吹雪「鎮守府に終わりを」 (79)

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伊58「鎮守府に革命を起こしてやるでち」 - SSまとめ速報
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1434807172

なんか前スレの最後に今は亡きハルバードニキが居て懐かしい気分になった

この鎮守府に着任して、いくらかの月日が経った。

当初は不安だらけだったが、周りの尽力と私の努力と人柄により、ある程度の位置に付くことは出来たようである。

昼間の演習を終え、食堂へ向かう。

「海軍カレー、中盛でお願いします」

「分かりましたー!カレー中1!」

厨房に居るのは、間宮さんだ。

彼女は人手が足りない、この時間帯のみ食堂を手伝っているらしい。

しばらくして、注文の品が届いた。

「吹雪さんじゃないですか。演習は終わったのですか?」

「はい!でも、私だけ被弾率が高くて…」

山盛りどころじゃない富士山くらいに盛っているカレー(特注だろうか)をさも平然と平らげているのは赤城先輩だ。

その細身の体からは想像がつかないくらい食べている。

先輩と呼んでるのは、精神的な面で尊敬できる人だからだ。扶桑先輩からは戦術とプライドの保ち方。

「それで神通さんに怒られてしまいまして…はは…」

「彼女は厳しいですからね。その分自分にも厳しいみたいですよ」

いつの間にかカレーは半分までに減っていた。

(凄い食べっぷりだなぁ…)

「吹雪さん。新人…と言ってももう何か月もたつあなたに言っておきますが、妙な真似だけはしないで下さいね?」

「妙な真似…?」

はて、なんだろうかと思っていると赤城の口から答えが出た。

「伊58と名もなき艦隊による鎮守府クーデターです」

歴史的なニュースとなったものだ。

と言っても今と比べて、鎮守府内は穏やかであり決してそのような事は起こるはずもないだろう。

卯月「カフェで一つのパフェを食べさせあってもらうぴょん!」

長月「な...!そんな恥ずかしいこと出来るか!」

卯月「でも勝者はうーちゃん。敗者は二人っぴょん。拒否権はない!びしっ!」

菊月「ぐ...司令官!司令官はそんなことさせないよな!?」

分かりやすく二人に指をさす卯月に意地でもやりなくない菊月は敬愛する司令官に助けを求めようとする。が...

提督「買ってきたぞ。これで良いのか?」

長月&菊月「裏切ったな司令かーーん!!!」

これ以上ないほど言葉がハモった瞬間である。

卯月「さぁさぁ、早くはじめるっぴょん!」

皐月「いいなー、ねぇ司令官僕達の分は?」

提督「お金あげるから好きなのをかって来なさい」

文月「わ〜い♪」

弥生「どれ、食べようかな...」

騒がしい向こうの団体を他所に長月と菊月は対面して座っている。もちろん、正面にはパフェがある。

菊月「ぐぬぬ...こ、こうなったら早く終わらせるぞ」

長月「あぁ...」

そう言い、菊月はパフェをスプーンでひとすくいし長月の方へと向ける。

菊月「あ...あーん...///」

菊月の肌は白い。そのため柔らかい肌が分かりやすいほどに紅潮しているのが見てとれる。

それを見た長月は思わず止まってしまう。

菊月「おい!早くしろ!は、恥ずかしいんだ!///」

長月「あ、あぁ///」

急かすような菊月の声にはっとし、パフェを頂く。それはどこまでも甘く、少しすっぱかった。

改善された。艦娘と提督の横暴はもう無いはずだ。

私は、そう信じている。

「そんな事するはずないじゃないですか」

「それなら良かったです♪では、吹雪さん、私はこれで」

「お疲れ様です!赤城先輩!」

敬礼して見送った。

そして食事を食べ終え、部屋へと戻る。

「吹雪ちゃん!お帰り~」

「今日は暇っぽい!」

同室のルームメイトである夕立と睦月だ。

特に後者は、姉妹を失ってしばらく動けそうになかったらしい。

その姿はあんまりにも可哀そうだったので、慰めてやったが。

「そう言えば…何か聞こえない?」

「外を見ればわかるにゃしい」

窓を見る。

人の集まり。手に何か書かれたプラカードを持っている。

書いてあることからおおよそが理解できた。

「…デモ隊」

「そうっぽい!最近うるさくてお昼寝も出来ないよー」

明らかにそうでしょう、と言いたくなったが彼女の口癖だ。言ってもしょうがない。

「私の時はいなかったのに…どうしてだろ?」

「あのクーデターから活発になったってテレビで言ってたよ、吹雪ちゃん」

「そうなんだ…」

国を護る事、ひいては人を護る事が艦娘の使命だ。

だからと言って、私物化したり捨てたりするのは以ての外であると世界中の人々に認識させたのが『あのクーデター』である。

上の髭です。
他者様のスレに誤爆してしまい、誠に申し訳ございません...

それぞれに考えがあり、どれが正しいかなんては誰しも知らない。

けれども、考えを広めることは誰にでも出来る。

鎮守府と言う世界は狭い様で、広い。

世界は大きく変わった。

そう、知らぬ間に大きく。

私は、机に座り教科書を開く。

ノートと鉛筆、消しゴムを広げる。

明日は、宿題提出日のはずだ。今のうちにやっておこう。

「あ!明日宿題の提出日だったぽい!睦月ちゃんー!答え見せてー!」

「駄目だよ!自分でやるから見に着くんだよ、夕立ちゃん!」

「睦月ちゃんの意見に賛成だよ!ほら、分からない所なら教えてあげるから!」

「っぽい~…」

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何とかして、宿題を終えた。気づいたら夜だ。

「んー…明日は学校で実践授業らしいよ?」

「何の?」

間延びした声で夕立は言った。

「えーとね、航空戦における回避と攻撃方法…の実践っぽい」

「航空戦!?今の装備で大丈夫かなぁ…」

「本番でどうにかするしかないよ…吹雪ちゃん」

私達は明かりを落とした。

それぞれの寝床に着き、適当に雑談した後眠りについた。

おお、前作読んでたぜ

期待

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「夜戦だ!やっせんー!」

「姉さん、静かに!」

神通と川内、那珂は提督に頼まれたあることをしている最中だ。

「2人とも、目標来たよー」

今居る位置は、ここから100km内の場所。

「じゃあもう一度作戦内容の説明だよ」

2人はうなずく。

「開始時刻はマルイチマルマル。目標は…この人」

「…過激派団体の幹部ですね姉さん」

「そう。だから、これで片付ける」

懐から出したのは漏れた街灯に照らされ、鈍く光る銃。

「12糎拳銃…艦娘用の銃ですね」

「私達も持っているよねー?」

神通、那珂も取り出した。

「そうだね。じゃ、行こうか『サムライ』、『ゲイシャ』」

少女たちは、銃を取り出し、常夜に走り出す。

銃声が、木霊した。


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「ふわぁぁ…おはよう…睦月ちゃん、夕立ちゃん」

朝の光が眩しくて、起き上がる。

ある意味で抜錨しているのかもしれない。

「月曜日はやだー…ずっと日曜日がいいっぽいー…」

「バカな事言ってないで、布団畳んでご飯食べるよ!」

そう言えば前作登場艦娘の内、秋津洲が実装されたんだなぁ…(´ω`)シミジミ

睦月が夕立にため息交じりで言い放った。

夕立もしぶしぶであるが、向かっていったようである。

(授業頑張らないと…皆に認めてもらえないしね)

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朝食を終え、教室へ移動ののち教科書を机に入れる。暇つぶしに気まぐれで買った新聞を読む(あるのは青葉が作ったある程度検閲された新聞のみである)

三文記事や要点がつかめない長ったらしい毒にもならない社説を読んでいると、小さな記事が目に着いた。

(…死亡事故、ですか)

平和団体は勿論、中には艦娘解放や深海棲艦との対話をと謳った連中がここの所増えてきている…気がする。

外の事はなるべく最小限に扱っている。

これもクーデターが起きたから故だろうか。

(車体に戦車砲のように開いていた、ですか)

さらに見ていくと、死体も同様だったと書いてある。

詳しいことまでは載っていない様だ。

予鈴が鳴った。

新聞を急いでカバンに仕舞い、教科書とノート、筆箱を取り出す。

担任である足柄が来ていつも通りの授業が始まる。


昼食をはさみ、眠くなってくる時間に航空戦の実践は行われた。

一航戦の先輩たちが模擬用の艦載機を放つ。

ユスリカの様に動き回る艦載機に私は、たじろいでしまった。

「うわっ!」

左腕に被弾した。

(落ち着いて…落ち着けば落とせるはず…)

「そこ!」

主砲を上へ放つ。すると、2,3機が落ち葉のように海へと向かっていった。

(やった!)

