由子「ラブレターが入ってたのよー……」 (32)

このSSは次の要素を含みます。

・エセ関西弁
・百合

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洋榎「何!? ホンマかそれ!」ガタッ

絹恵「お姉ちゃん食いつきすぎ」

由子「そうなのよー。朝来たら机の中に入っててん……」

漫「わーええなそれ、羨ましいですわー」

恭子「も、もう読んだん? な、なんて書いてあった?」カタカタ

由子「読んだのよー。
   『放課後、屋上で待ってます』て……」

漫「え、放課後て今やないですか!」

由子「そうなのよー。
   正直ちょっと怖くてな、せやから皆に勇気もらってから行こうて思うて……」

恭子「そ、そうやったんか」

洋榎「いやゆーこ告白される側やろ?
   勇気も何も要らんのとちゃうか」

由子「そ、そうなんやけど……
   でもな、私正直あんまりオーケーする気ないねん」

漫「え、ホンマ!? そんなもったいない!」

恭子「いや、もったいないことないでゆーこ!
   今恋愛とかやないもんな!」

絹恵「この2人の反応の差」

洋榎「ふーん、なるほどなあ。
   まあでもそれやったら断ってくればええやん」

由子「うーん、でも……
   なんかせっかく勇気出して告白してくれてるのに、断るのも悪い気がしてなー」

洋榎「その思考は身を滅ぼすで、ゆーこ」

由子「わ、わかってる。わかってるんやけど……」

絹恵「ちなみになんであんま付き合う気せえへんのです?
   もしかして差出人わかってて、その人好みじゃないとか?」

由子「いや、差出人はわからへんのよー」

漫「今あんまり恋愛って感じやないんですか?」

由子「ま、まあそんなとこやなー」

絹恵「まあインハイも間近に控えてますからね。
   部活一本集中ですか」

恭子「お、おおさすがゆーこ! 意識高い!
   ええ心がけやで!」

漫「末原先輩の必死さが泣けてくる」

洋榎「まあでも、手紙もろたんやろ?
   はよ行ってやらな相手が可哀想や」

由子「そ、そうやね……
   い、行ってくるかなあ」

洋榎「おう、行ってこい行ってこい!
   そんでキッパリ断ってくるんやで!」

由子「わ、わかったのよー……」タッタッ


バタン


漫「……行きましたね」

絹恵「行ったな」

恭子「ゆーこ、断るよな……
   ああ、でももしかしたら場の雰囲気に流されてオーケーしてもうたり……
   ダメや、アカンでゆーこ、ちゃんと断らな……」ガクガク

漫「大丈夫です大丈夫ですよ末原先輩」

洋榎「……」

絹恵「どしたん? お姉ちゃん」

洋榎「なあ、こんな一大イベントを黙って見過ごせると思うか?」

漫「へ?」

洋榎「見に行くやろ! 当然!」

絹恵「え、見に……? さすがにお邪魔やろ、それ」

洋榎「だーいじょうぶやて!
   ちょっと屋上のドア開けて覗くだけや!
   そのぐらいやったら邪魔にもならんしええやろ」

漫「それちゃんと会話聞こえるんですかね」

洋榎「まあ何とかなるやろ。
   なんならしゃしゃり出てゆーこの代わりに断ったる!」

絹恵「いやダメやろそれ」

洋榎「まーそれは冗談にしても、気になるやろ?
   相手がどんなヤツか」

漫「まあ、それは気になりますけど……」

恭子「だ、大丈夫やろちゃんと断るんやから」ソワソワ

絹恵「末原先輩言動がおかしくなってる」

洋榎「つーわけでうちは行ってくる!
   代行にもそう伝えといてや!」ダダッ

漫「あ、行ってもうた!」

絹恵「そう伝えて、ってどう伝えればええのん」

恭子「だ、大丈夫ゆーこはちゃんと断るちゃんと断る……」

漫「普段ストッパーの末原先輩が見る影もないポンコツに」

屋上の扉の前

由子「ふう、この先が屋上か……」

由子「……」

由子「緊張するのよー……」

由子「告白するほうはともかく私は緊張なんてする必要ないはずやのに……
   なんでこんなに緊張してるんやろ……」

由子「……はあ、でも大丈夫かなあ」

由子「断るっては決めてるけど、でももし断れへんような流れになったらどうしようかな……」

由子「……いや、断るのよ。
   皆にも断るて言うてきたし。
   相手の人もわかってくれるはず」

由子「……よーし、行くのよー」

ガチャガチャ

由子「あれ?」

ガチャガチャ

由子「え、まさか……」

ガチャガチャ

由子「扉開かへん……?」

由子「え、これまさか……鍵かかってる?
   いくらやっても開かへんのよー……」

由子「え、こ、これどうするん?
   これやと手紙出してくれた人も……」

洋榎「お、ゆーこまだおるんか」

