~765プロライブ劇場~
高木社長「いやぁ、本当に事故から一年後に検診に来ていただけるとは……あなたには感謝のしようもありません」
?「なに、医師として当然のことです」
社長「しかし、治療代くらいはせめて受け取ってはいただけませんか……?」
?「ここはまだ設立して間もない芸能事務所でしょう? ここのアイドル達が売れ出したら……ということで」
社長「ははは……これは参りましたな」
?「それでは、お大事に――」
ガチャ
小鳥「社長、いまお時間――きゃっ!?」ドンッ
?「っと……失礼」
小鳥「!!」ビクッ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1424747674
初代なのか?www
小鳥「(な、なにこの大きな人……! それに赤いマントで、強面で……もしや借金取り!?)」
社長「ああ音無くん、心配しなくていい。この人はKAZUYA先生。ドクターKと呼ばれる凄腕の医師なんだ」
小鳥「お、お医者様ですか?」
社長「いやぁ、みんなには言わなかったのだが。私は一年前にちょっとした事故に遭ってね……その時偶然にも居合わせた彼が助けてくださったのだよ」
小鳥「そ、そうなんですか。社長がお世話になったようで……私からもお礼を言います」
KAZUYA「いえ、大したことはしていませんよ」
社長「それで音無くん、何か用だったのかね?」
小鳥「あ、はい。そろそろ劇場の定例ライブのお時間なので……」
社長「おっと、そうだったか…………ん! ティンときたぞ!」
K「?」
社長「ドクターK、治療代の代わりと言っちゃあなんだが、是非うちの自慢のアイドル達のライブを観ていってください! 特等席をご用意しますぞ!」
~劇場内ライブスタジオ~
最上静香「みなさん、今日は来てくださってありがとうございます!」
北沢志保「精一杯頑張るので、みなさんもついてきてください!」
横山奈緒「早速やけど飛ばしてくでぇ! 一曲目は――!」
お前ら『うおおおおおおおお!!』ヒューヒュー
社長「どうかね? まだ数百人程度のファンしかここにはいないが、彼女たちの熱意は本物だ」
K「うむ……アイドルのライブというのは初めて観ますが……」
静香「~~♪」
奈緒「いぇ~い!」キュッキュッ
K「歌い続ける呼吸を維持しながらダンスも正確に踊らねばならない……これは相当な技術が必要ですね」
社長「うむ。だからこそ彼女らは日々、たゆまぬ努力を続けているのだよ」
志保「~~♪」ハァ ハァ
志保「ッ――!?」ズルッ
静香「?」
K「!!」
志保「っ……」キュッキュッ
K「……彼女は少しダンスが苦手なようですね」
社長「う、うほん……まぁ得意不得意は誰にでもあるものさ」
K「(……あの娘、先ほどのミスからすっかり表情が硬くなってしまったな)」
『ありがとうございましたー!!』
ウオオオオ……
~ライブスタジオ裏・楽屋~
奈緒「ふぃ~。今日もお疲れさんやな! なかなかエエ感じやったで!」
静香「そうね。この調子で次のオーディションも頑張りましょう!」
志保「……呑気でいいわね」
静香「志保?」
志保「あなただって気づいてたくせに……私が途中でステップ遅れたこと」
静香「それは……でもちゃんと自分でリズムを取り戻したじゃないの」
奈緒「お客さんも別に気にしとらんかったで? そないに深刻にならんかて、また練習すれば――」
志保「奈緒さんはダンスが得意だからそんなこと言えるだけです。あんな下らないミス、プロとして有り得ないわ……!」
静香「確かにああいうミスは良くないけど……みんなで協力して練習すればきっと」
志保「……あなた達、勘違いしてるんじゃないの?」
静香「え?」
志保「私たちは同じ事務所の人間でもライバル同士なのよ? 次のオーディションだってそう……ユニットの誰か一人でも足を引っ張ったら、みんなダメになるってことわかってる?」
奈緒「そりゃまぁ……」
志保「だったら他人のことに構うより、自分のスキルを高めることに集中したらどうですか? 遊びでやってるんじゃないんだから」
静香「志保、そんな言い方ないでしょ!?」
志保「間違ったこと言ってるつもりないけど。それじゃお先に」バタン…
奈緒「~~ハァ、なんかやりづらいわぁあの子」
静香「まぁ、言ってることは正論なんですけどね……一人で背負い込んで大丈夫なのかしら」
~某所アイドル委員会~
大物ディレクター「むぅ……どうも脂がノッてないね、最近の新人アイドルは」
大御所プロデューサー「なんといってもダンスの切れがないね。適当に歌って笑うしか能がない奴ばかりだ」
天才タレント「なにかいい方法はないのか? 若手アイドルにパッと華を咲かせるような実力者を育てる方法は……?」
黒井社長「やれやれ……やはり貧相な連中は貧相な発想しかないものだな」
大物D「ぬ……ならば貴方にはいい案がおありで?」
黒井「ちまちまと実力もない若手を育てるのに何年かかると思っている? いないのなら――作ればよいのだ! 完璧に歌い踊れる究極のアイドルを!」
大御所P「何を馬鹿な……人体改造でもするおつもりか?」
?「その通り!!」ザッ
天才T「だ、誰だ?」
黒井「ふふふ……こいつはセレブな私が特別に呼び寄せた人体のスペシャリスト……ドクターTETSUだ!」
TETSU「俺のことは“T”とでも呼んでもらって結構……俺に任せておけば、1年でお前たちが望む究極のアイドルを作り上げて見せよう!」バァーン!
