金剛・瑞鶴・響「甘くないチョコ」 (53)
このスレは以下の内容を含んでいます。
読んでいなくても(たぶん)問題ありませんが、知っていると一層に楽しめると思います。
約10分ごとに投下。約20レス以内の短いものですので、内容に関する雑談やその他諸々などは皆さんにお任せします。
それでは10分後に投下を始めますので、短い間ですがお楽しみ下さいませ──。
金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」
金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 - SSまとめ速報
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金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 二隻目
金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 二隻目 - SSまとめ速報
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金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 三隻目
金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 三隻目 - SSまとめ速報
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懐かしいな
──二月十二日、一四三○
提督「──嫌な感じに雨が降っているな」サラサラ
金剛「一日中スコールなんて珍しいデース。おかげで遠征も演習も出撃も全て中止となってしまいまシタ」サラサラ
提督「全くだ。今日は予定が開発を除いて一日以上ズレるのは良くない。さっさと止んで欲しいものだ」サラサラ
金剛「テートク、こっちの書類は終わったネー」スッ
提督「ほう、今日はいつになく速いな。こっちももう終わる所だ」
金剛「きっとスコールが原因デス。物を優しく叩くこの音は、ワークに集中させてくれるネ」
提督「ああ、金剛も同じなのか。斯く言う私も、今日はいつも以上に集中できたと思うよ」スッ
金剛「テートクと同じでハッピーデース!!」ギュッ
提督「……金剛、時間と場所を弁えろ」コツッ
金剛「アウッ。ぅー……お仕事は終わったデスよ?」
提督「ほう。ならば、いつもやっていた書類の再確認はどうした?」
金剛「あ……ソーリィ……。浮かれてしまってまシタ……」スッ
提督「珍しい事もあるものだな。──ふむ。金剛、今日はもう自由にして良いぞ」
金剛「ホワッツ? どうしてデスか?」
提督「こんなに早く仕事が終わるのは珍しい。日頃から出撃と秘書の仕事で休みがあまり取れていない金剛に、少しでも長く休みをやりたいと思っただけだ。書類の確認は私がやっておこう」スッパラパラ
金剛「ダメです。お仕事がしっかりと終わっていな──」
金剛(……いえ、これはチャンスです!)
提督「む。どうした」
金剛「──前言撤回デース! テートク! 私は今日、少し早くお休みを頂きマス! 後の事はお任せしても構いまセンか?」
提督「ああ、構わんぞ」
金剛「ヤッタ! ありがとうございマス! 大好きネ、テートク!」
提督(……どことなく、いつもよりテンションが高いな。何かやりたい事でもあったのか?)
金剛「では、お願いしマス!」ピシッ
ガチャ──パタン
提督「……紅茶の片付けも忘れる程か。とことん珍しい」
提督(艦娘とはいえ、金剛も遊びたい盛りの年頃なのだろうか。これからは仕事を減らしてやるべきか?)
提督「……………………」
提督「……本当、今日は珍しいな。寝る時を除いて、この部屋に私以外誰も居ないなんて事はほとんど無かったのだが」
提督「……少し寂しく思えるのは、どうしてだろうか」
…………………………………………。
間宮「──さて、仕込みはこれでお仕舞いっと。今日のご飯も美味しくなりそうね」
金剛「間宮ー!」タタタッ
間宮「あら? どうかなさいましたか金剛さん?」
金剛「カカオ豆有るデスかっ?」
間宮「カカオ豆……ですか? 一応有るには有りますけれど──ああ、なるほど。そういう事ですね?」
金剛「イエス! 提督に私のラブが詰まったチョコレイトを食べて貰いたいデース!」
間宮「手作りでチョコを作って貰えるなんて、提督も幸せ者ですね」ニコニコ
金剛「幸せなのは私もデース。愛する人を想いながらクッキング……この甘酸っぱくときめくハートは、他では絶対に味わえないデース」
間宮「あらあら。本当に提督が好きなのね」
金剛「もっちろんネ! テートクのハートを掴むのは、私デース!」
間宮「ふふ、頑張って下さいね」
金剛「間宮はチョコレイト作らないデスか?」
間宮「勿論作りますよ。日ごろ頑張って下さっている皆さんに、間宮特製のチョコレートを配ります」
金剛「リアリー!? 楽しみデース!」
間宮「はい。腕によりを掛けて作りますね。──カカオ豆はこちらですよ」スッ
金剛「サンキュー間宮! キッチンの隅を借りるネー」スタスタ
間宮「必要な物がありましたら言って下さいね」
…………………………………………。
やったぜ
あなたか
期待してます
金剛「はむ……ん、んー……もう少し苦味を強くした方が良いデスね。後一分ほどでオーブンから取り出しまショウ」スッ
金剛(っとと、すり鉢を用意するのを忘れていまシタ)ゴソゴソ
金剛「カカオ豆はどうなっていマスかね? ──あむ……──イエス! このくらいで良いでショウ!」スッ
金剛(お湯の温度は……五十度。ぴったりネ! 湯煎して……と)
金剛「さて、前にやった時は三時間磨り潰しまシタけど、少しザラザラでシタ。なので今回はもう少し頑張りまショウ」ゴリゴリ
間宮「金剛さん、追加のお湯はここに置いておくわね。たぶん、それが四十五度になる頃には丁度良いくらいになってるはずだから」
金剛「ワオ! 助かるネ! ──あ、カカオバターはあるデスか?」ゴリゴリ
間宮「流石にそれ単体は無いですね。けど、これから作るから分けますね」