由子「!? え、洋榎ちゃんなんでここに……?」

洋榎「いやーどうなってるんか様子を見に来たんやけど。
   そこにおるってことはまだ悩んでるんか」

由子「い、いや決心はついたんやけど、これ……」ガチャガチャ

洋榎「ん?」

由子「ほら、扉が……」

洋榎「ドアが開かんのか」

由子「そうなんよー……」

洋榎「なるほどなー」

由子「多分鍵がかかってて……
   どないしよ、想定外なのよー……」

洋榎「そらぁどうしようもないな」

由子「ど、どうしたらええんやろこれ?
   相手の人もおらんみたいやし……」

洋榎「確かになー、扉開かんでも本気で告るんやったら扉の前ででも待ってればええのになあ」

由子「そうなんよ、どうしたらええかなあ?」

洋榎「まあ、どうしようもないから帰るしかないんとちゃう?」

由子「え、ええんかなあ……」

洋榎「だって他にしようがないやろ、差出人もわからへんのやし。
   いやーどこの馬の骨かわからへんけど、直接言うまでもなく断れてよかったな、ゆーこ!」

由子「えー……何か腑に落ちないのよー……」

洋榎「よーしじゃあ戻るか」

由子「う、うん……」

洋榎「……あ、でもちょっとアレやな、何か食べたい気分や」

由子「え、今?」

洋榎「そうや。ちょっと今小腹空いててん」

由子「そ、そうかあ」

洋榎「ちゅーわけで、ちょっと寄り道していかへん? マクドかどっか」

由子「え、え? 今から? でも部活中……」

洋榎「ええからええから、ちょっと行こうや」

由子「で、でも怒られんかなあ。代行に……」

洋榎「もう抜け出してしもてるやん。
   皆告白中て思っとるわけやし、大丈夫やて!」

由子「え、ええんかな…… しょうがないなー、じゃあ行くのよー」

マクド店内

洋榎「いやー部活を抜けだして食うビッグマックはうまいなー」モグモグ

由子「そ、そうやねー」

洋榎「ゆーこはホンマに飲み物だけでええのん?」

由子「あ、あんまりお腹空いてないからなー」

洋榎「女子力っちゅーやつか」

由子「女子力なんかなあ?」

洋榎「少食女子多いしな。
   でもホンマにそんなで大丈夫か?
   普段もゆーこあんまり食べてへんやん」

由子「私はそれで平気よー。
   むしろ洋榎ちゃんの方がなんでそんなに入るか不思議かなー」

洋榎「食いもんすなわち栄養やで!
   食うもん食わな体も育たへんわ」

由子「私はこれ以上育たんでええんやけど」

洋榎「でも大きなりたいやろ? 主にこの辺」ツンツン

由子「あー……」

洋榎「やろ? せやから食うねん。
   目指すはビッグマックやで!」

由子「ビッグマックかあ」

洋榎「はーあ、絹なんかとっくにビッグマックやのになあ。
   うちなんかただのハンバーガーやで。
   ホンマにどこで差がついたんやろな! ハハハ……」

由子「あはは……」

洋榎「ゆーこぉ…… うちらハンバーガー同士、頑張ろうな」

由子「何を頑張るのよー……」

洋榎「まあハンバーガーはともかくや。
   ゆーこ、さっきの告白ホンマに断るつもりやったんか?」

由子「! うん……そのつもりやったけど」

洋榎「ふうん、なるほどな……
   でも相手によっては考えなくもなかったんとちゃうか?」

由子「うーん……まあ良さげな人やったら、考えたかもなー」

洋榎「なるほど。
   じゃあもし、それがずばりゆーこの好きな人やったら、もちろんオッケーやな?」

由子「!? え、ちょ!?
   何言うてるの!?」

洋榎「うちの目はごまかせんでーゆーこ。
   ゆーこ今好きな人おるやろ」

由子「え、あ、いや……その……」

洋榎「やーっぱりな!
   いやーカマかけに弱すぎるでゆーこ」

由子「ちょ……ひどいていうか……
   ええっなんでわかったのよー?」

洋榎「だってなーんかゆーこ、最近黄昏れてるやん何ていうか」

由子「え、そ、そうやったかなー……」

洋榎「ちなみにその相手誰なん? 同じクラスか?」

由子「え、いや、それは……」

洋榎「なーんやそのぐらい教えてくれてもええやろ?
   最悪イニシャルでもええで」

由子「いや、ひ、秘密にしときたいのよー……」

洋榎「えーなんやつれないなあ。
   ええやん、うち応援したるからさ」

由子「そ、それは……」

洋榎「うちの知ってる人か?」

由子「ま、まあ、知ってる人かなー」

洋榎「ほー知ってる人か!
   じゃあ色々手伝いはしやすそうやな」

由子「そ、そうやなー」

洋榎「話したことは?」

由子「……あるのよー」

洋榎「おお、なら話は早いやん! すぐお近づきになれるで!
   ちなみに今はどんな関係? 友達?」