大物D「バカな……下手に薬物を大量に投与などしては!」
T「俺はスペシャリストだ! おたくらが心配している検査や副作用の心配も要らん」
大御所P「しかし……そんなことを了承する実験台がいるのか?」
黒井「ふん、まぁ見ていろ……」
――数日後
~都内オーディション会場~
審査員「――合格者は以上の方々となります。それ以外の方は残念ですが……」
P「……お疲れ様三人とも」
静香「く……」
奈緒「……アカンかったなぁ」
志保「……ッ」ブルブル
P「まぁこういうこともあるさ。今日の反省を踏まえて、もう一度――」
志保「私が……あそこでまたリズムを崩したからダメだったんです」
奈緒「……そやな、それは事実や」
静香「奈緒さん……!」
奈緒「でもせやろ!? 私らはちゃんと歌って踊れてたんや! せやのにこの子が途中からいきなりペース早めてしもて、そっからなし崩し的に……!」
静香「ぅ……」
志保「……私、これ以上このユニットに迷惑かけたくありません。抜けさせてもらいます」
P「お、おい待て志保、早まったことは――!」
志保「失礼します……!」タタッ
どうしてピヨちゃんは大柄なマントの男を見て借金取りだと思ったのか
志保「……ハァ、ハァ」
志保「(悔しい……! 私がもっと完璧なアイドルだったら……!)」
T「ずいぶんしおらしい顔だなお嬢ちゃん」
志保「!? 誰ですか!?」
T「くくく、そう警戒するなよ……俺はお前の手助けをしに来てやったんだぜ」
志保「手助け……?」
T「さっきオーディションに落ちたんだろう? その上仲間にも見捨てられて……実力がないってのは悲しいもんだ」
志保「……私を笑いに来たんですか? どいてください」
T「この薬を俺の指示通りに飲めば……苦手なダンスも克服できる。しかもなんの副作用も無しに、だ」ジャラ
志保「警備のヒトを呼びますよ」
T「おーおー、人の好意を無下にするもんだな。だがそれくらいの気骨がありゃ素質は充分だ。お前なら……究極のアイドルになれる!」ドン!
志保「……!」
T「いいかァ……人間ってのは生まれつき不平等なもんだ。いくら凡人が努力を積み重ねたところで、才能を持った奴にその実力は届かない」
志保「っ……」
T「だが人間の潜在能力ってやつは計り知れん……! 生まれ持った才能ってのは、要するにその潜在能力を引き出す才能ってことなのさ。俺はその力を医学的にコントロールし、最大限まで引き出すことができる……つまり、お前の発揮できていない潜在能力を100%引き出してやれるのだ!!」
志保「私が……発揮できていない力を?」
T「それも苦手なダンスだけではない。歌唱力、演技力、あらゆる点においてどんなアイドルより素晴らしい実力を発揮できるようになるだろう」
志保「私が……でも、そんな怪しい薬なんて」
T「俺はこう見えても医者でね……こいつは俺が独自に開発した筋肉の収縮をコントロールする薬なのだ。まぁ、お前さんが必要ないってんなら渡す必要もあるまい」スッ…
志保「あっ……ま、待ってください!」
T「……」
志保「本当に……本当に安全な薬なんですね?」
T「くく……もちろん。俺のプログラム通りに服用すれば……だがな!」
――数週間後
静香「プロデューサー、本当に志保を放っておいていいんですか? この数週間レッスンにも顔を出さないし……!」
P「それが志保のやつ、しばらく自主トレに専念するから放っておいてくれって言うんだよ……」
奈緒「もうええやんか静香。本人が私らとはやりとうない言うてんねやから……」
静香「でも、こんなんじゃわだかまりが……」
ガチャ
志保「わだかまりが……何?」
静香「志保!? 今まで何してたの?」
志保「なんだっていいでしょう。……プロデューサーさん、ちょっとレッスンスタジオ借りてもいいですか」
P「え? あ、あぁいいけど……」
奈緒「(……? なんや志保のヤツ足腰ちょっとしっかりしてきとるような……まぁそないにすぐ変わるもんやないし、気のせいか)」
~レッスンスタジオ~
志保「この前の曲、もう一度合わせてもらっていいですか」
静香「この前のって……オーディションの時の?」
奈緒「別に私らはええけど……こっちかてレッスン重ねとったんやで。ちゃんとついてこれるんか?」
志保「ご心配なく。では……」カチッ
~~♪
奈緒「よ、ほっ」キュッ
静香「ワン、ツー、スリー……!」キュッ
志保「……」キュッ
奈緒「(ここが志保の苦手なステップ……!)」
キュッ キュッキュキュキュッ!
