【艦隊これくしょん】 提督「染み込む悪意」 (39)


本作品は艦隊これくしょんの二次創作になります

以下の要素を含むことを予めご了承ください

①過度な依存、暴力、轟沈を含む過激な描写
②キャラクターのイメージとの不一致


他進行中の作品

提督「共依存、執着、独占欲、崇拝」




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「長生きするのはいつだって臆病な人だ。臆病な人間はリスクを最小限に留める努力をする」


いつだったか、小説でそんな一説を読んだ気がする。


大井(私こと『大井』は『特別査察官』として勤務している。所謂、艦娘の憲兵版、不正を艦娘の目線から暴く役職)


大井(同型であれば同じ顔、同じ声をしている以上、短期間の入れ替わりは容易で、仮に顔を覚えられたとしても他者と見分けなんてつかない。個性が無い故の強みなのでしょう)

大井(今、私は喫茶店でコーヒーを飲んでいる。それを他の『大井』と識別できる人は恐らくいない)

大井(まるで蟻みたいね)

北上「ヤッホー、憲兵さんの大井っちかな?」カランカラン

大井「ええ、初めましてここの北上さん」

大井(同じ顔と同じ声でも、どの北上さんでもやはり私にとって掛替えの無い存在なんですけど)




北上「あまり、時間がないからさぁ、話していい?」

大井「ええ、その前に何か注文を、ここのコーヒー美味しいですよ」

北上「ん、じゃあ、大井っちと同じで」

大井「さて、では、北上さんの『提督』について話してください。こちらでしかるべき証拠を集め、しかるべき罪に問いますから」

北上「え、うちの提督何かしたの?」

大井「……今日はその、そういう話では?」

北上「え、えーと、そうだけど、たぶん提督は何もしていないと思う」

大井「…すいません、一番最初からお伺いしても?」

大井(私の仕事の話で提督の悪行以外なんて、初めてね)



大井(ただ、事前調査で何も出てきてないのは確か)

大井(勤務年数6年、轟沈数1。大きな戦果はないものの、経験豊富な部下を中心に着実に基盤を抑えるタイプ。職場満足度も良好)

北上「誰かが裏で何かしているっぽいんだよね」

大井「何かといいますと?」

北上「資材を裏でどっかに売っている」

大井「…それは提督の指示で?」

北上「大本営から指示が届いて。印も本物だった」

大井「大本営に問い合わせは?」

北上「したよ、私も個人でやったし、提督もやってた。ちゃんと記録が残ってた」



大井「何故、北上さんは変だと感じたのですか?」

北上「大規模作戦の前に5回も?相手は民間業者だよ?」

大井「なるほど、それは変ですね」

北上「資材が足りなくて、提督は頭下げてやりくりしてだけど」

大井「話は変わりますが、北上さんは提督についてどうお考えですか」

北上「いいヒトだよ。6年一緒にいるけど、あの人以外の下で働くつもりないし、大事にしてくれるし、中破撤退原則だし」

大井「北上さんが大事にされているならよかったです」

北上「あと、ケッコンカッコカリだっけ?昔あった悪趣味なヤツ、アレうちの提督も反対派で頑張ってくれたよ。ほんと、軍は私達をなんだと思ってるんだろうね」

大井(昔、ケッコンカッコカリという重婚を促すような制度があったけど、一部の提督の猛烈な反対により取り止め、まあ、提督による悪用が後を絶たなかったのが原因なんですけど)

北上「…ホント、ウザい」

大井(…?今、目の色が変わったような)