金剛「本当に助かりマス! 後で一緒にココアを飲みまショウ!」ゴリゴリ
間宮「けど、一杯出来ちゃうのよね……。カカオバターを搾り取ったら、どうしてもココアが大量に……」
金剛「ティータイムにも使えば大丈夫デスよね?」ゴリゴリ
間宮「あら、紅茶以外でも良いのですか?」
金剛「ノープロブレム! 皆さん、ココアも笑顔で飲んでいまシタ!」ゴリゴリ
間宮「そうなのね。良かったぁ。私だけで飲むと、本当に三ヶ月くらい掛かりそうで心配していたの」
金剛「それは……少し辛いデス……」ゴリゴリ
間宮「ええ……だけど、皆が喜んでくれる顔を見たら、どうしても作りたくなってしまうの」
金剛「その気持ち、よく分かるデス! 私もテートクがスマイルになってくれると思えば、いくらでも頑張れるデース!」ゴリゴリ
間宮「本当に提督の事が好きなのね」
金剛「この気持ちは誰にも負けないデース!」ゴリゴリ
間宮「良い笑顔です。──それじゃあ、ライバルに負けないようにね、金剛さん♪」トコトコ
金剛「……ライバル?」ゴリゴリ
金剛(思い付くのは瑞鶴や響デスが……もしかして二人も手作りチョコレイトを……!?)ゴリゴリ
金剛「むむむむむ……。絶対に負けないデース!」ゴリゴリゴリ
…………………………………………。
金剛「うー……。腕が痛くなってきまシタ……」ゴリゴリ
金剛「まだ三時間しか経ってないデス……見た目はトロトロになってマスが、たぶんまだ滑らかではないデス」ゴリゴリ
金剛「少し味見を……」チョン
金剛「…………むー……。やっぱりまだ滑らかではないデース……」
金剛「もう無理デース……次のお湯を沸かさなくて正解でシタ……」ゴリ
金剛「お湯は……四十四度デスね。一回休憩にしまショウ」スッ
間宮「お疲れ様金剛さん。ココアを用意しましたよ」トコトコ
金剛「! サンキュー! もう腕がくたくたネー……」
間宮「本当にずっと磨り潰していましたよね。自動で砕いてくれる機械があれば楽なんですけど……個人で手に入れるのは難しいですよね。はい、どうぞ」スッ
金剛「本当デース……。開発妖精に頼んでみた方が良かったかもデス……」コクコク
金剛「んー♪ やっぱり出来立てのココアは一味違いマース♪」
間宮「ええ。こういうのもあって、初めの方だけは沢山飲んでしまいますよね」コクコク
金剛「ずっとこうやって楽しめたら良いのにと思うデス……」
間宮「それは……まあ、飽きてしまうのは仕方が無いですから」
金剛「慣れるのは良い事も悪い事も沢山あるデース……」
間宮「本当、そう思います……」
金剛「チョコレイトはやっぱり作るのが疲れるネー……」コクコク
間宮「でも、楽しいですね。市販のチョコにはは無い温かみがありますし」
金剛「イエス! 愛情がたっぷり詰まってるデス!」
間宮「ところで金剛さん。おゆはんまで後一時間ですけれど、今の内にカカオの匂いを洗い流した方が良いと思いますよ?」
金剛「そ、そうでシタ! 慣れて分からなくなっていたデス!!」ガタッ
間宮「チョコは水分が入らないように管理しておきますから、シャワーを浴びてきますか?」
金剛「何から何までありがとうございマス! ディナーの後にまた来るネ!」タタッ
間宮「はい。いってらっしゃい」
間宮「……それにしても、本当に凄いわね金剛さん。チョコをカカオから作るなんて、ね」コクコク
間宮「──さて、おゆはんの仕上げをしなくちゃね」スッ
…………………………………………。
瑞鶴「ねえ響ちゃん、これどう思う?」
響「ごめん……苦過ぎて分からない……。瑞鶴さんはどうなの?」
瑞鶴「……私もちょっと苦すぎて分かんない。ただ、バターの味が強いからもう少しバターを減らせば良い風味になるかもしれないわね」
響「再調整が必要だね。これは砂糖を掛けて紅茶と一緒に食べよっか」
瑞鶴「太りそうで怖い……」
響「私は司令官への想いを優先するよ」
瑞鶴「う。わ、私もなんだから!」
響「というより、こうでもしないと金剛さんに勝てないと思う」
瑞鶴「……そうよね。私達がお菓子作りで金剛さんに勝とうとしても、真正面からじゃ絶対に勝てないもの」
響「実力と経験で勝てないのなら、後は発想でしか勝てないもんね」
瑞鶴「これでも勝てるかどうか怪しいもの……。でも、私達は出来る限りの事をやるだけよ」
響「……ところで瑞鶴さん。ちょっと面白い本を見つけたんだ」スッ
瑞鶴「ん? なになに」スッ
響「…………」
瑞鶴「……………………」ジッ
響「どうかな?」
瑞鶴「……良いわね、これ。これならきっと勝てるわ」ニヤ
響「ハラショー」ニヤ
瑞鶴「でも、肝心のこれはあるの? 安物を使ってもダメだろうし、何よりも合うかどうか……」
響「実は、物自体はあるんだ」スッ
瑞鶴「えっと……モクコブクカ……アール……ボ……カ? 何これ、読めない。どんなのなの?」
響「凄く辛口っていうのは聞いたよ」
瑞鶴「へぇ……って、どこで手に入れたのよこんなの!?」
響「秘密」
瑞鶴「もう……。大丈夫なの?」
響「私の事なら大丈夫だよ」
瑞鶴「本当ね?」ジッ
響「うん」ジッ
瑞鶴「……なら良し! 使っちゃいましょう! ──えっと、数滴って書いてるわね。次のチョコに混ぜましょうか」
響「うん、そうしよう」
……………………
…………
……
──二月十三日、○五○○
提督「…………」サラサラ
コンコン──
提督「入れ」
ガチャ──パタン
間宮「おはようございます提督」
提督「ん? 珍しいな、どうかしたか?」
間宮「実は、折り入ってお願いがあるんです」
提督「ふむ。これもまた珍しい。どんな願いだ?」
間宮「出来ればなんですけど、今日と明日のお仕事はお休みになさって欲しいんです」
提督「仕事を? それは余程の理由が必要だ。普通では叶えられん願いだぞ」
間宮「提督、明日は何の日かご存知ですか?」
提督「明日? ……要領を得ないな。ハッキリと言ってくれ」
間宮「もう……。明日は女の子の大切な日ですよ?」
提督「……それは分かっている。だが、だからこそ分からないんだ。明日を休みにして欲しいと言うのなら理解できるが、なぜ今日もなんだ?」
間宮「色々と準備が必要なんですよ。特に約一名が、ね」
提督「……もし休みにしなかったらどうなる?」