奈緒「!」
静香「……!」
~~♪ ………
志保「……お時間どうも」
静香「すごいじゃない志保! まったく姿勢乱れずに、というか私たちよりうまく踊れたんじゃないの!?」
奈緒「むむ……自主トレいうんはホンマやったみたいやな」
静香「これならきっと三人でやっていけるわ! また一緒にがんばりましょう!」
志保「……そうね」プイ
奈緒「ちょちょ、アンタまたどこ行くんよ!?」
志保「今日は二人との実力差がどれくらい埋まったのカ確かめに来ただけですから。また仕事の時はよろしく。お疲れ様でした」バタン…
静香「志保……?」
奈緒「んあーもう勝手なやっちゃな! 結局こうなるんかいな!」
~961プロダクション・VIPルーム~
T「うむ……よぉし、そのままの調子でトレーニングに励むがよい。何か不調があればすぐに知らせるんだぞ、北沢……」チャ
黒井「どうかなドクター? 765のモルモットは上手く改造できているのかね?」
T「そう焦るなや社長さんよ……もうしばらくすれば北沢は自身の素晴らしい変化を実感できるはずだ」
黒井「ふん、下劣な弱小765プロにしばらくは蜜を飲ませてやるのは癪だが……いずれは彼女も私が引き入れてくれる」
黒井「(それに……万が一この計画が失敗したところで、この闇医者にすべての責任を負わせれば私には何の汚点も残りはせん。まさに完璧なプロジェクトだ)」
黒井「期待しているよドクターT……ハーッハッハッハ!」パタン…
T「(けっ、腹黒オヤジが……まぁいい、俺はこの改造実験さえ成功すればいいのだ。そして……)」
T「今度こそ貴様の鼻を明かし、この俺が正しいということを証明してやるぜ……K!!」
――数ヶ月後
奈緒「な、なんやてぇ!? ボケてんのちゃうやろなプロデューサーさん!?」
P「お、落ち着け奈緒。これは志保がソロで活動してきたことだから」
奈緒「せやかて、あの子いつの間にこんな……!」
静香「ど、どうしたんですか二人して……?」
奈緒「どないもこないもあるかい! みてみぃこれ!」バッ
静香「あぁ、これ今朝の芸能雑誌……『大型新人発掘オーディション、特別賞に若き天才アイドル北沢志保』……えぇっ!? こんなオーディションがあったなんて聞いてませんよ!?」
P「当たり前だよ。このオーディションは新人発掘ってのは名ばかりで、集まるのは相当のベテランだらけなんだ。うちの子達にはまだ早すぎるから、受けさせる予定はなかったんだが……」
奈緒「志保が無理言うて一人でエントリーしたみたいなんや。それで、ようわからんうちに合格やなんて……こんなうまい話があるかい! 変なことしてへんやろな!?」
P「ひ、人聞きの悪いこと言うなよ!」
志保「――そうですよ。少し前まで見下げていた人間が実力を認められたからって、疑うのはみっともないんじゃないですか?」
静香「志保!」
奈緒「あんたなぁ……こういうのはせめてユニットメンバーに相談の一つでもしてからに――」
志保「そのことなんですけど」
765なのに765のアイドルではないとはこれいかに
志保「私、正式にこのユニットから外させてもらいます。これ以上三人でやっていくメリットがありませんから」
P「な……」
静香「ま、待って志保! せっかくそんなに実力がついてきたんだから、今度こそ一緒にやろうって……!」
志保「……言ったでしょ。私たちはライバル同士。研鑽しあうことはあっても慣れ合う必要なんてないわ。それに――」クル
奈緒「な、なにぃよ?」
志保「私はあなたたちよりもっと上へ行く。これ以上あなたたちから学べることもなさそうだし」
奈緒「な、なんやとぉ!?」カチーン
志保「話はそれだけです。プロデューサーさんも、もう私のことは放っておいてくれていいですから」スタスタ
P「いやそんな急に――志保!」
静香「そんな……待ってよ! そんなの一方的すぎるわよ!」
ガチャ
社長「――やれやれ、来客中だというのに騒がしいな。いったい何事かね?」
K「……」
P「しゃ、社長。実は……」
社長「なんと……志保くんがそんなことを」
P「昔からソロで活動したがっていたのでできるだけ要望には応えるようにしてたんですが、まさかこんなことになるとは……」
奈緒「あのアホォ……たこ焼き奢ったった恩も忘れてしもたんか……」
静香「……」
社長「う、うぅむ……しかし本人がそう望んでいるのならば、今は仕方あるまい……それにしても、あのオーディションに彼女が合格するとは。嬉しいことながら信じられんな」
K「そんなに難しいものなのですか?」
社長「もともとあのオーディションは、ダンス、ボーカル、すべてにおいて才能のある実力者だけを摘み取るような企画なのです。ベテランアイドルならまだしも、この子達と同期の……それも最近まで伸び悩んでいた子がここまで急激に成長した例は私も見たことがない」
K「彼女、何か特別なレッスンを受けていたことは?」
奈緒「さぁ……ずっと自主トレや言うて、一人で勝手になんやしとったみたいやけど」
K「(……確かにあの子はほんの数ヶ月前までダンスもおぼつかなかった。それが急激に変化するようなことは……)」
K「(俺の思い過ごしならよいが……)」
~都内某所レッスンスタジオ~
~~♪
志保「はっ、はっ」キュキュ キュッ
T「(……経過は順調。ストレスによる体温、潰瘍などの内臓へのダメージもクリア。以前の陸上選手、杉田の時のような過ちはオレも犯しはしない……!)」
T「北沢、そろそろタイムを入れろ。薬の中継ぎ期間だ」
志保「い、いえ。まだ、私は」
T「言ったはずだぜ。レッスンはオレのプログラムに従って行うこと! それ以上はオーバーワークってやつだ」
志保「……わ、わかりました」ハァハァ
T「(北沢の精神状態にも気を配り、徹底的にドーピングによる肉体のアップダウン管理を行う。ましてやコイツは中学生のガキだ……少々面倒だがすこしは相手もしてやらんとな)」
T「北沢……まだ中学生のくせに中々に骨があるじゃねぇか。何がお前をそんなに掻き立てる?」
北沢「……別に。余計なことはお互い詮索しないって話でしょう?」
T「それはそうだ……とはいえ、患者の不安を取り除くのも医者の務めってやつよ。もっとも悩みがないってんならそれが一番だが……」
