ほむら「星をなぞる」 (41)


ほむら「今日もつくづく瘴気が濃いわ…」

ほむら「…騒がしくならなければいいけど」

ほむら「…」スッ

QB「…何をしているんだい?」

ほむら「…星をなぞっているのよ」

QB「…」

ほむら「…星を、なぞってるの」

QB「…何か意味のある行為なのかい?」

ほむら「…」

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ほむら「うるさいわね」

ほむら「あっちへ行って」

QB「やれやれ」ピョン

ほむら「…」

ほむら(星を、なぞる)

ほむら(…その行為に意味なんて)

ほむら(…)

ほむら「…」

ほむら「分からないわよ、そんなの」

杏子「よ、ほーむら」

ほむら「…杏子」

杏子「どうしたんだ?」

杏子「夜空なんか眺めてさ」

杏子「まーた、噂の「まどか」かい?」

ほむら「…」スッ

杏子「…よくやるなぁ、それ」

ほむら「そうかしら」

杏子「そんなことして何が楽しいんだか」

ほむら「…」

ほむら「…こうするとあの子に、届く気がして」

杏子「…」

杏子「ま、なんでもいいさ」

杏子「今日の感じだと瘴気は濃いが、肝心の魔獣は出てこねぇ」 

杏子「また今度だ」

ほむら「…そうね」

杏子「マミんとこ行こうぜ」

杏子「うまいケーキがあるかもしんないぞ」ニカッ

マミほーむ

マミ「あら、いらっしゃい」

杏子「よう、邪魔するぜ」

ほむら「…お邪魔します」

マミ「ふふ、ちょうど来る頃かと思って、ご飯も作っておいたわ」

杏子「マジか!マミの飯はウメぇからな!」

マミ「ふふ、召し上がれ」

杏子「いただきまーす!」

ほむら「…いただきます」

マミ「…佐倉さん今日はどうする?」

杏子「…ん?…あー、泊まってってもいいか?」

マミ「うん、私は構わないわ」

杏子「…なーんか、戻りづれぇんだよな、さやかんち」

杏子「…」

マミ「…そっか」

マミ「暁美さんは?」

ほむら「…私は…」

杏子「いいじゃん、ほむらも泊まってけよ」

ほむら「あなたの家じゃないでしょう」

マミ「ふふ、私は構わないのよ?」

ほむら「…」

ほむら「…じゃあ、お願いするわ」

杏子「ふぃー、さっぱりん」

マミ「髪を乾かさないと風邪を引くわよ」

杏子「へいへい」

ほむら「…」ガラッ

マミ「暁美さん?」

ほむら「…」スッ

杏子「…ほっといてやれよ」

杏子「…」

マミ「…」

ほむら「…」

ほむら「…まどか」

ほむら「…まどかぁ…!」ポロポロ

マミ「…」

杏子「…」

ほむら「…」スゥスゥ

マミ「寝ちゃったわ」

杏子「まぁこいつはずっと気ィ張ってるからな」

マミ「…」

杏子「…どう思う?」

マミ「え?」

杏子「…「まどか」だよ」

マミ「…」

杏子「ほむらのことだ、嘘は言ってない」

マミ「…だけどそれが、彼女にとって都合のいい夢物語である可能性も否定はできない、か」

杏子「…あたしはさ」

マミ「…」

杏子「…「まどか」のことだとか、円環の理だとか」

杏子「…別に信じてるわけじゃねぇ」

マミ「…」

杏子「あたしらは魔法少女、それもかなり恵まれない方の、だ」

マミ「…そうね」

杏子「だから騙されるわけにも嘘に引っかかるわけにも行かねぇ」

マミ「…」

杏子「…」

マミ「…」

杏子「…でもよ」

マミ「…」

杏子「こいつのことは信じてやりたい」

マミ「…!」

杏子「上手く言えねーけどさ」

杏子「…あたしにとってやっとできた大事なもんなんだ」

杏子「あんたも、こいつも」

杏子「…さやかも」

杏子「…だから」

マミ「…ふふ、そうね」

マミ「私も彼女を信じるわ」

杏子「…!」

マミ「だってわたし達、仲間でしょう?」

杏子「…」

杏子「…あぁ…」ニカッ

「どうして誰も彼女を覚えてないの?」

「彼女は誰よりも優しくて」

「こんな私にも手を差し伸べてくれた」

「どうしてまどかがあんな目に遭わなくちゃならなかったの?」

「どうして誰も覚えてないの?」

「…」 

「…まどかは、居たの?」

ほむら「…!」ガバッ

ほむら「…はぁ…はぁ…」

ほむら(…嫌な、夢)

ほむら(…まどかが、居ないですって…?)

