すけれど、
ガクンッ!
梓紗「あっ!」
ボロボロの床の、穴の空いている部分に足を取られて躓いた。
梓紗「…………」
ボロボロの……床の……
そういえば、刻命君の追いかけてくる気配が消えているわね?
よくわからナいけれど振り切ったのかしらと思ったら愉快になってきた。
悪夢はもうすぐ終わりナんだわ。
梓紗「あ、あは、あはは……あは……」
もうすぐ。
笑顔の私。
暗く朽ちた校舎。
死体。
死臭。
誰も居ない。
……一人ぼっちの私。
梓紗「……助けて……誰か助けて……
蘭、賢太郎、敏久、ナイト君、あゆみちゃん……」
……早く覚めテよ。
梓紗「……………………助けて……」
誰でも良いから、私をこの悪夢から……!
でも大丈夫、夢は所詮ユメ。絶対にいつか覚めるものね!
目が覚めたら私はいつものように身支度を整えて、いつものように学校に行くの。
そこは聖来栖女学院デ、賢太郎も敏久も居て……
あれ? 聖来栖女学院って女子校だったワよね?
ダメよ二人とも、男子なのに。
あら、いつの間にかナイト君モ。
もうっ、男のコったら困ったものね。
家に帰っタら蘭が居るわ。
でも最近どコかにお泊まりにでも行ってるのか、帰っテ来ないのよねぇ。
いつもは賑やかすぎてウルさいくらいだけれど、居なくなったラなったでさみしいものね。
梓紗「ふふっ、まったく……しょうがナいわねあのコは」
ひさしブりに帰っテきたら、たまにハちゃんと心を込めて言ってあげることにしマしょうか。
──蘭。おかえりなさい──
って。
ウフふっ、なんだかあなたに会うのが待チどおしイわ。
ね、蘭。
蘭……
EX2 CHAPTER 02
『ツミ』 End
梓紗は憐れな子ですね。
決して可哀想ではありませんが……って、憐れという言葉に可哀想って意味もありましたっけ。
なので、これはニュアンス的な意味としてという事で。
ともあれ、そういった意味では梓紗は刻命や愛狩と似ているようにも感じます。
そういえば、Mr.アァイの演技は、死ぬ間際の蘭ちゃんと出会った時のものが一番好きかも。
なんというかカッコ良すぎ。
そもそも、コープス自体が声優の演技が物凄い作品でもありますよね。
どの世界でもそうですが、プロとはやはり凄いものです。
それではまた。
乙
梓紗に対して同情なんて決してしない
……決してしないが彼女を含めたあの学校のメンバーのことを考えるとなんとも言えない気持ちになる
2Uで元気な姿を長く見ていたせいかもしれない
レスありがとうございます~。
梓紗というキャラ自体は結構すきだったり。
ああいう人は、ああいう思考パターン・行動になるんだろうなという確かな説得力があるんですよね。
そういった意味で、まぎれもなく梓紗もコープスが誇る名キャラの一人かなと。
もちろん、絶対に共感は出来ないキャラではあるのですが(笑)。
それにしても『死線流し』は怖い。
いえ、怖いというよりも恐ろしい。そして名エピソード。
それでは再開します~。
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 03
『初恋』
出会った時から、あなたが好きでした。
その瞳、顔付き、声、優しい心、暖かな魂……
あなたという存在のすべてに、私は一目見た時から心奪われたの。
こんな事、初めてだったわ。
─────────────────────
昔から、『恋愛』というものに憧れていた。
でも、憧れはずっと憧れのままだった。
カッコ良いなと思う人は居たけれど、いつも最後には『これは恋じゃない』って思えてしまい、
結局は毎回それで終わってしまって。
……ありがたい話だけれど、告白された事は何度もある。
でも、やっぱり『恋』は出来なかった。
そんな気持ちになれないのにお付き合いするのは失礼だから、全部断ってきて……
気が付けば、寿命が近付いてきていた。
日々を忙しく過ごすうち、
『ああ。私はきっと、一生恋は出来ないんだなぁ』
と、いつの間にか諦めるようになっていたわ。
そんな中、現れたのがあなた。
暖かくて、まるで赤ちゃんのように純粋で、とても優しく……
でも、不屈の強さも持ち合わせている、大きな大きな魂を持った人。
一目惚れって、本当にあるのね。
焦がれ、求め、もう無理だと思っていた恋の初めてが一目惚れだなんて、とてもロマンティック。
最高の奇跡。
私がこんな気持ちを抱ける、あなたという人に出会えた事が、もうすでに。
ありがとう。
ありがとう、私に『恋』を教えてくれて。
たぶん私は、あなたのおかげでやっと『女の子』になれたのだと思うわ。
『恋』を知って。
──本当に、夢のような半年間だった。
……やだな。
やっと知れたのに。やっと、なれたのに。
どうやっても私のこの想いは実らないのかもしれないけれど、
もっと命が続いたら、これからも『女の子』として生きていけるのに……
──……死にたく……ないな……──
……でも、でもね。
─────────────────────
玖遠「──そう思える……
なんて、幸せなんだろ……」
私は、そんな風に思うの。
きっと、私の人生は幸せだったわよね?
カッ!!!!!
最後に私が見、私の身体を貫いたのは、激しい爆発音と真っ白な発光。
最後まで私の中に在ったのは、あいちゃんや、生徒たち。会社の皆に、これまでに出会った大切な人々──
そして、持田哲志君。
私の愛しい人。
EX2 CHAPTER 03
『初恋』 End
今回は以上です。
玖遠先生は何者だったんでしょうね?
2のあやめちゃんと同一人物か、2の世界での玖遠先生があやめちゃんなのか、
彼女の前世か、はたまたあやめちゃんと同じやり方で造られた? 存在とか。
2でも玖遠先生は関わってきそうな空気ビンビンなので、そちらでも楽しみにしているのですよ~。
それではまた。
乙
玖遠先生は正直よく分からない人という感じだなぁ
寿命時計とかもはや理解不能の領域だった
ただあの人の両親はクズだかわいそうな人だったなというのだけは分かる
あれが親のやることかよ……
玖遠先生はエロボディの持ち主なので是非とも再登場してほしい
(体は老人という設定から目を背けながら)
レスありがとうございます~。
再登場して欲しいですよね。
語らない・語りすぎない美学というのもありますが、玖遠先生は語らなさすぎな感じだったので今後に期待です。
再開します。
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 04
『ありがとう』
御簾徒(……?)
暗闇の中、俺は意識を取り戻した。
御簾徒(──!!!)
そうだ、俺はあのガキに……
──冗談じゃねえ!──
意識が爆発するが、まったく動けない。声も出ない。
いや、そもそも今の俺には、動かせる『体』というものがあるのかすらわからなかった。
感覚そのものが、無い。
御簾徒(……なにも見えねえ……)
聞いた事がある。
生前に罪を犯した上にまったく償いの行為もせず、改心もせずに魂が穢れたまま死んだヤツは、
その穢れの分だけ死後に自由が無くなると。
御簾徒(これがそうだってのか……?)
その話が本当なら、納得はいく。
俺は、自分が『人生』ってのをどんな歩み方をしてきたのか、理解している。
間違った事をしてきたつもりはないが、死後は地獄に落ちるのだろうと思っていたからだ。
それとも、ただ単に涅槃天神小の魔力が俺を縛り付けているだけなのだろうか?
御簾徒(うぐっ!)
徐々に、俺は苦しみを感じ始めていた。
いや、痛みなども含めた肉体の感覚が無いから、魂そのものが悲鳴を上げ始めたとでもいうのだろうか……?
御簾徒(ぐあっ、ああああああ!!!)
……違う。生きていた頃とは、痛みのレベルが。
痛みを感じるレベルが!
御簾徒(ああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!)
あまりの苦痛に、なにも考えられなくなる。
ちくしょう! ちくしょうっ!
なんでこんな事になっちまったんだ!
死後に救われないのは覚悟していた。こうなったのは予想通りでもある。
だが……
結 局 、 俺 は な に も 果 た せ な か っ た じ ゃ ね え か !
──嫌だ、まだ死にたくねえ!──
──まだ終わりたくねえ!──
これで終わるなら、救いが欲しかった。
地獄に落ちるのなら、まだやり残した事がある。
御簾徒(誰かッ、誰か助けてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェェェェェェェェェェェェェェェ !!!!!)