間宮「今後、提督のお食事にお砂糖が沢山入るかもしれません。手や足が滑ってしまって」ニコ
提督「……………………」
間宮「…………」ニコニコ
提督「はぁ……。まったく。まさかお前から脅しが入るとは夢にも思ってみなかった……」
間宮「脅しではありませんよ? 可能性のお話です」
提督「100%の可能性は必然と言うんだ……。分かった。流石に食事で生死を彷徨う事はしたくない。今日と明日の仕事は休みにさせよう」
間宮「はい。ありがとうございます」ペコッ
提督「その代わり、今日と明日の食事はいつもより手の込んだものにして貰おう」
間宮「ええ。いつも以上に頑張らせて頂きます」ニコニコ
提督「願いはそれで終わりか?」
間宮「はい。叶えて下さって嬉しいですよ」
提督「まったく……恐ろしい事を言うものだ……」
…………………………………………。
──二月十三日、二三五○
金剛「──出来まシター!」
間宮「お疲れ様です、金剛さん」
金剛「ありがとうデース!! しっかりと完成出来たのも、間宮のおかげネー!」
間宮「私がやった事なんて、せいぜいココアバターをお渡ししたくらいですよ。金剛さんが頑張ったからこそ、このチョコが出来たんです」ニコニコ
金剛「ノー! 間宮が影で支えてくれなければ、私は明日までに完成させられたか怪しかったデス。だから、本当にありがとうございマス!」
間宮「あらあら。そこまで言われてしまわれると、受け取るしかありませんね。──それにしても、生チョコですか。なぜ普通のチョコにはしなかったのですか? わざわざ生クリームの代用品まで自作していましたけれど」
金剛「まず間違いなく、私以外の誰かがテートクにチョコレイトをプレゼントするはずデス。皆と同じでは、私のチョコレイトも魅力が薄くなってしまいマス」
間宮「なるほど。なので、作るのに手間の掛かる甘くない生チョコを作ったのですね」
金剛「イエス! ミルクにバターを溶かせば、生クリームの代用になると知っている人はきっと居ないはずデース。これで私のチョコレイトが独壇場デス!」
間宮「何度もクリームを作り直していましたよね。チョコも滑らかになるまでずっと磨り潰していましたし、きっと提督も気に入って下さいますよ」
金剛「早速渡してくるデス!」
間宮「え? 今から……ですか?」
金剛「私は最後の最後まで気を抜きまセン! ライバルの居ない午前零時にチョコレイトをプレゼントネー!」
間宮「なるほど。良い考えだと思いますよ」ニコニコ
金剛「ではレッツ──……っとと、片付けがまだでシタ」ヒョイヒョイ
間宮「ああ、それは私がやっておきますよ」
金剛「え? でもそれは間宮に悪いデス。私が使った物デスから、私が──」
間宮「今から片付けていたら、日を跨いじゃいますよ? 最後の最後まで気を抜かないって言ったでしょう?」
金剛「……うー。本当に良いデスか……?」
間宮「勿論です。さあ、いってらっしゃい」ニコニコ
金剛「──サンキュー間宮! 今度のティータイムは一緒に楽しみまショウ!」タタッ
間宮「はい。楽しみにしておきますね」フリフリ
間宮「…………」
間宮「……本当、チョコをカカオから作る人なんて、私以外だと初めて見たかもしれないわね」チョン
間宮「ん……」ペロ
間宮「……ここまで滑らかにするのって、本当に時間が掛かるのよね。フフ、頑張ったわね金剛さん♪」
…………………………………………。
コンコン──。
提督「ん? 入れ」
ガチャ──パタン
金剛「テートクー! バーニング、ラァブ! な、チョコレイト! 持ってきたヨー!」
響「!?」ビクン
瑞鶴「うぇえ!!? こ、金剛さん!? なんでこんな時間に……!?」
金剛「瑞鶴に響!? ふ、二人こそどうしてこんな時間にテートクの部屋に居るデスか!?」
響「! ……どうやら、金剛さんも私達と同じ事を考えてたみたいだね」
瑞鶴「あ、それって……チョコ!?」
金剛「もしかして……二人も、デスか……?」
瑞鶴「……うん」スッ
響「……そうだよ」スッ
金剛「なんて事……。まさか私と同じ考えだなんて……」
提督「……一応聞いておくが、そのチョコは甘くないよな?」
瑞鶴「勿論よ。甘くない生チョコを作ってきたわ」
金剛「ホワッツ!? 生チョコですって!?」
瑞鶴「え……まさか金剛さんも……?」
金剛「……そうデス。これならば誰も作らないと思って……」
響「……これは、真正面からの戦いになりそうだね」
金剛「こ、こうなったら、テートクに一番を決めて貰うデス!」
提督「……そうなるか」
響「じゃあ、まずは私達のチョコからだね。先に私達が渡そうとしてたんだから、それくらいは良いよね?」
金剛「う。い、良いデスよ。私のチョコレイトは、絶対に負けまセン!」
響「…………」ニヤ
響「どうぞ、司令官」
瑞鶴「えっとね、私達、協力してこのチョコを作ったの」
提督「ほう。楽しみだ。生まれてこの方チョコレートなど口にした事が無かったからな」
金剛「!!」
響(思った通りだね。金剛さん、悪いけど司令官の初めては私達が貰ったよ)
提督「では……」パクッ
瑞鶴「…………!」ドキドキ
響「…………」ドキドキ
金剛「…………」ビクビク
提督「……ふむ。生チョコというのはこんなにも柔らかいものなのか。チョコと言えば硬くて板状の物を想像していたが、これは良いな」
瑞鶴「やった……!」
響「ハラショー」
提督「そして、これは……酒か? 洋酒の風味が口全体に広がっていって、多少の辛さもあって非常に良いものだ」
金剛「な、生チョコにブランデーを入れたのですか……!? そんな方法があったなんて……」
響「マスコフスカヤウォッカ。ソ連の三大ウォッカの内、一番辛口のウォッカだよ」
提督「ほう。辛口か……。機会があれば是非ともそれを飲んでみたいな」
瑞鶴「そ、それで……チョコはどうだった?」ドキドキ
提督「ふむ。多少バターの味があったが、それもウォッカと一緒に混ざって良い味となっている。良いチョコレートだ」
金剛「…………」ガクッ
瑞鶴「──やったぁ! これなら金剛さんにも勝てるわね!」
響「ハラショー。頑張って作った甲斐があったよ」
提督「さて、次は金剛のチョコレートだな」
金剛「う……」オズオズ
提督「……どうした?」
金剛「…………ぅー」
瑞鶴(あの金剛さんが出し渋ってる……。勝った……!)