ほむら(…そんな、訳…!)

「それは君の頭の中の夢物語と区別のつけようがない」

ほむら「…」ギリリ

ほむら「…そんな…訳…!」

ほむら「…」

次の日の夜

QB「やぁ、ほむら」

ほむら「グリーフシードならまだないわ」

QB「そうかい」

ほむら「…」

ほむら「…」スッ

ほむら「ねぇ」

QB「なんだい?」

ほむら「この間の話、覚えてる?」

QB「…まどか、かい?」

ほむら「…ええ」

QB「覚えているよ」

QB「鹿目まどかは僕らの企てを阻止するために概念となって固定された」

QB「その概念、「円環の理」こそが、まどかであり、使命を果たした君たち魔法少女を導いている、だったかな」

ほむら「そうよ」

QB「それがどうかしたのかい?」

ほむら「…」スッ

ほむら「…口に出すことも、恐ろしいけれど」

QB「…」

ほむら「…その可能性と」

ほむら「「鹿目まどか」は私が辛い現実から逃れるための」

ほむら「…単なる作り物である可能性」

ほむら「…どちらが高いと思う?」

QB「…そうだね」

QB「まず、前者はあまりにも荒唐無稽だ」

QB「そして、後者はいくつもの前例がある」

ほむら「…」

QB「確かに前者の可能性もなくはない」

QB「だけどそれはもう確認のしようがないことだよ」

ほむら「…」

QB「総合的に見てどちらの可能性もありうるけれど」

QB「どちらの可能性が高いと言われれば」

QB「それは君の夢物語という可能性が高いんじゃないかな」

ほむら「…」

ほむら「…」スッ
 
QB「またそれかい」

ほむら「…悪い?」

QB「…君はその仕草をするとき、とても辛そうな顔をしているよ」

ほむら「…!」

QB「忘れたい、忌まわしい記憶なんじゃないのない?」

ほむら「…そんな、事…!」

QB「誰も「鹿目まどか」のことを覚えていない、覚えているのは君だけ」

QB「その事実が辛いなら」

QB「いっそ嘘にしてしまえばいい」

QB「全て君の夢物語にしてしまえばいいのさ」

ほむら「…!」ギリリ

QB「そうすれば…」

ほむら「黙って…!」

ほむら「まどかは…まどかは…!!」

QB「僕には感情なんてものはないから、君がどんな気持ちなのか分からない」

QB「だけど、その仕草をする君は何かにすがっているように見えるよ」

ほむら「…」

QB「星をなぞってなにか解決したかい?」

QB「それで君の不安は解消されたかい?」

QB「星にすがったところで何も変わらないなら」

QB「やめてしまえばいい」

ほむら「…」

QB「なにがどうあれ」

QB「まどかはいない」

QB「「鹿目まどか」は、この世には存在しないんだ」

ほむら「…」

ほむら「…ぅぅぅううう…!!!」ポロポロ





魔獣「ギャオオオオオオオ…!!」

杏子「ちっ、キリがねぇな」

マミ「そうね」

ほむら「…」ドガァ!!

ほむら「…」

ほむら(…まどか)

ほむら(…あなたは、居ないの?)

ほむら(…本当に…私の夢物語なの?)

魔獣「ギャオオオオオオオ!」ドガァ!!

ほむら「!!」

杏子「ほ、ほむらぁ!!!」

ほむら「…いかないで…」

ほむら「私の前から消えないで…!」

ほむら「まどか!!!!」

「辛いなら、夢物語にすればいい」

ほむら「…!」

ほむら「…」

ほむら「…」

ほむら「…そうね」

ほむら「…まどかは、居ない」

杏子「…ったく、世話かけさせやがって」

マミ「危なかったわね」

ほむら「…ここは?」

杏子「あんたの意識が飛んだから仕方なくここまで運んできたのさ」

杏子「ボケーっとするなよ」

杏子「…「まどか」もいいけど、少しは自分の…」

ほむら「…いいえ」 

杏子「あん?」  

ほむら「…そんなものは、いない」

杏子「…どう言う意味だそりゃ」

ほむら「…」

ほむら「…まどかはいない」

ほむら「…きっと、私が、弱い私が生み出した夢物語に過ぎなかったの」

杏子「…」

ほむら「…じゃないと」

杏子「…そうかい」タッ

マミ「…暁美さん…」

ほむら「…すまないわね」

ほむら「…もう、迷惑はかけないわ」

マミ「…」

(堕ちる)