由子「うーん……友達やねー」

洋榎「友達か! ならもっと話は早いな!
   ちなみにそいつは今コレおるんか?」小指立て

由子「うーん……多分まだいないのよー」

洋榎「おお、完璧やん!
   そんなん絶対成功するで、言うてみ!」

由子「え、えー……
   ちょ、ちょっと勇気が……」

洋榎「そんなん言うてみんと始まらんて!
   好きなんやろ?」

由子「……まあなー」

洋榎「大丈夫やて、ほら、こんなかわええ女子高生ふるやつなんかおらんて!」

由子「そ、そんな」

洋榎「謙遜すんなやー、そんなかわええ顔しよってからに」

由子「もー///」

洋榎「まあそんだけ有望なら必要ないかもしれへんけど……
   なんかあったらうちも手伝うから、相談してな!」

由子「う、うん。
   あ、ありがとうなのよー」

洋榎「ええってええって。
   ちなみに、どうやって告白するつもりなん?」

由子「えー……どうしようかなー?」

洋榎「まー悩むよな。
   そいつどういうタイプ? 真面目そうなやつか?」

由子「んー、真面目って感じではないかなー……」

洋榎「じゃーバカかチャラい感じか!
   それやったらもう直接ストレートに言うたれば大丈夫やろ」

由子「そ、そうかなー」

洋榎「そうやて!
   妙にガードの固いやつならともかく、
   ゆーこの告白なんて断らへんやろ」

由子「じゃ、じゃあなんとか会う機会作って、言うてみるかなー」

洋榎「おーそれがええで! よっしゃ応援したる!」

由子「う、うん。ありがとなー」

洋榎「ふう。でもこんだけ話聞けたら、わざわざドッキリ仕掛けた甲斐があったなあ」

由子「え、ドッキリ……?」

洋榎「せや。前々からゆーこが気になってたから、話聞いときたくてな」

由子「え、えーと、じゃあ……これって計画通りなん?」

洋榎「そういうことや。あのラブレターもうちが書いて入れた」

由子「えー! そうやったん!?
   そ、それはまんまと騙されたなー……」

洋榎「いやースマンスマン、こんなふうになってしもて」

由子「は、はあ……」

洋榎「いやーでもおかしいと思わんかったか?
   屋上に呼び出してるのに屋上の扉が開かんかったり、その後タイミング良くうちが来たり」

由子「うーん、おかしいとは思うてたけど……」

洋榎「まあ全てはそういうことや」

由子「もーひどいのよー洋榎ちゃん。
   何もこんなやり方やなくても」

洋榎「いやースマンスマン。
   ちょっと悪戯心が働いてしもたわ」

由子「もー、しゃーないなー……」

洋榎「よーしじゃあそろそろ戻るか、早よせんと代行が怒りそうや」

由子「もう既にアウト気味やけど……戻るかー」

麻雀部部室

洋榎「怒られたな」

由子「怒られたなー」

絹恵「当たり前やで、そら部活時間中に抜けてたら」

恭子「ゆーこはともかく、主将は完全に自業自得ですね」

漫「いやーでも代行が怒ってるの初めて見ました」

絹恵「大声でコラッ! って感じやなくてじわじわと詰め寄ってく感じやったな」

洋榎「やー怖かった怖かった。
   笑うてても怖いっちゅーのはあるんやな」

恭子「『もっとキャプテンとしての自覚を持て』みたいなこと何回も言われてましたね、いい笑顔で」

洋榎「いやー正直反省しとる」

漫「で、どうなったんです、告白は」

恭子「!」

由子「あ、それなんやけど……」

洋榎「実はな、相手が来んかってん」

漫「え、来なかった?」

絹恵「え、どういうことそれ?
   自分で呼び出しといて来んかったの?」

洋榎「せや。『屋上で待つ』て書いてあったやろ?
   けど実際行ってみたら屋上の扉が開かんでなー」

漫「え、屋上の扉締まってたんですか?」

洋榎「せや。まあそれで諦めて帰ったか、あるいはイタズラかやなー」

恭子「はあ、何やそれ。
   まあとにかく何もなかったんですね」

漫「よかったですね末原先輩」

恭子「うるさいわ」

絹恵「なーんや。ひっそり期待してたのになあ」

漫「期待?」

絹恵「ひょっとしたらこの機に真瀬先輩にもできるんかなーって思うてたんですけど」

洋榎「期待してたんか」

絹恵「だって真瀬先輩って実際めっちゃかわええやないですか? 今までできてへんのが不思議で」

恭子「いやできんできん! できんよなゆーこ!」

由子「え、えー……」

漫「末原先輩……」

恭子「でも、結局そのラブレター何やったんでしょうね」

洋榎「まあイタズラやろ? 本気やったらトンズラとかありえへんし」

漫「えーでもそれちょっと許せんなあ。
  真瀬先輩の心を弄ぶなんて」

洋榎「まあ言うても、差出人わからへんからなあ」

由子(まあ洋榎ちゃんなんやけどね)