金剛「!」ハッ
金剛「……提督。今から私のやる事を、全て受け止めて下さい。どんな罰でも、しっかりと受けます……!」スッ
提督「何をする気だ……」
金剛「──こうするのです!」
気合を居れ、覚悟を決めたのか金剛はいつも以上に凛とした顔付きに変わった。
手に持っている綺麗にラッピングされた箱のリボンを解き、蓋を開ける。すると、瑞鶴と響が作ったチョコには無かった良いカカオの香りが鼻腔を刺激した。
何か特別なチョコでも使ったのかと思ったが、それにしては香りが強い。
チョコから金剛の顔に視線を移すと、彼女は何やら緊張した表情で説明をしてくれた。
「……一から、手作りで作りました」
そう金剛が言うと、後ろの二人は驚いた目をしていた。
一から作るのは凄く難しいのに──。瑞鶴が、ポツリとそんな事を口から漏らす。
……よくは分からないが、どうやらチョコレートというものはカカオ豆から作ると難しいものなのか。だが、それならばこれほど新鮮な香りをしているのも納得できる。
「あむ……」
用意していた爪楊枝を、一口サイズに切り分けられたチョコレートに差した金剛。しかし、なぜか彼女はそれを自分の口の中に入れてしまった。
口を動かさず、足だけを動かして近付いてくる。
「……何をする気だ?」
少しばかり嫌な予感がする。なぜ彼女は体温まで感じられるほど近くに来たのだろうか。なぜ彼女はチョコレートを口に入れたのか。なぜ、座っている私と目線を合わせているのだろうか。なぜ私の肩に手を置いているのだろうか──。
それは、すぐに分かる事となる。
「ん……っ」
何かが、唇に触れた。それは冬の寒さで少しばかりひんやりとしていて、それでもとても柔らかい。
何が起きたのか理解はしていた。理解はしていたが、あまりにも唐突だったので身体が固まってしまった。
チロチロと、私の唇を舌でくすぐってきている。開けて欲しい、と強請っているのはすぐに分かった。
半分、思考が停止した状態で従う。すると、熱くてヌメリとした柔らかい舌が、私の口内へ侵入してきた。
初めは窺うようにして遠慮がちに唇や歯、舌先を突いてくる。
私が無抵抗だと分かると、彼女はゆっくり──そして深く舌を潜り込ませてきた。
瑞鶴と響が作ったチョコを舐め取るかのように、丁寧に口内の全てに舌を絡ませてくる。
唇は勿論、歯の裏も、舌も、口内の天井も、舌の根元さえも、彼女にねぶられてしまった。
当然、唾液が絡んでくる。お互いに出てきている唾液は行き場を失い、艶めかしい音を立てて思考を痺れさせている。もはや、どれが私の唾液でどれが金剛の唾液か分からないくらい混ざり合ってしまっている。
頭が惚けてしまい、されるがままになっていた所、唾液とは違って柔らかく苦い何かが口の中に入ってきた。
小さいそれはトロトロになっており、粘度の高い蜂蜜のような液体なのかと思ってしまったくらいだ。
すぐに、それが金剛の作ったチョコレートだと分かる。苦味が意識を引き戻してくれたおかげで、現状もハッキリと認識させてくれた。
それでも、止める事が出来ない。肩に添えられていた手はいつのまにか背中に回されていて、逃げようとすれば強い力で引き剥がさなければならない。だが、そうしようとしても腕に力が入らなかった。
麻薬でも入っているのかと思えるくらい、金剛の舌は、唾液は、口付けは、脳を痺れさせる甘さに包まれている。
私の口に入ってきたチョコレートを、金剛が舌で押し潰す。噛ませるつもりは一切無いのか、舌で歯の代わりをしてチョコを磨り潰し、小さくしていった。
二人の唾液でドロドロになったそれを口に留め続けるのは苦しい。しかし、金剛の腕に縛られていて逃げる事が出来ない。それ故、飲み込む他なかった。
喉を通っていって、初めてその恐ろしさが分かる。
倒錯的な行為のせいか、それとも私自身の嗜好なのか……今まで感じた事の無い幸福感で身体が支配されてしまった。
「ん、んん……」
正常な判断など出来やしない。出来る訳が無い。だからだろう。だから、私も金剛の腰に手を回したのだろう。抱き寄せるように腕に力が入ったのだろう。
一瞬だけ金剛は身体を震えさせる。それに怯えの色はなく、触られた事で自然と反応してしまったかのように思えた。
息継ぎの為に、少しだけ唇が離れる。すぐに元通りになると、今度は前戯無しでトロトロのチョコレートが舌で運ばれてきた。
それを、同じく舌で受け取る。お互いの舌と唾液でチョコレートを溶かし合い、私は幸福感で満たされる金剛の愛を、躊躇無く飲み込んだ。
何回かそれを繰り返し、やっと一口のチョコレートを食べ切る。
名残惜しそうにお互いの口に残ったチョコレートの苦味を甘く堪能し、それすらも無くなった頃に、やっと金剛は口を離してくれた。
「……………………」
私と目線が合うと、火照っていた頬を更に紅潮させて金剛は俯いた。きっと、今になって自分のやった事がとんでもない事だと気付いたのだろう。
「……良かったよ、とても」
そんな姿を見た私もまた、顔が熱くなったのが分かった。それを隠すように帽子を深く被り、顔を隠してからそう言う。
「…………I love you……」