その日は、左腕だけの被弾のみで今回の優秀者として足柄先生や一航戦の先輩たちに褒められた。

(赤城先輩に褒められた~♪)

上機嫌でお風呂に入り、上機嫌で自分の部屋へと向かう。

「おかえりー。今日は良かったみたいだね!」

睦月の指には煙草が挟まっている。

くつろぐスペースにマッチと携帯灰皿、弓矢が描かれた小さな箱。ホープと言う煙草である。

「煙草吸っているんだ、睦月ちゃん」

「そうにゃしい~。たまに吸うと落ち着くんだぁ」

開けられた窓から煙がゆったりと溶けてゆくように流れている。

ふぅー、と一飲みした後私の方へと向き「これ、皆には内緒だよ?」とはにかむような顔で言った。

夕立もこれは知っていたらしく「別にいいよ。私も少ししてるし」と言い、箱を見せた。

吸っているのはしんせいの様だ。

「たまに吸うからいいんだよねー。あ、この事も内緒だよ?」

案外ワルですね、と私は気怠そうに言い、今日の出来事を反芻し寝床へと着いた。


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「今日ユー達に集まってもらったのは他でもないネ!」

司令部地下室。別名『開かずの間』にて行われていた。

「それで、私たちに何の用?金剛さん」

「もう寝る時間なのですが…」

「ふわぁぁ…那珂ちゃん眠ーい…」

アークロイヤルパラダイスティーに火をつける。

甘い紅茶の匂いが部屋を包み込む。

「簡単ネー。先日川内達にやらせたあの事についての話デース」

一服した後、口を荒々しく言う。

「撃ち漏らしたのが一人…居たネ。何で…何でキルしそこねたんデスカ!?」

「他に居たのか!?」

「それは後から入ってきた事…でも、次からは…気を付けないとユー達がここから追放されるネ…」

川内はヘラヘラしながら箱から煙草を取り出し、火をつけた。

「別にいいじゃん。それに…情報、違ってたよ?金剛さん」

ふぅー、と彼女の顔面に煙を吐く。

「アンタらの問題だろ。ちゃんと調べてこいって霧島の姉さんに言っておいて下さい。では私たちはこれで」

バタン、と扉が閉まる。

「mother fucker!」

煙草を床に落として何度も強く踏みつけた。

今回はここまでです。

勢いとノリは重視しますよ!

何か問題点があれば、言って下さるとありがたいです。


>>7
間違いは誰にでもあるのです。気にしてませんよ

「っはー!」

夕方。授業が終わった後に自己鍛錬をする。

それを終えての、一杯だ。

駆逐艦でも酒は飲める。酒保にはビールや日本酒など多くのものを取り揃えている。

「吹雪ちゃんはお酒が好きなの?」

「終わった後のビールは最高だよ!睦月ちゃんと夕立ちゃんも、飲む?」

「飲むっぽい!」

「私はいいや」

冷蔵庫から、買ってきたビールを夕立と自分の分を、取り出す。

ポン、と心地の良い音を出す。

キリンビール。吹雪やみんながよく飲むものだ。

「美味いっぽいー!」

さらに、煙草を取り出し、火を付け始めた。

数杯飲み、夕立は酔ってきたのか話始める。

「吹雪ちゃん…提督さんの事どう思ってる?」

考えた事が無かった。

「考えた事無いや…夕立ちゃんは?」

「いい人だよね!」

即答された。迷いが無い。

「睦月ちゃんはどう?」

「そうだね、夕立ちゃんと同じだよ!」

可もなく不可もなくな答え。

ピンポンパンポーン…


(チャイム?こんな時間に何だろ?)

ノイズが少し聞こえた後、長門秘書艦の声が聞こえた。

『夕立と睦月は、至急執務室へ来るように。繰り返す、夕立と睦月は、至急---』

「ごめんにゃしい…呼ばれたみたい」

「行かないと…こんな時だからアレっぽい…」

2人は申し訳なさそうな、後ろめたそうな感じで、執務室へ向かっていった。


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執務室には、提督と呼ばれる踏ん反りかえる者と隣に着きそう長門、煙草を加えて待つ金剛と茶を飲んでいる赤城と加賀、眠そうにしている那珂と「しゃきっとして下さい、那珂姉さん」と淡々と言う神通、少し興奮気味の川内、虫の居所が悪そうな顔をする瑞鶴がいる。

「遅れました!」

「ごめんなさいっぽい!」

提督はそれを無視し、本題を話し始めた。

「よく来た。話とは、次の『目標』についてだが…こいつらだ」

長門が各自に資料を配る。

「近々とある宗教団体…に属するNPOを完膚なきまで潰してほしいとの事だ」

「宗教団体…益々怪しいですね」

「赤城さんの言う通りです」

夕立と睦月は、どう言う事と言う顔をしていた。

それを察した長門が説明をする。

「疑問に思う者もいるかもしれない。彼らは私たちの脅威になりかねない存在だ。これは大本営からの通達である」

瑞鶴と川内は、煙草に火をつけた。ラム酒の香りと甘いバニラの匂いが紅茶の香りと交る。

「…臭い」

神通は、三人の加えている物を切り裂いた。

「ひゅー…怖い怖い」

「吹かすなら外でして下さい」

彼女の腰には、日本刀が下げられている。

「神通さんが日本刀(それ)持っているなんて珍しいっぽい」

「狭い部屋でそんなの振り回すなんてクレイジー…ま、当たってないからいいですけどネ」

この部屋に漂うのは、煙と殺意だ。

「作戦は簡単だ。ただ、殺せ。徹底的にな。実行は明後日のマルマルマルマル。以上。質問がある者は今ここで言え」

「…提督、他には」

「質問も無い様だし解散。あ、銃の手入れは忘れ無い事」

それぞれがそれぞれのペースで部屋を出ていく。

「なぁ、長門。お前さんから見て吹雪はどうよ?」

いつもの気まぐれかと思い、素直な自分が持つ彼女の評価を答える。

「彼女は友人を慰め、この鎮守府の危機を何度も救った良い子です。かつ成績や交友関係も良好…ですね」

その時、新しいおもちゃを見つけたように彼は、にんまりとした顔で言った。

「彼女もここに配属させようか」

「…正気ですか」

「そりゃな。考えなしじゃないぜ、長門ぉー…」

相変わらず考えが読めない奴だと彼女は思った。

「海軍謀略部隊」と書かれた書類を眺める。

彼が何故に彼女を選んだのかは、神のみぞ知る。


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「戦争反対!」

「深海棲艦は敵じゃない!」

「艦娘を解放せよ!」


演習を終え、帰宅しようとするとデモ隊に出会った。直に見るのは初めてである。

太い字で書かれたプラカードや横断幕、さらには機械式のメガホン(正式名称は分からない)で主張していた。

「こっちが君らのためにどれだけ戦ってると思っているのやら…」

紺の帽子を深く被った白髪の少女はつぶやいた。

「あ、響さん。遠征お疲れ様です!」

「お疲れ。君は演習終わりかい?」

「そうですね。良かったら間宮に寄って行きませんか?」

「君の奢りならね」

「じゃあ良いです」

彼女は冗談さと言い、一緒に間宮へと向かった。


間宮のスイーツはこの世のものとは思えないくらい美味しい。

和菓子洋菓子問わずである(もっとも外のお菓子は不味い事が多い)

私はあんみつ、響は特製アイスを頼んだ。

しばらくしてくると、それを食べながら言う。

「遠征している時にとある船が燃えながら、沈んで行くのを見たんだ。そしたら周りには艦娘が居てね、それを見ているだけなんだよ」

「…見ているだけ?」

普通なら助けるだろう。普通なら。

「ああ。その後、海面に掃射し始めて驚いたよ。それで砲撃しようとしたら天龍さんに止められたんだ。『これはヤバいからするーしとけ』って…」

「もしかしたら、深海棲艦なのかもしれませんね。潜水艦でも仕留めようとしたんだと思いますよ」

「だと良いけどね…」

煮え切らない言い方に疑問を持ったがめんどくさそうなので、それ以上聞くことは止めた。

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しばらく、自室で勉強をしていると呼び出しのアナウンスがかかった。

『吹雪、吹雪。大至急執務室に来るように。繰り返す、吹雪、吹雪---』

(何かやらかしたのでしょうか…?)