北沢「……私はもともと自分の力だけでどこまでいけるのかを試したかったんです。誰の力も借りずに、自分の本当の実力がどこまでのものなのか」
T「ほう」
北沢「でも、結局自分がまだまだ未熟だって気づくばっかりで……そんな自分が嫌で嫌でたまらないんです。私は誰の力も頼らずに、自分の力で大事なものを守れるようにならないといけないんです!!」
T「……」
>>20
なんで名前が途中から北沢になってるんだ
志保「……すみません、余計なことしゃべって」
T「……ククッ……クックックック……」
志保「な、なにがおかしいんですか!?」
T「なぁに……ということは、お前の真の実力を引き出せるオレは、まるで神様のようだなァオイ?」
志保「はぁ……? べ、べつにただ利害が一致したから協力してるだけじゃないですか」
T「ククク、そりゃあそうだ……さてそろそろおしゃべりは終わりだ。クールダウン後はしっかりレッスンしな」
志保「言われなくても」スッ
T「(……自分だけの力で、か……ケッ、こんなガキと同じ発想ってのは気に入らんが……)」
T「(このオレがお前を必ず完成させてやるぜ……北沢ァ……!)」
~765プロライブ劇場~
P「いきなりこんなことになってしまって混乱しているとは思うが……次のライブが一応お前たち三人での最後の仕事だ」
奈緒「……なーんか納得いかんわ。私らの都合なんて関係あらへんのかいな」
P「俺だって志保には何度も連絡したんだよ……でも取り付くシマもなくて……」
静香「……仕方ないわよ……あの子が自分でそう決めたんだから……」
奈緒「むー……せやかてなぁ……」
カズヤのマントの色は黒ね
第一話で黒マントって言われてる
支援
P「俺もどうにかして戻ってきてほしいとは思ってるんだ……静香、よかったら志保の様子を見て、何とか話だけでもしてみてくれないか?」
静香「……わかりました。志保だってきっと思うところがあるはずなんです……私たちが頼りないって思われたのなら、志保に追いつけるくらいの実力をつけてみせましょう!」
奈緒「んん……せや。あんな奴に負けてたまるかい! 私らもやったるで!!」グッ!
――数日後
~某所ライブ会場・舞台裏~
ワアアアァァァァ……!!
お前ら『ぬおおおおおおおおおおしほり~~~ん!!!!』
志保「はい、ちゃんと聞こえてますよ! まだまだ終わりませんから!!」
静香「(こ、これ、ほとんど志保のファンじゃないの……?)」
奈緒「(ほ、ほんまに口だけやあらへん……! こいつ、終盤やのにまだまだ体力残しとる……!)」ゼェゼェ
静香「わ、私だって努力してきたんだから……ぅあ!?」ツルッ
奈緒「あ、しず――」
ガシッ!
志保「……」
静香「し、志保……」
志保「……足、引っ張らないでね」スッ…
奈緒「ぬぐぐ……くやしーっ!! ちょっと前まで足ひっぱっとったんはどっちやねん!」
静香「いいんです奈緒さん、事実ですから……」
…………………
――ライブ終了後
P「お疲れ様みんな! すごくよかったぞ」
奈緒「うぃーす……」ゼェゼェ
静香「お、お疲れ様……志保も」ハァハァ
志保「……」
P「志保……やっぱりだめなのか?」
志保「……ダメって言うか……もう決めたんです。私は一人でやるって」
奈緒「な、なぁ? もう一回考え直す気にもならへんの? 私、今回でホンマに志保のこと見直したんやで。ホンマに自分の力で努力してきたんやなって」
志保「…………もう、無理なんです」
静香「志保っ」
志保「今までお世話になりました。……さよなら」タッ
P「くそ……あんなに成長してくれたのに、どうしてなんだ」
静香「……私、やっぱり、納得できません! ちゃんとあの子と話さないと!」ダッ
~楽屋~
志保「(薬の効果は間違いなく表れている……それもすごい効き目で! 今までのような、未熟な体が頭のイメージについてこないような、あのもどかしさは完全になくなった)」
志保「(でも……だからこそもう後戻りはできない……あの人たちを巻き込むわけには)」
静香「――志保!!」バンッ!
志保「!」ビクッ
ジャラッ!
静香「お願い、少しだけ話を……!?」
志保「し、静香」
静香「な……なに? その薬は……? 貴女、もしかして……!」
志保「放っておいて! あなたには関係ない!」
静香「……!! 志保!!」バッ
静香「あなた体は大丈夫なの!? どこか痛いところないの!?」
志保「べ……別に、大丈夫よ」
静香「嘘おっしゃい! 中学生でもわかるわよ! こういう薬には副作用があるんだって!!」
志保「本当に平気なんだってば! ちゃんとお医者さんに管理してもらいながら飲んでるから……」
静香「そ、そう……って、それでもダメよ! そんなのアイドルがやっていいことじゃないわ!」
志保「っ……わかってるわよ!!」
静香「!?」
志保「それでも……私は薬を飲んででも自分の限界まで力を振り絞って、自分だけの力で進まなきゃいけないの! あなた達にも、誰にも負けたくないのよ!!」
静香「……馬鹿っ!!」パンッ!
志保「!!?」ビリビリ
静香「私の知ってる北沢志保は本当に自分の力だけで立ち上がろうとする強い人だった! こんな薬に頼ってる時点でもう貴女は自分を信じていないんだって、どうして気づかないのよ!?」
志保「…………!!」
静香「私はそんなの許さない! 弱い自分とも必死に闘っていた志保を絶対にあきらめない! どんな手段を使ってもあなたを取り戻してみせるから!」ダッ
志保「……静香……」
黒井「……ッチ、世間知らずの小娘が……」
ザァァァァァ……
~ライブ会場(後片付け中)~
スタッフA「やべぇな、本格的に降ってきやがったぞ」
スタッフB「まぁライブが終わった後でよかったお。さっさと片付けるお」
スタッフA「ん……おい、そこのボルトなんか緩んでねぇか?」
スタッフB「え? 僕はちゃんと締めといたお?」
スタッフA「ちょっと待て、雨で骨組み滑りやすいから危険だ。確認するぞ」
ギギギ…
静香「はぁ、はぁ……」
P「あ、静香! 志保は――」
静香「ぷ、プロデューサー! 大変なんです、志保が――」
スタッフA「! おい、待て! やっぱりダメだ! すぐそっちのを……」
スタッフB「お?」ガコッ
ズズズ……ガゴォオン!!