絹恵「この中やったらお姉ちゃんかな、一番やりそうなの」

洋榎「いやさすがにうちもやらんわ!
   まあ絹にとかやったらやるかもしれんけど」

絹恵「いやそれやったら怒るで」

洋榎「おーおっかない、じゃあ恭子にしとこか」

恭子「なんでやねん!
   ていうかイタズラて言われて入れられたらイタズラてわかりますよ」

洋榎「えーでも、入ってたら意外と信じるやろ?」

恭子「いや信じない信じない、うち宛に来るラブレターなんて全部信じません」

漫「末原先輩が可哀想な人になっとる」

絹恵「末原先輩もかわええと思うけどなあ」

洋榎「よーしじゃあ明日恭子の机に『屋上に来てください』とか書いて入れといたる。
   信じるかどうかは恭子次第やで」

恭子「いやそんな予告までされたらさすがに騙されんわ!」

翌日、学校

洋榎「いやー昨日はおもろかったなあ」

絹恵「怖かったけどな、代行」

洋榎「あの笑顔はやばかったなあ。
   漫画やったらあの顔の上に黒い横線がびっしり入ってたで」

絹恵「あはは。
   そういえば、結局末原先輩にアレ書いたん?」

洋榎「いやー面倒やし書かんかった。
   でも今頃机の中チェックしとるやろなー」

絹恵「しとるやろなー」

洋榎「いやーでも実際入れてたら恭子、本物の可能性とか考えそうやな」

絹恵「あー考えそう。
   1%ぐらい本物の可能性がーとか言うて」

洋榎「あー言いそうや!
   とか言うてホンマは本物の可能性にめっちゃ期待してんねん!」

絹恵「あはは。
   あ、2年の教室向こうや、じゃあ後で」

洋榎「おう、後でなー」

洋榎「ふう、どっこいしょ……
   ん、何や机に入っとる? ……ってまさかこれ!」

大事なお話があります。放課後、屋上で待ってます。


洋榎「……」

洋榎「うちかいな……」

洋榎「ははん、『屋上で待ってます』やて? 丸わかりや!
   昨日の今日でよくまあこんな……
   麻雀部の誰かやな」

洋榎「しかし誰やろな、恭子? 絹?
   いや絹は一緒に来たからありえへんか……
   じゃあ恭子あたりか?」

洋榎「いや恭子もこんなイタズラ積極的にやる方やないよなあ……
   そしたら漫か……?
   ゆーこもそういうタイプとちゃうし……」

洋榎「……
   んー、わからん! 部活の時にでも探りいれてみるか」

洋榎「ふう、まったく、くだらんなあ」

洋榎「……」

洋榎「『屋上で待ってます』なんてなあ。
   屋上の扉開いてへんのわかってるっちゅーんに……」

洋榎「ドッキリに掛けるつもりならアホすぎるな。
   本気の告白やったら屋上なんて書かんともっと他にあるし……」

洋榎「でも待てよ?
   うちら以外の誰かやったら…… ていうか男子とかやったら……
   屋上開かへんの知らんで普通に書いた可能性も……」

洋榎「……」

洋榎「いやいや! そんなんあるわけないやろ!
   屋上開かんのなんてちょっと調べればわかることやし……」

洋榎「いや、でも知らんで書く可能性もあるか……」

洋榎「……
   いやいや、ないない! そんなうちなんかにラブレターが……」

洋榎「……いや、来ないとも言い切れんか……?」

洋榎「……せやな。うちかてうら若きJKや。