いつもより流暢な英語で、彼女は聴こえるかどうか怪しいくらい小さく愛を囁いた──。
瑞鶴「──ハッ!? な、ななななになにになにを!?」
響「……………………」ポカーン
瑞鶴「ズルいズルいズルいズルい!! そんなのズルわよ金剛さん!!」グイッ
金剛「──ぁ、ぅ」
提督「……………………」
瑞鶴「もう! 提督さんも素直に受け入れ過ぎ! 私だってやりたかったのに!!」
提督「…………」
瑞鶴「顔を隠さないでよー! もー!!」
響「……パツェルーィ」
瑞鶴「金剛さんズルい!」
金剛「だ、だって……提督の初めてのチョコは二人だったではありませんか……!」
瑞鶴「初めてのチョコと初めてのキスなんて比べられないじゃないの!」
響「……司令官の、初めての…………ズルい」
瑞鶴「提督さん! 私もキスしたい!」
提督「待ってく──いや、やめてくれ……。今にも顔が沸騰しそうになっているんだ……。このままでは悶死してしまう……」
瑞鶴「そ、そんな……!?」
響「こうなったら、金剛さんみたいに無理矢理──」
金剛・瑞鶴「絶対ダメ!!」
瑞鶴「──って、金剛さんが言える立場じゃないでしょ!?」
金剛「う……で、ですが……提督が……」チラ
提督「……………………」
瑞鶴「む……。け、けど……」
響「……司令官」チョコン
瑞鶴「あ、提督さんの膝に……!」
金剛「! う、うぅ……」ソワソワ
響「私と瑞鶴さんにキスされるのは、嫌?」
金剛・瑞鶴(……それは流石にズルい言い方な気が…………)
提督「……黙秘権を使う」
響「ダメ。答えて」
提督「頼む……。今はこの話題に触れないでくれ……」
響「…………」ジー
響(……顔、赤くなってる。司令官も恥ずかしかったのかな)
提督「触れないでくれたら……三人にはホワイトデーの希望を聞いてやる……。だから、少しこのままにしてくれ……」
響「……分かったよ。約束だからね?」スッ
提督「……ああ」
…………………………………………。
提督「……ふぅー…………。なんとか落ち着いた」スッ
響「おかえり、司令官」
瑞鶴「……落ち着いた?」
提督「ああ。見っとも無い姿を見せてしまってすまない」
金剛「…………」ビクビク
提督「……さて金剛」チラ
金剛「ハ、ハイッ!」ビクン
提督「……………………」
金剛「……………………」ビクビク
提督「……いや、なんでもない」フイッ
金剛「えぅ……?」
響「……お咎め無し?」
提督「流石にそれは可哀想だと思ってしまってな……」
瑞鶴「うー……納得できない……」
提督「代わりに、瑞鶴と響にはホワイトデーで金剛よりも少し贔屓する」
響「ほう。良い事を聞いたよ」
瑞鶴「それならまあ……」
金剛「……うぅ…………」
提督「だが……生憎と私はプレゼントを贈るセンスが無い。だから三人に聞こう。何が欲しい?」
金剛「何が欲しいか、デスか……?」チラ
瑞鶴「そう言われても……ホワイトデーっていうのを考えたら……」チラ
響「一つしかないよね」チラ
金剛「デスよね」
提督「……随分と決めるのが早いんだな」
金剛「きっと、皆が行き着く答えデース」
瑞鶴「うん。絶対にそうなるわよね」
響「うん」
提督「ふむ。では、今聞いても良いか?」
金剛「…………」チラ
瑞鶴「…………」チラ
響「…………」コクン
金剛・瑞鶴・響「甘くないチョコ」
金剛「──しか、ありまセンよね?」
瑞鶴「うん。これ以外に無いわね」
響「今回の事を見れば、ね」
金剛「……え? 今回の事、デスか?」
瑞鶴「そりゃそうでしょ? 甘くないチョコなら……ねえ?」
響「むしろ、それ以外にあるの?」
金剛「甘くないチョコレイトならば、テートクとティータイム出来ると思ったのデスが……」
瑞鶴「良いわね。金剛さんはそれで──」
響「──私と瑞鶴さんは今日の金剛さんと同じ事をしてもらうっていう事で」
金剛「そ、それは……」
瑞鶴・響「…………」ジッ
金剛「…………問題……無い、デス……」
提督「……待て。今日の金剛と同じ事とは──」
瑞鶴「良いわよね?」ジー
響「少し贔屓してくれるんだよね?」ジー
提督「……………………」
瑞鶴・響「…………」ジー
提督「……はぁ。分かった。負けだ」
金剛「そんな!?」
瑞鶴「やったぁ!」
響「ハラショー」
瑞鶴「そもそも金剛さんがやったから、こうなったんだからね?」
金剛「うぅ……テートクと二人っきりの時にするべきでシタ……。詰めが甘かったデース……」
提督「まったく……お前達は時々、予想も付かない大胆な行動に出てくるから困る……」
響「これからも悩みの種は増えるかもね」ニヤ
提督「洒落になっていないぞ……」
響「私達は本気だからね」
瑞鶴「ぜーったいに金剛さんにも響ちゃんにも負けないんだから」
響「これで、ハッキリとライバルだって決まったね」
瑞鶴「そうね。二人よりも魅力的になる為に、私はこれからも努力するわよ!」
金剛「む。テートクのハートを掴むのは、私なんだからネー!」
提督(本当、どうして私なんかを好きになったのやら……)
提督(だが……)チラ
金剛「────!」
瑞鶴「────!?」
響「────」