奈緒「!! し、静香あぶない!!」
静香「!?」
ガラガラガラ……ゴゴォオン!!
P「静香ーー!!」
~都内某所救急病院~
社長「なにィ!? 静香くんが舞台骨組みの下敷きに!?」
医師「潰されたのは左足だけのようですが、一刻も早い手術が必要です。しかし……この状態ではまともに歩けるようになるかさえ……」
社長「そ、そんな……なんとかならないのですか!」
医師「むぅ……」
K「――どうやらあなたの定期検診だけでは終わりそうにないな」
社長「け、K先生!」
K「安心なさい。この子の足は必ず治す!」ギュッ!
………………
~手術室(オペレーション・ルーム)~
助手A「これはひどい……! 膝蓋骨が粉砕しているうえに靭帯の損傷が激しすぎるぞ!」
助手B「これでは骨の破片が多すぎて迂闊に手を出せん……!」
K「……まずは砕けた膝蓋骨の破片を取り除く! 破片はその後修復し再度固定するぞ!」
ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!
K「――粉砕した膝蓋骨の摘出完了! 修復を急げ!」
医師「(は、速い! 速すぎる! あれだけあった骨片を、辛くも靭帯の損傷部や神経を避けて……なんなのだこの男の電撃的な手さばきは!?)」
K「よし……続いて患者の右足の膝外靭帯の切除に掛かる!」
助手A「な、なにを言ってんですか!? 損傷しているのは左足なのに、無事な方の靭帯を切るなんて……!」
K「左の膝蓋靭帯は挫滅がひどく、再接合しても元には戻らん……ならば自家移植による腱再生術を行う!」
医師「し、しかしそんなことをせずとも、縫合するだけでも日常生活には支障がない程度には回復するんじゃ……」
K「この娘はアイドルだ……またステージの上で踊れるようにならなければ、この子は心の内に大きな傷を負うことになる。ならば可能性のある移植しかない! 形成用鉤と固定用スクリューを用意!」
助手B「う、うおぉ……!」
医師「(な、なんという男だ! 普通ならば骨折の処置だけで精一杯だというのに……!!)」
助手A「け、桁が違う……この人でなければこんなことは到底無理だぞ……!!」
K「――接合完了!! 縫合に掛かるぞ!!」
――翌日
~静香の病室~
P「――な、なんだと!? 志保がドーピング!?」
静香「はい……志保自身からはっきり聞きました」
奈緒「ほんなら、急に実力が上がったのもダンスが上達したのも、全部クスリのおかげやったんか!?」
社長「むぅ……これはまずいことになったぞ」
K「しかし……誰も気づかなかったのか? それほどの効果があるなら、外見や健康状態にも異変があるものだが……」
奈緒「言われてみたら、確かにちょっと足腰が前よりしっかりしてたカンジはあったけど……中学生の健康的な体格、ってくらいやったけどなぁ」
静香「健康にも全く問題はないと言ってました。お医者さんに管理してもらってるからって」
K「(ぬぅ……ここまで的確なバランスで、患者の年齢に合った薬物投与を行える医師はそう多くはない……もしや!)」
~都内某所スタジオ~
志保「し……静香が怪我を……?」
T「お前があの会場から引き揚げた直後に事故があったらしいな」
T「(大方、黒井の野郎が何か余計なことをしやがったんだろうがな……)」
志保「……」ブルブル
T「……なんだ、今頃になって仲間の心配か?」
志保「……い、いえ、でも……だって」
T「チッ……北沢、お前は何のためにオレと手を組んだ? 仲間を見返し、一人でも頂点に立てることを証明するためじゃなかったのか!?」
志保「それは、そうですけど……!」
T「ならば迷うな! オレはお前こそ迷いのない強靭な精神を持った人間だと思ったからこそ協力しているのだ! 下らねぇ馴れ合いはやめるんじゃなかったのか!?」
志保「……」
T「……もしお前の中に迷いが生じているってんなら、今すぐ計画は中止だ。薬の投与もやめる」
志保「! そ、それは」
T「このオレを失望させるんじゃねぇぞ北沢。お前には確かな素質がある。こうしてオレが解放してやった潜在能力を100%開花させたのはほかでもない、お前自身ってことを忘れるんじゃねえ」
志保「……はい」コクン
T「よぉし……いいか、1ヶ月後に行われる961プロ主催のアイドルオーディション……コイツにお前は一人でエントリーしろ。そして勝利を勝ち取れ! そうすれば誰もがお前のことを究極のアイドルだと認めるだろう」
志保「究極の……アイドル……」
T「オレの組んだプログラムは完璧だ。プログラム通りにやれば必ずお前は勝てる。いいな!」
志保「……はい!」
T「(杉田の時のような胃潰瘍の心配も無し……このままいけば間違いなく……!)」
T「!!」
K「――やはり、貴様だったか。TETSU!!」
T「へっ、てめぇは相変わらず嗅ぎ付けるのがお早いことで……今度はどんなお説教をもらえるのかな? ククク……」
