【SHIROBAKO】「おいちゃん先輩!」 (30)

「んっ?やっぱドストの文章は最高っすね」

ベッドの上で読み終えた本を片手に伸びをすると窓から朝日が差し込んでいた。


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好きな文章に出会うと時間を忘れてのめり込んでしまうのは私の悪い癖なのだ。

「ピンポーン」

ん?今日は授業もないし、これからお昼過ぎまで寝ていようかなと決意したところに唐突なチャイムである。

「こんなに早い時間に誰だろ?」

ベッドから起き上がり玄関を開けると良く知っている人が立っていた。

「おはよう、りーちゃん!ごめんね朝早くに起こしちゃって」

「あっおいちゃん先輩おはようございます。大丈夫っす、今から寝るとこですから」

宮森あおい、私が高校時代に入っていたアニメーション同好会の部長で今はアニメ制作会社で働いている。
ちなみに私と同じマンションに住んでいる。というか私が先輩を追いかけて付いてきたのだ。

「あのねっ!今日の夜りーちゃん空いてるかな?久しぶりに皆で集まろって思って、ずかちゃんが働いてる居酒屋さんで!」

もーこの人はいつも急だ。
そこが周りを引っ張れるカリスマ性?とでも言うのだろうけど。

この前、皆で集まってから時間も結構経ってるし、私以外は働いてるから5人揃ってはなかなか時間とれないので仕方ない、それに皆にも会いたいと思っていたところだったので、私は二つ返事でおっけーして仕事に向かう先輩を見送った。


「じゃありーちゃんまた後でねーおやすみっ!」


「ふわぁ…ねむ」
私が東京に来たのは脚本家を目指すためだ。アニメーション同好会の5人で再びアニメを作りたい!そんな思いを持って上京してきた。

脚本家になるために本を読んだりアニメを見て自分の素養を鍛えてはいるつもりだ。
しかし他の皆と比べて具体的に何をすればいいのか戸惑っているのが現状である。
これといったきっかけが今ひとつ掴めていない。
声優を目指す、ずかちゃん先輩、アニメーターとしてバリバリやってる絵麻先輩、CGの制作会社に入って頑張ってるみーちゃん先輩、そして制作進行のおいちゃん先輩。


「んーあとで起きてからドスト読み返そう」

それに今日は皆と会えるし、いつも仕事の話題になるから、そのときに相談してみよ。
眠気がピークに達したので、アラームもかけずに私は眠りに落ちた。

「やばいっ!」
目が覚めたときには時計の針が真っ直ぐ一本になっていた。
私の場合、徹夜をすると変に疲れがたまって長時間寝てしまうので困りものだ。

「とりあえずシャワー浴びて、準備しないとー」

部屋では基本ジャージな私だが、上京を機にオシャレには気をつけている。
スタイルだって自信がないわけではない。

「出るとこ出てるよねりーちゃんは」

と絵麻先輩とみーちゃん先輩からジト目を向けられ苦笑いを浮かべることもしばしばだ。

「ふぅ、あれ?メールきてる。おいちゃん先輩から…へっ」

シャワーを浴びて急いで着替えた私は、おいちゃん先輩から仕事が終わらなくて行けないとの連絡に落胆した。

「制作会社のお仕事ってほんとに大変なんだなー」
そうなのだ、ご飯に誘われても先輩からドタキャンというのは珍しくない。
アニメ制作会社が激務だということは先輩を見ているとよく分かるので別に不満には思わない。
逆に頑張ってる先輩を見ていると自分も頑張らなくちゃと奮起する。

「けど、せっかく同じマンションに引越してきたのに寂しいっすよ」

私が上京する際、おいちゃん先輩のマンションに引越してきたのは理由があった。
勿論、大学が近くて家賃もそこそこだったためもあったけど女の子の一人暮らしに両親の反対があったからだ。

「あーなら私がりーちゃんのお父さんとお母さんに話してみるよ!」

両親の反対を説得して念願の一人暮らしが出来たのは先輩のおかげである。

「あおいちゃんが近くにいるなら安心ね」

実際おいちゃん先輩が両親に何を話してくれたのかは詳しくは教えてくれなかったけど、こうして近くにいれて嬉しいのが本音である。
それからだろうか、昔の仲間だった先輩から制作の現場に携わる憧れの先輩、そして一緒にいるだけでドキドキしてしまう憧れ以上の人になっていたのは。
実際にこれが恋愛感情なのかどうかは自分自身ではわからない。

「ライター志望なのに自分の感情もわからないって…だめだめ!よしっこうなったらドスト祭り再開だっ!ん?」

あれ?集まりの件、他の皆はどうするのだろうか。
とりあえずメールで確認してみることにした。

「おいちゃん先輩来れないみたいっす、皆さんどうしますか?っと」

30分もすると絵麻先輩も会社に残って作業するということが分かり、集まりは次回ということになった。

「絵麻先輩羨ましいっす」
絵麻先輩はおいちゃん先輩と同じ職場で今は原画を担当しているらしい。
「えくそだすっ」では二人の名前をEDで見つけて複雑な思いをしたものだ。
なにせ5人でアニメを作ろうと言ったはいいものの二人は既に共同作業を実現してしまったので遠くに行ってしまったと感じたからだ。