そんな疑問を抱きつつ、私は執務室へと向かった。


執務室に居るのは、提督だけだ。

「失礼します!司令官、何の御用でしょうか?」

「あぁ、固くならなくてもいい。ただ、質問に答えて欲しい。いいね?」

呼び出して置いて呆気にとられる反面、返しによっては首かもと思ってしまう。

「もしだ…もし大切な人…友人でもいいが、危機にさらされている時、躊躇なく敵を撃てるか?」

簡単なようで難しい問いだ。考えと恐怖から声が出にくくなっている。

「躊躇なく…ですか?」

「ああ」

「…撃ちます。撃てます!」

それが聞きたかったのだ!と言わんばかりの顔をし、こう告げる。


「吹雪、君を本日付けで『海軍謀略部隊』への配属を命ずる。頑張りたまえよ」

「はいっ!司令官!」

よく分からないが、司令官に褒められた。期待されている。

そのことで、頭と心は一杯だった。

「では、場所を案内しよう。長門に付いて行きたまえ」

「行くぞ、吹雪」

事務的な口調で言い放った。

怪談を降り、関係者以外立ち入り禁止と書かれた鉄製の扉を開ける。

中に居たのは---


「睦月ちゃん!?夕立ちゃん!?それに赤城先輩や加賀先輩も…」

「ついに配属になりましたカー、ブッキー!」

「金剛さんも!?」

鎮守府じゃ指折りの実力者達が何故こんな地下に集まっているのだろう。

「失礼する」

長門は混乱している吹雪を無視し、出て行く。

「特型駆逐艦も出世したんだね-!嬉しいー!」

「川内さん…あの…」

「姉さん!」

「ごめんな。じゃ、新歓始めますか!」

見知った人たちが、自分のために祝ってくれる。

これほど嬉しいことは無い。

「吹雪ちゃんと睦月ちゃん、夕立ちゃんは明日から別のメニューを課します」

「別メニュー?」

すると、一斉に銃を取り出した。

「…私たちは海軍、いや提督直属の兵隊(アーミー)…それが私達『海軍謀略部隊』」

「…は?」

意味が解らない。なんだ、何をするんだ。何をすればいいと考えてしまう。

その意味を睦月が答えた。

「『海軍謀略部隊』は分かりやすく言うとね…邪魔になる人間を消すんだよ」

「消す…?」

文字通りの意味だろう。消すと言う意味は…

「要は殺すって事にゃしい」

「冗談…だよね…?」

現状をなおも受け入れない新入りに、那珂が冷たく浴びせた。

「べっつにいいじゃん!邪魔するって事は、その分不利になるって事だよぉ?だったら、殺した方がいいよね」

ゾワリとした。

本心だ。ここの人たちの本心だ。

「私…あの…えっと…」

「吹雪さん、戸惑うのは分かります。でも、受け入れないといけませんよ。私もそうして来たのですから」

狂ってる、とは言いだせそうにない雰囲気だ。

私は、それを受け入れざる負えなかった。

「…わかりました」

翌日、私は銃を受け取った。

4式自動小銃(艦娘型)と12糎拳銃。

威力は小銃も拳銃も変わらなかった。

(どちらもひき肉にするのは簡単ですね)

岩と分厚い金属に大きな穴が開いた。

新聞で見た物は、おそらくこれが起因するのだろう。

「特型駆逐艦、調子はどう?」

「まぁ、何とか」

「そっか。これ終わったら15分休憩だよ。その後は、睦月たちと合流して、神通から基本的な動きの説明があるからね」

「了解です!」

私は、最悪だと思った。

こんな威力のある武器を、人に向けて撃つのだ。

革命が起きて、改善されたとしても、やはり変わらない。

(私は…)

少女の中で、何かの意志が燻ろうとしていた。

(私は---)


---この最悪な鎮守府と最悪の提督に終わりを告げさせてやる。



孤独な戦いが、始まろうとも知らず、少女は拳銃を握り、天へと放った。

今回はここまでです。

これを後2日で終わらせる予定です

ここまでで、悪いところがあれば教えて下さると助かります

人が居なさすぎて泣けてくるずい…

つまらないからしょうがないずい

前作って大半がオリキャラだったやつか
普通につまらんかった

今の所問題はないので、どうぞ続けてくれ

問題ありまくりずい

うーん…とりあえず続けるずい

続けなくていいずい
依頼出して落とすずい

「吹雪さん、あなたが持つ武器の性能(スペック)は知ってますか?」

昼食を食べ終わり、微睡む時に赤城が訪ねてきた。

「い、いえ」

無意識に背筋を伸ばし、敬礼する。

「そう固くならずに楽にしてもいいですよ。支給されたのは4式自動小銃と12糎拳銃…で合ってますか?」

大穴を開けたのだから覚えていない方がおかしい。

「そうですね。それで合ってます」

「まず4式38式から。元々は7.7mm機関銃をベースに艦娘(わたしたち)仕様に改造した人間には扱う事が難しい銃です。12糎は12.7mmですけど」

確か、機関銃は開発でよく出るものだ。

「機関銃は正直、使い道ないですから…陸上で使えば、威力はかなり有りますよ」

「それで…何で説明を?」

「あなたは、まず自分が何をするかは分かっていますか?」

小銃と拳銃。何年か前に見た映画であれば、突撃兵が使っていたはずだ。

「突撃…でしょうか?」

一瞬、分かってないなこいつ、と言った雰囲気を出した。気を損ねた様だ。

「半分正解です。突撃は勿論、陸上での戦闘も行ってもらいます。人間の中には武装してくるのもいますからね」

いつもの顔に戻った。どうやら、気分を損ねたわけじゃない様だ。

(良かったー…)

「私達に支給されるのは、主に3つ。拳銃、ナイフ、手榴弾。次に役割についてですが、実行班と補助班、諜報班の3つ。私は2番目ですね」

「はぁ…私は赤城さんと同じ班何ですか?」

「吹雪さんは確か…実行班、だったはずです。小銃か狙撃銃を貰ったはずだと」

「小銃を貰いましたが…」

「なら実行班ですね。私は38式を支給されましたから」

そもそも、海がメインになる艦娘にとって陸軍の武器は必要ない。

なのに使うのは…消すためだろう。

ふと、疑問が沸いた。

「…赤城先輩は殺すことに抵抗は無いんですか?」

う~ん、と思案するようなしぐさの後、こう言った。

「考えたこともありませんでしたね。でも、提督の命令ですから何か意図があるのだと思います」

提督の命令。この一言に尽きると言う事だろうか。

逆らう訳にはいかない、と言う事だろう。

「今夜はもう二人と会ってもらいます。と、言ってももう来るころだと思いますよ」

「あれ?赤城さん、それに吹雪じゃん。どったの?」

カーキ色のセーラー。黒髪に三つ編みと茶色のストレート。北上と大井だ。

仲良さそうに、腕組みしてる

「お二人は彼女が『部隊』に入ったことは知ってますか?」

嫌そうな顔をし、「昨日金剛から聞いたわよ。ほら、北上さんとのデートを邪魔しないで!」

しっしっ、と左手を揺らしながら北上と共に去っていった。

「あはは…」

「そう言えば、今回は吹雪さんに実戦を…と神通さんが言ってましたよ。健闘を祈っています」

「はい!」

(何で…何で「駄目」だって言えなかったの私…)

体を震わせ、唇を少し強く噛んだ。


実戦は、案外簡単な物だった。

茂みから、川内さんが覗く。見えるのは古びた煉瓦創りの倉庫と小型ボート数隻だ。

「作戦をもう一度確認するよー。特に吹雪と夕立はちゃんと聞いておくように」

今回の作戦は、違法に資材を敵に売り払う組織の始末だ。ここから数十キロ先にあるアジトを潰す。

小銃を持つ私と夕立、睦月は敵をかく乱する。その後死角から川内さんと神通さんが攻撃すると言うものだった。

銃を腕が少しつりそうだ。夕立と睦月の方を見るが、私と同じ気持ちの様だ。しかし、ここでミスをしたら恐ろしいことが待っているかもしれない。

「敵は数は少ないけど、機関銃で武装した奴らだ。この時間なら、幸いにも見張りだけ。停泊しているボートは私達が魚雷でやるからね。バレたら作戦は即終了。じゃあ、作戦開始!」

出撃。

一気に駆け抜け、銃を放つ。

「何だこいつら!撃て!撃て!」

「こ、来ないで下さい!」

パパパと軽快な音が私の筒から出る。

「こいつ…!がはぁ…」

「終わったぽいー…」

ふと、我に返り、辺りを見渡す。すると、靴下に何か付いている。

どす黒い物斑点がが大小付いていた。

今日はここまで

これ前作の後の話か?

