【モバマス】ウチの事務所のC4U (57)
2月14日、朝――――事務所玄関前
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
まゆ(CuPさんに一番最初にチョコレートを渡そうと思って、朝一番に事務所に来たら……)
智絵里(まゆちゃんと鉢合わせしちゃうなんてッ……!?)
まゆ「お、おはようございまぁす、智絵里ちゃん」
智絵里「お、おはよう、まゆちゃん。……その、朝、早いですね?」
まゆ「智絵里ちゃんこそ。今日はずいぶんと早いんですねぇ。まだ事務所も空いてないのに」
智絵里「きょ、今日はたまたま……。まゆちゃんも、いっつもこんなに早いわけじゃあないよね」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
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まゆ(彼女の手荷物……いつもより一つ多い)
智絵里(まゆちゃんも私と同じように、その一つ多い荷物はおしゃれな紙袋ッ)
まゆ(これは、間違いなく……)
智絵里(CuPさんへのチョコレートッ……!)
カツン カツン カツン カツン あら?
ちひろ「2人とも。今日はずいぶんと早いのね。今、開けるから待っててくださいね」ニッコリ
ガチャ スタスタ さぁお仕事ガンバロっ 2人は談話スペースでゆっくりしててねぇー
――――事務所談話スペース
まゆ(朝一番ならCuPさんとこっそり1対1になるチャンスだと思ったんですけどぉ……)
智絵里(おんなじこと考えるよね……。それにまだCuPさんは来てない……。なら!)
智絵里「ま、まゆちゃん……もしかして、その紙袋……CuPさんへの“チョコレート”ですか?」
まゆ(――仕掛けてきたっ!? もちろん、ここは下手にひるまないッ)
まゆ「そうですよぉ。CuPさんのために用意したチョコレートです。そういう智絵里ちゃんだって」
智絵里「――はいっ! CuPさんのためだけに用意しました。チョ……チョコです」
まゆ「うふふふ♪ 一緒ですねぇ。……そのチョコは、もちろん――」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
智絵里「手作りですッ!」ドンッ
まゆ「当然ですよねぇえ!」ドドンッ
ガチャ
CuP「おはようございまーす」
まゆ・智絵里「CuPさんっ!!」
CuP「おっ。2人とも今日はずいぶんと早いね。たしか2人とも予定は午後から――」
智絵里「あっ、はいっ。予定は午後からなんですけど……CuPさんに……」
まゆ「…………」
智絵里(――!? まゆちゃんが黙っているッ……。私から渡してもいいの? でも……)
智絵里(ここで渡そうとすれば、十中八九2人同時に渡すことになる……。どちらが一番手かは曖昧に……)
智絵里(かと言って、私から「後で話したいことがある」とでも言えば、今、このタイミングでまゆちゃんが渡してしまう……これはッ)
まゆ(……一番手をはっきりさせるためにはッ、先に言葉とした方が、“負ける”ッ)
CuP「どうした2人とも? …………まぁ、何かあったら声をかけてな」
スタコラ 着席ィー
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
まゆ「智絵里ちゃん」
智絵里「な、何でしょう……か?」
まゆ「いつ――渡すんですかぁ?」
智絵里「ど、どうしよっかなぁ……。まゆさんこそ、いつ渡します?」
まゆ「…………」
智絵里「…………」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
まゆ(この勝負……)
智絵里(どちらがCuPさんの一番手かを決めるためには……)
まゆ(先に1対1の状況を作った方が勝つッ!)
智絵里(先に1対1の状況を作った方が勝つッ!)
タイトル見て「どこかの大統領のスタンド?」と見間違えてしまった
>6
ちょうどヴァレンタインですしね(その手があったかぁ……)
チョコが挟まれるのか…
*****
2月14日、午前――――事務所エントランス
CoP「おはようございます」
奈緒「おはよー」
ちひろ「おはようございます。CoPさん、奈緒ちゃん。2人揃って出社とは仲睦まじいですね」
奈緒「ちっ、ちひろさんっ……! そんなんじゃないってば!」
CoP「まぁ、仲は良いですけど、さっき階段の下でたまたま会っただけですよ」
奈緒「そ、そうだよ。妙なニュアンスこめないでくれよ……」
ちひろ「これはこれは。失礼しました。でも、仲は良いんですね」ニヤニヤ
奈緒「そ、そりゃあ、さ……な、仲は……悪くは、ないよ……」///
CoP「じゃあ、奈緒。13時前には仕事に向かおうな。それまでは自由にしててくれ」
奈緒「お、おう。CoPさんもお仕事――がんばってな」
CoP「ありがとう! さて、今日の予定は――……」
――――事務所談話スペース
スタスタ 荷物オキー ソファー座りー
おはようございまぁす おはようございますっ おう、おはよう
奈緒(まゆと智絵里はチョコ渡したのかな……?)