北上「で、私が大井っちにお願いしたいのはこの資材の売買の調査。なーんかしっくりこないんだよね」

大井「提督はなんと?」

北上「あの後すぐに襲撃があってさ、それどころじゃなかった」

大井「なるほど」

北上「うやむやになったけど、やっぱり変だよね」

大井「ええ、こちらの方でも少し調べてみます」

北上「アリガト」

大井「…北上さん。変なことを聞いてもいいですか?」

北上「ん、何々?」

大井「ここに来る前に北上さんの提督の経歴を調べました。特に変な部分はなかったです。ただ…」

北上「天龍のことでしょ?」

大井「ええ、唯一轟沈した天龍。詳細事項が記されていませんでした。単独進撃による轟沈としか」



北上「ああ、実際その通りだったしね。天龍が中破したから提督が撤退命令だしたのにね」


北上「一人で先に行っちゃってさ、まあ、私もすぐ後ろにいたんだけどね」


大井「では、提督の指示によるものではないと」


北上「命令を破ったのは天龍だよ。だから悪いのも天龍」


大井「そうですか」


北上「提督も優しいから自分を責めちゃってさ、あの後は大変だったよ」ニコニコ


大井「…」

北上「天龍の話はもうおしまいでいい?」

大井「ええ、大丈夫です。また、来週、この喫茶店で、その時にまたお話しましょう」

北上「ん、分かった」




大井(いろんな『北上さん』を見てきたけど。何故、私はこの『北上さん』を少し怖いと感じるのでしょう)




~ 序章 了 ~





期待

おもしろそう


~第一章 捜査開始 ~



大井(確かにこの命令書は異常ね)

大井(特定の民間企業に対する資材の売買)

大井(資源が貴重なこのご時世、需要はあるでしょうけど)

大井(でも、正式な手続きを得ている)

大井(総務課の大淀さんが承認しているわね)

大井(無口で苦手なヒトだけど、ちょっと、聴きに行きますか)テクテク

大井「大淀さん。ちょっとお時間よろしいでしょうか」

大淀「ええ、いいですよ」

大井「…これについてお伺いしたいんですけど」

大淀「ああ、コレですか。ええ、承認したのは私ですが」

大井「何故、この時期に民間企業に資材の売却を?」

大淀「新拠点設置のために必要だったので建築業者の方々に資材の売却をお願いした案件ですね」

大井「…新拠点?」




大淀「ええ、シェルターです。大規模襲撃が会った際の避難所として」

大井(確かにあの後襲撃はあったけど)

大淀「特に何か問題でも?」

大井「いえ、ちょっと気になっただけで」

大淀「そうですか。それでは失礼いたします」

大井(大淀さん、少し焦ってた?)

大井(それにこのシェルター?所在地、何か違和感が)


大井(北上さんのところにも『大淀さん』がいて、うちの総務課にも『大淀さん』がいる)


大井(この『二人』が承認者となってこの案件はなりたっている)


大井(……まさかね)




大井(でも、可能性はゼロではない。もし、この二人の『大淀さん』が『同一人物』だったら、自由に決済をすることができる)

大井(でも、何故そんなことを?それにこの設計、まるで要塞)

大井(…なにか変ね)



大淀「………チッ」ジロリ



大井(…北上さんに会いましょう。なるべく早く、嫌な予感がする)




北上「うちの大淀さん?」

大井「ええ、どんな人ですか?」

北上「配属されてから基本的に秘書やってるけど、あんまり知らない」

大井「食事とか一緒に話さないのですか?」

北上「なんかさぁ、いないことが多いんだよね。大本営に行くって言って」

大井(秘書官が頻繁に外出?)

北上「ああ、でも、提督とは仲イイよ」

大井「それは秘書だから?」

北上「あのケッコンカッコカリの反対に頑張ってたから」



大井「それは一体?」

北上「あの反対運動はさ、一部の提督が中心だったけど、実際は大淀さんが貢献してた」

大井「…確かにそうですね。全国の大淀さんが活発でした」

北上「うちも同じだっただけ、あー、でも比叡もいたね」

大井「比叡?」

北上「自分の姉妹をそんな風にされたくないって怒ってた」

大井「それは当然といえば当然かと」

北上「まあね」

大井「…北上さんはその時、どうししてたのですか?」

北上「私?私は、遠征行ってたよ」



大井「今日は髪を降ろしているんですね」フフッ

北上「え、何いきなり?」

大井「いえ、大人っぽい北上さんもいいなぁと」フフッ

北上「ありがとね、まあ、ほら、イメチェンって奴かな」

大井「たまにはいいかもしれません」

北上「他の北上にはない。私なりの魅力って欲しいじゃん」

大井「北上さんは十分に魅力的ですよ」

北上「へへっ」

北上「あ、そういえばさ、大淀さんがこんなこと言ってた」

大井「なんですか?」



北上「自分は『何人かいる』だって、どういう意味だろうね」



大井(……え?)