>>33
ですよ

数メートル先にある海には、川内さんと神通さんがいた。

どうやら、船を壊し終えたようだ。

「さてと、迎えが来てるみたいだから帰るよー。ま、後はレズコンビが後片付けはしてくれるでしょ」

「死体は…」

「ぅ…う…」

息を吹き返した男に、神通は近づく。

(助けるのでしょうか…?)

しかし、彼女は懐から銃取り出し、躊躇なく数回打ち抜いた。

「行きましょうか」

月明りで照らされるその笑みはどことなく悪魔に見えるのだった。


白いワゴン車。車種はハイエースの様だ。

それに機械的に乗り込み、ドアを閉める。

少し揺れた後、前へと動き始めた。少し後に川内は煙草に火をつける。

「特型駆逐艦、初任務はどうだった?」

「えっと…あまり実力が…」

「初戦はそんな感じだと思うよ。見てても吹雪にもちゃんと『素質』あるんだなって思ったしね」

煙が車内に漂う。

「うまいくらいに敵を倒してたよー!くっうー!私でも初めてはミスってばっかだったのになー!」

「確かに、そうですね。銃を握った素人がただ運よく勝てただけです」

半ば錯乱していた吹雪だが、運よく敵の胴体に数発と頭に数発、足にも数発入れていた。

持つ銃の威力からすれば相手はもうミンチに等しいだろう。

「もー!那珂ちゃんも見たかったんだけどー」

「前見ろ、前。帰ったら眠れないくらいに聞かせてやるからさ」

夜は、まだ明けそうにない。


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「ふわぁぁ~…」

壁にかけてある時計を見ると、起床時刻丁度だ。

(昨日あんな事があったのに起きれるなんてなぁ)

少し笑ってしまう。

「おはよーっぽいー…」

「おはようにゃしい」

何事も無かったかの様に教室へ行く支度をしていた。

「昨日は…」

「ん?あの事?吹雪ちゃん凄かったね!こう、ババーッって倒してたもん!夕立にはコマンドー的な事は出来ないっぽい!」

「そうかな…?」

「そうだよ!」

強く言われてしまった。

「海とじゃ違ったでしょ?私も最初は慣れなくてさー」

「あ!それ私も思った!」

「ぽいぽーい!」

3人の意外な共通点がみつかり、それを話題にしながら教室へと向かった。


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青い艦娘と赤い艦娘、緑の艦娘が銃を構え、ひたすら撃っていた。

木のストックに偏光性のスコープが付いた38式狙撃銃を空母である加賀、赤城、瑞鶴が所持している。

弾の斬る音、排莢とリロードを繰り返す音しか聞こえない。

弾薬が空になるのを合図に、訓練を終了した。

今回はここまで

おつー

鎮守府には、やや大きめの図書館があり、そこで調べものや読書などが出来る。

そこで適当な小説を取り、適当に読む。演習が無い日はそうして過ごしている事が多い。

(…内容が入ってこない)

それを元に在った棚に戻すと、吹雪は部屋へと戻っていった。

(久々に吸おうかな)

そう思い、途中で、煙草とマッチを買った。

部屋には夕立が煙草を呑んでいる最中だった。

「あ、吹雪ちゃん!」

急いで火を消した。

灰皿を見る限り、かなり吸っていたようだ。

「久々だから一箱吸っちゃったぽい…あはは」

「私も吸うしいいよ」

紺色の小さな箱から、取り出し火をつける。

久々の味が、口いっぱいに広がる。

「吸うんだ、なんか意外ー」

「前の所で、覚えたからね」

私は酒も飲むし煙草も吸う。

付き合いとかそんなのを抜きにだ。

一飲みした後、少し聞きたいことが頭に浮かんだ。

「ねぇ、夕立ちゃん。人を殺すのって…ダメ…だよね…」

「そんなの当たり前っぽい。どうして?」

「私たちは銃を握っているんだよ?なのに…」

「ふーん」とどうでも良さそうに言った。

「命令だしね。それに…今も変わらない気がするっぽい」

何が、と言う前に川内さん達に呼ばれてしまった。


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司令部開かずの間に吹雪達は集められた。

「ヘーイ!ニューネイビー!ここには慣れたデスカー?」

「はぁ、一応」

金剛はいつもの調子で、説明をし始める。

「今回は、この鎮守府によくデモりにくるクソッ垂れをkillして欲しいデース!」

数日前に来たあの五月蠅い集団の事だろう。

「提督としては、何度も注意していますが、我慢の限界みたいデスネー。そこで、そのデモ隊が呉に向かうバスを襲撃してもらいマース!」

「しゅ、襲撃ですか…」

「今回の命令は、トンネル内にバスが入り次第、封鎖。後に爆殺する。生き残りを実行班で始末するんだ」

長門が補足説明をする。大分この作戦の趣旨と意図が見えて来た。

「実行班はバスの背後を付けてもらいマース。封鎖は私たち諜報班に任せてほしいデス!」

「信頼できるのかねぇ」

川内が金剛に嫌味を放ったが、それを無視した。

「すでに北上と大井のcoupleが仕掛け終えてイマース。作戦開始時刻はヒトフタマルマル。では検討を祈ってるネー」


「赤城先輩!」

狙撃銃をトランクに仕舞う赤城達に会った。

どうやら、撃ち漏らした時の要員の様だ。

「吹雪さん、あなたの活躍を聞いてますよ。でも、これで慢心してはいけません。慢心するのはプロとして失格ですから」

袋にある、おにぎり数個を持った今では説得力半減だ。

車に乗り込み、銃をそばに立てかける。

どうやら向かう所はサービスエリアらしい。

高速に乗り、しばらく呆ける。

那珂は運転に集中、川内は煙草を吸い、神通は瞑想している。睦月と夕立は少し仮眠を取っている様だ。

ザザ…と言うノイズの後、先ほどの作戦を伝える声が聞こえた。

『作戦の確認デース!ヒトフタマルマルに作戦start!手順はバスが動くのと同時に、実行班のワゴンを動かすネー』

『トンネルに入った後、封鎖。同時に狙撃班が配置シマース。真ん中に来たら爆破。生き残りは皆殺しデース!ではgood luck!』

車が止まった。どうやらここで、待ち伏せをするようだ。動くまで後20分程ある。

「しばらく休憩ー。でも、5分前には集合だよ?それと、トイレは済ましておいてね」

そう言うと、ドアが開き、降りてゆく。

夕立と睦月は起きそうにない。

「んー!っはあ!」

長く乗っていたせいか、少し体が硬くなってた…気がする。

久しく見なかった外の世界だ。

(コンビニでコーヒーでも買ってこようかな)

雑誌を適当に読み、コーヒーを6つ買った後、車へと戻って行った。


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トンネルに入る手前に仮眠を取っていた彼女たちに、吹雪はコーヒーを開け、残りを夕立たちにを差し入れる。

飲むと、少しだけ目が覚めた気がする。

作戦は、思いのほか進んだ。

バスの後ろへある程度の距離を保ちながら、進んでゆき、トンネルへと入る。

その後、警察に扮した者が封鎖する。

これで私達とターゲットだけになった。

車間距離を一気に開ける。すると、スピーカーから声が。

このダウナー系ボイスは北上さんの声だ。

『爆破5秒前ー…4、3、2、1…爆破』


目の前のバスが大破炎上した。

「さ、生きてる奴を生かせるわけにはいかないよー!」

戸が開く。銃を取る。


「暁の水平線に勝利を刻み込もう!皆!」

今回はここまででち

おつ

夕焼けのような光の中を進み、炎上したバスをぐるりと回る。

(生きてる人はいないみたいですね…)