絶え間ない絶望と激痛の中、俺は心の底で絶叫した。
──誰か……──
御簾徒(ひのえ……すまねえ……)
なにも成せずに死んじまって。
ゾゾゾゾ……
──『なにか』が、俺を包み込んでくる感覚が生まれた。
それはとても不快で、苦しみをさらに増長させてくる。
御簾徒(うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ……!)
続く。
続いていく。
この絶望は、苦しみは。
無限に。
無限に、続く。
……………………
………………
…………
……ふと。
御簾徒(……?)
苦しみが消えた。
御簾徒『な、なんだ?』
ひのえ『御簾徒……』
御簾徒『──!?』
戸惑う俺の前に現れたのは……ひのえだった。
俺が生涯で、両親以外に初めて心を開き、唯一愛した女。
その、魂。
御簾徒『お、お前……?』
──ここで俺はようやく気付いた。自分が自由の身になっていた事に。
体を認識出来るし、動ける。周りも見える。喋れる。
ただもちろん、『体』といっても物理的なものではないが。
それに、周囲は崩壊を始めて激しく蠢き、揺れている。
御簾徒(……俺が死んだ時よりも、さらに状況が進んでやがるのか)
今が具体的にどんな状況なのかはわからないが、
こんな状態になっては、涅槃天神小の崩壊はもう誰にも止められないだろう。
……違うな。
もしかしたら、誰かが『なにか』を止めようとしているからこそ、こんなになってんのか……?
御簾徒『いや、そんな事よりなんでお前がこんな所に居るんだ!?
ここがどれだけヤバいか……ヤバくなってるかわかってんだろ!?』
ひのえ『あなたを助けに来たの』
御簾徒『な……に……?』
ひのえは言った。
涅槃天神小がこんな風になり始めた時、ここと、コイツが居た霊界の位置が限りなくニアミスしたらしい。
その隙をついて、ひのえはやって来た……やって来れたのだ。
ひのえ『このままだと、あなたが救われる事は永遠になくなってしまっていた。
地獄よりも、さらに深く冷たい地獄を永遠に漂う事に……』
ひのえが、その顔を悲しそうに歪める。
ひのえ『そうなったら、もう二度とそこからは脱出出来ないの。
その場所を支配する存在を成仏させれば解放されるとか、その程度の微かな希望の糸口すら無く……
これは、死んだその場所に固定されたり、彷徨ったりする地縛霊なんてレベルではないわ』
そんな状態の上、さっきまでのあの苦しみもセットだって事だ。
御簾徒『でも……どうすんだよ。
なんの道具もねえし、二人でここから脱出なんて……』
ひのえ『私があなたを助けるわ』
御簾徒『そんな事出来んのかよ!?』
だが考えてみれば、偶然にタイミングが合ったとはいえ、こんな所に自分の力一つで入ってきたひのえだ。
だとすれば、脱出も……
御簾徒『……待て。あなた『を』って……
お前は?』
ひのえ『二人で脱出は無理。
でも、最後の力をふりしぼれば、あなた一人を救う事なら出来る』
御簾徒『バカなっ!』
そんなの俺は望んでねえ!
ひのえ『……もう話をしている暇は無いわ。
これ以上時間が経つと、私の霊力ではどうにもならなくなる』
パアァァ……
ひのえの身体──いや、霊体が青く光った。
御簾徒『ふ……ざけんなよ。なんでそんな顔で笑えるんだよ……』
生きている時はゴミにも劣るクソ共にあんな目に合わされ、あんな死に方をし、今度は俺を救う代わりに……
御簾徒『そんなお前が、なんでそんな風に笑えるんだよぉ……!』
ひのえ『不幸なだけじゃなかったから』
御簾徒『!!!』
ひのえ『あゆみちゃんたち素敵な家族が居て、友達も居て……
誰よりも大好きなあなたが居てくれたから』
その笑顔はただただ清廉で、美しくて……
御簾徒『ひ……のえ……』
──そうか。そうだよな。そうだったよな……──
ひのえ『御簾徒、ありがとう。
私はあなたが居てくれて幸せでした』
ひのえの青い光がこちらへとゆっくり伸び、俺の霊体を包み込む。
御簾徒『冗談じゃねえっ!』
バシュウッ!
しかし、俺はその光を拒絶した。
ガシッ!
俺はひのえの両肩を掴む。
ひのえ『み、御簾徒!?』
御簾徒『お前を無限地獄に落として俺だけが救われるなんてありえねえっ!
そんなのっ、そんなの……嫌だッ!!!』
ひのえ『……ダメよっ!』
青い光が、ひのえに戻っていく。
俺個人には、誰かをここから脱出させられるほどの力はない。霊体である今もだし、生前もだ。
それでも俺はパンピーでもザコでもねえ。
このぐらいなら、可能だ。
御簾徒『……結局俺は、お前になにかしてやるどころか……
こんな最後の最後にまで、心配や迷惑をかけちまったな』
──俺もお前と同じ気持ちだ──
御簾徒『でも、一時(いっとき)だけでも会えてよかった』
──クソッタレな人生だったが、救いもちゃんとあったんだよな──
御簾徒『せめて、お前だけは天国で幸せに暮らしてくれ』
──愚かな俺は、そいつに気付くのがあまりにも遅すぎたが……──
ひのえ『御簾徒っ!』
御簾徒『俺もだよ。
俺も、お前が居てくれて幸せだった』
ずっと、ずっと。
御簾徒『ずっと愛している。今までも、これからも』
青い光がひのえへと完全に返り、その霊体の色が薄くなっていく。
御簾徒『……─────』
俺はひのえにキスをし、最後に一言だけをそっと告げた。
ひのえ『御……!』
シュウンッ!!!
そして、ひのえは還って行った。
その魂にふさわしい、天国へと。
ズズズズズ……
……涅槃が俺に触れた。
間一髪だったな。
俺は、左手首のバングルに手をやった。
御簾徒『……ひのえ』
──ありがとう──
EX2 CHAPTER 04
『ありがとう』 End
御簾徒は、根が純粋だったからこそあんな歪み方をしたように感じます。
個人的な事情以外にも、彼なりに世の中を憂い・理不尽を憎んで、
愛する人を幸せにしようとした結果、彼の狂気は完成してしまったのかなぁと。
それに、御簾徒って真理をついてる部分も多々あるんですよね~。めずらしく本音を吐き出したあの場面は特に。
御簾徒のやろうとした事に共感はしませんが、彼のそういった面は好きです。
(あっ、以上はあくまですべて私の主観です。いくらでも異論は認めるってやつですね)
ただ、彼の末路が、惨めに死んでいくというのは仕方がない事だとは思います。
でも、ひのえさんと別れた後も、ほんの少しくらいは救いがあってもよかった人なのではないかとも思います。
それと合わせて、一回だけでも良いから彼の心からの笑顔が見たかった。
なので書きました。
それではまた。
乙
御簾徒は新キャラの中では一番行動やメタ的な立ち位置に納得がいったな
キャラとしてリアリティがあったというか
でも傘でマンガみたいな鎌と渡り合うのはやり過ぎだと思うんだww
いやこの場合鎌がやりすぎなのか?どこに仕舞ってたんだ的な意味で
レスありがとうございます~。
御簾徒はなかなか良い敵役でしたね。その役目をまっとうしていた感じがします。
ただ、切ない死を迎える事自体は筋が通っていると思うのですが、
個人的にはさちかクイーンにやられる方がよかったのではとも思ったり。
こうすれば、ラスボスな彼女たちの活躍も強化出来ますし。
あ、御簾徒きゅんを操作しててもアッサリ死んじゃうのはどうしてなんだぜ?;
大鎌は……どういう理屈で収納してるんでしょうね???
さやかわいすぎ。
おっと失礼、うっかり念写をしてしまいました。
今回は、小説版BSのその後のお話です。
小説版BSをご存知なくても、『なんか事件があったんだなぁ』という知識だけあれば問題無く読めるです。
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 05
『プレゼント』
さやか「さっき食べたパフェ、美味しかったぁ♪」
亜衣子「ええ、そうね」
さやか「チョコレート盛りだくさんで、おっきな苺がまたニクいっ!
今度、七星ちゃんとも来よっと☆」
亜衣子「あらあら、うふふっ」
さやか「でも、亜衣子さんに奢って貰うのってなんだか変な感じ」
亜衣子「そう?」
さやか「亜衣子さんって、人にそういう事はしなさそうなタイプですから」
亜衣子「確かにそうかもしれないわね。
……まあ、せめてものお詫びよ。
今回の事は本当に申し訳なかったと思っているから」
さやか(そう。
今日は、とある事件で私を利用し、危険な目に合わせた事に対する亜衣子さんの『お詫びデェト』なのだ)
さやか(まさかこの人の方からそういうお誘いがあったのには驚いたけど、
そういう趣旨なのに、向こうから日時を指定してきたところはとっても亜衣子さん)
さやか(どうしてもスケジュールが合わず、
七星ちゃんを誘えなかったのはとってもとっても残念だったなぁ……
っていうか、七星ちゃんだって危険な目に合わされた一人だし。……これは、私が弱いせいだってのが大きいんだけどね……)
さやか(しかぁしっ!)
さやか(今日は二人とも私服で来たんだけど、私服の亜衣子さんもやっぱり超最高っ!
これぞまさしく『めろはぁん女子』!!!)
さやか(『gokuu』の服かな? 前に見た純粋な着物もだし、
相変わらず和風のファッションが似合いすぎっ!)クンカクンカ
亜衣子「……さやかちゃん?」
さやか「──ハッ!?」
さやか「そ、そ、そ、そりゃあ、わわ悪いと思って貰ってないと困りますよお。
だって私、死にかけたんですし」
さやか「っていうか、七星ちゃんと犬丸が来てくれなかったら死んでましたよ。冗談抜きで」
亜衣子「そうね。本当にごめんなさい。
七星ちゃんと晴行君にも沢山怒られちゃった。
特に、晴行君には殴られるかと思ったぐらいだわ」
さやか「えっ!? 大丈夫だったんですか!?」
亜衣子「ええ。
私が女の子だというのが大きかったのでしょうね。たぶん、そうでなかったらグーでやられていたわ。
正直、あの時の晴行君の迫力には失禁しそうになったぐらいだもの。ふふっ」
さやか「よかった……亜衣子さんになにも無くて」
亜衣子「えっ?」
さやか「犬丸が私の為に怒ってくれたのはわかるんですけど、女の子の──
それも、美少女が怪我するなんてぜーーーーぇったいにダメですもんっ!」
亜衣子「うふふっ、ありがとう」
さやか(でも……おもらしした亜衣子さんかぁ。
なんだか見てみたいかも)
さやか「…………」ムラッ
さやか(っていうか、想像したら想像以上にめろはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッッッ!!!!!
これは思いの外、創造したいっ!!!!!!!
)
さやか(ザ・めろはぁん系・おしっ娘ッッッ!!!!!)
亜衣子「……さやかちゃん、鼻血が出ているわよ? どうしたの?」
さやか「おっといけねェ!」ティッシュ、ツメ-
さやか「っていうかナニやってるのよ馬鹿犬ぅ! そこは亜衣子さんがそうなるまでやるべきでしょっ!
もぉぉ使えないッ! 見たかったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
亜衣子「なにを見たかったの?」
さやか「決まってるじゃないですかっ!
亜衣子さんの、お……」
亜衣子「お?」
さやか「──おおぉっといけねえ!」ゴホンゴホンッ!
さやか「な、なんでもないですっ!」
亜衣子「そう? なら良いのだけれど。
……さて、次はどこに行きましょうか?
今日はどこでも付き合うし、なんでも奢るわよ」
さやか「ふふふっ、遠慮しませんよ?」
亜衣子「……常識の範囲内なら、ね」
─────────────────────
さやか(丹羽亜衣子さん)
さやか(私よりも学年が一つ上の、超美少女!)
さやか(正直性格は歪んでいると思うし、実際私も何度も酷い目に合わされた)
さやか(その言動のすべてに裏がありそうな……)
さやか(ううん、たぶん本当に裏がある人。むしろ裏ばっかの人)
さやか(でも、私はそんな亜衣子さんを、どうしても嫌いにはなれないの)
さやか(表向きはともかく、その『裏』こそが悪い人に感じないから)
さやか(むしろ芸能界の方が、表向きは良いけど裏が真っ黒々っぽい人が多かったりする。
まだまだ芸能界に入って間もない私だけど、それでもわかるくらいに)
さやか(そういう人たちは、亜衣子さんとは真逆だね)
─────────────────────
さやか「……あっ、これ素敵♪」
亜衣子「黒ネコと黒いクマがセットになった、小さなぬいぐるみ?」
さやか「さっすが『ルルゴンキン』!
こういう小物さんたちも、普通に可愛くて良いのがあるんだよね~」
亜衣子「気に入ったのなら買ってあげましょうか?」
さやか「ううん、これは自分で買います」
亜衣子「あら、そう?」
さやか「はい。七星ちゃんにプレゼントしたいから」
亜衣子「ああ。なるほど、ね」
さやか「あっそうだ! 片方の子は自分用にしよっと!
ふふふふふふ、それ良いっ! 二人で一つって感じで最高っ!」
さやか「えへへへへへへっ♪ 七星たんと二人で一つかぁ。七星たんと二人で一つかぁぁぁ///」
亜衣子「二人で一つねぇ……」
さやか「──あっ! 亜衣子さんは買っちゃダメですよ! ダメっ!」
亜衣子「心配しないで。もう、そんな事はしないから」
さやか「本当ですかぁ?」ジト-
亜衣子「信用無いわねぇ。
第一、私は動物って苦手なのよ」
さやか「あら、そうだったんですか」
亜衣子「そうよ……って、それはともかく」
さやか「?」
亜衣子「それだったら、手作りのものにしたらどうかしら?」
さやか「手作り?」
亜衣子「ええ。
二人で一つというか、お揃いというか……」
亜衣子「その方が、その人との繋がりがもっともっと強くなる感じがして、より良いかなと思ったのよ」
さやか「繋がりが……『もっともっと』……?」
亜衣子「ええ」
亜衣子(ついでに、『あなたを縛ります』的な感じもして、呪術みたいでとても私好み)
亜衣子(さやかちゃんほどの霊力の持ち主のお手製品……
完成したら、ぜひとも霊を憑かせて霊具にしてみたいわ。
──とは口には出さないけれど)
さやか「その発想は無かった!
それ良い! それ、良いっ!!!」
亜衣子「うふふっ、でしょう?」
さやか「うん! そうするねっ!! ありがとう亜衣子さんっ!!!」
お手々をギュッ!
亜衣子「え、ええ。気に入って貰えたみたいでよかったわ……」
亜衣子(ち、近いわ。さやかちゃんの良い匂いが……
それに、さやかちゃんの手ってやわらかくて暖かいのね……)
亜衣子(──って、わ、私はなにを考えているのかしら///)
亜衣子「ま、まあそれはそれとして、そのぬいぐるみも良い物よね。
プレゼントはいくつ貰っても嬉しいものだと思うし、それも買ってからなにを作るか決めましょう?」
さやか「それが良いですっ!
じゃあちょっと待ってて下さいね!」タッ!
亜衣子「はーい」
─────────────────────
さやか「お待たせ、亜衣子さんっ」
亜衣子「ええ」
犬丸「じゃあ行こうか、俺のさやか」
さやか「なんでお前がおるんじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ゴッ!
犬丸「ゴッ!?」
ドサッ。
亜衣子「あら、凄いジャンピング・回し蹴りね。晴行君のこめかみに直撃。
ついでに言うと、とても可愛らしい下着だわ」
さやか「えっ!? 見、見えちゃいました!?///」
犬丸「ぬあああああ!
俺の角度だと、足とスカートのせいでギリギリ見えなかったあ
ぁぁぁああああ
ああ
あ
ああ
ああああぁぁぁ
あぁぁあこんなのぁぁぁぁぁウソだあああああああああああ!!!!!」
さやか「復活すんな! マジ泣きすんなっ! ついでに読みにくいッ!
ってゆーか、なんであんたがここに居るのよっ!」
犬丸「ふっ、こないださやかが衝動買いした物と同じ服を買いに『ピルコ』に来たんだ。
そうしたらさやかの匂いがしたから、その匂いの一番強い階に来てみたら案の定、という訳だよ☆」
さやか「なんでまだ七星ちゃんにしか話してない、
しかもまだ一度も着てない服の購入情報を知っとるんじゃあぁぁぁ!」
犬丸「愛、さ」キラ-ン☆
さやか「警備員さん、変な人に絡まれて困ってるんですが……」
犬丸「ははは、そんなに照れなくても良いんだよ」
さやか「ムギィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」
犬丸「──あっ! あのキーボード柄の服、さやかにピッタリじゃないかっ!?」シャランラ♪
─────────────────────
さやか「で、なんでついて来るのよ?」
犬丸「さやか行く所に犬丸在り! これはもはや常識っ!」
さやか「はいはい。
私はここで探したい本があるから、黙ってこの場所に立ってなさい」
犬丸「わかったよさやか! あ、探すの手伝うよ。なんの本だい?」
さやか「頷いた先から真逆の事言うなっ!」
ドゴォ!