奈緒(って、この感じじゃ2人ともまだだろうなぁ)
奈緒(2人の間に流れてる緊張感が全部、物語っちゃってるよ……)
頼子「みなさん、おはようございます」
おはようございまぁす おはようございますっ
奈緒「おっ、頼子さん。おはよう」
頼子「おはようございます、奈緒ちゃん。……なんだか、まゆさんと智絵里さん、ソワソワしてないですかね」ボソボソ
奈緒「あんまり気にしない方がいいよ、頼子さん」ボソボソ
奈緒「…………はぁ」
頼子「そういう奈緒さんも、どうしたんですか? 溜息なんかついて」
奈緒「い、いやっ。なんでもないよ! なんでも……」
頼子「さては……奈緒さん。奈緒さんもCoPさんへのチョコでソワソワしてますね?」
頼子「しかも、既に一度、チャンスを逃しているとみました」
奈緒「っ!?」
頼子「図星、でしょうか」
奈緒「し、仕方ないだろ……!」
奈緒「事務所の前で会うなんて思ってなかったし……」
頼子「なるほど。ということは、しっかり用意しているんですね」
奈緒「――ハッ!」///
頼子(少し踏み込みすぎたでしょうか。奈緒さんの顔、真っ赤です)
頼子「すみません、奈緒さん。チャンスがあったのに渡せないのは残念でしたね」
奈緒「いやいや。全然残念じゃないし、義理だからそんなに気合い入れるものでもないし」シュン
頼子「――ふふっ。そうですか」
頼子「まぁ、きっと、これからいいタイミングがありますよ」
奈緒「……そういう頼子さんはどうなのさ? CoPさんに渡した?」
頼子「私……ですか……。そうですね。私は……もう済みましたよ」ニッコリ
奈緒「えぇっ!?」
奈緒(そ、そんな……。事務所に来たばっかりなのに?)
奈緒(ちょ、ちょっと待って。だとしたら――待って――CoPさんに……)
奈緒(事務所に来る前に渡したってこと?)
奈緒(いやいや、ということは、いやいやいや、頼子さんとCoPさんって)
奈緒(“朝、事務所に来る前に一緒にいるような関係”?)
奈緒(いやいやいやいや、本命チョコとは限らないし、いやいやいやいやいや、だとしたら――……)目グールグル
頼子「……奈緒さん? 大丈夫、ですかね」
>8
チョコで挟まれるのかも……
なんだかそんな別次元の話も面白そうですね。
どなたか書いてください!なんでもしまむら!
