洋榎「戦犯?」 (26)


愛宕 洋榎(姫松高校1年 秋季近畿大会準決勝 大将戦)


アナ『さあ、いよいよ秋季近畿大会準決勝Aブロックも大詰めを迎えました!』

解説『兵庫の劔谷高校と京都の洛碧女子も地力はあるチームですが、まさかここまで姫松高校を追い詰めるとは思いませんでしたね』

アナ『現在の順位は1位劔谷、2位姫松、3位洛碧女子、4位晩成となっています!前年度インターハイベスト8の姫松高校、優勝候補ながらここまで苦戦を強いられてきました!』


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429784001


解説『洛碧女子の先鋒が、東一局5巡目で姫松から倍満を直撃する幸運にも恵まれましたから』

アナ『その後はひたすら膠着状態、そして始まった大将戦ですが、劔谷が来ましたね!』

解説『1位劔谷が南一局の満貫で飛び抜けましたから、決勝進出はほぼ確定と言っていいでしょう』

アナ『そして決勝進出を巡って争われる最後のイスを掛けた戦いは、1万点差で姫松がリードしています!』

解説『姫松高校大将の愛宕選手、1年生ながらここまで盤石の守りを見せながらの早和了りで、大将戦が始まった時の点差を見事に広げましたね。先ほどの局も、見事に親の洛碧女子からの直撃を奪いました』

アナ『大将戦はオーラスに入ります!親は姫松の愛宕選手、この差を守り切れるか!』


洋榎「よっしゃ、ウチの親番や!速攻決めたるでー!」

洋榎(とは言ったものの)

洋榎(配牌の時点でこんなに染まってたら、狙いたくなってまうよなぁ)

洋榎「高目狙われたくないからドラ切りや、すまんな」

洋榎(まあ竹はいらんのやけどな)


洋榎(・・・先輩にも強気で言った手前、ちょいと狙ってみよか)

洋榎(劔谷はひたすら早和了りの安手、振り込んだところで怖ない)

洋榎(晩成の1年坊はいつもは速攻型やけど、さすがに今回は高いん作るやろ)

洋榎(問題は洛女や、この大将、防御は薄いけど手はかなり高い)

洋榎(・・・洛女に振り込まんようにして、和了る)

洋榎(守りを固めながら、門前で自模ったるわ)

洋榎(門前で混一白、オーラス親満や!)


8巡目

洋榎(よっしゃ、イーシャンテンや!)

洋榎(後は5か7が来たら両面待ち、南も集めたから満貫確定やな!)

洋榎(とは言え)

洋榎(劔谷の眼鏡ちゃんは發鳴いてツモ切りしてるから、まあ聴牌や)

洋榎(そんで洛女も恐らくテンパってるからなぁ)


洋榎(・・・どないしよ、とりあえずこれや)

洋榎「ほら、まずは安牌やで」

洋榎(んでもって、二人の待ち牌)

洋榎(眼鏡ちゃんは、まあ見事なまでのバラバラな捨て牌やな)

洋榎(見んでも分かる、点数高ない安目のやっちゃ)

洋榎(まあ恐らく両面で待ってるやろうし、ウチならこの捨て牌だと)

洋榎(待ちは筒子の下の方・・・アカン、ウチが持ってるわ)


洋榎(しゃーない、和了られるんも癪やし抱えとくか)

洋榎(そんで洛女、河ですぐに分かるわ、索子の混一やな)

洋榎(・・・ドラは全部切った、暗刻で自風牌揃えてんやろな多分)

洋榎(自模られて、初めて満貫ってとこか)

洋榎(でも、危険牌は結構序盤に出尽くしてる)

洋榎(自模られることもないやろ)


洋榎(じゃあ、ウチも勝負やな)

洋榎「ウチの番やな、ほい」

洋榎(・・・うわ、劔谷の当たり牌やこれ、対子で揃えてもた)

洋榎(どないしよ、差し込んでも逆転はされん、けど)

洋榎(振り込んだら、ウチのスタイルに傷がつく)


洋榎(せっかく大阪屈指の守備型言われてるのに、そんなん嫌やわ)

洋榎(でも、確実にチームは決勝にいけるし)

洋榎(チームを次に進ませるために自分を捨てるか、自分を貫くか)

洋榎(……自分貫いたろ、これ捨ててシャボ待ちや)


洋榎「ほい、これでどうや!」

アナ『愛宕選手、劔谷の当たり牌を逆に対子で揃えました!』

解説『さすがインターミドルでベスト5を獲得した選手ですね、相手の待ち牌から当たり牌を当てるのが非常に上手いです』

アナ『放銃回数の少なさは既に大阪でもトップクラスです!これに対してどう出るか劔谷!』


洋榎(絶対に和了らせんで~!絶対に和了ったるで~!)

洋榎(善野監督もめっちゃ褒めてくれるやろし!)

洋榎(オーラスでまくって、それで)

洋榎(近畿一円に、私の名前を轟かせたるわ!)

ツモ!