   かわええ方とは思ってへんけど……
   一人くらいうちの魅力にとりつかれた男がおっても……」

洋榎「いやいや、やっぱりそんなんありえへん!
   どうせ99%イタズラやでこれは!」

洋榎「……でも、1%ぐらい本物やんな……」

洋榎「くそーどっちやねん!
   麻雀の打牌でもこんなに悩んだことないで!
   こんな長考しとったらキレられるわ!」

洋榎「よーしもう考えるだけ無駄や!
   放課後はちょっとだけ様子を見に行く! そうしよう!
   でドッキリっぽかったらすぐトンズラや!」

洋榎「うん、これでええ。
   本物っぽかったらそのまま聞く、やな。
   ありえへんけどな!」

洋榎「……くそー何期待してんねん自分。
   1%でも本物の可能性考えるとか……
   恭子のこと、バカにでけへんで……」

放課後

洋榎「……さて」

洋榎「屋上に上がる階段の前の廊下に立っとる、わけやけど」

洋榎「まだ誰も来てへんみたいやな……
   もうちょい待っとくか」

洋榎「あの扉が開かんのはわかっとる。十中八九ドッキリや。
   恭子とか漫が見えたら即行部室にダッシュやな」

洋榎「……」

洋榎「しかし周り誰もおらへんな……
   教室がないから当たり前やけど」

洋榎「静かやし、なんか落ち着かんな……」

洋榎「……」

洋榎「くそー、まだ1割ぐらい期待してるわ自分……」

洋榎「ないない、絶対ない。
   どうせ恭子だか漫がニヤニヤしながら現れてくんねん」

洋榎「そしたらすぐ部室に行かんとな」

洋榎「もうちょい人目に付かん所に隠れるか。
   トイレの入口辺りでええやろ」ササッ

洋榎「これでいつでも逃げる準備は万端や」

洋榎「……」

洋榎「うう、なんやドキドキしてきたな……」

洋榎「もしもやで、あそこになんや知らん男子が現れて……階段上がってったら……どうしよか?
   受けて立つか? オーケーするんか?」

洋榎「……そら相手次第か」

洋榎「あがー、もう何期待してんねん……
   だからそんなんないない、絶対ないからな」

洋榎「昨日のゆーこもこんな気持ちやったんかな……
   いや状況が違うか」

洋榎「でも改めて謝っといた方がええかもな。
   部室戻ったら謝っとこう」

洋榎「ていうか、いつまで待てばええねんうちは。
   誰でもええからはよ現れてや……」


カツカツ


洋榎「!!」ビクッ

洋榎「誰か上がってくる!」

洋榎「見られんようにそーっと……
   見えんなあ。誰や?」

洋榎「!?」

洋榎「……は? マジか?」

洋榎「うわ、屋上の方に上がっていっとる……
   こら間違いないわ、差出人」

洋榎「……いや、まさか。まさかやろ?
   こんなことする奴じゃ……」

洋榎「扉の前まで行った。
   あそこで待つ気か?」


カチャカチャ


洋榎「!!」

洋榎「鍵!? 鍵持っとる!
   そんでドア開けた!」


バタン


洋榎「出ていった……」

洋榎「……」

洋榎「……いやこれ、ドッキリとかやないやろどう考えても……
   えらいことになっとるで」

洋榎「とりあえず……
   うちも行くしかないな……」

屋上

洋榎「……」

洋榎(まさか屋上に出られるとは……鍵があることなんか知らんかったで)