K「貴様ぁ……杉田修一のドーピングに失敗したにも関わらず、まだこんなことを! またあの時のようなステロイド系薬物を使っているのだろうが……あんな若い娘に強力な薬を与え続ければどうなると……!」
T「おーっと、聞き飽きたセリフはよしてくんな。それにオレだって前回の誤算は改善済みさ……北沢は自分の意志で薬剤を飲用し、そして! ストレスによる胃潰瘍などの問題も一切みられない!」
K「ぐ……だがなぜだ!? 彼女の身体には外見的な変化さえ見られないのに、どうやって……!?」
T「ククク、ドクターKともあろうお方がちょいとばかり勉強が足りてねぇらしい。確かに単純な体力や膂力を補うためにはK、お前のような野獣の肉体が理想的ではある……だが北沢はアイドルだ。外見さえもあいつの武器としてコントロールしなければならない!」
K「ぬぅ……!」
T「そこでオレは歌唱力アップに必要な筋肉、ダンスに必要な最低限の制御力アップに必要な筋肉など、アイドルとして必要な筋肉のみを強化するプログラムを完成させたのだ!! 今回ばかりはお前にも異論を挟む余地はねぇ。なにせこれは医学的には完璧なプログラムなのだ!! クーックククク……!」
K「TETSU……なぜそこまでの見事な技術を持ちながら、人体改造などという下らない行為を……!」
T「ふん……下らない行為かどうかはお前の目で見て判断するんだな。一ヶ月後、究極のアイドルとして生まれ変わった北沢を……!」
K「究極のアイドルだと……!?」
T「話は終いだ。この一件に関わってるってこたぁ、最上とかいうアイドルを治療したのはてめぇだろ? そっちの面倒を精々みてやるこった。クックック……」スッ…
K「TETSU……!」
~765プロライブ劇場~
社長「一ヶ月後の大型オーディション……これだ!」バン!
P「げげ……これは961プロ主催の……!?」
K「TETSUは北沢に一人で挑ませるつもりらしい……奴は外道の男だが、戦いには実力一本で正々堂々挑んでくるだろう」
静香「……私たちも出ましょう」
奈緒「そやな……てアホかい! 静香がそんな状態で出られるわけあらへんやろ!?」
静香「でも、もう志保を取り戻すにはこれしかありません! K先生……!」
K「……君の足は、確かにリハビリ次第で一ヶ月後にステージに立つことのできる状態だ」
静香「それなら……!」
K「だが、本来なら日常生活にも支障が出ていたほどの怪我だ……リハビリは相当な痛みを伴うだろう。君にそれを耐える覚悟はあるか?」
静香「……あります。ありますよ!」
奈緒「静香……?」
静香「あの子、私が舞台裏で転びそうになった時にとっさに支えてくれたんです! そんなに私たちのことを見てくれている子が……たった独りで頑張っているんですよ!?」
P「!!」
静香「あの子だって辛くないわけがないわ……寂しくないわけないじゃない! それなのに、私があの子に食らいつかないで休んでなんかいられません!」
社長「……うむ。よく言った静香くん。だがこれ以上体を壊すことは許さんぞ。くれぐれもK先生の言うことをよく聞いて、一緒に頑張ろう!」
奈緒「……はぁ……なんでこの二人はこんなに強いんや。私なんか横から何にも口出しもせんで……」
K「そんな二人を身近でサポートできるのは、キミしかいないんじゃないか?」ポン
奈緒「う……へへ、それもそうやな! よし静香、私がしっかりシゴいたるで! 今度こそ志保に負けへんようにな!」
そうそう。これだよなー、このカズヤの優しさこそドクターK
――数日後、夜
~劇場内レッスンスタジオ~
志保「(……猫さんをロッカーに忘れるなんて、不覚だわ……ただでさえ今は劇場の方に行きたくなかったのに……!)」
「――! ――――-!?」
志保「(……こんな時間に、誰かレッスンでもしてるのかしら?)」ソ~ッ
静香「ワンッ、ツー、スリ、フォッ!」キュ キュッ
奈緒「そう、その調子――あかん静香! ワンテンポずれたで!」
静香「そ、そう……ごめんなさっっつ!!」
奈緒「あわわ……センセー! ヘルプや!」
K「うむ……念のため少しだけ冷却すれば大丈夫だ」
静香「はい……」ハァハァ
奈緒「うーん……今のとこは志保が初めによぉ間違ぉてたステップやからなぁ」
静香「ふふ……だったら、なおのこと自分の力で乗り越えなきゃね!」ガッツ
志保「――!」タッ
K「……?」チラッ
奈緒「よっしゃ、よう言うたで! なら今のところからもう一回行ってみよか!」
静香「よしっ……お願いします!」
志保「はぁ、はぁ……」
志保「(あの子たちは……迷いなく、本当に自分だけの力で立ち上がろうとしている。それを私は……)」ブンブンブン
志保「(いや、だからこそもう私も迷うことはできない。何より……迷っていればあの人たちはすぐに私のところまで登り詰めてくる!)」
志保「もっとレッスンを……トレーニングの量も増やさないと……!」ダッ!