洋榎「え」

洛女「ツモ、混一、西!2000‐4000です!」

洋榎「え?」


洋榎「え、え、嘘や、え、だって、それ、場に3枚出て……」

洋榎「あ、あ、あ、あぁ……」カタカタ

アナ『決まったァ!洛碧女子の満貫ツモ!』

アナ『しかも親は姫松!その差1万点!』

解説『と、いうことは』

アナ『洛碧女子、オーラスでの逆転で決勝進出です!』


アナ『近畿大会決勝には劔谷と古豪洛碧女子の進出となりました!』

解説『姫松女子の愛宕選手、防御が高くてもあれだけはどうにもなりませんでしたね』

洋榎「嘘や……そんなん嘘や……」カタカタ

洋榎「こんな、こんなはずやないのに……」カタカタ

アナ『頭を抱えて俯いています愛宕選手、これは相当辛いでしょうね』


解説『でも、彼女はこれでまた一つ勉強になったでしょう』

アナ『と、言いますと?』

解説『守備と言うのは、振り込まないことだけではありませんからね』

解説『将来、この経験を生かしてくれることを祈っています』

解説『とにもかくにも、お疲れ様でした』


洋榎「………」トボトボ

善野「洋榎、お疲れ様」

洋榎「あ、監督」

洋榎「……っ」

洋榎「ホ、ホンマ申し訳ないですわー」タハハ

洋榎「せっかく監督が、しんだいん我慢して出てくれたのに」

善野「………」


洋榎「ウ、ウチもまだまだ精進せんと、あ、あきまへんな」

洋榎「こ、これからは、も、もっと、もっと…っ」グスッ

善野「洋榎」ギュッ

善野「無理しなくていいのよ」

善野「辛いんでしょう、我慢しなくていいの」

善野「だから、今は、今だけは、泣いてもいいのよ」


洋榎「……ぅ」

洋榎「うあぁぁぁ……ごめんなさい……ホンマごめんなさい……っ!」ポロポロ

洋榎「ウチのせいで、ウチのせいで負けてもおて、ごめんなさい…っ!」

洋榎「ウチも、おふくろと決勝でやりたかったです…っ」

洋榎「善野監督に、勝たせてあげたかったですっ!」

洋榎「ごめんなさい……うあぁ、あああぁ……」


善野「いいのよ、洋榎、あなたはまだまだこれからだから」

善野「でも、この悔しさは忘れないでね」

善野「私がもしもの時も、あなたが引っ張っていけるように」

善野「この負けを、いつまでもあなたの糧にしなさい」

善野「お疲れ様」ヨシヨシ

洋榎「監督……監督……っ」

洋榎「うわあああああああああああん!」


恭子「洋榎!」バッ

洋榎「あ、恭子……」グスッ

洋榎「ウチ、ウチぃ、負けてもうた…」

洋榎「先輩の最後の秋終わらせてもうたぁ……」ポロポロ

恭子「しゃーないやん!洋榎一人のせいやない!」

恭子「団体戦なんやで!一人のせいとか、そんなんあらへん!」


恭子「チームの負けはチーム全体の責任」

恭子「チームの勝ちは、チーム全体のお陰」

恭子「府大会勝てたんも、洋榎のお陰やん!」

洋榎「恭子……」

恭子「だから、そんなに、泣かんといてやぁ…」

恭子「洋榎に泣かれたら、私まで、悲しいなるやん…っ」グスッ

恭子「あ、うぅ、だから、泣かんといてや…!」ポロポロ


洋榎「……恭子」

洋榎「よっしゃ、恭子、ウチ頑張るからな」

洋榎「来年は絶対に、近畿の、ちゃう、全国のてっぺん取ったろな!」

洋榎「絶対、リベンジしたる!絶対絶対、勝ったる!うまーなったる!」

洋榎「今度流す涙は、恭子と、由子と、一緒に流す嬉し涙や!」

恭子「洋榎……」


洋榎「せやから、恭子も、次泣く時は嬉し涙やで!」

洋榎「もう、ウチのせいでそんな辛気臭い涙は流させへんからな!」

洋榎「だから、これからも、ウチの練習付き合って」

洋榎「来年こそは、一緒に出たろーな!」

恭子「…もちろん!」


恭子「全国の怪物相手にも負けんくらい、私も頑張ってやるわ!」

洋榎「ウチの今回の負けは、単に悔しい負けやない」

洋榎「これからに繋がる負けや」

洋榎「何も経験せんと、これから地獄見るんやから」

洋榎「これくらい、差し込んだる!」

洋榎「これから先、挽回したるわ!」

2年後

3年夏 インターハイ準決勝 中堅戦

揺杏「やっり!ごちそうさんです!焼き鳥回避!」

洋榎「………」

久「………」

明華「………」


揺杏「もしかして差し込んだ?」

洋榎「どうやろな」

洋榎「でも」


洋榎「ほっといたら出費が1300じゃすまへんような気がしたからな」


カン


なる~あそこに繋がるわけか

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom