リヴァイ「俺にはわからない」 (28)
※ネタバレ含む
リヴァイ(よく考えりゃ、戦闘服を着ねぇ日は珍しい)
リヴァイ(この怪我じゃ、しばらくは使いもんにならんな)
ペトラ「おはようございます!兵長、朝ですよ!」
オルオ「おい!上官が起きてくんのは待つもんだろ!馬鹿かお前!」
ペトラ「私はあんた以外の全員を起こして回ってんの!ついて来んな」
オルオ「なにを!俺こそ兵長を起こしてさしあげようとだな!」
————
リヴァイ(……昨日とは違うか)
リヴァイ(静かすぎるってのも陰気なもんだ)
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エレン「おはようございます……兵長」
リヴァイ「おう。時期にエルヴィン達がここに来る。適当に座っとけ」
エレン「……はい」
————
——
—
リヴァイ「なんか飲むか」
エレン「じゃあ俺が」
リヴァイ「お前が美味いのを煎れられるとは思わんな」
エレン「はは……」
————
ペトラ「お茶煎れますね。兵長は猫舌ですか?」
リヴァイ「いや、違うが」
オルオ「兵長がそんな軟弱な舌をお持ちな訳がないだろ!」
ペトラ「いやオルオに聞いてないし」
オルオ「ああ!?」
エルド「お前ら静かにしろよ……」
グンタ「おお、なかなか美味い」
エルド「やっぱり雑な男が淹れたやつとは味が違うな」
ペトラ「兵長はどうですか?」
リヴァイ「不味くはない」
ペトラ「良かったぁ」
オルオ「俺にはイマイチだな。まぁ、俺の味覚は誰にも満足させられん」
ペトラ「あんた味覚なんてそもそもあったの?」
オルオ「あるんだが!?」
————
リヴァイ(……自分で淹れたからか、美味いのか不味いのかわからねぇな)
リヴァイ「遅ぇな……」
エレン「……」
リヴァイ(だんまりか)
リヴァイ「エルヴィンの野郎共待たせやがって、憲兵が先に来ちまうぞ」
エレン「……」
リヴァイ(銅像に話しかけてるみてぇだな)
リヴァイ「大方……クソがなかなか出てこなくて困ってんだろうな」
エレン「ハハハ……」
リヴァイ「……」
エレン「兵長、今日はよく喋りますね」
リヴァイ「バカ言え、俺は元々結構喋る」
エレン「すいません。俺があの時……選択を間違えなければこんなことに……兵長にも怪我まで」
リヴァイ「言ったろうが、結果は誰にもわからんと」
リヴァイ(そう思ってたはずだ。あいつらはそれぞれが与えられた使命を全うした)
リヴァイ(地獄を生き抜いてきたあいつらならきっと己の決断に後悔はしていない)
【あなたがちゃんとエレンを守っていればこんなことにはならなかった】
【娘が手紙を寄越してきましてね、腕を見込まれてリヴァイ兵長に仕えることになったとか、あなたに全てを捧げるつもりだとか……】
【あいつもまだ若ぇしこれから色んなことが……】
リヴァイ(エレンにすらいつもと違って見られるとは、俺は後悔しているのか?)
リヴァイ(いつからだ……)
————
——
—
エルヴィン「君が地下街で有名なゴロツキか、そんなに力が余ってるなら人類の為に命を捧げてくれないか」
リヴァイ「初対面でゴロツキ呼ばわりは酷ぇな。お前調査兵団の奴か、税金使って自殺志願者の集団育ててなんになんだよ」
エルヴィン「彼らは己の意志で、自由を勝ち取る為に戦った。君のようにこんな場所でくすぶって何かから逃げている生き方よりは確実に意味がある」
リヴァイ「……まぁいい。どうせ何にも面白いことなんかありゃしない」
リヴァイ「少しは暇つぶしになんだろ」
————
エルヴィン「調査兵団にようこそ」
リヴァイ「どいつもこいつもしみったれた顔してんな」
ハンジ「仕方ないよ。正直にいうとなんの進展もないのが現実で、訓練兵を卒業しても憲兵団か駐屯兵団に流れてしまうから」
ハンジ「それに、壁外調査では大量に人が死ぬ。民からの風当たりも酷いもんだしね」
リヴァイ「……お前誰だよ」
ハンジ「私?ハンジ・ゾエだよ。あなたの先輩だけどほとんど歳も変わらないだろうからハンジでいい。てか目つき悪いね!」
リヴァイ「……生まれつきだ。ほっとけ」
エルヴィン「配属早々だが、もうすぐ壁外調査がある。君にももちろん参加してもらう」
ハンジ「精々、死なないようにね」
リヴァイ「他人の心配より自分の心配しとけメガネ」
ハンジ「私のトレードマークだよ。冗談はさておき初陣で生き残るのは5割だからさ」
リヴァイ「死んだらそれまでだ。エルヴィンの野郎の見立ても大ハズレってな」
ミケ「……」
リヴァイ「うぉっ!?なんだこいつ!」
ハンジ「ああ、彼はミケ・ザカリアス。初対面の人の匂いを嗅いでは鼻で笑うクセがあるの」
リヴァイ「……変人ばっかか」
————
エルヴィン「これより、第〇回壁外調査を行う」
リヴァイ(当然だが、どいつも怯えた表情が隠しきれてないな)
エルヴィン「死ぬなよ」
リヴァイ「……結果なんて誰にもわからん。俺は指示に従うだけだ」
ハンジ「目つき悪いやつは簡単に死なないって」
リヴァイ「黙ってろ。変なゴーグルしやがって」
「南方から巨人接近!!」
リヴァイ「……おお、でけぇな」
ハンジ「あなた冷静だね。パニック起こす兵士もいるのにさ」
————
「すげぇな、あの人……」
「初陣であんなに巨人を狩った人間なんて前例がないぞ」
「今回の壁外調査じゃ死者が前回よりも少ない。あいつがいれば……」
リヴァイ「なに人の顔じろじろ見てやがんだ」
「い、いや!なんでもない」
「ああ、気にしないでくれ」
ハンジ「あなた凄いね!身体がちっさいから立体機動も凄いのかな!」
リヴァイ(……アホは無視にかぎる)
エルヴィン「よくやってくれたな」
リヴァイ「……死んだヤツに言ってやれ」
——850——
リヴァイ(昇格したのは良いが、結局、ウォール・マリアは奪還も出来ずに数えきれないくらい部下の死に様を見てきた)
リヴァイ(長く生きてるやつもいるが、生死は何を基準に決まってんだろうな)
ハンジ「なにか考え事?余計恐い顔になってるよ」
リヴァイ(こいつも長いほうか)
ハンジ「そういえば、あなたの補佐してるペトラって子。あなたに少なからず好意があるって噂だよ?」
リヴァイ「物好きもいるもんだな」
ハンジ「そりゃ、あなたの名前は今や兵士や訓練兵。さらには街の皆にも知れ渡ってるからねぇ」
リヴァイ「自分のことを気にするほどナルシストじゃないんでな」
————
オルオ「おいペトラ、お前リヴァイ兵長が好きなのか?やめとけやめとけ、お前なんて相手にされねぇよ」
ペトラ「ちょっと!なんでオルオがそんなこと知ってるわけ!?」
オルオ「俺の情報量を甘く見ないほうがいいぜ」
ペトラ「はぁ!?」
エルド「まぁまぁ……調査兵団の生き残ってる古株なんて限られてるからな。そいつらの情報なんてすぐに広まるのさ」
グンタ「入れ替わりが激しいからな。だからこそ生き残りの結束が強固な点もあるが」
ペトラ「……私は、その、浮いた話を望んではいません。調査兵団になった以上、死ぬことを念頭に置いて覚悟して入ってますから」
エルド「お前はまだ若いし、女なんだからそういう幸せを望んでも悪くないと思うけどな」
グンタ「兵長だって少なからず悪くは思っていないさ」
ペトラ「いえ、今は補佐として精一杯やります。多分、これが一番正しいと思うから」
オルオ「けっ、精々、初陣の時みたいにしょんべん漏らして兵長に軽蔑されねぇこった」
ペトラ「なっ!あんたもだろ!!」
エルド「お前らだろ……」
グンタ「ははは」
————
「来たぞ!!調査兵団の主力部隊だ!!」
「エルヴィン団長!巨人共を蹴散らしてください!!」
エレン「おい見ろ!人類最強の兵士、リヴァイ兵士長だ!!一人で一個旅団並みの戦力があるってよ!」
リヴァイ(人類最強ってなんだ……そんな風に呼ばれてたのか)
リヴァイ「うるせぇガキ共め」
ハンジ「あの子達の羨望の眼差しも、あなたの潔癖すぎる性格を知れば幻滅するだろうね」
リヴァイ(もともと、誰かに期待されたくて兵士になったわけじゃねぇがな)
エルヴィン「今回の壁外調査は旧市街地までだ」
リヴァイ「前回とあまり変わってない気がするんだがな」
ハンジ「仕方ないよ。そんな簡単に距離が伸ばせるなら苦労しない。無理をして全滅なんかになったら最悪だ」
ハンジ「結局、手探りで一歩ずつ進むしかない」
リヴァイ「わかっちゃいるが、あの世で見てる奴らがいつまでも安心できやしねぇだろ」
エルヴィン「そう思うなら、その恵まれた才能を、一人でも多く死なずに済むよう尽くしてくれ」
リヴァイ「……言われるまでもない」
ハンジ「嵐の前の静けさかな。行軍がこんなスムーズに行くなんて」
リヴァイ「おおかた人間の家が気に入って引きこもってんじゃねぇか、……来たぞ」
「前方から巨人複数!10メートル級3体!3メートル級1体!5メートル級2体!!」
エルヴィン「各自立体機動に移れ!!」
リヴァイ「俺達は左から行くぞ!」
ペトラ「はい!!」
————
リヴァイ(あと2体か、あっちの方が混戦してんな)
リヴァイ「ペトラ!右翼側の援護に付け!その後は自身の判断において行動しろ!」
ペトラ「はっ!」
————
リヴァイ(地面に……さっきの奴らにやられたのか)
リヴァイ(すまんな。少し遅かった)
リヴァイ(前方に1体、お食事中ってか?ふざけんなよ。クソ野郎が)
リヴァイ(あの兵士は……いや、右に1体、左に2体)
ペトラ「兵長!増援を集めてきました!!」
リヴァイ(まだ助かるか)
リヴァイ「ペトラ!お前は下の兵士を介抱しろ!残りの全員は右を支援しろ!!」
ペトラ「え!?」
リヴァイ「俺は左を片付ける!」
————
リヴァイ「チッ……汚ねぇなチクショー」
リヴァイ(まぁ、当面の危機は去ったか)
リヴァイ「ペトラ。そいつはどうだ!?」
ペトラ「兵長……血が……止まりません」
「兵…長……」
リヴァイ「何だ?」
「お、俺は……人類の役に立てでしょうか……このまま、何の役にも立てずに死ぬのでしょうか……」
リヴァイ(俺にはわからない。今口にしている言葉がなんの意味をもつのか)
リヴァイ(ただ、握りしめた掌から伝わる体温を忘れずに刻みこむだけだ)
————
リヴァイ(撤退命令から戻ってみれば、今度はトロスト区の穴が塞がったから援護しろ?)