K「(…………)」
――そして一ヶ月後
~961プロ内オーディション会場~
黒井「ウィ。凡用なる諸君、よくぞこの選別の儀式に集まってくれたな。ここは真の実力者だけが生き延びるいわばアイドルの闘技場(コロシアム)……! 自分以外の人間はすべてが!! 敵だと認識しておくように……よろしいかなァ?」
一同『ざわ……ざわ……』
黒井「なお……ライバル意識を高めてもらうため及び!! 下らぬ仲間意識などというものを捨ててもらうために、同じプロダクションだろうがユニットだろうが、同事務所に所属するメンバーの合格者はそのうち1人だけに限らせていただく!!」
奈緒「げ! それってつまり……」
静香「……正真正銘、志保との真剣勝負になるってことですね」
志保「……いいんじゃない? その方が優劣分かりやすくて」
奈緒「おわ! おるんなら一声かけてぇな志保」
志保「さっきからいましたけど。……怪我、大丈夫なんでしょうね」
静香「……一応ね。現状できる最高のコンディションは維持してきたつもり」
志保「そう……なら手を抜く必要もないわね」スッ
審査員「それでは……765プロダクションの北沢志保さん、どうぞ」
志保「はい」
黒井「お~っと待ったぁ。確かもう二人ほど765プロから金魚の糞……おっと失礼、オマケがエントリーしていたろう?」
審査員「はい……確かに」
黒井「ふ、どうせなら三人一緒に審査してしまえ。ご丁寧に使用曲も被せてきていることだし……反吐が出るな」ペペペ
審査員「あの~……では最上静香さん、横山奈緒さんも、一緒にどうぞ」
奈緒「うえへ? 私らも?」
静香「……行きましょう奈緒さん。こっちとしてもちょうどいいですよ」
志保「……言っとくけど。以前とは振り付けもアレンジしてるし、そっちに合わせる気もないわよ」
奈緒「かまへんよ。どのみち私らは私らの全力出すだけや」
静香「……」
審査員「はい……それでは、ミュージックスタート!」
~~♪
K「……始まったか……!」
T「(クククク……さぁ行け北沢! 一年の成果をぶつけてやれ!)」
志保「~~♪」キュキュ キュッ
奈緒「(顔色一つ変えんと演技して、歌って、完璧に踊りきっとる……志保、クスリのこと抜きにしてもやっぱり一人で頑張ってたんやな……)」クルッ
静香「(ま、まだ少し患部が痛む……でも痛いだけで動くんだから!)」キュッ
審査員「ほほぉ~……なんというか、この三人なかなか」
黒井「ウィ? 三人のウチ だ れ が 良いと言った?」
審査員「ウヒ……そ、そりゃ……技術的には北沢さんですよ。これは他の子と比べてもダンチだ」
黒井「(ふふふ……当然だ。この子は今日ここで究極のアイドルとして世界に認められる存在となるのだ。そしてその暁には私の手に……!)」
静香「(……って顔して……そんなことさせるもんですか!!)」グッ
オオオオオォォ…!
審査員「なんと……最上さんここにきて一気にハードなステップに切り替えましたよ。これは見事だ」
黒井「ふん、けが人が悪あがきを……」
志保「……!」
志保「(静香も追い上げてきている……もう少し、もう少しなのよ……! あと少しで私は、誰にも負けないアイドルの頂点に、自分の 力で !)」
――ブチッ
審査員「? なんだ今のお――」
志保「ッッああああああぁぁああああああぁぁあああああ……!!」
静香「!!? 志保!? 志保ォ!!」
奈緒「な、なんや!? どないしたんや志保!?」
T「き、北沢ァ!?」
K「いかん!!」バッ
志保「いたっ……あし、が痛いいぃぃ……っ!!」
K「(! この場所は……!)」
T「バ、バカな……! 俺のプログラムは今度こそ完璧だった! 北沢も俺の指示通りのトレーニングをしていたのに、なぜ今になって……!」
K「話は後だ! すぐ病院へ! オペの必要がある! 急げ!!」
奈緒「き、救急車! 救急車やぁー!!」ピポパ
T「(な、なぜだ……? オレのプログラムは間違っていたってのか……!?)」
――数時間後
~再び都内某所病院~
静香「先生、志保は一体……?」
K「キミの時と同じ、靭帯の損傷に加えて、体の一部に筋断裂が見られた。処置が早く済んだので、時間はかかるがまた芸能活動には復帰できるだろう」
奈緒「よ、よかったぁ。ホンマよかったなぁ志保?」
志保「……これで……もう居場所がなくなったわね」
静香「え?」
志保「あんな大御所の集まるところでこんな大恥晒して、もう芸能界じゃまともに仕事ももらえないわよ。あなたたちにだってひどいことしてきたんだし……この劇場からも追い出されるでしょうね」
静香「……」
志保「ほら……早く見捨ててって。私なんかといても、頑固で意地っ張りが移って嫌になるだけよ。足手まといになるのはごめんだから」プイッ
静香「大丈夫。そのくらいで足手まといに何てならないわよ」
志保「……! 気休め言わないでよ!」
静香「気休めなんかじゃないわ。ほら見て、私の足」ヒョイ
志保「……!? あなたそれ……傷口が」
静香「そ。今日あなたとの勝負で熱くなりすぎちゃってね……またしばらくは安静だって怒られちゃったわ」テヘ
奈緒「あんたらホンマに無茶する性格しとるからなぁ……私がおらんかったらもう死んどるんちゃう?」
静香「そんなことないですよ。精々血まみれでオーディションに出るくらいじゃないですか?」
奈緒「社会的には十分死ぬわい!」
志保「……なんでよ。なんでそこまでしてこんな……足引っ張るだけの役立たずに手を伸ばそうとするの? バカじゃないの……?」
静香「……そうね。バカかもね。でも、そんなバカをとっさに支えてくれたあなたもバカだもの。ね?」ニコ
志保「……もう、勝手に……してください……うぅ」ポロポロ
奈緒「あーあー見事にアホバッカやな。私がまとめたらな、あんたらまともに機能せんわ。というわけでユニット解消の話はくるくるパーのポン! ええな志保?」