「特型駆逐艦!死にぞこないが数人居たぞ!幹部は生かしておいたから、バスに全部の弾丸ぶち込んでおいて!」

「了解です」

構え、四方八方に撃ちこむ。

すると、ますます燃え上がる。

それは大切な何かまで燃やしている様にも見えた。

「皆ー、連絡したから撤収するよー」

しばらくすると、別のワゴン車が来た。

「夕立と睦月はこれに乗って。神通は中に在る中型バイクで前を移動。あ、特型駆逐艦は私と同行してね」

ワゴンに戻ると血まみれで縛られた男性が居た。顔つきからして中年だろうか。

応急処置が施してあるが、火傷の傷だけは隠しきれていない。

「お前か…お前らが…」

「私だってこんなことしたくなんですけどね…」

「抗わないのか…君は」

「…黙らないと撃ちますよ?」

そう言い、銃を突きつけると男は黙った。


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朝日が眩しく輝く海。

任務が終わり、煙草をふかしていると神通さんに会った。

腰には刀を携えている。急いで、煙草を消した。

「神通さん、こんにちは」

「はい。ちょうどやることを終えたので、ここへ」

今の姿は普段凛々しい彼女をさらに凛々しく見せている気がした。

「やる事…ですか」

「はい。たまに私もここに寄るんです。任務終った後とかにですが」

刀を抜き、それを向ける。

色々な文様が浮き上がる。桜のようなそんな感じがした。

「綺麗な刀…」

「これは、いらなくなった資材を再利用してして作った物です。名前は特には決めてません。何でも斬る事…は出来ませんが、少なくとも軽く振るだけで大和型の装甲に傷を入れられる代物ですよ」

この刀、それだけではないどこかに惹かれる要素がある。

吹雪はそう感じた。


授業はいつも通りに受け、その後は射撃訓練。

歩いているとどこから声が聞こえた。

発生源は…工廠裏にある廃材置き場。

元々は艦娘を開発する所だったが、設備が古いため廃材用の倉庫になっており、基本立ち寄らない場所だ。

辺りを探すが誰もいない。クレーン下から声が聞こえる。どうやら、この下からの様だ。

扉を開けるとそこでは、狂喜乱舞と言えるほどの盛り上がりを見せていた。

床には、水が張られ、それをギャラリーは囲んでいる。



艤装を付け、本物の弾でやる殺し合い。


それを、同じ艦娘が見て楽しんでいるのだ。

「そこです!神通さん!とぉぉおぉ!」

「千歳!その軽巡をスクラップにしちまえかも!」

「神!今月分の給料の半分を賭けているんだ。この僕を失望させないでくれよ?」

狂気的な盛り上がり様。

「ハラショー、君は初めての様だね」

深く帽子をかぶる少女。

「響さん…ですよね…?」

「ああ。これを見て…どう思った?」

「…最悪ですね」

「そう。ここじゃ煙草も酒も自由だ。思う存分してもいい」

彼女の手元には、ウォッカが。

「酒保から色々くすねたのが多いから、飲み放題なんだ。しかも、おつまみもね。どれもセルフだけどね」

「じゃあ私も、キリンビールの缶3つ取ってきます。少しだけ見させて貰うので」

「最低掛け金は給料の三分の一だ。それを賭けてからだよ」

「…クソですね」

「だろ?」

今回はここまで


二日以上経ってた…皆様、もうしばらくお付き合い下さい…

「これは、いらなくなった資材を再利用してして作った物です。名前は特には決めてません。何でも斬る事…は出来ませんが、少なくとも軽く振るだけで大和型の装甲に傷を入れられる代物ですよ」

この刀、それだけではないどこかに惹かれる要素がある。

吹雪はそう感じた。


授業はいつも通りに受け、その後は射撃訓練。

歩いているとどこから声が聞こえた。

発生源は…工廠裏にある廃材置き場。

元々は艦娘を開発する所だったが、設備が古いため廃材用の倉庫になっており、基本立ち寄らない場所だ。

辺りを探すが誰もいない。クレーン下から声が聞こえる。どうやら、この下からの様だ。

扉を開けるとそこでは、狂喜乱舞と言えるほどの盛り上がりを見せていた。

床には、水が張られ、それをギャラリーは囲んでいる。



艤装を付け、本物の弾でやる殺し合い。


それを、同じ艦娘が見て楽しんでいるのだ。

「そこです!神通さん!とぉぉおぉ!」

「千歳!その軽巡をスクラップにしちまえかも!」

「神通!今月分の給料の半分を賭けているんだ。この僕を失望させないでくれよ?」

「軽巡風情なんて穴あきにしてしまいーや!千歳ぇ!」

狂気的な盛り上がり様。

「ハラショー、君は初めての様だね」

深く帽子をかぶる少女。

「響さん…ですよね…?」

「ああ。これを見て…どう思った?」

「…最悪ですね」

「そう。ここじゃ煙草も酒も自由だ。思う存分してもいい」

彼女の手元には、ウォッカが。

「酒保から色々くすねたのが多いから、飲み放題なんだ。しかも、おつまみもね。どれもセルフだけどね」

「じゃあ私も、キリンビールの缶3つ取ってきます。少しだけ見させて貰うので」

「最低掛け金は給料の三分の一だ。それを賭けてからだよ」

「…クソですね」

「だろ?」

そんな冗談を言いながら賭け札を受け取り、缶を開け、試合を見る。

「それでどうだい、部隊の調子とやらは」

「知っていたんですね…。正直慣れましたよ…あはは」

「銃を振るう事に抵抗が、って事かな」

「そうですね。どこかで迷いがあるのかなと」

響はウォッカを口につけた後、真剣な眼差しで言った。

「私達は腐っても兵器だ。本質は敵を殺すことさ。人を殺すのに何で抵抗なんて持つ必要があるんだい?軍艦時代(ぜんせ)じゃ殺すことに抵抗はなかったはずだ」

「ですけど…今と昔じゃ違いすぎますよ!」

「じゃあこの掃き溜めにわざわざ来た理由は?まさか、偶然とか言わないだろうね?」

「…そのまさかです」

それを聞いた瞬間、呆れと驚きが混じったような顔をした。

「いいかい?そんなどこぞのアホが書いた小説みたいな展開なんて誰が信じられると思う?」

「声が薄っすら聞こえて探してたらここへ…本当です」

「…ッはは!傑作だよ!で、君はどうして私の所に来たんだい?吹雪」

私は、今思っている事を全て話した。かなりぐちゃぐちゃだったが、彼女はそれでもいくつか質問しながら聞いてくれた。

「そう…なんだね。ここじゃなんだし、居酒屋鳳翔で明日落ち合おう。君が変えたいと思うならね」

そう言うと彼女は静かに去っていった。

試合場を見ていると決着はついたらしい。

(神通さんの勝ちだ…)

相手の千歳さんは甲板が炎上、真っ二つに折れており、足が片方無くなっていた。

神通さんの砲撃と魚雷でやられたのかもしれない。

皮肉にも負けて欲しいと思い、ベットしたのが勝つと言う結果になってしまった。

(勝ったし、帰りますか)

勝ったので、それを受け取りに受付へ。

帰ってきたのは予想よりも少なかったがまあいいだろうと思い、自室へと戻って行った。

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執務室では布団にて一試合終えた金剛と提督が話していた。

「なぁ、金剛…お前が居てくれてよかったよ。じゃなかったら私兵(プライベートアーミー)なんて持てなかったからよぉ…」

「えへへ…提督のためなら、何でもするネー…」

(ったく構わねェとすぐ拗ねるメンドクサイ女…まぁ、国から「害をなす奴は艦娘を使って消せ」って言われてるからな…)

(…艦娘を陸上でも動かす計画、か。これじゃあまた叩かれるかね)

しかし、強くてカワイイ子を自分の思う様に使えると考えると、笑みがこぼれる。

性処理にも使える、従順で最高の艦娘(どうぐ)であると。

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「今回の作戦は大規模になる。護衛任務だが、まさかのあの大型団体だ」