「うーこうなったらヤケドストしてやる!」

「ぐぅ〜」
情けないお腹の音でロシア文学から解放された私はコンビニに向かうことにした。
外に出て携帯を見ると既に12時を回っていた。
おいちゃん先輩まだ仕事してるかなぁと考えていると前から不審な自転車が近づいてきた。
「あれ?おいちゃん先輩だよ…ね」
コンビニからの帰り道、マンションに着く手前で自転車に乗りながら首を左右に振り何かと会話している怪しげな人がいた。いやどうみても先輩だ

「おいちゃん先輩ーおいちゃん先輩ー」
だめだ自分の世界に入ってる。
先輩は一度ああなってしまうと、なかなか戻ってこないと以前かおちゃん姉さんから聞いたことを思いだしたので諦めた。

「あっりーちゃん、こんな遅くに買い物?ご飯まだだよね!」

マンションに戻ると先輩が部屋の前で待っていた。
どうやら今日のお詫びということで二人で飲もうということらしい。

「カンパーイ」
おいちゃん先輩の部屋にお邪魔して二人だけの乾杯をした。

「いやーごめんね!これはお詫びのウニ缶!全部食べていいから」

「いや二人で食べましょうよーこれスペシャルな時に食べるって、この前言ってたやつですよね。それにお仕事お疲れ様っす!私は別に気にしてないっすから」

皆で集まれないのはちょっと寂しいけど、こうして先輩と一緒にいられることの方が私にとっては嬉しかった。

「りーちゃんはほんとによく出来た後輩だっ!よし飲もう!」

「はいっす!」

しばらくすると先輩はよほど疲れていたのか缶ビール一本でもう目が据わっていた。
「おいちゃん先輩大丈夫っすかー」

「うー、りーちゃんトイレ」

「私はトイレじゃないっす。お皿片付けておくんで寝る準備してきてくださいね」

はぁ、せっかく先輩と二人なのにもうダウンしちゃった。
こういう所がまた可愛いんだけどなぁ。
洗い物をして片付けを済ませると先輩はもうベッドに横になっていた。

「おいちゃん先輩、私もう帰りますよー、おやすみっすーっうわっ!」

先輩におやすみを告げて帰ろうとしたところを突然腕を掴まれベッドに引きずり込まれてしまった。

「なんすかもうっ!起きてるなら言ってくださいよー」

「ふふーん、もうちょっと話し相手になってよ」

「分かりましたよ。先輩にはお手上げっす」

「うむ、よろしい」

しかし先輩とこんなに近いのは私としてはよろしくない状況である。
「先輩明日も早いんじゃないですか?遅刻しますよー」

「大丈夫、りーちゃん目覚ましがあれば起きれるから!」

「なんすかそれーこんな不規則な生活送ってちゃ彼氏なんて出来そうにないっすね」


「あっりーちゃんひどーい!
それに、りーちゃんこそどーなの?こんなに可愛くて大学ではモテモテなんじゃない?」

「私はいいんですよー、今はもっと崇高な物語に触れて脚本の勉強をすることが大事っすもん」

結局先輩にははぐらかされてしまった。まぁ絵麻先輩かズカちゃん先輩に今度聞いてみよう。

「うんっ!りーちゃんも脚本家目指して頑張ってるんだね」

「そうっす。皆に負けてられないっすもん。早く一流の脚本家になって皆でアニメ作りたいっす!」

「うんっそうだよね」

先輩はいつもこうして私を励ましてくれる。私だけじゃなく他の皆も先輩に元気を貰っているんだろうなと思うと少し妬けてくるけど、今はそれだけで十分だった。

「おいちゃん先輩、私に手伝えることがあったら何でもやらせてくださいっす!」

「うんわかっ…あーっそうだ!あのね私今ディーゼル車について調べてるんだけど、りーちゃん今度手伝ってくれるかな?」

「ディーゼル?なんですかそれ?」

私がこの後おいちゃん先輩と一緒の職場で働くことになるのは、ちょっと先のお話になるっす。

終わりです!
シロバコssもっと増えて!

乙!
もしかして渋とかでも書いてる?

おつおつ

>>24 ありがとうございます
おいりー繁栄のためにこちらにも書かせて頂きました。

乙!

珍しくずかがキチってなかった
良質なSHIROBAKOをごちそうさま

このスレに続き書かないならHTML化依頼出してこい

■ HTML化依頼スレッド Part29-SS速報VIP
■ HTML化依頼スレッド Part29 - SSまとめ速報
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乙でした

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