…………………
K「……納得のいっていなさそうな顔だな、TETSU」
T「当たり前だ……! あの後何度調べてもデータを組みなおしても、北沢のプログラムは本当に完璧だった! なぜだ……何がいけなかった!」
K「……TETSU。オレたちはしがない一人の医者だ。そんな部外者が、患者の交友関係、そして因縁……絆の領域にまで手を伸ばすことは難しいことだ」
T「……!? な、何の話だ…!」
K「北沢のやつは……静香が必死にリハビリしている姿を見て何かを思ったのだろう。最後の一ヶ月の間、より一層高いハードルを自分に課すようになっていたぞ。それこそ、お前のプログラムでのボーダーラインを超えそうなほどハードにな……おそらく、重度のホルモンバランス崩壊と筋肉疲労によって、お前の作り上げた『アイドルに必要な筋肉』が限界を迎えてしまったのだ」
T「ば……馬鹿野郎めェ!! 俺のプログラムには絶対に従うよう何度も注意を促していたのに……!」
K「そう、こればかりはお前のせいではない……患者である北沢自身の、“強すぎた意志”がお前の予想を超えてしまったのだ」
T「くっ……」
K「俺たち医師がどれだけ医療の技術を向上させようと……患者本人の意志の力を超えることはできん。我々はもう少し、人間の意志の力を信じるべきなのかもしれん……薬になど頼らずとも生きていけるような……な」
T「……なんにせよこうなった以上、今回の計画はおじゃんだぜ。オレは依頼人からの仕事を達成できなかった……いつ追っ手に拘束されるかわからねぇからな。このままトンズラさせてもらう」バンッ
K「TETSU……」
T「だがな……まだ終わりじゃねぇ! 人間の意志の力を信じるべきだというのなら――オレはその力をさえ利用し強くなる! いずれは完成させるさ……何物にも屈することのない、本物の肉体、そして精神を兼ね備えた人間というものをなァーーーッ!! クーックククク!!」
ブロロロォォ……
K「オレとお前はどこまで行っても相反するようだ……ドクターT!!」
――後日
~記者会見会場~
記者「えーそれでは……三人がユニットを完全に解散するという話は?」
志保「もちろん、解消させていただきます。混乱を招いてしまったのはすべて私の責任ですが……このような弱い立場に立ってようやく二人と同じ目線に立てた……そんな気がするんです」
奈緒「まぁ私は二人の退院祝いにたこ焼き奢っただけやけどね」 ドッ ワハハハハ…
静香「えーこほん……とにかく、これからは今まで……いやそれ以上に。三人での支え合いがなければ続かないユニットだということを自覚しています。怪我だらけでしばらくは派手に活動はできませんが……」
ガタッ
静香「今日は特別に! みなさんを765プロ緊急ライブ劇場公演にお呼びします!」
『ええーーー!? イマカラココデ!?』
奈緒「は……?」
志保「ちょ……静香、そんなの聞いてないわよ!?」
静香「サプライズだもの、しかたないでしょ?」
志保「そ、そういう問題じゃ――あっ」グイ
静香「ほら……一人じゃ立てないでしょ。ゲリラライブなんだから、気を張らなくてもいいのよ。久しぶりに楽しみましょ!」
志保「……うんっ!」
奈緒「おいこらあぁあ! 私置いてイチャコラすんなや!」
静香「じゃ、奈緒さんは先にライブの準備お願いします」
奈緒「うわぁ~ん! 最近静香が腹黒い~! 社長に言うたるからな~!!」ウワ~ン
K「ふふ……変わったアイドル達ですねとても大きな事故と挫折があった後とは思えない」
社長「だがとてもいい子達だ。私の自慢なんですよ……さぁ、先生もどうぞ。彼女たちの一番いい表情をご覧下さい」
K「ええ、是非にも」
志保
静香「765プロライブ劇場へようこそ!!」
奈緒
カルテEX「究極のアイドル」END
はい。細かい点はお察し。
良ければ北沢さんの宣伝など。↓
グリP「焼肉に行こうか」志保「!」
ところでHTML化依頼の出し方がわからないのですが…
ここに依頼する
HTML化依頼スレッド Part27 HTML化依頼スレッド Part27 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422693220/)
>>46
ありがとうございます。依頼出しておきます。
乙
ドクターKのSSなんて珍しいからアイマス全然知らんのに読んでしまった
原作らしさが出てたよ。お疲れさん
乙
そういや社長二人もTとKなんだな…
乙です
乙でした
アイドルマスターミリオンライブから
>>4
最上静香(14) Vo
http://i.imgur.com/Ly3ghJa.jpg
http://i.imgur.com/E0CgOgx.jpg
北沢志保(14) Vi
http://i.imgur.com/Aa85Bfk.jpg
http://i.imgur.com/zu0Dq5s.jpg
横山奈緒(17) Da
http://i.imgur.com/hpWc3GR.jpg
http://i.imgur.com/9ZgiVnN.jpg
乙乙
一言で言うとそびえ立つクソ
ただ、周りからボロクソ言われながら完結まで続けられるメンタルは素晴らしい
次はメアリー・スー系「以外」のSSをよく読んで出直してくれ
残念ながら原作だともっとチートなんだよなぁ……
乙でした、面白いクロスでした
乙
原作の一話完結だとこうだね
ダンロンとのクロスがそこそこだったけどやっぱKはこういう超人じゃないと
肉体はブラックジャックってのがKのだいごみだからね
>>53
メアリスーの意味を検索し直してコミック全巻読み終わってから自分のレス読み直そうね
おつおつー
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