(私が、濁る)

(もういっそ、死んでもいい)

(誰に導かれようと、どうでもいい)

(そしたら)

(…もし、まどかがいるのなら)

(…居なくても)

(…楽に、なれるから)

QB「大丈夫かい?」

ほむら「…何が?」

QB「随分魔力を消耗しているようだけど」

ほむら「大丈夫よ」

QB「もうすぐ魔獣の群れがやってくる」

ほむら「そう」

ほむら「準備はできてるわ」

QB「今日は、やらないんだね」

ほむら「えぇ」

ほむら「なぞったところで」

ほむら「誰にも届かないもの」

ほむら「たぁぁぁ!」

杏子「らぁぁぁぁ!!!」

ほむら「たぁぁぁ!」

杏子「らぁぁぁぁ!!!」

マミ「やぁぁぁ!」  

ほむら「…」

ほむら「キリがないわね」 

ほむら「…たぁぁぁぁぁぁ!!!」ズガァ!!

ゴポッ

ほむら「…!」

ほむら「…まだ、まだ」

ドガァァ!!

ゴポッ
ゴポッ
ゴボゴボ

ほむら(…私のジェムが濁っていく)

ほむら(…構わない)

ほむら(…あなたのいない世界なんて)

ほむら(…生きている意味が無いもの)

ほむら(…)

ほむら(…さよなら)

ゴボッ

ほむら「…」

ほむら「…ここは」

「ほむらちゃん」

ほむら「…!」

ほむら「…どか…?まどか…!?」

ほむら「…まどかなの!?」

ほむら「…逢いたい…!」

ほむら「…まどか…!」

ほむら「…あなたを、みたい」

ほむら「…あなたに触れたい」

ほむら「…あなたに、会いたい!」

ほむら「…まどかぁ!!」

「ずっと、ずっと」

「そばにいるよ」

「ほむらちゃんが」

「大好き」

ほむら「私が意気地なしだった」

ほむら「誰もあなたのことを覚えてなくて」

ほむら「いつからか私は疑ってた…!」

ほむら「全部、私の夢だったんじゃないかって…!」

ほむら「…違うのね?あなたはいるのね?」

「うん」

ほむら「…そう」

ほむら「…用事が出来たわ」



杏子「ほむらぁーーー!!!!」

マミ「暁美さん!!!!」



ほむら「…ありがとう」

ほむら「まだ私は、頑張れる…!」

QB「ソウルジェムが濁りきると、彼女たちの魂は僕らの観測が届かない場所へと言ってしまう」

QB「マミなんかはそれを、導かれると表現していたけれど」

QB「なるほど、奇跡か」

QB「実に興味深いね」

QB「君の濁りきったジェムは、まだ少しだけ輝いている」

QB「…これは君というより」

QB「「円環の理」の方に秘密がありそうだ」

QB「本当に、君たちは、不思議だね」




ほむら(星をなぞる)

ほむら(あの子に届くように)

ほむら(世界の理不尽を憂い)

ほむら(誰よりも誰かのために願ったあなたに)

ほむら(届くように)

ほむら(今夜は一人じゃない)

杏子「…綺麗だなぁ」

マミ「そうねぇ」

杏子「…さやかも、見てるかな?」

マミ「…えぇ、きっと」

ほむら「…まどかは」

杏子「…!」

マミ「…!」

ほむら「…二人は」

ほむら「…きっと、見ているわ」

ほむら「…この星空を」

杏子「…そーだな」

マミ「…お茶飲む?」

杏子「飲む!」

ほむら(星をなぞる)

ほむら(この空の、どこかにいるあなたに届くように)

ほむら(私の願いが届くように)

ほむら(星をなぞる)

ほむら(いつかまた、あなたと出会うその時まで)

ほむら(星をなぞる)

ほむら(今度はきっと)



ほむら「あなたと、一緒に」

お目汚し失礼しましたー
お疲れ様でふ

オリオンをなぞるかと


しかしQBは許されざるよ

乙でした!
ほぼ完璧だけどまどさやが2人で仲良く下界を見下ろしてるシーンがあればより完璧だと思うな
こう神とその守護天使はいつでも見守ってるよ的な(チラッチラッ

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