*****
2月14日、昼休み少し前――――事務所エントランス
ドタドタ バタバタ ガチャ バタン
裕子「おはようございまーす!」
光「おはようございますっ!」
麗奈「おはよう! 早速で悪いけど、ちひろさん、今日は応接室空いてる?」
ちひろ「はい、おはようございます、みなさん」
ちひろ「応接室なら今日一日、空いてますけど」
麗奈「わかったわ。借りるわねっ」
裕子「ありがとうございます、ちひろさんっ!」
光「なぁ、本当にやるのか――……」
ドタドタ ガチャ バタン
ちひろ「3人とも朝から一緒の仕事だった割に元気ですねぇ」ニコニコ
――――事務所応接室
麗奈「よしっ! これから準備するわよ!」
裕子「気合い入れましょう、麗奈ちゃん!」
光「2人とも……。普通に渡せばいいんじゃないかなぁ……」
麗奈「それじゃあ、つまらないでしょ。どうせなら、PaPのびっくりした顔、みたいじゃない」
裕子「そうですよ、光ちゃん。日ごろからイタズラされ慣れているPaPさんには生半可なやり方じゃ退屈されちゃいます」
光「むしろ普通に渡した方が驚かれると思うんだよなぁ……アタシたちの場合」
裕子「ですから、ここはひとつ、ババーンと派手なサイキック・ヴァァレェェンティンッをですね」
麗奈「ユッコはたまにわけわかんない巻き舌するわよね」
光「だいたいイタズラのどこにサイキック要素があるんだろう……」
裕子「麗奈ちゃんはどっちの味方なんですか? やるんでしょう? 私たちのサイキックを」
麗奈「イタズラね。というより、今回は魅せ方にこだわるわ。エンターテイメントでいくわよ!」
麗奈「……光も。アンタだってあいつの喜びっくりする顔、見たいでしょ」
光「まぁ、そうだけど……。わかった。つき合うよ、麗奈」
光「――でも、あんまりやりすぎないようにしような」
裕子「決まりですね!」
麗奈「よしっ。それじゃあ、今回のレイナサマの案は――こうよッ!」バンッ
裕子「ほほう……これは……なるほど、なるほど。…………どういうことです?」
麗奈「……ユッコは私の指示通りに作業してくれればいいから」
光「いろいろ道具が必要そうだけど?」
麗奈「事務所で調達できそうなものはちょろまかしちゃうわよ。それ以外はアタシが持ってきたわ」
光「だから、今日の麗奈の荷物はこんなに大きかったのか……」
麗奈「とりあえず、光は事務所からガムテープと長めの定規、鉛筆削り、落としても大丈夫そうなちょっと重い物を調達してきて」
光「OK」
麗奈「あ、あと、輪ゴムもお願い。たくさんね! さて、ユッコはさっそく私と一緒に作業よ」
裕子「らじゃー!」
麗奈「ククク……。いいこと、PaP。バレンタインだからって甘いと思ったら大間違いよ」
麗奈「目に物見せてくれるから、覚悟しておきなさい。ククク……アーッハッハッ……ゲホッゲホッ」
裕子「大丈夫ですか! 麗奈ちゃん」サスサス
*****
2月14日、お昼休み――――事務所談話スペース
まゆ(結局、お互いにチャンスを掴めないまま……お昼を迎えてしまいましたぁ)
智絵里(いつもCuPさんにコーヒーを入れに行くまゆちゃんも動かないし)
まゆ(CuPさんが席を立って一人になったときを狙おうにも、智絵里ちゃんも一緒に動いてきますし……)
智絵里(これは……厄介、です。そして、もうこの時間)
まゆ(お昼ご飯の時間はチャンスでもあります。でも、この膠着状態だとせっかくのチャンスが活かせません……)
まゆ(賭けにはなりますけど……ここは動かなければ埒があきませんね。なら……!)
まゆ「……智絵里ちゃん」
智絵里「は、はいっ!?」
まゆ「お昼、ですねぇ……。お昼の用意、智絵里ちゃんはありますかぁ?」
智絵里(このタイミングでそれを聞いてきた? 私はお昼の用意をしていない……)
智絵里(嘘はつけない。簡単にバレるから……)
智絵里(――もし、まゆちゃんがお弁当を持っていなかったら?)
智絵里(きっと一緒に買いに行くか、食べに行くことになる。きっとCuPさんも一緒に)
智絵里(状況は変わらない……)
智絵里(――じゃあ、まゆちゃんがお弁当を持っていたら?)
智絵里(私だけお弁当を用意しに行くことになる……これは問題じゃあない。むしろ好機ッ)
智絵里(だって、“私だけ席を立つ”という口実ができるだけ)
智絵里(そうなったら、買い物に行くまえにCuPさんのデスクに寄ればいい)
智絵里(つまり――これは悪手だよ、まゆちゃんッ!)
智絵里「――わ、私は……お昼、用意してないんだ。まゆちゃんは?」
まゆ「まゆはお弁当を持ってきてますよぉ」
智絵里(やった!)
まゆ「だから、CuPさんに訊きに行きましょう」
智絵里「――えっ!?」
まゆ「だ・か・ら――訊きに行きましょう。CuPさんが、“お昼ご飯を用意しているかどうか”を」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
智絵里「」ゴクリ
智絵里(つ、つまり、まゆちゃんは今から――決着をつけるつもりですッ!)