??「……」

洋榎(風が強いな……肌寒い)

??「……」

洋榎(向こうは気まずそうに立ってる。本物の告白やしな……
   そら気まずいやろうけど)

??「……」

洋榎(しかしどうするんや、この状況……
   うち何も心の準備してないで……)

??「……」

洋榎(黙ってても埒が明かん……
   とりあえずこっちから切り出すか)

洋榎「……あの」

??「……」

洋榎「お、屋上の鍵って借りれるんやな。
   うち初めて知ったわ」

??「……」

洋榎「で、その…… 手紙入れたんやな?
   うちの机に」

??「……うん」

洋榎「そ、そうか」

??「……」

洋榎「……スマンな、昨日あんな話の流れになったからてっきりイタズラやと思うて来てみたけど、
   イタズラとはちゃうねんな?」

??「……うん」

洋榎「ま、まあイタズラするようなタイプとちゃうもんな。
   うちに話、あるんやな。大体察しついてるねんけど」

??「……」

洋榎「そんで……大事な話っちゅーのは何や?
   ゆーこ」

由子「……」

由子「洋榎ちゃん」

洋榎「は、ほぁい」

由子「好きです」

洋榎「……」

洋榎「……や、やっぱりそうなんか」

由子「う、うん。昨日は言い出せんくて……
   こんな形で呼び出してごめんな」

洋榎「い、いや、全然ええで!
   昨日の雰囲気やと言いづらかったやろうし!」

由子「う、うん。
   洋榎ちゃんずっと他の人のことやと思ってたから、それに場所もマクドやったし」

洋榎「ま、まあええで」

由子「……」

洋榎(そうか、そしたら昨日は他人やと思うて無責任なことばかり言うてたんやな……
   『こんなかわええ女子高生をふるやつなんかおらへん!』ってか……
   うああ、今それが自分に降りかかってるんか)

洋榎「えーっと、とりあえず、その気持ち正直に言うてくれてありがとな」

由子「う、うん」

洋榎「その……スマンな、今うちものすごい戸惑ってて……
   答え出せそうにない」

由子「す、すぐやなくてもええよ。
   私もいきなりやったし…… いくらでも待つのよ」

洋榎「そ、そうやな。少し考えさせてほしい」

由子「うん、わかった」

由子「……ありがとな」

洋榎「な、なんでゆーこが感謝するん」

由子「だって、こんなこと言うたらドン引きされてまともに取り合ってもらえんかもて思うて……」

洋榎「そ、そんなことあらへん!
   少なくともうち、ゆーこのことは好きやし。まあ友達としてやけど」

由子「……うん」

洋榎「そうやなあ……
   一晩だけ時間もらってもええか?
   明日には返事するから」

由子「……わかった」

洋榎「まあ、前向きには考えてるからな。
   決心ついたらすぐ連絡する」

由子「……うん」

洋榎「……いやーでも、何ていうか予想外の連続やったな」

由子「……いきなりごめんな」

洋榎「いやいやええねんええねん。
   ツーパイ切ったらダマでダブロンされたってレベルの衝撃や」

由子「あはは……」

洋榎「いやな?
   最初ゆーこが階段上っていくの見えた時な、ゆーこがイタズラ仕掛けたんか!? って一瞬思うてしもて……
   でもそのまま鍵開けて屋上入っていったから、これガチなんやな、って思うて」