リヴァイ(大岩を動かす技術がないから不可能だったはずじゃないのか)
リヴァイ「……考えても仕方ない」
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リヴァイ「ガキ共、これはどういう状況だ?」
リヴァイ(まったくわからん。穴が塞がったのは確かだが……この惨状は)
リヴァイ(本当に勝利したと喜んで良いものなのか……人が死にすぎだろ)
リヴァイ(ガキの内一人が昏睡。まさか人間が巨人化できるとはな)
エルヴィン「リヴァイ、いつ彼が目覚めるかはわからん。自我を失い仲間を攻撃したとの報告もある。最悪の場合は任せる」
リヴァイ「あぁ、了解した」
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ハンジ「ねぇねぇ!聞いてよ!巨人の生け捕りに成功したんだよ!しかも2体も!!」
リヴァイ「だからどうした。良かったなとでも言うべきか?」
ハンジ「わかってないなぁ!巨人の謎に迫るチャンスだよ!はぁぁぁ!!ゾクゾクするね!」
リヴァイ(こいつの頭の中が一番狂気じみてんじゃねぇのか)
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——
—
エルヴィン「連絡が来た。どうやら彼が目を覚ましたらしい」
リヴァイ「3日もおねんねとは気楽なもんだな」
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リヴァイ(カビくせぇ地下だ)
リヴァイ(なにより、なんだこいつもこいつの仲間の供述も)
リヴァイ(わからんな。こんなガキの意志を聞く必要なんかあるのか)
リヴァイ「さっさと答えろグズ野郎。お前がしたいことは何だ?」
エレン「調査兵団に入って……とにかく巨人をぶっ殺したいです」
リヴァイ(……こいつの目、ああ、化物は化物にしか殺せねぇんだろうな)
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ハンジ「あの子、どうする気?まさか貴重な存在を殺したりしないよね?」
エルヴィン「トロスト区の件で、意見は割れるだろう。人類側への貢献があったのは事実なのだから」
ハンジ「なら!早く解放してあげようよ!リヴァイだって世話するって言ったんでしょ?」
リヴァイ「言ったが、最終的に決めるのは総督様だろ」
エルヴィン「そうだ。私達にできるのは、彼の重要性と危険性を含んだ上で、調査兵団側に身柄を引き受けさせてもらえるよう尽くすしかない」
ハンジ「具体的にどうするの?」
エルヴィン「一筋縄ではいかないだろう。残存の問題を含め、壁のことで激怒しているウォール教の存在もある」
エルヴィン「だが、幸いにもこっちにはリヴァイがいる。彼がもし巨人化した場合に、対応できる点は大きいだろう」
エルヴィン「リヴァイをリーダーとした少数精鋭班を配置すれば、更に説得力は増す。その場合の人員選択はリヴァイに任せることになるが」
リヴァイ「その点も問題ないな。変わった奴が多いが、実力も判断力も確かな奴らに恵まれてる」
エルヴィン「あとは……彼自身の言動に懸け、そして結果を示すことか」
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ペトラ「やったぁぁ!!リヴァイ兵長から指名された!」
オルオ「俺もだがな。やはり兵長程の方になると溢れ出る才能を見抜いてくださるぜ」
ペトラ「うわぁ……一気にがっくり来たわ」
ペトラ「グンタとエルドも同じだってね、よろしく」
エルド「おう、特別班って言うだけあって重要な責務だろうけどな」
グンタ「まぁ、リヴァイ兵長の顔に泥を塗るようなことにならないようにするぞ」
ペトラ「そうだね。うん、でも本当に嬉しいな。あっ、そうだ。この事お父さんに手紙で書こうっと」
ここまでで書き溜め終了。また夜に投下します。
乙
楽しみにしとく!
乙
乙
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