智絵里(CuPさんが、お昼ご飯を用意していなかったら、私と一緒にお昼ご飯を買いに行くことなる。これは――私の勝ちッ)
智絵里(用意していたら……。きっと、CuPさんとまゆちゃん、ご飯食べるのは待っててくれる……)
智絵里(でも、私が一人で買い物に行って――まゆちゃんはCuPさんと二人きりでここで待つ――まゆちゃんの勝ちッ)
智絵里(ここに来て……まゆちゃんはCuPさん本人に賭けてきたッ!!)
まゆ(そうです! まゆは――CuPさんとの運命の力を信じるッ!)
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
まゆ「……じゃあ、行きましょうか、智絵里ちゃん」
智絵里「は、はいっ。行きましょう。まゆちゃん」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
まゆ「…………」
智絵里「…………」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ガチャ バタン タッタッタッ
みちる「CuPさぁーーん!」
まゆちえ「!?」
みちる「大原みちる、ただいま戻りましたぁーー!」
CuP「おっ、おかえり、みちる」
みちる「CuPさん、よかったぁ。まだデスクにいましたね。実は渡したいものがあって」ゴソゴソ
みちる「ハイっ」ヒョイ
CuP「おっ。チョココロネだね」
みちる「そうですよー♪ あたしイチオシのチョココロネですよー!」
みちる「他にもチョコクロワッサンとかチョコロールケーキとかチョコチップメロンパンとか、いろいろ用意してきました!」
CuP「まさか、その抱えている袋の中、全部、僕へのパンかい?」
みちる「その通りですっ! バレンタインのチョコ! パン! です! 喜んでもらえますか?」
CuP「ははは。ありがとう。これだけ量があるっていうのも、流石だな」
みちる「えへへっ♪ これ、全部あたしが焼いてきましたよ! 味見もたくさんしましたから自信作です」エッヘン
CuP「それは楽しみだ。嬉しいよ。ありがとうな、みちる」
みちる「いえいえ~。CuPさんの喜ぶ顔が見れれば~」
まゆちえ「」プルプル
CuP「ん? どうしたんだい、2人とも。……その、なんだ……涙ぐんで2人してこっち見つめて」
まゆちえ「」グスッ
智絵里「ぷ、ぷろでゅーさぁーさぁん……!」フルフル
まゆ「ま、まゆと……智絵里ちゃんの……チョコも……」フルフル
まゆちえ「受け取ってくださぁぁいぃ!」ダバァ
ダバダバダバダバ ヒシッ
みちる「二人とも、CuPさんにダイビング抱きつきとは大胆ですね」
CuP「おーよしよし。なんだかよくわからないけど、よしよし」ナデナデ
CuP「二人のチョコもありがたくいただくよ~」ヨシヨシ
まゆちえ「うわあぁぁ~~ん」
みちる「…………まゆちゃんも智絵里ちゃんも、パン、食べますか?」スッ
まゆちえ「…………いただきますっ!」グスッ
あ、チョコレート for you で C4U か
*****
2月14日、おやつ時――――事務所談話スペース
裕子「光ちゃん、光ちゃん。PaPさん、いつ帰ってきますかね?」ソワソワ
光「たしか、そろそろだって言ってたけど」
麗奈「ユッコ……堂々としてていいのよ。準備はバッチリ。PaPの机の上に呼び出し状も置いておいたわ」
ガチャ
PaP「ただいま戻りました」
麗奈「キタっ!」
裕子「ささっ、隠れましょう! 応接室の隣の部屋に!」
光「うわぁ、なんだかドキドキしてきた」
裕子「PaPさん、喜んでくれますかね!」
麗奈「ふふっ……きっと驚くに違いないわ。この部屋ならその表情もこっそり拝めるってものよ」
裕子「隣のこの部屋、通称『観察室』は応接室と大きなマジックミラーで繋がってるんですよね。ですから、サイキック透視がし放題!」
光「突然の説明口調!」
裕子「これぞサイキック状況説明!」
麗奈「なんでもサイキックつければいいってもんじゃないわよ……」
――――事務所スタッフデスク
PaP「……なんだこれは? 呼び出し状?」
PaP(『しきゅう 応接室に来れたし』……か。武士?)