大井(…もし、仮にそうだとしたら、大淀さんは自分が承認権限者であることを利用して自分に有利なように決済を進めたことになる。

大井(北上さんのところの大淀さん、うちの総務課の大淀さん、どちらも同一人物なのだから)

大井(…確かに大淀さんなら特別査察官のことを知っていてもおかしくない。私たちが同じ外見で同じ声なのを利用しているのを知っているかもしれない)

大井(もし、そうだとしたら……)

大井「北上さん、お願いがあります」

北上「オッケー、バッチこい」

大井「私をしばらく北上さんの鎮守府に置いて貰えるように提督と交渉していただけますか?」

北上「もちろん!任せてよ!」

大井(本格的に調べる必要がありそうですね)




「北上が大本営の特別査察官をうちに呼び込んだようです」

「どこで足が付いたのかな?」

「大淀さんのあの資材の売却の案件です」

「あらあら?」

「査察官は不味い、北上は天龍みたいに自分から沈んだりはしないし、査察官を沈めたらさすがにバレるし、提督も更迭されるだろうし」

「北上さんも大井さんも基本頭良いですから、簡単には行かないかと」

「まあ、手の打ちようはありますよ。それに大淀さんは私達とは無関係ですから、ここはうまく乗り切りましょう」


「「「「了解」」」




「なあ、1ついいか?」

「はい。なんでしょう?」

「天龍と提督って仲良かったのか?」

「天龍さんは兵器になりたがっていました。提督はもう少し自分を大切にしてほしいと言っていました。提督の想いは一方通行だった思いますよ」

「なあ、天龍が味方に沈められたって言ったら信じるか?」

「…それは一体?」

「あの日さ、霧が濃かった。で、襲撃された。でも、天龍が撃たれたのはハッキリ見えたんだ」

「ええ、それで」

「どう考えても後ろから撃たれて前に倒れた様にしか見えなかった」

「あの日、天龍さんの後ろにいたのは?」


「比叡、北上、それと大淀なんだよ」


「ですが、うちの大淀さんに戦闘能力はなかったはず。あの日も見学でした」


「分かってるよ。でも、アイツは本当に同一の『大淀』か?」


「二人いると?」

「少なくとも入れ替わってても配属当初じゃ分からない。少なくとも一時的なら」

「確かに」

「気をつけろ、アイツ、怪しいぞ。北上には正直賛成だ」

「ええ、警戒はしていおきます。彼女の提督に対する執着は気になりますから」

「ん、それだけだ。またな」






~ある艦娘の独白~


男性が描く物語は女性側の視点が足りず、

女性が描く物語は男性側の視点が足りない。

故に優れた作家程、人間関係に富んでいるという


「この映画、なんか嫌」

ミザリーという古いが有名な映画で、ある作家の狂信的なファンが作者を監禁するという話


実にくだらない。


好きなヒトに嫌がることをすれば嫌われるに決まっているし、拉致監禁は立派な犯罪行為だ。本末転倒もいいところ。


そこに本当に愛がさればそんなことはしない。所詮、フィクション、異常者の戯言


では、どうするか?