長門秘書艦がそう告げる。きっとトンネルで消したデモ隊の上の人たちなのだろうか。

「つまりさー、そいつらを沈めるって事ー?」

いつものアンニュイ感じで北上は確認を取る。

「そうですネー、なにせ大型極左団体デース!deadしてもいいと思いマース」

「まぁ、その…ねぇ…今度ばかりは過激すぎない?」

「提督が言ったことですよ。きっと私たちのためなのだと思います」

北上の言葉を神通が強く否定する。

「今回ばかりは北上さんと同意見です!さすがにやり過ぎです!」

これに私は便乗した。

「そうですよ!その通りです!」

やいのやいのと騒がしくなる。

パン!と音が聞こえた。

金剛さんの手には私達と同じ物が握られていた。

「…作戦黙って聞くくらい出来ませんカ?次したらガチで頭ぶち抜きマース」

舌打ちが聞こえたが、それ以降は誰も作戦の説明を終えるまで、誰も言わなかった。

今回はここまでずい

さっさとエタるずい

こういう雰囲気好きよ

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案内されたのは個室だった。

吹雪が来たときには彼女を除き、3人揃っていた。

「君なら来るかと思ったよ、吹雪」

予見していたかの様に響は言い放つ。

「これで全員ですか?」

薄紫髪の少女があっけらかんと言う。

「そうだね。座ってくれ、吹雪」

戸を閉め、座る。

「あらあら、吹雪さんじゃない。どうしたのかしら?」

「陸奥さん…?どうしてここに?」

「さあ。どうかしらねぇ」

くすくすと笑うだけで答えてはくれなかった。

「さて、と。始めますか。『水路部』をね」

「…水路部?」

水路部とは本来、海の状態を観測・記録、天体観測を請け負っている所だ。しかし、今はそのような名称は使われていない。

「ここに居るのは、以前から変わらない提督や鎮守府や基地、泊地に対して監査を入れている人間を欺けるための諜報機関だよ」

「つまりその日だけ騙す嘘吐きさん達の集まり、と」

素直な子ですね、と薄紫髪の少女は言う。

「その前に、つまみと飲み物は注文するかい?煙草は吸っても構わないよ」

「じゃあお言葉に甘えて、清酒と枝豆。後キュウリの酢の物を」

そう言い、隅に置いてある灰皿を取り、煙草に火を付ける。

「では改めて。まずは…自己紹介でもしますか」

「響さんと陸奥さんは知ってますが、あの人は…」

「青葉です!どうぞ、よろしくぅ!」

薄紫髪の少女---青葉と言う様だ---は会った時と変わらないテンションで話す。

「私は違いますけどねー。フリーの記者ですし」

煙草を一飲みし、一体なんなの目的なのだと視線で問いかける。

「多くの鎮守府は改善を図ってきたつもりだ。しかし、実態はアレが起きても変わらなかった…」

神妙な顔をしながらそう彼女は言った。

「つまり革命が起きた後でも、提督達(かれら)は変わらなかったって訳。さらに巧妙に私物化し始めたのよ。こんな組織まで作って…」

はぁ、と陸奥が呆れ気味に言う。

「しっかし、驚きましたよ。まさかあなた達が裏切るなんて…青葉、驚きです」

「いちいちハーレムを作るしか能が無い奴の元に居てもしょうがないじゃない。それに酒も煙草も一部を除いて禁止にしたんだからね」

一部とはここの事だ。煙草や酒も無論、ここでしか飲めない。

「戦場じゃ楽しみと言えばそれだからね。しかも賭けも禁止にして、指揮もほぼ艦娘(わたし)達に丸投げだ」

「酷いですね…」

そんな事実が有ったとは、驚きだ。

「それで、指揮すれば、全滅しかけるから何度殺そうかと思ったよ…」

「ま、ここのはコネで着任(ついた)ようなものですしねぇ。そう聞いてますよ」

出るわ出るわ、提督の話。

ロリコンだとか、戦略も知らない無能とか、資金を着服してるとか、誰かを孕ませて堕(おろ)させたとか等…

「前も前ですけど、今も今ですね」

私がそう言うと「不幸だわ…なんてね」と陸奥が冗談を飛ばす。

思わず、その場にいた全員が笑ってしまった。


今回かここまでずい

「笑顔で誰しも振る舞いますけど、だからって司令官を尊敬してるわけないのに…理想に合わせるのもホント大変ですよね」

「そうそう。それよそれ!あー!こんなのだったら長門姉さんと一緒にカッコ良くて頼れる提督が居る所に異動したかったわー!」

「いやいや、そんな人なんて滅多に居ないでしょ」と青葉が突っ込んだところで、本題に入った。

「さて…現在の鎮守府に置いて司令官勢力と反勢力について話そうか」

空気が少し重くなる。

「吹雪ちゃんは、知らないだろうから言っておくわね。現在の勢力は圧倒的に提督の方が上よ。特に『海軍謀略部隊』ね。あれほど戦闘に特化したのはいないと思うわ」

「反勢力は現在は我々だけだ。だが、徐々に増やしていく予定だよ。さて、それで吹雪に問いたい…」

普段からは考えられないような鋭い目で、吹雪を見る。

「君は、今の鎮守府をどう終わらせたい?」

考える。どのように終わらすか。

「何故」終わらせるかではなく「どうやって」終わらせるか問いかけている。

暗殺か?ダメだ、根本的な解決にはならない。

ならば監禁しておくか。…ヘマすれば国賊だ。

社会的に殺すか。情報操作されれば終わりだろう。

だから、今思ったことを言葉にした。


「…方法はないですが、全部終わらせます。鎮守府(ここ)にある負の連鎖を断ち切るために」


パチパチと、拍手が起こる。

「同志吹雪。君を歓迎する」

「私もよ。あくまでも姉さんを助けるまでだけどね」

「特ダネ!特ダネ!むふふ!」

(…青葉さん、あなた別の事考えているんじゃないですか?)

そう思ってしまう吹雪であった。

その後は適当に雑談して終わった。

(案外適当ですね…)

だが、一応信頼できる仲間は出来たのであった。


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全ての講義が終わり、任務も無い時が出来た。

今なら聞けるかもしれない。

「ねぇ、睦月ちゃん、夕立ちゃん」

「なぁに?」

「どうしたの?」

「あのね…もしだけど、司令官の言う事が全部…いや、おおよそ間違っていたとしてそれを受け入れるか…って話だけど…」

2人は少し驚きを隠せないような顔をしている。

「要は間違ったことを私たちは信じて仕事(にんむ)をしているって事だよ」

「提督さんの言う事は…間違いはない気がするっぽい。だってそうでしょ?」

「それに賛成にゃしい!」

(駄目だった…)

だが、この鎮守府について分かったことは1つある。

上の命令は間違っていても絶対。例えそうでなくても、空気が隠せ、見なかった事にしろ。

そんな空気が蔓延しているのだろう。だとすれば、それは最悪だ。

どうしたらいいかと考え、まずは意識改革からかなと結論付けた。

ふと、明日は他との合同演習だったことを思い出し、寝床へと着いた。


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深夜。鎮守府から離れたとある場所にて電話している一人の少女が居た。

「あぁ、そうさ。また腐ってきたよ。最悪だ。全員が全員じゃないからね…」

「…そう言うなよ。ここ以外からの協力者の宛てはあるよ。うん。うん。じゃあ、また」

電話はツーツー、と音を発している。

少女は、ここから地下へ向かい、ある事の確認をした。

(弾薬とバケツ、資材はよし。バイク…よし。軽トラ…あるね)

それらは、もしもの時のために揃えてある物。

(かつての司令官もやるね…)

そこは、海軍の臨時司令部。敵に襲われても良いように数年前から存在する鎮守府と同様の機能を持つ。

彼が来る前に、鎮守府図面からは消している。

コンクリート製の分厚い壁。大きなクレーン。入渠施設。出撃口。

緊急脱出用の自動車まである。

(恰好の所だね…その前に協力者を募らないとね…)

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演習は大規模に行われた。

ここから違う鎮守府からと泊地からである。

今回はここまでずい

今日は眠いでち…明日書くでち

演習を終え、彼女たちはささやかな夕食会を行っていた。

参加したのは、部隊の中では私だけだったので川内さんに「裏切りそうな子は裏で消していいからね」と言われた。

今、吹雪の懐には拳銃がある。

(使わなないと良いな…)

バイキング形式の夕食会はそれなりに盛り上がっている。

やれ演習がメンドクサイだとか、提督の何が小さいくてイけなかっただの色々だ。

「吹雪じゃないか、久っしぶりぃ!」

天パ気味なショート、深雪だ。

「私の方が上なんだけどね…。それでどうしたの?」

「まぁ、調子はどうよ?慣れた?」

「それなりにはね。深雪ちゃんは?」

「まぁまぁって所だな!で、好きな人は出来たのかい?」

「はぁ!?」

素っ頓狂な声を出してしまった。

「お、おい!」

「す、すすすすす好きな人なんて…」

いない。いる訳ないのだ。

外にも気軽に出られないこの鎮守府(せかい)では到底無理な話だ。

「あはは…ま、今回ばかりは飲もうぜ!姉貴!」

「そうだね!よーし、深雪ちゃんをいじり倒しちゃうんだから!」

「ちょ!それだけは~」

束の間の楽しい時間はあっという間に流れた。

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少しふらつきながら、部屋へと戻る。

手土産に数本ビールとラムネを取ってきた。

「あ、お帰りー」

「お帰りにゃしい。吹雪ちゃんも麻雀やる?」

夕立と睦月、それにここの古株、陽炎先輩がいた。

「絶対負けないんだから!」

河を見る限り、そんなには経ってないみたいだ。

「しようかな。あ、夕立ちゃんたちは飲む?」

「飲むよ!と言うか今居る時点で飲むこと確定だよぉー!」

「じゃあ最初からやるっぽい!」

空いている所に座り、混ぜる。

(手は悪くありませんね)

「今夜は徹麻するにゃしい!」

「いや、明日も早いし、寝よ?ね?」

「上等よ!」

「ソロモンの悪夢見せてあげる!」

起きたのは昼過ぎであると言う事、そして部屋は悲惨な状態であったことをここに書いておく。


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(難しいな…)

響はある程度話し、同情してくれる「協力者」を探していた。

しかし、待遇が良いところがほとんどだろうか。いなかった(正確には同情はしたが、そこまではと言った感じである)

(難航しそうだ)

目をやると、そこには潜水艦の艦娘が居た。

(もしかしたら、お友達になってくれるかも、なんてね)

今回はここまでずい

土日には完結予定

「あー…ねむい”ー…きもじわるーぃ”…」

昨日は飲み、打ち、そこらじゅうに吐きまくった。

しかも、一睡も…という訳ではないが。

目覚めにボトルの水を人数分買い、先に飲む。

冷えた水が体中に染み渡る気がする。

「っはぁ!生き返りますね!」

少し、頭痛は収まった。

(一番早く潰れたのが陽炎先輩だったとは…)

こう見えても酒にはそこそこ強い方であると自負している。

(早く行こうっと…)

「うっぷ…」

トイレに駆け込み、盛大に便器に嘔吐物をぶちまけた。

「あ”-…」

口をゆすぎに洗面台へ行く、自分を見て「これが私…?」と疑いたくなるようなものだった。

その後、紙を整え、歯を磨き、部屋へと向かった。


「にゃしい…」

「ぽい…うぇっぷ…」

2人を無理やり起こし(陽炎先輩はもういなくなっていた)教室へと向かう。

「遅れてすみませんー…」

担当の足柄先生の姿が無い。

黒板を見ると「自習」と書かれている。

「ツいてるっぽい!」

近くに居た暁に理由を聞く。

「何かあったの?」

一瞬、顔をしかめたが、答える。

「なんだか緊急事態って奴みたい。理由は教えてくれなかったけど…馬鹿にしてるのかしら!」

「もしかして敵が…!?」

夕立いわく「授業なんてものほど退屈なことは無いっぽい!」らしい。

なので、今の彼女は生き生きしている。

「少し聞いてくるっぽい!駆逐艦夕立、出撃よ!」

そう言い、勢いよく出て行った。

机に伏せて寝ようとした時、響が囁いた。

「吹雪、後で話がある。いいかい?いいならうなずいて欲しいな」

何か出来たのだろうか。私は小さくうなずいた。

「じゃあ例の所で…居酒屋で会おう」


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(どうも作戦に支障が来しているな…)

実行する前に、念入りに下調べを行う。

長門、陸奥、そして金剛型姉妹。

このメンツで作戦を円滑に進めるためにあらゆる工作をしておくのだ。

(武器の補充は滞ってるし何よりも資材の数に合わない)

(どこかで横流ししているのか?それとも近くに強い敵がいるからか?)

(だったら…)

提督は、急いで長門と陸奥、金剛を呼び出す。

数分して、彼女たちは揃った。

「鎮守府内に怪しい動きがある…そこでそれを調べてほしい。なお、これが極秘任務だ。出来るか?」

3人は黙ってうなずく。

「もしも…もしもだ、裏切り者が居たら…独房にでも入れておけ」

冷たい言葉が言い放たれる。

横暴すぎる彼の言葉に反論する時間は無かった。

居酒屋の会議は難航を示していた。

「提督は本格的に反乱分子を探しているわ。私にも内緒でね」

「…まずいね…」

響は帽子を少し深く被る。

この席に青葉はいない。居るのは吹雪、陸奥、響。

「幸い水路部の存在はバレていないみたいよ。でも、時間の問題ね…諜報班が厄介だわ…」

そう言うと、ぐい飲みに入っている酒ではなく徳利掴み、飲み干す。

「金剛さん達って凄いんですね」

「あれはもう中野陸軍学校並の凄さだよ…」

いわく、構成人数は不明。少なくとも金剛さん達がトップらしい。

情報はどこかに仕掛けてある監視カメラ、盗聴器などなど。さらには、心理学にも長けているとか何とか。

だが何の因果か、この部屋だけは仕掛けられてないらしい。

「それで…」

外が少し騒がしい。

「…!吹雪、陸奥…逃げるよ」

そう言うと、畳の一つをひっくり返す。すると階段が現れた。

「入って。そこからココにある砂浜に直通だから」

しかし、それを聞くことなく私たちは逃げ出した。


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今から二時間前、提督は川内型3姉妹を集め、有る事を告げた。

「ある情報筋によると、この鎮守府内に水路部なる物があるらしい…」

「で?それをどうしろと?」

川内は退屈そうに言い放つ。

「場所は…居酒屋鳳翔の奥から2つ目の座敷部屋らしい。少し調べて欲しいんだ。いいか?」

「りょーかい。居たら捕縛して独房にでも入れとく。じゃ」

前の司令官からは良い子だと聞いていたが、どうやら違うようだ。

「はは…まさかこんなところに左遷させられるとはな…」

思い出す。数年前の事を。

かつて所属していた潜水艦---伊58の事を。

そして、自分が原因で反乱が起きた事。

それを自分の持ちうる権力を行使してこうなった事を。

「小娘は大人しくしたがってればいいんだよ…」

怒りからか、彼は握っていた万年筆をへし折った。

「号外!号外!鎮守府にてテロ未遂!ごうがーい!」

いそいそと新聞を配る那珂に吹雪が通りかかる。

「あ!吹雪ちゃん!新聞だよ!擦りたてほやほやだよ?」

そう言うと、はい!と押し付けられた。

適当に歩き、腰を下ろす。

(嘘…でしょ…)


そこには---「主犯響、捕まる」


発行しているのは---青葉だ。

(リークした…嘘…)

そこに書かれた情報は、かなり正確だった。

どこで、誰がいつどのやって…しかし、不幸中の幸いか私と陸奥さんの名前は無かった。

記事によると、発覚した原因は資材が少なくなっていた事。

しかも僅かにだ。演習や出撃で見積もっても少なかったらしい。

書き換えしていた事実さえも分っていた。

それよりも、今の彼女には怒りが込められていた。

記事のために艦娘を売った、あの記者モドキ。

全段や魚雷撃ってでも許されない。

(沈めてやる!完全に…です!)