提督(……悪くないな、こういうのも)
金剛・瑞鶴・響「甘くないチョコ」 ──終わり
以上で終わりとなります。
最後はちょっと用事があって一気に投下してしまいました。
書いていてちょっとだけエロっぽくなったのはご愛嬌。それでも、読んでいて甘い雰囲気になって下さったのならば幸いです。
次、何かのイベントがあった時に書くかどうかは分かりませんが、またいつかお会いしましょう。
利根さんのSSの方もよろしくお願いします。
それではまたどこかで──。
乙
チョコの口移しってエロいよね
乙乙
甘々よかったです
しかしカカオからの詳細な描写は始めて見たな
しかし、あの結末があるだけに……。
ホワイトデイにはまだ皆いたのだろうか…
急に空行無くなって何事かと思ったら本気度120%で噴いた
>>21
この話は金剛のハッピーの方なんじゃ?
>>23
このお話はまだ皆が艦娘の頃かつ、仮に皆がバレンタインの時まで存在している。そして提督がまだ誰とも特別な関係になっていないというifストーリーです。書いてなくてごめんよ。
むしろ、このバレンタインのお話があってあの結末になったら書いてる自分でも泣きそう。
短いのにすごく良かった。
やっぱりあの三人は最高!!
主おつ!チョコ0だったけどこれ読めたから十分や!
こういうイチャラブほのぼのな番外編いっぱい書いてくれていいのよ?
お疲れ様です。
いつも楽しませてくださってありがとうございます。
今回の作品も読ませていただきました。
利根さんのSSの続きを楽しみにしていますね。
ひええ視界が白い
面白かった!
ホワイトデーも楽しみにしてます。
乙です。
面白かった!利根のSSの続きも期待です!
乙です
さて、遂にきましたホワイトデー。
皆さんはほっぽちゃんにクッキーを返さないといけませんね。
投下していきます。
金剛・瑞鶴「…………」ドキドキ
響「…………」ワクワク
天龍「……なあ龍田、なんであの三人は最近無言でテンションたけーんだ?」
龍田「さあね~? 何か良い事でもあるんじゃないかしら~?」
天龍「んー……気になるなぁ……」
龍田「ダメよ天龍ちゃん。野暮な事は、メッだからね?」
天龍「野暮……? なんだよ龍田は何があるのか知ってるのかよ」
龍田「なんとなくだけどね~」
天龍「ちぇっ。教えてくれそうにねーな」
龍田「まあまあ。私達もお仕事が終わったから皆とお茶にしましょ~?」
天龍「え? お茶するなら金剛が──」
龍田「金剛さん達は明日、忙しいはずだもの~。今日の内に用意できる事はしておくはずだもの」
天龍「ハァ……? 忙しいって、明日は出撃も何も無いはずだよな……?」
龍田「天龍ちゃん、世の中には休みの日に忙しくなる人も居るのよ~」
天龍「なんだそれ……訳わかんねーぞ……」
龍田「そういう事だから、ね? 駆逐艦の子達と軽巡の皆と一緒にお茶会をしましょうね~」グイグイ
天龍「ご、強引だな。分かった分かった。分かったから押すなって」
龍田「…………」チラ
三人「!」
龍田(羨ましいけれど、頑張ってね~)ニッコリ
三人「……………………」
瑞鶴「……ねえ、私達ってそんなに顔に出てるのかしら」
響「少なくとも、二人は緊張した笑顔だね」
金剛「そういう響もニヤニヤしてるデース」
響「……これを抑えるのはかなり難しいね。けど、悪くない気分だよ」
…………………………………………。
提督「…………」サラサラ
コンコンコン──。
提督「入れ」
ガチャ──パタン
金剛「テートクー、資材の確認終わったネー」
瑞鶴「確認表とちゃんと合ってたわよ。これが確認結果ね」スッ
提督「そうか。確認してくれて助かったよ」サラサラ
響「他に手伝える事はあるかい?」
提督「そうだな……後は書類整理をするくらいだ」サラサラ
金剛「では手伝うデース!」
瑞鶴「うん。出来るだけ明日の分も終わらせておきましょ」
響「勿論、明日の約束は忘れていないよね?」
提督「……ああ、憶えている。こんなにも仕事が終わって欲しくないと思ったのは初めてかもしれない」
瑞鶴「む。それって私達とキスするのが嫌って事?」ヂー
提督「どっちかと言うと義務でキスをするのが嫌といった所だ」
金剛「アー……」
響「……確かに義務感でキスされるのって嫌かもしれないね」
瑞鶴「むー……」
響「でも、司令官とキスはしたいし……」
提督「とりあえず、書類を片付けようか」サラサラ
三人「はい!」
…………………………………………。
金剛「──終わったデース!」
瑞鶴「私はあとちょっと……うん、終わったわ」
響「それを纏め終えたら私も終わりだよ」イソイソ
提督「……かなり早く終わったな」
金剛「いつもはテートクと私だけな所を瑞鶴と響も手伝ってくれていマスからネ。日付が変わる前に終わるのなんて滅多に無いデース」
瑞鶴「……まあでも、これと毎日睨めっこするのは辛いわね」
提督「やらねばならんから仕方が無い。私もあまり好きではないよ」
瑞鶴「まあ、そうよね」
響「ん。司令官、終わったよ」スッ
提督「そうか。三人とも、ご苦労──」
コンコンコン──。
提督「──む?」
任務娘「夜分にすみません提督。電報です」