犬丸「ゲフッ!」
亜衣子「あらあら、見事なさやか・ニー・クラッシュ(みぞおち直撃)ね」
犬丸「に、丹羽さん……」
亜衣子「なにかしら?」
……………………
………………
…………
……
さやか「んふふふふ~ふ♪ 良い感じの、マフラーの作り方本があってよかったな♪
あとは道具も買って、それからそれからぁ……///」
さやか「……ん?」
犬丸「前みたいな事は、さやかにはもう絶対にするな」
亜衣子「わかっているわ」
さやか「!!!」
亜衣子「って、この前も聞かされた話ね」
犬丸「何度でも言ってやる。
なにかあってからでは遅いんだ」
犬丸「この間の事だけじゃない。あの『壺』の件だって、十分迷惑だし危険だった。
いくら丹羽さんが万全の体勢を整えていたつもりでも、そういうものにさやかを巻き込ませる事自体が」
亜衣子「…………」
犬丸「俺が巻き込まれたり、俺を利用するのなら構わない。
それだって、面白くはないけどね」
犬丸「でも、さやかにはそれは許さない。絶対に」
犬丸「良いか。今後万が一、丹羽さんのせいでさやかになにかあったら……」
亜衣子「…………」
犬丸「どんな手を使ってでも、ただではすまさないからな」
亜衣子「……心得ておくわ」
さやか「…………」
さやか(本気で私を想ってくれてる事自体は嬉しいんだけどなぁ……)
さやか「──お待たせ~って、このくだりは二回目ですねっ」
亜衣子「うふふ、そうね」
犬丸「気にする事はないよ! 俺なら何度でも構わないっ!」
さやか「じゃああと百回、ここで待っててね♪」
犬丸「さやかが望むのならば」キラン☆
さやか「うぜぇぇぇぇぇぇ!」
─────────────────────
さやか(それからも、私たちはあちこちを回り……)
……………………
…………
さやか「そろそろ暗くなってきましたね」
亜衣子「そうね。あっという間の一日だったわ」
さやか「ホントホント!」
犬丸「楽しいと時間が過ぎるのが早いからね」
さやか「って、結局あんた、こんな時間までついて来たし……
せっかくの亜衣子さんとのデートだったのにっ!」
犬丸「ははは、さやかともあろう者が言い間違ってるよ。
今日は『俺とさやか』のデートだったじゃないか☆」
さやか「うっさい馬鹿犬っ!」
亜衣子「──『それ』、帰ってから早速作り始めるのかしら?」
さやか「はいっ!
えへへ、素敵な材料も手に入ったし、楽しみだなぁ♪」
犬丸「なんと言っても、さやかから俺への手作りプレゼントだもんね。
しかも二人でお揃いだなんて……
世界一……いや、宇宙一素晴らしいものになるのは確定した運命! 略して『確定運命』(ファクト)っ!」
さやか「お前に、じゃないっ!
何度も言ったでしょ? これは七・星・ちゃ・ん・のっ!!!」
ゲシゲシッ!
ドゴォォォオッ!!!
犬丸「キャァァァン、キャァァァン、キャァァァン……」
バターン!
亜衣子「弱足払い二連発からのさやか・アッパーカット……見事ね」ムウッ
亜衣子「まあそれにしても、マフラーとはなかなかに気が早いわね。
クリスマスプレゼントにするのだったかしら?」
さやか「そうですね。実は自分でも早すぎとか思ってたり」アハハッ
さやか「でも、これは一編み一編み気持ちを込めて、ゆっくりと作り上げたいなぁって思いまして」
亜衣子「なるほどね。
その方がさやかちゃんの『念』……いえ、『霊力』が強く込もって良いものになりそうね。
きっと七星ちゃんも喜ぶわ。色んな意味で」
さやか「えへへへへへへ☆ だったら良いなぁ♪」
亜衣子「うふふっ。
──さて、じゃあそろそろ帰ろうかしら」
さやか「その前に、なにか食べて帰りませんか?
この近くに美味しいパスタのお店があるんですよ」
亜衣子「それは良いわね。行きましょうか」
さやか「はいっ!」
スタスタスタスタ……
亜衣子「ところで、マフラー……に限らず、プレゼント用にお手製のなにかを作る時に、
作る人の体液を入れると絆がより深まるって話があるわ」
亜衣子「つまりこの場合は、糸をさやかちゃんの体液に浸すと良いという訳ね」
さやか「たっ、体液!? それはさすがに……///」
亜衣子「そう?
さやかちゃんから七星ちゃんへの贈り物という観点からしても、最高なんだけど……」
亜衣子「じゃあ、髪の毛をこっそり編み込んでみましょうか」
さやか「えっ!? そ、それもなんだか気持ち悪いかなーって……」
亜衣子「あら。
霊的には、本気の相手に本気の手作りをする場合は、最低でもこのぐらいやらないと逆効果……」
亜衣子「つまり、絆が浅くなってしまうのよ?」
さやか「えっ!? そうなんですか!!?」ガ-ン!
亜衣子「そうなのよ」
(亜衣子「注意。大ウソよ」)
(亜衣子(これを実行して気付かれでもしたら、 よ く て も 相手に気持ち悪がられるだけなので、決して本気にしては駄目よ。
キフッ♪」)
亜衣子「けれど、体液よりは抵抗ないでしょう?」
さやか「うーん。まあ……そう、ですね。
じゃあ髪の毛はやってみようかなぁ」
亜衣子「それが良いわ。
これで、そのマフラーは普段使いが出来るものなのは当然として──」
亜衣子「さやかちゃんの気持ちと霊力が最高に込められるから、七星ちゃんの心強いお守りにもなる。
言ってみれば、さやかちゃんが常に七星ちゃんの側に居て、彼女を助けるというのと同義ね」
亜衣子「お揃いならば、いつもお互いが繋がっているという事にも」
さやか「私が、常に、七星ちゃんの側に居て、助け、いつも、繋がってる……!」キラキラキラキラキラ☆
さやか(それって、なんて甘美な!)
亜衣子「──うふふっ。まあ、そういうのを抜きにしても……」
亜衣子「さやかちゃんの想い、七星ちゃんに届くと良いわね」
ニコッ。
さやか「!!!!!」
亜衣子(キフッ! やったわ!
これで素晴らしい『霊具』が出来そうね♪しかも二つもっ!)
さやか「め」
亜衣子(いいえ。他に迫る者すら居ないかもしれない、さやかちゃんの圧倒的な霊力。
それが贅沢にこもっているものなら、
霊など入れなくても、とんでもない価値と力があるアイテムになるのかもしれないわね)
さやか「めっ」
亜衣子(さしずめそれは、『人具』(じんぐ)といったところかしら?
キフッ! 本当に楽しみ♪)
さやか「めろはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっッッッ♪☆☆!!!!!☆☆♪」
亜衣子「わっ、ち、近……///」
さやか「こんな美少女に応援されたら頑張るっきゃないっ!」
さやか「ありがとう亜衣子さん!
私、や っ て や る で す ! ! ! ! !」
亜衣子「え、ええ。頑張ってね」
さやか「はいっ!」
─────────────────────
さやか(楽しみだなあ、クリスマス!)
さやか(でも、その前に七星ちゃんのお誕生日もあるし……)
さやか(そっち用のプレゼントもなにか考えて、もちろんパーティーだってしたいな!)
さやか(ふふふっ、いっぱいいっぱい七星ちゃんに喜んでもらうぞぉ!)
さやか(そして、今年の終わりには……)
さやか(七星ちゃんとの距離が、今よりももっともっと縮まってたら良いな♪)
おしまい。
─────────────────────
美桜「晴行先輩? なんでこんな所で寝てるんですか?」
犬丸「──はっ!?」ガバッ!
犬丸「あ、あれ? さやかは!?」
美桜「さやかお姉様ですか?」
犬丸「さやかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
トゥルー・オブ・エターナル・アイ・ラブ・ユーゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
タッタッタッタッタッ!!!!!