PaP「ちひろさん、今、応接室って使っていますか?」
ちひろ「特に会社の予定は入っていませんよ」ニヤニヤ
PaP(『会社の予定は』入っていないか……)
PaP「ありがとうございます。ちょっと応接室に行ってきます」
ちひろ「どうぞごゆっくり~」
スタスタ スタスタ
――――事務所応接室
ガチャ コツ パタパタパタパタパタパタパタパタ
PaP「ん?」
扉を開けたPaPの目に写ったのは、開けた扉にぶつかって倒れはじめる色とりどりのドミノ
白、黄色、青に赤、臙脂色、緑、浅葱色、黄緑、橙、桃色、紫、黒 みんな綺麗に床を流れていく
ドミノの流れがプラスチックのような細長い板の上に乗る重しを弾いた
すると、細長い板がゆっくりと起き上がった
どうやら板は立てに置かれたガムテープにつながっていて、重しを弾いたことでガムテープが転がりだしたために起き上がっているようだ
細長い板は大きく弧を描いて、テーブルの上に設置されているレールの末端に置かれた小さな鉄球を弾いた
コロコロとその鉄球が転がる先を見ると、立てられたハードカバーの本の上に定規と2つのビー玉が置かれている
ハードカバーがビー玉のレールの役目を果たしているようだが、本に対して十字に置かれた定規が道を塞いでいる
その定規は思いっきり傾いていて片方の先端はテーブルに着き、その上にドミノが横置きされている
すると、転がってきた先ほどの鉄球が抑えの役目を課せられた横置きドミノを弾いた
抑えを失った定規は、もう片側に重しがつけられているのであろう
下がっていた片端が上がっていく勢いで反対側にこぼれ落ちた
今度はハードカバーの道を開けられたビー玉2つが転がりだす
ビー玉が進む先はプールのウォータスライダーを思わす構造のおもちゃである
そのおもちゃの滑り台の途中には漏斗のような受け皿があり、鉄球たちはぐるぐると回って真ん中の穴に小気味よく落ちていく
穴の先は二手に分かれて、一方のビー玉は奥のソファーに向かって転がっていく
もう一方のビー玉はテーブルの下に落ちた
ソファーに向かったビー玉の先には、なにやら複雑に輪ゴムを括り付けられた鉛筆削りが何故かおいてある
ビー玉が鉛筆削りの取っ手を軽く押した
その瞬間 ビュンとものすごい勢いで鉛筆削りから鉛筆が射出される!
その鉛筆ミサイルはソファーの上にあるドミノ――今度はだんだんと大きくなっていくドミノだ――を倒していく
その先にこの前まで外付けHDDが入っていた空き箱が置かれており、それはドミノに押されてソファーの奥に落ちた
パァーーン! パァーーン!
PaP「うおっ!?」
クラッカーの音 ソファーの奥にくぎ付けになる視線 キラキラ舞い散る紙ふぶき
そして――――
ドコォッ!
突然、左わき腹に走る鈍い衝撃 崩れ落ちる膝
PaP「くっはぁ!!」
鈍器? いや、ボールのような中ぐらいの容器に2つの小箱が収められている
左を見ると、詳しくはわからないが、一見するとボウガンのような原理か? 射出機がある
PaP(もう一方のビー玉の先はこっち!? グぅ……これで撃ったのか? 気合い入りすぎだろォ、麗奈ァ……)
ガバッ!
裕子「ハッピー、ヴァァレェェンティンッ!」
PaP「ぐおぅぅ……! うずくまってるヤツの上に思いっきり覆いかぶさるヤツがいるかぁ、ユッコ!」
麗奈「アーハッハッハッ! いい感じに引っかかってくれたわね、PaP!」
PaP「クッソ、麗奈……。途中まで見事なピタゴラだったから油断したッ! いってぇなぁ……」
光「ご、ごめん、PaPさん。大丈夫か?」
PaP「むぅぅ……なんとか。ふぅ。大丈夫だ」
PaP「で、これは?」
麗奈「バレンタインに決まってるじゃない」
PaP「ルーブ・ゴールドバーグ・ボウガンで打撃を受けるバレンタインなんて聞いたことないぞ……」
裕子「るーぶ、ごーるど、なんですって? そんなことより、ユッコのサイキックラブ注入は受け取ってもらえましたか?」
PaP「痛いぐらいに……」
裕子「よしッ!」ガッツポーズ
光「すまない、PaPさん。もうちょっと弱い方がいいと思ったんだけど、調整しきれなかった……。ごめんなさい」
PaP「また麗奈につき合ってあげたのか。まぁ、その、俺は大丈夫だ。ところで、このボウガンの弾にはユッコと麗奈の分しかないようだけど」
光「あっ、えっと、アタシは――。はいっ」
PaP「おっ」
光「やっぱり手渡ししたくてさ。いつもありがとうな、PaP!」
裕子「私も! あらためて、いつもありがとございます、PaPさん!」
麗奈「今日はアンタのいい顔が見れて機嫌がいいわ! このレイナサマからの感謝の気持ちも受け取りなさい!」
PaP「ふぅ~……ホントお前たちは。らしいちゃ、らしいな」
PaP「ま、ありがとう。これからもよろしく」三人の頭ナデー
裕子「でへへ♪」
光「うん」ニカッ
麗奈「フンッ」///
*****
2月14日、片付け後――――事務所応接室
光「ふぅ。片付け終わったな」
麗奈「ユッコはまた仕事だから仕方ないけど、2人で片付けってのも大変ね」
光「ま、PaPさんもなんだかんだで楽しそうだったから良かったよ」
麗奈「……――光」
光「ん?」
麗奈「……がと」ボソッ
光「えっ?」
麗奈「あ、ありがと、って言ってるの!」///
麗奈「あ、あと……これ」スッ
光「わぁ! チョコ……? アタシに?」
麗奈「……そ、そうよ」///
光「やったぁ!」パァッ
光「そうだ! アタシも麗奈にチョコ、用意してきたんだ!」
麗奈「」
光「今、持ってくるから待ってて」
麗奈「」///
光「はい。麗奈のために用意したんだ、このチョコ。よかったら美味しく食べてくれ!」
麗奈「……あ、ありがと」
光「どういたしまして!」
麗奈「あ、光……その、えっと……チョコだけじゃなくて……」
麗奈「……いっつもつき合ってくれて……ありがとね」///
光「――あははっ♪ アタシもつき合ってもらってるからな! これからもよろしく!」
麗奈「――う、うんっ」
ちひろ(2人は仲良しさんですねぇ)ニヤニヤ
*****
2月14日、夕方――――事務所談話スペース
奈緒「ふぅ~――……」
奈緒(仕事、いつもよりつかれたぁ……)
奈緒(……そうだよなぁ。だって、午前中の頼子さんの話、気になって……)
奈緒(結局、それもあって……渡せなかったなぁ……)
奈緒「いや……違うか。……素直じゃない、あたしがいけないんだよな……。はぁ~~」シュン
ヘレン「ヘイ! そこの少女。何をそんなに暗い顔をしているのかしら?」
奈緒「!? へ、ヘレンさん!」
ヘレン「久しぶりね。奈緒」
奈緒「ひ、久しぶりです……。日本に戻ってきてたんですね? たしか、アメリカで撮影中だったはずじゃあ……」
ヘレン「フッ。今日が何の日か貴女もよく知っているでしょう」
ヘレン「日ごろ私たちを支えてくれる人に感謝を伝えるにはおあつらえ向きの日」
ヘレン「つまり、そういうこと」
奈緒「は、はぁ……」
ヘレン「その浮かない顔。さしずめ、大切な想い人に愛を渡しそびれているってところね」
奈緒「いやっ、そのっ、そんなんじゃ……!」///
ヘレン「フフッ。ところで、その想い人は今、どこにいるのかしら? 姿が見えないようだけど」
奈緒「CoPさんなら、次の仕事の打ち合わせをしてから事務所に戻るって言ってたから――ハッ!?」
ヘレン「今さら慌てる必要はないわ。ここまで来たら、私たちに言葉などいらない」
奈緒「」///
ガチャ
CoP「ただいまー」
ヘレン「ヘーイ! おかえりなさい、CoP」
CoP「アイエエエ! ヘレンさん!? どうして事務所に? てか、どうして日本に?」
ヘレン「理由? そんなものはこれで十分」スッ
CoP「あっ? ――これ」
ヘレン「日頃の感謝の証よ。いつも私たちのために、ありがとう。CoP」
奈緒(!? ヘレンさん、あんなに堂々と……)
CoP「チョコ……すっげぇいい物じゃないですか……。あっ、そうか。今日は……」
ヘレン「今日という日を忘れていたの? その様子じゃあ、私のが最初だったみたいね」
奈緒(あれ? じゃあ、頼子さんのは……?)
CoP「ありがとうございます、ヘレンさん。ありがたく頂戴いたします」
CoP「ところで、まだアメリカでの撮影が途中だったんじゃあ……?」
ヘレン「フッ……。今から帰るわ」
奈緒「えぇ!! そ、そんな、自分ん家に帰る感覚!?」
CoP「そうですか、ヘレンさん。では、気をつけて帰ってくださいね」
奈緒「CoPさんも、ヘレンさんの世界レベルに適応しすぎだろ……」
ヘレン「それじゃあ、CoP。またね。……奈緒、ちょっといいかしら」
奈緒「へっ!? な、なんです??」
トコトコ ガチャ バタン カツン カツン カツン
――――事務所ビル1階郵便受け前
奈緒「どうしたんですか?」
ヘレン「私はこのままアメリカに戻るわ。それで、奈緒。事務所のポストにこんなものが入ってるの」
奈緒「ん? 綺麗な絵画の模様の包み紙の小箱。差出人は……書いてない。お菓子でも入ってそうな感じですね」
ヘレン「ええ。おそらく、これも、私たちと同じ意志を持った者からの贈り物ね」
奈緒「でも、差出人はおろか、宛先もないですよ……」
ヘレン「それ、CoPに渡しておいてちょうだい」
奈緒「へっ!?」
ヘレン「CoPなら、それをどうすればいいかわかる」
ヘレン「それに貴女にとってもいいチャンスよ」
奈緒「あっ……」
ヘレン「がんばりなさい。あなたなら、できるわ。神谷奈緒」
奈緒「……はいっ」
ヘレン「それじゃあ。新たな風が吹いたら、また逢いましょう」
カツン カツン カツン ガチャ パタン スタスタスタ
――――事務所スタッフデスク
奈緒「……――プロデューサーさん」
CoP「おっ、どうした、奈緒?」
奈緒「あ、あのっ。……これ。事務所のポストに入ってた」
CoP「小箱?」
CoP(この柄の包み紙――あの時の美術館のものだな。ということは……頼子か)
CoP「――うん。ありがとな、奈緒。これは俺が預かっておくよ」
奈緒「う、うん。――それで、プロデューサー……さん」///
CoP「ん?」
奈緒「」スッ
奈緒「ほ、ほら、プロデューサーさん。受け取れよ」
CoP「なんだい?」
奈緒「な、何って……い、言わなくてもわかるだろ!」
奈緒「あぁ、もう! バレンタインのチョコだよ、バカー!」
CoP「ははっ。ごめん、ごめん。可愛い奈緒が見たくってつい」
奈緒「うぅ」///
CoP「奈緒。――ありがとう。本当に嬉しいよ」
奈緒「またアタシに恥ずかしい思いさせやがって……プロデューサーさんのせいだからな!」
奈緒「忘れないからな!」タッ タタタッ
CoP「逃げて行っちゃったよ。……ふふっ、ありがとな、みんな」
上が終わって15分後に~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>49
ミスりました…。最後の1行は見なかったことにしてください(涙
*****
ちひろ「今日一日、なんだか事務所がずっとソワソワしてましたね」
総括P「バレンタインだからね。仕方ないね」
ちひろ「そうですねぇ……。この後、雪乃さんの誕生日パーティもありますしね」
ちひろ「あっ、そうだ。もう他のPさん達にはあげたんですけど、総括Pさんにはまだでしたね」
ちひろ「はい。私からのチョコです。受け取ってください」
総括P「ログインボーナスかな?」
ちひろ「……あげませんよ」ムスッ
総括P「すまない。悪かったよ。いつもちひろには感謝している」
ちひろ「ふふっ。素直でよろしい♪」
ちひろ「では、どうぞ」
ちひろ「スタミナドリンク・チョコ味です。期間限定ですよ♡」
総括P「…………」
総括P「そうか。これがウチの事務所の――Chocolate for you、か」
おわり
好きなアイドルを詰め込んだ妄想をしたかっただけなんです。
それではHTML化依頼してきます。
乙!
>53
ありがとうございます!
もしかしたら麗奈サマの悪戯が成功してるのを見るのは初めてかもしれない…
おつー
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