由子「あ、洋榎ちゃん見てたのね」

洋榎「トイレの入り口から見とった。
   いやーその時からテンパってたわうち、どうしようかて」

由子「テンパイしてたかー」

洋榎「そうやでーテンパイしてたで。
   そんでテンパイとるために北かなんか切ったら三色ドラ2の地獄単騎ダブロンや」

由子「あー痛いなー」

洋榎「子の満貫2つで16000の出費…… って何の話やねん!」

由子「何の話やろねー」

洋榎「まああれや、ゆーこがテンパイとるために危険牌切ってきたわけや、
   後はうちがロンするかどうかってことやな」

由子「はは、うまいこと喩えるなあ」

洋榎「ちなみに役は何がええ?」

由子「うーん……清一色かなー」

洋榎「なるほど、ゆーこ一色に染まれってことか。
   ゆーこもうまいやん」

由子「それほどでもないのよー」

洋榎「じゃあピンフも付けとこか。メンチンピンフの7翻で12000や」

由子「それピンフなくても点数変わらんような……」

洋榎「気持ちや気持ち。今後の2人の平和を願ってってことや」

由子「え、それってもうほとんどOKの返事とちゃうん?」

洋榎「はは、そういやそうか」

洋榎「じゃあ一盃口も付けとこか。そんなら8翻で16000や」

由子「なんで一盃口?」

洋榎「知っとる? “イーペーコー”て“一杯行こう!”から来てるそうやで」

由子「えー、知らんかった」

洋榎「一杯行こう、つまり乾杯ってことや!」

由子「何飲むん?」

洋榎「そらビールやろ」

由子「私ら未成年やのに?」

洋榎「ノンアルとかあるやろ。まあうちもよう知らんけどな」

由子「ないんかー」

洋榎「ま、ピンフも一盃口も付けるかはうち次第やけどな。
   とにかく、決まったら連絡する。
   楽しみに待っててや」ニヤニヤ

由子「もー告られた側やからって楽しそうに」

洋榎「まーま。とにかく明日なー」

由子「うん!」

>>23 ミス

洋榎「じゃあ一盃口も付けとこか。そんなら8翻で16000や」

由子「なんで一盃口?」

洋榎「知っとる? “イーペーコー”て“一杯行こう!”から来てるそうやで」

由子「えー、知らんかった」

洋榎「一杯行こう、つまり乾杯ってことや!」

由子「何飲むん?」

洋榎「そらビールやろ」

由子「私ら未成年やのに?」

洋榎「ノンアルとかあるやろ。まあうちもよう知らんけどな」

由子「そうかー」

洋榎「ま、ピンフも一盃口も付けるかはうち次第やけどな。
   とにかく、決まったら連絡する。
   楽しみに待っててや」ニヤニヤ

由子「もー告られた側やからって楽しそうに」

洋榎「まーま。とにかく明日なー」

由子「うん!」

翌日、麻雀部部室

由子「……」ニヤニヤ

恭子「どしたんゆーこ?
   なんや嬉しそうに」

絹恵「珍しいですね」

由子「んー、まあなー」ニヤニヤ

恭子「何や、何があったん?」

由子「んー、秘密ー」

漫「あれ、これは怪しいですよ真瀬先輩」

絹恵「え、まさかこの前の人から告白……」

恭子「はは! いやいやまさか!
   そんなんやないよなあ? ゆーこ?」

由子「恭子ちゃん、目ぇ笑ってないのよー」

漫「怖い笑顔ってつい最近どっかで見たばっかですね」

恭子「はは、スマンスマン。
   なんか爆発する人間の匂いがした気がしてな」

漫「え? 爆発ってうちですか?」

恭子「いや漫ちゃんとは違う意味の爆発やなあ」

絹恵「え、じゃあどんな爆発ですか」

恭子「まあジェラシー的な意味や」グリグリ

由子「痛い痛い痛い、力入りすぎよー」

恭子「よーし荷物検査や!
   ゆーこ、何か芳しいモンがカバンの中に入っとるやろ!」

漫「うわあ、普段ストッパーの末原先輩が」

絹恵「完全にお姉ちゃん側の人間に」

由子「え、えー、どうかなー」

恭子「なーんやその反応、バレバレやで! 絶対なんかあるわ!
   これかゆーこのカバン……
   あ! なんやこの紙! この前みたいなやつや!」

由子「あはは……」

漫「え、何々!? なんて書いてあるんです!?」

絹恵「告白ですか!?」

恭子「……
   『その七萬、ロン! 16000点』」

漫「?」

恭子「え? 何これどういうこと? ゆーこ」

由子「さあなー」ニヤニヤ


カン!

以上です。

由子あんなにかわいいのに主人公になってるSSが少ないので書きました。

ぶひぃいいい!

かわいいなあ、姫松組

乙乙、なんだけどこれ末原先輩は…

おつ
俺ののよーさんは可愛いなぁ


面白いんだが末原先輩の言動の意味がいまいち分からんかった

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