美桜「……なんだったんだろ?」
今度こそおしまい。
EX2 CHAPTER 05
『プレゼント』 End
さやかは女神。
暗き世も
優しく照らす
光(さやか)かな
BS小説の続き出ないかなぁ。読みたいなぁ。
それではまた~。
乙
あいちゃんのおもらしを所望したときにはまさか自分がおもらし女子になるとは思わなかったさやかわい
挿し絵めろはぁん過ぎてあいちゃんもかわいい
BDで追い詰められて本音が出てからあいちゃん好きになりました
あと犬丸、お前シリアス出来たんだな……BDでビックリしたよ正直
2Uのことがあったからお前だけは何があっても死なないと思ってた……いや死なないと思いたかったというべきか
レスありがとうございます~。
亜衣子はBDを進めるにつれてドンドン好感度が上がっていきましたが、
トドメにCHAPTER10のアレがあったのが私にはなによりもよかった。
アレが無ければ、好きにはなれていても、彼女に対するモヤモヤが残っていたと思います。
責める気はなかったですが、どうしても犬丸と同じ感情があってずっと消えなかったのです。
犬丸は、平常運転の彼を見てきた為か、死が一番胸にきたキャラかも。
亜衣子の、『その明るさが失われるのは……辛い』という言葉はまさに完全同意でした。
彼にはずっと、さやかさやかと連呼しつつ、馬鹿をしながらも幸せそうに笑っていて欲しかったなぁ。
今回は二つ投下します。
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 06
『時は、今』
ようやくこの時が来たようだ。
これまでにも、幾人かの能力者がブック・オブ・シャドウズの力を支配しようとしてきた。
野心を持つ者、ブック・オブ・シャドウズに魅入られて操られた者など、動機は十人十色だったが。
その者たちは皆、力を求める過程で涅槃と縁を持ち、様々な形で踊り続けた。
しかし、ここまでたどり着けた者は誰一人として居なかった。
実力の足りない者・実力はあれども霊格が不足している者は、
全員が『闇』に呑まれ、惨めなエサとなっていったから。
そして、『闇』のすべては──
新たなる力・新たなる仲間を求め、欲し、さらなる悲劇を繰り返させてきた。
まるでループのように、延々と。
だが、ついに現れた。
なにもかもを包み込む資格を持つに相応しいか、私に『試される』だけの者が。
見たところ、霊力も霊格も、これまでの者よりは劣るようだが……
重要なのは、この場に立っていられるというその事実。
さあ、来るが良い。
お前は私と対峙してどうするか?
過去に埋れた、埋もれさせられた……昏きものを知ってどうするか?
真実を観、感じ、受け、どうするか?
見定めよう。
見極めよう。
願わくば、お前こそが我らの救世主である事を……
EX2 CHAPTER 06
『時は、今』 End
さちもですが、クイーンももっと活躍が見たかったなぁ。
この二人は、設定を考えたらそれぞれを一本のゲームのラスボスにしてもよかったようにも思うのです。
それでは、ダブルヘッダーの二試合目に行くです。
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 07
『理不尽と奈落の果てに』
許さない。
許さない。
許さない。
許さない。
……認めない。
こんな現実。
あってたまるか。
あって、あってたまるか。
犬丸「ニワ……ドコダ……」
俺は、知り合いを探して彷徨っていた。
犬丸「…………サヤカ……」
さやか──大上さやか。
俺の愛しい人。
誰よりもなによりも大切な。
……呪われた学校、天神小学校。
そこへと向かって行方不明になったさやかや、その親友の冴之木さんを助けに、
俺は知り合いと共に天神小へとやって来た。
でも……
そんな俺たちが発見したのは、冴之木さんたちの死を伝えるカメラと、変わり果てたさやかの……
犬丸「ウアァァァァァオアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
認めない認めない認められるものか!
さやかが死ぬ訳がない! 彼女が死んで良い訳がない!!!
……俺は、自分の身体がもはや人のそれでは無くなっている事に気付いていた。
『黒化』。
精神が汚染されると起きる現象。
普通の人は、『黒化』が進むと真っ黒になって消滅してしまうんだけど……
霊力のある人間は、その限りではない。
そう、たとえば俺のような。
俺は、それなりに強い霊力を持っている。
そういった血筋の生まれというのもあるし、守護霊も相当強い。
でも、決して生まれだけでこの霊力を手にしたわけじゃなかった。
さやかを守りたかったから。
さやかを守りたかったから、昔から霊力を高める修行をしてきたのだ。
そして、今こそこの力を最大限に発揮しなくてはならない時……のはずだった。
──天神小は確かに恐るべき場所だ。
ここにたどり着いた瞬間、魂の底から実感した。
今までに見た事がないぐらいに、とてつもない霊磁場だったのだ。
けれど、どんな場所・どんな状況であれ、さやかの為に俺の力が役に立つのならば、何でもするつもりだった。
さやかの為ならば、たとえ死んでもよかった。
さやかを助けられるならば、捨て駒になってもよかった。
……なのに。
犬丸「ァ……ウ、ゥゥ……!」
俺はなんの為にここに来たんだ? なんの為に修行を重ねてきたんだろうか?
……彼女の身代わりにすら、盾にすらなれなかった。
畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生!!!
これもすべて、あの女……丹羽亜衣子のせいだ。
あの女が、冴之木さんに天神小だの涅槃だの、余計な事を吹き込んだりしたから……!
万が一冴之木さんに声をかけられたら、さやかならどんな危険な場所だって彼女について行くのに。
そんな事、簡単に想像出来たはずなのに!
──あいつさえ居なければ──
──いや、あいつらさえ居なければ……!──
殺意がほとばしる。
先ほどは、丹羽を一度追い詰めはした。
あいつの手に噛み付き、それはかなりの手傷となっただろう。
気を失ってもいたし、もはや抵抗をする事自体が不可能だったはずだ。
……しかし、あの女に止めを刺そうとして、俺は躊躇してしまった。
その間に意識を取り戻した丹羽は、逃げていった。
俺は、フラフラと去っていくあいつの小さな背中を、ただ見つめる事しか出来なかったんだ。
つくづく、自分の甘さに反吐が出る。
─知り合いなのがなんだっていうんだ。さやかの友達なのがなんだっていうんだ──
──……追い詰められた時の、逃げ出す時の、あいつの表情がなんだっていうんだ──
──視線が、涙が、言葉が……! なんだっていうんだ!!!──
今度はこうはいかない。次は迷わない。
必ず見つけ出して、報いを受けさせてやる。
犬丸「……!」
視界の端に、人影があった。
丹羽ではない。あの人物も天神小に迷い込んだのだろうか?
いや、そんな事はどうでも良い。
なんであいつは生きているんだろう?
さ や か は 死 ん で し ま っ た の に 。
ははは。
……笑えない冗談だ。
バッ!
俺は一足飛びで生者の前に行くと、
ガブッ!!!
そいつが振り向く前に、身体を食いちぎってやった。
一瞬で、生者は死者になった。
犬丸「…………」
ああ、良いなこれ。
『理不尽』が一つ、この世から消えた。
さやかが居ない世界なんて『理不尽』の塊だ。
そんなの許せるものか。
だから俺は、出来る限りの『理不尽』を否定し、排除する。
その後に……
俺も君の元へ行くよ。
さやかは、あんなに暗くて狭い場所で一人ぼっちだったんだ。
きっと、とてつもない孤独の中、想像を絶する苦しみを味わいながら死んでしまったんだろう。
だから君の元へ向かう時は、俺もなるべく苦しみながら逝くね。
─────────────────────
……いくつの『理不尽』を排除しただろう?
気が付けば、天神小は変容していた。
廃墟といった感じだったのが、まるでなにかの体内のように。
問題だったのは、空間でもねじ曲がっているのか、通る道の行き先がコロコロと変わる事だ。
しかも、この道の先はこういう場所だろうという予想を大きく裏切る、妙な繋がり方になっている。
中には、明らかに天神小外の場所にたどり着く事もあった。
これではまるでワープだ。
おかげで、丹羽の気配を察知してもなかなかたどり着けやしない。
だが……
どうやらそれも、ようやく止まったようだ。
もしかしたら一時的に、なのかもしれないし、道の先は相変わらず突拍子もない場所に出たりはする。
けれど、少なくとも今は、行き先がいちいち変わる事は無くなった。
そして。
あの女の匂いが間近にある。
探し始めてから、かつてないほどに。
『見付けた』
俺は、強く念を飛ばしてやった。
待っていろ。
今からお前を裁きに行ってやる。
EX2 CHAPTER 07
『理不尽と奈落の果てに』 End
私の恩師に、とても綺麗な方が居ました。
その方が大好きだった私は、犬丸的なアプローチをしたものです。
それに対する反応は、まさにさやかのもの、そのまんま。
なので、犬丸を見ているとちょっぴり懐かしい気持ちになります。
自分語りが過ぎたにゃー。ラーメンでも食べるにゃ!