独房は、最近出来たところだ。反省もしない艦娘を送り込み改心させる…のが目的らしい。

そこへ私は入った。

中は冷たく、暗い。殺風景と言った方がいいだろうか。

奥の部屋に響はいた。

「はは…よく来たね…」

鎖で両腕を縛られ、吊るされている。体はあちこち傷だらけ。

彼女の足もとには血だまりが出来ている。

そこが今居る場所だった。

「酷いです…」

「シベリアに比べたら屁でもないさ…吹雪…」

「何でしょう?」

彼女はかすれそうな声で伝えた。

「…臨時司令部…そこを探して…メンバーはもう揃えているから…中からも外からも…」

「どこに有るんですか!?」

「…演習…場を探して…みてく…れ…」

そう言うと、響は眠ってしまった。

(そこに…行けば…)

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少し時間がかかったが、見つけることが出来た。

「ここですか…」

巨大な工廠に入渠施設(ドック)、演習場に出撃用の出入り口まである。

ふと、思い出した。

ここはかつて、海軍が制海権を取られた時に使う反攻用の施設で有った事。

(もしかしたら…)

通信室と書かれた部屋へ向かう。

入ると、手書きの紙切れが貼られていた。

(このチャンネルで合わせればいいのですね…)

チャンネルを慎重に合わせる。

ノイズ交じりで声が聞こえる。

『こ…ら…す…ろ…です…なた…者で…か…』

「こちら、何々鎮守府!水路部!」

すると、ノイズは無くなり、はっきりとした女の人の声が聞こえた。

『そうですか。水路部でしたか。私は…大淀です。やらかした、ね』

革命後の処分。大半は左遷及び更迭。それは人間だけではなく、一部の艦娘にも適用された。

それが、彼女だ。

声は元気がない。

「あの…どうしたら…」

『武器、要ります?情報ならいくらでも…』

今欲しい物それは---


「この鎮守府についての実態のリークを…お願いします」

『…了解しました。では、3日ほどお待ちください。それまでには…』

「分かりました。通信切りますね」

『…幸運を』

通信機を切り、しばし考える

(3日間…)

その間に横暴を解き、協力者が誰か知らねばならない。

響はおそらく答えようとはしないだろう。知られてしまえば計画は終わりだ。

時間はもう無い。

と、思われた。

(これは…!)

協力者はこれで繋がっているらしい。

電探で出来そうだ。出撃できる機会があればしてみよう。



「どうしたの?吹雪ちゃん、そんな思いつめた顔して…」

教室でどうするか悩んでいると、睦月が心配そうに声をかけてきた。

「いや、何でもないよ!あはは…」

「そう言えば、例の作戦実行が決まったよ」

「いつ頃なの?」

「明日のマルキュウマルマル。場所はいつもの所。それで…小銃は無し。それは川内さん達が後から支給してくれるって」

機会は意外と早く来た。艤装があるなら、もしかしたら出来るかもしれない。

「分かったよ。出るのは私と睦月ちゃんと…」

「夕立ちゃんと陽炎先輩、それに軽巡の大淀さんに北上さん、大井さんだよ。更迭明けてから久々の出撃だよねぇ。」

そうだね、と私は言い、机に伏せた。

やけに眠気が出てきたのだ。


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傷が疼く。

あの時やられた傷が。

右太ももにやられたあの傷が。

右手に刺さった砲弾の破片が。

顔に残った切り傷が。

疼く疼く疼く。

決まって出て来るのはアイツだ。

「弱いな」

私は弱くなんかない。夜戦でなら…

「そこまで経験あるのか?」

ッ…うるさい…


「夢か…」

夜戦好きの少女は、獣のような顔で静かに笑っていた。

作戦はこうだ。

まず、対象となる船をある場所まで送り届ける。

ある位置で、敵に見せかけた味方を送り込み、船ごと沈めると言った内容だった。

船は予想以上に大きく、立派だ。

そこで、サイドに2人ずつ、前に1人、後ろに1人と言う構成になっている。

船で何が起ころるか乗組員は不明である。

すると、無線が入った。

『ここで沈めるよー。一斉射』

魚雷を船へと向ける。発射。その間に魚雷を装填しなおす。

船は大きな爆発音とともにゆっくりと海へ潜り込んでゆく。

これからが本番だ。

チャンネルを合わせる。

『はい』『聞こえてるわ』『聞こえてるっぽい!』

3人から入った。

大淀さん、大井さん、夕立ちゃんだ。

『作戦の説明に入ります。これは陸奥さんからの説明です』

『捕獲。それだけです。まず、通信網をズタズタにしましょう。砲弾には別途配られたチャフがあるはずです。それを撒いて下さい』

『以降は特製反響弾での気絶を狙って下さい。以上』

「何してるの…?砲台を上に向けて」

大きな発射音と共に、キラキラとした物がばら撒かれる。

「これじゃあ通信聞こえなくなっちゃうよ!吹雪ちゃん!」

「これでいいの…これで…」

陸奥さんの声が後ろから聞こえた。

「水路部!攻撃開始!」

投下。海が揺れる。何か私たちの艤装に加工をしたのか、震動は伝わることは無かった。

睦月と北上、黒潮先輩や陽炎先輩は気絶してしまった。

「さて、撤収よ。お荷物は…敵が来たわ!」


「やっぱり提督の言うとおりだった訳だ…裏切り者め…」

そこに居たのは、主力艦隊。

「吹雪さん…」

赤城は彼女を残念な顔で見ている様だ。

旗艦は長門。構成は金剛に霧島。川内に神通などなど。およそ前線で戦ってきた猛者共。

「残念です…あなた達を消すことになるなんて…」

最悪だ。

最悪の状況。

緑の空が広がっている。

「提督の言う事さえ聞いていれば…」

「何を言っているんですか?私達の魚雷は爆薬は入ってませんよ?」

魚雷は浮いて来た。

「…ッ」

「何で…爆発したんですか?」

そう。魚雷には事前に爆薬を抜いておいたのだ。

「何故…何故…!」

「さあ。でも…」

陸奥さんと大淀さんは上を射した。

「少なくとも、衛星中継はしていますよ」

「那珂ちゃんはぁ、証拠が無いとただのはったりにしか聞こえないなぁって思うよ!」


「ならこれを見ても言えますか?」


彼女が持ってきたのはPC。しかも、衛星中継用のだ。

わざわざ艤装に組み込んできたらしい。

「はいはーい!ピースピース!」


その数時間後、吹雪が属する提督は逮捕された。

その後、分かった事。

提督は元々は伊58が所属していた鎮守府の提督であったこと。

そして、一部のメンバー(川内型3姉妹)を入れていた事。

何よりも、私物化していた事。

詳しい経緯は響が教えてくれた。

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「これをこうしてこうやって…と。響さん、開きましたよー…って生きてます?」

目をかろうじて開けると、そこには軽そうな少女が居た。

「私、青葉ですぅ。よろしくお願いしますね、艦隊一の諜報員の響さん」

「…知ってたんだね」

それを無視し鎖を外しながら、話を続けた。

「で、どうします?今なら提督さんを討つことは出来ますよ。馬鹿ですねぇ、懐刀まで出撃(だ)しちゃうんですから。あ、吹雪さんはあなたの意図をくみ取ったようなのでご安心を」

それを聞くと、私は少し気力が湧いてきた。

「そんなの、どうやって確信したんだい?」

「そんな感じがしたからじゃダメですかね?」

食えない奴だ、と私は思った。

「銃は置いておきます。後はご自由に」

「私を捕まるように仕向けたのは知っている。これも計算の内だけどね…」

「…面白いですね!では青葉はこれで。血生クサイのも悪く無いもんですねー」

あはは、と青葉は手を振りながら去っていった。

銃を取り、懐へと入れる。

「さて、やりますか」

鎮守府は相も変わらずだった。

途中で自室に寄り、何気なく執務室に入り、銃を突きつけたる。

「動けば殺すぞ」

余裕と言った感じで彼は彼女を見下げる。

「それで?」

「押収したのはちゃんと調べた方が良いって事さ」

出されたのは、提督の過去。

それを見ると彼の顔は青ざめていくのが分かった。

「てめぇ…!」

銃声が響いた。

「お前な…!」

立ち上がり、日本刀を手に取った。

瞬間、響は彼の股間に蹴りを入れた。

「動けば殺すと言ったはずだよ?いい男がションベン垂らさないで欲しいな…」

「ぁ…あぁ…」

軽く蹴ったが、ピクリともしなかった。

「当分動きそうにないね…」


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あれから数日が経った。

海軍謀略部隊はひっそりと解体された。川内さん達はどこかに行ってしまったようだ。

今の提督は艦娘(わたし)達の事を気を使ってくれるし、実力や個性で見てくれる。

見た目はまぁアレだが、人柄もいい。

いつもの場所で吸うたばこはこれで最後だ。

(健康に悪いですしね)

きっと、司令官が変わったからだろうか。

朝日が眩しい。

この狭い最悪な世界で私達は静かに戦った。

だからこそ。

「頑張らないとね」

そこから静かに去り、食堂へと向かう。

いつも見ている海はどこか違って見える気がした。

吹雪「鎮守府に終わりを」

これで終わりです


皆も疲労度無視の出撃はやめようね!

HTLM化の依頼出してきます

乙でした

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