努力する。そのヒトの期待に、関心に、感情に応えられるように、そのヒトの好みになれるように、好かれるように努力する。


それ以外の解決策が一体どこにあるだろうか。




結局、努力するしかない。


単調な努力ではなく、工夫は必須。


「提督も恋する乙女は盲目とか、純情とか思っているのかな?」


そんなものファンタジーの存在。


最終的に勝てる恋する乙女とは狡猾なのだ。徹底的に準備をして心地の良い空間を提供して、安心させ、リラックスさせ、油断をしたところを叩く。


継続的な努力のたまものだ。


ただ、継続的に努力を続けるということは非常に辛いことで、モチベーションを維持する必要がある。


単純に好きだから、欲しいからというだけでは難しい。





妹の一人は渡したくない、独占したいと言っていた。


少しは分かる、その辺りは姉妹なのだと思う。


私の場合は「愉悦」「汚したい」という負の感情と「愛でたい」「愛でて欲しい」と相反する感情によるもの


あの日、あの霧の日、天龍が沈んだ日、私が持ち帰った天龍の装飾品を抱えてあの人は泣いていた。


正直、それまで献身的な態度を演じることで艦娘の指示を得ようとしているのだと私は思っていた。

だから、一度も姉妹を呼び寄せてくれと言っていなかった。




誰も居ない桟橋で、天龍に謝り続けながら夜泣いている姿を見て、この人の気持ちに嘘はないとなんとなく感じた。


その顔をもっと見たいと思った。私が独占したいと思った。兵器に過ぎない私達をニンゲンとして慈しみ、悲しみ、愛でるあの顔を私のものにしたかった。


だから、努力をしようと思った。彼に好かれる努力をしようと思った。


それだけではなく、ここ5年間の彼の人間関係を徹底的に管理した。


休日には大抵鎮守府の誰かが共に行動し、一人の時には外部からの接触がないように気を付けた


この5年間で友人関係は年賀状やメールのみ、同窓会の時は必ず優先的な仕事を入れた。


やがて彼の人間関係は徐々に鎮守府の内側へと偏ってきた。




彼の性向や嗜好を擽る仕草も徐々に取り入れた


匂い、肌の見せ方、化粧、話し方、食べ方、彼の視線を意識して少し変えた

顔や声を変えることはできなくても、努力次第で変えることはできるのだ


もう少し、もう少し、あと少し、絹の糸を締め付けるように


「比叡さんの料理、だいぶレパートリー増えました?」

「えへへ、そうですか?」


今日も私は頑張る


天龍。ありがとう、この気持ちを私に教えてくれてありがとう。


だから、いい加減に沈め





本日は以上になります


ルートの選択を安価↓3でお願い致します


①地雷原でタップダンスを踊る
②絹でゆっくり首を絞める
③遅行性の毒物を摂取する


違いは爆発する速度の差であり、結果が異なることはありません

地雷原人気過ぎワロタ

お待ちください!
必ずしもタップダンスが地雷を踏むとは限らないでしょう!

華麗なタップダンスで地雷を全て避けることを祈ろう

華麗なタップダンスで地雷除去か、足が無くなるな!



私の趣味は『観ること』だ

切手やコインのように特定のモノを複数する収集するのではなく、1つ関心があるものを撤退的に追及したい。

なので、気になる男性を徹底的に分析することにした。



すぐに『終わった』



私の情報収集網なら大抵の事は把握できるし、自由裁量が効く立場であるが故に少々の我儘もできた。


経歴から、家族、友好関係を調べ、趣味嗜好を把握し、将来どのような道を歩むか検討した


彼が喜ぶ顔を見たかったので、昇格のチャンスを与えた


彼が絶望する顔が観たかったので、味方を殺害し、悲しみを与えた


彼が苦しむ顔が観たかったので、食事に微量の毒を盛った


彼が耐える顔を見たかったので、わざと資材を売り払い、試練を与えた


大まか全ての表情は見終わったので、次の段階に進む



まだ観ていない表情は「壊れる表情」「諦める表情」「恋する表情」そして、「死の瞬間の表情」


そして、彼の中身、「臓器」「血液」「骨」「脳髄」「眼球」「舌」「歯」「神経」「皮膚の裏側」それらの類をまだ見ていない。


それを取出した時、彼がどのような反応をするのかも見ていない。


そう、まだ観ていない部分はたくさんあるのだ


成人男性一人を生きたまま解剖し、生かし、なおかつ観察するにはそれ相応の設備が必要となる。そのための準備を行った。





その際に『私』を一人犠牲にしてしまったが、私は『私』の思考から中身に至るまで把握することができた。


『私』が死ぬ間際にどんな悲鳴を上げ、苦悶の表情を浮かべるのか、どんな構造になっているのか


『私』の心臓の色、鼓動、脳の形、皺、臓器の色


狂人かと言われれば、恐らくそうなのだろう。しかし、まあ、それはソレであり、私は概ね満足している。


ただ満たされてはいない。


罪を犯し、逃れるために別の誰かに成り替わる。まるでマイケル・パイの『Taking Lives』みたい


全員が同じ顔、体格、声をした艦娘だからできる芸当




特別査察官である『大井』に目を付けられてしまった以上、急いで新しい『私』にならなくてはならない


最後に彼の残りの観ていない部分を『観て』私はここを去るとしよう


代わりはいくらでもいるのだから、特に問題は無い


さて、始めるとしよう




本日は以上となります


次回 『解体劇』



ヒエー


流石地雷原だぜ…

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