犬丸、悔しかったね。
無念だったよね。
それではまた次のお話で。
乙
亜衣子のせいというのはその通りなんだけど、そそのかされたはずの七星の方が個人的には悪印象なんだよなぁ
多分BRであれでBSで分かってて巻き込んだというのが原因
先生はまあ追い詰められてたししょうがないね
彼に必要だったのは美少女女子高生のツバメになるという覚悟だった(何
あとブックオブシャドウはツンデレ。はっきりわかんだね
レスありがとうございます~。
七星は、天神小に行く前からサチコに負けてしまっていましたね。
さやかの準備待ちの時(実際はさやか邸に駆け込む前からすでに、かな)にはもうまともじゃなく、
サチコの望むように操作されていた感も酷いですし。
いわゆる、憑依を受けた典型的な様子というか。
とっくに、霊的にも隙だらけの無防備で完全に決着がついていた。
この時点で、七星の生存もすでに絶望的だったのでしょう。
小説や2Uを見るに、本来の七星は決して悪人ではないはずなのでこうなってしまったのは残念です。
天神小の件に関しての、亜衣子への気持ち。
たぶん犬丸は、頭ではちゃんとわかっていたんでしょうね。
でも、本当は理性的で頭の良い感じのする犬丸ですら、こればかりは感情が許してくれなかった。
人って、こういう悲しさがありますよね。
そういった意味でも、BD・CHAPTER10のアレは本当によかった。
亜衣子にも犬丸にも、七星にだって確かな救済になっていたように思います。
さすがはトゥルー・女神・さやか!
ところで、今週はお休みです。ごめんなさいです。
さてさて。お盆ですし、普段からしている方も、普段はしていない方も、ご先祖様供養をする事に致しますか~。
子孫である自分自身が、自分で。
普通の言葉で、普通に話しかけるように、
『皆さんのおかげで生まれてこられて、今もなんとか生きていられています。ありがとうございますっ♪』
みたいに明るく言う事にしましょうです。
出来れば、親類と明るく楽しく食事・歓談もすれば、さらに喜んで頂けるでしょうね。
もう成仏されている方々も、普段は見えず聞こえず動けずの苦しい方々も、沢山たくさん。
だって、子孫(たち)のそういう言動・姿を見て嬉しくない訳ないですもん。
──といった、コープスっぽい……??? 投下をしてみたところでまた来週。
供養かぁ……
そういやお盆に実家の墓参りとかやってないなぁ
レスありがとうございます~。
ご先祖様に思いやりを届ける、という意味で、
出来るならばお墓のお世話はした方がよくはあるのでしょうが、どうしても出来ないのならしょうがないですよ。
それよりは、お盆とか関係無しに、普段から『感謝や明るさや幸せ』だけ、をご先祖様に対して思い、
いつも忘れないであげる事が超々大切だと感じます。
別にカラ元気でも良いので(それはそれで、心配かけまいという思いやりがあって健気ですよね)。
可能なら、一人で居る時にでも、ちゃんと意味が伝わる普通ぅの言葉で、
話しかけるように言葉に出すともっとストレートに届きそう。
あくまで普通に考えてのお話なのですが、やっぱり、子孫にこうされて嬉しくない訳は無いと思いますのです。
そういえば、2Uってお盆の環境に似てるかもと思ったり。特に、普段はこっち来れない状態の方々にとっては。
お盆は別に記憶を無くす事はないでしょうけども。
といった、電波なお話をしつつ再開です。
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 08
『約束』
袋井『──森繁君じゃないか』
森繁『袋井君に……山本さんか』
美月『どうも』
思わぬ再会に、俺と美月、森繁君は笑い合った。
そして、お互いにもう一人。
森繁『君は、霧崎さんだったか?』
凍孤『そうよ。また会えたわね』
森繁『ああ』
凍孤とも和やかに言葉を交わし合う森繁君。
袋井『それにしても……よかった』
そんな彼の隣に居る女子に目をやり、俺は言った。
袋井『やっと、そうやって鈴本さんと居られるようになったんだな』
そう。彼女は、天神小で森繁君がずっと探していた、鈴本繭さんだ。
森繁『ああ。
本当に、本当によかった……』
繭『繁兄ぃ……』
噛みしめるようにつぶやきながら、森繁君は鈴本さんの頭を優しく撫でる。
森繁『──しかし、袋井君、山本さん……』
袋井『ん?』
森繁『あの時は、申し訳なかった……』
どうやら、死ぬと、生前すべての様々な時、自分を誰がどう思っていたかを事細かに理解するらしい。
また、その時々の相手の心も丸見えのようだ。
だからこそ、それだけの言葉で彼がなにを言っているのかわかるし、彼が真に謝罪の念を抱いているのもわかる。
袋井『気にしないでくれ。誰だってあんな場所……
いや、まだ『こんな場所』か? に迷い込んだら、どうにかなってしまうさ。
心が荒むのも無理は無い』
美月『ええ、そうよ』
凍孤『そうね』
俺の言葉に、二人も賛同してくれる。
森繁『いや。
本来なら、あんな異常な状況の中、それでも仲間が増えた事は喜ぶべきだったのに、
つまらない思いを持っていた──持ってしまったのは俺の弱さだ』
彼は、辛そうに目を伏せる。
森繁『それだけじゃない。
その弱さのせいで俺は、なんの罪も無い他の犠牲者たちにも馬鹿な事をしてしまったし、
あまつさえ繭まで傷付けてしまった……』
繭『ううん、気にしないで繁兄ぃ。
今なら繁兄ぃの気持ちはちゃんとわかるから。わかってるから』
自己嫌悪に陥る森繁君を、鈴本さんが慰める。
繭『むしろ、私こそゴメンね。
私のせいで繁兄ぃは命を……あんなに罪の深い事をさせちゃって……』
森繁『それこそお前が気にする必要は無い。全部俺の自己責任だよ。
他の誰でもない、俺が、俺だけが悪かったんだ……』
ただ、と、彼は言う。
嘘を言っても無駄だから。
森繁『後悔が無いと言えばもちろん嘘だ。
どれだけ苦しもうが、悲しかろうが、みっともなかろうが、俺は生きるべきだった。
せめて、最後の最後まで生きる為の努力をするべきだった』
──なぜなら──
森繁『もしも俺が生き残れていれば、お前をしっかりと弔ってやれたのに。
そうすれば、ずっと一緒に、一つになって、生きて……いけたのにな……』
繭『繁兄ぃ……』
たとえ鈴本さんが命を失ってしまっていても、幸せも、悲しみも、全部を現世で共に味わう事が出来た。
いつか、森繁君が亡くなるまでは。
これは、生きる人間にしか行う事が出来ない奇跡だ。
袋井(それを、死んだ後に思い知って──思い出しても、もう遅いんだよな……)
あそこまで狂った世界では、生還するのは相当難しいと思う。
しかし、どんな理由があれ、その為の努力を放棄してしまった……
その結果、鈴本さんと共に人生を歩む最後のチャンスを自分から手放してしまった事を、森繁君は悔いているのだ。
俺や美月もだし、当然鈴本さんだって、もっと現世で生きたかったのだから。
森繁『本当の意味でお前を殺してしまったのは俺だ。
……ごめんな……』
彼は泣いていた。
そして、鈴本さんも……
繭『違う! 違うよっ! それでも、私は繁兄ぃが居たから! 居てくれたからっ!
今こうして笑顔で居られるんだよっ!?』
森繁『繭……っ!』
二人は、しゃくり上げながらキツく抱き合った。
凍孤『私たち、忘れられてるよね?』
袋井『ははは、まあ良いじゃないか』
……しかし、正直羨ましいものだな。
想い合う相手と、あそこまで想い合えるなんて……ってのは少々変な言い回しか?
美月『あー、えっと。
邪魔して悪いんだけどねお二人さん。そろそろ……』
繭『──あっ!///』
森繁『す、すまないっ』
美月の言葉に、森繁君と鈴本さんは涙を拭いながら慌てて離れた。
袋井『まあ、なんだな。
それにしても、お互いがあれもこれもを知ったり、思い出したりっていうのは……
なんというか、アレだな……』
死後の、天神小の呪縛に囚われていた時の記憶も俺たちにはしっかりと残っている。
その時に発していた念もだ。
俺は頬をかきながら、バツが悪そうに美月をチラリと見た。
美月『なに言ってんのよ。
あんたの言葉を借りれば、『心が荒むのも無理は無い』わ。
私だって……ね』
凍孤『たぶん、私たちと同じ境遇の人の大半は、みんな変わらないんじゃないかな……』
森繁『そう……なのかもしれないな』
繭『うん……』
全員が、困ったような、悲しいような、苦笑しているような、なんとも言えない顔をする。
けれど、色々あったが、ここに居るみんなの心は暖かい。
繭『でも、繁兄ぃも袋井君も、山本さんも霧崎さんも、そんな風に思える人でよかった』
森繁『繭……』
美月『人として普通の事よ──
と言いたいところだけど、そんな風にすら思えない奴も居るからね。
残念だけどさ……』
袋井『そうだな……』
凍孤『…………』
美月の言葉に、俺と凍孤は視線を下に向けた。
凍孤((……裕也君、それでも私は……あなたが好きだったよ))
隣の、凍孤の意識が流れ込んてくる。
袋井(ああ、そうだな)
俺だって、みんなであの世に還りたかったよ。
けれど、誰だって最後に行くのは、自分で選んだ道。
森繁君の言葉じゃないが、自己責任だ。
死後には、すべてに対して言い訳も取り繕いも不可能なんだから。
???『お~~~~~いっ!』
??『森繁君! 鈴本さ~~~ん!』
突然聞こえてきた声の方へ、俺たちは全員顔を向けた。
そこには、鈴本さんと同じ制服を着た、俺たちと同い歳くらいの女子と、大人の女性が一人。
繭『篠原さん! 結衣先生っ!』
鈴本さんに名前を呼ばれた二人は、笑顔でこちらへ向かってくる。
世以子『やーーっと見付けたよ!』
結衣『二人も元気そう……って言うのは正しいのかしら?
ともかく、再会出来てよかったわ』
繭『私も会いたかったです!』
結衣『それにしても、霊の体って慣れるまで大変なのね。
意識が戻ってから、思うように動くだけでも一苦労だったわ』
袋井『確か、二人の知り合いだったな』
俺たちも、あのサチコのバースデイの時に彼女たちと出会っている。
もはやなんの呪縛も無い今の俺たちは、その時の記憶も取り戻しているのだ。
森繁『ああ。クラスメートと、副担任の先生だ』
俺たち白檀組と、宍戸先生・篠原さんは簡単に挨拶を済ませた。
世以子『つーか、森繁君ったら相変わらずい・け・ずだなぁ』
森繁『?』
世以子『私たち、ただのクラスメートじゃなくて『友達』でしょ?』
森繁『なっ……!?』
思わず声を上げてしまったのだろう。森繁君は、頬がやや赤くなっていた。
美月『あっ、森繁君が照れてる!』
凍孤『あら、結構かわいいかも』
袋井『ははは、これはレアなものを見させて貰ったのかもな』
森繁『からかうな! 俺は別にてっ、照れてないっ!』
世以子『ンフフフフ、オッケー! オッケー・バッチグー!
じゃあそういう事にしといてあげようっ!』
繭『でも、そういう繁兄ぃもカッコ良い……!///』
森繁『あ、あのなぁっ!』
結衣『うふふふっ』
和やかな空気。
こういうのはいつ振りだろう?
出来れば、この時に長く浸っていたいが……
袋井『……と、残念だが、俺たちはもう行かなきゃいけないみたいだ』
森繁『……そうか』
美月『あなたたちは──そういう事、なんだよね?』
世以子『うん』
袋井『すまない。出来れば俺たちも手伝いたいんだが……』
凍孤『……ごめんね』
繭『気にしないで。
私たちは『これ』があるからこそ、まだここに留まる事が許されているだけだもん』
結衣『そうね。
死者を、私たちを縛っていた呪縛が解かれた今、自然の摂理には逆らえない。
……でも、ありがとう』
袋井『とんでもない事です』
美月『必ず還って来てね』
繭『うんっ!』
世以子『まっかせなさーーいっ!』
美月の言葉に、笑顔で頷く彼女たち。
袋井『森繁君、さっきの話を蒸し返す訳じゃないんだが……』
森繁『?』
袋井『俺は、君の事はもう友人だと思っている』
森繁『!!!』
袋井『いや、同じ地獄で苦しんだ『仲間』と言った方がしっくりくるのか?
ともあれ、友達として、仲間として、言わせて貰うよ』
俺は、森繁君に右手を差し出した。
袋井『応援している』
森繁『…………ありがとう』
小さくそう返すと、彼はゆっくりと俺の手を取ってくれた。
美月『ふふっ、私もね!』
凍孤『私もよ』
森繁『……ああ』
ほのかに、森繁君はほほえんだ。
美月『──あっ、黒崎たちはもう待ってるみたいだよ』
『向こう』からの気配を察知して、美月が言った。
凍孤『そっか。あんまり待たせても悪いわね』
??『繭さぁ~~~~んっ! 頑張って下さぁぁぁぁぁいっ!!!!!』
?『森繁さんもね!』
??『ファ、ファイトですっ!』
袋井『……今のは』
ここに届いたのは声だけだが……聞き覚えのある声だ。
繭『奈那ちゃんだっ!』
森繁『あとの二人は、天戸屋さんと、山瀬さん──だったか』
袋井『ふふっ、君たちにエールを送っているのは、俺たちだけではないみたいだな』
森繁『そのようだ』
苦笑する森繁くん。
袋井『それじゃあまた後で、な』
森繁『ああ。また後で』
スウッ……
……視界が──ぼやけていく。
袋井(負けないでくれよ)
すべてが終わったら、可能な限りのメンバーでまた集まろう。
今のように。
あの時の、サチコのバースデイのように。
そして、また笑い合おう。
約束だ。
EX2 CHAPTER 08
『約束』 End
森繁はコープスの男の中では一番すきです。
純で、冷静で、でも脆くてどこか切ない感じがたまらない。
繭ちゃんとの関係も素敵です。
袋井も超すき。特に、BSの彼は本当にカッコ良かったですね。
男女関係なく、一途な人というのは良いものです。
それは誠実さの一つですし、
『誠実さというのは、人にとって必須の魅力の一つだよなぁ』などと思うのですよ。
それではまた。
乙
森繁はBSでいい方向に新しいキャラが立ったな
BRでもホラー要員としていいキャラしてたけど、それだけじゃないとこが見れてすごい良かった
そしていい面を見せたあとにBDでまーゆーってやられてかなり精神的ダメージを与えられました
おのれ外道院!
レスありがとうございます~。
BD本編での森繁も切なかったなぁ。
あゆみの気持ちとシンクロしてしまいましたよ。
ところで、あそこから後に再登場しての、彼と繭ちゃんのエピソードを期待して進めていたのですが……
無かったですね(笑)。
再開します~。
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 09
『私たちの結末を、絶望で終わらせはしない』
私は死後、悪霊になっていた。
ううん、最初は決してそんな事はなかったんだけど……
死んだ時の苦しみが永遠に続く中、私は、徐々に自分の心を染め上げていく闇に勝てなかった。
どれだけ必死に、いくら抵抗をしても……
いつの時からだろう? 悪霊と化してしまった私は、すべてを恨んだ。憎んだ。
私を殺したあの男も、その背後に居た赤い服の少女も。
なんの責任も無い犬丸たちにも、『どうして助けに来てくれなかったの?』なんて自分勝手に。
……そして、誰より大好きなはずの七星ちゃんさえも。
果てが無い悪夢で肥大していった私の黒いものは、
天神小という恐ろしい場所のさらなる力となり、結果的にもっときつく自分自身を縛り上げた。
残酷にループする、呪い。
けれどいつからだろう? 気付いたら、私の苦しみは消えていた。
正気を取り戻して自由になった私は、すぐに七星ちゃんに会おうと動いた。
なんとなく居場所がわかったのもあって、彼女はすぐに見付かった。
生前は自分自身では扱えなかったんだけど、私の潜在的な霊力はとっても強いらしい。
話によると、七星ちゃんの持つものよりも上なんだって。
霊体になったからか、どうやら今の私はその力を扱えるみたいで、
これは七星ちゃんを探すのにも役に立ったようだ。
七星ちゃんは、こうなっちゃう以前の行いによって、自分で自分を縛っていた。
まだまだ苦しんでいて不自由な感じだったけど、
私は抱き締めて『大丈夫だよ』と何度何度も言ってあげた。
そのかいあってか、今はだいぶ落ち着いてくれている。
あともうちょっとだけ時間はかかると思うけど、これなら大丈夫。
……それにしても、本当に──
見付けられなくてよかったと思う。
悪霊の時の、私が、七星ちゃんを。
もしあの時に彼女を見付けてしまっていたら、私はきっと……
想像するだけで恐ろしい。
──続けて私は、鬼碑忌先生と田久地さんも探してきた。
二人も天神小の呪いからは解放されていて、私の顔を見るととっても喜んでくれた。
さやか『やっと四人揃ったね』
鬼碑忌先生と田久地さん、そして、ようやくお話が出来るようになってきた七星ちゃんが笑顔で頷く。
なんだか懐かしいな。
いつかの、七星ちゃんと『トゥインクル』のライブに行った日の夜……
鬼碑忌先生のお家で、この四人で紅茶を頂いたのを思い出す。
とっても美味しくて、とっても楽しかったなぁ。
さやか『……うん、わかってるよ七星ちゃん』
私たちはこれからあの世に還って、
そこからさらに、自分たちの魂に合った場所を自分で選んでいくんだけど……
私だけは、それにはまだちょっと早い。
さやか『──あ、そうだったんだ。
ふふっ、良いなぁ。私も亜衣子さんとお話ししたいな』
私が鬼碑忌先生と田久地さんを探している間に、七星ちゃんは亜衣子さんとちょっとだけお話をしたらしい。
さやか『……まあ、それはすぐにでも叶いそうかな。
──みんな、先に行ってて。私はあのバカも迎えに行ってくるよ』
あいつ……
私を追いかけて、こんな地獄にまでやって来てくれたあのバカ犬を。
さやか『えっ?
ううん、気にしないで。私もすぐに行くから。
ありがとう』
嬉しい事に、七星ちゃんたちは私を待っていたかったみたいだけど、こればかりは無理。
地縛霊とかだったらともかく、今の私たちみたいな状態になった霊は、基本的にこの世には留まれないから。
これは決まりというか絶対の摂理なので、誰だろうと絶対に抗えない。
まあ、やるべき事がある私は、もうちょっとだけ残れるんだけど……
その猶予も長くはない。
さやか(そういえば、七星ちゃんたちを探している間……
呪縛から解放された霊たちが、あの世に還って行く姿を何度も見たなぁ)
自分自身も同じ境遇だから、魂の底からその嬉しさがわかる。
でも、たぶん、未だに自分で自分を縛ったまま動けない霊も沢山居るんだろうな……
そんな霊たちはきっと、このまま涅槃と運命を共にするのだろう。
その全員までを救うだけの時間や力は、私にはさすがに無い。
さやか『よし……』
私は三人といったん別れると、犬丸の気配を探る。
さやか(こっちみたいだね)
あいつの近くには、亜衣子さんも居るようだ。
さやか『……バカだね、犬丸……』
大好きな人が居る私には、どれだけあんたに想われたってその気持ちに答える事は出来ない。
自分の気持ちが本物だからこそ、そしてあんたが想ってくれる気持ちも本物だからこそ、これは決して譲れない。
犬丸が、変でウザすぎるヤツだけど、内面も見た目も良い男だってのはわかってる。
さやか(知ってた? あんたの事を好きな女の子、結構居るんだよ)
その中には、私よりも相応しい相手も居る。
色々な事を考えたら、犬丸なら私以外の人だったらすぐにでも……
ううん。
私だって、その人じゃないと嫌だっていう相手が居るから、これは言いっこなしだよね。
けれど、そんなあいつは……
こんなトコまで私を追っかけてきて、あんな姿になってしまった。
さやか『……ほんとバカだよ』
ごめん、ごめんね……
さやか『バカ……犬っ……!』
待ってて。
せめて、せめて魂だけは救ってみせるから。
待ってて、犬丸。
今行くからね。
EX2 CHAPTER 09
『私たちの結末を、絶望で終わらせはしない』End
BD内での、桐章学園組のラストエピソードを進めるにつれ、涙が止まらなくなったのは今でもよく覚えています。
言葉通りに、あの日は一日中泣いてたなぁ。
マリ○て風にいうと、馬鹿みたいに、ずっと。
さやかの事はBSから一目惚れをして、ずっとずっと大好きなのですが、
彼女が居てくれてよかったと心から思います。
さやかを好きになって、さやかを好きでいて本当によかった。
いえ、これはもはや愛。
それではまた。
乙
初回プレイ時に、その前のギロチン等につまった疲れから最終章で犬丸くんをスルーしてしまったことをここに懺悔いたします
マジすまんかった犬丸
その場合でも女神さやかちゃんは迎えに来てくれたと信じたい
悪霊さやかちゃんといえばBSの黒板の文字は恐ろしさ満点だったなぁ
天神小は死者をも狂わせるというのをまざまざと見せつけられた
天神小の呪いから解放されたとはいえあそこから持ち直すさやかちゃんマジ女神
レスありがとうございます~。
犬丸スルー、初見の時に私もやりました(笑)
ずっと気になり続けていた彼が、ついにチラッと出てきて喜んだまでは良いのですが……
あれから左に進んでしまったんですよね~。
クライマックスで彼が現れる伏線だとなぜか確信しまって。
その為に先に進む事で頭がいっぱいになって、戻るという選択肢を無くしてしまっていたのです。
いかんいかん。
BSのアレは、やっぱりさやかなのが濃厚な感じですよね。
袋井っぽいのもあったですね。
ただ、例の文章の一人称を考えたら、アレは実はさやかじゃない説もあるぞと思ってたり。
それにしても、さやかがメ○テンとかに出たら間違いなく女神だろうなぁ。
大天使もアリか。
全種族を含めて、最高位の存在なのも確定運命でしょう。
さすがは俺のさやか!
では、再開します~。
今回が最終回です。
BLOOD DRIVE EX2 CHAPTER 10
『力に』
『うわわ、いよいよって感じだねぇ』
『ああ』
『あなたたちは無茶をしては駄目よ? 前に出るのは私だからね』
『はいッ!』
『えへへ、ありがとうございます』
『委員長の事だけじゃない。
お前だって、今度こそ俺が必ず守ってやるからな』
『うん、ありがとう。
私も負けないように頑張る!』
『けれど、そんなあなたをさらに私が守るわ。絶対に』
『……はい。ありがとうございます』
『さって、私たちにど~こまで出来ますかね?』
『正直、わからないよね。
でも……』
『今だけは、委員長の守護霊の一角として全力を尽くすだけだ』
『そうね。
あの子を一人で戦わせはしない』
──いざとなれば、この身を盾にしてでも……!──
『……むむっ! 始まった!』
『さあ──行きましょうか』
『『『はいっ!』』』
EX2 CHAPTER 10
『力に』 End
私は『ランド・オブ・コープス』ENDがBDの結末で一番好きだったりします。
ブックさん×あゆみのEDはあくまで2に繋がるルートという事で、
私の脳内ではこれがBDの正規ENDになってたり(笑)。
力及ばず倒れてしまったあゆみを、優しく迎えるみんな。
それから彼女たちは楽しい日々を過ごして。
それは現世でもあの世でもないけど、でも、その世界は決して嘘でも幻でもなくて……
というのが非常に切ないのです。
邪術自体の是非はともかくとして、あの結末を迎えてしまったあゆみたちにとっては、
あの世界も間違いなく天国の一つなんだろうなぁと。
こんなん目頭が熱くなるやん?
最後の、真っ暗な中でのドクロが非常に痛々しく(特に髪の毛と学ランが……)、
かつ不意をつかれて初見の時は物理的に胸がズキンと痛くなりました。
それにしても、クイーン戦で森繁たち(たぶんそうですよね)が駆けつけるって、もうそれだけで熱いですよね。
こういうシチュエーションにひたすら弱い私は、
それだけで豪速球を食らった感じでやられてしまいましたもんよ。
さて……という事で、このSSはこれにて完結です。
やはり、コープスは素晴らしい作品だと思います。
かっこいい男もかわいいおにゃのこも居て。
愛深い人も、その逆の人も居て。
しっかりと彼らの生き様を拝見させて頂きました。
ていうか、本当に大々々好きです! コープスパーティーっ!!!
る。
それでは、レスを下さった方も、ROMして下さった方も、お付き合い頂いてありがとうございました~。
またご縁があればよろしくです。
長い間本当に乙でした
またどこかで会えることを祈っています
ランドオブコープスエンドについてはもう少し長めに演出入れてくれてもよかったなぁと密かに思ってたり
トゥルーエンドやハッピーエンドに対するノーマルエンドくらいの立ち位置で
乙でした!
このSSまとめへのコメント
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