提督「そうか。入れ」
ガチャ──パタン
任務娘「失礼致します。──読み上げましょうか」
提督「いや、その紙を渡してくれるだけで構わない」
任務娘「畏まりました。どうぞ」スッ
提督「うむ」スッ
任務娘「それでは私は失礼しますね」
提督「ああ。ご苦労だった」
任務娘「いえいえ。──では皆さん、おやすみなさいませ」
ガチャ──パタン
瑞鶴「提督さん、電報の内容って何?」
提督「ああ、内容はだな──…………ふむ……」
響「……何かあったのかい?」
提督「明日、総司令部に来いとの事だ」
金剛「……ホワッツ? テートク、私達は何か重大なミスをしたデスか……?」
提督「分からん。それだけしか書いていないから検討も付かん」
響「……じゃあ、明日の約束はどうなるの?」
提督「どうなるだろうか……。だが、わざわざ呼び出す程だ。時間は掛かるだろう。下手をすれば何日か向こうに居なければならないかもしれん。…………すまん」
瑞鶴「そんなぁ……」
金剛「瑞鶴、仕方無いデス……」
響「…………」
瑞鶴「ぅー……」
提督「流石に上の命令を無視する訳にはいかん。今回は諦めてくれ」
響「……別の日にするっていうのも味気が無いし、どうしようか」
金剛「…………」
金剛(このまま中止になれば、テートクとキスをしたのは私だけなのですけどね……。でも、私がズルをしたからこうなったからであって……うー…………)
瑞鶴「……決めた」
響「?」
瑞鶴「提督さん。出発するのは明日よね?」
提督「ああ」
瑞鶴「それでさ、義務でやるのは嫌っていう事は、裏を返せば提督さんがその気になったら嫌じゃないって事よね?」
提督「……そういう事にはなるが」
瑞鶴「あと、ちょっとくらいの我侭は許してくれる?」
提督「……無茶を言わなかったら構わん」
瑞鶴「うん、分かったわ」ニヤ
提督「何を考えているんだ……」
瑞鶴「とっても良い事、よ」ニヤニヤ
金剛「瑞鶴がイタズラをする子供の目になってるデス……」
響「名案でも浮かんだの?」
瑞鶴「えっとね──」スッ
響「ん」スッ
瑞鶴「……………………」ヒソヒソ
響「…………ほぅ。それは良いね。とても良い」ニヤ
金剛「何を考えついたのデスか?」
瑞鶴「金剛さんには教えない」
響「金剛さんは前にズルしたからね」
金剛「う……」
提督「……私にも秘密か?」
瑞鶴「前もって教えるのはダメだと思うわ」
響「うん。でも、楽しみにしていてね」
提督「不安で仕方が無い……」
瑞鶴「じゃあさ、二人はちょっとソファに座ったら目隠しと耳栓をしてて。肩を叩いたら外して良いって合図ね」
提督「……分かった」スッ
金剛「変な事、しないデスよね……?」
響「二人にそんな事はしないから安心してて良いよ」
金剛「……分かりまシタ」スッ
瑞鶴「…………あ。提督さん、金剛さん、ちょっと言い忘れてたんだけど、良い?」
提督・金剛「……………………」
響「……うん。聴こえていないみたいだね」
瑞鶴「じゃあ、早速やっちゃいましょうか」ニヤ
響「うん」ニヤ
瑞鶴「提督さんのクローゼットを開けて……っと、あったあった♪」ヒョイ
響「……私服すら入ってないね。全部制服だ」
瑞鶴「まあ、提督さんらしいわよね。私物なんてほとんど見た事ないし。──はい、響ちゃん」スッ
響「スパスィーバ」スッ
ゴソゴソ──。
響「……どうかな?」
瑞鶴「響ちゃん、それ見えちゃってる。ちゃんと隠さないと」
響「ん、分かった」ゴソゴソ
瑞鶴「私の方はどう?」
響「ん……瑞鶴さんはもう留めなくて良いんじゃないかな? そっちの方がそそるかもしれない」
瑞鶴「じゃあそうしようっと。気を付けないといけないわね」プチプチ
響「……よし。お互いこれで良いかな」ニヤ
瑞鶴「うん。良いわね」ニヤ
響「じゃあ、私は金剛さんの肩を叩くね」
瑞鶴「分かったわ。私は提督さんを……せーのっ」
ポンポン──。
提督「終わったか。一体何、を……」スッ
金剛「? テートク、どうし……たで、す…………」
瑞鶴「ふふん。提督さん、どう? どんな感じどんな感じ?」ニヤニヤ
響「司令官のシャツって大きいね。ぶかぶかで膝上まで隠れちゃってるよ」ニヤ
提督「……………………」
金剛「は、裸で提督のシャツ、を……!?」
響「ちなみに、私は下に何も着けてないよ」
金剛「なっ!?」
提督「何をやっているんだお前達は……」
瑞鶴「何って……ねぇ?」ススッ
響「司令官をその気にさせる為にやってるんだよ」ススッ
提督「待て……なぜ隣に……」
瑞鶴「ヤダ。待たない」ギュゥ
響「司令官の腕、じんわりとあったかい」ギュゥ
金剛「ふ、二人には恥じらいというものが無いのですかっ!?」
瑞鶴「あるけど、見えないようにはしてるし、何よりも提督さんだから出来る事よ。──あっ……提督さんの手がふとももに……」ピクン
提督「…………っ」スッ
響「司令官、こっちの手を上げたら私の……その、大事な部分が見える」
提督「────っ……」
金剛「あ、あう……あうあうぁうぁぅぁぅ……」カァァ
響「ん……司令官の匂いで一杯だ……全身、司令官に包まれてるみたいだよ」
瑞鶴「……私も。…………ねえ提督さん? 私、今すっごいドキドキしてるのよ? ……触って、確かめてみる?」
金剛「────!!」
提督「待て……待て…………! 何の意味があるんだ、これは……!」
瑞鶴「言ったでしょ……? 提督さんを、その気にさせる為……ってね?」サワサワ
響「……ね、これでも司令官は物足りない? …………キス、したくない?」サワサワ
瑞鶴「──あ、提督さんの心臓もすっごく速くなってる」
響「──本当だ。服の上からでも分かるくらいだよ」
提督「それは…………────」
瑞鶴「……ね、提督さん──」
響「私達と──」
瑞鶴・響「──キス、して?」
提督「……………………短くても、良いのならば……」
金剛(うぅ……)
瑞鶴「じゃあ……きて?」
提督「…………」ソッ
瑞鶴「ん……」チュゥ
瑞鶴「っ! ──んん……ふ、ぅ……」ヌルッ
瑞鶴「あ……っ、て、とく……さんの……はぁ……」クチュ
提督「…………」スッ
瑞鶴「ん……んくっ……。──提督さんの涎、飲んじゃった……♪」
響「────! ……司令官、こっち向いて」クイッ
提督「…………っ」
響「ん……っく……。ぁ……ぁー……」ヌチュ
提督「っ!」
響「ちゅ……ほら、飲ん……で──ん、ふ……」チュク
提督「……ん、ぐ」コクンッ
響「はぁ……。ん……ちゃんと、飲んだ音……聴こえたよ」スッ
金剛「……………………」ドキドキ
金剛(……私の時も、こんな風に見えていたのデスかね)ドキドキ
…………………………………………。
提督「…………」
瑞鶴「ふふーん。提督さん、ちょっと顔が赤くなってる」
響「ハラショー。とても良い気分だ」
金剛「……二人も顔が真っ赤です」
瑞鶴「まあ、だって……ねえ?」ニヤ
響「初めてがこんなにも……エッチなキスで満足だよ」ニヤ
金剛(おまけに嬉しさの余りかニヤけてるです……)
瑞鶴「これでおあいこよね、金剛さん?」
金剛「うぅ……あの時、二人がズルいって言っていたのも理解できました……」
瑞鶴「まあ、チョコの口移しが出来なかったのは残念だったけど」
響「ホワイトデーは明日だからね。──いや、もう日付が変わってるから今日か。まあ、チョコは司令官が帰ってきてから貰おうよ」
瑞鶴「ちゃんと甘くないチョコよね?」
提督「……ああ。……間宮に頼んで作ってもらっている」スッ
瑞鶴「? 執務机に……って、まさか!」
提督「……そのまさかだ」ヒョイ
響「……失敗した。あるんだったら口移しして貰うんだった」
提督「頼むから二回目は……」
瑞鶴「まあ……しょうがないわよね。ちゃんと約束は守って貰ったし、今回はこのくらいにしておきましょうか」
提督「……ありがたい」
響「でも、来年はしてもらうよ」
金剛「ら、来年は私も一緒ですよね?」
瑞鶴「うん。皆で可愛がってもらいましょ?」
響「その頃には、司令官も私達の誰かと一線を越えてるかもね?」ニヤ
金剛「……負けませんよ?」
瑞鶴「私も負けるつもりは無いわ」
提督「……本当に、私の事を好いているんだな」
金剛・瑞鶴「勿論!」
響「じゃないと、ここまでしないよ」
提督「…………」
提督(嬉しいが……その分、申し訳なく思ってしまうな……)
提督「──さて、もう夜も深くなる。明日に備えて寝ておけ」
三人「はい!」ピシッ
提督(……明日、か。総司令部で何を言われるんだろうな)
提督(予想も付かんが、どうせ碌でもない事だろう。覚悟だけはしておくか)
金剛「──グッナイ、テートク」
瑞鶴「おやすみ、提督さん。来年の約束、忘れないでよね?」
響「私達は憶えてるからね。──おやすみ」
提督「……ああ。おやすみ」
ガチャ──パタン
……………………
…………
……
──その後、総司令部に訪れた提督。そこで聞き、見た物は…………。
──── 金剛・瑞鶴・響「甘くないチョコ」 ────
了
乙です!
せ…切ない……!!!この後って……
以上でバレンタインデーとホワイトデーのIFストーリーは終わりとなります。
短いお話だったけど、どうでしたでしょうか。
そして、最後はやはり苦くなります。あの物語なので仕方がありませんでした。
あの金剛さんSSを読んだ方ならば、この後何が起きるのか一発で分かるでしょう。内容も大差ありません。提督と金剛さんの約束が一個、守れなくなったという世界ですねこれは。
何かございましたら下のアドレスへお申し付け下さいませ。
dat落ちしてレス出来なかった方、またはご感想やその他、なんでも受け付けています。
一週間後にはHTML依頼を出します。利根さんのSSを読んで下さっている方はそちらでまた会いましょう。
それではまた──。
アドレス置いてないやん。何してるやねん私。
kongou_zuikaku_hibiki@yahoo.co.jp
お疲れ様です!
今後も利根さん楽しみにしております!!
乙です!
乙乙
久々に元の3スレ読み返すかね
乙です
乙
続きを知ると切なくなるな
乙でした~
乙です
乙乙
このSSまとめへのコメント
14から1さん必殺の地の文です。
急にエロ入れてくるとは思いませんでした。やはりこの人の作品は好きです。